説明

廃棄物最終処分場の構造

【課題】ピットからの浸出水の漏洩、遮水部材の損傷の有無を直接監視できる廃棄物最終処分場の構造の提供を課題とする。
【解決手段】廃棄物10を蓄積するピット11と、このピット11内の浸出水が外部に漏洩するのを防止すべく、少なくともピット11の底部に二重に設けられた第1遮水部材12及び第2遮水部材13とを備えている。上記第1遮水部材12と第2遮水部材13との間に、ピット11内の浸出水の漏洩、又は第1及び第2遮水部材12,13の損傷の有無を目視によって監視するべく、監視用スペース14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この最終処分場は、廃棄物が埋め立てられた埋め立て地内の浸出水などが漏洩するのを防止し、地下水や公共水域の汚染を防ぐべく、遮水構造が義務付けられている。
【0003】
従来は、万一、上記遮水構造が何らかの理由により損傷した場合でも、埋め立て地内の浸出水の漏洩を最小限にとどめるため、適宜電気的漏洩検知技術や、物理的検知技術などによって遮水構造における損傷の有無の監視や損傷位置の特定が行われている。また、水質調査法や水収支法による浸出水の漏洩の有無を監視することも行われている。
【0004】
また、浸出水の漏洩が起こった場合に、高吸水樹脂やベントナイトなどが浸出水を吸水膨潤し、損傷箇所をシールする自己修復シートを採用するという対応がなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の最終処分場における遮水構造の損傷の有無を監視し、或いは損傷位置を特定する技術は、いずれも浸出水の漏洩を間接的に監視するものであり、直接的に、漏洩が起こっていないことを確認することができなかった。
【0006】
また、遮水構造の損傷が検出された場合、遮水構造を修復するために、最終処分場におけるピット内の廃棄物を掘削する等の困難な作業が発生し、作業に日数がかかるという問題があった。
【0007】
更に、上記のように遮水構造を修復するためには、一定の工事期間が必要になるので、その間にピット内の浸出水の外部への漏洩が進行するおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、遮水構造の損傷の有無や、浸出水の漏洩の有無を直接監視できる廃棄物最終処分場の構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
(1)本発明は、
廃棄物を蓄積するピットと、
前記ピット内の浸出水が外部に漏洩するのを防止すべく、少なくとも前記ピットの底部に二重に設けられた第1遮水部材及び第2遮水部材とを備え、
前記第1遮水部材と前記第2遮水部材との間に、前記ピット内の浸出水の漏洩、又は前記第1及び第2の遮水部材の損傷の有無を監視する監視スペースが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、監視用スペースから、ピット内の浸出水の漏洩、第1及び第2遮水部材の損傷の有無を直接、目視により監視できる。
【0011】
(2)前記ピットの側部に、前記第1、第2遮水部材及び前記監視用スペースが設けられていることが好ましい。
【0012】
この場合は、ピットの側部におけるピット内の浸出水の漏洩、第1遮水部材又は第2遮水部材の損傷の有無を直接、目視により監視できる。
【0013】
(3)前記監視用スペースは、監視員が通行可能な広さを有するのが好ましい。この場合は、監視員が監視用スペース内に入って、ピット内の浸出水の漏洩、第1又は第2遮水部材の損傷の有無を直接、目視により監視できる。
【0014】
(4)前記第1遮水部材又は前記第2遮水部材は、鋼板、遮水性コンクリート、遮水シート、アスファルトコンクリート、粘性土等の土質系材料等、通常最終処分場の遮水材として使用されている材料、又はこれらの組み合わせによって形成できる。
【0015】
(5)前記ピットの上部側から前記監視用スペース内に続く昇降手段が設けられているのが好ましい。
【0016】
(6)前記ピットの外側に、前記監視用スペース内へ入るための入り口が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、最終処分場におけるピット内の浸出水の漏洩、第1遮水部材及び第2遮水部材の損傷の有無を直接、目視により監視できるので、信頼性が向上する。
【0018】
また、第1遮水部材又は第2遮水部材が損傷している場合には、監視用ピット内から第1遮水部材又は第2遮水部材を修復できるので、ピット内の廃棄物を掘削する必要がない。従って、作業工数を大幅に低減でき、第1遮水部材及び第2遮水部材の修復作業も視認しながらの作業となるため、円滑に確実な処理ができ、第1遮水部材及び第2遮水部材の不具合に対する処置までの間、漏洩した浸出水に対して容易に適切な処理などを行うことができ、処置後の信頼性についても十分な検証を実施することができる。したがって、浸出水が埋立地外へ漏洩するのを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る廃棄物最終処分場の構造を適用した実施例として、廃棄物最終処分場1を示す。この廃棄物最終処分場1は、クローズド型と呼ばれる覆蓋施設(屋根)のある最終処分場である。
【0020】
この廃棄物最終処分場1は、廃棄物10を蓄積するピット11と、少なくとも上記ピット11の底部に二重に設けられた第1遮水部材12及び第2遮水部材13とを備えている。
【0021】
また、本発明の廃棄物最終処分場1は、上記第1遮水部材12と上記第2遮水部材13との間に、上記ピット11内の廃棄物10に含まれる浸出水の漏洩、又は上記第1遮水部材12及び第2遮水部材13の損傷の有無を監視する監視用スペース14が設けられている。
【0022】
次に、上記各構成要素について説明する。上記ピット11の上部側には屋根18が設けられている。
【0023】
また、ピット11の両側には、土留め壁19,20が設けられている。これらの土留め壁19,20は、親杭鋼矢板、連続地中壁、鋼矢板、鋼管矢板、鉄筋コンクリート構造な
どによって形成できる。
【0024】
また、上記ピット11は、自然又は人工の法面若しくは補強土などの土構造によっても形成できる。
【0025】
一方の土留め壁19の内側には、ピット11の上部側から監視用スペース14内に続く昇降階段15が設けられている。
【0026】
上記第1遮水部材12及び第2遮水部材13は、図2に示すように、鋼板(厚さ6mm以上)によって形成されている。
【0027】
第1遮水部材12は、ピット11内の浸出水の流出を防ぐ構造である。この第1遮水部材12の内側に廃棄物10が蓄積される。
【0028】
なお、第1遮水部材12は、鋼板以外に、通常の最終処分場で遮水部材として使用される材料、例えば遮水性コンクリート、遮水シート、アスファルトコンクリート、土質系材料(粘性土等)等、又はこれらの組み合わせによって形成することができる。また、第1遮水部材12を鋼板、遮水性コンクリートで形成する場合は、監視用スペース14を確保するための構造体を兼ねることができる。
【0029】
更に、第1遮水部材12に、アスファルトコンクリート、遮水シート、土質系材料(粘性土等)などを使用する場合は、別途、鋼構造やコンクリート構造によって、第1遮水部材12を支持することが必要である。
【0030】
上記第2遮水部材13は、鋼板以外に、通常の最終処分場で遮水部材として使用される材料、例えば遮水性コンクリート、遮水シート、アスファルトコンクリート、土質系材料(粘性土等)など、又はこれらの組み合わせによって形成できる。
【0031】
上記監視用スペース14は、第1遮水部材12と第2遮水部材13との間に、監視員が入り、第1遮水部材12及び第2遮水部材13の状態を直接目視によって監視できる空間として設けられている。
【0032】
この監視用スペース14は、この中に監視員22が入り、ピット11内の浸出水の漏洩、第1遮水部材12及び第2遮水部材13の損傷の有無などを、直接目視によって監視できる。
【0033】
また、第1遮水部材12からの浸出水の漏洩、或いは第1遮水部材12又は第2遮水部材13の損傷が発見された場合は、監視用スペース14内から適切な処置を行い、浸出水の漏洩を防止するための修復や、第1及び第2遮水部材12,13の損傷を修復できる。
【0034】
また、ピット11内の浸出水が漏洩したとしても、損傷の修復にかかる期間中、この浸出水を第1遮水部材12と第2遮水部材13との間で、容易に適切な処理を行うことができ、廃棄物最終処分場1の外側に漏洩するのを確実に防止できる。
【0035】
更に、第1及び第2遮水部材12,13の修復作業は、作業者が第1及び第2遮水部材12,13を視認しながらできるため、円滑に且つ確実に修復作業行うことができると共に、修復箇所についても十分な検証が実施でき、信頼性も向上する。
【0036】
また、上記監視用スペース14は、監視用としての機能を損なわない限度で、必要に応じて市民参加のための諸施設などを構築することも可能で、近隣の住民が望めば自ら遮水
部材の健全性を確認できるような安全安心な施設としても活用できる。
【0037】
また、上記階段15に代えてエレベータなどを用いることもできる。更に、ピット11の外側に監視用スペース14内への入口を設けることもできる。
【0038】
このように、本発明の廃棄物最終処分場1は、第1遮水部材12と第2遮水部材13との間に監視用スペース14を設けたので、この中に監視員22が入り、ピット11内の浸出水の漏洩、第1遮水部材12及び第3遮水部材13の損傷の有無を直接目視によって監視できる。従って、廃棄物最終処分場1に対する信頼性が向上する。
【0039】
また、ピット11からの浸出水の漏洩、第1遮水部材12又は第2遮水部材13の損傷が確認された場合には、監視用スペース14内から、その補修作業を容易にできる。
【0040】
なお、本実施形態では、本発明をクローズド型と呼ばれる覆蓋施設(屋根)のある廃棄物最終処分場1に適用した場合について説明したが、本発明は覆蓋のないオープン型と呼ばれる最終処分場や海面埋立の最終処分場、既設の最終処分場をリニューアルする場合、その他の廃棄物最終処分場などに適用できる。
【0041】
また、本実施形態では、ピット11の底部にのみ第1遮水部材12,第2遮水部材13及び監視用スペース14を設けたが、ピット11の側面部にも、監視用スペースを設けることができる。この他、具体的な細部構造などについても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る廃棄物最終処分場の構造を適用した廃棄物最終処分場を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1遮水部材及び第2遮水部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 廃棄物最終処分場
10 廃棄物
11 ピット
12 第1遮水部材
13 第2遮水部材
14 監視用スペース
15 階段
18 屋根
19 土留め壁
20 土留め壁
22 監視員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を蓄積するピットと、
前記ピット内の浸出水が外部に漏洩するのを防止すべく、少なくとも前記ピットの底部に二重に設けられた第1遮水部材及び第2遮水部材とを備え、
前記第1遮水部材と前記第2遮水部材との間に、前記ピット内の浸出水の漏洩、前記第1及び第2の遮水部材の損傷の有無を目視によって監視するべく、監視用スペースが設けられていることを特徴とする廃棄物最終処分場の構造。
【請求項2】
前記ピットの側部に、前記第1遮水部材、前記第2遮水部材及び前記監視用スペースが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物最終処分場の構造。
【請求項3】
前記監視用スペースは、監視員が通行可能な広さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物最終処分場の構造。
【請求項4】
前記第1遮水部材又は前記第2遮水部材は、鋼板、遮水性コンクリート、遮水シート、アスファルトコンクリート、粘性土等の土質系材料等、通常最終処分場の遮水材として使用されている材料、又はこれらの組み合わせによって形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の廃棄物最終処分場の構造。
【請求項5】
前記ピットの上部側から前記監視用スペース内に続く昇降手段が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の廃棄物最終処分場の構造。
【請求項6】
前記ピットの外側に、前記監視用スペース内へ入るための入り口が設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の廃棄物最終処分場の構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−105598(P2007−105598A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297775(P2005−297775)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(501494551)株式会社建設工学研究社 (4)
【出願人】(000140384)株式会社横河ブリッジ (29)
【Fターム(参考)】