説明

廃水処理方法

【課題】水溶性アルコールを含み、また強酸性を示す廃水を効率的に処理し得る方法を提供する。
【解決手段】本発明の廃水処理方法は、上記廃水を、内面がガラスで構成された容器中、アルカリで中和して水素イオン濃度をpH6〜pH8とし、次いで加熱することにより前記水溶性アルコールを留去した後に、活性汚泥処理に付すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理方法に関し、詳しくは水溶性アルコールを含み強酸性を示す廃水を廃水処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水を浄化するための廃水処理方法としては、活性汚泥処理に付す方法が広く用いられている〔特許文献1:特開2006−43630号公報〕。活性汚泥処理は、廃水を活性汚泥と接触させて、廃水に含まれる有機物等を分解する方法である。かかる活性汚泥処理に使用される設備は通常、廃水と接触する面がステンレス鋼で構成されていることから、廃水が強酸性を示す場合には、予めアルカリを加えて中和したのちに、活性汚泥処理に付されている。
【0003】
しかし、強酸性を示す廃水に水溶性アルコールが含まれる場合に、これを中和しただけで活性汚泥処理に付すと、活性汚泥の活性が低下し易く、非効率であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−43630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、多くの活性汚泥を要することなく、水溶性アルコールを含み、また強酸性を示す廃水を効率的に浄化し得る廃水処理方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、水溶性アルコールを含み強酸性を示す廃水を、内面がガラスで構成された容器中、アルカリで中和して水素イオン濃度をpH6〜pH8とし、
次いで加熱することにより前記水溶性アルコールを留去した後に、
活性汚泥処理に付すことを特徴とする前記廃水の廃水処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の廃水処理方法によれば、廃水に含まれる水溶性アルコールは、活性汚泥処理に付す前に留去されるので、活性汚泥の活性低下が少なく、このため効率的に廃水処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の廃水処理方法に適用される廃水は、水溶性アルコールを含むものである。
水溶性アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどがあげられる。水溶性アルコールの濃度は、廃水100質量部中に通常1質量部〜50質量部、好ましくは5質量部〜15質量部である。
【0009】
かかる廃水は、酸を含むことにより強酸性を示す廃水である。この廃水に含まれうる酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。
【0010】
この廃水の水素イオン濃度は、通常pH6以下、好ましくはpH0.1〜pH5である。
【0011】
本発明の廃水処理方法では、先ず、かかる廃水をアルカリで中和する。
廃水を中和する際に使用する容器としては、内面がガラス構成されたものが用いられ、例えば通常のガラスライニングタンクなどを用いることができる。
【0012】
アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
【0013】
廃水をアルカリで中和するには、例えば容器に廃水を仕込み、攪拌下、アルカリを加えればよい。アルカリは通常、水に溶解したアルカリ水溶液として加えられる。
【0014】
中和は、大気中で行ってもよいし、窒素ガスなどのような不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0015】
中和は、水素イオン濃度がpH6〜pH8、好ましくはpH6.5〜pH7.5となるまで行われる。
【0016】
次いで、中和した後の廃水を加熱することにより、水溶性アルコールを留去する。加熱温度は、廃水に含まれる水溶性アルコールの種類や含有量により異なるが、通常は水溶性アルコールの沸点以上であり、水の沸点(約100℃)以下である。
水溶性アルコールは、大気圧下に留去してもよいし、減圧下に留去してもよい。
【0017】
水溶性アルコールの留去は通常、中和で用いたと同様の内面がガラスで構成された容器中で行われ、中和する際に用いた容器中で引き続き加熱して水溶性アルコールを留去してもよい。
【0018】
なお、水溶性アルコールを留去することにより、水溶性アルコールと共に水分も少なからず同伴して留去され、これにより廃水の水素イオン濃度は僅かに上昇する。
【0019】
本発明の方法では、かくして水溶性アルコールを留去した後の廃水を活性汚泥処理に付す。活性汚泥処理に付される廃水は、既に水溶性アルコールが留去された後であるので、水溶性アルコールによる活性汚泥の活性低下が少なく、このため効率的に廃水を処理することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0021】
〔実施例1〕
窒素ガスで満たした反応容器にキシレン50質量部およびジメチルカーボネート〔CH3COOOCH3〕90質量部、およびナトリウムメトキシド〔CH3ONa〕60質量部を仕込み、攪拌下、50℃まで昇温したのち、2−メチルベンジルシアナイド

100質量部を3時間掛けて滴下して加え、その後さらに攪拌下、同温度を4時間維持して反応混合物を得た。
【0022】
反応後、この反応混合物を20℃まで冷却し、撹拌下15%塩酸300質量部に滴下して加えて、メチルα−シアノ−2−メチルベンゾエート

を析出させた。
【0023】
その後、同温度を維持したまま純水20質量部を加え、0.5時間保持することにより水洗し、洗液を回収した。
【0024】
上記で回収した洗液には、洗液100質量部中、メタノールが10質量部含まれていた。また、この洗液の水素イオン濃度はpH0.6であった。
【0025】
この洗液100質量部をガラス製容器に入れ、水酸化ナトリウム水溶液〔濃度27質量%〕2.8質量部を加えて水素イオン濃度pH7とした。次いで、加熱してメタノールを留去した。留去後の洗液の水素イオン濃度はpH4.3であり、そのメタノール濃度は、洗液100質量部中0.6質量部であった。この廃水は、ステンレス鋼を浸食することがない。また、この洗液を活性汚泥処理に付しても、活性汚泥の活性を低下させることなく、処理することができる。
【0026】
〔比較例1〕
合わせた洗液100質量部に加える水酸化ナトリウム水溶液の量を3.0質量部とした以外は実施例1と同様に操作して水素イオン濃度をpH10とした以外は実施例1と同様に操作したところ、メタノールを留去した後の洗液は、洗液100質量部中にメタノール1.0質量部を含むものであったが、水素イオン濃度はpH9.1であった。この洗液は、ガラス容器の内面を侵食する可能性がある。
【0027】
〔比較例2〕
合わせた洗液をそのまま活性汚泥処理に付すと、活性汚泥の活性が大きく低下して、廃水処理を効率的に行うことができない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の廃水処理方法は、水溶性アルコールを含み、強酸性を示す廃水を処理することができるので、例えばジメチルカーボネートおよびメチルベンジルシアナイドをキシレン中で反応させて得られるメチルα−シアノ−2−メチルベンゾエートを水洗した後の洗液を廃水として処理することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性アルコールを含み強酸性を示す廃水を、内面がガラスで構成された容器中、アルカリで中和して水素イオン濃度をpH6〜pH8とし、
次いで加熱することにより前記水溶性アルコールを留去した後に、
活性汚泥処理に付すことを特徴とする前記廃水の廃水処理方法。