説明

座面傾動椅子

【課題】着座状態での事務作業を実行しつつ、ウォーキングに準じた下肢筋力の適度なトレーニングを行うことが可能となる座面傾動椅子を提供する。
【解決手段】座部と脚部との間に設けられて該座部の中央部よりも鉛直方向に対して垂直な第1方向の第1側に配置された該鉛直方向に対して垂直且つ第1方向に対して直交する第2方向の回転軸線回りに、当該座部を基本位置から第1方向の第1側へ下がるように傾斜させると同時に、第2方向の第1側又は第2方向の第2側へ下がるように傾斜させる傾動ユニットと、座部が所定周期で基本位置から第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に第2方向の第1側へ下がるように傾斜した後、基本位置に戻って、再び第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に第2方向の第2側へ下がるように傾斜した後、再度基本位置に戻るように傾動ユニットを駆動制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが着座する座部を周期的に傾動させる座面傾動椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザが着座する座部を周期的に傾動させる機構を備えた座面傾動椅子に関して種々提案されている。
例えば、下記特許文献1に記載される自動座面傾動椅子は、背もたれ部とは分離且つ独立して設けた座部を、脚部材との間に前後傾可能に回動支持し、機械的に駆動して傾動させ、その傾斜角度を連続的に変更してゆくと共に、傾動方向を自動的に交番して運動転換する前後傾動反復機構を備えている。また、その下位に直交配置され、座部を含む前後傾動反復機構全体を左右傾可能に回動支持し、傾動方向を自動的に交番して運動転換する左右傾動反復機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−151129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載される構成の自動座面傾動椅子では、長時間の着座によるユーザの腰部、臀部や大腿部の痛みや疲労を軽減することは可能である。
しかしながら、事務関係の業務を取り扱うようなオフィスでは、着座状態での作業が多くなり、ユーザは運動不足になりがちであるが、座部を前後傾動させるだけでは、両足に同時に荷重がかかるため、片足当たりの荷重が少なくなり、運動不足を効果的に解消することが難しいという問題がある。また、運動不足の解消や下肢筋力の低下を防ぐために、適度なウォーキングが推奨されているが、長時間の事務作業を行っている場合には、適度なウォーキングを実施する時間を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、着座状態での事務作業を実行しつつ、ウォーキングに準じた下肢筋力の適度なトレーニングを行うことが可能となる座面傾動椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため請求項1に係る座面傾動椅子は、脚部と、ユーザが着座する座部と、前記座部と前記脚部との間に設けられて該座部の中央部よりも鉛直方向に対して垂直な第1方向の第1側に配置された該鉛直方向に対して垂直且つ前記第1方向に対して直交する第2方向の回転軸線回りに当該座部を基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜させると同時に、当該座部を前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第1側に対して相対向する該第2方向の第2側へ下がるように傾斜させる傾動ユニットと、前記座部が所定周期で基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側へ下がるように傾斜した後、基本位置に戻って、再び前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した後、再度基本位置に戻るように前記傾動ユニットを駆動制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る座面傾動椅子は、請求項1に記載の座面傾動椅子において、前記制御手段は、前記所定周期において、前記座部が基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜するまでの時間と、該座部が前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態から前記基本位置に戻るまでの時間とはほぼ同じ時間であり、且つ、該座部が前記基本位置に戻った状態及び前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で一時停止することなく連続して傾動するように前記傾動ユニットを駆動制御することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る座面傾動椅子は、請求項1に記載の座面傾動椅子において、前記制御手段は、前記所定周期において、前記座部が基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜するまでの時間と、該座部が前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態から前記基本位置に戻るまでの時間とはほぼ同じ時間であり、且つ、該座部が前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で所定時間一時停止し、更に、該座部が前記基本位置に戻った状態で一時停止することなく連続して傾動するように前記傾動ユニットを駆動制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る座面傾動椅子は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の座面傾動椅子において、前記座部が基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した時における該座部の該第1方向の第1側への傾斜角度は、水平に対して10度から30度の範囲であり、該座部の該第2方向の第1側又は該第2方向の第2側への傾斜角度は、水平に対して5度から10度の範囲であることを特徴とする。
【0010】
更に、請求項5に係る座面傾動椅子は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の座面傾動椅子において、前記傾動ユニットは、前記脚部に固設される固定フレーム部材と、前記固定フレーム部材に対して前記第1方向の回転軸線回りに揺動自在に取り付けられた揺動フレーム部材と、前記揺動フレーム部材の上側に配置されると共に前記第1方向の第1側端縁部が該揺動フレーム部材に対して前記第2方向の回転軸線回りに揺動自在に取り付けられて、前記座部が上側に取り付けられる座部取付部材と、前記揺動フレーム部材を前記第1方向の回転軸線回りに前記基本位置から前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ傾動させると共に、前記座部取付部材を前記第2方向の回転軸線回りに該基本位置から上方向へ傾動させる傾動手段と、を有し、前記制御手段は、前記傾動手段を駆動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る座面傾動椅子では、制御手段を介して傾動ユニットを駆動制御することによって、座部が所定周期で基本位置から鉛直方向に対して垂直な第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に、鉛直方向に対して垂直且つ第1方向に対して直交する第2方向の第1側へ下がるように傾斜した後、基本位置に戻って、再び第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に第2方向の第1側に対して相対向する該第2方向の第2側へ下がるように傾斜した後、再度基本位置に戻る。このため、ユーザは座部に第1方向の第1側へ向いて着座した状態で、制御手段を介して傾動ユニットを作動させることによって、所定負荷を周期的に左足と右足に交互にかけることができ、着座状態を継続しつつ、ウォーキングに準じた下肢筋力の適度なトレーニングを行うことが可能となる。
【0012】
また、請求項2に係る座面傾動椅子では、座部が基本位置に戻った状態及び第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに第2方向の第1側又は第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で一時停止することなく、連続して基本位置から第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように交互に傾斜するため、着座状態を継続しつつ、ウォーキング状態に更に近い状態で、所定負荷を左足と右足に交互にかけることが可能となる。
【0013】
また、請求項3に係る座面傾動椅子では、座部が第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに第2方向の第1側又は第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で所定時間一時停止し、且つ、基本位置に戻った状態で一時停止することなく、連続して基本位置から第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように交互に傾斜する。これにより、座部が第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに第2方向の第1側又は第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で所定時間維持されるため、ユーザは着座状態を継続しつつ、所定負荷を左足と右足に交互に所定時間連続してかけることが可能となる。従って、ユーザは左足と右足のそれぞれの下肢筋肉にかかる負荷を増加させて、ウォーキングに更に近い下肢筋力のトレーニングを行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項4に係る座面傾動椅子では、座部が基本位置から第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に第2方向の第1側又は第2方向の第2側へ下がるように傾斜した時は、該座部の第1方向の第1側への傾斜角度は、水平に対して10度から30度の範囲であり、該座部の第2方向の第1側又は第2方向の第2側への傾斜角度は、水平に対して5度から10度の範囲である。これにより、ユーザは着座した状態で事務作業を継続しつつ、ウォーキングに準じた下肢筋力のトレーニングを行うことができる。
【0015】
更に、請求項5に係る座面傾動椅子では、制御手段を介して傾動手段を駆動制御することによって座部取付部材を第1方向の第1側端縁部を中心に基本位置から上方へ傾動させることができる。また同時に、揺動フレーム部材を固定フレーム部材に対して基本位置から第1方向に直交する第2方向の第1側又は該第2方向の第2側へ傾動させることができる。
【0016】
これにより、制御手段を介して傾動手段を駆動制御することによって、座部取付部材に取り付けられた座部を、所定周期で水平状態から左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に所定傾斜角度だけ傾斜させることができる。また、座部取付部材は、前側端縁部を回転中心として上方向へ傾動されるため、傾動ユニットの薄型化を図りつつ、座部の傾斜角度を容易に大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る座面傾動椅子の使用状態を示す図である。
【図2】座面傾動椅子の斜視図である。
【図3】座面傾動椅子の分解斜視図である。
【図4】傾動ユニットの座部取付部材だけを除いた平面図である。
【図5】図4のX1−X1矢視断面図である。
【図6】図4のX2−X2矢視断面図である。
【図7】傾動ユニットの背面図である。
【図8】傾動ユニットの下面図である。
【図9】図7及び図8のX3−X3矢視断面図である。
【図10】傾動ユニットの左側面図である。
【図11】傾動ユニットの右側面図である。
【図12】座部が水平状態の傾動ユニットを示す正面図である。
【図13】座部が右斜め前方向に傾斜した状態の傾動ユニットを示す正面図である。
【図14】座部が左斜め前方向に傾斜した状態の傾動ユニットを示す正面図である。
【図15】座面傾動椅子の動きを模式的に示す図である。
【図16】座部を前側方向へ傾斜させた際の作業者の感応評価結果の一例を示す図である。
【図17】座部を左右方向へ傾斜させた際の作業者の感応評価結果の一例を示す図である。
【図18】座部が水平状態時の作業者の姿勢を示す正面図である。
【図19】座部が右斜め前方向に傾斜した状態時の作業者の姿勢を示す正面図である。
【図20】座部が左斜め前方向に傾斜した状態時の作業者の姿勢を示す正面図である。
【図21】座部の水平時における両足への負荷の一例を示す図である。
【図22】座部の傾動動作時における両足への負荷の一例を示す図である。
【図23】ウォーキング時における両足への負荷の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る座面傾動椅子及び傾動ユニットについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る座面傾動椅子1の概略構成について図1乃至図3に基づいて説明する。
【0019】
[座面傾動椅子の概略構成]
図1に示すように、座面傾動椅子1は、作業者3がオフィス等で事務作業を行う際に着座するものである。そして、作業者3が着座した状態で、背もたれ部5の後側に取り付けられた制御ボックス6の電源スイッチ7をONにすることによって、後述のように座部8が一定周期で水平状態から左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に所定傾斜角度だけ傾斜する(図15参照)。この制御ボックス6には、駆動モータ45(図2参照)等を駆動制御する制御回路基板等が収納されている。
【0020】
座面傾動椅子1は、図2及び図3に示すように、脚部9に傾動ユニット11が取り付けられ、また、傾動ユニット11に座部8が取り付けられている。この脚部9は、下端にキャスターを付けた脚羽根12が設けられている。また、脚羽根12から鉛直方向に脚支柱部材13が立設され、この脚支柱部材13に傾動ユニット11がネジ止め等によって取り付けられる。また、脚支柱部材13の上端部に背もたれ部5の下端部が取り付けられている。
【0021】
この脚支柱部材13は、昇降機構を有するものであり、作業者3が不図示の操作レバーを操作することによって、高さ方向に伸縮し、座部8の高さを適切位置に変更できるように構成されている。また、脚支柱部材13の上端部には、側面視略クランク形の取付部材14が背もたれ部5に対して前側方向に突出するようにスポット溶接やネジ止めにより固設されている。
【0022】
そして、傾動ユニット11は、取付部材14の前側に突出した平面部に固定フレーム部材15がネジ止めされると共に、取付部材14の後側壁部に固定ブラケット16(図9参照)がネジ止めされて、脚部9に着脱可能に取り付けられている。また、座部8は傾動ユニット11の上端部を構成する略平板状の座部取付部材17にネジ止め等によって着脱可能に取り付けられている。
【0023】
[傾動ユニットの概略構成]
次に、傾動ユニット11の概略構成について図3乃至図11に基づいて説明する。
図3、図4、図7乃至図9に示すように、固定フレーム部材15は、背もたれ部5に対して前後方向(第1方向)に長く、幅の狭い上方に開放された略箱体状で、底面部に各ネジ孔18が形成され、取付部材14の上面部に載置されて該各ネジ孔18を介して取り付けられる。また、固定フレーム部材15の前後の両側壁部は、上方に延出されると共に、中央部に内側方向へ窪む断面円形の窪み部が形成されて、一対のベアリング19が同軸線上に位置するように装着されている。
【0024】
そして、上方に開放された左右方向(第2方向)に長い横長箱体状の揺動フレーム部材21は、前後の両側壁部の左右方向中央部が、固定フレーム部材15の各ベアリング19に嵌入された各ボルト22によってネジ止めされている。また、揺動フレーム部材21は、底面が固定フレーム部材15の左右側壁部の上端縁部と、所定隙間を形成するように取り付けられている。これにより、揺動フレーム部材21は、固定フレーム部材15に対して、各ベアリング19を介して、前後方向の回転軸線23回りに揺動自在に取り付けられる。
【0025】
また、図3、図4、図8乃至図11に示すように、揺動フレーム部材21の上側には、座部取付部材17が配置され、該座部取付部材17の両側面の前端縁部(第1方向の第1側端縁部)には、下側方向に所定幅で延出された一対のブラケット25が形成されている。この一対のブラケット25には貫通孔25Aが形成され、各ベアリング26の外輪が圧入されている。
【0026】
そして、各ベアリング26の内輪に外側から嵌入された各ボルト27は、揺動フレーム部材21の両側面部の前側上端部に形成された貫通孔にスペーサを挟んで嵌入されて、各ナット28によって締結されている。これにより、座部取付部材17は、揺動フレーム部材21に対して、各ベアリング26を介して、左右方向の回転軸線29回りに揺動自在に取り付けられる。尚、各スペーサの外径は、各ベアリング26の内輪の外径にほぼ等しくなるように形成されている。
【0027】
また、図4乃至図6に示すように、揺動フレーム部材21内の前後方向中央部には、第1回転軸31が該揺動フレーム部材21の左右の両側壁部に設けられた各ベアリング32によって回転可能に軸支されている。各ベアリング32は、揺動フレーム部材21の左右の両側壁部に形成された内側方向へ窪む断面円形の窪み部に嵌入されて取り付けられている。また、第1回転軸31の両端部は、各ベアリング32よりも外側方向へそれぞれ所定長さ突出するように形成されている。
【0028】
そして、第1回転軸31の両端部には、該両端部がそれぞれ嵌入される貫通穴が軸線上に形成された略円柱状の各揺動バー固定部材33が六角穴付き止めネジ等によって固定されている。また、各揺動バー固定部材33の外側端縁部には、半径方向外側に延出された所定外径のフランジ部33Aが形成されて、後述のように各上下リンクバー35の一端側が回転可能に取り付けられている(図10、図11参照)。
【0029】
また、第1回転軸31の揺動フレーム部材21内の一方の端縁部(図4中、右側端縁部である。)には、ウォームギヤ36を構成するウォームホイール37が固定されている。また、ウォームホイール37の下側には、中央部にウォームギヤ36を構成するウォーム38が形成されたウォーム軸39が前後方向に配置され、各ベアリング41によって回転可能に軸支されている。各ベアリング41は、揺動フレーム部材21の前後の両側壁部に形成された内側方向へ窪む断面円形の窪み部に嵌入されて取り付けられている。
【0030】
また、ウォーム軸39の前側端縁部は、ベアリング41よりも所定長さ突出すると共に、外周面にネジが形成され、ナット42により締結されている。また、ウォーム軸39の後側端縁部は、ベアリング41よりも後側方向へ所定長さ突出し、軸継手43によって駆動モータ45のモータ軸46に連結されている。この駆動モータ45は、揺動フレーム部材21の底面の一方の端縁部(図4中、右側端縁部である。)に前端縁部が固設されて、後側方向(第1方向の第2側)へ延出された側面視略L字形のモータ取付ブラケット47に取り付けられている。
【0031】
このモータ取付ブラケット47の左右方向の幅は、駆動モータ45の左右方向の幅とほぼ同じ幅に形成されている。そして、駆動モータ45は、電源スイッチ7をONにすることによって、家庭用電源で駆動され、ウォームギヤ36を介して第1回転軸31を所定回転速度で回転駆動する。
【0032】
また、第1回転軸31の揺動フレーム部材21内の左右方向略中央位置には、かさ歯車48が固定されている。また、揺動フレーム部材21の後側壁面部のウォーム軸39に対して左右方向反対側の端縁部の外側には、上方が開放された略箱型の軸取付部材51が固設されている。この軸取付部材51の前後の両側壁部には、第2回転軸52を第1回転軸31に対して直交するように回転可能に軸支する一対のベアリング53が設けられている。また、第2回転軸52の両端部は、各ベアリング53よりも外側方向へそれぞれ所定長さ突出するように形成されている。
【0033】
そして、第2回転軸52の前側端縁部は、揺動フレーム部材21内に挿通されて、かさ歯車48に噛合するかさ歯車55が固定されている。このかさ歯車55とかさ歯車48の減速比は1/2に設定されている、つまり、かさ歯車48の2回転に対してかさ歯車55が1回転するように設定されている。従って、第1回転軸31が駆動モータ45によってウォームギヤ36を介して回転駆動された場合には、第1回転軸31の2回転に対して第2回転軸52が1回転する。また、第2回転軸52の後側端縁部には、この後側端縁部が嵌入される貫通穴が軸線上に形成された略円柱状の揺動バー固定部材56が六角穴付き止めネジ等によって固定されている。
【0034】
また、図4、図7、図10及び図11に示すように、傾動ユニット11の左右側面部には、各揺動バー固定部材33のフランジ部33Aの軸方向外側面と、座部取付部材17の両側面の後端縁部とを連結する一対の略細長板状の上下リンクバー35が設けられている。各上下リンクバー35の両端部には各貫通穴35Aが形成され、板厚とほぼ同じ厚さの各ベアリング58の外輪が圧入されている。
【0035】
そして、各上下リンクバー35のそれぞれのフランジ部33A側の端部は、各ベアリング58に挿通された各ボルト59によって、各フランジ部33Aの軸方向外側面に、中心位置から半径方向外側へ偏心するようにスペーサを挟んでネジ止めされ、回転可能に軸支されている。また、座部取付部材17の両側面に後端縁部(第1方向の第2側端縁部)には、下側方向に所定幅で延出された一対のブラケット61が形成されている。
【0036】
そして、各上下リンクバー35のそれぞれのブラケット61側の端部は、各ベアリング58に挿通された各ボルト62によって、スペーサを挟んで各ブラケット61に形成された貫通孔に挿通され各ナット63によって締結され、回転可能に軸支されている。尚、各スペーサの外径は、各ベアリング58の内輪の外径にほぼ等しくなるように形成されている。
【0037】
従って、駆動モータ45の回転駆動によってウォームギヤ36を介して第1回転軸31が1回転した場合には、各フランジ部33A及び各上下リンクバー35を介して、座部取付部材17は各ベアリング26の回転軸線29の回りに後端縁部が水平状態から上方へ1回上昇後、再度水平状態に戻る。
【0038】
また、図4、図7乃至図10に示すように、第2回転軸52の後端縁部に固定された揺動バー固定部材56の後端面と、脚支柱部材13に固設された取付部材14にネジ止め等によって固定される平板状の固定ブラケット16とは、略細長板状の揺動リンクバー65によって連結されている。この揺動リンクバー65の両端部には各貫通穴65Aが形成され、板厚とほぼ同じ厚さの各ベアリング66の外輪が圧入されている。
【0039】
そして、揺動リンクバー65の揺動バー固定部材56側の端部は、ベアリング66に挿通されたボルト67によって、該揺動バー固定部材56の後端面に、中心位置から半径方向外側へ偏心するようにスペーサを挟んでネジ止めされ、回転可能に軸支されている。また、揺動リンクバー65の固定ブラケット16側の端部は、ベアリング66に挿通されたボルト68によって、該固定ブラケット16の後側面にスペーサを挟んでネジ止めされ、回転可能に軸支されている。尚、各スペーサの外径は、各ベアリング66の内輪の外径にほぼ等しくなるように形成されている。
【0040】
従って、駆動モータ45の回転駆動によってウォームギヤ36を介して第1回転軸31を2回転させた場合には、該第1回転軸31に取り付けられたかさ歯車48を介してかさ歯車55が1回転する。また、かさ歯車55が1回転した場合には、該かさ歯車55に前端縁部が固定された第2回転軸52が1回転し、該第2回転軸52の後端縁部に固定された揺動バー固定部材56も1回転する。
【0041】
また、固定フレーム部材15及び固定ブラケット16は、脚支柱部材13に固設された取付部材14に固定されている。このため、揺動バー固定部材56が1回転した場合には、揺動リンクバー65を介して、揺動フレーム部材21は、固定フレーム部材15に設けられた各ベアリング19の回転軸線23の回りに、水平状態(基本位置)から上下方向のうちの一方へ所定角度傾斜した後(第2方向の第1側へ下がるように傾斜した後)、水平状態に戻って該上下方向のうちの他方へ所定角度傾斜した後(第2方向の第2側へ下がるように傾斜した後)、再度水平状態に戻る。
【0042】
[座面傾動椅子の揺動駆動の一例]
次に、上記のように構成された座面傾動椅子1の駆動モータ45を作動させた場合の一例について図12乃至図15に基づいて説明する。
図12に示すように、先ず、駆動モータ45を作動させていない通常状態、つまり、電源スイッチ7をONにして、駆動モータ45の作動を開始する場合には、傾動ユニット11の座部取付部材17は、水平状態、つまり、基本位置になるように設定されている(図9、図11等参照)。従って、図15のAに示すように、傾動ユニット11の座部取付部材17に取り付けられた座部8は、基本位置の水平状態である。
【0043】
例えば、揺動フレーム部材21の上端部に不図示のメカニカルスイッチや溝形フォトマイクロセンサ等を取り付ける。そして、制御ボックス6の電源スイッチ7をONからOFFにした場合には、座部取付部材17の下面が、メカニカルスイッチを押下したり、座部取付部材17の下面に突出させたリブが溝形フォトマイクロセンサの溝内に入った場合に、駆動モータ45を停止させるように構成する。つまり、座部取付部材17が基本位置の水平状態になった場合に、駆動モータ45を停止させるように構成する。
【0044】
そして、図13に示すように、電源スイッチ7をONにして駆動モータ45の回転駆動を開始し、ウォームギヤ36を介して第1回転軸31が手前から奥側方向へ180度回転した場合には、各フランジ部33A及び各上下リンクバー35を介して、座部取付部材17は各ベアリング26の回転軸線29の回りに、後端縁部が水平状態から最も上側へ回動される。例えば、座部取付部材17は、水平状態から上方へ約20度回動されて、前側方向へ傾斜される。
【0045】
また同時に、かさ歯車55は、正面視時計方向へ90度回転するため、揺動リンクバー65は上向きに回動され、揺動フレーム部材21は、固定フレーム部材15に設けられた各ベアリング19の回転軸線23の回りに、水平状態から最も正面視反時計方向へ所定角度(例えば、約7度である。)回動される。従って、図15のBに示すように、傾動ユニット11の座部取付部材17に取り付けられた座部8は、右斜め前方向へ最も傾斜する。
【0046】
続いて、駆動モータ45の回転駆動を継続して、ウォームギヤ36を介して第1回転軸31が手前から奥側方向へ更に180度回転した場合、つまり、1回転した場合には、各フランジ部33A及び各上下リンクバー35を介して、座部取付部材17は各ベアリング26の回転軸線29の回りに下方へ回動して水平状態に戻る(図12参照)。
【0047】
また同時に、かさ歯車55は、正面視時計方向へ180度回転するため、揺動リンクバー65は駆動モータ45側へ回動される。このため、揺動フレーム部材21は、揺動リンクバー65を介して、固定フレーム部材15に設けられた各ベアリング19の回転軸線23の回りに回動して水平状態に戻る(図12参照)。従って、図15のCに示すように、傾動ユニット11の座部取付部材17に取り付けられた座部8は、水平状態に戻る。
【0048】
そして、図14に示すように、駆動モータ45の回転駆動を継続して、ウォームギヤ36を介して第1回転軸31が手前から奥側方向へ更に180度回転した場合、つまり、1回転半した場合には、各フランジ部33A及び各上下リンクバー35を介して、座部取付部材17は各ベアリング26の回転軸線29の回りに、後端縁部が、再度、水平状態から最も上側へ回動される。
【0049】
また同時に、かさ歯車55は、正面視時計方向へ270度回転するため、揺動リンクバー65は駆動モータ45から離れる方向へ回動され、揺動フレーム部材21は、固定フレーム部材15に設けられた各ベアリング19の回転軸線23の回りに、水平状態から最も正面視時計方向へ所定角度(例えば、約7度である。)回動される。従って、図15のDに示すように、傾動ユニット11の座部取付部材17に取り付けられた座部8は、左斜め前方向へ最も傾斜する。
【0050】
その後、駆動モータ45の回転駆動を継続して、ウォームギヤ36を介して第1回転軸31が手前から奥側方向へ更に180度回転した場合、つまり、2回転した場合には、各フランジ部33A及び各上下リンクバー35を介して、座部取付部材17は各ベアリング26の回転軸線29の回りに下方へ回動して水平状態に戻る(図12参照)。
【0051】
また同時に、かさ歯車55は、正面視時計方向へ360度回転するため、揺動リンクバー65は初期位置へ回動される。このため、揺動フレーム部材21は、揺動リンクバー65を介して、固定フレーム部材15に設けられた各ベアリング19の回転軸線23の回りに回動して水平状態に戻る(図12参照)。従って、図15のAに示される状態に戻り、傾動ユニット11の座部取付部材17に取り付けられた座部8は、再度、水平状態に戻る。
【0052】
つまり、電源スイッチ7をOFFにするまで、駆動モータ45の回転駆動は継続されるため、座面傾動椅子1の座部8は、図15のAから図15のDまでの傾斜動作を繰り返す。そして、電源スイッチ7がOFFになった場合には、座部取付部材17が水平状態になった時に、駆動モータ45が停止される。つまり、図15のAに示されるように、電源スイッチ7がOFFになった場合には、座部8が基本位置の水平状態になった時に、駆動モータ45が停止される。
【0053】
ここで、駆動モータ45の回転速度は、座部8が水平状態から左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に所定傾斜角度だけ傾斜して水平状態に戻る一定周期が、作業者3の歩行に合わせるように、例えば、2歩進む周期になるように設定されている。つまり、座部8の図15のAから図15のDまでの傾斜動作は、作業者3の歩行する動作に合わせるように設定されている。例えば、座部8の図15のAから図15のDまでの傾斜動作は、作業者3がほぼ2歩進む周期で繰り返すように設定されている。
【0054】
尚、ウォームギヤ36を介して第1回転軸31が奥側から手前方向へ回転するように駆動モータ45を回転駆動した場合には、座面傾動椅子1の座部8は、図15に示す順番と逆の順番に傾斜動作を繰り返す。つまり、座部8は、図15のAの状態から図15のDの状態、図15のDの状態から図15のCの状態、図15のCの状態から図15のBの状態、図15のBの状態から図15のAの状態へ、傾斜動作を繰り返す。
【0055】
[前傾角度の感応評価結果]
次に、椅子の座部を前側方向のみに傾斜させた場合に、作業者A〜作業者Eの5人によって事務作業を続けることが可能か否かを判定した感応評価結果の一例を図16に基づいて説明する。
【0056】
図16に示す前傾評価結果テーブル71は、作業者A〜作業者Eの5人を表す「被験者」と、図16の下方に示すように椅子72の座部73を水平状態、つまり、水平に対する前側方向への傾斜角度である前傾角度を0度の状態から40度まで5度刻みで変更した測定傾斜角度を表す「前傾角度」とから構成されている。尚、椅子72の脚部74に立設された脚支柱部材75は、昇降機構を有するものであ。そして、各作業者A〜Eは、座部73の水平状態において、不図示の操作レバーを操作することによって、座部73の高さを適切な位置に変更後、この座部73の前傾角度を0度の状態から40度まで5度刻みで変更して、事務作業を行った。
【0057】
また、前傾評価結果テーブル71の二重丸印は、座部73の傾斜に対して全く支障なく事務作業を行うことができたことを表している。また、前傾評価結果テーブル71の丸印は、座部73の傾斜に対して殆ど支障なく事務作業を行うことができたことを表している。また、前傾評価結果テーブル71の三角印は、座部73の傾斜に対して少し支障はあるが、事務作業を行うことができたことを表している。また、前傾評価結果テーブル71の×印は、座部73の傾斜に対して支障が大きく事務作業を行うことができなかったことを表している。
【0058】
例えば、作業者Aは、座部73の水平に対する前側方向への傾斜角度、つまり、前傾角度が、0度の状態から10度までは、全く支障なく事務作業を行うことができた。また、作業者Aは、座部73の前傾角度が、15度から20度までは、殆ど支障なく事務作業を行うことができた。また、作業者Aは、座部73の前傾角度が、25度から35度までは、少し支障はあるが、事務作業を行うことができた。更に、作業者Aは、座部73の前傾角度が、40度以上では、支障が大きく事務作業を行うことができなかった。
【0059】
従って、前傾評価結果テーブル71に示されるように、座部73の前傾角度が、10度から30度の範囲であれば、殆どの作業者は、前側方向に傾斜した座部73に着座した状態で、事務作業を行うことができると考えられる。
【0060】
[左右傾き角度の感応評価結果]
次に、上記椅子72の座部73を左右方向のみに傾斜させた場合に、作業者A〜作業者Eの5人によって事務作業を続けることが可能か否かを判定した感応評価結果の一例を図17に基づいて説明する。
【0061】
図17に示す左右傾き評価結果テーブル77は、作業者A〜作業者Eの5人を表す「被験者」と、図17の下方に示すように椅子72の座部73を水平状態、つまり、水平に対する左側方向への傾斜角度である左傾角度と右側方向への傾斜角度である右傾角度をそれぞれ0度の状態から12度まで変更した各測定傾斜角度を表す「左傾・右傾角度」とから構成されている。そして、各作業者A〜Eは、座部73の水平状態において、不図示の操作レバーを操作することによって、座部73の高さを適切な位置に変更後、この座部73の左傾角度と右傾角度をそれぞれ0度の状態から12度まで各測定傾斜角度に変更して、事務作業を行った。
【0062】
また、左右傾き評価結果テーブル77の二重丸印は、座部73の傾斜に対して全く支障なく事務作業を行うことができたことを表している。また、左右傾き評価結果テーブル77の丸印は、座部73の傾斜に対して殆ど支障なく事務作業を行うことができたことを表している。また、左右傾き評価結果テーブル77の三角印は、座部73の傾斜に対して少し支障はあるが、事務作業を行うことができたことを表している。また、左右傾き評価結果テーブル77の×印は、座部73の傾斜に対して支障が大きく事務作業を行うことができなかったことを表している。
【0063】
例えば、作業者Aは、座部73の左右方向への水平に対する左傾角度と右傾角度、つまり、左傾・右傾角度が、0度から5度までは、全く支障なく事務作業を行うことができた。また、作業者Aは、座部73の左傾・右傾角度が、6度から7度までは、殆ど支障なく事務作業を行うことができた。また、作業者Aは、座部73の左傾・右傾角度が、8度から10度までは、少し支障はあるが、事務作業を行うことができた。更に、作業者Aは、座部73の左傾・右傾角度が、12度以上では、支障が大きく事務作業を行うことができなかった。
【0064】
従って、左右傾き評価結果テーブル77に示されるように、座部73の左傾・右傾角度が、5度から10度の範囲であれば、殆どの作業者は、左右方向に傾斜した座部73に着座した状態で、事務作業を行うことができると考えられる。
【0065】
[座面傾動椅子による運動例]
次に、座面傾動椅子1を図15に示すように電源スイッチ7をONにして座部8を傾動作動させた場合に、着座した作業者3による運動例を図18乃至図20に基づいて説明する。尚、作業者3が座部8に着座した状態で事務作業を行うことができるように、座部8の左右方向の最大傾斜角度は、水平に対して約5度乃至約10度の範囲内であり、座部8の最大前傾角度は、水平に対して約10度乃至30度の範囲内に設定する。
【0066】
図18に示すように、先ず、座面傾動椅子1の座部8が水平状態の場合には(図15のAに相当する。)、机4上において事務作業をしている作業者3の左足3Aと右足3Bの両大腿部は、水平な座部8上にある。このため、作業者3の両足3A、3Bの大腿四頭筋等の下肢筋肉へは、体重による小さな負荷がそれぞれかかっている(図21参照)。また、作業者3の上半身は、腰を回すことなく正面の机4に向いている。
【0067】
続いて、図19に示すように、座面傾動椅子1の座部8が、右斜め前方向へ傾斜した場合には(図15のBに相当する。)、座部8の左奥側が持ち上がるため、作業者3の臀部の左側や左足3Aの大腿部は上方に持ち上げられて、この左足3Aの大腿四頭筋等への体重による負荷はほぼ無くなる。一方、座部8が右斜め前方向へ傾斜するため、この傾斜角度に応じた体重による負荷の分力が、作業者3の臀部の右側や右足3Bへかかり、作業者3は、右足3Bを少し曲げた状態で踏ん張って負荷を支える。このため、右足3Bの大腿四頭筋等へ傾斜角度に応じた体重による負荷の分力、つまり、体重より少ない荷重の負荷がかかる。
【0068】
また、座部8の左右方向の最大傾斜角度は、水平に対して約5度乃至約10度の範囲内であり、座部8の最大前傾角度は、水平に対して約10度乃至30度の範囲内に設定されているため、作業者3は腰を少し左側方向へ回すことによって、着座した状態を維持して正面の机4に容易に向かうことができ、事務作業を継続することができる。
【0069】
その後、図18に示すように、駆動モータ45の回転が継続されて、座部8が水平状態に戻った場合には(図15のCに相当する。)、作業者3の両足3A、3Bの大腿四頭筋等の下肢筋肉への体重による負荷は小さくなる。また、作業者3は、上半身を正面の机4に向けるため、腰を正面方向へ回す。
【0070】
そして、図20に示すように、駆動モータ45の回転が継続されて、座面傾動椅子1の座部8が、左斜め前方向へ傾斜した場合には(図15のDに相当する。)、座部8の右奥側が持ち上がるため、作業者3の臀部の右側や右足3Bの大腿部は上方に持ち上げられて、この右足3Bの大腿四頭筋等への体重による負荷はほぼ無くなる。一方、座部8が左斜め前方向へ傾斜するため、この傾斜角度に応じた体重による負荷の分力が、作業者3の臀部の左側や左足3Aへかかり、作業者3は、左足3Aを少し曲げた状態で踏ん張って負荷を支える。このため、左足3Aの大腿四頭筋等へ傾斜角度に応じた体重による負荷の分力、つまり、体重より少ない荷重の負荷がかかる。
【0071】
また、座部8の左右方向の最大傾斜角度は、水平に対して約5度乃至約10度の範囲内であり、座部8の最大前傾角度は、水平に対して約10度乃至30度の範囲内に設定されているため、作業者3は腰を少し右側方向へ回すことによって、着座した状態を維持して正面の机4に容易に向かうことができ、事務作業を継続することができる。
【0072】
その後、図18に示すように、駆動モータ45の回転が継続されて、座部8が水平状態に戻った場合には(図15のAに相当する。)、作業者3の両足3A、3Bの大腿四頭筋等の下肢筋肉への体重による負荷は小さくなる。また、作業者3は、上半身を正面の机4に向けるため、腰を正面方向へ回す。
【0073】
従って、作業者3は、座面傾動椅子1に着座した状態で、不図示の操作レバーを操作することによって、座部8の高さを適切な位置に変更後、電源スイッチ7をONにして座部8を傾動作動させる。これにより、作業者3は、正面の机4に向かって事務作業を継続しつつ、腰を少し左側方向へ回して右足3Bで体重より少ない荷重の負荷を支える動作と、腰を少し右側方向へ回して左足3Aで体重より少ない荷重の負荷を支える動作とを交互に行うことができる。つまり、作業者3は、ウォーキング時と同じように腰を回しながら、ウォーキング時よりも少ない負荷を左足3Aと右足3Bの大腿四頭筋等の下肢筋肉にかけてトレーニングを行うことができる。
【0074】
[左右の足にかかる負荷の一例]
ここで、作業者3の体重が80kgの場合に、(1)座面傾動椅子1に着座した場合、(2)着座して座面8を傾動作動させた場合、及び、(3)ウォーキングの場合のそれぞれにおける左足3A及び右足3Bにかかる負荷の一例について図21乃至図23に基づいて説明する。尚、左足3A及び右足3Bにかかる負荷は、それぞれの足を体重計に載せて計測した。
【0075】
図21に示すように、体重が80kgの作業者3が、座面傾動椅子1の水平状態、つまり、通常時の座部8に着座した場合には、左足3Aと右足3Bには、それぞれ7kgの負荷がかかっていた。尚、作業者3は、不図示の操作レバーを操作して、座部8の高さを適切な位置に合わせた。
【0076】
続いて、図22に示すように、作業者3が座部8に着座した状態で、電源スイッチ7をONにした場合には、左足3Aと右足3Bに、作業者3が歩く速さで交互に最大30kgの負荷がかかっていた。尚、座部8の最大前傾角度は20度で、最大左右方向き角度は7度になるように設定した。また、座部8が水平状態から左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に傾斜して水平状態に戻る一定周期が、作業者3が歩行する際に、ほぼ2歩進む周期になるように駆動モータ45の回転速度を設定した。
【0077】
また、図23に示すように、ウォーキング時には、作業者3の左足3Aと右足3Bに、作業者3が歩く速さで交互に最大80kgの負荷がかかっていた。
従って、座部8の最大前傾角度が20度で、最大左右方向き角度が7度になるように設定した場合には、作業者3は、ウォーキング時と同じように腰を回しながら、ウォーキング時の約3/8の負荷を左足3Aと右足3Bの大腿四頭筋等の下肢筋肉にかけてトレーニングを行うことができた。
【0078】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に座面傾動椅子1では、電源スイッチ7をONにして、傾動ユニット11の駆動モータ45を回転駆動することによって、座部8が周期的に水平状態から左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に所定傾斜角度だけ傾斜する。このため、着座した作業者3は、体重よりも少ない所定負荷が周期的に左足3Aと右足3Bに交互にかかると同時に、腰を歩くように回すため、着座状態での事務作業を実行しつつ、ウォーキングに準じた下肢筋力の適度なトレーニングを行うことが可能となる。
【0079】
また、座面傾動椅子1の脚部9と座部8との間に傾動ユニット11を取り付けることによって、座面傾動椅子1を簡易に製造できるようにすると共に生産コストを下げることができる。
【0080】
また、制御ボックス6に収納された制御回路基板を介して駆動モータ45を駆動制御することによって、座部取付部材17に取り付けられた座部8を、作業者3の歩行速度に合わせて左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に所定傾斜角度だけ傾斜させることができる。また、制御ボックス6に収納された制御回路基板を介して駆動モータ45を所定回転速度で回転駆動することによって、座部8を水平状態及び所定傾斜角度だけ傾斜した状態で一時停止させることなく、連続して水平状態から左斜め前方向と右斜め前方向へ交互に所定傾斜角度だけ所定周期で傾動させることができる。
【0081】
これにより、ユーザは座部8に着座した状態で、電源スイッチ7をONにして傾動ユニット11を作動させることによって、着座状態を継続しつつ、ユーザのウォーキング状態に近い状態で、体重よりも少ない所定負荷を周期的に左足と右足に交互にかけることができ、ウォーキングに準じた下肢筋力の適度なトレーニングを行うことが可能となる。
【0082】
また、座部8は前側方向へ水平に対して10度から30度の範囲内で傾き、左側方向又は右側方向へ水平に対して5度から10度の範囲内で傾くように各上下リンクバー35及び揺動リンクバー65の取り付け構成を設定する。これにより、作業者3は座面傾動椅子1に着座した状態で、電源スイッチ7をONにすることによって、事務作業を継続しつつ、ウォーキングに準じた下肢筋力のトレーニングを行うことができる。
【0083】
更に、座部取付部材17は、揺動フレーム部材21の前側上端縁部に対して、各ベアリング26を介して、左右方向の回転軸線29回りに揺動自在に取り付けられる。つまり、座部取付部材17を揺動フレーム部材21の前側上端縁部に設けられた回転軸線29回りに上方向へ傾動するように取り付けることによって、傾動ユニット11の薄型化を図りつつ、座部8の傾斜角度を容易に大きくすることが可能となる。
【0084】
また、第2回転軸52と駆動モータ45とは、脚支柱部材13を挟んで相互に対向するように配置されているため、傾動ユニット11の更なる薄型化を図り、この傾動ユニット11を座部8と脚部9との間に容易に配置することが可能となる。
【0085】
また、駆動モータ45のモータ軸46に軸継手43で連結されたウォーム軸39から第1回転軸31にウォームギヤ36を介して回転駆動力を伝達するため、減速比を大きくして、座部8の傾斜周期を適度な歩行速度になるように容易に設定することができる。また、駆動モータ45をウォーム軸39と同軸線上に配置することができ、傾動ユニット11の更なる薄型化を図ることができる。
【0086】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0087】
(A)例えば、駆動モータ45及びウォームギヤ36と第2回転軸52及びかさ歯車55等の左右方向の配置位置を入れ替えてもよい。
(B)また例えば、制御ボックス6や傾動ユニット11の側面部等に駆動モータ45の回転速度を変更設定する速度設定ボタンを設け、作業者3は、この速度設定ボタンを操作して駆動モータ45の回転速度を変更し、座部8の傾斜動作の周期を変更できるように構成してもよい。
【0088】
(C)また例えば、座部8が左斜め前方向又は右斜め前方向へ最大傾斜角度で傾斜した時に、制御ボックス6に収納された制御回路基板を介して駆動モータ45を所定時間(例えば、約3秒間〜約5秒間である。)だけ一時停止させるように駆動制御するようにしてもよい。これにより、作業者3は座面傾動椅子1に着座した状態で、電源スイッチ7をONにすることによって、座部8が左斜め前方向又は右斜め前方向へ最大傾斜角度で傾斜する毎に、体重よりも少ない所定負荷を左足と右足に交互に所定時間連続してかけることが可能となる。従って、作業者3は左足と右足のそれぞれの下肢筋肉にかかる負荷を増加させて、ウォーキングに更に近い下肢筋力のトレーニングを行うことが可能となる。
【0089】
(D)また例えば、制御ボックス6を座部8の下面部、傾動ユニット11の上面部、側面部や下面部等に配置し、又は、傾動ユニット11の揺動フレーム部材21の内部に収納するようにしてもよい。また、電源スイッチ7を傾動ユニット11の側面部や下面部等に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 座面傾動椅子
8、73 座部
9、74 脚部
11 傾動ユニット
13、75 脚支柱部材
15 固定フレーム部材
16 固定ブラケット
17 座部取付部材
21 揺動フレーム部材
31 第1回転軸
35 上下リンクバー
36 ウォームギヤ
39 ウォーム軸
43 軸継手
45 駆動モータ
46 モータ軸
48、55 かさ歯車
52 第2回転軸
65 揺動リンクバー
71 前傾評価結果テーブル
72 椅子
77 左右傾き評価結果テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と、
ユーザが着座する座部と、
前記座部と前記脚部との間に設けられて該座部の中央部よりも鉛直方向に対して垂直な第1方向の第1側に配置された該鉛直方向に対して垂直且つ前記第1方向に対して直交する第2方向の回転軸線回りに当該座部を基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜させると同時に、当該座部を前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第1側に対して相対向する該第2方向の第2側へ下がるように傾斜させる傾動ユニットと、
前記座部が所定周期で基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側へ下がるように傾斜した後、基本位置に戻って、再び前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した後、再度基本位置に戻るように前記傾動ユニットを駆動制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする座面傾動椅子。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定周期において、前記座部が基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜するまでの時間と、該座部が前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態から前記基本位置に戻るまでの時間とはほぼ同じ時間であり、且つ、該座部が前記基本位置に戻った状態及び前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で一時停止することなく連続して傾動するように前記傾動ユニットを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の座面傾動椅子。
【請求項3】
前記制御手段は、前記所定周期において、前記座部が基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜するまでの時間と、該座部が前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態から前記基本位置に戻るまでの時間とはほぼ同じ時間であり、且つ、該座部が前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜するとともに前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した状態で所定時間一時停止し、更に、該座部が前記基本位置に戻った状態で一時停止することなく連続して傾動するように前記傾動ユニットを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の座面傾動椅子。
【請求項4】
前記座部が基本位置から前記第1方向の第1側へ下がるように傾斜すると同時に前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ下がるように傾斜した時における該座部の該第1方向の第1側への傾斜角度は、水平に対して10度から30度の範囲であり、該座部の該第2方向の第1側又は該第2方向の第2側への傾斜角度は、水平に対して5度から10度の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の座面傾動椅子。
【請求項5】
前記傾動ユニットは、
前記脚部に固設される固定フレーム部材と、
前記固定フレーム部材に対して前記第1方向の回転軸線回りに揺動自在に取り付けられた揺動フレーム部材と、
前記揺動フレーム部材の上側に配置されると共に前記第1方向の第1側端縁部が該揺動フレーム部材に対して前記第2方向の回転軸線回りに揺動自在に取り付けられて、前記座部が上側に取り付けられる座部取付部材と、
前記揺動フレーム部材を前記第1方向の回転軸線回りに前記基本位置から前記第2方向の第1側又は前記第2方向の第2側へ傾動させると共に、前記座部取付部材を前記第2方向の回転軸線回りに該基本位置から上方向へ傾動させる傾動手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記傾動手段を駆動制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の座面傾動椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−156052(P2011−156052A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18720(P2010−18720)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】