説明

廃水処理装置および方法

【課題】実操業で排出される様々な有機物を含む大量の廃水を極めて効率的に処理できる廃水処理装置を提供する。
【解決手段】有機物を含む廃水を処理する処理タンク1と、上記処理タンク1内の廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化手段と、上記オゾン酸化手段で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させて分離する固液分離手段と、上記オゾン酸化手段におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進する紫外線照射手段4とを備えている。これにより有機物を分解するのではなく、オゾン酸化によってカルボニル化合物にしたものを金属イオンによるキレート反応で沈殿させて固液分離を行うことにより、従来の分解処理に比べ、オゾン消費を大幅に削減し、処理時間を大幅に短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含む廃水を短時間で効率よく処理できる廃水処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業の発達にともない、工場・店舗などから排出される廃水は多様化しており、電子部品の洗浄廃液をはじめ、機械油や塗料を含んだ廃液、厨房の油脂廃液、洗濯排水など、極めて多岐に渡っている。これらのうちの多くは、量の違いはあるものの何らかの有機物を含んでいる。このため、廃水中の有機物の処理に設備やエネルギー、コストを掛けることを余儀なくされている。
【0003】
廃水中の有機物を処理する方法として、オゾンが利用できることは広く知られている。例えば、非特許文献1(山田春美;新版オゾン利用の新技術、サンユー書房、p.51〜89,(1993))にも記載されているように、有機物は、オゾンそのものによる酸化力とオゾンが自己分解した際に生じるOHラジカルと反応することにより、酸化・分解される。分解された有機物は、物質によって様々なプロセスを経るものの、最終的にはCOおよびHOとなり廃水中から消失する。
【0004】
また、この酸化分解反応を促進する方法として、紫外線照射を併用する方法も知られている。
【0005】
例えば、非特許文献2(吉崎耕大;排水汚水処理技術集成、NTS出版,p.348〜358,(2007))に記載されているように、紫外線を用いることで、OHラジカルの生成を促進することができる。OHラジカルはオゾン分子よりも酸化力が強く、酸化分解が促進される。また、紫外線自体も有機物を光分解するため、有機物の分解がより促進される。
【0006】
一方、特許文献1(特開2004−237266)は、有機物を含む廃水の処理方法について開示されている。
【0007】
特許文献1では、有機物がCOおよびHOまで完全に分解されるには、長時間を費やして大量のオゾンを消費しなければならないことから、有機物を完全分解させずに有機酸になるまでオゾンで酸化し、この有機酸をカルシウムイオン等を水中に投与することによりキレート形成させて沈殿除去することにより処理を効率化することが開示されている。
【0008】
また、特許文献2(特開2003−202396)および特許文献3(特開2001−232383)には、オゾンとカルシウムを併用する廃水の処理方法が開示されている。
【0009】
特許文献2には、有機酸であるシュウ酸をカルシウムイオンを添加して沈殿させて処理するにあたって、酸素ガスを吹き込みながら紫外線を照射して酸素をオゾンに変換し、そのオゾンを利用してシュウ酸の一部を分解することにより、沈殿物の発生を抑制することが開示されている。
【0010】
特許文献3には、有機物をオゾンで分解する際の触媒としてMnOを使用し、カルシウム成分を添加することにより、MnOの触媒作用を活性化することにより処理を効率化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−237266号公報
【特許文献2】特開2003−202396号公報
【特許文献3】特開2001−232383号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】山田春美;新版オゾン利用の新技術、サンユー書房、p.51〜89,(1993)
【非特許文献2】吉崎耕大;排水汚水処理技術集成、NTS出版,p.348〜358,(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、有機物を完全分解させずに有機酸になるまでオゾンで酸化し、この有機酸をカルシウムイオン等を水中に投与することによりキレート形成させて沈殿除去することにより処理を効率化するものである。しかし、特許文献1に開示された技術は、あくまで基本概念にとどまり、ここに開示された基本概念だけで、実際の廃水処理を工業的に実施しようとしても、現実的でない。
【0014】
特許文献2は、原子力発電所の一次冷却水配管等に付着する放射性腐食生成物の化学除染法である「CORD法」で用いられる除染液の主成分であるシュウ酸の処理に特化したものである。このシュウ酸に起因する沈殿物を減容化するために、まずはオゾンでシュウ酸の一部を分解してから、カルシウムおよびアルカリ性物質を添加し、分解しなかった残りのシュウ酸と金属イオンを沈殿させるものである。従って、実操業で排出される分子量の大きな有機物を含有する廃水を大量に処理できるものではない。
【0015】
特許文献3は、オゾンによる酸化反応の促進剤としてMnO触媒を利用するものである。MnO触媒によりヒドロキシラジカル(OH・)を発生させ、オゾンより強力に有機性廃水を酸化分解する。このMnOによる触媒作用を活性化させるためにカルシウムを添加し、有機物の完全分解時間を短縮させるものである。ところが、文献にも記載されているように、原水で30mg/L程度のCODを10mg/L程度まで低減させることしかできない。したがって、実操業で排出されるCOD値が高い廃水を大量に処理できるものではない。
【0016】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、実操業で排出される様々な有機物を含む大量の廃水を極めて効率的に処理できる廃水処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の廃水処理装置は、有機物を含む廃水を処理する処理タンクと、
上記処理タンク内の廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化手段と、
上記オゾン酸化手段で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させて分離する固液分離手段と、
上記オゾン酸化手段におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進する紫外線照射手段とを備えたことを要旨とする。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の廃水処理方法は、廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化工程と、
上記オゾン酸化工程で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させて分離する固液分離工程とを備え、
上記オゾン酸化工程におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進することを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化と、上記オゾン酸化で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させて固液分離する際、上記オゾン酸化におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進する。
このように、有機物を完全分解するのではなく、オゾン酸化によってカルボニル化合物にまで酸化したものを金属イオンによるキレート反応で沈殿させて固液分離を行う。したがって、従来の完全分解する処理に比べ、オゾン消費を大幅に削減することができる。しかも、紫外線照射によってオゾンの酸化反応を促進するので、処理時間を大幅に短縮することができる。したがって、実操業の廃水のように高いCOD値で大量の工業用廃水でも、短時間で排出限度以下に処理することが可能となるのである。
【0020】
本発明において、上記紫外線照射手段は、処理タンク内の廃水を循環させる循環路において、筒状の流路を形成する紫外線透過性の二重管構造の内部に紫外線ランプを配置した場合には、
廃液を循環させながら紫外線照射することができ、紫外線によるオゾン酸化反応の促進を極めて効率よく行うことができる。
【0021】
本発明において、上記固液分離手段は、金属イオン源を粉末もしくはスラリーで廃水に供給する金属イオン供給部と、処理タンク内の廃水を攪拌および/または循環させて沈殿物を生成するキレート反応を促進する反応促進部とを備えて構成されている場合には、
金属イオンを廃液に対して容易に供給するとともにスムーズに拡散させ、液質が均一化されて沈殿物の生成を速やかに行って処理時間の短縮に貢献する。
【0022】
本発明において、上記オゾン酸化手段は、オゾン発生器と、処理タンク内および/または循環路の廃水とオゾンを接触させるための気液接触部とを備えて構成されている場合には、
オゾン酸化による有機物のカルボニル化合物への酸化反応を、容易かつスムーズに行ない、沈殿物の生成を速やかに行って処理時間の短縮に貢献する。
【0023】
本発明において、上記固液分離工程は、金属イオン源として酸化カルシウムを使用する場合には、
安価に錯体形成金属イオンを供給するとともにpHコントロールもでき、キレート反応を促進して処理効率をさらに向上させることができる。
【0024】
本発明において、上記紫外線照射を、ある程度の固液分離を進行させた段階で開始する場合には、
ある程度固液分離が進んで廃液中の気泡や固形分による濁りが無い状態で紫外線照射することで、未反応オゾンや有機物の反応がより効果的に行え、照射効率が向上する。
【0025】
本発明において、紫外線照射は、循環路において固液分離した液体に対して紫外線照射する場合には、
固形分を分離したあとの濁りが少ない廃液に紫外線照射でき、紫外線の照射効率がよくなる。
【0026】
本発明において、紫外線照射は、供給したオゾンを処理タンクで気液分離した液体に対して紫外線照射する場合には、
気泡による濁りが無い状態で紫外線照射でき、紫外線の照射効率がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の廃水処理装置の全体構成を示す図である。
【図2】紫外線照射手段の具体的構成を示す図である。
【図3】固液分離装置の具体的構成を示す図である。
【図4】上記廃水処理装置の運転状態を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施形態の廃水処理装置の全体構成を示す図である。
【図6】実施例の処理結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態の廃水処理装置の全体構成を示す概略図である。
【0030】
この装置は、有機物を含む廃水を処理する処理タンク1と、上記処理タンク1内の廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化を行うためのオゾン供給装置2と、上記オゾン酸化で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させ、それを分離する固液分離装置3と、上記オゾン酸化におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進する紫外線照射手段4とを備えている。
【0031】
上記処理タンク1は、処理すべき廃液を導入する廃液導入路11、導入された廃液を循環させる循環路12、処理された処理液を排出する処理液排出路13が、それぞれ連通している。処理タンク1の下部には、循環路12と処理液排出路13に共通して処理タンク1内の液体を導出する導出路14が接続されている。また廃液導入路11、循環路12、処理液排出路13に共通するとともに導出路14に連通するよう共通流路15が設けられている。この共通流路15には、液を圧送する圧送ポンプ16が設けられている。上記圧送ポンプ16は、廃液導入路11を介して処理タンク1に廃液を導入し、循環路12により処理中の廃液を循環させ、処理済みの処理液を処理液排出路13を介して排出する際に駆動される。
【0032】
上記循環路12には、オゾン供給装置2、紫外線照射手段4、固液分離装置3が設けられている。
【0033】
上記オゾン供給装置2は、この例では、オゾン発生器25と気液混合器26を備えて構成され、本発明のオゾン酸化手段として機能する。オゾン発生器25で発生したオゾンを、循環路12の途中に設けた気液混合器26に供給し、循環路12を循環する廃水に対してオゾンを供給するようになっている。
【0034】
オゾンの供給により廃液中の有機物をカルボニル化合物にまで酸化するオゾン酸化を行う。
【0035】
上記オゾン発生器25は、濃縮した酸素ガスを原料とし、石英二重管の間で高電圧をかけて放電させることでオゾンを発生する装置を使用することができる。具体的には、例えば、AirTreeオゾンテクノロジー株式会社製、型番V−80等を使用することができる。オゾン発生器25に原料として供給する酸素ガスは、後の気液混合の際に、オゾンが高濃度であるほど処理効率が高くなるため、酸素純度の高いもの、すなわち酸素濃度90%以上のものが望ましい。
【0036】
気液混合器26としては、エジェクター、エアターボミキサー等を使用することができる。具体的には、エジェクター(株式会社IBS製、型番283)等を使用することができる。このような気液混合器26は、処理効率とコストのバランスにより選定され、処理対象の有機物の含有量が高濃度であれば気泡径が大きくても処理は進むが、低濃度になれば気泡径が小さい方がオゾン使用量に対して効率的に処理ができる。一般に気泡を微細化できる気液混合器ほどコストがかかるため、処理レベルに応じて適宜に機器を選定すればよい。
【0037】
図2は、紫外線照射手段4の詳細を説明する断面図である。
【0038】
上記紫外線照射手段4は、処理タンク1内の廃水を循環させる循環路12において、筒状の流路30を形成する紫外線透過性の二重管構造の内部に紫外線ランプ31を配置したものである。
【0039】
この例では、循環路12における気液混合器26の前後に分岐循環路27が設けられ、気液混合器26と並設するように紫外線照射手段4が設けられている。
【0040】
紫外線ランプ31を紫外線透過性の内筒32で覆い、外筒33との間に筒状の流路30を形成する。筒状の流路30の前後は蓋34で覆われている。これにより、紫外線ランプ31により処理液に対して紫外線を内側から照射する構造となっている。このような紫外線照射手段4としては、例えば流水型殺菌装置(DNライティング社製、型番200UA)などが挙げられるが、他には上水道用UV消毒装置なども用いることができる。
【0041】
この紫外線照射により、オゾン供給装置2で供給されたオゾンによるオゾン酸化反応を促進し、排水中の有機物のカルボニル化合物への酸化を促進する。
【0042】
本発明の固液分離手段として、金属イオン源を粉末もしくはスラリーで廃水に供給する金属イオン供給部21、固液分離装置3、処理タンク1内の廃水を攪拌および/または循環させて沈殿物を生成するキレート反応を促進する反応促進部とを備えて構成されている。
【0043】
金属イオン供給部21は処理タンク1に接続されている。金属イオンを廃液に供給することにより、上述したオゾン酸化で得られたカルボニル化合物をキレート反応で沈殿させ、固液分離するようにしている。金属イオン供給部21は、図示しない供給タンク、供給路22および供給ポンプ23を備えて構成されている。
【0044】
キレート反応に用いられるカチオンはCaの他にMgやAlなどがあり、上記金属イオン源としては、廃液に溶解して金属イオンを供給しうるものであれば、各種の物質を適用することができる。特に、Ca、Mg、Alは、錯体を形成するうえで液への着色が少ないため、紫外線照射処理を行う本実施形態では有効に用いることができる。これらのカチオンの源となる物質としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等をあげることができる。
【0045】
金属イオン源として特に酸化カルシウムを使用するのが好ましい。酸化カルシウムは、安価であり、かつ水溶液がアルカリ性となるため、好適に用いられる。キレート反応がアルカリ性で効率よく作用するためである。また、供給のし易さと処理液への拡散の観点から、酸化カルシウム等はスラリーで供給するのが好ましい。スラリーは、水道水1Lに対して酸化カルシウム等の粉末を100gの割合で投入し、撹伴速度300rpmで常時撹伴することで調整することができる。
【0046】
上記処理タンク1には、排ガスを排出する排ガス路17、処理中の廃液のpHを検知するpH計18、処理タンク1内の気相のオゾン濃度を検知するオゾン濃度計19が設けられている。
【0047】
上記処理タンク1は、酸化カルシウム等の拡散と気液分離の役割を果たし、水流による旋回流で廃液を攪拌するよう設計している。このとき、循環ポンプとしての圧送ポンプ16による廃液の圧送により、処理タンク1内の廃液を循環して水流を作り、攪拌するようになっている。この攪拌作用を行う廃液の循環構造が、本発明の反応促進部として機能する。
【0048】
固液分離装置3は、上記循環路12において、上記オゾン供給装置2および紫外線照射手段4の上流側に設けられている。この固液分離装置3は、金属イオン供給部21による金属イオンの供給により、オゾン酸化で得られたカルボニル化合物をキレート反応させて得られた沈殿物を液体から分離するものである。
【0049】
図3は固液分離装置3の具体例である。
【0050】
図3(A)は、バッグフィルタ36により沈殿物をろ過して固液分離するものである。バッグフィルタ36は、反応沈殿物などの固形分を捕捉し、有機固形分の拡散によるオゾン酸化効率の悪化防止と紫外線照射時の縣濁を防止する。ここで用いるフィルタは5μm程度のものであって、例えば、SMC株式会社製、型番FGFSIA−20−E005Bを使用することができる。バッグフィルタ36以外にも、マイクロメッシュフィルタなどを用いても良い。これらのフィルタは、例えば、5系統を並列に組み、ろ過前後の差圧が大きくなってろ過効率が落ちたときに、別系統に切り替えるようにすることもできる。切り替えた後、目詰まりしている系統についてはフィルタを新品に交換する。
【0051】
図3(B)は、沈殿槽37とろ過槽38を備え、沈殿槽37に一旦貯留した廃液に凝集剤を投入して沈殿物をフロックとして集める。その上澄みを循環路12に戻すとともに、集めたフロックはメッシュでろ過してろ液を循環路12に戻す。
例えば、処理開始後、処理タンク1から適量(具体的には処理液量の1/10)を沈殿槽37に移し、沈殿槽37ヘ凝集剤を適量投入し、攪拌機で1000rpm以上の回転速度にて急速攪拌を数分間(2〜3分間)行い、凝集剤を液中へ拡散させる。つぎに、フロックを成長させるため回転速度を300rpmとし、数分間(2〜3分間)攪拌する。攪拌後、適度な時間(今回の規模では10分間)静置し、フロックを沈降させる。その後、沈殿槽37の底に溜まったフロックを沈殿槽37に受けた液量の1/100の液量とともに250μmのメッシュの金網を張ったろ過槽38に落とし、フロックと液を固液分離する。固液分離された液はポンプで処理タンク1ヘ戻す。この工程を定期的(具体的には20分毎)に繰り返し、固液分離を行う。
【0052】
図3(C)は、遠心分離槽39と、ろ過槽38を備え、遠心分離で分離された液を循環路12に戻すとともに、集めた沈殿物はろ過材でろ過してろ液を循環路12に戻す。
【0053】
処理液排出路13には、ファイナルフィルタ41を設け、万一、上流部の固液分離装置3で除去し切れなかった固形分があった場合に、それを捕集するものである。ここで用いるファイナルフィルタ41としては、例えば、メッシュ開口が1μm程度のものであって、例えば、工業用フィルタ(SMC株式会社製、型番FGDCA−03−B001B)などを用いることができ、他にはマイクロメッシュフィルタなどを用いても良い。
【0054】
この例では、循環路12における固液分離装置3の下流に紫外線照射手段4を配置し、紫外線照射を、循環路において固液分離した液体に対して紫外線照射するため、固形分を分離したあとの濁りが少ない廃液に紫外線照射でき、紫外線の照射効率がよくなる。また、紫外線照射手段4をオゾン供給装置2と並列に配置し、オゾン等を処理タンク1で気液分離した液体を循環させる途中で紫外線照射しているので、気泡による濁りが無い状態で紫外線照射でき、紫外線の照射効率がよくなる。
【0055】
図4は、上述した廃水処理装置を用いて処理方法を行う状態を説明する図である。
【0056】
図4(A)は、廃液を導入する状態である。圧送ポンプ16を動作させ、共通流路15および廃液導入路11から処理タンク1ヘ廃液を一定量まで注入する。
【0057】
図4(B)は、オゾンの供給によるオゾン酸化と、オゾン酸化で得られたカルボニル化合物をキレート反応させて固液分離する状態である。
処理タンク1の廃液は、導出路14から導出され、共通流路15、循環路12を介して再び処理タンク1に戻ることを繰り返して循環する。
このとき、オゾン供給装置2により、循環する廃液にオゾンが供給され、廃液中の有機物がオゾン酸化されてカルボニル化合物になる。
カルボニル化合物をキレート反応させるための金属イオンは、金属イオン供給部21により酸化カルシウムによって供給される。
キレート反応で生成した金属錯体の沈殿物は、固液分離装置3で固液分離され、液体だけが循環路12を介して処理タンク1に戻る。
処理タンクでは、気液分離されて未反応のオゾンや酸素ガス等の排ガスが排ガス路17から排出される。
【0058】
このとき、CaOスラリーはpHのコントロールおよびキレート反応に必要なカチオンを供給するために投入しているが、過度に供給すると固液分離装置3への負担が大きくなるためpH9〜11程度になるよう投入量を供給ポンプのON/OFF制御で調整するのが好ましい。また、pHのコントロールは、オゾンによる酸化により酸性になる液をキレート反応に有利であるアルカリ性に保つためにCaOの投入量で調整していて、固液分離装置3への負担とのバランスからpH10程度で保持するようにしている。
【0059】
図4(C)は、紫外線照射を開始した状態である。
図4(B)の状態である程度有機物の除去を進めたところで、上述した処理を続けながら、分岐循環路27を介して紫外線照射手段4に廃液を流し、紫外線を照射する。
【0060】
図4(D)は、有機物濃度が排出基準値以下となって廃液処理を終了し、処理液を排出する状態である。処理タンク1内の処理液を、導出路14、共通流路15および処理液排出路13を介して排出する。このとき、処理液がファイナルフィルタ41を通過することにより、除去しきれなかった固形分が捕集される。
なお、排出基準は放流する際の排出規制や自家で再利用する場合等の状況に応じて決定する。
【0061】
図5は、本発明の第2実施形態の廃水処理装置を示す。
【0062】
この例は、基本的には第1実施形態と同様であるが、オゾン供給装置2の構成を少し変更したものである。オゾン発生器25で発生したオゾンは、循環路12に設けた加圧溶解装置43により廃液中に加圧溶解し、オゾンが加圧溶解された廃液を処理タンク1に戻す際に、旋回ノズル45により、マイクロナノバブルを発生させながら旋回流を起こすようになっている。それに加え、オゾン発生器25で発生したオゾンを、オゾン供給路46を介してバブリング器44により処理タンク1内にバブリングさせて供給するようになっている。この実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0063】
以上のように、本技術は、有機物をオゾンで酸化し、カルボニル化合物まで酸化させたものを、金属カチオンでキレート錯体として析出させ、処理タンクで気液分離し、固形分はフィルタで濾し取り、ろ液に紫外線照射(OHラジカルによる反応の促進と光分解による有機物の分解効果)する。このように、廃水中の有機物除去のためにオゾン酸化、キレート反応、紫外線処理を効果的に組み合わせた装置であり、処理時間の短縮およびオゾン使用量の削減に効果のあるものとなっている。
【実施例】
【0064】
実施例として電子部品洗浄廃水を処理した。金属イオン源として酸化カルシウムを使用し、上述した装置により上述した手順で処理を行った。
〔処理条件〕
処理液量 160L
気液混合器 コアキシャルミキサ
循環液量 80L/min
酸素−オゾン混合ガス量:15L/min
オゾンガス濃度 80g/Nm
【0065】
図6および表1は、上記処理における処理時間に応じてCODが低下する状態を示す。
【0066】
【表1】

【0067】
この例では、洗浄の際に純水などで薄められた洗浄剤に含まれる有機物が処理対象となる。排出される廃水のCODは1716mg/Lであり、前述の処理工程にて処理を実施したところ、処理開始後、4時間までのCODが高い状況では、酸化された有機物とキレート反応の核になるCaイオンが効率的に反応し、CODが急激に低下する。以後、有機物が無くなるまで緩やかにキレート反応による有機物除去が進行する。ろ過回収した沈殿物のC濃度を測定したところ、原液のTOC相当のC量が含まれていたことから、有機物はキレート反応により固液分離できているものと見られる。(但し、例に挙げた処理液の沈殿物の分析ではなく、別の日に処理したときのマテリアルバランスであり、その際の処理は、処理が途中になっているので具体例には挙げにくい)
【0068】
なお、COD分析は、TOA DKK社製簡易式COD計COD−60Aを使用した。この分析計は、電量滴定方式で、試薬1に存在するFe(iii)を定電流電解によりFe(ii)に還元し、生成したFe(ii)と試薬2の過マンガン酸カリウムが反応する。最終的に残存している過マンガン酸カリウムが完全にFe(ii)と反応し終わった時点を滴定終点として求め、それまでに要した電気量から濃度計算している。
【0069】
以上のように、本実施形態では、つぎの効果が得られた。
・キレート反応を利用することにより、完全分解に比べて処理時間の短縮とオゾン消費量の削減が図れた。
・酸化カルシウムのスラリーを使用することで、安価に錯体形成金属イオンの供給とpHコントロールができる。
・気液分離、固液分離後に紫外線照射することで照射効率が良くなった。
・循環ポンプにより水流を作ることで液質が均一化され、効率よく反応が進んだ。
【0070】
総合的には、COD 1716mg/L程度の廃水も、12時間で10mg/L以下に抑える事が可能となり、さらに22時間で1mg/L以下を達成することができ、実際の工業的プロセスや工場廃水にあるような、高いCOD値や大量の工業用廃水でも、比較的短時間で処理することが可能となった。
【符号の説明】
【0071】
1:処理タンク
2:オゾン供給装置
3:固液分離装置
4:紫外線照射手段
11:廃液導入路
12:循環路
13:処理液排出路
14:導出路
15:共通流路
16:圧送ポンプ
17:排ガス路
18:pH計
19:オゾン濃度計
21:金属イオン供給部
22:供給路
23:供給ポンプ
25:オゾン発生器
26:気液混合器
27:分岐循環路
30:筒状の流路
31:紫外線ランプ
32:内筒
33:外筒
34:蓋
36:バッグフィルタ
37:沈殿槽
38:ろ過槽
39:遠心分離槽
41:ファイナルフィルタ
43:加圧溶解装置
44:バブリング器
45:旋回ノズル
46:オゾン供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む廃水を処理する処理タンクと、
上記処理タンク内の廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化手段と、
上記オゾン酸化手段で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させて分離する固液分離手段と、
上記オゾン酸化手段におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進する紫外線照射手段とを備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
上記紫外線照射手段は、処理タンク内の廃水を循環させる循環路において、筒状の流路を形成する紫外線透過性の二重管構造の内部に紫外線ランプを配置した請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
上記固液分離手段は、金属イオン源を粉末もしくはスラリーで廃水に供給する金属イオン供給部と、処理タンク内の廃水を攪拌および/または循環させて沈殿物を生成するキレート反応を促進する反応促進部とを備えて構成されている請求項1または2記載の廃水処理装置。
【請求項4】
上記オゾン酸化手段は、オゾン発生器と、処理タンク内および/または循環路の廃水とオゾンを接触させるための気液接触部とを備えて構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
紫外線照射手段は、循環路において固液分離した液体に対して紫外線照射する請求項2〜5のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項6】
紫外線照射手段は、供給したオゾンを処理タンクで気液分離した液体に対して紫外線照射する請求項1〜6のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項7】
廃水中の有機物をオゾンの作用により酸化させてカルボニル化合物にするオゾン酸化工程と、
上記オゾン酸化工程で得られたカルボニル化合物を金属イオンで沈殿させて分離する固液分離工程とを備え、
上記オゾン酸化工程におけるオゾンの酸化反応を紫外線照射により促進することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項8】
上記固液分離工程は、金属イオン源として酸化カルシウムを使用する請求項7記載の廃水処理方法。
【請求項9】
上記紫外線照射を、ある程度の固液分離を進行させた段階で開始する請求項7または8記載の廃水処理方法。
【請求項10】
紫外線照射は、循環路において固液分離した液体に対して紫外線照射する請求項2〜5のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項11】
紫外線照射は、供給したオゾンを処理タンクで気液分離した液体に対して紫外線照射する請求項1〜6のいずれか一項に記載の廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−179538(P2012−179538A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43494(P2011−43494)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】