説明

廃液処理装置

【課題】本発明は、加熱時に消費されるエネルギーを低減することが可能な廃液処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】廃液処理装置100Aは、水及び有機物を含む廃液21aを処理し、水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、有機物を酸化させる内管11と、内管11に廃液21aを供給する廃液供給部20と、内管11に空気を供給する空気供給部30を有し、内管11の外面には、コイル状の管に酸化カルシウムが充填されている熱交換型反応器15が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃液を処理する方法としては、焼却処理、生物処理等の方法が知られている。しかしながら、焼却処理は、前処理の脱水や固形分凝集において、エネルギーや薬品が必要となり、不完全燃焼によりダイオキシン類が発生するという問題があった。また、生物処理は、処理時間が長く、処理後に発生する活性汚泥が新たな廃棄物となるという問題があった。
【0003】
そこで、亜臨界水、過熱水蒸気、超臨界水等の熱水中で廃液を処理する方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、電力用トランスやコンデンサなどの電力機器に含まれるPCBを無害化処理するPCB処理方法が開示されている。このPCB処理方法は、電力用トランス或いはコンデンサなどの電力機器の構成材を分割破砕する工程と、分割破砕した破砕片からPCBに汚染された紙、木或いは樹脂などの有機廃棄物を他の構成材から分離して取り出す工程と、取り出した有機廃棄物を水熱分解処理または超臨界水酸化処理する工程を含む。
【0005】
しかしながら、有機廃棄物を処理する際に加熱する必要があるため、多くのエネルギーが消費されるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、加熱時に消費されるエネルギーを低減することが可能な廃液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、前記水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、前記有機物を酸化させる反応器と、前記反応器に前記廃液を供給する手段と、前記反応器に酸化剤を供給する手段を有し、前記反応器は、気体と可逆的に反応することが可能な物質を含む熱交換型反応器と接触していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃液処理装置において、前記熱交換型反応器は、前記物質が充填されているコイル状又は円環状の中空構造体であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、前記水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、前記有機物を酸化させる内管及び外管からなる二重管構造を有する反応器と、前記内管に前記廃液を供給する手段と、前記内管に酸化剤を供給する手段を有し、前記内管と前記外管の間は、気体と可逆的に反応することが可能な物質が充填されている熱交換型反応器であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃液処理装置において、前記気体は、水蒸気であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の廃液処理装置において、前記物質は、酸化カルシウムであることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の廃液処理装置において、前記酸化剤は、酸素又は過酸化水素であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の廃液処理装置において、前記反応器は、酸化触媒を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の廃液処理装置において、前記酸化触媒は、二酸化マンガンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱時に消費されるエネルギーを低減することが可能な廃液処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の廃液処理装置の第一の実施形態を示す図である。
【図2】図1の熱交換型反応器を示す断面図である。
【図3】図1の廃液処理装置の変形例を示す図である。
【図4】図3の廃液処理装置の変形例を示す図である。
【図5】本発明の廃液処理装置の第二の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0018】
図1に、本発明の廃液処理装置の第一の実施形態を示す。水及び有機物を含む廃液21aを処理する廃液処理装置100Aは、水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、有機物を酸化させる内管(反応器)11及び外管12からなる二重管構造を有する反応部10Aと、内管11に廃液21aを供給する廃液供給部20と、外管12に空気を供給する空気供給部30と、内管11から排出された生成物と熱交換する熱交換部40と、内管11から排出された生成物を気液分離する気液分離部50を有する。内管11の廃液21aが供給される側の端面には、外管12に供給された空気を内管11に導入する貫通孔11aが形成されている。また、内管11の廃液21aが供給される側と反対側の端部の近傍に、酸化触媒として、二酸化マンガン13が充填されている。
【0019】
また、内管11の外面には、コイル状のヒーター14が設置されている。このとき、内管11の内部の温度は、温度センサTで検出され、所定の温度になるようにヒーター14が制御される。
【0020】
さらに、内管11の外面には、コイル状の管15aに酸化カルシウム15bが充填されている熱交換型反応器15(図2参照)が接合されている。このとき、熱交換型反応器15の一端は、開閉弁16Aを介して、水17aが充填されている蒸発凝縮器17と接続されており、蒸発凝縮器17には、水17aの温度を調節する熱交換コイル17bが設置されている。なお、水17aを加熱する場合は、熱交換コイル17bをヒーターとして用いることができる。一方、熱交換型反応器15の他端は、開閉弁16Bを介して、真空ポンプ18と接続されている。また、蒸発凝縮器17及び真空ポンプ18は、開閉弁16Cを介して、接続されている。
【0021】
このとき、開閉弁16Aを開いた状態で、必要に応じて、熱交換コイル17bを用いて、水17aを加熱して水蒸気を発生させると、酸化カルシウム15bと反応して水酸化カルシウムが生成し、放熱される。このため、内管11を加熱することができる。この場合、水蒸気の移動を促進するために、開閉弁16Aを開く前に、開閉弁16B及び/又は16Cを開いた状態で、真空ポンプ18により、熱交換型反応器15及び/又は蒸発凝縮器17を脱気することが好ましい。
【0022】
一方、有機物を酸化させることにより発生した熱により、水蒸気と酸化カルシウム15bが反応することにより生成した水酸化カルシウムが加熱されると、水蒸気が発生し、蓄熱される。このとき、開閉弁16Aを開くと、発生した水蒸気が蒸発凝縮器17で凝縮する。一方、開閉弁16Bを開くと、発生した水蒸気が真空ポンプ18により外部に排出される。この場合、蒸発凝縮器17は、蒸発器として機能し、蒸発凝縮器17に適宜水17aを補充する必要がある。
【0023】
なお、廃液21aを処理している間、開閉弁16Aを開いた状態で、熱交換器を用いて、蒸発凝縮器17の水17aの温度を一定に制御すると、内管11の温度変化を抑制することができる。
【0024】
廃液供給部20は、廃液21aが貯蔵されているタンク21と、タンク21から内管11に廃液21aを連続供給するポンプ22と、開閉弁23を有する。このとき、タンク21には、攪拌羽根21bが設置されており、廃液21aを攪拌することができる。また、内管11に供給される廃液21aの圧力は、圧力センサP1で検出され、所定の圧力になるようにポンプ22が制御される。
【0025】
空気供給部30は、廃液が供給される圧力以上に空気を圧縮して外管12に連続供給するコンプレッサー31と、開閉弁32を有する。このとき、外管12に供給される空気の圧力は、圧力センサP2で検出され、所定の圧力になるようにコンプレッサー31が制御される。
【0026】
以上のようにして、内管11では、廃液供給部20から供給された廃液21aと、空気供給部30から外管12を経由して導入された空気が混合される。このとき、空気は、外管12を経由して導入されるため、予熱される。次に、熱交換型反応器15における放熱により、廃液21aに含まれる水が亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化されると共に、廃液21aに含まれる有機物が酸化されて低分子化される。このとき、必要に応じて、ヒーター14を用いて、内管11を加熱してもよい。さらに、低分子化された有機物は、二酸化マンガン13の触媒作用により完全酸化される。
【0027】
このとき、廃液21aの処理を開始した後は、有機物の酸化により発熱するため、ヒーター14による加熱又は熱交換型反応器15における放熱は、基本的に不要となる。
【0028】
熱交換部40は、二重管構造を有する向流型熱交換方式の熱交換器41と、水42aが貯蔵されているタンク42、タンク42から熱交換器41に水42aを供給するポンプ43を有する。このとき、熱交換器41に供給された水42aと、内管11から排出された生成物の間で熱交換することにより、水蒸気が発生する。
【0029】
気液分離部50は、熱交換器41から排出された生成物を大気圧まで減圧する背圧弁51と、減圧された生成物を気液分離する気液分離器52を有する。このとき、気液分離器52は、減圧された生成物を、無機酸等を僅かに含む水と、二酸化炭素ガス、窒素ガス等を含む気体に分離し、無機酸等を僅かに含む水が回収される。無機酸等を僅かに含む水は、水質基準を確認した後、工業用水として再利用される。
【0030】
なお、二酸化マンガン13の代わりに、PtO、PdO、AgO、CdO、V、Cr、CeO、Al、ThO、RuO、PtO、CuO、NiO、Co、Au等を用いてもよい。
【0031】
また、外管12に空気を供給する空気供給部30の代わりに、外管12にオゾンを供給するオゾン供給部や外管12に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給部を用いてもよい。
【0032】
さらに、酸化カルシウム15bの代わりに、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム等の水蒸気と可逆的に反応することが可能な物質を用いてもよい。
【0033】
また、水17aの代わりに、アンモニア、メタノール等を用いてもよい。
【0034】
水17aの代わりに、アンモニアを用いる場合、アンモニアと可逆的に反応することが可能な物質としては、特に限定されないが、塩化カルシウム、塩化ニッケル等が挙げられる。
【0035】
水17aの代わりに、メタノールを用いる場合、メタノールと可逆的に反応することが可能な物質としては、特に限定されないが、臭化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0036】
さらに、内管11の内面に、熱交換型反応器15が接合されていてもよい。
【0037】
図3に、廃液処理装置100Aの変形例を示す。廃液処理装置100A'は、反応部10Aの代わりに、円環状の管15a'に酸化カルシウム(不図示)が充填されている熱交換型反応器15'が、内管11の外面に接合されており、熱交換型反応器15'の外面にコイル状のヒーター14が設置されている反応部10A'を用いる以外は、廃液処理装置100Aと同一の構成である。
【0038】
なお、ヒーター14は、内管11と熱交換型反応器15'の間に設置されていてもよい。
【0039】
図4に、廃液処理装置100A'の変形例を示す。廃液処理装置100A"は、反応部10A'の代わりに、外管12を省略して、内管(反応器)11からなる一重管構造を有する反応部10A"を用い、内管11に空気を供給する以外は、廃液処理装置100A'と同一の構成である。
【0040】
図5に、本発明の廃液処理装置の第二の実施形態を示す。なお、図5において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。水及び有機物を含む廃液21aを処理する廃液処理装置100Bは、水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、有機物を酸化させる内管11'及び外管12からなる二重管構造を有する反応器10Bと、内管11'に廃液21aを供給する廃液供給部20と、外管12に空気を供給する空気供給部30と、内管11'から排出された生成物と熱交換する熱交換部40と、内管11'から排出された生成物を気液分離する気液分離部50を有する。内管11'の廃液21aが供給される側の端面には、外管12に導入された空気及び水蒸気を内管11'に導入する貫通孔11aが形成されている。また、内管11'の廃液21aが供給される側と反対側の端部の近傍に二酸化マンガン13が充填されている。
【0041】
また、内管11'の外面には、コイル状のヒーター14が設置されている。このとき、内管11'の内部の温度は、温度センサTで検出され、所定の温度になるようにヒーター14が制御される。
【0042】
さらに、内管11'と外管12の間には、酸化カルシウム(不図示)が充填されており、熱交換型反応器を構成している。このとき、酸化カルシウムは、メッシュ12aにより保持されている。また、外管12は、開閉弁16Aを介して、水17aが充填されている蒸発器17'と接続されており、蒸発器17'には、水17aの温度を調節する熱交換コイル17bが設置されている。なお、水17aを加熱する場合は、熱交換コイル17bをヒーターとして用いることができる。
【0043】
このとき、開閉弁16Aを開いた状態で、必要に応じて、熱交換コイル17bを用いて、水17aを加熱して水蒸気を発生させると、酸化カルシウムと反応して水酸化カルシウムが生成することにより熱が発生し、放熱される。このため、内管11を加熱することができる。
【0044】
一方、有機物を酸化させることにより発生した熱により、水蒸気と酸化カルシウムが反応することにより生成した水酸化カルシウムが加熱されて、水蒸気が発生し、蓄熱される。このとき、発生した水蒸気は、内管11に導入された後、生成物と共に、内管11から排出され、気液分離部50で気液分離される。この場合は、蒸発器17'に水17aを適宜補充する必要がある。
【0045】
以上のようにして、内管11'では、廃液供給部20から供給された廃液21aと、空気導入部30から外管12を経由して導入された空気が混合される。このとき、空気は、外管12を経由して導入されるため、予熱される。次に、内管11'と外管12の間における放熱により、廃液21aに含まれる水が亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化されると共に、廃液21aに含まれる有機物が酸化されて低分子化される。このとき、必要に応じて、ヒーター14を用いて、内管11'を加熱してもよい。さらに、低分子化された有機物は、二酸化マンガン13の触媒作用により完全酸化される。
【0046】
このとき、廃液21aの処理を開始した後は、有機物の酸化により発熱するため、ヒーター14による加熱又は内管11'と外管12の間における放熱は、基本的に不要となる。
【0047】
なお、蒸発器17'の代わりに、空気供給部30と同様の水蒸気供給部を設置して外管12に水蒸気を供給してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて、具体的に説明する。
【0049】
[実施例1]
図1の廃液処理装置100Aを用いて、8質量%メタノール水溶液を処理した。
【0050】
まず、開閉弁16A、16B及び16Cを閉じた状態で、真空ポンプ18を作動させた後、開閉弁16Bを開き、熱交換型反応器15内の圧力を1Pa以下にして、開閉弁16Bを閉じた。次に、開閉弁16Cを開いて、脱気した後、開閉弁16Cを閉じ、真空ポンプ18を停止させた。さらに、開閉弁16Aを開いて、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に水蒸気を供給し、酸化カルシウム15bと水蒸気を反応させ、内管11内の温度を330℃にした。この際、蒸発凝縮器17に水17aと熱交換する熱交換器を設置して、水17aの温度を15℃に制御した。
【0051】
次に、開閉弁23及び32を開き、ポンプ22を用いて、8質量%メタノール水溶液を10MPaで内管11に供給すると共に、コンプレッサー31を用いて、空気を10.5MPaで外管12に供給した。このとき、8質量%メタノール水溶液の内管11における滞留時間を1分間とした。また、内管11に充填する二酸化マンガン13を5gとした。
【0052】
次に、内管11から排出された生成物は、熱交換器41において、ポンプを用いて供給された水42aにより瞬時に25℃に冷却された。さらに、冷却された生成物は、背圧弁51により減圧された後、気液分離器52により液体成分と気体成分に分離された。
【0053】
気液分離器52により分離された液体成分と気体成分を分析したところ、TOC基準で99.999%の分解率が達成されていること、液体成分が水を含有すること、気体成分が二酸化炭素と水を含有することが確認された。この結果から、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に水蒸気を供給することにより、8質量%メタノール水溶液の処理を開始できることが検証された。また、蒸発凝縮器17内の水17aの水位に変化が無いことが確認された。この結果から、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に供給された水蒸気と酸化カルシウム15bが反応することにより生成した水酸化カルシウムが、メタノールの酸化により発生した熱により、酸化カルシウムと水蒸気に分解し、蒸発凝縮器17で水蒸気が凝縮したことが検証された。なお、熱交換器41から発生した水蒸気の温度は170℃であった。
【0054】
[実施例2]
8質量%メタノール水溶液の代わりに、2質量%メタノール水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、処理した。
【0055】
気液分離器52により分離された液体成分と気体成分を分析したところ、TOC基準で99.999%の分解率が達成されていること、液体成分が水を含有すること、気体成分が二酸化炭素と水を含有することが確認された。この結果から、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に水蒸気を供給することにより、2質量%メタノール水溶液の処理を開始できることが検証された。また、蒸発凝縮器17内の水17aの水位に変化が無いことが確認された。この結果から、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に供給された水蒸気と酸化カルシウム15bが反応することにより生成した水酸化カルシウムが、メタノールの酸化により発生した熱により、酸化カルシウムと水蒸気に分解し、蒸発凝縮器17で水蒸気が凝縮したことが検証された。なお、熱交換器41から発生した水蒸気の温度は170℃であった。
【0056】
[実施例3]
8質量%メタノール水溶液の代わりに、5質量%メタノール水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、処理した。
【0057】
気液分離器52により分離された液体成分と気体成分を分析したところ、TOC基準で99.999%の分解率が達成されていること、液体成分が水を含有すること、気体成分が二酸化炭素と水を含有することが確認された。この結果から、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に水蒸気を供給することにより、5質量%メタノール水溶液の処理を開始できることが検証された。また、蒸発凝縮器17内の水17aの水位に変化が無いことが確認された。この結果から、蒸発凝縮器17から熱交換型反応器15に供給された水蒸気と酸化カルシウム15bが反応することにより生成した水酸化カルシウムが、メタノールの酸化により発生した熱により、酸化カルシウムと水蒸気に分解し、蒸発凝縮器17で水蒸気が凝縮したことが検証された。なお、熱交換器41から発生した水蒸気の温度は170℃であった。
【0058】
[実施例4]
蒸発器17'の代わりに、空気供給部30と同様の水蒸気供給部を設置して外管12に水蒸気を供給した以外は、図5の廃液処理装置100Bと同一の構成の廃液処理装置を用いて、8質量%メタノール水溶液を処理した。
【0059】
水蒸気供給部の開閉弁を開き、コンプレッサーを用いて、水蒸気を0.05MPaで外管12に供給し、酸化カルシウムと水蒸気を反応させ、内管11'内の温度を450℃にした後、開閉弁を閉じた。
【0060】
次に、開閉弁23及び32を開き、ポンプ22を用いて、8質量%メタノール水溶液を10MPaで内管11'に供給すると共に、コンプレッサー31を用いて、空気を10.5MPaで外管12に供給した。このとき、8質量%メタノール水溶液の内管11'における滞留時間を1分間とした。また、内管11'に充填する二酸化マンガン13を5gとした。
【0061】
次に、内管11'から排出された生成物は、熱交換器41において、ポンプを用いて供給された水42aにより瞬時に25℃に冷却された。さらに、冷却された生成物は、背圧弁51により減圧された後、気液分離器52により液体成分と気体成分に分離された。
【0062】
同様の処理を2時間サイクルで5回実施した。
【0063】
気液分離器52により分離された液体成分と気体成分を分析したところ、5回の処理のいずれにおいても、TOC基準で99.999%の分解率が達成されていること、液体成分が水を含有すること、気体成分が二酸化炭素と水を含有することが確認された。この結果から、コンプレッサーを用いて、外管12に水蒸気を供給することにより、8質量%メタノール水溶液の処理を開始できることが検証された。また、コンプレッサーを用いて、外管12に供給された水蒸気と酸化カルシウムが反応することにより生成した水酸化カルシウムが、メタノールの酸化により発生した熱により、酸化カルシウムと水蒸気に分解したことが検証された。なお、熱交換器41から発生した水蒸気の温度は170℃であった。
【符号の説明】
【0064】
100A、100A'、100A"、100B 廃液処理装置
10A、10A'、10A"、10B 反応部
11 内管(反応器)
11' 内管
11a 貫通孔
12 外管
12a メッシュ
13 二酸化マンガン
14 ヒーター
15、15' 熱交換型反応器
15a、15a' 管
15b 酸化カルシウム
16A、16B、16C 開閉弁
17 蒸発凝縮器
17' 蒸発器
17a 水
17b 熱交換コイル
18 真空ポンプ
20 廃液供給部
21 タンク
21a 廃液
21b 撹拌羽根
22 ポンプ
23 開閉弁
30 空気供給部
31 コンプレッサー
32 開閉弁
40 熱交換部
41 熱交換器
42 タンク
42a 水
43 ポンプ
50 気液分離部
51 背圧弁
52 気液分離器
T 温度センサ
P1、P2 圧力センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2002−143825号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、
前記水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、前記有機物を酸化させる反応器と、前記反応器に前記廃液を供給する手段と、前記反応器に酸化剤を供給する手段を有し、
前記反応器は、気体と可逆的に反応することが可能な物質を含む熱交換型反応器と接触していることを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
前記熱交換型反応器は、前記物質が充填されているコイル状又は円環状の中空構造体であることを特徴とする請求項1に記載の廃液処理装置。
【請求項3】
水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、
前記水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、前記有機物を酸化させる内管及び外管からなる二重管構造を有する反応器と、前記内管に前記廃液を供給する手段と、前記内管に酸化剤を供給する手段を有し、
前記内管と前記外管の間は、気体と可逆的に反応することが可能な物質が充填されている熱交換型反応器であることを特徴とする廃液処理装置。
【請求項4】
前記気体は、水蒸気であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃液処理装置。
【請求項5】
前記物質は、酸化カルシウムであることを特徴とする請求項4に記載の廃液処理装置。
【請求項6】
前記酸化剤は、酸素又は過酸化水素であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の廃液処理装置。
【請求項7】
前記反応器は、酸化触媒を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の廃液処理装置。
【請求項8】
前記酸化触媒は、二酸化マンガンであることを特徴とする請求項7に記載の廃液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139654(P2012−139654A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280(P2011−280)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】