説明

廃液再生装置

【課題】 製作コストが安く、簡易型の装置構成を提案し、製作コストの低減が図れる廃液再生装置を提供する。
【解決手段】 廃液再生処理槽1を2槽式とし、第1の処理槽2に隣接して、処理槽2の底部と繋がっているセルフバランス水タンク100を設ける。また第1の処理槽2と第2の処理槽3を設け、各処理槽2,3にはプラス電極6,13を設ける。第1の処理槽2はマイナス電極として第1の処理槽2の底部に水7を設け、第2の処理槽3はマイナス電極として第2の処理槽3の底部を用いる。第1の処理槽2で分離した残存インキ顔料を含む洗浄液が第2の処理槽3へ供給される供給部11を設け、第2の処理槽3で残存インキ顔料と洗浄液を分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機のブランケット胴等のインキが付着する印刷機の構成部品の洗浄時に排出される廃液を再生処理する装置に関し、特に、帯電したインキ顔料、絶縁性の洗浄液、及び導電性の水の3成分が混在した処理槽において、単一の装置でそれらの3成分を分離する廃液再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機のブランケット胴や圧胴の洗浄は、石油系の洗浄液を使用するため廃液が出る。従来、廃液は廃棄されていたが、近年では、廃液を再処理して洗浄液を再利用する方式が試みられている。
廃液の再生方法としては、種々の方式が提案されているが、高効率で再生を行えることから、インキ顔料、水、洗浄液の3成分を含んだ廃液中に静電界を発生させ、インキ顔料を廃液中で電気泳動させるとともに、水を静電凝集させて、インキ顔料、水、洗浄液を分離する静電界利用方式が注目されている。
一般に、廃液再生装置は、廃液再生処理槽内の上側にプラス電極を配置し下側にマイナス電極を配置し、印刷機で使用したインキ顔料、水、洗浄液を含んだ廃液を前記廃液再生処理槽内に入れ、前記電極間に電圧を印加させて前記廃液を静電界処理し、前記インキ顔料をマイナス電極に誘導し、凝集した水が前記廃液処理槽内の底部に沈降させ、該水より比重の軽い洗浄液を上澄み液として分離し、前記廃液から洗浄液を再生する。
本出願人は、本発明の提案に先立ち、静電界利用方式を利用した実用性の高い廃液再生装置について提案している(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
以下、図4及び図5により従来の廃液再生装置について説明する。
【特許文献1】特許第3586630号公報
【特許文献2】特許第3586656号公報
【0003】
図4は、上記提案に係る静電界利用方式を利用した廃液再生装置4の原理的構成を示す概略断面図である。
図4に示したように、廃液再生装置4の容器処理槽内には、仕切り板62が図中上下方向に配設され、仕切り板62と処理槽の一方側の縦壁63との間の上部には、廃液6を廃液再生装置4内に導入するための供給口64が設けられている。
また、仕切り板62の下方端部と処理槽の底部との間に隙間65を形成するとともに、仕切り板62と他方の縦壁66との間には、電極板67を水平方向に並ぶように設置している。なお、この廃液再生装置4では、水7の層がアース電極として機能する。
【0004】
この廃液再生装置4により実現される廃液再生方法について説明する。処理槽に供給された廃液6中には、水7、インキ顔料68、石油系の洗浄液が混在している。電極板67に高電圧を印加し、電極板67を+極、水7を−極として、電極板67及び水7間に電界を発生させる。この電界が働くことにより、廃液6中におけるインキ顔料68の電気泳動と水7の静電凝集が始まる。より具体的には、廃液6中の水69は大粒の粒径の凝集水70に凝集し、凝集水70とインキ顔料68はそれぞれ別々に移動し分離してゆく。
【0005】
電界を発生させている状態を長く続けることにより、電界中での反応が進み、廃液中において水69とインキ顔料68とが完全に分離し、水69は一群に凝集して、重力により処理槽の底部に沈降し、水7の層へ加わる。また、+電荷のインキ顔料68は、−極であるアース電極(水層)の表面(上面)に付着する。これにより、水7,70とインキ顔料68が除去された洗浄液(即ち、洗浄再生液)が得られる。そして、この洗浄液が回収対象とされる。
【0006】
続いて、以上説明した原理を用いた従来の廃液再生装置について説明する。図5は、従来の廃液再生装置の一構成例の断面概略図である。
図5に示したように、本廃液再生装置5は、廃液供給部71に廃液6を供給し、プラス電極板67と水7とで、電極間のインキ顔料、水、洗浄液の3成分を含んだ廃液中に静電界を発生させ、インキ顔料を廃液中で電気泳動させるとともに、水を静電凝集させて、インキ顔料、水、洗浄液を分離し、再生液8を回収する。ここで操業が進むにつれて、再生液が増加するが、この再生液8はオーバーフロー方式で自動的に処理していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上説明したような廃液再生装置においては、静電凝集で発生した水7も増加してゆくことになる。しかしながら、プラス電極67とアース電極である水7の表面間距離LDは所定の距離でないと、正常な静電凝集ができなくなる。
そのため、水7の水位を制御するため、槽内に水位計72を設け、所定水位をオーバーした場合は、排水孔73のバルブ74を開いて、水を排水し、所定水位(電極間距離LD)を確保する必要があった。
しかしながら、このような制御は、自動化を要する為、排水のみのために、水位計と電磁開閉バルブ及び制御装置を必要とし、装置製作コストの上昇を招いていた。また、センサや制御装置のトラブルが発生する危険性もあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、印刷機械の洗浄廃液再生方法及び装置において、簡易な装置構成を提案し、製作コストの低減を実現するとともに、トラブルの発生しにくい安全な廃液再生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の廃液再生装置は、印刷機で使用した水を含む廃液を貯留する処理槽と、前記処理槽内に電界を発生させる電界生成手段と、を備える廃液再生装置において、前記処理槽に隣接された水貯留槽と、前記電界発生手段により廃液中に含まれた水を凝集させ、当該凝集させた水を前記処理槽から前記水貯留槽に導出する連通部と、を設けたことを特徴とする。
水貯留槽と処理槽とを連通させることにより、水と廃液との比重差を利用したバランス機構を実現することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記水貯留槽は、当該水貯留槽における内部の水位を調整する水位調整機構を有することが望ましい。
また、上記発明においては、前記水位調整機構は、前記水貯留槽に設けられた外部への排水開口であることが望ましい。
また、上記発明においては、前記水位は、前記電界発生手段のプラス電極とマイナス電極間の距離と処理される廃液の比重とに基づき定められることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る廃液再生装置および廃液再生方法によれば、従来の装置構成で使用していた水位計と電磁開閉バルブ及び制御装置が不要となり、簡易な装置構成で容易に装置製作が可能となり、製作コストが大幅に削減できる。またセンサや制御装置を使用せず、セルフバランス方式のためトラブルが発生する危険性が激減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る廃液再生装置および廃液再生方法につき、図1乃至図1に基づき説明する。
本発明に係る廃液再生装置は、廃液処理層内の溶剤と水の比重とバランスする水貯留槽としてセルフバランス水タンクを設けるものであって、言い換えれば、廃液再生処理装置構成において、水と廃液(溶剤)の比重差を利用した水貯留槽を備える構成とするものである。そして、このセルフバランス水タンクを廃液処理槽に連接するように設け、処理中に発生する水の増加分を自動的に排水する方式を採用している。
ここで、アース電極用の水7の水位(h1)、溶剤の水位(h2)、水の比重(ρ1=1)、溶剤の比重(ρ2=0.7)の場合、セルフバランス用の水タンクの水位(h0)は、次の数1に示す式で定義される。
<数1>
(h0×ρ1)=(h1×ρ1)+(h2×ρ2)
よって、処理層内のアース電極の水位(h1)がほぼ一定となるように、セルフバランス水タンクの水位(h0)を決定し、この水位(h0)より増加した水は排水孔から自然排水される構成とすれば、アース電極の水位(h1)はほぼ一定となり、電極板6とアース電極間の距離(LD)は常に一定に保たれる。本発明は、この知見に基づき好適な廃液再生装置および廃液再生方法を提供するものである。
【0013】
〔第一の実施形態〕
最初に、本発明に係る廃液再生装置の基本的な構成および再生方法を図1に基づきに説明する。図1は、本発明に係る一実施形態としての基本的装置構成を示す概略断面図であり、図1(a)は注水状態、図1(b)は洗浄液供給状態、図1(c)は再生稼動状態を各々示している。
図1に示したように、廃液再生装置1は、周壁に2つの開口(再生液回収孔12,自然排水孔13)を有する処理槽11と、その処理槽11の内部に2つの仕切壁14,15を備える。
【0014】
ここで、仕切壁14は、処理槽11の自然排水孔13が設けられた内壁面に対向するとともに、仕切壁14の下方端部と処理槽11の底面との間に隙間が形成されるように設けられる。この仕切壁14と処理槽11の内壁面とに囲まれた空間が、後述するセルフバランス用の水タンク20として機能する。この水タンク20は、図中上方に水供給用の開口を備える。
他方、仕切壁15は、処理槽11の再生液回収孔12が設けられた内壁面に対向するとともに、仕切壁15の下方端部と処理槽11の底面との間に連通部として機能する隙間16が形成されるように設けられる。この仕切壁15と処理槽11の内壁面とに囲まれた空間が、洗浄再生液を貯留する回収再生液貯留部となる。
【0015】
なお、本実施形態でも、従来の廃液再生装置と同様に、既知の手法により、プラス電極17を仕切壁15の下方端部と再生液回収孔12が設けられた処理槽11の内壁面との間に水平配置するととに、処理槽11の底面に形成される水の層7をアース電極として機能させる。
そして、上述した仕切壁14と仕切壁15とによって挟まれた領域は、廃液もしくは後述する洗浄液が供給、貯留される空間である廃液供給部18として機能する。この仕切壁14と仕切壁15とにより形成される上部開口18aは、廃液もしくは洗浄液をこの空間に供給するための廃液供給口として機能する。
本実施形態においては、プラス電極となる電極板17を仕切壁15の下方端部に水平に設けたので、この仕切壁14と仕切壁15の下方端部の高低差が、最大に設定可能な電極間距離を左右することになる。
【0016】
以下、廃液再生装置1における処理工程につき詳述する。
図1(a)は、本実施形態に係る廃液再生装置の使用開始時の状況を示し、廃液再生装置1の槽内には廃液は入っていない状態である。ここで、処理槽の隔壁14に隣接して設置した本発明のセルフバランス用の水タンク20に、供給口20aを介して、マイナス電極用の水7を所定水位(h3)まで注水する。
【0017】
その後、図1(b)に示したように、新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8を廃液供給口を介して廃液供給部18に供給する。
ここで、供給する新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8は、水より比重の軽い比重(ρ2=0.7〜0.8)程度である。そのため、供給した新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8は、処理槽11の底部で層を形成している水7と混水せず、水7の上に乗った状態となる。このまま新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8を供給していくと、再生洗浄液8の重量により処理槽11の底部にある水7は、隣接したセルフバランス用の水タンク20へ流入していき、結果として、図1(a)の水位(h3)よりも低い水位(h1)となる。
そして、新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8が処理槽11に満杯になり、再生液回収孔12から排出する状態まで新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8を供給する。
このとき、水タンク20内の水位(h0)は、水7の層の水位をh1、溶剤の水位をh2、水の比重をρ1、溶剤の比重をρ2とすると、(h0×ρ1)=(h1×ρ1)+(h2×ρ2)の関係式を充足するが、本実施形態では、このバランスする位置(h0)に、自然排水孔13を設置する。これにより、廃液処理槽内の廃液と水の量が一定の比率に保たれることになる。ひいては、廃液処理槽内の水と洗浄液の水位が一定に保たれる事により、プラス電極とマイナス電極間の距離が一定に制御できる。
【0018】
具体的には、溶剤(洗浄液)の比重をρ=0.7とし、電極水の水位をh1=30mm、溶剤(廃液)の水位をh2=100mmとすると、水タンク20内の水位はh0=100mmとなる。
よって自然排水孔13をタンク底部から100mmの位置に設けると、両者はバランスする。また、本実施形態では、電極板17と水表面間の距離LDは、廃液の比重が溶剤の種類により若干変化することに対応するためLD=35mmで設計した。
なお、図示していないが、自然排出孔99は伸縮性のパイプ状の構成とし、廃液(インキ顔料)の比重に応じて排水孔の位置を調整できる構成としたほうがより好ましい。
【0019】
続いて、新しい洗浄液もしくは再生洗浄液8と水7がバランスした状態になった時点から、図1(c)に示したように廃液6を供給開始するとともに、電極板17にプラス電荷をかけ、アース電極に接続された水の層7とで静電界を発生させる。この電界の発生により、処理槽11内の廃液は、溶剤とインキ顔料と水とに分離され、水とインキ顔料は底部へ沈降し、洗浄液は再生洗浄液8として再生回収孔12から回収される。
本実施形態においては、静電界により廃液から分離した水7は、底部に沈降するが、水位(h1)を保った状態で水タンク20の自然排水孔13から自然に排水されることになる。
よって、廃液が連続して供給され、洗浄液8を再生しながら水7が増加した場合であっても、水7はセルフバランス状態で自然排水されるため、水位(h1)は、ほぼ一定値であり、結果として電極板17とアース電極(水表面)間の距離(LD)は、設計値の値でほぼ一定に保たれることになる。
これにより処理層内のアース電極の水位(h1)を一定に保つため、従来の装置構成で使用していた水位計と電磁開閉バルブ及び制御装置が不要となり、簡易な装置構成で容易に装置製作が可能となり、製作コストが大幅に削減できる。またセンサや制御装置を使用せず、セルフバランス方式のためトラブルが発生する危険性が激減できる。
【0020】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態として、2槽式の廃液再生装置2の概要を図2を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図2は、本実施形態に係わる印刷機の廃液再生装置2を示す概略構成図である。
廃液再生装置2は、第1の再生液処理槽21(以下、第1の処理槽とも称す)と第2の再生液処理槽22(以下、第2の処理槽とも称す)とを有する。第1の処理槽21及び第2の処理槽22は、縦方向に配設されている堰壁23で仕切られている。
また、廃液再生装置1の図中左側にはセルフバランス用の水タンク20が設けられているが、より詳細には、セルフバランス用の水タンク20は、壁部44と仕切り板45で仕切られた印刷機からの排出された廃液6の供給部18に隣接した位置に設けられている。この水タンク20の壁を形成する壁部44の下部には、第1の処理槽21側と連通する隙間(連通部)46が設けられている。
この隙間46により隔壁22の底部は開放されており、容器底部のアース電極である水7が、セルフバランス水タンク20へ流出できる構成となっている。
加えて、第1の処理槽21の堰壁23とこれに対向する反対側壁部44との間には、間隔を空けて仕切り板45が設けられ、この仕切り板45は上下方向に配置されているが、壁部44の下端部よりも仕切り板45の下端部が上方に位置するよう、下端部が第1の処理槽21のほぼ中間位置まで延びている。
【0021】
第1の処理槽21の底部には、マイナス電極として使用する水7を入れてある。このため、特別な電極を必要としてしない。プラス電極には、仕切り板45と堰壁23との間に水平方向に配置され、洗浄液が流通できる多数の孔が形成されたメッシュ方式の電極板17を用いる。なお、この電極板17の位置により電極間距離が定まるが、例えば、本実施形態においては、廃液供給流量密度をq=0.5L/min/m、印加電圧を5kVとし、適性電界強度をDV=0.125kV/mmとすると、プラス電極17とマイナス電極の水7面間の距離はLD1=40mmとなるように設ける。
【0022】
第2の処理槽22には、堰壁23側に隣接して、処理された洗浄液の供給部24が設けられ、供給部24は堰壁23と仕切り板25で形成されている。洗浄液は、堰壁23を超えて供給部24に流入し、第2の処理槽22に供給される。仕切り板25は、上下方向に配置され下端部が第2の処理槽22のほぼ上下中間位置まで延びており、底面との間の隙間で供給部24側とメッシュ電極板26側とが連通する。そして、仕切り板25に平行して処理槽22の構成壁面となる仕切り板27が配置される。さらに、この仕切り板27に隣接させて回収タンク30を配設している。
第2の処理槽22では、処理された洗浄液が仕切り板27を超えて、回収タンク30に供給され、回収タンク30から不図示の回収装置に回収される。
ここで、この第2の処理槽22におけるプラス電極は、仕切り板25と隔壁27の間に水平方向に配置され、洗浄液が流通できる多数の孔を形成したメッシュ形状の電極板26により構成する。
【0023】
第2の処理槽22が第1の処理槽21と異なる点は、処理槽内にマイナス電極として水を使用せず、容器底部自体をマイナス電極28とする、若しくは底部上にマイナス電極28を設ける構成を採用していることにある。マイナス電極28の構成を処理槽21と異ならせた理由は、既に水のほとんどが第1の処理槽21で分離されていること、また水をマイナス電極としない場合には印加電圧は放電しないので、電界強度を強くできることにある。
そのため、本実施例では、第2の処理槽22のプラス電極であるメッシュ電極板26とマイナス電極28には、5kVの電圧を使用する。そして、マイナス電極(容器底部)28までの距離はLD2=30mmとする。この場合の電界強度は、DV=5/30=0.17kV/mmであり、再生洗浄液供給流量q=0.5L/min程度が良好である。
【0024】
以下、本実施形態に係る廃液再生装置の作用について説明する。
図2に示したように、第一の処理槽21の底部にセルフバランス用の水タンク20から、アース電極用の水を所定量供給しておく。
その後、第1の処理槽21、第2の処理槽22に新しい洗浄液、もしくは再生した溶剤(再生液)を満杯に供給しておく。ここで、水タンク20の水は、第一の処理槽21の底部の水7の水位(h1)と新しい洗浄液、もしくは再生した溶剤(再生液)の水位(h2)とでバランスした水位(h0)となり、自然排水孔13から排水されて、所定の水位バランスを保持する。
この状態で、印加電圧を作用させながら廃液6を供給すると、廃液6は仕切り板45の下部を通過してメッシュ電極17のあるところへ移動する。そして静電界作用により水7とインキ顔料9と洗浄液(溶剤)に分離される。水7は、容器下部に沈降し、インキ顔料9はマイナス電極である水7の表面に付着する。そして、再生された洗浄液8は、メッシュ電極17の穴を通過してメッシュ電極17よりも上の位置にある溶剤回収部となる領域に流れ込む。
【0025】
第1の処理槽21の溶剤回収部20に流れ込んだ再生洗浄液は、第1の処理槽21の堰壁23を越えて、第2の処理槽22の供給部24に流れ込む。この第2の処理槽22に流れ込む再生洗浄液は、第1の処理槽21でほぼきれいに分離・再生されているが、わずかに残存するインキ顔料を完全に分離するのが第2の処理槽22の配設目的である。
第2の処理槽22で分離された微小インキ顔料9は、マイナス電極28である容器の底部に付着して溜まる。そして、メッシュ電極26を通過した再生洗浄液は、第2の処理槽22の壁27を越えて、再生洗浄液の回収タンク30に流れ込む。この回収タンク30に流れ込んだ再生洗浄液は、回収装置30により回収され、次の洗浄に使用される。
【0026】
一方、第1の処理槽21で分離された水は、第一の処理槽21の底部に沈降するが、ここで、本発明のセルフバランス構成により、沈降した水7は隔壁44の下部からセルフバランス用の水タンク20に流出する。流出した水により、水タンク20の水位が上昇するが、所定の水位(h0)位置に、自然排水孔13を設けてあるため、増加した水は自然に外部へ排水され、処理槽底部の水位(h1)はほぼ一定量に保持される。
これによりアース電極である水の表面とプラスのメッシュ電極17間の距離(LD1)は、ほぼ一定に保たれ、常に安定した静電分離が行える。
【0027】
以上説明したように、第1の処理槽21に供給された廃液6は、第1の処理槽21で一次分離され、第2の処理槽22で二次分離され、高純度に分離・回収される。なおこの処理は連続して行われる。ここで処理槽内に分離されたインキ顔料9及び水7は、それぞれ専用の回収装置にて処理槽外へ定期的に排出される。
【0028】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態として、本発明を排水タンク、廃液タンク、再生液タンクを備えたトータルシステムとしての廃液再生装置に用いた場合の適用例を説明する。なお、先の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図3は、本実施形態にかかる廃液再生システムの概略構成図である。本実施形態に係る廃液再生装置3は、先に説明した第2の実施形態と同様、第1の処理槽21と第2の処理槽22で構成される。
第1の処理槽21は、廃液6の供給部18と、仕切り板44,45,47と、アース電極としての水7を備える。また、一方の仕切り板44に隣接するようにセルフバランス用の水タンク20を設けてあり、この水タンク20には所定の位置(h0)で自然排水用されるように二重構造で伸縮可能とした排水パイプ81を設けてある。位相パイプ80は、排水タンク32への移送パイプである。
この二重構造で伸縮可能とした排水パイプ81は、印刷機で使用するインキの種類で変化する廃液の比重変化に対処する目的であり、廃液の比重に応じて、バランス水位(h0)を調整できる構成としてある。
【0029】
また、仕切り板44と仕切り板45を隣接させることにより、この間に廃液6の供給部18を形成する。他方の仕切り板45には、メッシュ電極17を取付けている。メッシュ電極17は、水表面との距離LD1に応じて印加電圧を決定する。例えば、本実施形態においては、印加電圧5kV、LD1=35mmとしてある。
なお、静電界で分離しやすいインキ顔料の場合は、LD=30〜40mmとし、分離しにくい顔料の場合は、LD=25〜30mmとした方が、分離し水表面に堆積したインキ顔料が電極6との接触を防止でき、安全に操業できる。
【0030】
そして、第1の処理槽21から第2の処理槽22へは、洗浄液を供給する流通部50を介して再生洗浄液が流れる構成を採用している。
第2の処理槽22は、再生洗浄液の供給部24を備えるが、下部に隙間を有する2枚の仕切り板25,48で仕切られている。
ここで、上述した第1の処理槽21および第2の処理槽22には、液供給部18,24の中央部に挟まれるように2枚の仕切り板47,48を設けてある。仕切り板47,48を設けた理由は、廃液または洗浄液が処理槽内で攪拌されるのを防止するためである。第2の処理槽22で処理された再生洗浄液8は、流通部51を介して、回収タンク30に流れ込み、回収される。
【0031】
次に、水と廃液の供給や再生洗浄液の回収及び分離した水、インキ顔料の排水・除去方法について説明する。
マイナス電極として使用する水7は、あらかじめ手動もしくは不図示のポンプ等により所定位置まで供給しておく。ここで、水タンク20の水位h0は、上述した実施形態と同様に決定されるが、排水パイプ81の上部開口位置により調整されることになる。
そして、水7を供給した後、送液ポンプ34により、廃液を廃液タンク31から供給パイプを介して第1の処理槽21の供給部へ圧送する。
第2の処理槽22で完全に処理された再生洗浄液8は、バルブ35の開操作で再生液タンク33に回収される。なお、流量規制バルブ42は、第1の処理槽21と廃液タンク31の間の流量を規制するバルブである。
また、再生処理により分離し第1の処理槽21の底部側に沈降した水は、水タンク20に流入し、所定水位(h0)を超えた水は二重構造で伸縮可能とした排水パイプ81によって排水し、パイプにてタンク32に回収される。
以上の廃液供給、再生液回収、分離水排水の作業は、処理作業中は連続して行われる。
【0032】
なお処理により分離したインキ顔料の除去は、上述した処理作業を中止したのち行う。このインキ顔料除去作業は、定期的に(例えば1回/週)行うものである。その手順は、次の通りである。
第1の処理槽21、第2の処理槽22の低部に設けた排水管のバルブ36,37を開き、廃液タンク31の直前に設けてあるインキ顔料除去ろ過器38に、廃液6、水7と一緒に排出する。
この時に、分離して水7の表面に付着しているインキ顔料は、廃液6や水7とともに排出されるが、ろ過器38にてインキ顔料はろ過器38に付着し、廃液6と水7が廃液タンク31へ回収される。ろ過器38に付着したインキ顔料は、ろ過器38に設けてあるフィルターごと廃棄される。その後、新たなフィルターをろ過器38にセットし、次の処理まで待機しておく。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基いて種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、再生液処理槽を2槽設けたが、第1の処理槽21及び(または)第2の処理槽22を付加して、3槽以上設けてもよいし、インキ顔料の成分等によっては第1の処理槽21のみでも良い。
またセルフバランス水タンク20の中に、自然排水用の二重構造で伸縮可能とした排水パイプ81を設けてあるが、これに限らず、先に説明した自然排水孔13をタンク100外部に設ける方法でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る廃液再生装置を示す概略構成図である。図1(a)は注水状態、図1(b)は洗浄液供給状態、図1(c)は再生稼動状態を示す。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る廃液再生装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る廃液再生装置を示す概略構成図である。
【図4】従来の廃液再生装置の一構成例の断面概略図である。
【図5】従来の廃液再生装置の原理的構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 廃液再生装置
2 廃液再生装置
3 廃液再生装置
5 廃液再生装置
7 水
8 再生洗浄液
9 インキ顔料
11 処理槽
12 再生液回収孔
13 自然排水孔
14,15 仕切壁
16 連通部
17 メッシュ電極
18 廃液供給部
20 水タンク
21 第1の再生液処理槽
22 第2の再生液処理槽
23 堰壁
24 供給部
25 仕切り板
26 メッシュ電極
27 仕切り板
28 マイナス電極
30 回収タンク
31 廃液タンク
32 排水タンク
33 再生液タンク
34 送液ポンプ
35〜37 バルブ
38 顔料除去ろ過器
42 流量規制バルブ
44,45 仕切り板
61 処理槽
62 仕切り板
63,66 縦壁
65 隙間
67 電極
68 インク顔料
69 分離した水
70 分離し凝集した水
72 水位計
73 排水孔
74 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機で使用した水を含む廃液を貯留する処理槽と、前記処理槽内に電界を発生させる電界生成手段と、を備える廃液再生装置において、前記処理槽に隣接された水貯留槽と、前記電界発生手段により廃液中に含まれた水を凝集させ、当該凝集させた水を前記処理槽から前記水貯留槽に導出する連通部と、を設けたことを特徴とする廃液再生装置。
【請求項2】
前記水貯留槽は、当該水貯留槽における内部の水位を調整する水位調整機構を有することを特徴とする請求項1に記載の廃液再生装置。
【請求項3】
前記水位調整機構は、前記水貯留槽に設けられた外部への排水開口であることを特徴とする請求項2に記載の廃液再生装置。
【請求項4】
前記水位は、前記電界発生手段のプラス電極とマイナス電極間の距離と処理される廃液の比重とに基づき定められることを特徴とする請求項2または請求項3記載の廃液再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−346569(P2006−346569A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175605(P2005−175605)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】