説明

廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法

【課題】長大な斜面に段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設可能で、施工コストを低減することができると共に、遮水シートの任意の位置で固定可能で、廃棄物処分場の地形に沿って遮水シートを確実に固定することができる廃棄物処分場の遮水構造を提供する。
【解決手段】 電磁誘導により発熱する発熱体12と溶着部であるディスク本体11を表面側に有し、廃棄物処分場の斜面に間隔を開けて複数設けられる固定体10と、複数の固定体10上に敷設される遮水シート20とを備え、複数の固定体10のディスク本体11と遮水シート20とを発熱体12による加熱で溶着する廃棄物処分場の遮水構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場の斜面に遮水シートを敷設する廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に廃棄物処分場に於いては、廃棄された廃棄物から有害物質が流出して周囲の土壌や地下水が汚染されることを防止するために、遮水シートが敷設される。遮水シートは、廃棄物処分場の斜面の天端部に係止溝を形成し、この係止溝内に遮水シートの一部を埋め込んで固定し、巻いてある遮水シートを上から下に広げるようにして敷設するのが通常である。更に、廃棄物処分場の斜面が長大な場合には、所定の高さ毎に段部を掘削して形成し、各段部に係止溝を掘って形成し、各段部の下側に設けられる遮水シートの上端部を段部の係止溝に埋め込んで固定し、上側の遮水シートと下側の遮水シートを瓦状に重ね合わせて接着することにより、遮水シートを敷設する。
【0003】
上記斜面が長大な場合の遮水シートの敷設では、段部や係止溝の掘削、遮水シートの敷設の作業に手間がかかり、更に、遮水シートの接着箇所が増えることによって、施工不良による漏水の可能性も高くなるという問題があるが、斯様な問題をある程度解消可能な技術も提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、遮水シートを構成する遮水層に積層した支持層に所定の高さ毎に固定片を設け、この固定片を固定金具で斜面に固定することにより、遮水シート全体を斜面に滑り落ちないように固定することが記載されており、この技術を用いることで、係止溝の掘削の手間を無くし、遮水シートの敷設作業の手間も軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−202379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記段部の形成は掘削コストが非常に大きくなるため、長大な斜面における遮水シートの敷設では、段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設することが好ましい。しかしながら、特許文献1の遮水シートは、積層シートであると共に、予め工場加工によって支持層に固定片が取付けてられているものであるため、この遮水シート全体の重量が非常に重くなる。このため、遮水シートの幅や長さをあまり大きくすると、その重量によって施工時の取り扱いが難しくなると共に、固定部にかかる自重による引張荷重が非常に大きくなってしまい、長大な遮水シートにするには不向きである。
【0006】
また、特許文献1の遮水シートの重量を可能な限り軽量にするには、固定片の数を減らすことが考えられる。しかしながら、この遮水シートの固定位置は固定片の位置に限定されていることから、あまり固定片の数を減らすと、遮水シートを地形に沿って適切に固定できない可能性も生ずる。そのため、長大な斜面に段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設できると共に、遮水シートの任意の位置で固定することができる構造が求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、長大な斜面に段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設可能で、施工コストを低減することができると共に、遮水シートの任意の位置で固定可能で、廃棄物処分場の地形に沿って遮水シートを確実に固定することができる廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による廃棄物処分場の遮水構造は、発熱体と溶着部を表面側に有し、廃棄物処分場の斜面に間隔を開けて複数設けられる固定体と、前記複数の固定体上に敷設される遮水シートとを備え、前記複数の固定体の前記溶着部と前記遮水シートとを前記発熱体による加熱で直接的若しくは間接的に溶着することを特徴とする。
前記構成では、固定片や固定片が設けられる積層支持層等のない等の軽量で取り扱い容易な遮水シートを用いることができるので、固定体と遮水シートの固定箇所における引張荷重を小さくすることが可能であり、長大な遮水シートを敷設することができる。更に、長大な斜面に段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設できることから、施工コストを低減することができる。また、敷設面の広さ、遮水シートの幅や長さに関わらず、遮水シートの任意の位置で固定可能であり、廃棄物処分場の地形に沿って遮水シートを確実に固定することができる。また、遮水シートに穴を開けたり傷を付けたりせずに固定することが可能である。
【0009】
本発明による廃棄物処分場の遮水構造は、前記固定体の前記表面側に、熱可塑性樹脂で被覆した前記発熱体を設けることを特徴とする。
前記構成では、熱可塑性樹脂が溶けて接着剤として機能するため、固定体の溶着部と遮水シートが異素材など直接溶着しにくい場合でも、熱可塑性樹脂を介した間接的な溶着で確実に固着することができる。また、溶けた熱可塑性樹脂は不織布等にも滲み込ませることができるので、例えば不織布等の保護マットを遮水シートの下側に積層する場合に、保護マットを合わせて固定体に固定することが可能である。また、金属製の発熱体は露出すると腐食の危険に曝されるが、熱可塑性樹脂で被覆することにより、錆や腐食の危険性を長期に亘って除くことができる。
【0010】
本発明による廃棄物処分場の遮水構造の施工方法は、電磁誘導により発熱する発熱体と溶着部を表面側に有する固定体を廃棄物処分場の斜面に間隔を開けて複数設ける工程と、前記複数の固定体上に遮水シートを敷設する工程と、前記遮水シートと前記固定体とが重なり合う部分における前記遮水シートの上に誘導加熱装置を配置し、前記誘導加熱装置で前記発熱体を発熱させて前記遮水シートと前記固定体の前記溶着部とを直接的若しくは間接的に溶着する工程とを備えることを特徴とする。
前記構成では、固定片や固定片が設けられる積層支持層等のない等の軽量で取り扱い容易な遮水シートを用いることができるので、固定体と遮水シートの固定箇所における引張荷重を小さくすることが可能であり、長大な遮水シートを敷設することができる。更に、長大な斜面に段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設できることから、施工コストを低減することができる。また、敷設面の広さ、遮水シートの幅や長さに関わらず、遮水シートの任意の位置で固定可能であり、廃棄物処分場の地形に沿って遮水シートを確実に固定することができる。また、遮水シートに穴を開けたり傷を付けたりせずに固定することが可能である。
【0011】
本発明による廃棄物処分場の遮水構造の施工方法は、前記誘導加熱装置に温度センサーを設けると共に、所定の設定温度を記憶し、前記誘導加熱装置で前記発熱体を発熱させる際に、前記温度センサーで前記発熱部分に対応する前記遮水シートの温度を計測し、前記誘導加熱装置は、前記計測温度を取得し、前記計測温度が前記所定設定温度に到達した時に出力部から完了信号を出力することを特徴とする。
前記構成では、確実な固定が必要とされる廃棄物処分場の遮水シートの固定について、溶着作業時に固定体と遮水シートを確実に固着することができると共に、遮水シートの溶融が進みすぎて弱体化した箇所が生ずることを防ぐことができる。また、溶着作業時に作業者の作業経験に関わらず一定した溶着品質を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による廃棄物処分場の遮水構造、或いはその施工方法は、軽量で取り扱い容易な遮水シートを用いることができるので、固定体と遮水シートの固定箇所における引張荷重を小さくすることが可能であり、長大な遮水シートを敷設することができる。更に、長大な斜面に段部を形成せずに長大な遮水シートを敷設できることから、施工コストを低減することができる。また、遮水シートの任意の位置で固定可能であり、廃棄物処分場の地形に沿って遮水シートを確実に固定することができる。また、遮水シートに穴を開けたり傷を付けたりせずに固定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明による第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造を示す縦断面図、(b)は同図(a)のA矢視の正面図。
【図2】第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造の施工工程において遮水シートの敷設を説明する縦断説明図。
【図3】第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造の施工工程において固定体と遮水シートとの溶着を説明する縦断説明図。
【図4】(a)は第1例の固定体の縦断側面図、(b)はその平面図。
【図5】(a)は第2例の固定体の縦断側面図、(b)はその平面図。
【図6】(a)は第2例の固定体による溶着において溶着前の遮水シート、発熱体、固定体の溶着部を示す部分拡大断面図、(b)はその溶着後の状態を示す部分拡大断面図。
【図7】第2実施形態の廃棄物処分場の遮水構造の施工工程において固定体と遮水シートとの溶着を説明する縦断説明図。
【図8】第2実施形態の廃棄物処分場の遮水構造の施工工程において固定体と遮水シートとの溶着を説明する縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法〕
本発明による第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法について説明する。図1は第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造を示す図、図2、図3はその遮水構造を施工する際の遮水シートの敷設、
固定体と遮水シートとの溶着をそれぞれ説明する図、図4は第1例の固定体の図である。
【0015】
第1実施形態の廃棄物処分場の遮水構造は、図1に示すように、上面101、斜面102、底面103の地面を有する廃棄物処分場の凹領域に設置されるものであり、廃棄物処分場の斜面102に略一定のピッチなど間隔を開けて複数配設される固定体10と、配設された複数の固定体10上に敷設される遮水シート20とを備える。
【0016】
固定体10は、図4に示すように、円盤状のディスク本体11と、ディスク本体11の円周状の表面111に沿って設けられる発熱体12と、ディスク本体11の中央に表面111側から凹んで設けられる凹部112に取付けられる固定用アンカー13とから構成される。ディスク本体11は、本実施形態では表面側の溶着部に対応するものとしてディスク本体11自体が溶着材で形成され、例えばポリエチレン等で形成されている。発熱体12は、電磁誘導により発熱するアルミメッシュ等の金属製のメッシュである。
【0017】
固定用アンカー13は、図示省略する穴を有する基端の頭部131m、先端の拡開部131nを有するスリーブ131と、前記穴からスリーブ131内に挿入されている打込ピン132とから構成される。固定用アンカー13は、図1〜図4に示すように、凹部112に頭部131mを係合するようにして凹部112の穴に挿入して設けられ、ディスク本体11の下面113を斜面102側にしてディスク本体11を配置すると共に、スリーブ131を斜面102に埋め込み、打込ピン132を打ち込んで拡開部131nを拡開することにより、ディスク本体11を斜面102に固定するようになっている。
【0018】
遮水シート20は、図1に示すように、斜面102の天端部に対応する位置の上面101に係止溝104を形成し、係止溝104内に遮水シート20の上端部を埋め込んで固定し、遮水シート20を上から下に広げることにより、敷設される。遮水シート20には、例えば斜面102から底面103に亘る長大な遮水シート20が用いられ、斜面102に固定設置されている複数の固定体10上に載置されるようにして敷設される。固定体10上に載置された遮水シート20は、後述するように、溶着部に相当する各ディスク本体11の表面111と、電磁誘導加熱により発熱体12を発熱させて直接溶着される。
【0019】
更に、第1実施形態の遮水構造においては、斜面102上に斜面102に沿って不織布等からなる保護マット30が設けられている。保護マット30上にはディスク本体11が配置され、固定用アンカー13のスリーブ131と打込ピン132を保護マット30に貫通させ、上記の如く固定用アンカー13を斜面102に固定することにより、ディスク本体11と斜面102に挟持されるようにして保護マット30は敷設される。
【0020】
次に、第1実施形態の遮水構造の施工方法について説明する。先ず、図1〜図3に示すように、廃棄物処分場の斜面102に保護マット30を敷設する。保護マット30は、その上端部を係止溝104内に埋め込んで固定され、巻いてある保護マット30を上から下に広げることにより、敷設される。次いで、固定体10を斜面102に略一定の任意のピッチで縦横に設けるなど間隔を開けて配置することにより、複数の固定体10を斜面102に間隔を開けて配置する。
【0021】
その後、図2に示すように、配置した複数の固定体10上に遮水シート20を敷設する。遮水シート20は、係止溝104内に上端部を埋め込んで固定し、巻いてある遮水シート20を上から下に広げることにより、敷設される。次いで、図3に示すように、遮水シート20と固定体10とが重なり合う部分における遮水シート20の上に誘導加熱装置50を配置し、誘導加熱装置50で発熱体12を発熱させ、遮水シート20と固定体10のディスク本体11の表面111とを直接的に溶着する。
【0022】
この誘導加熱装置50は、コイルターミナル51を介して電源部52に接続されており、図示省略するスイッチのON動作により誘導加熱装置50内の誘導加熱コイルに電流が流れるようになっている。また、誘導加熱装置50の押当面に近接して温度センサー53が設けられていると共に、誘導加熱装置50には、設定記憶されている制御プログラムに従って制御する制御部と、所定の設定温度等を記憶する記憶部と、音或いは光等の完了信号を出力する出力部等が設けられている。そして、誘導加熱装置50で発熱体12を発熱させた際に、温度センサー53で発熱部分に対応する遮水シート20の温度を計測し、誘導加熱装置50は、この計測温度を取得し、計測温度を前記記憶部の所定設定温度と対比して所定設定温度に到達したことを認識し、これに応じて音或いは光等の完了信号を出力部から出力するようになっており、作業者が溶着完了を容易に認識可能になっている。
【0023】
第1実施形態では、遮水シート20を付属物のない即ち単体シートとして軽量で取扱いが容易な状態で用いることができ、固定体10と遮水シート20の固定箇所における引張荷重を小さくすることが可能であり、長大な遮水シート20を敷設することができる。更に、長大な斜面102に段部を形成せずに長大な遮水シート20を敷設できることから、施工コストを低減することができる。また、遮水シート20の任意の位置で固定可能であり、廃棄物処分場の地形に多少の凹凸があっても地形に沿って確実に遮水シート20を敷設し、固定することができる。また、遮水シート20に穴を開けたり傷を付けたりせずに固定することが可能である。
【0024】
また、温度センサー53や完了信号出力の構成を有する誘導加熱装置50で溶着することにより、確実な固定が必要とされる廃棄物処分場の遮水シート20の固定について、溶着作業時に固定体10と遮水シート20を確実に固着することができると共に、遮水シート20の溶融が進みすぎて弱体化した箇所が生ずることを防ぐことができる。更に、溶着作業時に作業者の作業経験に関わらず一定した溶着品質を確保することが可能となる。
【0025】
尚、図4の固定体10に代えて、図5及び図6に示す例の固定体10aを用いるとより好適である。図5の固定体10aは、ディスク本体11a、固定用アンカー13aは図4の固定体10のディスク本体11、固定用アンカー13と同一構成であるが、固定体10aの表面側に設けられ、金属製メッシュで構成される発熱体12aがポリエチレン等の熱可塑性樹脂14aで被覆されている。固定体10aにより、溶着部であるディスク本体11aと遮水シート20とを溶着する際には、図6に示すように、電磁誘導加熱によって発熱体12aの周囲の熱可塑性樹脂14aが溶融し、熱可塑性樹脂14aが接着剤となってディスク本体11aと遮水シート20とが間接的に溶着される。
【0026】
固定体10aを用いる場合には、電磁誘導によって熱可塑性樹脂14aが溶けて接着剤として機能するため、ディスク本体11aと遮水シート20が異素材など直接溶着しにくい場合でも、熱可塑性樹脂14aを介した間接的な溶着で確実に固着することができる。また、金属製の発熱体12aは露出すると腐食の危険に曝されるが、熱可塑性樹脂14aで被覆することにより、錆や腐食の危険性を長期に亘って除くことができる。
【0027】
〔第2実施形態の廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法〕
次に、本発明による第2実施形態の廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法について説明する。図7は第2実施形態の廃棄物処分場の遮水構造の施工工程において固定体と遮水シートとの溶着を説明する図である。
【0028】
第2実施形態の廃棄物処分場の遮水構造は、図7に示すように、斜面102に保護マット30を敷設せずに、斜面102に固定体10を直接敷設するものであり、その他の構成は第1実施形態と同一である。この遮水構造を施工する際には、斜面102に保護マット30を敷設せずに、複数の固定体10を斜面102に間隔を開けて配置し、その後、第1実施形態と同様に、複数の固定体10上への遮水シート20の敷設、遮水シート20と固定体10のディスク本体11の表面111との溶着を行う。尚、固定体10に代えて、図5の固定体10aを用いてもよい。第2実施形態では、保護マット30を設けないことに対応する効果の他は第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0029】
〔第3実施形態の廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法〕
次に、本発明による第3実施形態の廃棄物処分場の遮水構造及びその施工方法について説明する。図8は第3実施形態の廃棄物処分場の遮水構造の施工工程において固定体と遮水シートとの溶着を説明する図である。
【0030】
第3実施形態の廃棄物処分場の遮水構造は、図8に示すように、斜面102に保護マット30を直接敷設せずに、斜面102に複数の固定体10を直接敷設し、更に、その固定体10の上に保護マット30を敷設し、その上に遮水シート20を敷設し、保護マット30を介して遮水シート20と固定体10のディスク本体11の表面111とを溶着するものである。この遮水構造を施工する際には、斜面102に保護マット30を敷設せずに、複数の固定体10を斜面102に間隔を開けて配置し、次いで、保護マット30を、その上端部を係止溝104内に埋め込んで固定し、巻いてある保護マット30を上から下に広げることにより、固定体10上に敷設する。更に、第1実施形態と同様の方法で遮水シート20を保護マット30の上に敷設して、保護マット30の上に遮水シート20を積層する。その後、遮水シート20及び保護マット30と固定体10とが重なり合う部分における遮水シート20の上に誘導加熱装置50を配置し、誘導加熱装置50で発熱体12を発熱させ、遮水シート20と固定体10のディスク本体11の表面111とを保護マット30を介して直接的に溶着する。
【0031】
尚、第3実施形態では、固定体10に代えて、図5の固定体10aを用いると好ましい。固定体10aを用いることにより、溶けた熱可塑性樹脂14aは不織布等にも滲み込ませ接着剤として機能させることができるので、例えば不織布等の保護マット30を用いて遮水シート20の下側に積層する場合に、遮水シート20と保護マット30を合わせて固定体10aに容易且つ確実に固定することが可能である。また、保護マット30と遮水シート20を順次敷設する構成に代え、保護マット30と遮水シート20が一体化した積層シートを敷設する構成とすることも可能である。
【0032】
第3実施形態では、積層状態の遮水シート20及び保護マット30は第1、第2実施形態より重量が嵩むものの、固定片等が取付けられるものよりも軽量で取り扱い容易にすることができ、固定体10と遮水シート20の固定箇所における引張荷重を小さくして、長大な遮水シート20を敷設することができる。その他に第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0033】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明には、各発明や実施形態等の構成の他に、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれ、下記のような変形例も包含される。
【0034】
例えば上記実施形態の溶着部は、ディスク本体11、11aを溶着材で形成して構成したが、固定体の表面側に設けられる溶着部であれば適宜であり、例えばディスク本体11の表面に層状に設けられる溶着層等とすることも可能である。また、溶着部、遮水シート20、熱可塑性樹脂14a、発熱体12、12a、保護マット30の素材も、ポリエチレン以外に本発明に適用可能な範囲内で適宜である。また、固定体10、10aの構成も本発明に適用可能な範囲内で適宜であり、又、固定体10、10aを設ける間隔は、地形等に応じて略同一ピッチや若干の可変的なピッチで設けることが可能である。
【0035】
また、発熱体12、12aを誘導加熱装置50による電磁誘導で加熱する以外の加熱方式で溶融し、溶着する遮水構造及びその施工方法とすることも可能であり、例えば施工時に、ディスク本体11と遮水シート20との間で電熱ごて等の加熱装置で溶融を行って溶着する構成等とする。また、誘導加熱装置50が、計測温度が所定設定温度に到達した時に完了信号を出力する構成に代えて、誘導加熱装置50に設定時間を記憶する記憶部とタイマーを設け、制御部が誘導加熱装置50の起動を認識してタイマーで時間を計測し、前記設定時間に到達した時に完了信号を出力する構成等とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、廃棄物処分場に遮水処理を行う際に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10、10a…固定体 11、11a…ディスク本体 111…表面 112…凹部 113…下面 12、12a…発熱体 13、13a…固定用アンカー 131…スリーブ 131m…頭部 131n…拡開部 132…打込ピン 14a…熱可塑性樹脂 20…遮水シート 30…保護マット 50…誘導加熱装置 51…コイルターミナル 52…電源部 53…温度センサー 101…上面 102…斜面 103…底面 104…係止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と溶着部を表面側に有し、廃棄物処分場の斜面に間隔を開けて複数設けられる固定体と、
前記複数の固定体上に敷設される遮水シートとを備え、
前記複数の固定体の前記溶着部と前記遮水シートとを前記発熱体による加熱で直接的若しくは間接的に溶着することを特徴とする廃棄物処分場の遮水構造。
【請求項2】
前記固定体の前記表面側に、熱可塑性樹脂で被覆した前記発熱体を設けることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場の遮水構造。
【請求項3】
電磁誘導により発熱する発熱体と溶着部を表面側に有する固定体を廃棄物処分場の斜面に間隔を開けて複数設ける工程と、
前記複数の固定体上に遮水シートを敷設する工程と、
前記遮水シートと前記固定体とが重なり合う部分における前記遮水シートの上に誘導加熱装置を配置し、前記誘導加熱装置で前記発熱体を発熱させて前記遮水シートと前記固定体の前記溶着部とを直接的若しくは間接的に溶着する工程と、を備えることを特徴とする廃棄物処分場の遮水構造の施工方法。
【請求項4】
前記誘導加熱装置に温度センサーを設けると共に、所定の設定温度を記憶し、
前記誘導加熱装置で前記発熱体を発熱させる際に、前記温度センサーで前記発熱部分に対応する前記遮水シートの温度を計測し、
前記誘導加熱装置は、前記計測温度を取得し、前記計測温度が前記所定設定温度に到達した時に出力部から完了信号を出力することを特徴とする請求項3記載の廃棄物処分場の遮水構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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