説明

座金部材

【課題】座金部材を使用したプレハブ等の軽量鉄骨組立に於いて、空回りする機能を有した工具のように、工具使用前に所定の締付トルクに設定する必要がなく、通常の工具を使用しながら、簡単な締付作業でもって、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することが出来るようにし、更に作業者が変わってもバラツキのない信頼性の高い締付性能が得られる座金部材を安価に提供する。
【解決手段】ナット部2と該ナット部2の外形より径を大きくした座金部3を一体的に有した座金部材であって、前記ナット部2と前記座金部3の境界部分に、座金3下面に所定の深さを持った溝部4を形成して、該溝部4とネジ形成部の間に連結部5を形成し、ボルト部材と協働して被締結部材を締付けた時、所定の締付トルクでもって、前記連結部5が破壊するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の組立、特にプレハブ等の軽量鉄骨を組立てる時にボルト部材と協働して複数の被締付け部材を所定の締付けトルクでもって固定する座金部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレハブ等の軽量鉄骨を組立てる場合に、ボルトとナットを使用することは、極当たり前のことであり、又ボルトとナットにワッシャーを併用することも自然に行われている。
こうした状況の中で、近年では座金付きナットとして、ナット本体部外形より径を大きくした座金部を一体的に形成した所謂座金付きナットが広く使用されるようになっている。
座金付きナットは、被締結部材の締結時に径の大きな座金部が被締結部材の面に当接するようになるので、通常のナットを使用した場合と比較すると抜群の安定性を得ることができる。
【0003】
そして、プレハブ等の軽量鉄骨の組立に於いて、安定性に加えて重要なのは、適正な締付けトルクを付与した状態で被締付け部材を固定することであって、従来より広く使用されている方法は、一定の締付トルクに達した時点で空回りする機能を有した工具(例えばトルクレンチ等)を使用することである。そして時には作業者の勘に頼ることも少なくなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者の勘に頼ることは論外であるが、実際の作業に於いては、少なからず行われていることであり、適正な締付トルクを標準的に確保することは難しく、信頼性にかけることは、当然のことである。又、空回りする機能を有した工具を使用する場合は、工具使用前に所定の締付トルクに設定する必要があり、しかも、その設定作業は、ケースバイケースで都度設定しなければならない。そして締付作業は、空回りした時点が終了ではなく、その後、空回り操作を数回繰り返すことが常識となっており、作業性には大きな問題があった。又、通常の締付工具と比較して高価であることも至極当然のことである。尚更に、所定の締付トルクを付与する他の従来技術は、いずれもコスト的に問題があった。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑み、座金付ナットを使用したプレハブ等の軽量鉄骨組立に於いて、空回りする機能を有した工具を使用しながら、簡単な締付作業でもって、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することができるようにし、更に作業者が変わってもバラツキのない信頼性の高い締付性能が得られる座金付ナットを安価に提供することを目的としている。
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ナット部と該ナット部の外形より径を大きくした座金部を一体的に有し又下方向に湾曲させた座金であって、座金部に所定の深さを持った溝部を形成して、溝部とナット部の間に連結部を形成し、ボルト部材と協働して被締結部材を締付けた時、所定の締付トルクでもって、前記連結部が破壊するようにしたものである。この様に構成したことにより、通常の工具を使用しながら、普通の単純な締付作業でもって、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することができるようになり、更に作業者が変わってもバラツキのない信頼性の高い締付性能を得ることができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、座金部の下側部分であって、内側部分にかけて空洞部を形成し、該空洞部と前記溝部との間に連結部を形成したものである。この様に構成したことにより、被締結部材締結時に要求される締付トルクを付与するのに重要な係わり合いのある連結部の剛性即ち破壊に対する応力設定が簡単に且つ確実に行えるようになり、それに伴い被締結部材締結時に要求される締付トルクを更に高い精度でバラツキを無くすことが可能となり、信頼性の高い締付機能を得ることができる。
【0008】
請求項3記載の発明は、下側に筒状部を一体的に形成したナットの筒状部にワッシャーを嵌合し、前記筒状部の端部をカシメることでワッシャーとナットを一体化し、ボルト部材と協働して被締結部材を締付けた時、所定の締付トルクでもって、前記ワッシャー部が破壊するようにしたものである。この様に構成したことにより、通常の工具を使用しながら、普通の単純な締付作業でもって、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することができるようになる。更に作業者が変わってもバラツキのない信頼性の高い締付性能を得ることが出来るばかりでなく、ナットとワッシャーをカシメで一体化するようにしたので、同じナットに対して必要に応じていろいろなワッシャーを使用することができ、自由度が広がり、被締結部材側の仕様に合わせることも可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上説明したように構成されているので、下記に説明するような効果を奏する。
【0010】
本発明による座金部材は、ナット部と該ナット部の外形より径を大きくした座金部を一体的に有した座金であって、座金部に所定の深さを持った溝部を形成して、該溝部とナット部の間に連結部を形成し、ボルト部材と協働して被締結部材を締付けた時、所定の締付トルクでもって、前記連結部が破壊するようにしたので、前記連結部に仕様に基づく剛性即ち破壊に対する応力を設定することが可能となり、通常の工具を使用しながら、普通の単純な締付作業でもって、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することが出来るようになり、更に作業者が変わってもバラツキのない信頼性の高い締付性能を得ることが出来る。尚更に、単に締付操作をするだけで、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することが出来るようになり、作業性の向上が図れる。
【0011】
更に、本発明による座金部材は、座金部の下側部分であって、内側部分にかけて空洞部を形成し、該空洞部と前記溝部との間に連結部を形成したので、連結部が溝部と空洞部という凹凸のない平坦状部分の間に形成されているため、肉厚の精度を確保することが容易になり、それに伴い応力設定が極めて易しくなり且つ精度を高めることが出来ることになり、被締結部材締結時に要求される締付トルクを付与するのに重要な係わり合いのある連結部の剛性即ち破壊に対する応力設定が簡単に且つ確実に行えるようになって、被締結部材締付時に要求される締付トルクを更に高い精度でバラツキを無くすことが可能となり、信頼性の高い締付性能を得ることが出来る。
【0012】
更に、本発明による座金部材は、下側に筒状部を一体的に形成したナットの筒状部にワッシャーを嵌合し、前記筒状部の端部をカシメることでワッシャーとナットを一体化し、ボルト部材と協働して被締結部材を締付けた時、所定の締付トルクでもって、前記座金部が破壊するようにしたので、通常の工具を使用しながら、普通の単純な締付作業でもって、被締結部材締結時に要求される締付トルクを確実に付与することが出来るようになる。更に作業者が変わってもバラツキにない信頼性の高い締付性能を得ることが出来るばかりでなく、ナットとワッシャーをカシメで一体化するようにしたことから、同じナットに対して必要に応じて、外形の大きさや厚さそして湾曲の度合更には材質等色々なワッシャーが使用可能となり、自由度が広がり、被締結部材側の仕様に容易に合わせることも出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9に基づき詳細に説明する。図1は本発明による座金部材の一実施形態を示す平図面、図2は部分的な断面を含む図1のP矢視図であり、図3は図2のX部拡大詳細図である。図4は本発明になるナット部材のほかの実施形態を示し、図2のX部に相当する拡大詳細図であって、図5は本発明によるナット部材の更に他の実施形態を示す平面図である。図6は部分的な断面図を含む図5のQ矢視図である。図7は本発明によるナット部材の更に他の実施形態(図5及び図6)に於けるナットの部分的な断面を含む側面図、図8は本発明によるナット部材の更に他の実施形態(図5及び図6)に於けるワッシャーの平面図であって、図9は図8のA−A断面図である。
【0014】
それでは図1〜図3より、第一の実施形態について説明する。1はナット部2と該ナット部2の外形により大きな径を持つ座金部3を一体的に形成した座金部材である。座金部材1には、ナット部2と座金部3の境界部分或いは境界部分近傍であって、座金部3の上面に、所定の深さを持った切込状の溝部4が形成されている。そして、この溝部4とナット部の間には、連結部5が形成されている。
【0015】
連結部5は、本発明による座金部材にとって、最も重要な部分であるので、図3を参照しながら更に詳しく説明することにする。連結部5は、跡で詳しく説明するように、ボルト部材と協働して、被締結部材を締結する際、ナット部2に所定の締付トルクが負荷された時に破壊(せん断)するように構成されているのである。これによって、被締結部材は、必要且つ充分な締付トルクによって締付固定されることになる。
【0016】
従って、連結部の剛性即ち破壊に対する応力設定が重要となるのであるが、呼び径12mmのナット部材の場合で種々テストした結果は、H1を1.5mmとし、T2を0.25mmとした時、450Kgfcm前後で破壊した。
プレハブに於ける軽量鉄骨では、呼び径12mmナット部材の場合、その締付トルクは450Kgfcm程度が良いとされており、略良好な結果を得た。勿論、ナット部材の種類や呼び径の大きさ、更には被締結部材の材質や使用条件等必要最小限の要素を基に、最大公約数的にH1とT1を決定しておいて、対象となるナット部材や被締結部材の条件に近似するものを使用するのが得策である。換言すれば、最大公約数的にH1とT1を決定した座金部材を製作しておくことで使用者は、条件に合った座金部材を選択使用することが可能である。
【0017】
引き続き、図4に示した本発明による他の実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、座金部の下側部分(図4に於いて下方)であって、該空洞部16以外は、基本的に、既に説明した第一の実施形態である座金部材1と同じであるので、同一部位に付いては、同じ符号を付してあるので、念のために付言しておくこととする。
【0018】
本発明による他の実施形態である座金部材11は、一体的に形成されたナット部2と座金部3の境界部分近傍に所定の深さを持った切込状の溝部4が形成されており、該溝部4と空洞部16との間に、連結部15を形成した構成となっている。そして連結部15が溝部4と空洞部16との間に形成されていることから、その肉厚T2の精度を格段に高めることが可能となるのである。
【0019】
既に説明したように、連結部は、ボルト部材と協働して、被締結部材を締結する際、座金部に所定の締付トルクが負荷された時に破壊(せん断)するようになっており、連結部の剛性即ち破壊に対する応力設定が非常に重要となる。この応力設定は、溝巾H2と肉厚T2とで決定されることから、成形に於いては最も注意を要する点である。本実施形態では連結部15が溝部4と空洞部16という凹凸のない平坦状部分の間に形成されているため、肉厚保T2の精度を確保することが容易になり、それに伴い応力設定が極めてし易くなり且つ精度を高めることが出来ることとなる。
【0020】
次に、図5〜図9により、更に他の実施形態を説明する。ナット22は図7で理解できるように、通常のナットの下側に筒状部24を一体的に形成したものとなっている。23は、下方向に湾曲させて多少バネ性を持たせたワッシャーであり、該ワッシャー23の開口部27は、前記筒状部24の外周に嵌合可能になっている。ナット22の筒状部24の外周に、開口部27を介して嵌合されたワッシャー23は、図6で示すように、筒状部24の端部をカシメることでナット22と一体化され、座金部材21となるのである。26はカシメの状態を示したカシメ部である。
【0021】
ここで、理解を容易にするために、既に説明したナット部材1及びナット部材11と本実施形態であるナット部材21と比較しておくことにする。尚、ナット部材11は、空洞部16を除いて基本的にはナット部材1とおなじであるので、比較対象としてはナット部材1を取り上げる。ナット部材21に於けるナット22は、ナット部材1のナット部2に相当し、同様にワッシャー23は座金部3に相当し、座金部に相当するワッシャーとナット部材に相当するナットを別部品としてので、必要に応じてワッシャーを選択可能となり、座金部材としても自由度が拡大する。尚付言すれば、ワッシャー23は、必ずしもバネ性をもっていなくてはならないということではなく、必要に応じて板厚を大きく或いは小さくすることも可能であり、逆に座金部3の厚さ(標準的には呼び径12mmの座金部材の場合は3mm)を変えることも又可能である。
【0022】
筒状部24は、図7で理解できるように、所定の肉厚でもって形成された壁部25を有している。該壁部25は、ワッシャー23をナット22と一体化させるときのカシメ代としての機能を持っている。前述したように連結部5は、本発明による重要な構成要素であり、ボルト部材と協働して、被締結部材を所定の締付トルクでもって締付固定するために、剛性即ち破壊に対する応力設定がなされており、これにより、設定応力以上の締付トルクがナット部2に負荷された場合に座金部が破壊即ちせん断するようになっている。同じように、座金部23の肉厚保T3は、応力設定がなされた厚さとなっていて、ボルト部材と協働して、被締付部材を締付固定した時、所定の締付トルクで、破壊するようになっているのである。従って、連結部5の肉厚T1と座金部23の肉厚T3を同一に考えることは出来ない。即ち、よび径が同じ12mmであっても連結部5の肉厚T1と座金部の肉厚T3は、多少差異があり、全く同一であるとは云えないということである。尚、念のため付言しておくが、よび径12mmのナット部材に於いては、連結部5の肉厚T1と連結部15の肉厚T2そして座金部23の肉厚T3は、概ね0.25mm〜0.5mmが妥当である。
【0023】
ナット部材21は、前述のように、ナット部とワッシャー(座金部に相当)を別部品とし、それを一体化する構成を取っており、実施形態では、一体化をカシメによって行うとしているが、カシメにとらわれることはなく、他の方法であっても同等の効果を得ることが出来る。例えば、カシメ部26を単に折曲部とし、この折曲部とワッシャーを溶接する方法である。更に、ナット部材21に於ける筒状部24を設けず、ナット22の下面とワッシャー23の上面をプロジェクション溶接等で固着して一体化する方法である。
【0024】
尚、本発明になる座金部材について、プレハブ等の軽量鉄骨組立を取り上げて説明したが、これに限定されるものではなく、他のものにも応用可能であるので、念のため付言しておくことにする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による座金部材の一実施形態を示す平面図である。
【図2】部分的な断面を含む図1のP矢視図である。
【図3】図2のX部拡大詳細図である。
【図4】本発明による座金部材の他の実施形態を示し、図2のX部に相当する拡大詳細図である。
【図5】本発明による座金部材の更に他の実施形態を示す平面図である。
【図6】部分的な断面を含む図5のQ矢視図である。
【図7】本発明による座金部材の更に他の実施形態に於けるナットの部分的な断面を含む側面図である。
【図8】本発明による座金部材の更に他の実施形態に於けるワッシャーの平面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1,11,21 ナット部材 24 筒状部
2 ナット部 25 壁部
3 座金部 26 カシメ部
4 溝部 27 開口部
5,15 連結部 T1,T2,T3 肉厚
6 ボルト部材 H1,H2 溝巾
7 被締結部材
16 開口部
22 ナット
23 ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナット部と該ナット部の外形より径を大きくした座金部を一体的に有し又下方向に湾曲させた座金であって、前記ナット部と前記座金部の境界近くに、座金部上面に所定の深さを持った溝部を形成して、該溝部とナット部の間に連結部を形成し、ボルト部材と協働して被締結部材を締付けた時、所定の締付けトルクでもって、前記連結部が破壊するようにしたことを特徴とする座金部材。
【請求項2】
座金部の下側部分に空洞部を形成し、該空洞部と前記溝部との間に連結部を形成したことを特徴とする請求項1記載の座金部材。
【請求項3】
下側に筒状部を一体的に形成したナットの前記筒状部にワッシャーを嵌合し、前記筒状部の端部をカシメることでワッシャーとナットを一体化し、ボルト部材と協働して被締結部材を締め付けた時、所定の締付けトルクでもって、前記ワッシャー部が破壊するようにしたことを特徴とする座金部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate