説明

廃棄電池の処理方法および電池構成要素の回収方法

【課題】廃電池の解体前の放電処理において、負極集電体等の溶出による他の電池構成要素の汚染や、電極活物質を初めとする電池構成要素の劣化を抑制し、有効に電池構成要素を再利用することが可能な廃棄電池の処理方法を提供する。
【解決手段】廃棄電池の残存電力を放電させる廃棄電池の処理方法において、廃棄電池における正極−負極間の電圧を、負極電位が該負極に含まれる集電体および/または該負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より卑な電位となるように制御して、該廃棄電池の残存電力の一部または全部を放電させる廃棄電池の処理方法。解体された電池から回収された電極活物質を初めとする電池構成要素は、劣化が少ないため、新たな電池の電池構成要素として再使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池などの廃棄電池の処理方法および処理後の電池から再利用可能な電極活物質等の電池構成要素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の活物質にはコバルト、ニッケル、マンガン、リチウムなどの希少金属成分が含有されており、特に非水電解質二次電池の正極活物質には、上記の希少金属成分を主成分とする化合物が利用されている。希少金属成分の資源を保全するために、二次電池の電池廃材から、希少金属成分を回収する方法が求められている。
リチウム二次電池などの電池には、電極活物質や集電体として有価金属元素が含まれるが(例えば、特許文献1参照)、資源の有効利用の観点から使用済みの電池や製造工程で生じる不良品から有価金属元素を回収することが重要である。
【0003】
従来、使用済み電池の廃棄は、一般的に各地方自治体や電池業界で準備したボール箱、金属製の缶、プラスチック製の容器等からなる電池回収箱や、メーカー指定の保管場所に集めて一時保管し、それを所定期間保管した後に専用業者に引き渡すことによって廃棄処理が行われてきた。更に今後は、自動車駆動用や定置用など、幅広い用途に大型を含む様々な電池が大量に使用されるようになると予想され、それに伴い廃棄電池も様々な回収ルートにより、大量に回収、廃棄処理が行われるようになると予想される。
廃電池や電池不良品から有価金属元素を取り出す場合、従来は電池容器と共に電極群や集電体を、細片に破砕し、次いで、破砕後の細片を適当な薬剤にて溶解することによって、電極群などに含まれる有価金属元素を、原料化合物にして回収していた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、廃電池には劣化した電池構成要素のみならず、劣化していない電池構成要素を含む。そのため、劣化していない電池構成要素(特に電極活物質)をそのままリサイクルする処理方法が近年検討されている。この方法では、特に比較的コスト高な正極活物質を、そのまま、あるいは比較的簡単な処理によって新しい電池に使用することができるため、電池のリサイクルコストを低減することが期待できる。
【0005】
ところで、電池は、劣化して容量が機器に対して期待されている駆動可能な容量を下回ると1回の充電で駆動できる時間が短くなり充電が頻繁に必要になったり、充分な駆動出力が出せなくなるなどで、使用に耐えられなくなくなるため、通常はその段階で廃棄処分されるが、その段階でも電池は残余電気エネルギーを有していることも多い。
しかしながら、このような従来行われてきた使用済電池の処理方法では、専用業者が廃棄処理する前に、その廃棄されてまだ電気エネルギーが残っている電池を誤った扱いによってショートさせたり接触した場合、発熱や感電等の事故により被災する恐れがあった。
さらに、使用済みの二次電池などの廃電池から各種有用金属成分を回収する場合、一般的には廃電池を破砕解体し、選別して有用金属成分などを回収する。しかし、この破砕時に充電エネルギーによって破砕物が発熱し、電池内の可燃物が発火する可能性があった。 このため、解体処理する際に発熱発火しないように、充電状態の廃電池をどのように無害化するかが大きな問題となっていた。
【0006】
電池解体に際して、残存エネルギーによる事故防止のため、事前に安全に短絡する方法について提案されている。
例えば特許文献3には、使用済みの電池を内面側が導電性を有している袋に入れ、該電池の陽極と陰極を前記袋の内面に共に接触させることにより該電池に残っている電気エネ
ルギを放電させる使用済電池の処理方法が開示されている。また、特許文献4には、使用済み電池を導電性の液体に浸漬して残存電力を放電させる使用済み電池の処理方法が開示されている。さらに、特許文献5には、廃電池を解体処理する前に、放電容器に充填した導電性粉粒体内に電極部を露出させた廃電池を埋め込み、そのまま又は該導電性粉粒体に圧力を加えながら放電させる廃電池の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−197004号公報
【特許文献2】特開平6−322452号公報
【特許文献3】特開平8−298139号公報
【特許文献4】特開平8−306394号公報
【特許文献5】特開2004−355954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、廃棄電池の残存電力を放電させた後に解体する廃棄電池の処理方法において、残存電力の放電を無制御に行うと、廃棄電池における負極電位が、該負極に含まれる集電体や該負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より貴な電位となり、前記集電体や前記金属部が溶出し、他の電池構成要素(特に電極活物質)を汚染するというという問題がある。また、放電を短期間に行う場合、発熱によって、電池が燃え出す恐れがあり、広い放電スペースを必要とする。さらに、電極活物質の種類にもよるが、残存電力を放電しすぎると、電極活物質が不可逆的に変質することがあり、そのままリサイクルして使用することができない場合がある。
しかしながら、上述の特許文献3〜5で開示された従来の使用済みの電池の処理方法では、資源回収が目的であったので、負極集電体等の溶出による汚染や、放電のしすぎによる活物質の変質について考慮はされていなかったのが実状である。
【0009】
かかる状況下、本発明の目的は、廃棄電池の残存電力を放電させる廃棄電池の処理方法において、負極集電体等の溶出による他の電池構成要素の汚染や、放電のしすぎによる活物質の変質による、廃電池における、電極活物質を初めとする電池構成要素の劣化を抑制し、有効に電池構成要素を再利用することが可能な廃棄電池の処理方法および電池構成要素の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 廃棄電池の残存電力を放電させる廃棄電池の処理方法において、
廃棄電池における正極−負極間の電圧を、負極電位が該負極に含まれる集電体および/または該負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より卑な電位となるように制御して、該廃棄電池の残存電力の一部または全部を放電させる廃棄電池の処理方法。
<2> 前記廃棄電池における正極−負極間の電圧を0〜2.5Vの範囲に制御して放電させる前記<1>記載の廃棄電池の処理方法。
<3> 放電時の電流レートが、0.001〜10Cの範囲に制御して放電させる前記<1>または<2>に記載の廃棄電池の処理方法。
<4> 処理後の廃棄電池の残存電力が、初期電池容量の10%以下となるように放電させる前記<1>から<3>のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
<5> 前記廃棄電池が、保護回路で電圧制御されて使用された廃棄電池であって、
前記保護回路の設定電圧以下となるように、該廃棄電池における正極−負極間の電圧を制御して放電させる前記<1>から<4>のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
<6> 前記廃棄電池の残存電力の放電を、廃棄電池の保管中及び/または運搬中に行う前記<1>から<5>のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
<7> 前記廃棄電池が、下記の元素群1から選ばれる1種以上の元素と、元素群2から選ばれる1種以上の元素とを含有する複合酸化物からなる正極活物質を含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
元素群1:Ni、Co、Mn、Fe、Al、P
元素群2:Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg
<8> 前記正極活物質の比表面積が5m2/g以上100m2/g以下である前記<7>記載の廃棄電池の処理方法。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかの処理方法にて放電させた廃棄電池を解体し、再利用可能な電池構成要素を回収することを特徴とする電池構成要素の回収方法。
<10> 前記再利用可能な電池構成要素が、正極活物質である前記<9>記載の電池構成要素の回収方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の処理方法によれば、廃棄電池を、安全に電池構成要素の品質劣化を抑制して安定的に処理することができる。本発明の処理方法によって解体された電池から回収された電池構成要素(特に正極活物質)は、劣化が少ないため、新たな電池の電池構成要素(特に正極活物質)として再使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、廃棄電池の残存電力を放電させる廃棄電池の処理方法において、廃棄電池における正極−負極間の電圧を、負極電位が該負極に含まれる集電体および/または該負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より卑な電位となるように制御して、該廃棄電池の残存電力の一部または全部を放電させた後に解体する廃棄電池の処理方法(以下、「本発明の処理方法」と称す。)に関する。
本発明において、「廃棄電池」とは、いわゆる、使用済み電池に限られず、電池の製造工程で生じる不良品も含む。
【0014】
本発明の処理方法において、廃棄電池における正極−負極間の電圧を、負極電位が該負極に含まれる集電体(以下、「負極集電体」と称す場合がある)や、負極と電気的に接続している金属部(以下、「負極接続金属部」と称す場合がある。)の溶出電位より卑な電位となるように制御することにより、該負極集電体および/または負極接続金属部の成分が、電解液中に溶解させることなく、廃棄電池の残存電力の一部または全部を、放電させることが可能となる。その結果、回収対象の電極活物質を初めとする電池構成要素が、上記負極に含まれる集電体や負極と電気的に接続している金属部由来の成分によって汚染されることを防止することができるため、放電させた廃棄電池を解体して電池構成要素の再利用が容易となる。ここにいう、「電池構成要素」とは、電池を構成する要素のすべてを意味し、具体的には、電極活物質(正極活物質、負極活物質)、集電体(正極集電体、負極集電体)、セパレータ、電解液等が挙げられる。
すなわち、本発明の電池構成要素の回収方法は、本発明の処理方法にて放電させた廃棄電池を解体し、再利用可能な電極活物質を回収することを特徴とする。
電池構成要素のなかでも、回収対象としては、電極活物質、特には正極活物質が好適な対象である。
【0015】
本発明の処理方法は、その処理対象が、負極に含まれる集電体および/または該負極と電気的に接続している金属部が、Cu、Fe、Ni、Co、Al、Si、Ge、Ag、In、Bi、Pb、Zn、Mn、Sb、Sn、Ti、V、Nb、Cr、W、Mo、MgおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものに対して好適に適用でき、特に該金属部が銅(Cu)である場合に好適に適用できる。
銅は、安価で導電性が高く、電池の負極側の集電体や導線としてよく使用される。銅は溶出電位が比較的高いため、銅を負極側の集電体として使用すると、放電による負極活物質からの電荷移動を担うイオン(例えば、リチウム二次電池の場合のリチウムイオン、以下、「電荷移動イオン」と称す場合がある。)の放出が正極の放電終止電圧付近まで可能となる。そのため、前記金属部として銅を使用すると、負極側の集電体や負極と電気的に接続している金属部に起因する金属イオンの溶解による不純物の混入を防ぎながら、多くの電荷移動イオンを正極に戻すことができる。
【0016】
また、本発明の処理方法は、その処理対象である廃棄電池が、下記の元素群1から選ばれる1種以上の元素と、元素群2から選ばれる1種以上の元素とを含有する複合酸化物からなる正極活物質を含む二次電池に好適に適用でき、特に前記正極活物質の比表面積が5m2/g以上100m2/g以下である二次電池に好適に適用できる。
元素群1:Ni、Co、Mn、Fe、Al、P
元素群2:Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg
【0017】
本発明の処理方法は、対象となる廃棄電池が、保護回路で電圧制御されて使用された廃棄電池に対して好適である。ここで、「保護回路」とは、電池の充放電終止条件を制御し、電池の過充電、過放電を回避するための電子回路をいう。
保護回路で電圧制御されて使用された廃棄電池は、保護回路の設定電圧で制御された電圧範囲で使用されるため、過充電や過放電による活物質の劣化が抑制される結果、比較的品質が安定で、全電池容量に対して使用できない容量が比較的多く残存している。
そのため、このような廃棄電池を処理する場合において、保護回路の設定電圧以下となるように、処理対象の廃棄電池における正極−負極間の電圧を制御して放電させることが好ましい。
【0018】
本発明の処理方法において、廃棄電池における正極−負極間の電圧を0V以上2.5V以下の範囲に制御して放電させることが好ましい。
このような条件で放電させると、電極活物質の変質が避けられるため、活物質の再生が容易になる。
【0019】
また、放電時の電流レートが、0.001C以上10C以下の範囲に制御して放電させることが好ましい。
このような放電時の電流レートが、上記範囲であると放電による発熱がそれほど大きくならず、放電中の過熱による電池燃焼などの問題を回避でき、処理時の安全性が確保できる。更に負極側電位の過度の上昇や正極側電位の過度の低下も起こりにくくなるため、電池構成要素の品質が安定に維持された状態で、深い放電が可能となり、多くの電荷移動イオンが電池組立て時の初期状態に近づくため、電池構成要素の品質が安定に維持される。
また、安全性の観点からは、冷却しながら放電させることが好ましく、処理時間短縮の観点からは、80℃を上限に過熱しながら放電させることが好ましい。
さらに、上記放電時の電流レートの範囲内において、放電処理を最大電圧で行い続ける(電流レートを連続的に低下させながら行う。)と処理時間を短縮させることができて、好ましい。
【0020】
本発明の処理方法において、処理後の残存電力が、初期電池容量の10%以下となるように放電させることが好ましい。
処理後の残存電力が、初期電池容量の10%以下であると、電池を解体する際の危険性が著しく低下するとともに、多くのリチウムが電池組立て時の初期状態に近づくため、電池構成要素の品質が安定に維持される。
【0021】
また、前記廃棄電池の残存電力の放電を、廃棄電池の保管中及び/または運搬中に行うことが好ましい。これにより、残存電力を、廃棄電池の一時集積場や輸送中に放電することができるため、より早く安定な状態にしておくことができ、電池構成要素の品質劣化を防止できるとともに、処理場のスペースを小さくすることができる。また、一定数量が集積されるまでに時間を要するため、廃棄電池の処理場に移動するまでに、ある期間を要する場合などは、放電電流を小さくできるので、負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より卑な電位を維持しながら、より多くの電荷移動イオンを正極に戻すことが可能になる。
【0022】
本発明の処理方法は、従来公知の一次電池、二次電池が対象となる。その中でも、本発明の処理方法は、電池の残存電力を安全に放電できることから、可燃性の電解液を含む非水二次電池、特にはリチウム二次電池に対して好適に適用できる。
【0023】
以下、本発明の処理方法の実施形態を具体的に例示するが、本発明の処理方法はここで示す実施形態に限定されるものではない。
【0024】
(1)廃棄電池の分類、放電処理までの手順
まず、廃棄電池を、電池構成別に電池に分類する。具体的には、回収目的となる電池構成要素(特に電極構成)が同一である電池(以下、「同構成の電池」と称す。)になるようにそれぞれの廃棄電池を分類する。
【0025】
(2)同構成の電池のグループ分類
同構成の電池について、外観等の異常のあるものを除いた後、容量、内部抵抗、放電末期の電圧降下挙動の近いものを、いくつかのグループに分類する。
【0026】
(3)各グループの限界電圧の設定
各グループからサンプルとして数個の電池を抜き取り、それらのサンプル電池について参照極を挿入して放電を行い、電池電圧と負極側電位との関係から、負極電位が該負極に含まれる集電体および/または該負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より卑な電位に維持される電池電圧の限界を確認する。
なお、負極の溶出電位は、サイクリックボルタンメトリー法よって求めることができる。
【0027】
(4)放電処理
上記(3)で確認した電池電圧の限界電圧以上の電圧を放電終止電圧として、グループごとに放電処理を行う。
なお、放電終止電圧の決定は、上記のように参照極を使用して求めた限界電圧に基づく直接的な方法でなく、放電特性で分類、参照極を用いた代表データにより間接的に決定してもよい。
また、電圧、抵抗、周波数応答などの電気化学的情報ではなく、廃棄電池を光、音波、放射線、温度、熱等にて分析した情報から適当な放電終止電圧を決定してもよい。
【0028】
以下、本発明の処理方法の好適な処理対象である、非水二次電池における構成要素について説明する。非水二次電池は、電極(正極及び負極)、セパレータ、電解液、固体電解質等を電池構成要素として含む。
【0029】
<1.電極>
電池を構成する電極は、集電体と集電体の上に担持された電極合剤とから構成される。
【0030】
<1.1.集電体>
集電体としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、スズ、ステンレスなどの導電体が用いられる。リチウム二次電池の場合、リチウムと合金を作り難い点、薄膜に加工しやすいという点で、銅が好適に用いられる。
集電体には、加圧成型する方法や電極合材ペーストを固着する方法で電極合材を担持されている。
特に、廃棄電池の負極集電体が、銅、ニッケル、鉄、チタン、スズおよびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種であると、本発明の処理方法が好適に適応できる。
また、廃棄電池の正極集電体が、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも一種であると、本発明の処理方法が好適に適用できる。
【0031】
<1.2.電極合剤>
電極合剤は、電極活物質(以下、単に「活物質」と記載する場合がある。)、導電材及び結着材からなる。
<1.2.1.活物質>
活物質のうち、正極活物質として、リチウム、酸素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、タングステン、などを構成元素とする複合化合物が挙げられる。
また、負極活物質として、リチウム、炭素、酸素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、タングステン、などを構成元素とする、金属、合金、複合化合物および黒鉛、コークスなどの炭素材料が挙げられる。
なお、活物質は単一化合物でもよいし、複数の化合物から構成されていてもよい。
【0032】
本発明における好適な対象となる正極活物質としては、リチウム、酸素、ナトリウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、リン、硫黄、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、コバルト、ガリウム、モリブデン、インジウム、タングステンなどを構成元素とした複合化合物が挙げられる。
また、本発明における好適な対象となる非水二次電池の正極活物質としては、下記の元素群1から選ばれる1種以上の元素と、元素群2から選ばれる1種以上の金属とを含有する複合酸化物が挙げられる。
元素群1:Ni、Co、Mn、Fe、Al、P
元素群2:Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg
この中でも、元素群1がNi、Co、Mn、Fe及びPから選ばれる1種以上であり、元素群2がLiであるリチウム遷移金属複合酸化物や、元素群2がNaであるナトリウム遷移金属複合酸化物が好ましく、特にリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
具体的には、リチウム遷移金属複合酸化物として、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni,Co)O2、Li(Ni,Mn)O2、Li(Ni,Mn,Co)O2、LiMn24、Li(Mn,Fe)24、Li2MnO3、Li2NiO3、Li2(Ni,Mn)O3、LiFePO4、LiMnPO4などを挙げることができ、これらは1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。
ナトリウム遷移金属複合酸化物として、具体的には、NaCoO2、NaNiO2、Na(Ni,Co)O2、Na(Ni,Mn)O2、Na(Ni,Mn,Co)O2、NaMn24、Na(Mn,Fe)24、NaFePO4、NaMnPO4などを挙げることができ、これらは1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
活物質としての上記複合酸化物の結晶構造には、特に制限はないが、好ましい結晶構造として、層状構造が挙げられる。さらに好ましくは、六方晶型または単斜晶型の結晶構造が好ましい。
前記六方晶型の結晶構造は、P3、P31、P32、R3、P−3、R−3、P312、P321、P3112、P3121、P3212、P3221、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P−31m、P−31c、P−3m1、P−3c1、R−3m、R−3c、P6、P61、P65、P62、P64、P63、P−6、P6/m、P63/m、P622、P6122、P6522、P6222、P6422、P6322、P6mm、P6cc、P63cm、P63mc、P−6m2、P−6c2、P−62m、P−62c、P6/mmm、P6/mcc、P63/mcmおよびP63/mmcからなる群より選ばれるいずれか一つの空間群に帰属する。
前記単斜晶型の結晶構造は、P2、P21、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P21/m、C2/m、P2/c、P21/cおよびC2/cからなる群より選ばれるいずれか一つの空間群に帰属する。
さらに好ましくは、六方晶型の結晶構造に含まれるR−3mまたは単斜晶型の結晶構造に含まれるC2/mの空間群に帰属することが好ましい。
なお、活物質の結晶構造はCuKα線を線源とする粉末X線回折測定により得られる粉末X線回折図形から同定される。
【0034】
本発明で回収対象となる活物質の比表面積は、通常、0.01〜200m2/gである。なお、本発明の方法は、比表面積が5〜100m2/gである活物質に好ましく適用できる。比表面積は窒素ガスを用いるBET比表面積する。
【0035】
本発明で回収対象となる活物質の粒子径には特に制限はない。通常、廃棄電池に含まれる、活物質の粒子径は、0.001〜100μm程度である。なお、活物質の一次粒子の粒径は、電子顕微鏡写真にて測定できる
【0036】
<1.2.2.導電材>
廃棄電池に含まれる導電材としては、金属粒子等の金属系導電材や炭素材料からなる炭素系導電材が挙げられ、通常、炭素系導電材である。
炭素系導電材として、具体的には黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)および繊維状炭素材料(例えば黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブ)を挙げることができる。
なお、炭素系導電材は単一の炭素材料でもよいし、複数の炭素材料から構成されていてもよい。
また、炭素系導電材として用いられる炭素材料の比表面積は、通常0.1〜500m2/gである。炭素系導電材の酸化処理の速度を高める観点で、炭素系導電材の比表面積は、5m2/g以上であると本発明の製造方法が好ましく適用される。
なお、後述する酸化力のあるアルカリ金属化合物を含む活性化処理剤を用いることで、炭素系導電材の酸化処理の速度を高めることができる。また比表面積の小さい炭素材料であっても酸化処理することができる。
【0037】
<1.2.3.結着材>
廃棄電池に含まれる結着材としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体および四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;スチレンブタジエン共重合体(以下、SBRということがある。);が挙げられ、これらの二種以上を混合して用いられる場合もある。
【0038】
電極合材中の活物質、導電材及び結着材の配合量としては一概にはいえないが、通常、結合剤の配合量としては、正極活物質100重量部に対し、通常、0.5〜30重量部程度、好ましくは2〜30重量部程度であり、導電剤の配合量としては、正極活物質100重量部に対し、通常、1〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度であり、溶剤の配合量としては、正極活物質100重量部に対し、通常、50〜500重量部程度、好ましくは100〜200重量部程度である。
【0039】
<2.セパレータ>
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料が挙げられる。また、前記材質を2種以上用いてセパレータとしてもよいし、前記材料が積層されていてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報などに記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄くした方がよく、通常5〜200μm程度、好ましくは5〜40μm程度である。
【0040】
セパレータは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有するものでもよい。非水電解質二次電池においては、通常、正極−負極間の短絡などが原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止(シャットダウン)する機能を有することが好ましい。ここで、シャットダウンは、通常の使用温度を越えた場合に、セパレータにおける多孔質フィルムの微細孔を閉塞することによりなされる。そしてシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持することが好ましい。かかるセパレータとしては、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムが挙げられ、該フィルムをセパレータとして用いることにより、本発明における二次電池の耐熱性をより高めることが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
【0041】
<3.電解液>
二次電池において、電解液は、通常、電解質および有機溶媒から構成される。
電解質としては、アルカリ金属をカチオンとする過塩素酸塩、六フッ化リン塩、六フッ化ヒ素塩、六フッ化アンチモン塩、四フッ化ホウ素塩、トリフルオロメタンスルホナート塩、スルホンアミド化合物のトリフルオロメタンスルホン酸塩、ホウ素化合物塩およびホウ酸塩が挙げられる。これらの2種以上の混合物であってもよい。
リチウム塩について例を示すと、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(COCF3)、Li(C49SO3)、LiC(SO2CF33、Li210Cl10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalate)borateのことである。)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などのリチウム塩が挙げられる。リチウム塩として、通常、これらの中でもフッ素を含むLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32およびLiC(SO2CF33からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0042】
また、前記電解液において、有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;が挙げられる。
または、前記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものでもよい。通常は前記有機溶媒のうちの二種以上を混合して用いられている。
【0043】
前記の電解液の代わりに固体電解質が用いられている場合もある。
固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも1種以上を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。
また、Li2S−SiS2、Li2S−GeS2、Li2S−P25、Li2S−B23、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li2S−SiS2−Li2SO4などの硫化物を含む無機系固体電解質を用いてもよい。
【0044】
以下、本発明の電池構成要素の回収方法(以下、「本発明の回収方法」と称す。)について説明する。
本発明の回収方法では、上記本発明の処理方法にて、放電させた廃棄電池を解体し、再利用可能な電池構成要素を回収する。廃棄電池に含まれる再利用可能な電池構成要素は、いずれも回収対象になるが、従来の方法ではリサイクルコストが比較的高い、電極活物質、特に正極活物質の回収に適する。
【0045】
放電させた廃棄電池の解体は、従来公知の方法で行えばよいが、電池の破砕時に回収対象である電池構成要素に不純物ができるだけ含まないような方法が望ましい。そのため、電池容器から電極群を傷つけずに取り出し、電極、セパレータなどを分別回収する方法が必要である。
【0046】
回収対象として好適な電極活物質の場合、まず、放電後の廃棄電池から回収目的となる活物質を含む電極を分離し、次いで、分離された電極合材を回収する。
なお、電極合材と集電体とから構成される電極から電極合材から分離する方法としては、集電体から電極合材を機械的に剥離する方法(例えば、集電体から電極合材を掻き落とす方法)、電極合材と集電体との界面に溶剤を浸透させて集電体から電極合材を剥離する方法、アルカリ性もしくは酸性の水溶液を用いて、集電体を溶解して電極合材を分離する方法などがある。好ましくは、集電体から電極合材を機械的に剥離する方法である。
【0047】
回収された電極活物質は、新しい電池にそのまま使用することもできるが、活性化処理をおこなってもよい。活性化処理の方法としては、アルカリ金属化合物と混合して熱処理する方法などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、廃棄電池から電極活物質を初めとした電池構成要素を劣化を抑制して回収でき、新たな電池の電池構成要素として再使用することができるため、工業的に有望である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄電池の残存電力を放電させる廃棄電池の処理方法において、
廃棄電池における正極−負極間の電圧を、負極電位が該負極に含まれる集電体および/または該負極と電気的に接続している金属部の溶出電位より卑な電位となるように制御して、該廃棄電池の残存電力の一部または全部を放電させることを特徴とする廃棄電池の処理方法。
【請求項2】
前記廃棄電池における正極−負極間の電圧を0V以上2.5V以下の範囲に制御して放電させる請求項1記載の廃棄電池の処理方法。
【請求項3】
放電時の電流レートが、0.001C以上10C以下の範囲に制御して放電させる請求項1または2に記載の廃棄電池の処理方法。
【請求項4】
処理後の廃棄電池の残存電力が、初期電池容量の10%以下となるように放電させる請求項1から3のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
【請求項5】
前記廃棄電池が、保護回路で電圧制御されて使用された廃棄電池であって、
前記保護回路の設定電圧以下となるように、該廃棄電池における正極−負極間の電圧を制御して放電させる請求項1から4のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
【請求項6】
前記廃棄電池の残存電力の放電を、廃棄電池の保管中及び/または運搬中に行う、請求項1から5のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
【請求項7】
前記廃棄電池が、下記の元素群1から選ばれる1種以上の元素と、元素群2から選ばれる1種以上の元素とを含有する複合酸化物からなる正極活物質を含む請求項1から6のいずれかに記載の廃棄電池の処理方法。
元素群1:Ni、Co、Mn、Fe、Al、P
元素群2:Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg
【請求項8】
前記正極活物質の比表面積が5m2/g以上100m2/g以下である請求項7記載の廃棄電池の処理方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの処理方法にて放電させた廃棄電池を解体し、再利用可能な電池構成要素を回収することを特徴とする電池構成要素の回収方法。
【請求項10】
前記再利用可能な電池構成要素が、正極活物質である請求項9記載の電池構成要素の回収方法。