説明

廃ガラスを用いた建材ガラスパネル製造方法及び建材ガラスパネル

【課題】薄型のテレビジョン受像装置の製造時に生じる廃ガラスを製品としてリサイクルする際に膨大なエネルギーを要する点、及び形状や印刷の有無で異なる廃ガラスを品質を保ちながら意匠性に優れたリサイクル製品にできない点、を解消する。
【解決手段】建材ガラスパネル1は、ケイ酸及びアルミナを成分とする熱膨張率が37.6以下で、成形温度が約1300℃以上かつ溶融温度が約1600℃以上の特性を有する廃ガラスを用い、廃棄される工程毎に廃ガラスを分別し、分別種類毎に層(上層1A、下層1B、中層1C)をなして複数積層してパネル状とし、軟化温度以上で成形温度以下にて30〜90分間加熱して一体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型のテレビジョン受像装置の製造時に生じる廃ガラスを、エネルギーや設備に多大なコストをかけることなくリサイクルして製品とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献1には、ガラスの原料に利用可能な良質のガラスカレットを取り出すガラス製品のリサイクル方法及びその装置に関して提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−260566号公報
【0004】
特許文献1によれば、溶融炉にカレットを投入し、700〜1000℃、好ましくは800〜900℃のガラス軟化温度の高温ガスにより1〜8分間加熱処理することで、ガラスが軟化する前に有機化合物又は高分子化合物が加熱分解し、これら化合物が除去されたガラスカレットを得ることが記載されている。
【0005】
一方、昨今の我が国の薄型のテレビジョン受像装置に関する技術は世界的に優位な地位を占めており、それまでのいわゆるブラウン管型のテレビジョン受像装置に代えて需要も多くなってきている。
【0006】
こうした背景にあって、上記薄型のテレビジョン受像装置に用いられる様々なパーツも当然に需要が多くなり、これに伴って製造時の廃材もまた多く生じることとなる。そこで近年では、廃材をリサイクル利用することが盛んに行われている。
【0007】
例えば、薄型のテレビジョン受像装置に用いられるガラス材料は、ガラス瓶や窓ガラスなどに用いられるガラスと比べて、物性も特異であり、また、高機能かつ高品質である。
【0008】
つまり、薄型のテレビジョン受像装置に用いられるガラス材料は、物性が特異であることから、特許文献1のように700〜1000℃のガラス軟化温度の高温ガスにより1〜8分間加熱処理しただけでは、有機化合物又は高分子化合物が加熱分解により除去されたガラス「カレット」を得ることができるとしても、リサイクルした「製品」にまで製造することができないという問題がある。
【0009】
すなわち、特許文献1は、廃ガラスから良質のガラス材料(ガラスカレット)を得るまでの、いわばリサイクルにおける中間工程に過ぎず、良質のガラスカレットから何らかの製品に製造するには別途の工程を要するという手間が生じる。
【0010】
また、リサイクルの製品を製造する別途の工程においても、薄型のテレビジョン受像装置からの廃ガラスの物性が特異であることから、単純に溶かして再成型する(ヒュージング)には1000℃を越える高温を要するので、膨大なエネルギーが必要となる。
【0011】
換言すれば、薄型のテレビジョン受像装置からの廃ガラスは、現状、特許文献1により良質なガラスカレットを得ることができても、何らかの製品とするには、上記のとおり1000℃を越える温度を得るために要するエネルギーが多大にかかるため、よって仮に製品としても非常に高価なものとなり、未だ、有用な利用方法が確立していないという状況なのである。
【0012】
さらに、薄型のテレビジョン受像装置からの廃ガラスは、ガラスの余剰分を切断した廃ガラスや、回路及び基板の印刷前後で不要とされた廃ガラスなど、廃棄される工程毎に様々な種類のものがあるが、これらは形状や印刷の有無が異なっているため、分別せずに用いれば高品質で意匠性に優れたリサイクル製品を得ることはできないという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする問題点は、薄型のテレビジョン受像装置の製造時に生じる廃ガラスを再生したリサイクル製品を製造するにはエネルギーを要する点、形状や印刷の有無の異なる廃ガラスを品質を保ちながら意匠性に優れた製品とすることができない点、である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ケイ酸及びアルミナを成分とする熱膨張率が37.6以下で、成形温度が約1300℃以上かつ溶融温度が約1600℃以上の特性を有する廃ガラスを用い、廃棄される工程毎に廃ガラスを分別し、分別種類毎に層をなして複数積層してパネル状とし、廃ガラスの軟化温度以上で成形温度以下にて30〜90分間加熱して一体とすることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特に約1300℃以上かつ溶融温度が約1600℃以上の特性を有する廃ガラスを、前記溶融又は成型温度とすることなく、つまり省エネルギーにて耐熱硬質で高品質な建材ガラスパネルとして再生できることに利点がある。
【0016】
また、製造された建材ガラスパネルは、元々の廃ガラス個々の大きさや形状が活かされて意匠性に優れ、かつ廃ガラスの特異な物性により熱や衝撃に強い高品質な建材ガラスパネルを安価に提供できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の方法により製造された本発明の建材ガラスパネルを示す図で、(a)は上層を上に向けた斜視図、(b)は厚み方向から視た図、(c)は下層を上に向けた斜視図、である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、薄型のテレビジョン受像装置の製造時に生じる特異物性を有する廃ガラスを製品としてリサイクルする際にエネルギーや設備に多大なコストがかかるという問題点を、廃棄される工程毎に廃ガラスを分別し、分別種類毎に層をなして複数積層してパネル状とし、廃ガラスの軟化温度以上で成形温度以下にて30〜90分間加熱して一体とすることにより解消した。
【実施例1】
【0019】
本発明の建材ガラスパネルは、次の構成とされる。建材ガラスパネル1は、例えば薄型のテレビジョン受像装置のディスプレイパネルに用いるガラスの余剰分を切断した廃ガラスや、回路及び基板の印刷前後で不要とされた廃ガラスでなる。なお、本発明で用いられる廃ガラスの物性については後述する。
【0020】
図1に示す建材ガラスパネル1は、例えば回路及び基板の印刷後で不要とされた廃ガラスのうち印刷が無くかつ短冊状のものを上層1Aに、印刷が有ってかつ短冊状ではないものを下層1Bに、例えば回路及び基板の印刷前の切断した廃ガラスの破砕粒を中層1Cに、各々層状として積層している。
【0021】
積層は、建材用の例えばタイルの通常(規定)寸法とされた型枠内で、下層1B、中層1C、上層1A、の順に行われる。この後、例えば本例の後記表1に示されるような廃ガラスであれば、炉内で1020℃程度で60分間加熱して一体として建材ガラスパネル1を得る。なお、前記1020℃は、本例においては、軟化温度970℃以上で成形温度1300℃以下の温度の範囲内、しかも1000℃を若干越えた程度の温度である。
【0022】
建材ガラスパネル1は、上記手順を経ることで、破砕、切断時のエッジ部分が丸くなるから手指を切ったりする怪我のおそれがなくなると共に、各廃ガラスの最表面のみが軟化して、各工程毎に分別した廃ガラスの独特の形状を活かしながら互いに一体となる。
【0023】
軟化温度より低い温度であると、上記エッジ部分を丸くすることと各層の一体化が困難となる。また、成形温度より高い温度とすると、後述のとおり多大な加熱エネルギーを要することとなりコストが高くなるほか、本例(1020℃以上)では敢えて印刷部分を残す下層1Bにおいて、該印刷が焼けて見映えが悪くなるといった不具合が生じる。
【0024】
また、加熱時間を30分より短くすると、上記エッジ部分を丸くすることと各層の一体化が困難となる。また、加熱時間を90分より長くすると、各層の廃ガラス固有の形状や大きさを活かした意匠とすることができなくなる。
【0025】
さらに、上層1A、下層1B、中層1C、の各廃ガラスを、各層において混在させると、各層における、水平方向(平面)と垂直方向(厚み)の一体化が弱くなり、強固に一体化しようとすると、例えば高温を要したり、軟化温度以上で成形温度以下であっても長時間の加熱を要する場合があると共に、意匠性を損なう可能性もある。
【0026】
また、図1では、印刷のある形状不定の廃ガラスと印刷のない形状不定の廃ガラスを下層1Bとし、上層1Aに印刷のない形状のまとまった短冊状の廃ガラスを配置し、また、中層1Cに破砕粒の廃ガラスを配置している。
【0027】
したがって、建材として使用した際に目に付く下層1Bと上層1Aではそれら廃ガラスの見た目の形状や配置が独特のアクセントとなり、中層1Cでは上層1A及び下層1Bの透光性を維持しつつ全体を強固に固定するから、高強度、高品質を保った意匠性に富む建材ガラスパネル1を得ることとなる。
【0028】
ここで、薄型のテレビジョン受像装置のディスプレイパネルの物性について説明する。前記ディスプレイパネルは、液晶や希ガスの材料を汚染するだけではなく、電気特性に悪影響を及ぼしてしまうので、通常のガラスと異なりアルカリ成分を含むことが許されず、また、極めて薄くてもたわみが許されず、さらに、回路基板等の精密印刷加工のために高熱を加えても伸びたり縮んだりして形が変化しないといった条件が求められる。
【0029】
上記条件を満たすには、少なくとも、ケイ酸及びアルミナを成分とする熱膨張率が37.6以下で、成形温度が約1300℃以上かつ溶融温度が約1600℃以上の特性を有する耐熱かつ硬質なガラスが用いることが必須となる。具体的には、例えば次の表1に示すような特性の廃ガラスが用いられる。
【0030】
【表1】

【0031】
こうしたディスプレイパネル製造時に排出される廃ガラスもまた当然ながら、上記の物性を有するのであるが、これを全て溶融すべく破砕(カレット化)し、溶融し、再度ディスプレイパネル用のガラス材料としたり、別の耐熱硬質のガラス製品にリサイクルしようとすると、成形温度が1300℃、溶融温度が1600℃で、成形しようにも溶融しようにも1000℃を大きく越えるので極めて大きなエネルギーを要する。
【0032】
一般には、1000℃までの温度を得ることは、さほど困難ではないと言われているが、1000℃を大きく越える温度を得ようとすると、一般的な(例えばいわゆるソーダガラスなど)ガラスを溶融したり成型する際に要するエネルギーより、別途多大なエネルギーを要すると言われている。
【0033】
ここで、1000℃を越える点で、例えば溶融温度まで加熱するとなると、高品質なガラス材料を別途で(材料として)購入するより遙かに高いコストを投じなければならず、リサイクル製品としては成り立たない。すなわち加熱に要するエネルギーコストを、高品質なガラス材料を別途で購入するより低く抑えることができて初めてリサイクル製品として成り立つのである。
【0034】
そこで、この元々高品質で耐熱硬質の廃ガラスを、その工程時に生じた形状を活かしつつ製品化したのが本発明の建材ガラスパネル1であり、こうすることで、廃ガラスを溶融するために常時(全て)破砕などする手間が大幅に省かれ、また、リサイクル製品とするために成型、溶融に要する多大なエネルギーも場合によっては特別な設備も不要となり、結果として、安価かつ高品質で意匠性に優れた建材ガラスパネル1を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の方法は、ケイ酸及びアルミナを成分とする熱膨張率が37.6以下で、成形温度が約1300℃以上かつ溶融温度が約1600℃以上の特性を有する特殊なガラスを用いる他の製品の製造工程で生じる廃ガラスをリサイクルするための用途としても適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 建材ガラスパネル
1A 上層
1B 下層
1C 中層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸及びアルミナを成分とする熱膨張率が37.6以下で、成形温度が約1300℃以上かつ溶融温度が約1600℃以上の特性を有する廃ガラスを用い、廃棄される工程毎に廃ガラスを分別し、分別種類毎に層をなして複数積層してパネル状とし、廃ガラスの軟化温度以上で成形温度以下にて30〜90分間加熱して一体とすることを特徴とする廃ガラスを用いた建材ガラスパネル製造方法。
【請求項2】
請求項1の方法によって製造されることを特徴とする建材ガラスパネル。

【図1】
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