説明

廃タイヤを原料とした電磁波シールド材料及びその製造方法

【課題】 廃タイヤを有効に再利用するとともに、電磁波吸収性能に加えて電磁波シールド性能の高い電磁波シールド材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に金属皮膜が形成されてなる電磁波シールド材料である。また、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を無電界メッキ液に浸漬させて、前記ゴム炭化微粉末の表面に金属被膜を形成する金属皮膜形成工程を有する電磁波シールド材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材料及びその製造方法に関する。具体的には、廃タイヤを原料とした電磁波シールド材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の急速な発展に伴い、各種電子機器の誤作動の防止や各種電子機器からの電磁波の遮蔽を目的として、各種の電磁波シールド材料が提案されている。電磁波シールド材料としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、カーボン繊維、金属フレーク、金属繊維等の導電性材料が混入された樹脂材料等が挙げられる。
【0003】
また、近年、自動車の普及に伴い廃タイヤが増加の一途をたどっており、この処理対策が自動車タイヤ業界の課題となっている。従来の処理方法としては、セメント製造工場などにおける燃料としての焼却処理、粉砕して建設や土木の分野におけるビル用スラブ遮音材、歩道クッションマット等の再資源化処理等が挙げられている。しかしながら、焼却処理は、焼却の際に排出される排煙の処理が必要であるため高コストであった。また、再資源化処理は、遮音材、クッション材等が主であり、単にタイヤの有する弾性を利用した再資源化処理しか行われていなかった。
【0004】
最近では、(特許文献1)に示すような廃タイヤを利用した電磁波シールド材料が考案されている。具体的には、廃タイヤ材を加工処理して得られたゴム細片と導電性繊維とバインダーとを主体とする多孔質体を備えた電波吸収体が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−223492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような電波吸収体は、従来の電磁波シールド材料と同様に導電性材料を混入することで電磁波吸収を行うものであった。すなわち、ゴム細片自体の電磁波吸収性能は不十分なものであって、電磁波シールド材料の成形材料として用いるものに過ぎなかった。
【0007】
そこで、本願発明は上述のような課題を解決するため、廃タイヤを有効に再利用するとともに、電磁波吸収性能及び電磁波シールド性能の高い電磁波シールド材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電磁波シールド材料は、請求項1として、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に金属皮膜が形成されてなることを特徴とする。
また、請求項2として、請求項1記載の電磁波シールド材料において、金属皮膜がニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−ボロン、及びニッケル−コバルト−リンから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に金属皮膜が形成されているので、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末自体に電磁波シールド性能が賦与される。そして、金属皮膜として電磁波シールド性能を向上させるのに適当な材料が選択される。
【0010】
また、本発明の電磁波シールド材料の製造方法は、請求項3として、廃タイヤ由来の微
粉末を炭化して得られたゴム炭化微粉末を無電解めっき液に浸漬させて、前記ゴム炭化微粉末の表面に金属被膜を形成する金属皮膜形成工程を有することを特徴とする。
【0011】
上記手段によれば、廃タイヤ由来の微粉末を炭化して得られたゴム炭化微粉末の表面に無電解めっき処理により金属皮膜が形成され、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末自体に電磁波シールド性能を賦与することができる。
【0012】
また、請求項4として、請求項3記載の電磁波シールド材料の製造方法において、金属皮膜形成工程の前に、前処理工程として前処理として感受性化処理及び触媒化処理工程をおこなうセンシタイザー−アクチベータ処理工程を有することを特徴とする。
【0013】
上記手段によれば、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に無電解めっき処理を行う際の金属の析出すなわち金属皮膜の形成が促進される。
【0014】
また、請求項5として、請求項3又は4記載の電磁波シールド材料の製造方法において、金属皮膜形成工程の前に、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面上の油分や汚れを取り除く脱脂処理工程を有することを特徴とする。
【0015】
上記手段によれば、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に付着した油分や汚れが取り除かれるので、後の触媒化処理工程、金属皮膜形成工程において金属皮膜を均一に形成することが可能となる。
【0016】
また、請求項6として、請求項3〜5のいずれか記載の電磁波シールド材料の製造方法において、金属皮膜がニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−ボロン、及びニッケル−コバルト−リンから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする。
【0017】
上記手段によれば、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に形成する金属皮膜として、電磁波シールド性能を向上させるのに適当な材料が選択される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電磁波シールド材料およびその製造方法によれば、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末自体に電磁波シールド性能が賦与されるので、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の有する電磁波吸収性能と金属被膜による電磁波シールド性能とが相まって優れた電磁波シールド材料が得られる。また、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の有する軽量等の特性を生かした電磁波シールド材料が得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド材料は、廃タイヤのゴム片を微粉化して得られた廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に金属皮膜が形成されたことを特徴とする。以下、本発明の電磁波シールド材料の製造方法について説明する。
【0020】
まず、本発明の電磁波シールド材料の原料となる廃タイヤから廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を得る方法について述べる。廃タイヤから廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を得るには、例えば、以下のような方法により行う。
【0021】
まず、ビード除去工程において、廃タイヤのリム部からビードワイヤをビードワイヤ抜取機により除去する。続いて、切断機を用いてビード除去後の廃タイヤを切断工程において所定の大きさに切断して複数のゴム断片とする。そして、分離破砕工程においては、分離破砕機を用いてゴム断片からワイヤを分離した後、粉砕を行ってゴム片を得る。さらに
、粉砕工程において、粉砕機を用いて分離されたゴム片をさらに微粉化して廃タイヤ由来のゴム微粉末を得る。そして、粉砕工程により得られた廃タイヤ由来のゴム微粉末を、炭化処理工程において炭化処理することで廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を得る。
【0022】
炭化処理工程における炭化温度は400〜1000℃が好ましく、500〜800℃が特に好ましい。温度が低い場合には、十分に炭化が行われず高い電磁波吸収性能が得られない場合がある。廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の平均粒径は、通常10〜500μmであり、好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜200μmである。また、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の形状は、特に限定されるものではないが、球状のものが好適に用いられる。
【0023】
続いて、上記工程により得られた廃タイヤ由来のゴム微粉末の表面に金属皮膜を施す方法について説明する。金属皮膜を形成する方法としては、例えば、無電解めっき処理が挙げられ、具体的には、廃タイヤ由来のゴム微粉末に対して脱脂処理工程、感受性化処理工程、触媒化処理工程等の前処理工程を行った後に、所定のめっき浴で処理する方法が挙げられる。なお、金属皮膜を形成するめっき処理としては、膜厚が均一で、耐食性に優れた金属皮膜が得られるので無電解めっきを用いることが好ましく、以下無電解金属めっきの方法について述べる。
【0024】
脱脂処理工程は、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に付着した油分や汚れ等を除去するための工程である。脱脂処理工程に用いる脱脂剤としては、アルカリ性脱脂剤(ノンシリケート系、シリケート系等)、酸性脱脂剤(フッ素系、ノンフッ素系等)、溶剤系脱脂剤(パラフィン系、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール類、ハロゲン系溶媒、界面活性剤分散水溶液等)が挙げられ、アルカリ性脱脂剤が特に好ましく用いられる。
【0025】
次に、脱脂処理後、水洗した後にセンシタイザー−アクチベータ処理工程では、まず、感受性化処理(センシタイジング)工程に移る。感受性化処理では、例えば、脱脂処理後のゴム炭化微粉末の表面に2価の錫イオンを吸着させる。具体的には、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)を塩酸や硫酸などの酸溶液に溶解させて得られるセンシタイザー溶液中にゴム炭化微粉末を浸漬させて処理を行う。なお、センシタイザー溶液としては、2価の錫イオン濃度が0.1〜10.0重量%となるように塩酸に溶解させたものが好適に用いられる。また、塩酸としては濃度0.1〜5.0mol/lのものが好ましく用いられる。ゴム炭化微粉末の浸漬条件としては、温度10〜60℃で10秒〜5分、好ましくは30秒〜2分間浸漬することが好適である。
【0026】
続いて、感受性化処理後、水洗した後に触媒化処理(アクチベーション)工程に進む。触媒化処理工程では、無電解めっき反応を開始させるための触媒核をゴム炭化微粉末の表面に付与するために、パラジウム、金、銀等の貴金属塩を含むアクチベータ溶液にゴム炭化微粉末を浸漬させる。例えば、パラジウムの貴金属触媒核を付与する場合には、アクチベータとして塩化パラジウム水溶液を用いて行う。塩化パラジウム水溶液としては、濃度が0.0025〜2.5重量%となるように塩酸に溶解させたものが好適に用いられる。また、塩酸としては濃度0.1〜5.0mol/lのものが好ましく用いられる。また、ゴム炭化微粉末の浸漬条件としては、温度10〜60℃で10秒〜5分、好ましくは30秒〜2分間浸漬することが好適である。
なお、上記工程では、センシタイザー−アクチベータ処理工程について説明したが、キャタライザー−アクセラレ−タ処理工程等により前処理工程を行うことも可能である。具体的には、錫イオンとパラジウムイオンとを含むパラジウムコロイド液の中にゴム炭化微粉末を浸漬させて行う。
【0027】
そして、上記各工程により前処理を行った後に、金属皮膜形成工程に進む。金属皮膜形
成工程では、無電解めっき浴に廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を浸漬させて、表面に金属皮膜が形成されたゴム炭化微粉末を得る。通常、無電解めっき浴は、目的とする金属皮膜を得るための前駆体と、前駆体をゴム炭化微粉末上に金属として析出させる還元剤とを含む。なお、前駆体と還元剤とはそれぞれ別の二液にして、例えば、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を浸漬させた前駆体含有溶液中に、還元剤を含有する溶液を添加してめっきを行うことが可能である。二液に分けてめっきを行うことで析出速度をコントロールすることができ、母材であるゴム炭化微粉末の構造を破壊することなくめっきを行うことが可能となる。また、目的とする金属皮膜の性状や無電解めっき浴の安定性等に応じてpH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤、改質剤をさらに加えることも可能である。
【0028】
前駆体としては、目的とする金属皮膜に応じて種々の金属塩から適宜選択することができる。目的とする金属皮膜としては、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−ボロン、ニッケル−コバルト−リン、銅、コバルト、金、銀等が挙げられるが、ニッケルが電磁波シールド性能及びコストの観点から好適に用いられる。例えば、ニッケルからなる金属皮膜を形成する場合は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等のニッケル塩を使用すれば良い。また、ニッケル−リンからなる複合金属皮膜を形成する場合には、次亜リン酸ニッケル等のニッケル塩を用いればよい。また、ニッケル−ボロンからなる複合金属被膜を形成する場合には、例えば、硫酸ニッケルとジメチルアミンボランを使用することができる。また、ニッケル−コバルト−リンからなる複合金属被膜を形成する場合には、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、次亜リン酸ナトリウム等を用いればよい。
【0029】
還元剤としては、例えば次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができる。前駆体として、ニッケルの金属塩を用いる場合には、次亜リン酸塩、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン等が好ましく用いらられる。
【0030】
ニッケルめっきを施す場合は、例えば、次亜リン酸ナトリウム及びジメチルアミンボランの少なくとも1種のほか、水、硫酸ニッケル、グリシンを含む浴組成とすることが好ましい。また、これらの物質以外にもリンゴ酸及びポリエチレングリコールを加えることが可能である。これらの成分の割合、濃度等は、所望の金属被膜の性状等に応じて適宜決定することが可能である。例えば、金属皮膜の膜厚を増加させる場合には、無電解めっき浴中の各成分の濃度を高くすれば良い。
【0031】
また、無電解めっき処理の操作条件も、公知の無電解めっき処理に従って適宜設定することができる。無電解めっき処理の処理量は、用いる廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の性状、無電解めっき浴の組成等に応じて適宜決定することができる。無電解めっき浴の液温も限定されないが、一般的には40〜100℃、好ましくは50〜90℃とすれば良い。また、めっきの進行に応じてめっき浴の液温を上昇させることもできる。液温を変えることで金属の析出速度コントロールすることができ母材であるゴム炭化微粉末の構造を破壊することなくめっきを行うことが可能となる。また、無電解めっき浴のpHは、1〜10程度、特に3〜10程度、さらに好ましくは6〜10程度とすることが望ましい。pHを上記範囲内に設定することによって、原料である廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の粒子性状をより確実に維持しながらめっき処理することが可能となる。無電解めっき浴による処理時間は、そのめっき浴の組成、液温、pH、処理量等に応じて適宜変更される。
【0032】
上記で述べた製造方法により得られた廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末は、炭化されたゴム微粉末の表面に金属皮膜が形成されており電磁波シールド性能が高いため、電磁波シールド材料として用いられる。そして、特に廃タイヤを原料としているため炭化されたゴム炭化微粉末は細孔やディンプルを多く有しており、電磁波吸収性能の向上に寄与する。また、原料として廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末を用いているため、軽量、高弾性率といっ
た性質を兼ね備えた電磁波シールド材料が得られる。本発明の電磁波シールド材料は、樹脂などの各種成型品を製造する際に含有させることも可能であるし、塗料等に含有させて電磁波シールド塗料として用いることも可能である。また、本発明の電磁波シールド材料は、原料として廃タイヤを利用しており、廃タイヤのマテリアルリサイクルの新たな用途として有効なものである。
【実施例】
【0033】
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
・めっき処理
めっきを行う微粉末として粒径40μm以下の廃タイヤゴムの微粉末を用意した。そして、表面清浄処理工程として、廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末をアルカリ性脱脂剤(商品名エースクリーンA−220、奥野製薬工業株式会社)の40g/l水溶液に50℃の条件下で1分間浸漬して表面清浄を行った。そして、濾過を行った後に表面清浄処理されたゴム炭化微粉末を得た。
【0034】
次に、感受性処理において、表面清浄処理済されたゴム炭化微粉末を、塩化スズ(II)水溶液500ml中に投入し、25℃の条件下で3分間浸漬して感受性化処理を行った。塩化スズ(II)水溶液は、塩酸に塩化スズ(II)を溶解することで得た。
【0035】
続いて、触媒化処理工程において、感応性賦与されたゴム炭化微粉末を、塩化パラジウム水溶液500ml中に投入し、25℃の条件下で3分間浸漬し、触媒化処理を行った。なお、塩化パラジウム水溶液は、塩酸に塩化パラジウムを溶解することで得た。
【0036】
そして、めっき工程において、触媒化処理されたゴム炭化微粉末を、めっき浴中に投入し、90℃の条件下で30分間無電解金属めっき処理を行った。無電解めっきを行うためのめっき浴として下記に示す組成のめっき液(ニコロンBL、奥野製薬工業株式会社)を用いた。具体的には、前駆体を含む液1中にゴム炭化微粉末を浸漬させた後に、還元剤を含む液2を加えて、無電解金属めっき処理を行った。
【0037】
・めっき浴組成
(液1)
硫酸ニッケル(NiSO・6HO) 34%
錯化剤 2%
イオン交換水(HO) 64%
(液2)
次亜リン酸ナトリウム(NaHPO・HO) 20%
錯化剤 28%
イオン交換水(HO) 52%
【0038】
(実施例2)
めっき浴として、下記に示す組成のめっき液(ニコロンTOM、奥野製薬工業株式会社)を用いて、90℃の条件下で5分間無電解金属めっき処理を行った以外は(実施例1)と同様に行った。
【0039】
・めっき浴組成
硫酸ニッケル(NiSO・6HO) 13%
次亜リン酸ナトリウム(NaHPO・HO) 13%
錯化剤 13.3%
イオン交換水(HO) 60.7%
【0040】
・測定
得られためっき済のゴム炭化微粉末の粒子形態を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。(実施例1)及び(実施例2)で得られたゴム炭化微粉末のSEM写真を図1及び図2に示す。また、参考例としてめっき前のゴム炭化微粉末の粒子形態を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図3に示す。なお、図1〜3は、それぞれ倍率250倍における走査電子顕微鏡写真である。
【0041】
(実施例1)及び(実施例2)に示すように、上記各工程によりゴム炭化微粉末に対して、ニッケルめっきが施されたことが分かる。特に、(実施例1)においては、ゴム炭化微粉末に対してニッケルめっきがきれいに行われていることがわかる。(実施例1)でニッケルめっきがきれいに行われたのは、2液式を用いてニッケルの析出反応を徐々に行ったためと考えられる。一方、(実施例2)では、めっきにより母材となる廃タイヤ炭化微粉末の構造の一部が壊されていることがわかる。(実施例2)ではより温和な条件で析出反応を進行させることでニッケルめっきをきれいに行うことが可能と推察される。
【0042】
本発明は、(実施例)からもゴム炭化微粉末に対して、ニッケルめっきが施されているので、ゴム炭化微粉末の有する電磁波吸収性能に加えて電磁波シールド性能が付与されて、優れた電磁波シールド材料として用いることができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(実施例1)で得られたニッケルめっき済の廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の250倍の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図2】(実施例2)で得られたニッケルめっき済の廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の250倍の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図3】めっき前の廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の250倍の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤ由来のゴム炭化微粉末の表面に金属皮膜が形成されてなる電磁波シールド材料。
【請求項2】
請求項1記載の電磁波シールド材料において、金属皮膜がニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−ボロン、及びニッケル−コバルト−リンから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする電磁波シールド材料。
【請求項3】
廃タイヤ由来の微粉末を炭化して得られたゴム炭化微粉末を無電解メッキ液に浸漬させて、前記ゴム炭化微粉末の表面に金属被膜を形成する金属皮膜形成工程を有する電磁波シールド材料の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の電磁波シールド材料の製造方法において、金属皮膜形成工程の前に、前処理として感受性化処理及び触媒化処理工程をおこなうセンシタイザー−アクチベータ処理工程を有することを特徴とする電磁波シールド材料の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の電磁波シールド材料の製造方法において、金属皮膜形成工程の前に、ゴム炭化微粉末の表面上の油分や汚れを取り除く脱脂処理工程を有することを特徴とする電磁波シールド材料の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか記載の電磁波シールド材料の製造方法において、金属皮膜がニッケル、銅、ニッケル−リン、ニッケル−ボロン、及びニッケル−コバルト−リンから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする電磁波シールド材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−103679(P2007−103679A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291786(P2005−291786)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(592001056)札幌エレクトロプレイティング工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】