説明

廃棄物ガス化処理システム

【課題】 廃棄物ガス化処理システムにおいて、改質炉を大型化せずに、システム全体として改質ガスのタール濃度を下げることを課題とする。
【解決手段】 廃棄物を熱分解するガス化炉5と、熱分解ガスに酸化剤を注入してタールを含む熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する改質炉13と、改質ガスの熱を回収する熱回収ボイラ17と、前記熱回収ボイラ17から排出される改質ガスの粉塵を捕集するバグフィルタ23を有する廃棄物ガス化処理システムにおいて、前記熱回収ボイラ17で捕集された粉塵と前記バグフィルタ23で捕集した粉塵の少なくとも一方をガス化炉5に供給する供給手段を有し、ガス化炉5に供給した粉塵にタールを吸着させることより、改質炉13に供給される熱分解ガスのタール濃度を下げることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解して熱分解ガスを得る廃棄物ガス化処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ゴミ、木質系バイオマス、カーシュレッダーダスト、あるいは産業廃棄物などの廃棄物を熱分解して得られる熱分解ガスを燃料ガス又は原料ガスとして、例えば、発電などに有効利用することが考えられている。
【0003】
しかし、熱分解ガスには、種々の不純物が含まれ、そのままでは燃料ガス又は原料ガスとして利用できないことから、熱分解ガスを改質して燃料ガス又は原料ガスを生成する方法が提案されている。特に、熱分解ガスには炭素数が5以上の高分子量の炭化水素(以下、タールと総称する。)が含まれることがあり、タールは凝縮温度が高いことから低温になると液状になる。液状のタールは、配管や装置に付着して種々の問題を引き起こすため、熱分解ガス中のタールの除去等が必要である。
【0004】
そこで、特許文献1には、廃棄物を熱分解して発生する熱分解ガスを改質炉で部分燃焼させ、この燃焼熱により熱分解ガスに含まれるタールを熱分解させて熱分解ガスを改質する廃棄物ガス化処理システムが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−231301
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、熱分解ガス中のタール濃度が高い場合には、多くの熱分解ガスを部分燃焼させる必要があり、熱分解ガスの損失が大きくなる。また、改質炉における熱分解ガスの滞留時間を長くする必要があることから、改質炉が大型となる。
【0007】
そこで、本発明は、廃棄物ガス化処理システムにおいて、改質炉を大型化せずに、システム全体として改質ガスのタール濃度を下げることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の廃棄物ガス化処理システムは、廃棄物を熱分解してタールを含む熱分解ガスと熱分解残渣を発生させるガス化炉と、ガス化炉から排出される熱分解ガスに酸化剤を注入して熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する改質炉と、改質炉から排出される改質ガスの熱を回収する熱回収手段と、熱回収手段から排出される改質ガスに含まれる粉塵を捕集する集塵手段とを有する廃棄物ガス化処理システムにおいて、熱回収手段で捕集される粉塵をガス化炉に供給する供給手段と、集塵手段で捕集した粉塵をガス化炉に供給する供給手段の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0009】
このように、熱回収手段と集塵手段の少なくとも一方からの粉塵をガス化炉に供給し、ガス化炉内で発生したタールを粉塵に吸着させることより、改質炉に供給される熱分解ガス中のタール濃度を下げることができる。その結果、改質炉に供給される熱分解ガスのタール濃度が低いので、改質炉における熱分解ガスの滞留時間を短くでき、改質炉を大型化せずに、システム全体として改質ガスのタール濃度を下げることができる。
【0010】
この場合において、改質炉に水蒸気を注入して、熱分解ガス中の炭素を水性ガスに変換させることが好ましい。
【0011】
他方、熱分解残渣から熱分解カーボンを分別し、熱分解カーボンを燃焼させて発生する排ガスを冷却する冷却手段を配置し、冷却手段で捕集された飛灰をガス化炉に供給し、その飛灰にタールを吸着させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃棄物ガス化処理システムにおいて、改質炉を大型化せずに、システム全体として改質ガスのタール濃度を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1の廃棄物ガス化処理システムの全体構成を示す。図示のように、本実施形態の廃棄物ガス化処理システムは、廃棄物が投入される乾燥器1と、乾燥した廃棄物が投入されるガス化炉5と、ガス化炉5から排出される熱分解ガスが供給される改質炉13と、改質炉13から排出される改質ガスが導入される熱回収手段としての熱回収ボイラ17と、熱回収ボイラ17の後流に配置された集塵手段としてのバグフィルタ23と、バグフィルタ23から排出される改質ガスを精製するガス精製設備27と、ガス精製設備27で精製された改質ガスが供給されるガスエンジン33を備えている。
【0014】
乾燥器1は、伝熱管が取り付けられ、適宜熱源により廃棄物中の水分が蒸発する温度、例えば、150〜200℃に廃棄物を加熱するようになっている。
【0015】
ガス化炉5は、例えば、回転ドラム型の熱分解キルンを用いることができる。ガス化炉5の一端に、廃棄物を投入するスクリューフィーダ4が接続され、スクリューフィーダ4はモーター3により駆動される。ガス化炉5の他端には、排出室7が取り付けられている。排出室7の頂部はガス流路9が接続され、底部は排出管11が接続されている。ガス化炉5で発生した熱分解ガスは、ガス流路9を介して改質炉13に導かれ、ガス化炉5で発生した熱分解残渣は、排出管11を介して熱分解残渣処理設備12に導かれる。熱分解残渣処理設備12は、例えば、熱分解残渣から不燃成分を含む熱分解カーボンを分別して、その熱分解カーボンを燃焼させて処理する設備を用いることかできる。
【0016】
ガス流路9に導かれた熱分解ガスは改質炉13に供給され、改質炉13には入口側に、酸化剤(例えば、酸素又は空気)及び水蒸気が供給されるようになっている。改質炉13から排出される改質ガスは、ガス流路15を介して熱回収ボイラ17に導かれている。
【0017】
熱回収ボイラ17には、水が通流する伝熱管が取り付けられ、水と熱分解ガスが熱交換するようになっている。熱回収ボイラ17から排出される改質ガスは、ガス流路21を介してバグフィルタ23に導かれている。
バグフィルタ23には、例えば、円筒形のろ布が取り付けられ、そのろ布を改質ガスが通過することで、改質ガスに含まれる粉塵を捕集するようになっている。バグフィルタ23から排出される改質ガスは、ガス流路25を介してガス精製設備27に導かれている。
【0018】
ガス精製設備27は、例えば、ガス洗浄塔を用いることができ、改質ガスにアルカリ性の水溶液などを散布して、改質ガスに含まれている酸性ガスなどを除去するようになっている。ガス精製設備27から排出される改質ガスは燃料ガスとして、ガス流路28に接続している送風機31を介してガスエンジン33に供給するようになっている。
【0019】
ガスエンジン33には、図示しない発電機が取り付けられ、ガスエンジン33で燃料ガスを燃焼させて、発電機を駆動するようになっている。なお、本実施形態は、ガスエンジン33に燃料ガスを供給するようにしているが、ガスエンジン33と発電機に代えて、ガスタービンに燃料ガスを供給するようにしてもよい。
【0020】
次に、本実施形態の特徴部に係る構成を説明する。本実施形態は、図示のように、熱回収ボイラ17の底部には粉塵排出管45が連結され、バグフィルタ23の底部には粉塵排出管47が連結されている。粉塵排出管45及び47は、粉塵供給管49を介してガス化炉5に連結されている。粉塵供給管49のガス化炉5側の端部には、粉塵をガス化炉5に供給する図示しない定量供給手段が取り付けられている。定量供給手段は、好ましくは、ガス化炉5に廃棄物を投入する入口側から、ガス化炉5内に粉塵を供給できるようになっている。これらの粉塵排出管45及び47、粉塵供給管49、定量供給手段で、ガス化炉5に粉塵を供給する手段が構成されている。
【0021】
このように構成される本実施形態の廃棄物ガス化処理システムの動作を説明する。廃棄物は、例えば、粉砕機などにより所定の大きさに粉砕された後、乾燥器1に投入されて乾燥される。乾燥器1から排出された廃棄物は、スクリューフィーダ4によりガス化炉5に投入され、ガス化炉5は廃棄物を、例えば、300℃〜600℃程度、通常は450℃に加熱して熱分解する。この熱分解により発生した熱分解ガスと熱分解残渣は、排出室7に導かれ、熱分解ガスはガス流路9を介して改質炉13へ供給され、熱分解残渣は排出管11を介して熱分解残渣処理設備12に供給される。
【0022】
改質炉13は、熱分解ガスを酸化剤で部分燃焼させて、例えば、800℃に熱分解ガスを加熱することにより、熱分解ガス中に含まれるタールを熱分解して低分子化させ、炭素分は水蒸気と反応させて、一酸化炭素、水素などを含む水性ガスに変換させることにより、熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する。
【0023】
改質炉13で生成された改質ガスは、熱回収ボイラ17に導かれ熱回収される。
【0024】
熱回収ボイラ17から排出された改質ガスは、バグフィルタ23に導かれ、改質ガスがろ布を通過することにより、改質ガスに含まれる粉塵が除去される。
【0025】
バグフィルタ23を通過した改質ガスは、ガス精製設備27に導かれて酸性ガスなどが除去された後、燃料ガスとしてガスエンジン33に供給される。
【0026】
ガスエンジン33は、燃料ガスを燃焼させて、図示しない発電機を駆動させて電気エネルギーを発生させる。
【0027】
次に、本実施形態の特徴作用を説明する。熱回収ボイラ17で捕集された粉塵は、粉塵排出管45を介し粉塵供給管49に導かれ、バグフィルタ23で捕集した粉塵は、粉塵排出管47を介して粉塵供給管49に導かれる。粉塵供給管49に導かれた粉塵は、例えば、気流搬送によりガス化炉5側に搬送されて定量供給手段に供給される。定量供給手段によりガス化炉5内に供給された粉塵は、ガス化炉5内で発生したタールを吸着して排出室7に導かれる。
【0028】
排出室7に導かれたタールを吸着した粉塵は、熱分解残渣とともに熱分解残渣処理設備12に導かれ、例えば、タールを燃焼処理する。タールを吸着した粉塵が熱分解ガスに同伴された場合は、改質炉13でタールが熱分解される。
【0029】
本実施形態によれば、熱回収ボイラ17とバグフィルタ23の粉塵をガス化炉5に供給し、ガス化炉5内で発生したタールを粉塵に吸着させることより、改質炉13に供給される熱分解ガス中のタール濃度を下げることができる。その結果、改質炉13に供給される熱分解ガスのタール濃度が低いので、改質炉13における熱分解ガスの滞留時間を短くでき、改質炉13を大型化せずに、システム全体として改質ガスのタール濃度を下げることができる。また、改質炉13に供給される熱分解ガスのタール濃度が低いことから、熱分解ガスの部分燃焼による損失を低減できる。
【0030】
なお、上記実施形態は、熱回収ボイラ17とバグフィルタ23の粉塵をガス化炉5に供給しているが、熱回収ボイラ17とバグフィルタ23のいずれか一方の粉塵をガス化炉5に供給してもよい。
【0031】
表1に、本発明の実施例と比較例を示す。実施例は、ごみ1tあたりバグフィルタ23で捕集した粉塵15kgを、ガス化炉5に供給した場合の、改質炉13に供給される熱分解ガスのタール濃度である。比較例は、ガス化炉5に粉塵を供給しない場合の改質炉13に供給される熱分解ガスのタール濃度である。
【0032】
【表1】

表1の実施例に示すように、粉塵をガス化炉5に供給することにより、改質炉13に供給される熱分解ガスのタール濃度を大幅に下げることができる。
【0033】
なお、粉塵の投入量は、廃棄物1tあたり、例えば、10kg〜40kgが好ましい。
(実施形態2)
図2に本発明の実施形態2の主要部の構成図を示す。本実施形態2は、実施形態1に適用する熱分解残渣処理設備である。熱分解残渣から熱分解カーボン及び微粉状の不燃物を、例えば、篩が取り付けられた分別手段51で分別し、分別された不燃成分を含む熱分解カーボンを燃焼溶融炉53で、例えば、1300℃で燃焼し、燃焼溶融炉53から排出される排ガスを、水を供給して排ガスを冷却する間接式のガス冷却塔55で冷却し、ガス冷却塔55で捕集された飛灰をガス化炉に供給する供給手段としての飛灰排出管57に導いている。ガス冷却塔55から排出された排ガスは、図示しない周知の排ガス処理設備で処理されて排出されるようになっている。
【0034】
次に本実施形態の特徴作用を説明する。燃焼溶融炉53から排出される排ガスは飛灰を含むことがあり、排ガスが導入されるガス冷却塔55で飛灰が捕集される。この飛灰を排出管57を介して、例えば、気流搬送して実施形態1の粉塵供給管に合流させることで飛灰をガス化炉に供給でき、飛灰にタールを吸着させることができる。タールが吸着した飛灰は、熱分解残渣とともに排出され、分別手段で分別された後に、燃焼溶融炉53で燃焼処理される。タールが吸着した飛灰が熱分解ガスに同伴された場合は、改質炉でタールが熱分解される。
【0035】
本実施形態によれば、ガス冷却塔55で捕集された飛灰をガス化炉に供給し、ガス化炉内のタールを吸着させることより、改質炉に供給される熱分解ガスのタール濃度を下げることができ、例えば、ガス化炉に供給する粉塵が不足する場合、その不足分を補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態1の廃棄物ガス化処理システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態2の主要部の構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 乾燥器
5 ガス化炉
13 改質炉
17 熱回収ボイラ
23 バグフィルタ
33 ガスエンジン
45 粉塵排出管
47 粉塵排出管
49 粉塵供給管
51 分別手段
53 燃焼溶融炉
55 ガス冷却塔
57 飛灰排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解してタールを含む熱分解ガスと熱分解残渣を発生させるガス化炉と、該ガス化炉から排出される前記熱分解ガスに酸化剤を注入して前記熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する改質炉と、該改質炉から排出される前記改質ガスの熱を回収する熱回収手段と、該熱回収手段から排出される前記改質ガスに含まれる粉塵を捕集する集塵手段とを有する廃棄物ガス化処理システムにおいて、
前記熱回収手段で捕集される粉塵を前記ガス化炉に供給する供給手段と、前記集塵手段で捕集した粉塵を前記ガス化炉に供給する供給手段の少なくとも一方を有することを特徴とする廃棄物ガス化処理システム。
【請求項2】
さらに、前記改質炉に水蒸気を注入して前記熱分解ガス中の炭素を水性ガスに変換することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物ガス化処理システム。
【請求項3】
前記熱分解残渣から熱分解カーボンを分別する分別手段と、
前記熱分解カーボンを燃焼する燃焼炉と、
該燃焼炉から排出される排ガスを冷却する冷却手段と、
前記冷却手段で捕集される飛灰を前記ガス化炉に供給する供給手段を有することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物ガス化処理システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−240888(P2009−240888A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89385(P2008−89385)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】