説明

廃棄物から複合材料を調製する方法および結果として生じる材料

本発明は、スラッジとして現れる廃棄物から複合材料を調製する方法に関し、前記スラッジとして現れる廃棄物を乾燥セメント混合物に接触して配置することから成る段階を含む。また、前記乾燥セメント混合物は、ポルトランドセメント、コンポジットポルトランドセメント、アルミニウムセメント混合物、スルホアルミニウムセメント混合物、フェロアルミニウムセメント混合物およびそれらの混合物から成る群から選択される。本発明はまた、こうして得られた複合材料に関し、廃棄物、とりわけ産業および/または放射性廃棄物を処理および/または不活性化するためのこのような方法の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にスラッジとして現れる産業および/または放射性廃棄物などの廃棄物を処理する分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、複合材料がこのような廃棄物から調製され得、それらが、乾燥セメント材料を適用することによって、並びに得られたセメントでそれらを固化し、それらをコーティングし、および/またはそれらをカプセル化することによって不活性化され得る方法に関する。
【0003】
本発明による方法は故に、特に産業および/または放射性廃棄物などの廃棄物を閉じ込めるセメントマトリックスを含む顆粒として複合材料を得る可能性を与える。本発明はまた、本発明の方法によって得られる複合材料に関する。
【背景技術】
【0004】
産業廃水処理施設は、それらを廃棄する前に廃水の汚濁負荷を低減するために、液体排水を処理する。この低減は、凝固−凝集およびデカンテーションによって残留スラッジを形成する不溶性の化合物として沈殿させることによる無機および有機汚染物質の捕捉によって実行される。
【0005】
フランスの規則は、クラス1の貯蔵センターにそれらを貯蔵する前に、最終有害産業廃棄物の不活性化を課している。これらの廃棄物の不活性化は、それらの安定化およびそれらの固化を指定している。環境によって変化しにくい形態にそれらを変換することによる安定化により、汚染物質の溶解性が低下される。固化により、廃棄物の物理的および機械的特性が改善され、その取扱いおよびその貯蔵が容易になる。
【0006】
また、放射性の液体排水を処理する施設は、放射性の水性排水を集め、貯蔵し、処理する役割を有する。その処理は、排水を浄化するための共沈方法を使用する。共沈による処理により、吸収によって、またはイオン交換によって、異なる性質の沈殿物に放射性元素が捕捉されることが可能になる。放射性元素の除去は、吸収剤を用いることによって実施される。水酸化第一鉄および水酸化銅、または硫酸バリウムなどのうちの幾つかは、浄化されるべき排水においてインサイチュで生成される。セシウムを捕捉するために用いられる混合フェロシアン化ニッケルカリウム(mixed nickel and potassium ferocyannide;ppFeNi)などの他のものは、予め形成される。
【0007】
沈殿および吸収反応の後、その懸濁液は、凝集およびデカンテーションによる固体−液体分離のための操作を経る。デカンテーションの後、浄化された浮遊物のほんの一部が流れ出て排水され、その残りは流れ出て濾過による固体−液体分離の操作に向かう。固体−液体分離は、例えば濾材を伴う回転フィルターで達成される。それは、浄化された濾液および、次いで調整される<<最終廃棄物>>スラッジを作る。
【0008】
セメント結合は、特にスラッジとして現れる産業および/または放射性廃棄物である廃棄物の不活性化を可能にする技術の1つである。
【0009】
より具体的には、スラッジのセメント結合は通常、混練(スラッジ+水硬性セメント)の実施、および続くコンテナへの得られた混合物の鋳造(casting)にある。巨視的なレベルで均一な混合物を得るための良質な混練、並びに被覆された材料全ての鋳造の可能性は、このような方法を用いるための回避できない条件である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、セメントマトリックスでの不活性化は、処理されるスラッジの物理化学的性質に固有の困難性を有する。確かに、例えば鉄の場合の金属水酸化物の懸濁液は、大流量の臨界応力(high flow threshold stress)および高い塑性粘度(plastic viscosity)によって特徴付けられる流動挙動によって特徴付けられる非ニュートンレオロジー挙動を有する。
【0011】
特定の条件下では、水酸化鉄の懸濁液はゲルタイプの構造を有し、流動パラメータの大幅な増加が観察される。このゲルタイプの構造は、高濃度懸濁液の限定的なケースであり、分散相の全流体が、ここでは沈殿凝集体である懸濁液の構造ユニットに閉じ込められる。懸濁液からのゲルタイプの構造の形成は、数日静止して、または懸濁液が流動する間により迅速に達成されることができる。固体濃度、塩含量、および懸濁液に適用されるせん断は、第1にレオロジーに影響を与えるパラメータである。金属水酸化物のスラッジのセメント結合の間、スラッジに含まれる水は固体に結合され、スラリーの適切なレオロジーを確保するのに使用できない。混合物のレオロジー的な(流動)挙動は、スラッジのレオロジー的挙動によって決まる。このタイプの廃棄物のセメント結合は、所望の作業性または稠度(consistency)を得るために、高い水/セメント(W/C)質量比の使用を必要とする。ここで、W/C比の増加は多孔率を増加させ、機械的強度を低下させ、故に、取り込みレベル(incorporation level)の大幅な低下を無視することなく、必要な圧縮閾値(典型的には8MPa)に達することがもはやできないことがある。
【0012】
さらに、廃棄物のセメント結合の間、スラッジに含まれる多くの化学種が沈殿し、混練機における混合物の素早い硬化または瞬結、潜在的にレッドヒビトリー(redhibitory)でもある現象を引き起こすことがある。
【0013】
従って、適用し易く、廃棄物および特にスラッジとして有利に現れる産業および/または放射性廃棄物の不活性化を可能にする方法を提供する必要性が実際に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記に挙げた障害および技術的問題に対する改善法を見つけ出す可能性を与える。
【0015】
確かに、発明者らの研究により、均一な混合流体を得ることに基づく従来のアプローチとは異なる、<<準均一な>>モードでの新たなセメント結合方法を開発することができた。本発明による方法では、廃棄物は乾燥セメント混合物の存在下で混練機において固化され、それにより、廃棄物に含まれる水からセメントを即時に調製することができる。この方法により、スラッジを安定化し固化することができ、その化学的性質により、セメントの存在下で混練機において、即座の固化または非常に高いレオロジーがもたらされる。
【0016】
本発明による方法の主な利点は、それらのレオロジー(ゲル形態のスラッジ)、または混練機において固化をもたらすそれらの物理的または化学的特性の何れかにより、セメント結合で通常は混合できないスラッジをセメントで固め、開発することである。
【0017】
本発明による方法は、スラッジとしての廃棄物および乾燥セメント混合物から、つまり如何なる水も追加することなく調製され、より具体的には、本発明による方法は、スラッジ形態の廃棄物および乾燥セメント混合物のみで実施される(適用される)。従って、如何なる水も追加しないこのスラッジの安定化により、セメントマトリックスに自由水がないことから、乾燥スラッジ材料を最終合成物またはモノリシック材料に取り込むレベルを最大化すること、および水素ソースターム(the hydrogen source term)を最小化することができる。この操作は、全ての乾燥セメント混合物で実施され得る。
【0018】
本発明による方法により、フィルターから出る際の、つまり固体状態の共沈スラッジの不活性化が可能になり、それは水でのスラッジの再分解、故に廃棄物の体積の増加を回避する。
【0019】
最終的に、本発明による方法により、最適な形成パラメータを用いることでスラッジを固化および安定化することができ、故に物理的および化学的特性が最大の材料が得られる。具体的に水素ソースタームは、マトリックスに自由水がないことから、滞在的に低下する。また本発明による方法により、廃棄物とそれらの周囲環境との間のやりとりを制限し、放射性核種(RN)の放出を著しく制限する物理的障壁の挿入が可能になる。
【0020】
従って本発明は、スラッジとして現れる廃棄物および乾燥セメント混合物のみから複合材料を調製する方法に関し、前記スラッジとして現れる廃棄物を乾燥セメント混合物に接触して配置することに存する段階を含む。本発明による方法は、何れの方法の段階の間においても任意の他の添加物を加えることなく、スラッジとして現れる廃棄物および乾燥セメント混合物のみで実施される(適用される)。
【0021】
<<複合材料>>は、本発明の範囲内では、セメントマトリックスと廃棄物とのアセンブリを意味する。このアセンブリは、廃棄物とセメントマトリックスとの間の密接混合物(intimate mixture)として、セメントマトリックスによる廃棄物のカプセル化として、および/またはセメントマトリックスでの廃棄物のコーティングとして現れることがある。本発明による複合材料は、廃棄物およびセメントマトリックスのみを含む。
【0022】
<<モノリス>>および<<複合材料>>との用語は、本発明において、同様の意味を有し、区別しないで用いられ得る。
【0023】
本発明による複合材料は膨張できない(cannot be pumped)ことに留意すべきである。
【0024】
<<乾燥セメント混合物>>は、本発明の範囲内では、乾燥条件で固体および多孔材料として現れる水硬性セメントマトリックスを提供するために、水の存在下で固められ時間をかけて硬化できる塑性混合物を与える微粉砕された材料の混合物を意味する。セメントマトリックスの硬化は、乾燥セメント混合物の微粉砕された材料の水和の結果である。
【0025】
本発明の範囲内で、この水和に必要とされる水は、主にスラッジとして現れる廃棄物によって提供される。確かに、本発明による方法は、如何なる水も追加することなく適用される。
【0026】
乾燥セメント混合物は全体的にまたは部分的に、微粉砕されたクリンカーから成る。<<クリンカー>>は、
− 石灰石
− 50と60%の間で変化するCaO含量を有する石灰石
− 一般的なボーキサイトまたは赤ボーキサイトなどのアルミナソース
− 粘土、および
− 石こう、硫酸カルシウム半水化物、しっくい、天然無水石こう、またはスルホカルシウム灰などの硫酸塩ソース
から成る群から選択された1つまたは複数の要素を含む混合物を意味し、
前記要素は粉砕され、均一化され、かつ1,200℃を超える、特に1,300℃を超える、具体的に1,450℃程度の高温にされる。<<1,450℃程度>>は、1,450℃±100℃の温度、有利には、1,450℃±50℃の温度を意味する。高温焼成段階は、<<クリンカー化>>と呼ばれる。クリンカーの調製後、およびそのミリングの前またはその間に、前に定義された硫酸塩ソースのような少なくとも1つの他の添加物がそれに加えられることがある。
【0027】
水和後に水硬性セメントマトリックスを作る任意の乾燥セメント混合物が、本発明の範囲内で使用され得る。非限定的な例として、本発明の範囲内で適用される乾燥セメント混合物は、CEM I 52,5N Calcia Beaucaire HRCなどのポルトランドセメント、CEM 2 52,5N Tercem Lafarge La malleなどのコンポジットポルトランドセメント、アルミニウムセメント混合物、スルホアルミニウムセメント混合物、フェロアルミニウムセメント混合物、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0028】
従って、本発明の範囲内で適用される乾燥セメント混合物は、ポルトランドセメントまたはコンポジットポルトランドセメントであり得る。ポルトランドセメントは有利に、50と70%との間のケイ酸三カルシウム[(CaO)3SiO2]、10と25%との間のケイ酸二カルシウム[(CaO)2SiO2]、5と15%との間のアルミン酸三カルシウム[(CaO)3Al2O3]、5と10%との間のアルミノフェライトテトラカルシウム[(CaO)4Al2O3Fe2O3]を含む。このようなポルトランドセメントは、<<コンポジットポルトランドセメント>>を作るために第2化合物と混合されることができ、高炉スラグ、シリカ・フューム、ポゾラン、フライアッシュ、か焼シェールまたは石灰石などの第2化合物の量は、前記コンポジットポルトランドセメントの全量をベースとして、3重量%より大きく、特に5と80重量%との間に含まれ、具体的に10と60重量%との間に含まれる。
【0029】
代わりに、本発明の範囲内で適用される乾燥セメント混合物は、アルミニウムセメント混合物、つまりアルミン酸カルシウムを主に含むクリンカーであり得る。
【0030】
さらに代わりに、本発明の範囲内で適用される乾燥セメント混合物はまた、スルホアルミニウムまたはフェロアルミニウムセメント混合物であり得る。欧州特許出願第0900771号には特に、スルホアルミニウムおよびフェロアルミニウムクリンカーをベースとするセメント混合物が記載されている。これらのクリンカーは素早い硬化特性を有するセメントバインダーであり、前に規定された50と60%の間で変化するCaO含量を有する石灰石などの少なくとも1つの石灰ソース、少なくとも1つのアルミナソース、および少なくとも1つの硫酸塩ソースを含む混合物の、1,200と1350℃の間で変化する温度でのクリンカー化によって得られる。有利に、スルホアルミニウムクリンカーは、28と40%の間のAl2O3、3と10%の間のSiO2、36と43%の間のCaO、1と3%の間のFe2O3、および8と15%の間のSO3を含む。それに対してフェロアルミニウムクリンカーは、25と30%の間のAl2O3、6と12%の間のSiO2、36と43%の間のCaO、5と12%の間のFe2O3、および5と10%の間のSO3を含む。
【0031】
任意の乾燥セメント混合物は、その比表面積によって特徴付けられる。cm2/gで表される後者は、単位質量あたりの表面積に相当する。従ってそれは、ミリングの微粉度の特性化を可能にする:乾燥セメント混合物のミリングを細かくするにつれて、その比表面積は大きくなる。比表面積は、Arcy-Kozenyの関係によるBlaineの試験、いわゆる透気度試験によって測定されるが、それは、敷き詰めた顆粒を流体による横断が、これらの顆粒の比表面積から影響を受ける、ということを立証する。
【0032】
本発明の範囲内で適用される乾燥セメント混合物の比表面積は、Acmel Society(Champlan、フランス)によるBlaine BSA1 instrumentなどのBlaine透過計で、またはBrunauer、EmettおよびTellerの方法によるBET測定によって、測定され得る。
【0033】
有利に、本発明の範囲内で適用される乾燥セメント混合物は、3,000と7,000cm2/gとの間、特に3,500と7,000cm2/gとの間、具体的に4,000と7,000cm2/gとの間に含まれる比表面積を有する。
【0034】
<<スラッジとして現れる廃棄物>>は、本発明の範囲内では、廃水の処理から生じるスラッジ、産業液体排出物の処理から生じるスラッジ、放射性液体排出物の処理から生じるスラッジ、サイロの底部から生じるスラッジ、およびそれらの混合物から成る群から選択される廃棄物を意味する。実際、本発明の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物は、前に挙げた1つまたは幾つかのタイプのスラッジに属することができる。有利に、本発明の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物は、産業および/または放射性液体排出物の処理から生じるスラッジである。スラッジとしての廃棄物は有利に、廃棄物処理の分野で規定されている残留(residual)または残余(residuary)廃棄物である。
【0035】
本発明の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物は、無毒の炭素化合物、有毒の汚染物質、腐食要素、放射性構成要素、重金属、および無機化合物からの1つまたは幾つかの要素を含むことができる。非限定的な例として、これらの要素は、金属水酸化物、金属酸化物、カーボネート、混合フェロシアン化ニッケルカリウム、塩素、フッ素、硫黄、亜鉛、リン、水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、フェノール、シアン化物、フェロシアン化物、シュウ酸塩、ケイ酸塩、フミン酸、ストロンチウム、ルテニウム、セシウム、アメリシウム、プルトニウムおよびウランなどのα―エミッター、並びにそれらの混合物から成る群から選択される。本発明の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物は主に、金属水酸化物を含む。
【0036】
スラッジとしての廃棄物の組成は、初期の液体排出物の起源だけでなく、この排出物からスラッジを調製するのに用いる処理(デカンテーション、濾過、凝固、凝集、共沈、吸収および他の物理化学的処理など)にも応じて決まる。
【0037】
スラッジは、液体での固体要素の懸濁液または分散液として規定される。本発明の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物は故に、異なる形態で現れることがあり、これはそれを含む液体の量によって決まる。従って廃棄物は、固体スラッジ、スラリースラッジ、粉末状スラッジ、または液体スラッジであり得る。有利に、本発明の範囲内で適用される廃棄物は、固体スラッジまたはスラリースラッジとして現れる。
【0038】
スラッジの乾燥度は、全スラッジ量をベースとする乾燥材料の量%を特徴付ける。従って、以下の式が規定され得る:
乾燥度=乾燥材料%=100−水%
【0039】
スラッジの乾燥度は、均一性が撹拌によって保証されたスラッジサンプルで実験的に得ることができる。略百グラム程度のこのサンプルの特定量が採取され、乾燥プレートに置かれる。全体(プレート+採取サンプル)の重さを量る:Mは得られた量を表す。プレートおよび採取サンプルは次いで、サンプルを乾燥するために、105℃以上の温度に加熱されたオーブンに置かれる。全体(プレート+乾燥サンプル)の量が一定になるまで乾燥が続けられる。この一定量が、Mと表される。分析されたスラッジサンプルの乾燥度は故に、以下の式によって計算される:
乾燥度=100*M/M
【0040】
有利に、本発明の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物は、10と85%との間、特に10と75%との間、具体的に15と75%との間、より具体的に20と65%との間に含まれる乾燥度を有する。
【0041】
本発明による方法の範囲内で適用されるスラッジとしての廃棄物が十分な乾燥度を有しない場合、その方法を適用する前に、スラッジにおける液体量を低減し得る当業者には既知の任意の処理がなされることがある。非限定的な例として、特に自然蒸発、熱乾燥、排出(draining)、遠心分離、濾過、特に膜またはストリップフィルターなどを伴うフィルタープレスでの脱水による乾燥を挙げることができる。
【0042】
本発明による方法では、スラッジとしての廃棄物(gで表される量)と適用される乾燥セメント混合物(gで表される量)の質量比は有利に、0.1と1.2との間;特に0.2と1.1との間;具体的に0.3と1との間、より具体的に0.4と0.95との間に含まれる。
【0043】
本発明による方法では、W/C質量比(Wはスラッジとしての廃棄物における(gで表される)水の量を表し、Cは用いられる(gで表される)乾燥セメント混合物の量を表す)は有利に、0.2と0.7との間、特に0.3と0.6との間に含まれる。より有利に、W/C比は、複合材料における残留水を制限するために、0.4程度(つまり、0.4±0.1)である。本発明による方法の範囲内では如何なる水も追加されないため、W/C比における水の量はスラッジとしての廃棄物における水の量に相当する、という留意点がある。
【0044】
適用されるスラッジとしての廃棄物の特性に応じて、特にこのスラッジの乾燥度に応じて、当業者は有利に、特に以下の事実に基づく如何なる発明努力なしに、適合する乾燥セメント混合物を選択することができるだろう:
−スラッジとしての廃棄物の乾燥度が低下するにつれて、選択される乾燥セメント混合物が高い比表面積を有する必要性が高くなる;
−スラッジとしての廃棄物の乾燥度が大きくなるにつれて、用いられる乾燥セメント混合物の量が少なくなり、スラッジ乾燥材料のモノリシック材料への組み込みレベルが増大する。
【0045】
従って、乾燥セメント混合物は特に、その化学的性質、その水の需要量、および出来る限り高い必要があるその比表面積に応じて選択される。
【0046】
本発明によるスラッジとしての廃棄物から複合材料を調製する方法は有利に、以下の段階:
a)前記スラッジとしての廃棄物を乾燥セメント混合物と接触して配置する段階;
b)複合材料を得るために、前記スラッジとしての廃棄物と前記乾燥セメント混合物とを混合する段階;
c)場合によって、段階(b)で得られた前記複合材料を圧縮する段階;
を含む。
【0047】
本発明による方法の段階(a)および(b)は、有利に混練機で適用される。当業者に既知の任意の混練機が、本発明の範囲内で使用され得る。非限定的な例として、NAUTA(登録商標)ミキサー、HOBART(登録商標)混練機、およびHENSCHEL(登録商標)混練機を挙げることができる。
【0048】
より具体的には、スラッジとしての廃棄物を乾燥セメント混合物と接触して配置する段階(段階(a))は、事前に混練機に導入されたスラッジとしての廃棄物上に乾燥セメント混合物を撒くことに存する。
【0049】
<<撒く(sprinkling)>>または乾燥セメント混合物とともにスラッジとして現れる廃棄物を<<粉末化する(flouring)>>アクションは、表面を乾燥させ、混合物を壊すことを可能にする。
【0050】
本方法の段階(b)での混練の間、スラッジとして現れる廃棄物に初めに存在していた水は、乾燥セメント混合物を水和するために全て用いられる。本発明による方法は故に、塩のまわりのセメントのカプセル形成につながる<<スラッジの化学的乾燥>>に適用され、その結果としてスラッジの化学成分に対する感度が低くなる。このバリアは化学的に安定で、スラッジのカプセル化はこうして達成される。
【0051】
スラッジとしての廃棄物混合物および乾燥セメント混合物の本発明による方法の段階(b)の間の混練は、本発明による方法に適用する前のスラッジとしての廃棄物の混練と同様に、比較的遅い速度で達成される。<<比較的遅い速度>>は、本発明の範囲内では、300rpm未満、特に200rpm未満、具体的に100rpm未満、より具体的には5および70rpmの間に含まれる混練機のローターの回転速度を意味する。非制限的な例として、標準的な混練機の場合、撹拌速度は140rpmであり、遊星歯車速度(planetary gear speed)は62rpmである。
【0052】
本発明による方法の以下の段階(b)で得られる複合材料は、有利に顆粒またはペレットとして現れる。こうして得られる顆粒またはペレットは、2μmから15mm、とりわけ5μm から10mm、具体的に10μmから3mmに及ぶ粒径を有する。
【0053】
本発明による方法は準乾燥条件で実施されるため、混練機の洗浄が促進される。得られる顆粒は、接着性の高粘度の均一混合物を有しないため、材料回復レベル(material recovery level)は、従来のセメント結合方法と比較して大きい。スクレーパーの使用は、混練機において残留物を制限する可能性を与える。排出物を洗い流す容量は、著しく低減され、これらの排出物にはさらに、懸濁した物質が多くは含まれない。
【0054】
本発明による方法の段階(b)に続いて得られた複合材料は、特に冷却ペレット化によって圧縮され得る(段階(c))。この任意の圧縮段階は有利に、手動または可能な任意の手段で、本方法の段階(b)に続いて得られた顆粒を、モノリス、ペレット、ブロックまたは層などのより圧縮された固体形態に変形するか、または低減する圧力を加えることによって、適用される。このような手段は特に、油圧プレス、廃棄物圧縮機、圧縮プレス、または振動性圧縮プレートである。本発明による方法は故に、高い機械的圧縮強度を有する安定で均一な複合材料を得る可能性を与える。
【0055】
本発明による方法の段階(c)の有利な代替形態では、圧縮は直接、保管バレルで達成され得る。
【0056】
印加圧力は、モノリシック固体を得るために十分でなければならないが、セメントを水和する反応に必要な水を保つために高すぎてはならず、それは複合材料の凝集を確保する。有利に、圧縮段階(c)の間、段階(b)に続いて得られた材料への印加圧力は、150MPa未満であり、特に150MPa未満であり、具体的に5と90MPaの間に含まれる。
【0057】
本発明による方法の段階(a)、(b)および(c)は有利に、4と40℃の間、特に10と30℃の間に含まれる温度、具体的に室温で適用される。<<室温>>とは、20℃程度の温度(つまり、20℃±5℃)を意味する。
【0058】
本発明はまた、前に規定された方法によって前記廃棄物から複合材料を調製することに存する廃棄物の処理および/または不活性化のための方法に関する。
【0059】
<<廃棄物の処理および/または不活性化>>は、本発明の範囲内では、初期の廃棄物に比べて低減された水透過性、低減された漏出割合、および改善された機械的強度を有する固体材料への前記廃棄物の固化および安定化を意味する。
【0060】
本発明は最終的に、前に規定された方法によって調製され得る複合材料に関する。
【0061】
本発明による複合材料は、前に規定された本方法の段階(b)、または本方法の段階(c)の何れかに続いて得られた材料である。従って、本発明による複合材料は、顆粒または丸いペレット、あるいはモノリス、タブレット、ブロックまたは層などのより圧縮された形態の何れかとして現れ得る。
【0062】
本発明による方法は、如何なる水の追加も必要としない方法である。従って、本発明による方法は、準<<乾燥>>条件におけるスラッジとしての廃棄物の固化および安定化を可能にし、廃棄物の取り込みレベルに関して最適化された調整マトリックスに導く。最終的な複合材料におけるスラッジとしての廃棄物の乾燥材料取り込みレベルは故に、従来技術の材料に比べて最大化される。
【0063】
本発明による方法に続いて得られる複合材料内への乾燥材料質量取り込みレベル(dry material mass incorporation level)(Ti)は、以下の式に応じて計算される:
Ti=100*[M/(M+M)]
【0064】
は、(gで表される)スラッジとしての廃棄物の乾燥材料量を表し、Mは、(gで表される)スラッジとしての廃棄物の量を表し、Mは、(gで表される)乾燥セメント混合物の量を表す。
【0065】
有利に、本発明による方法に続いて得られた複合材料における乾燥材料質量取り込みレベル(Ti)は、5より大きく、特に10より大きく、具体的に15より大きく、より具体的に20より大きい。
【0066】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、制限としてではなく例示として以下に提示された実施例を読むことによって、当業者にはさらに明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】セメントの設置前における、本発明による方法によって得られる顆粒の外観および寸法を示す写真である。
【図1B】セメントの設置後における、本発明による方法によって得られる顆粒の外観および寸法を示す写真である。
【図2】本発明の方法によって適用されるスラッジ+セメント混合物を圧縮することによって特に得られる、略90cm3(57mmの直径および36から38mmの高さ)のペレットの写真である。
【図3】本発明による方法によって得られるタブレットの内面を示す写真である。
【図4】本発明による方法によって得られ、脱塩水に浸漬された(90日後)ペレットの破片を示す写真である。
【図5】本発明の範囲内で適用され得、その乾燥抽出物が37.7%である固体スラッジを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
[I.本発明による方法]
スラッジは最初に混練機に導入されるが、その機械は低速で回転している。標準的な実験用混練機で、その撹拌速度は140rpmである。次いでセメントスラッジが、ペレットが得られるまで撒かれる。
【0069】
図1は、セメントの設置前(図1A)および設置後(図1B)に得られる顆粒の外観および寸法を示す。顆粒の寸法は、混練機の回転速度によって決まる。従って、より大きな回転速度(標準的な実験用混練機で285rpm)を用いることによって、複合材料を壊し、より小さな平均直径の顆粒を得ることができる。
【0070】
得られる粒子は湿っていて展性があり、故にプレスを用いて圧縮され得る。粒子はコンテナに注がれ、その中でそれらは圧縮される。図2は、今回の場合では2Tに相当する油圧プレス(7.5MPa<P<15.2MPa)での冷却ペレット化後に得られるペレットを示す。
【0071】
本発明による方法の範囲内で得られるスラッジのカプセル化現象は、ペレットの内部を示す図3で見ることができる。
【0072】
本発明による方法によるセメントでカプセル化されるスラッジは、化学的に安定化している。確かに、ペレットまたはペレットの破片を水に入れたとき(90日間)、分解は観察されなかった(図4)。
【0073】
[II.本発明による方法で適用されるスラッジおよびセメント]
スラッジは有利に、固体または非常にペースト状の形態になる前に、並びに乾燥材料レベルを増加するように出来る限り高い乾燥度を有するために、濾過される(図5)。
【0074】
表1は以下で、用いられるスラッジおよびセメントの特性を分類している。
【0075】
【表1】

【0076】
スラッジの塊が混練機に導入される。その機械は低速で回転しており、スラッジには次いで、ペレットが得られるまでセメントが撒かれる。セメントとともに固体スラッジを<<粉末化する(flouring)>>アクションは、その表面を乾燥させ、その混合物を壊すことを可能にする。
【0077】
異なる試験に用いられるスラッジおよびセメントの質量が、表2で分類される。
【0078】
その混合物は次いで、手動でまたは油圧プレスで圧縮される。典型的に印加される圧力が表2に示される。
【0079】
【表2】

【0080】
[III.本発明の方法によって得られるタブレットの特性]
得られたタブレットは次いで、20℃に保たれる。用いられる4つの硬化条件は、空気中、密封バッグ、水中、または95%湿度を有する風化エンクロージャー(a weathering enclosure)である。ペレットは、異なる保管時間の経過で、また異なる保管条件に対して、如何なる分解またはクラッキングも示さない。異なるタブレットの機械圧縮強度が、以下の表3で分類される。
【0081】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジとして現れる廃棄物および乾燥セメント混合物のみから複合材料を調製する方法であって、前記スラッジとして現れる廃棄物を乾燥セメント混合物と接触して配置することから成る段階を含む方法。
【請求項2】
前記乾燥セメント混合物は、ポルトランドセメント、コンポジットポルトランドセメント、アルミニウムセメント混合物、スルホアルミニウムセメント混合物、フェロアルミニウムセメント混合物およびそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥セメント混合物が、3,000と7,000cm2/gの間、特に3,500と7,000cm2/gの間、具体的に4,000と7,000cm2/gの間に含まれる比表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラッジとして現れる廃棄物は、廃水の処理から生じるスラッジ、産業液体排出物の処理から生じるスラッジ、放射性液体排出物の処理から生じるスラッジ、サイロの底部から生じるスラッジ、およびそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記廃棄物は、固体スラッジまたはスラリースラッジとして現れることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラッジとして現れる廃棄物は、10と75%の間、具体的に20と65%の間に含まれる乾燥度を有することを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記スラッジとしての廃棄物(gで表される量)と前記乾燥セメント混合物(gで表される量)の質量比は、0.3と1との間、より具体的には0.4と0.95との間に含まれることを特徴とする、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
W/C質量比(Wは前記スラッジとしての廃棄物における(gで表される)水の量を表し、Cは(gで表される)前記乾燥セメント混合物の量を表す)は、0.2と0.7との間;特に0.3と0.6との間に含まれ、より有利に、前記W/C比は0.4程度であることを特徴とする、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
a)前記スラッジとしての廃棄物を乾燥セメント混合物と接触して配置する段階と、
b)複合材料を得るために、前記スラッジとしての廃棄物と前記乾燥セメント混合物とを混合する段階と、
c)場合によって、段階(b)で得られた前記複合材料を圧縮する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラッジとしての廃棄物を前記乾燥セメント混合物と接触して配置するための前記段階は、事前に混練機に導入された前記スラッジとしての廃棄物上に前記乾燥セメント混合物を撒くことに存することを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法の前記段階(b)に続いて得られる前記複合材料は有利に、2μmから15mm、特に5μmから10mm、具体的に10μmから3mmに及ぶ粒径を有する顆粒またはペレットとして現れることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項で規定された方法に応じて前記廃棄物から複合材料を調製することに存する、廃棄物を処理および/または不活性化する方法。
【請求項13】
請求項1から11の何れか1項で規定された方法によって調製され得る複合材料。
【請求項14】
前記複合材料における前記乾燥材料質量取り込みレベルは、5より大きく、特に10より大きく、具体的に15より大きく、より具体的に20より大きいことを特徴とする、請求項12に記載の複合材料。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517216(P2013−517216A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549337(P2012−549337)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050634
【国際公開番号】WO2011/089127
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】