説明

廃水処理方法及び廃水処理装置

【課題】廃水等に含まれる亜硝酸イオンを基質として脱窒を行う微生物を用いて廃水処理を行う。
【解決手段】亜硝酸イオンを含む廃水に対して、脱窒槽1においてジオバチルス(Geobacillus)属に属し、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有する微生物を接触させ、N2ガスを生成する脱窒工程を実行する。更に上記脱窒工程の前に、硝化槽2において廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化する硝化工程、及び脱窒工程を経た脱窒廃水を曝気槽4において曝気によりNガスを除去する曝気工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば廃水に含まれる亜硝酸イオンを基質として窒素ガスを生成する微生物を用いた廃水処理方法及び廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば廃水に含まれる窒素は、水環境における富栄養化問題の原因の一つであり、閉鎖海域等における総量規制が課せられている物質である。水環境に含まれる窒素は、一般的に、微生物による脱窒により窒素ガスにまで還元し除去される。より詳細には、廃水等に含まれるアンモニウムイオンを好気状態で硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオン等に酸化し、続いて嫌気状態で窒素ガスまで還元する。
【0003】
特許文献1には、中程度高温条件において廃水等に含まれる硝酸イオンを基質として脱窒を行うことができる新規な微生物が開示されており、当該微生物を用いた廃水処理方法及び廃水処理装置が開示されている。特許文献1によれば、これら微生物は硝酸イオンを基質とすることから、廃水中に含まれるアンモニウムイオンを硝化する際には、硝酸イオンを生成する条件(バブリングや処理時間等)に設定する必要があった。
【0004】
したがって、特許文献1に開示された廃水処理方法及び廃水処理装置によれば、硝酸イオンを得るまでに投入するエネルギーが増大し、低コストな処理方法及び処理装置とは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−238794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述したような実状に鑑み、廃水等に含まれる亜硝酸イオンを基質として脱窒を行う微生物、特に、中程度高温条件下で脱窒を行う微生物を用いた廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記特許文献に開示された微生物が硝酸イオンのみならず、亜硝酸イオンを基質として脱窒できることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下を包含する。
【0008】
(1)亜硝酸イオンを含む廃水に対して、ジオバチルス(Geobacillus)属に属し、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有する微生物を接触させ、N2ガスを生成する脱窒工程を含む廃水処理方法。
【0009】
(2)上記微生物は、以下の表1〜3のいずれかに記載された菌学的性質を有することを特徴とする(1)記載の廃水処理方法。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
(3)上記微生物は、37〜60℃の条件下において、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有することを特徴とする(1)記載の廃水処理方法。
【0014】
(4)上記微生物は、受託番号FERM P-20412、FERM P-20413及びFERM P-20414からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)記載の廃水処理方法。
【0015】
(5)上記脱窒工程の前に、廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化する硝化工程を更に含むことを特徴とする(1)記載の廃水処理方法。
【0016】
(6)上記硝化工程は、常温〜60℃の条件下においてアンモニウムイオンを亜硝酸に硝化する能力を有する微生物を使用することを特徴とする(5)記載の廃水処理方法。
【0017】
(7)上記脱窒工程後の廃水の一部を硝化工程に供することを特徴とする(5)記載の廃水処理方法。
【0018】
(8)上記脱窒工程の後、廃液中に含まれるN2ガスを除去する工程を更に含むことを特徴とする(1)記載の廃水処理方法。
【0019】
(9)亜硝酸イオンを含む廃水に対して、ジオバチルス(Geobacillus)属に属し、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有する微生物を接触させ、N2ガスを生成する脱窒槽を備える廃水処理装置。
【0020】
(10)上記微生物は、以下の表1〜3のいずれかに記載された菌学的性質を有することを特徴とする(9)記載の廃水処理装置。
【0021】
【表4】

【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
(11)上記廃水の温度を所望の温度に制御する温度制御手段を更に備えることを特徴とする(9)記載の廃水処理装置。
【0025】
(12)上記温度制御手段は、脱窒槽における廃水の温度を37〜60℃に制御することを特徴とする(11)記載の廃水処理装置。
【0026】
(13)上記微生物は、受託番号FERM P-20412、FERM P-20413及びFERM P-20414からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(9)記載の廃水処理装置。
【0027】
(14)廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化する硝化槽を更に備え、上記硝化槽から上記脱窒槽に廃水が供給されることを特徴とする(9)記載の廃水処理装置。
【0028】
(15)上記硝化槽において、常温〜60℃の条件下においてアンモニウムイオンを亜硝酸に硝化する能力を有する微生物を使用することを特徴とする(14)記載の廃水処理装置。
【0029】
(16)上記脱窒槽で処理後の廃水の一部を上記硝化槽に供給することを特徴とする(14)記載の廃水処理装置。
【0030】
(17)上記脱窒槽で処理後の廃水中に含まれるN2ガスを除去する曝気槽を更に備えることを特徴とする(9)記載の廃水処理装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、廃水等に含まれる亜硝酸イオンを基質として脱窒することができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することができる。特に、本発明においては、中程度高温条件下においても硝酸イオンを基質として脱窒できる微生物を利用する。したがって、本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置によれば、投入エネルギーを低減して低コスト化を達成することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本発明において使用する微生物は、ジオバチルス(Geobacillus)属に属し、中程度高温条件下、すなわち処理対象の溶液の温度が37〜60℃、好ましくは50〜60℃で亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有している。この微生物については、特開2006−238794号公報において、硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する新規微生物として開示されている。すなわち、本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置では、特開2006−238794号公報において、硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する新規微生物として開示された全ての微生物を使用することができる。中でも、本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置では、脱窒活性が安定し、且つ、比較的高かったTDN-01株、TDN-02株及びTDN-03株の3菌株から選ばれる1以上の微生物を使用することが好ましい。特に、本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置では、脱窒活性が最も高かったTDN-01株を使用することが好ましい。これらTDN-01株、TDN-02株及びTDN-03株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に2005年2月18日に、それぞれ受託番号FERM P-20412、FERM P-20413及びFERM P-20414として寄託されている。なお、TDN-01〜03株の16S-rDNA部分塩基配列に基づいて作成した系統樹を図6に示す。
【0034】
本発明を適用した廃水処理装置は、例えば、図1に示すように、上記微生物による脱窒を行う脱窒槽1と、硝化槽2と、脱窒槽1に対して熱を供給するコージェネレーション装置3と、脱窒槽1で脱窒した結果として生じた窒素ガスを除去するための曝気槽4とを備える。コージェネレーション装置3とは、一つのエネルギーから複数のエネルギーを取り出すシステムであり、例えば、エンジン、タービン及び/又は燃料電池(FC)等を挙げることができる。これらエンジン、タービン及び/又は燃料電池(FC)等のコージェネレーション装置3は、電気エネルギーの他に排熱回収による熱エネルギーを生じる。図1に示す廃水処理装置においては、コージェネレーション装置3で生じた熱エネルギーを脱窒槽1内の廃液に供給するような構成となっている。なお、コージェネレーションからの熱量が、脱窒槽の加温のための熱量より少ない場合は、付属のボイラ等で不足分の加熱を行うことも可能である。
【0035】
図1に示す廃水処理装置においては、先ず、硝化槽2に処理対象の廃水を供給し、その後、硝化槽2で廃水に対して空気を導入して廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化する。具体的には、硝化槽2内部では、好気的条件下で硝化能を有する微生物により硝化反応が進行する。ここで、上記微生物は、亜硝酸イオンを基質として利用できるため、硝酸イオンまで硝化反応を進める必要はない。硝化槽2で使用する微生物としては、特に種を限定するものではなく、アンモニア性の窒素を亜硝酸イオンへと硝化するアンモニア酸化細菌であれば良い。一例としては、アンモニアから亜硝酸への酸化は、Nitrosomonas属細菌、Nitrobacter属細菌、Nitrococcus属細菌等を利用して行うことができる(大森俊雄編著、環境微生物学、p25-28、昭晃堂、2000年)。アンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化した後の廃水は、硝化槽2から脱窒槽1に供給される。
【0036】
なお、上記微生物は、特開2006−238794号公報において開示したように、硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力も有するため、硝化槽2における硝化反応が硝酸イオンまで進行していても問題は生じない。
【0037】
次に、脱窒槽1において、上述した微生物により、廃水中に含まれる亜硝酸イオンを基質とする脱窒反応を進行させる。図1に示す廃水処理装置では、都市ガス等を燃料としたコージェネレーション装置3からの熱エネルギーが脱窒槽1に供給され、脱窒槽1内の廃液を中程度高温条件とする。脱窒槽1では、中程度高温条件下で廃水中に含まれる亜硝酸イオンを基質として脱窒反応を実行することができる。
【0038】
特に、本発明においては、硝化槽2における硝化反応を、亜硝酸イオンを硝酸イオンまで酸化する必要がない。したがって、本発明においては、硝化槽2内において、亜硝酸イオンを基質として硝酸イオンを生成する亜硝酸酸化細菌を使用する必要がない。これにより、硝化槽2における微生物の管理を簡素化することができる。また、硝化槽2において、好気性条件を維持するための空気の供給量を削減することができ、空気供給のためのエネルギーを省力化することができる。
【0039】
また、本発明に係る廃水処理装置においては、従来と比較して高温条件下で脱窒反応を行うことができるため、優れた反応効率を達成することができる。したがって、本発明に係る廃水処理装置は、脱窒槽1の小型化することも可能であり、低コスト化することができる。さらに、高温ではガス成分の溶解度が低下することから、脱窒反応の結果として生ずる窒素ガスを効率よく除去することができる。
【0040】
一方、硝化槽2において、アンモニア性の窒素を亜硝酸イオンへと硝化するアンモニア酸化細菌として、中程度高温条件で活性を有する微生物を使用することが好ましい。コージェネレーション3からの排熱を硝化槽2に供給することで、硝化槽2内の廃水を所望の温度に制御することができる。この場合、例えば、図2に示すように、コージェネレーション装置3からの熱エネルギーを、硝化槽2に導入する空気に与えるような構成を有していてもよい。図2に示す廃液処理装置は、空気の加温を行うため硝化槽2の温度低下を抑制することができるため、硝化槽2の反応効率を高められるとともに、脱窒槽1の流入部の温度低下を抑制することが可能になる。
【0041】
さらに、本発明に係る廃水処理装置は、図3に示すように、脱窒槽1及び/又は曝気槽4に供給された廃水の一部を硝化槽2に供給できるような配管を有するような構成であってもよい。図3に示した廃水処理装置によれば、脱窒槽1で脱窒処理した後の廃水、好ましくは窒素ガスを曝気した後の廃水の一部を硝化槽2に供給することで、廃水に含まれる未反応のアンモニア性窒素を亜硝酸イオンに硝化槽2において硝化することができる。このとき、中程度高温条件で硝化活性を有するアンモニア酸化細菌を使用した場合には脱窒槽1及び硝化槽2内部の廃水の温度をほぼ一定にできるため、廃水の供給に起因する温度低下といった不都合を回避することができる。なお、硝化槽2や脱窒槽1内部の廃液温度を制御する手段としては、コージェネレーション3に限定されず、ボイラ等の手段であっても良い。
【0042】
一方、本発明に係る廃液処理装置は、メタン発酵の廃液(消化残渣液)の処理に使用することもできる。この場合、本発明に係る廃液処理装置は、例えば図4及び5に示すような構成とすることができる。すなわち、廃水処理装置は、メタン発酵槽6と、固液分離装置7とを更に備え、メタン発酵槽6で生成したメタン等のバイオガスをコージェネレーション装置3或いはボイラ5に供給する。ここで、固液分離装置7は、図4及び5に示すように脱窒槽1や曝気槽4の後段に配設されても良いが、メタン発酵槽6と硝化槽2の間に配設させても良い。固液分離装置7がメタン発酵槽6と硝化槽2の間に配設された廃水処理装置においては、メタン発酵槽6でメタン発酵したした後の廃液(消化液残渣)が固液分離装置7で固液分離処理が行われ、分離された液分が硝化槽2に供給される。図4及び5に示す廃液処理装置においては、固液分離装置7の手前に貯留槽を設けても良い。また、必要に応じて、固液分離装置7は省略することもできる。
【0043】
図4及び5に示す廃液処理装置においては、コージェネレーション装置3或いはボイラ5の駆動に必要な燃料の少なくとも一部をメタン発酵槽6で生成したバイオガスで賄うことができる。なお、コージェネレーション装置3或いはボイラ5の駆動に必要な燃料としては、メタン発酵槽6で生成したバイオガスに加えて都市ガス等を混合して供給しても良い。図4及び5に示す廃液処理装置においても、同様に、脱窒槽1では、中程度高温条件下で廃水中に含まれる亜硝酸イオンを基質として脱窒反応を実行することができる。
【0044】
特に、メタン発酵においては、中温〜高温(35〜60℃)で発酵が行われるため、廃水(消化液残渣)の温度が高く、図4及び5に示す廃液処理装置では、図1〜3の排水処理装置に比べて高温の廃液を硝化槽2に供給することとなる。よって、図4及び5に示す廃液処理装置では、硝化槽2及びその後に続く脱窒槽1へ供給すべき熱量を低減することができる。
【0045】
以上、説明した廃水処理装置及び廃水処理方法は、上記微生物が亜硝酸イオンを基質として窒素ガスを生成するといった新規知見を技術的な特徴としており、これに起因する代表的な効果として、廃水に含まれるアンモニア性窒素を硝酸イオンまで酸化する必要がないといった投入エネルギーの削減及び低コスト化を達成している。特に、硝化処理において、中程度高温条件で活性を示す微生物を利用する場合には、脱窒処理における処理温度との温度差を僅少とできるため、処理プロセス全体を考慮したときのエネルギーロスを抑えることができる。これは、脱窒処理後の廃水の一部を硝化処理に戻すようなプロセスを採用する際に、硝化処理に戻す廃水を冷却する必要がないため特に有利な効果と言える。
【0046】
特に、アンモニア酸化反応及び亜硝酸酸化反応についてギプス自由エネルギー変化を比較すると、アンモニア酸化反応のほうがギプス自由エネルギー変化の絶対値が大きい値を示す(改訂 微生物のエネルギー代謝 第138頁、1999年10月30日発行)。すなわち、アンモニア酸化反応は、亜硝酸酸化反応と比較してより進行しやすい反応であり、反応を媒介する微生物自体がより多くのエネルギーを獲得することとなる。本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置における硝化工程では、アンモニア酸化反応により亜硝酸イオンを生成すればよく、亜硝酸酸化反応を必要としていない。このように、本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置によれば、硝化槽2における硝化反応の反応速度を高くすることができ、また、微生物の成長速度を高く維持することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕
本実施例では、特願2006−238794号公報で開示され、受託番号FERM P-20412として寄託されたGeobacillus属細菌TDN-01株を用いて、亜硝酸塩及び硝酸塩を基質とした脱窒試験を行った。
【0049】
(1)試験条件
下記組成の合成培地にKNO2をNO2-濃度が20mMになるように添加したものを準備した。
<合成培地組成(単位:/L)>
NH4Cl 0.3g
KH2PO4 1.5g
Na2HPO4 2.7g
Na2C4H4O4・6H2O(コハク酸ナトリウム) 27.0g
VS salt solution 5.0ml
PS-1 solution 5.0ml
Vitamin solution 10.0ml
【0050】
次に、500mlの枝付三角フラスコに上記溶液を200mlとTDN-01株の培養液2mlを加え、Heガスで気相置換した後、シリコン栓およびブチル栓で密閉した。フラスコ内を120rpmで攪拌しながら、60℃で培養を行った。
【0051】
一方、合成培地に添加する物質をKNO2からKNO3(NO3-濃度:20mM)に代えて、上述した試験を行った。
【0052】
(2)試験結果
上述の試験それぞれについて、24時間培養後の培地に含まれる亜硝酸イオン濃度又は硝酸イオン濃度を測定した。硝酸イオンと亜硝酸イオンは、イオンクロマトグラフにて測定した。
【0053】
その結果、KNO2を含む合成培地を用いた実験では24時間培養後、亜硝酸イオンの除去率は100%であった。また、KNO3を含む合成培地を用いた実験では24時間培養後、硝酸イオンの除去率は100%であった。なお、両実験においてフラスコ内に発生したガスは窒素であった。
【0054】
以上の結果から、供試されたGeobacillus属細菌TDN-01株は、硝酸イオンのみならず亜硝酸イオンを基質として窒素ガスを生成する能力を有することが明らかとなった。この知見は、特願2006−238794号公報において開示されておらず本実験によって初めて明らかとなったものである。
【0055】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1において得られた新規知見を利用し、実際の廃水を用いて亜硝酸イオンを経由した脱窒試験を行った。本実施例においても受託番号FERM P-20412として寄託されたGeobacillus属細菌TDN-01株を用いた。
【0056】
(1)試験条件
実廃水に亜硝酸酸化細菌を含まないアンモニア酸化細菌を加え、空気による曝気処理を行った。本実験で使用した実廃水として、下水処理場から採取したものを用いた。また、本実験で使用したアンモニア酸化細菌は、土壌から採取したものを用いた。
【0057】
具体的には、3L容ジャーファーメンターに上記実廃水を2Lとアンモニア酸化細菌を加え、30℃、曝気(通気)量は約1vvmで10日間処理した。
【0058】
曝気処理後の実廃水に含まれるNO2-濃度及びNO3-濃度をイオンクロマトグラフで測定した。その結果、曝気処理後の実廃水においてNO2-濃度は4.8mMであり、NO3-濃度は0mMであった。
【0059】
次に、曝気処理後の実廃水に、Geobacillus属細菌TDN-01株の炭素源としてコハク酸(1g/L)を添加し、実施例1と同様の条件で脱窒試験を行った。
【0060】
(2)試験結果
48時間培養後、実廃水に含まれる亜硝酸イオン濃度は検出限界以下となっており、亜硝酸イオンの除去率は100%であった。また、フラスコ内に発生したガスは窒素であった。
【0061】
この結果から、Geobacillus属細菌TDN-01株を用いることによって、廃水に含まれるアンモニア性窒素成分を硝酸イオンまで硝化する必要がなく亜硝酸イオンに硝化すれば、十分に脱窒できることが明らかとなった。したがって、硝化工程における微生物としてはアンモニア酸化細菌を単独で用いれば十分であり、亜硝酸酸化細菌を用いる必要がないことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を適用した廃水処理装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した廃水処理装置の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用した廃水処理装置の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明を適用した廃水処理装置の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明を適用した廃水処理装置の一例を示すブロック図である。
【図6】TDN−01〜03株の16S−rDNA部分塩基配列に基づく系統樹である。
【符号の説明】
【0063】
1…脱窒槽、2…硝化槽、3…コージェネレーション装置、4…曝気槽、5…ボイラ、6…メタン発酵槽、7…固液分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硝酸イオンを含む廃水に対して、ジオバチルス(Geobacillus)属に属し、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有する微生物を接触させ、N2ガスを生成する脱窒工程を含む廃水処理方法。
【請求項2】
上記微生物は、以下の表1〜3のいずれかに記載された菌学的性質を有することを特徴とする請求項1記載の廃水処理方法。
【表1】

【表2】

【表3】

【請求項3】
上記微生物は、37〜60℃の条件下において、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有することを特徴とする請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項4】
上記微生物は、受託番号FERM P-20412、FERM P-20413及びFERM P-20414からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項5】
上記脱窒工程の前に、廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化する硝化工程を更に含むことを特徴とする請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項6】
上記硝化工程は、常温〜60℃の条件下においてアンモニウムイオンを亜硝酸に硝化する能力を有する微生物を使用することを特徴とする請求項5記載の廃水処理方法。
【請求項7】
上記脱窒工程後の廃水の一部を硝化工程に供することを特徴とする請求項5記載の廃水処理方法。
【請求項8】
上記脱窒工程の後、廃液中に含まれるN2ガスを除去する工程を更に含むことを特徴とする請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項9】
亜硝酸イオンを含む廃水に対して、ジオバチルス(Geobacillus)属に属し、亜硝酸イオンを基質としてN2ガスを生成する能力を有する微生物を接触させ、N2ガスを生成する脱窒槽を備える廃水処理装置。
【請求項10】
上記微生物は、以下の表1〜3のいずれかに記載された菌学的性質を有することを特徴とする請求項9記載の廃水処理装置。
【表4】

【表5】

【表6】

【請求項11】
上記廃水の温度を所望の温度に制御する温度制御手段を更に備えることを特徴とする請求項9記載の廃水処理装置。
【請求項12】
上記温度制御手段は、脱窒槽における廃水の温度を37〜60℃に制御することを特徴とする請求項11記載の廃水処理装置。
【請求項13】
上記微生物は、受託番号FERM P-20412、FERM P-20413及びFERM P-20414からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9記載の廃水処理装置。
【請求項14】
廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに硝化する硝化槽を更に備え、上記硝化槽から上記脱窒槽に廃水が供給されることを特徴とする請求項9記載の廃水処理装置。
【請求項15】
上記硝化槽において、常温〜60℃の条件下においてアンモニウムイオンを亜硝酸に硝化する能力を有する微生物を使用することを特徴とする請求項14記載の廃水処理装置。
【請求項16】
上記脱窒槽で処理後の廃水の一部を上記硝化槽に供給することを特徴とする請求項14
記載の廃水処理装置。
【請求項17】
上記脱窒槽で処理後の廃水中に含まれるN2ガスを除去する曝気槽を更に備えることを特徴とする請求項9記載の廃水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−208007(P2009−208007A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53927(P2008−53927)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】