説明

廃棄塗料の処理方法

【課題】使用後に残った水性塗料、油性塗料などの液状廃棄塗料を簡便に処理する事ができる処理方法を提供する。
【解決手段】廃棄する水性又は油性塗料と廃棄する粉末塗料とを攪拌混合をして、油水分が10.0〜45.0質量%に調整された廃棄塗料を得る油水分調整工程と、前記廃棄塗料に粒状化剤を添加して攪拌混合を行い、前記廃棄塗料を粒状化する工程とを含むことを特徴とする廃棄塗料処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用後に残った水性塗料、油性塗料などの液状廃棄塗料を簡便に処理する事が出来る処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用後に残った水性塗料、油性塗料などの液状廃棄物は、そのまま廃棄すると下水道汚染、河川の水質汚濁や土壌汚染の原因となるため、水性塗料に対しては、セメント粉末を混合して固化或いはゲル化させることで処理されている。
例えば、特許文献1〜4などに開示の通り、吸水性樹脂、増粘剤、フィラーなどを含む固化剤を水性塗料に添加する方法が挙げられる。
また、油性塗料については、特許文献5に開示されているように、水と界面活性剤の存在下で吸水樹脂を油性塗料に添加して固化する方法が挙げられる。
【特許文献1】特開平4−23908号
【特許文献2】特開平4−335084号
【特許文献3】特開平8−120254号
【特許文献4】特開平11−224566号
【特許文献5】特開昭55−97247号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの方法は、水性塗料に対しては、比較的効果があるが、油性塗料については、効果を発揮しない場合がある。
また、水性、油性両方に効果がある固化剤は、油性塗料を処理する場合に多量の水及び固化剤を添加する事が必要であるため、廃棄量が多くなる。
そこで、水性塗料及び油性塗料の何れに対しても少量で有効性がある処理剤及び処理方法が必要とされている。
また、近年、油性塗料が規制される事により多くのメーカーでは、粉末塗料を使用するようになり、その結果、多量の粉末塗料廃棄物も排出されるようになり、その廃棄方法が大きな課題となっている。
本発明は、使用後に残った水性塗料、油性塗料などの液状廃棄塗料を簡便に処理する事ができる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題の解決するため、本発明においては、廃棄する水性又は油性塗料と廃棄する粉末塗料とを攪拌混合をして、油水分が10.0〜45.0質量%に調整された廃棄塗料を得る油水分調整工程と、前記廃棄塗料に粒状化剤を添加して攪拌混合を行い、前記廃棄塗料を粒状化する工程とを含む廃棄塗料の処理方法とした。ここで、水性塗料は、樹脂、顔料、必要に応じて添加剤などを溶解或いは分散した水を有する塗料の総称であり、油性塗料は、樹脂、顔料、必要に応じて添加剤などを溶解或いは分散した有機溶剤を有する塗料の総称であり、粉末塗料は、無溶剤の固形樹脂、顔料、必要に応じて添加剤などを構成物質とした粉末状の塗料の総称である。水性塗料か、油性塗料かは、通常は塗料製品に記載のラベルや臭いで判別する。また、油水分とは、水性塗料中の液分(副成分の有機溶剤を含む)又は油性塗料中の有機溶剤分(副成分の水若しくはシンナー等の希釈剤を含む)を表すものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、使用後に残った水性塗料、油性塗料などの液状廃棄塗料を簡便に処理する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明によれば、油水分調整工程では、油水分量が好ましくは24.0〜40.0質量%に調整された廃棄塗料が得られる。
この工程は、例えば、攪拌混合機に張込んだ廃棄する水性又は油性塗料に対し、廃棄する粉末塗料を攪拌しながら添加し、油水分量を24.0質量%から40.0質量%の範囲に調整された廃棄塗料を得る。
【0007】
油水分調整工程で使用する粉末塗料は、塗料メーカーから廃棄される粉末塗料であれば特に限定されるものではなく、その化学成分、物理的及び化学的性状に左右されるものではない。粉末塗料の使用により、油水分を吸着、吸収して流動性を減じると共に固形分濃度を高められ、単位容積当りの油水分量を減少させることができる。粉末塗料の平均粒径は、好ましくは0.001〜100μmである。さらに好ましくは0.001〜50μmである。100μmを超える大きな粒子では、油水分を吸着、吸収して流動性を減じる効果が悪くなる場合がある。
【0008】
油水分は、ワイエムシィ株式会社チョウバランスの赤外線乾燥式電子水分計IB−30型又はMC−30MB型を用いて測定される。本装置では、天秤部分の皿に、測定試料を乗せ、スイッチを押すと自動的に赤外線ランプが点灯し乾燥が始まる。質量減少がなくなるまで(恒量になるまで)乾燥し、その質量差から油水分量を求める。油性塗料は、一般に常温で乾燥する溶剤を用いているので、水分計で十分測定可能である。
【0009】
油水分量が24.0質量%未満では、油水分量が少ないため、次の混合された廃棄塗料を粒状化する工程で使用される粒状化剤を添加しても、最適な粒子が得られず粉状になってしまい、その後の取り扱いが難しくなる場合がある。一方、油水分量が40.0質量%を超えると、油水分量が過剰なため、次の混合された廃棄塗料を粒状化する工程で使用される粒状化剤の使用量が増え、処理コストが高くなるばかりでなく、処理物が粒状化せず、ペースト状のままで改質されない場合がある。
【0010】
本発明によれば、粒状化工程では、前記廃棄塗料に粒状化剤を添加して攪拌混合を行い、油水分量が調整された廃棄塗料を粒状化する。
粒状化工程で使用される粒状化剤としては、好ましくは、ポリアクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸又はアクリル酸塩とアクリルアミドとの共重合物、アクリル酸/メタクリル酸共重合体のソーダ塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体のソーダ塩、及び非晶質シリカ粉末からなる群から選ばれた一種類以上の高分子化合物であるが、特に限定されるものではない。
また、上記の粒状化剤としては、濁水、汚泥(建設汚泥(掘削安定液など))、浚渫土を用途とする凝集剤、建設発生土等の改良剤として使用されている市販の高分子化合物を用いることができる。市販品としては、ソイルセーフ(テルナイト社製)、ソイルコート(テルナイト社製)、ダイヤフロック(ダイヤニトリックス社製)が挙げられる。また、非晶質シリカ粉末の市販品としては、カープレックス80D(塩野義製薬社製)が挙げられる。
【0011】
粒状化剤である高分子化合物の分子量は、GPCにより測定され、通常は400万〜1500万の範囲であることが好ましい。
【0012】
粒状化剤として使用される非晶質シリカ粉末は、嵩比重0.05(g/ml)以上で、且つ、比表面積30(m/g)以上の粉体状のものであれば特に制限はないが、比表面積が200(m/g)以上の粉末を使用する事が最も好ましい。比表面積が30(m/g)以下では、吸油/吸水量が少なく、良好な粒子を得るために必要な粒状化剤量が多くなり、経済的でない。
【0013】
粒状化剤として使用される非晶質シリカ粉末の嵩比重の測定方法は、まず、容量が分かっている容器の風袋を測定後、容器に粉体を軽くタッピングしながら擦り切れ一杯に充填させる。容器の質量を測定し、充填された粉体の質量を計算する。粉体質量と容器容量から嵩比重(g/cm)(見かけ比重)を求める。
比表面積の測定は、BET法により行う。最も用いられている粉体粒子表面に吸着占有面積の分かった分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から非晶質シリカ粉末の比表面積を求める。
【0014】
粒状化剤の添加量は、好ましくは10.0〜45.0質量%、さらに好ましくは24.0〜40.0質量%に油水分を調整された廃棄塗料100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜1.5重量部、さらに好ましくは0.2重量部〜0.8重量部の範囲である。0.1重量部未満の添加量では、良好な粒子を形成し難い場合がある。また、1.5重量部を超える添加量では、処理コストが増加するばかりでなく、過剰の高分子が粘着性を呈し、粒子同士が付着し合うブロッキング現象が生じる場合がある。
【0015】
粒状化剤として使用される非晶質シリカ粉末の添加量は、好ましくは10.0〜45.0質量%、さらに好ましくは24.0〜40.0質量%に油水分を調整された廃棄塗料100重量部に対し、好ましくは0.3重量部〜25.0重量部の範囲である。
【0016】
粒状化工程において粒状化された混合された廃棄塗料粒子は、好ましくは、篩目開き径が4.75mmでは、100%通過し、篩目開き径が75μmでは、通過率5%未満である。ここで、測定に使用する篩は、JIS Z 8801に規定されている試験用篩である。この範囲の粒子径は、砂分〜小さい礫分に相当し、粉塵が立たず、流動性が良好であり取り扱いやすい。また、搬出作業或いは燃料としてリサイクルする場合の流動性の良さがある。
【0017】
更に、粒状化剤を添加した後に、疎水化剤として、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、及び塩化第二鉄などの無機凝結剤の少なくとも一種類以上を粉末又は溶液状で添加し、粒子表面を疎水化することにより、より安定化した粒子とすることができる。疎水化剤の添加量は、好ましくは、廃棄塗料(粉末塗料を含む)に対し、0.3〜1.0質量%である。
【0018】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
尚、実施例及び比較例で使用した廃棄塗料及び薬剤について、表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例1〜4
表2に示すように、モルタルミキサーにそれぞれ90、80、70、60(g)の水性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料をそれぞれ10、20、30、40(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した後に、粒状化剤Aをそれぞれ1.5、0.7、0.4、0.2(g)添加し、攪拌混合した。結果を表2に示す。
【0021】
比較例1〜3
表2に示すように、粒状化剤Aを添加しなかったことを除いて、実施例2、3、4と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0022】
比較例4
表2に示すように、モルタルミキサーに50(g)の水性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料を50(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した。粒状化剤Aは添加しなかった。結果を表2に示す。
【0023】
比較例5
表2に示すように、モルタルミキサーに100(g)の水性塗料を張り込み、攪拌しながら粒状化剤Aを2.0(g)添加し、攪拌混合した。粉末塗料は添加しなかった。結果を表2に示す。
【0024】
比較例6
表2に示すように、モルタルミキサーに10(g)の水性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料を90(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した後に、粒状化剤Aを0.1(g)添加し、攪拌混合した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
実施例5及び6
表3に示すように、モルタルミキサーにそれぞれ80、70(g)の水性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料をそれぞれ20、30(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した後に、粒状化剤Bをそれぞれ0.2、0.4(g)添加し、攪拌混合した。結果を表3に示す。
【0027】
実施例7及び8
表3に示すように、モルタルミキサーにそれぞれ70、60(g)の水性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料をそれぞれ30、40(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した後に、粒状化剤Bをそれぞれ0.2、0.4(g)添加し、攪拌混合した。更に、疎水化剤をそれぞれ0.5、0.8(g)添加し、攪拌混合した。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
実施例9〜13
表4に示すように、モルタルミキサーにそれぞれ95、70、57、45、40(g)の油性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料をそれぞれ5、30、43、55、60(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した後に、粒状化剤Cをそれぞれ20.0、9.5、5.4、2.8、0.6(g)添加し、攪拌混合した。結果を表4に示す。
【0030】
比較例7
モルタルミキサーに50(g)の油性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料を50(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した。粒状化剤Cは添加しなかった。結果を表4に示す。
【0031】
比較例8
表4に示すように、モルタルミキサーに10(g)の油性塗料を張り込み、攪拌しながら廃棄粉末塗料を90(g)添加し、粉末塗料が十分に混合したことを確認した後に、粒状化剤Cを0.3(g)添加し、攪拌混合した。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】

【0033】
表2〜表4に示す試験結果より、粉末塗料を加えた後、粒状化剤を添加することにより、良好な性状の粒子を得ることが可能となることが明らかとなった。粒状化剤を添加せずに、水性塗料に粉末塗料を多量に添加しただけでは、粒状にはならず粉状となり、取り扱いにくい。また、粒状化剤を添加せずに、油性塗料に粉末塗料を添加しただけでは、粘土状になり、再利用するときに取り扱いが難しくなる。一方、粒状化剤のみを添加した場合は、多量に添加しても粒状化しない。但し、更に粒状化剤の添加量を増やせば、粒状化する可能性は否定できないものの、処理コストが非常に高くなり、経済的でない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄する水性又は油性塗料と廃棄する粉末塗料とを攪拌混合をして、油水分が10.0〜45.0質量%に調整された廃棄塗料を得る油水分調整工程と、前記廃棄塗料に粒状化剤を添加して攪拌混合を行い、前記廃棄塗料を粒状化する工程とを含むことを特徴とする廃棄塗料処理方法。
【請求項2】
前記油水分調整工程が、前記廃棄塗料の油水分量を24.0〜40.0質量%とすることを特徴とする請求項1に記載の廃棄塗料処理方法。
【請求項3】
前記粒状化工程が、前記廃棄塗料100重量部に対し0.1重量部〜25.0重量部の前記粒状化剤を添加する請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄塗料処理方法。
【請求項4】
前記粒状化剤が、ポリアクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸又はアクリル酸塩とアクリルアミドとの共重合物、アクリル酸/メタクリル酸共重合体のソーダ塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体のソーダ塩、及び非晶質シリカ粉末からなる群から選ばれる一種類以上の高分子化合物である請求項1に記載の廃棄塗料処理方法。
【請求項5】
前記粒状化剤が、比表面積が30m/g以上の非晶質シリカ粉末である請求項3又は4に記載の廃棄塗料処理方法。



【公開番号】特開2010−29805(P2010−29805A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195792(P2008−195792)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【出願人】(508231061)株式会社小野運送店 (1)
【Fターム(参考)】