説明

廃油燃焼バーナ

【課題】 複雑な部品構成や制御手段、補助燃料、パイロットバーナ等を必要とせず、小規模事業においても手軽に採用できる簡便な廃油燃焼バーナを提供する。
【解決手段】 油ノズル噴出口の口径が2〜5mmの噴霧ノズルを用い、0.15〜0.35MPaの高圧空気を空気ノズルへ供給して廃油を混合噴霧化し、高電圧電気火花により点火する廃油燃焼バーナである。点火は廃油と空気の混合噴霧の周辺部位置にて行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大豆油、エンジンオイル、潤滑油等の使用後の各種廃油を燃料として燃焼させるバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
食用油では、大豆油がてんぷら油として食品加工、水産加工、豆腐製造等の分野で大量に使用されている。また、エンジンオイル、潤滑油等の各種鉱物油もそれぞれの工業分野で大量に使用されている。これらの油を使用した後の廃油は外部のリサイクル処理事業に委託されている。
【0003】
しかし、外部の廃油リサイクル処理事業においては、精製加工、廃油回収等の点で処理費用が高くなる。このため、廃油をボイラ等のバーナの燃料として自家使用するのが、費用の節減及び廃油の有効利用の点で好ましい。そして、特に小規模事業においては、手軽に採用できるバーナが望まれるところである。
【0004】
廃油を燃焼させるバーナとして、特許文献1は、始動初期に主燃料の廃油と補助燃料の灯油を空気とともに供給し、別に設けたバーナにより主燃料の廃油と補助燃料の灯油を加熱して着火するバーナ及びその構成部品の作動手段を開示している。そして、廃油を不完全燃焼させることなく、効率よく燃焼させることができるとしている。
【0005】
特許文献2は、高温再生器や温水ボイラ等に使用するバーナとして、燃料オイル(例えば石油)をポンプによりノズルへ供給して霧状に噴出し、給気ファンにより空気通路を介して供給される燃焼用空気と混合し、この混合気に高圧電気火花で点火するオイルバーナ装置及びその構成部品の作動手段を開示している。
【0006】
非特許文献1は一般に用いられる種々の油バーナと点火装置を記載している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−188899号公報
【特許文献2】特開2006−177590号公報
【非特許文献1】油燃焼の理論と実際、(財)省エネルギーセンター、1992年10月31日、第81頁〜第100頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のバーナは、始動初期に主燃料の廃油以外に補助燃料が必要であるとともに、主燃料と補助燃料を加熱するための別のバーナを必要とし、構造が複雑である。また、このバーナによる燃焼装置を構成する各部品の制御手段も複雑である。
【0009】
特許文献2のバーナは、例えば石油のようなオイルを高圧ポンプによりノズルへ供給して霧状に噴出させるが、粘度が大きく、混雑物を含む廃油の場合はノズル詰りが起こるので、安易に適用できない。また、高圧電気火花により点火するが、廃油は着火温度が高いので着火し難い。さらに、このオイルバーナ装置構成部品の制御手段も簡便でない。
【0010】
非特許文献1は、基本的な各種油バーナと点火装置について記載しているが、廃油を燃料とするバーナに関する記載はない。
【0011】
上述のとおり、各文献は各種油バーナ及びその装置について開示しているが、本発明目的に沿った開示はない。本発明は、複雑な部品構成や制御手段、補助燃料、パイロットバーナ等を必要とせず、小規模事業においても手軽に採用できる簡便な廃油燃焼バーナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明を図面に基づき説明する。図1は本発明による実施例廃油燃焼バーナ側面の要部断面図、図2は同じく正面の要部拡大図である。本発明の範囲はこれら実施例図に限るものでなく、本発明要件を満たすものであれば、他の態様であっても含まれる。
【0013】
本発明請求項1の発明は、油ノズル噴出口11の口径が2〜5mmの噴霧ノズル3を用い、0.15〜0.35MPaの高圧空気を空気ノズル2へ供給して廃油を混合噴霧化し、高電圧電気火花により点火する廃油燃焼バーナである。
【0014】
本発明による実施例廃油燃焼バーナは、外筒4の内部に、油ノズル1と空気ノズル2とからなる噴霧ノズル3が装着してある。噴霧ノズル3は市販品であってもよい。外筒4は基板6に固定してある。
【0015】
矢印Fのように、油ポンプ(図示せず)から油管5の油供給口51へ送られた廃油は、油管5を経由して、油ノズル1の噴出口11から噴出する。油ノズル噴出口11の口径は2〜5mmが好ましい。口径が2mm未満では、特にてんぷら油の廃油は混雑物が多いので、ノズル詰りを起こし易い。口径が5mmを超えると大型化するので、小規模事業において手軽に採用できない。また、供給される廃油量が過剰になり、噴霧状態が悪化し、点火時に着火し難くなる。
【0016】
本発明のバーナは、油こし器を設けることなく、廃油を網目の大きさが1.5〜2.0mm程度の金網を用いて濾過するだけで燃焼させ、さらに金網を通過した廃油中の小さな混雑物も廃油とともに燃焼できるので、ボイラ燃料等の自家使用に適している。
【0017】
矢印Aのように、コンプレッサ(図示せず)又は高圧ブロア(図示せず)から外筒4の空気供給口41へ送られた高圧空気は、外筒4内及び空気流通路23を経由して、空気ノズル2の噴出口21から噴出する。噴出した高圧空気は、油ノズル噴出口11から噴出する廃油を吸引混合し、廃油と空気が混合噴霧化して矢印Mのように拡がる。点火は、噴霧部に配置した電極先端71a、71b間に高電圧電気火花を飛ばして行なう。
【0018】
空気供給口41へ送る高圧空気の圧力は0.15〜0.35MPaが好ましい。圧力が0.15MPa未満では噴霧状態が悪化し、点火時に着火し難くなるとともに、燃焼状態も悪化する。圧力が0.35MPaを超えると、噴霧流速が大きくなるとともに、空気量が多くなるので、高電圧電気火花による着火及び燃焼が難しくなる。
【0019】
このように特定した油ノズル噴出口11の口径と空気供給口41へ送る高圧空気の圧力により、補助燃料やパイロットバーナを必要とせず、廃油と空気の混合噴霧に高電圧電気火花を用いて直接点火することができる。
【0020】
本発明請求項2の発明は、請求項1の発明において、廃油と空気の混合噴霧の周辺部位置にて高電圧電気火花により点火する廃油燃焼バーナである。
【0021】
矢印Mのように、廃油と空気が混合した噴霧は空気ノズル先端面22の前方に拡がり、三次元的には円錐状に拡がる。この円錐状噴霧の周辺部に電極先端71a、71bを配置し、高電圧電気火花により点火すると、着火性が向上し、廃油でも着火できるようになる。中央部は噴霧流速が大きいので、着火が難しい。
【0022】
電極7a、7bは、その耐熱性電気絶縁被覆部72a、72bが電極挟着部品81に挟着されて、電極支持部品8に取付けられる。取付けの際は、電極先端71a、71bの位置が円錐状噴霧周辺部の予め確認してある位置になるよう狭着する。電極先端71a、71bの間隔も予め確認してある間隔にする。電極他端73a、73bは高圧トランス(図示せず)へ接続する。
【0023】
電極支持部品8は電極移動部品9に固定してある。電極移動部品9はその軸心を中心にした旋回とその軸心方向への移動ができるようにしてあり、所定位置に旋回及び移動後は基板6へ固着できるようにしてある。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、前記発明が解決しようとする課題の項で述べた問題点が夫々解決される。そして、複雑な部品構成や制御手段、補助燃料、パイロットバーナ等を必要とせず、小規模事業においても容易に採用できる簡便な廃油燃焼バーナが得られ、費用の節減と廃油の有効利用ができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0025】
図1及び図2の実施例廃油燃焼バーナを用いて燃焼試験をした。外筒4の内部に、油ノズル1と空気ノズル2とからなる市販の低圧空気式噴霧ノズル3を装着した。油ノズル噴出口11の口径は2mmである。油ノズル噴出口11付近の外周側には、噴出空気の通路となる溝(図示せず)が8本設けてある。この溝は、油ノズル1の軸心方向に対して45°傾けてあり、空気が渦状に噴出するよう図られている。夫々の溝の幅は1.5mm、深さは2mmである。
【0026】
電極先端71a、71bは、電極挟着部品81による挟着と電極移動部品9の移動により、噴霧ノズル3の空気ノズル先端面22から軸心上35mm、軸心から15mmの円錐状噴霧の周辺部位置に配置し、電極間隔を8mmにした。電極他端73a、73bは夫々電圧14,000Vの高圧トランス(図示せず)へ接続した。
【0027】
コンプレッサ(図示せず)により、外筒4の空気供給口41へ圧力0.2MPaの空気を送った。その後、油ポンプ(図示せず)により、網目の大きさが1.5mmの金網で濾過したてんぷら油の廃油を圧力0.05MPaで油管5の油供給口51へ送った。
【0028】
噴霧ノズル3からは、てんぷら油の廃油が空気と混合して噴霧化し、円錐状に拡がって噴出した。そして、電極先端71a、71b間に電圧14,000Vで電気火花を発生させて点火し、てんぷら油の廃油と空気の混合噴霧が容易に着火し、燃焼が始まった。
【0029】
以上により、本発明による廃油燃焼バーナは、補助燃料やパイロットバーナに頼らなくても、高電圧電気火花により点火することができ、てんぷら油の廃油を燃焼できることが明らかになった。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同じ廃油燃焼バーナを用い、同じ方法でエンジンオイル廃油の燃焼試験をした。そして、てんぷら油の廃油と同様に着火し、燃焼できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例廃油燃焼バーナ側面の要部断面図
【図2】本発明の実施例廃油燃焼バーナ正面の要部拡大図
【符号の説明】
【0033】
1 ;油ノズル 11;油ノズル噴出口
2 ;空気ノズル 21;空気ノズル噴出口
22;空気ノズル先端面 23;空気流通路
3 ;噴霧ノズル 4 ;外筒
41;空気供給口 5 ;油管
51;油供給口 6 ;基板
7a、7b;電極 71a、71b;電極先端
72a、72b;耐熱性電気絶縁被覆部 73a、73b;電極他端
8 ;電極支持部品 81;電極挟着部品
9 ;電極移動部品 矢印A;空気供給方向
矢印F;廃油供給方向 矢印M;廃油と空気の混合噴霧方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油ノズル噴出口の口径が2〜5mmの噴霧ノズルを用い、0.15〜0.35MPaの高圧空気を空気ノズルへ供給して廃油を混合噴霧化し、高電圧電気火花により点火する廃油燃焼バーナ。
【請求項2】
廃油と空気の混合噴霧の周辺部位置にて高電圧電気火花により点火する請求項1記載の廃油燃焼バーナ。

【図1】
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【図2】
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