説明

廃棄物の埋立方法

【課題】低コストで管理型廃棄物と安定化廃棄物を両方とも処分できる廃棄物の埋立方法を提供すること。
【解決手段】海岸に産業廃棄物又は一般廃棄物を埋め立てる廃棄物の埋立方法において、海岸の埋立区域に管理型処分場1と安定型処分場2を区画し、前記管理型処分場1に1又は2以上のケーソンを設け、一つのケーソン内又は該ケーソンを複数に仕切った区画内に有害な溶出成分を排出する管理型廃棄物109を受け入れ、該ケーソン内で海水による散水処理を行って前記管理型廃棄物109を安定化処理し、安定化された廃棄物を該ケーソンから取り出して前記安定型処分場2に移送して埋め立てることを特徴とする廃棄物の埋立方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物の埋立方法に関し、詳しくは、ケーソンのみ管理型処分場として利用し、ほかの埋立区分は安定型処分場にすることにより大幅なコスト削減ができる廃棄物の埋立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や一般廃棄物は、埋立処分される形態によって、安定型廃棄物と管理型廃棄物に分類される。
【0003】
安定型廃棄物は、瓦礫類、陶器屑など、形状が安定したもので、有害成分を溶出することがないものであり、管理型廃棄物は、汚泥、木屑、焼却灰などで、溶出成分に有害物質を含み、水質汚染を起こしやすいものである。
【0004】
従来、管理型廃棄物や安定型廃棄物を処分場に埋め立てる場合、図3に示すような工法が知られている。
【0005】
図3に示すように、埋立区域を管理型廃棄物区域Aと安定型廃棄物区域Bに区画し、管理型廃棄物区域Aの周囲は図4に示すような護岸壁で隔離し、有害物質の外部への流出を防止していた。安定型廃棄物区域Bは有害成分の流出のおそれがないので、図4のような護岸壁は必要としない。
【0006】
図4に基づいて護岸壁の詳細を説明すると、海と接する部位には、護岸50を基礎捨て石51の上に竪設する。管理型廃棄物区域A側には、順に、防砂シート52、腰付け土53、遮水シート54、中間保護層55、遮水シート56、上部被覆層57、洗堀防止シート58が形成されている。
【0007】
従って、従来、管理型廃棄物の処分においては、有害物質が溶け出した水が他に漏れないようにして、浸出水を浄化処理して安定化させる手法が採用されていたので、処分場の護岸壁を設けるだけでも、膨大なコストがかかる問題があった。
【0008】
また上記の管理型廃棄物区域A側において、管理型廃棄物を安定化させるには、図5に示すように、先ず管理型廃棄物Iを受け入れて、散水による安定化処理を行い、安定化したら、管理型廃棄物IIを受け入れて、散水による安定化処理を行い、安定化したら、更に管理型廃棄物IIIを受け入れて、散水による安定化処理を行う。このような手法では、管理型廃棄物IIIが安定化するまでは安定化処理が終了せず、閉鎖するまで長年かかる欠点がある。また雨水による有害物質の漏洩のおそれがあるが、管理型廃棄物区域Aの上部全部を遮蔽するには膨大な費用がかかる問題がある。
【特許文献1】特許第3439636号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、管理型廃棄物を複数の区画内で散水処理して有害物質の洗浄処理を行って、廃棄物が安定したら、そのまま埋め立てる方法が記載されている。
【0010】
特許文献1の技術は、複数の区画で散水により浸出水の安定化を早期に実施し、閉鎖期間の短縮をはかるものである。この特許文献1には、ケーソンについては記載がないが、各区画にケーソンを適用したとしても、全ての区画に管理型廃棄物を受け入れ、安定化処理が完成したら、閉鎖するためにケーソン毎埋め立てることになる。
【0011】
しかし、このようなケーソン自体を閉鎖していく手法では、大量の管理型廃棄物を受け入れて安定化処理して埋め立てる場合に、大量のケーソンを必要とし、コスト低減にはならない欠点がある。
【0012】
本発明者は、管理型廃棄物区域をケーソンで構成し、ケーソン内で安定化した後、逐次安定化廃棄物区域に移送して処分することにより、上記の欠点を解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、管理型廃棄物区域をケーソンで構成し、ケーソン内で安定化した後、逐次、安定型処分場に移送して埋め立てることにより、従来のような管理型廃棄物区域の護岸壁を必要とせずに、低コストで管理型廃棄物と安定化廃棄物を両方とも処分できる廃棄物の埋立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0015】
(請求項1)
海岸に産業廃棄物又は一般廃棄物を埋め立てる廃棄物の埋立方法において、
海岸の埋立区域に管理型処分場と安定型処分場を区画し、
前記管理型処分場に1又は2以上のケーソンを設け、
一つのケーソン内又は該ケーソンを複数に仕切った区画内に有害な溶出成分を排出する管理型廃棄物を受け入れ、
該ケーソン内で海水による散水処理を行って前記管理型廃棄物を安定化処理し、
安定化された廃棄物を該ケーソンから取り出して前記安定型処分場に移送して埋め立てることを特徴とする廃棄物の埋立方法。
【0016】
(請求項2)
前記ケーソンを1又は2以上設け、その内の一つのケーソン又は該ケーソンを複数に仕切った区画の上方に、移動可能な屋根状の覆いを設け、外部環境とケーソン内部とを遮断することを特徴とする請求項1記載の廃棄物の埋立方法。
【0017】
(請求項3)
前記ケーソンを複数設け、その内の一つのケーソン又は該ケーソンを複数に仕切った区画内に有害な溶出成分を排出する管理型廃棄物を受け入れ、
該ケーソン内で海水による散水処理を行って前記管理型廃棄物を安定化処理し、
他のケーソンの内部、及び/又は、外部で前記管理型廃棄物の安定化処理により発生する有害な溶出成分を含む浸出水を浄化処理することを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物の埋立方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管理型廃棄物区域をケーソンで構成し、ケーソン内で安定化した後、逐次、安定型処分場に移送して埋め立てることにより、従来のような管理型廃棄物区域の護岸壁を必要とせずに、低コストで管理型廃棄物と安定型廃棄物を両方とも処分できる廃棄物の埋立方法を提供することができる。
【0019】
また本発明によれば、一つ目のケーソンを設置した時点から、廃棄物の受け入れができるので、処理開始までの期間が短い廃棄物の埋立方法を提供することができる。
【0020】
更にまた、本発明によれば、海岸には海水が豊富にあるので、安定化のための散水に用いる水は豊富にあり、安定化のためにふんだんに水を使うことができ、安定化するまでの期間を短縮できる廃棄物の埋立方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
図1において、1は、海岸の埋立区域に区画された管理型処分場区域であり、2は安定型処分場区域である。管理型廃棄物は、汚泥、木屑、焼却灰などで、溶出成分に有害物質を含み、水質汚染を起こしやすいものであり、浸出水処理を必要とする。安定型廃棄物は、瓦礫類、陶器屑など、形状が安定したもので、有害成分を溶出することがないものであり、そのまま埋め立てることができる。
【0023】
管理型処分場区域1には、複数のケーソンが設けられ、図示の例では6つのケーソン100〜105が設けられている。
【0024】
ケーソン100〜105には、有害な溶出成分を排出する管理型廃棄物が受け入れられる。管理型廃棄物はケーソン100から受け入れを開始し、受入量の増加に伴ってケーソン100が所定量に達したら、順次101〜105に受け入れて行くようにする。
【0025】
本発明において、ケーソンというのは、箱状の形態で、内部に管理型廃棄物を受け入れて散水処理が可能な空間が形成されたもので、工場等において予め成形され、現場に搬入されたものを言う。
【0026】
本発明に用いられるケーソンは、コンクリート製、鋼板製、鋼板とコンクリートの合成構造などのいずれでもよく、護岸壁として利用できる耐久性、海水面に浸水させた際に自重によって護岸壁を形成できる重量を有していることが好ましい。各々のケーソンは内部を複数に仕切った構造(区画)を有していてもよい。
【0027】
本発明では、このケーソン100〜105内で海水による散水処理が施され、図2にはそのうちの代表例であるケーソン100内で海水による散水処理が施される例が示されている。
【0028】
図2において、106は海水ポンプであり、海水ポンプ106で汲み上げられた海水は、配管107を介して、散水部108に送られる。散水部108には例えばスプレーノズルが設置され、ケーソン100内の管理型廃棄物109の上部から散水する。
【0029】
ケーソン100内には、下部に空間部110が形成されており、例えば網状体やパンチングメタルのような透孔部材111を所定高さに設置されていればよい。透孔部材111の上部には海水を通過できる不織布112を設けることも好ましい。
【0030】
管理型廃棄物109の上部から散水された海水は、管理型廃棄物109に含まれる可溶性の有機物や塩類あるいは重金属などが有害成分として溶出する。この溶出処理を長時間継続していると、有害成分の溶出がほとんどなくなり、管理型廃棄物109が安定化する状態となっている。
【0031】
有害成分を完全に溶出するには、従来、数年かかっていたが、本発明の場合には海水による散水であるので、豊富な海水を定量的に散水することができる。散水量は定量的に供給することが安定化の時間を短縮する上で好ましい。更に常に新鮮な海水を供給することができるので、廃棄物中の安定化に寄与する微生物へのミネラル供給ができること、および海水は循環使用しないので、塩分の蓄積も防止できる。
【0032】
雨水のような一時的に大量の水を散水することは安定化時間を短縮する上で好ましくなく、したがって、一つのケーソン又は該ケーソンを複数に仕切った区画の上方に、移動可能な屋根状の覆いを設け、外部環境とケーソン内部とを遮断することが好ましい。散水処理を行っているケーソンを被覆し、安定化時間の短縮をはかるためである。
【0033】
本発明では、管理型廃棄物109がケーソン容量の20%程度になったら、散水処理を開始することが好ましい。
【0034】
本発明において、管理型廃棄物区域をケーソンで構成し、ケーソン内で安定化した後、逐次、処理後の廃棄物を安定型処分場区域2に移送し、埋め立てる。移送する工程は、処理後の廃棄物の取り出し工程、安定型処分場区域2に移送する工程を含む。処理後の廃棄物の取り出し工程に用いる取り出し手段は特に限定されず、図示しないバケットコンベアなどを用いることができる。安定型処分場区域2は、埋め立て計画に基づき、第1期埋立区域20、第2期埋立区域21、第3期埋立区域22を区画し、移送の際に、最初に第1期埋立区域20に移送し埋め立てる。移送手段は特に限定されず、前述のバケットコンベアに接続された移送コンベアなどを用いることができる。
【0035】
第1期埋立区域20に埋め立てられる廃棄物は、もともと処理の必要のない安定型廃棄物と、上記の処理によって安定化された廃棄物であり、これらの廃棄物が、所定量に達したら、被覆土によって表面を被覆して埋立終了(閉鎖終了)となる。
【0036】
次いで第2期埋立区域21、第3期埋立区域22についても、同様に移送し、埋立て閉鎖する。
【0037】
図1において、200は、安定型廃棄物処分場を海水と隔離するための仕切り板であり、この仕切り板200は有害成分の溶出のおそれがないので、従来のような管理型廃棄物区域の護岸壁を必要とせず、鋼板等を用いることができる。従って、低コストで管理型廃棄物と安定型廃棄物の両方とも処分できる。さらに、本発明によると、一つ目のケーソンを設置した時点から、安定型処分場を完成する前に、廃棄物の受け入れができ、処理開始までの期間が短い効果がある。
【0038】
図2に示すようにケーソン100内で発生した有害成分を含む浸出水(汚水)は、排出ポンプ113によって排水浄化施設114に送られ処理される。排水浄化施設114は他のケーソン101等に設けることもできる。
【0039】
排水浄化施設114に送られる汚水は、常時又は定期的に、水質を検査することが好ましい。排水浄化施設114の構成は特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一態様を示す平面図
【図2】散水処理の一例を示す図
【図3】従来例を示す平面図
【図4】図3のIV−IV線に沿う要部断面図
【図5】従来例を示す要部断面図
【符号の説明】
【0041】
1:管理型処分場区域
100、101、102、103、104、105:ケーソン
106:海水ポンプ
107:配管
108:散水部
109:管理型廃棄物
110:空間部
111:透孔部材
112:不織布
113:排出ポンプ
114:排水浄化施設
2:安定型処分場区域
20:第1期埋立区域
21:第2期埋立区域
22:第3期埋立区域
200:仕切り板
A:管理型廃棄物区域
B:安定型廃棄物区域
50:護岸
51:基礎捨て石
52:防砂シート
53:腰付け土
54:遮水シート
55:中間保護層
56:遮水シート
57:上部被覆層
58:洗堀防止シート
I:管理型廃棄物(1回目投入)
II:管理型廃棄物(2回目投入)
III:管理型廃棄物(3回目投入)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海岸に産業廃棄物又は一般廃棄物を埋め立てる廃棄物の埋立方法において、
海岸の埋立区域に管理型処分場と安定型処分場を区画し、
前記管理型処分場に1又は2以上のケーソンを設け、
一つのケーソン内又は該ケーソンを複数に仕切った区画内に有害な溶出成分を排出する管理型廃棄物を受け入れ、
該ケーソン内で海水による散水処理を行って前記管理型廃棄物を安定化処理し、
安定化された廃棄物を該ケーソンから取り出して前記安定型処分場に移送して埋め立てることを特徴とする廃棄物の埋立方法。
【請求項2】
前記ケーソンを1又は2以上設け、その内の一つのケーソン又は該ケーソンを複数に仕切った区画の上方に、移動可能な屋根状の覆いを設け、外部環境とケーソン内部とを遮断することを特徴とする請求項1記載の廃棄物の埋立方法。
【請求項3】
前記ケーソンを複数設け、その内の一つのケーソン又は該ケーソンを複数に仕切った区画内に有害な溶出成分を排出する管理型廃棄物を受け入れ、
該ケーソン内で海水による散水処理を行って前記管理型廃棄物を安定化処理し、
他のケーソンの内部、及び/又は、外部で前記管理型廃棄物の安定化処理により発生する有害な溶出成分を含む浸出水を浄化処理することを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物の埋立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34626(P2009−34626A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202386(P2007−202386)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】