説明

廃棄物焼却施設の排熱を利用するための焼却排熱利用システム

【課題】発電効率および燃焼効率を低下させることなく、かつ、熱回収に用いる熱交換器の損耗を抑制することができる構成を備えた焼却排熱利用システムを提供すること。
【解決手段】投入された廃棄物を焼却処理する焼却炉21と、焼却炉21から排出される排ガスを用いて蒸気を発生させる廃熱ボイラ22と、廃熱ボイラ22の下流側に設置されるバグフィルタ24と、廃熱ボイラ22とバグフィルタ24との間に設置され廃熱ボイラ22のボイラ排ガスから熱を回収する熱交換器23と、熱交換器23と接続され前記回収された熱を蓄熱する直接接触式の蓄熱装置1とを備える焼却排熱利用システム101。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却施設で発生する排熱を有効に利用するための焼却排熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ごみ焼却炉などを備える廃棄物焼却施設で発生する排熱は、廃棄物焼却施設近隣の温水プールや公衆浴場などの様々な施設で利用されている。ここで、排熱の有する熱エネルギーを廃棄物焼却施設からこれら近隣の施設に輸送する方法としては、例えば、熱を利用する熱利用施設まで廃棄物焼却施設からパイプなどの管路を敷設して輸送する管路輸送方法がある。敷設した管路を介して高温水、温水や蒸気の形態で熱エネルギーを熱利用施設に送っている。
【0003】
しかしながら、この方法では、熱利用施設が遠方になればなるほど管路の敷設工事費が増大していくという問題がある。このような背景のもと、管路を敷設することなく排熱の有する熱エネルギーを輸送する技術として、例えば、特許文献1に記載されているような熱輸送方法が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された熱輸送方法(ごみ焼却熱利用システム)は、タンクローリのような形態で何処へでも移動可能な蓄熱搬送装置に蓄熱し、この蓄熱搬送装置により、廃棄物焼却施設から温水プールなどの熱利用施設へ熱を輸送するというものである。この方法によると、焼却施設近隣の施設だけでなく、比較的遠方の施設に対しても低コストで熱エネルギーを輸送することができる、という利点を有する。
【0005】
【特許文献1】特開2008−106954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたごみ焼却熱利用システムでは、ごみ焼却炉の廃熱ボイラで発生した蒸気から熱回収したり、空気予熱器で予熱した燃焼用空気から熱回収したり、ごみ焼却炉の高温排ガスから直接熱回収したりしている。
【0007】
ここで、廃熱ボイラで発生した蒸気から熱回収をした場合、発電用タービンに供給する蒸気量が減少してしまうため、発電効率の低下を招いてしまう。また、予熱した燃焼用空気から熱回収をした場合、燃焼用空気の温度が低下し、燃焼効率の低下を招く。さらに、ごみ焼却炉の高温排ガスから直接熱回収した場合、熱交換器の損耗が激しく、補修コストが増大してしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、発電効率および燃焼効率を低下させることなく、かつ、熱回収に用いる熱交換器の損耗を抑制することができる構成を備えた焼却排熱利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、焼却炉の廃熱ボイラと集塵機との間に熱交換器を設置し、この熱交換器を用いて廃熱ボイラのボイラ排ガスから熱回収することで、前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、投入された廃棄物を焼却処理する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスを用いて蒸気を発生させる廃熱ボイラと、前記廃熱ボイラの下流側に設置される集塵機と、前記廃熱ボイラと前記集塵機との間に設置され、前記廃熱ボイラで熱回収されたのち排出されるボイラ排ガスから熱を回収する熱交換器と、前記熱交換器と接続され、前記回収された熱を蓄熱する蓄熱装置と、を備える焼却排熱利用システムを提供する。
【0011】
この構成によると、廃熱ボイラで発生する蒸気を全て発電用に用いることができるので、発電効率の低下を防止できる。また、予熱した燃焼用空気から熱回収を行わないので、燃焼効率の低下も防止できる。さらに、廃熱ボイラから排出されるボイラ排ガスの温度は、焼却炉の高温排ガスの温度に比して低温であるので、熱回収に用いる熱交換器の損耗を抑制することもできる。
【0012】
また本発明において、ボイラでの熱回収率の向上と熱交換器損耗抑制の観点から、前記熱交換器は、170〜250℃の前記ボイラ排ガスから熱回収することが好ましい。
【0013】
この構成によると、焼却炉の高温排ガスに比して低温の170〜250℃のボイラ排ガスから熱回収するので、その熱回収に用いる熱交換器の損耗を十分に抑制することができる。ボイラ排ガスの温度を170℃未満とすると、熱回収効率が低下するとともに熱交換器の低温腐食の問題が生じる場合がある。また、ボイラ排ガスの温度を250℃よりも大きくすると、ボイラでの熱回収量が低下してくる。
【0014】
さらに本発明において、前記蓄熱装置は、潜熱蓄熱に用いられる蓄熱材と、当該蓄熱材と直接接触することにより熱交換を行う鉱物油とを収容する直接接触式蓄熱装置であり、120〜140℃の前記鉱物油を循環させて前記回収された熱を蓄熱することが好ましい。
【0015】
この構成によると、熱媒体として用いる鉱物油の温度を120〜140℃とすることで、熱交換器の低温腐食をより抑制することができる。
【0016】
さらに本発明において、前記蓄熱材がエリスリトールであることが好ましい。この構成によると、エリスリトールの潜熱を有効に利用して蓄熱することができ、蓄熱装置の蓄熱量を大きくすることができる。
【0017】
また本発明は、その第2の態様によれば、焼却炉の廃熱ボイラと集塵機との間に設置された熱交換器により、当該廃熱ボイラから排出される170〜250℃のボイラ排ガスから熱を回収する熱回収工程と、前記回収された熱を蓄熱装置に蓄熱する蓄熱工程と、を備える焼却排熱利用方法を提供する。
【0018】
この構成によると、廃熱ボイラで発生する蒸気を全て発電用に用いることができるので、発電効率の低下を防止できる。また、予熱した燃焼用空気から熱回収を行わないので、燃焼効率の低下も防止できる。さらに、廃熱ボイラから排出されるボイラ排ガスの温度は、170〜250℃というように焼却炉の高温排ガスの温度に比して低温であるので、熱回収に用いる熱交換器の損耗を十分に抑制することができる。
【0019】
また本発明において、前記蓄熱装置は、潜熱蓄熱に用いられる蓄熱材と、当該蓄熱材と直接接触することにより熱交換を行う鉱物油とを収容する直接接触式蓄熱装置であり、前記蓄熱工程において、前記蓄熱装置と前記熱交換器との間を120〜140℃の前記鉱物油を循環させて前記回収された熱を蓄熱することが好ましい。
【0020】
この構成によると、熱媒体として用いる鉱物油の温度を120〜140℃とすることで、熱交換器の低温腐食をより抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。ここでは、まず、蓄熱装置を用いた熱輸送方法、および直接接触式の蓄熱装置の構成について説明し、そのあと、当該蓄熱装置を備えた焼却排熱利用システムおよび当該システムによる焼却排熱利用方法について説明する。
【0022】
(蓄熱装置を用いた熱輸送方法)
図1は、蓄熱装置1を用いた熱輸送方法について説明するための模式図である。図1に示すように、この熱輸送方法は、廃棄物焼却施設100で発生した排熱を、蓄熱装置1を介して、例えば病院、学校、温水プール、およびビルの暖房設備などの熱利用施設200へ輸送するための方法である。蓄熱装置1は、輸送車両3の荷台2に搭載されて搬送される。
【0023】
まず、廃棄物焼却施設100で発生した排熱をトラックなどの輸送車両3の荷台2に搭載した蓄熱装置1に蓄え、この蓄熱装置1を熱利用施設200へ搬送する(図1(a)参照)。そして、蓄熱装置1から熱利用施設200へ熱供給し、熱供給完了後、蓄熱装置1を廃棄物焼却施設100へ戻す(図1(b)参照)。このように、蓄熱装置1は、輸送車両3の荷台2に搭載された状態で、廃棄物焼却施設100と熱利用施設200との間を必要に応じて繰り返し往復する。なお、図1における矢印のうち、点線の矢印は輸送車両3の移動方向を示し、実線の矢印は熱の移動方向を示している。
【0024】
(蓄熱装置)
次に、蓄熱装置1について説明する。図2は、蓄熱装置1の模式図である。図2に示すように、蓄熱装置1は、潜熱蓄熱に用いられる蓄熱材12と、蓄熱材12を収容する蓄熱容器11と、蓄熱材12と比較して比重の小さい熱媒体13を蓄熱容器11の外部から蓄熱容器11の内部へ供給するための供給管14と、蓄熱容器11の内部に供給された熱媒体13を蓄熱容器11の外部へ排出するための排出管15とを備えている。
【0025】
蓄熱容器11は、例えば鋼板製の容器(タンク)である。グラスウールなどの断熱材により被覆されたり、二重構造の容器とされたりすることで、蓄熱容器11は断熱性が高められる。
【0026】
蓄熱材12としては、潜熱(融解熱)が大きく常温で固体となる物質を採用することが好ましく、このような物質として、例えば、エリスリトールが挙げられる。エリスリトールは、融点:約121℃、融解熱:約340kJ/kg、の物質であり、常温で固体となっている。なお以降の説明では、特記なき限り、蓄熱材12としてエリスリトールを採用したものとする。また、熱媒体13としては、蓄熱材12と完全に分離した状態を維持できる物質を採用することが好ましく、このような物質として、例えば、鉱物油が挙げられる。なお以降の説明では、特記なき限り、熱媒体13として鉱物油を採用したものとする。
【0027】
なお、蓄熱材12として、酢酸ナトリウム三水和物を採用することもできる。酢酸ナトリウム三水和物は、融点:約58℃、融解熱:約250kJ/kg、の物質であり、常温で固体となっている。また、蓄熱材としては、水などの蓄熱材を採用してもよい。水は比熱が非常に大きい液体であり(比熱:1cal/g)、蓄熱材として好適である。熱利用施設200が銭湯や温水プールなどのような温水を直接使用する施設の場合は、蓄熱材として蓄熱容器11に蓄えた温水を、熱利用施設200にて直接利用できるという点で、熱ロスを少なくすることができる。
【0028】
廃棄物焼却施設100からの排熱により加熱された(または、熱利用施設200へ放熱した)熱媒体13は、図2に示す供給菅14から、蓄熱容器11に収容されている蓄熱材12内へ供給され、蓄熱材12に対して直接接触することで当該蓄熱材12と熱交換しながら、蓄熱材12と熱媒体13との比重差により上昇(浮上)する。そして、熱媒体13は、蓄熱材12の上方に形成された熱媒体13の層へ到達するようになっている。熱媒体13の層に到達し、放熱(受熱)した熱媒体13は、廃棄物焼却施設100の排熱により加熱されるために(または、熱利用施設200へ放熱するために)排出管15から外部に排出される。
【0029】
(焼却排熱利用システム)
次に、焼却排熱利用システムについて説明する。図3は、焼却排熱利用システム101を示すブロック図である。図3に示すように、焼却排熱利用システム101は、廃棄物焼却施設100に、熱交換器23および蓄熱装置1を組み込んだものである。以下の説明では、まず、廃棄物焼却施設100についてその概要を説明し、その後、熱交換器23および蓄熱装置1について説明する。なお、熱交換器23は、廃棄物焼却施設100に対して組み込んだ機器ではなく、廃棄物焼却施設100自体を構成する一構成機器として把握することもできるが、いずれにしても焼却排熱利用システム101を構成する機器であることにかわりはない。
【0030】
(廃棄物焼却施設)
図3に示すように、廃棄物焼却施設100は、投入された廃棄物を焼却処理する焼却炉21を備えている。焼却炉21としては、流動床式炉、ストーカ式炉およびガス化溶融炉などがある。本実施形態では、処理量が10,417kg/h/炉(250t/d/炉)の焼却炉21としている。
【0031】
また、廃棄物焼却施設100は、焼却炉21から排出される排ガスの流れの上流側から順に、廃熱ボイラ22、バグフィルタ24(集塵機)、再加熱器25、触媒反応塔26、および煙突27を備えている。また、廃棄物焼却施設100は、廃熱ボイラ22で発生した蒸気により駆動される蒸気タービン28、および発電機29を備えている。
【0032】
焼却炉21から排出された800〜900℃の高温の排ガスは、後段に設置された廃熱ボイラ22に入る。廃熱ボイラ22で高温の排ガスから熱回収されたことによって発生した蒸気(37,000kg/h/炉)は、蒸気タービン28に供給され、タービンを回転させる。タービンが回転することにより発電機29にて発電する。発電量は、約2万kW/3炉となる。なお、廃熱ボイラ22で発生する蒸気の温度は、300〜400℃であり、その圧力は3〜4MPaである。
【0033】
一方、廃熱ボイラ22で熱回収されたのちに排出された約190℃のボイラ排ガスは、後述する熱交換器23内を通り約170℃の温度まで低下する。この排ガスは、バグフィルタ24へ送られ排ガス中に含まれる粉塵や酸性ガスが除去される。その後、再加熱器25で約210℃まで昇温された後、触媒反応塔26に入る。触媒反応塔26内にて、アンモニアと排ガス中の窒素酸化物とが反応し、窒素酸化物は無害な窒素と水とに分解される。触媒反応塔26を出た排ガスは、煙突27から大気中に排出される。煙突出口での排ガス温度は約200℃で、その排ガス量は59,000mN/h/炉となる。
【0034】
(熱交換器および蓄熱装置)
熱交換器23は、廃熱ボイラ22とバグフィルタ24との間に設置される。熱交換器23としては、プレート式熱交換器などがある。熱交換器23には、廃熱ボイラ22から約190℃のボイラ排ガスが供給される。
【0035】
熱交換器23には、熱媒循環経路16を介して蓄熱装置1が接続される。蓄熱装置1に収容された(蓄熱容器11に収容された)熱媒体13がポンプPにより熱媒循環経路16内を循環させられる。本実施形態では、蓄熱装置1の蓄熱量は、1.6GJ/h/炉となる。
【0036】
(焼却排熱利用方法)
次に、焼却排熱利用システム101による焼却排熱利用方法について説明する。まず、蓄熱装置1の供給管14および排出管15を熱媒循環経路16に接続する。その後、ポンプPを動作させ、熱媒体13を、熱媒循環経路16内を循環させる。本実施形態では、熱媒体13の循環量は、40m/h/炉としている。
【0037】
(熱回収工程)
熱交換器23により、廃熱ボイラ22で熱回収されたのちに排出される約190℃のボイラ排ガスから排熱を回収する。約190℃のボイラ排ガスと、熱媒循環経路16内を循環する熱媒体13とが、熱交換器23内にて間接接触することにより、ボイラ排ガスから熱媒体13へ熱が移動する。
【0038】
(蓄熱工程)
熱交換器23内で約140℃に昇温した熱媒体13は、熱媒循環経路16を通って蓄熱装置1に戻り、蓄熱容器11内の蓄熱材12と直接接触することで蓄熱材12に熱が蓄熱される。蓄熱材12に放熱した熱媒体13は、約120℃まで温度が下がり、蓄熱容器11から排出されて再び熱交換器23内に入っていく。
【0039】
(熱輸送工程)
蓄熱容器11内の蓄熱材12への蓄熱が完了すると、蓄熱装置1と熱媒循環経路16との接続を解除し、図1に示した方法などで、蓄熱容器11を熱利用施設200へ搬送する。そして、蓄熱装置1から熱利用施設200へ熱交換器(不図示)などを介して熱供給することになる。
【0040】
以上説明したように、この焼却排熱利用システム101によると、廃熱ボイラ22で発生する蒸気を全て蒸気タービン28に供給して発電用に使用することができるので、発電効率の低下を招くことはない。また、予熱した燃焼用空気から熱回収を行っていないので、焼却炉21の燃焼効率の低下を招くこともない。さらに、廃熱ボイラ22にて熱回収されたのちに排出される約190℃という焼却炉21の高温排ガスに比して低温のボイラ排ガスから熱回収するので熱交換器23の損耗を十分に抑制することができる。なお、ボイラ排ガスの温度は、170℃以上250℃以下とすることが好ましい。ボイラ排ガスの温度を170℃未満とすると、熱回収効率が低下するとともに廃熱ボイラ23および熱交換器23の低温腐食の問題が生じる場合がある。また、ボイラ排ガスの温度を250℃よりも大きくすると、ボイラ回収熱量が下がるため発電効率が低下してくる。
【0041】
また、熱媒循環経路16を循環させる熱媒体13の温度を120〜140℃とすることで、熱交換器23の低温腐食をより抑制することができる。ここで、排ガス中には、20〜30%の割合で水分が含まれている。低温腐食とは、熱交換器23内の鉄皮表面などに結露が発生し、排ガス中に含まれる塩素ガスやSOx(硫黄酸化物)などの腐食性ガスがこの結露中に溶け込んで生じる腐食のことである。
【0042】
また、蓄熱材12としてエリスリトールを採用することで、エリスリトールの潜熱を有効に利用して蓄熱することができ、蓄熱装置1の蓄熱量を大きくすることができる。
【0043】
また、通常、廃熱ボイラ22とバグフィルタ24との間には、排ガス温度を下げるための減温塔を設置するが、本発明の焼却排熱利用システムによると、減温塔は不要となるので、その分、廃棄物焼却施設100の設置スペースを小さくすることができる。また、減温塔で熱を捨てることなく利用するので、設備全体として排熱利用率を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。図4は、焼却排熱利用システム101を示すブロック図である。図4は、図3の焼却排熱利用システムの触媒反応塔26と煙突27との間に第2熱交換器30が設けられており、第2熱交換器30にも熱媒循環経路16が接続されている以外は、図3に示す焼却排熱利用システム101と同じ構成であって、同一名称ならびに同一符号が付されている。
【0045】
図4における焼却排熱利用システム101では、廃熱ボイラ22での熱回収能力を強化し、高温の排ガスを170℃まで熱回収することで、さらなる発電効率の向上が可能となる。ただし、廃熱ボイラ22で170℃まで熱回収をした場合、熱交換器23でのボイラ排ガスからの熱回収する熱量が減少することになる。そこで、触媒反応塔26の出口に第2熱交換器30を設け、触媒反応塔26から排出される170℃〜220℃の排ガスから熱回収することにより従来煙突から放出されていた未利用エネルギーであった触媒反応塔26の出口排ガスの回収・有効利用が可能となる。
【0046】
また、触媒反応塔26の出口排ガスは、排ガス中のダストおよび酸性ガスが除去された状態であるため、第2熱交換器30の損耗をより抑制することができる。
【0047】
以上のとおり、この実施形態における焼却排熱利用システム101においては、未利用エネルギーの有効利用と発電効率の向上が両立でき、プラントの総合熱効率の向上が可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】蓄熱装置を用いた熱輸送方法について説明するための模式図である。
【図2】蓄熱装置の模式図である。
【図3】焼却排熱利用システムを示すブロック図である。
【図4】別の実施形態における焼却排熱利用システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1:蓄熱装置(直接接触式蓄熱装置)
12:蓄熱材
13:熱媒体
16:熱媒循環経路
21:焼却炉
22:廃熱ボイラ
23:熱交換器
24:バグフィルタ(集塵機)
30:第2熱交換器
100:廃棄物焼却施設
101:焼却排熱利用システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された廃棄物を焼却処理する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスを用いて蒸気を発生させる廃熱ボイラと、
前記廃熱ボイラの下流側に設置される集塵機と、
前記廃熱ボイラと前記集塵機との間に設置され、前記廃熱ボイラで熱回収されたのち排出されるボイラ排ガスから熱を回収する熱交換器と、
前記熱交換器と接続され、前記回収された熱を蓄熱する蓄熱装置と、
を備える焼却排熱利用システム。
【請求項2】
請求項1に記載の焼却排熱利用システムにおいて、
前記熱交換器は、170〜250℃の前記ボイラ排ガスから熱回収することを特徴とする、焼却排熱利用システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の焼却排熱利用システムにおいて、
前記蓄熱装置は、潜熱蓄熱に用いられる蓄熱材と、当該蓄熱材と直接接触することにより熱交換を行う鉱物油とを収容する直接接触式蓄熱装置であり、120〜140℃の前記鉱物油を循環させて前記回収された熱を蓄熱することを特徴とする、焼却排熱利用システム。
【請求項4】
請求項3に記載の焼却排熱利用システムにおいて、
前記蓄熱材がエリスリトールであることを特徴とする、焼却排熱利用システム。
【請求項5】
焼却炉の廃熱ボイラと集塵機との間に設置された熱交換器により、当該廃熱ボイラから排出される170〜250℃のボイラ排ガスから熱を回収する熱回収工程と、
前記回収された熱を蓄熱装置に蓄熱する蓄熱工程と、
を備える焼却排熱利用方法。
【請求項6】
請求項5に記載の焼却排熱利用方法において、
前記蓄熱装置は、潜熱蓄熱に用いられる蓄熱材と、当該蓄熱材と直接接触することにより熱交換を行う鉱物油とを収容する直接接触式蓄熱装置であり、
前記蓄熱工程において、前記蓄熱装置と前記熱交換器との間を120〜140℃の前記鉱物油を循環させて前記回収された熱を蓄熱することを特徴とする、焼却排熱利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−151432(P2010−151432A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333027(P2008−333027)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】