説明

廃濾過助剤処理物及び廃濾過助剤処理方法

【課題】新たな用途に適用することができ、余剰の廃濾過助剤の発生を招来することなく、安定して廉価に得ることができる廃濾過助剤処理物、及びその廃濾過助剤の処理方法を提供する。
【解決手段】珪藻土を主成分とする濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤と粉末状の濾過助剤と固化剤とを混合する工程(ステップS
1)と、得られた混合物を適宜時間だけ養成する工程(ステップS2)と、養成した混合物を用いて造粒する工程(ステップS3)と、得られた粒状物を醗酵させる工程(ステップS4)とをこの順に実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、醸造酒から菌体を濾別する工程で生じる廃濾過助剤を処理した廃濾過助剤処理物、及び廃濾過助剤を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール工場では、麦芽に加水して糖化させた麦汁を酵母によって醗酵し、得られた醗酵液を、珪藻土を主成分とする濾過助剤を用いて濾過することによって、前記醗酵液から酵母の菌体を取り除いてビールを醸造しているが、この濾過工程において、酵母菌体と濾過助剤とが混在する廃濾過助剤が廃棄物として生じるため、かかる廃濾過助剤を廉価に処理することが重要である。
【0003】
そのため従来より、廃濾過助剤をコンクリート製品に混入させる処理方法が採用されていた。
【0004】
一方、後記する特許文献1には、次のような処理方法が開示されている。即ち、酒の製造工程で濾過助剤として用いられた珪藻土と、臭いを除去するためのフライアッシュ又は活性炭等の灰と、主に鋳物の製造工程で用いられた砂と、高分子化学薬品を主成分とする結合剤と、水とを混練し、これを所定の形状に成形した後、乾燥硬化させるのである。このようにして得られた処理物は、高い強度と靭性とを備えているため、各種ブロック及びアスファルト舗道の代替品、又はコンクリート製二次製品の代替品として用いることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−1130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの方法にあっても、その処理物たるコンクリート製品又はその代替品は、強度を含む所用の品質を得るために、混合し得る廃濾過助剤の量が制限される上に、得られた処理物の用途が限られるため、廃濾過助剤の処理量が少なく、未処理の余剰の廃濾過助剤が発生する場合があった。かかる廃濾過助剤は、水分含量が高く、菌体等の有機物を多く含むため、比較的短時間で腐敗臭が生じる。そのため、余剰の廃濾過助剤については、処理費が嵩む焼却処理を行わなければならないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載された処理方法では、灰及び鋳物砂といった特殊な原料が必要であるため、原料を安定して得ることができない虞があるのに加え、原料に要するコストが高いという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、コンクリート製品又はその代替品以外の新たな用途に適用することができ、余剰の廃濾過助剤の発生を招来することなく、安定して廉価に得ることができる廃濾過助剤処理物、及びその廃濾過助剤の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、主に珪藻土を含む濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤を処理した廃濾過助剤処理物であって、前記廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合し、得られた混合物を適宜時間だけ養成し、養成した混合物を用いて造粒し、得られた粒状物を醗酵させてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記混合物に含有される濾過助剤は、10質量%以上20質量%以下にしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記混合物に含有される固化剤は、3質量%以上10質量%以下にしてあることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記固化剤はセメント系剤であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の本発明は、珪藻土を主成分とする濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤を処理する方法において、前記廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合する工程と、得られた混合物を適宜時間だけ養成する工程と、養成した混合物を用いて造粒する工程と、得られた粒状物を醗酵させる工程とを実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本発明では、廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合し、得られた混合物を適宜時間だけ養成し、養成した混合物を用いて造粒し、得られた粒状物を醗酵させてなるため、例えば園芸材として使用することができる一方、余剰の廃濾過助剤の発生を招来することなく、安定して廉価に得ることができる。
【0015】
この廃濾過助剤に含まれる珪藻土は、水分を素早く吸収保持した後、徐徐に放出する一方、余分な水分は通過させるという作用を有し、廃濾過助剤処理物にあってもかかる作用を有する。また、廃濾過助剤処理物は粒状でありその内部に形成された複数の細孔も同様の作用を有する。一方、廃濾過助剤処理物は粒状であるため、排水性及び通気性に優れている。従って、廃濾過助剤処理物を、鉢又はプランタ内に投入する園芸材又はその一部として使用することができる。また、このような作用を有するので、廃濾過助剤処理物を土壌に混入させた場合、植物の生育に適した土壌に改良することができ、土壌改良材として使用することができる。
【0016】
一方、廃濾過助剤処理物に含まれる珪藻土は、塩基置換容量が大きいため、余剰の肥料成分を一時的に吸着して、徐徐に放出することができる。従って、廃濾過助剤処理物を圃場に混入させた場合、植物に肥料を緩効的に作用させることができ、施肥量を低減させることができる。
【0017】
また、土壌又は圃場に混入させた廃濾過助剤処理物は、徐徐に崩壊して土壌化するため、環境に及ぼす負荷を可及的に低減することができる。
【0018】
請求項2記載の本発明では、前述した混合物に含有される濾過助剤は、10質量%以上20質量%以下にしてあるため、混合機で混合して得られる混合物の水分含量が適度に調整されて、当該混合物の取り扱いが容易になると共に、混合物の粒状化を好適に実施することができる。
【0019】
請求項3記載の本発明では、前記混合物に含有される固化剤は、3質量%以上10質量%以下にしてあるため、必要以上に崩壊させることなく粒状物たる廃濾過助剤処理物を取り扱うことができると共に、園芸材として使用した場合、経時的に崩壊させて土壌化することができる。
【0020】
請求項4記載の本発明では、固化剤はセメント系剤であるため、比較的少ない量で所要の強度を得ることができる一方、経時的な崩壊を招来させることができる。
【0021】
請求項5記載の本発明では、廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合する工程と、得られた混合物を適宜時間だけ養成する工程と、養成した混合物を用いて造粒する工程と、得られた粒状物を醗酵させる工程とを実施するため、得られた廃濾過助剤処理物を例えば園芸材として使用することができる一方、余剰の廃濾過助剤の発生を招来することなく、安定して廉価に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る廃濾過助剤処理物は、主に珪藻土を含む濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合し、得られた混合物を適宜時間だけ養成し、養成した混合物を用いて造粒し、得られた粒状物を醗酵させて形成してある。
【0023】
ここで、前記混合物に含有される濾過助剤は、10質量%以上20質量%以下にしてある。
【0024】
また、前記混合物に含有される固化剤は、3質量%以上10質量%以下にしてある。
【0025】
更に、前記固化剤はセメント系剤である。
【0026】
ところで、本発明に係る廃濾過助剤処理方法は、主に珪藻土を含む濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合する工程と、得られた混合物を適宜時間だけ養成する工程と、養成した混合物を用いて造粒する工程と、得られた粒状物を醗酵させる工程とを実施する。
【0027】
以下、本発明を図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係る廃濾過助剤の処理手順を示すフローチャートである。本発明に係る処理方法では、まず、酵母といった菌体を含み、主に珪藻土を用いてなる廃濾過助剤を混合機に投入すると共に、未使用の粉末状の濾過助剤及び固化剤をそれぞれ投入し、それらを混合機によって混合する(ステップS1)。
【0028】
粉末状の濾過助剤の投入量は、10〜20質量%程度、好適には10質量%程度である。粉末状の濾過助剤の投入量がこの範囲内の場合、混合機で混合して得られる混合物の水分含量が適度に調整されて、当該混合物の取り扱いが容易になると共に、後述する粒状化を好適に実施することができる。更に、粉末状の濾過助剤の投入量を10質量%程度にした場合、直径が1.0mm〜15mm程度の所要の粒状物を得ることができる。一方、粉末状の濾過助剤の投入量が前記範囲外の場合、混合物の粒状化を好適に実施することができない。
【0029】
ところで、前述したように、濾過助剤は珪藻土を主成分としており、この珪藻土としては、例えば、昭和化学工業株式会社製のラジオライトを用いることができる。なお、珪藻土は複数種類を混合したものであってもよい。また、粉末状の濾過助剤として、例えば濾過器に充填した後の余剰の濾過助剤及び濾過器充填中に飛散集塵した濾過助剤を用いることができる。これによって、余剰の濾過助剤及び飛散した濾過助剤の有効利用を図ることができる。
【0030】
また、固化剤の投入量は、3〜8質量%程度、好適には5質量%程度である。固化剤の投入量が3質量%程度より少ない場合、後述する粒状物たる廃濾過助剤処理物の強度が不足するため、当該粒状物が容易に崩壊して取り扱いが困難であり、固化剤の投入量が8質量%程度より多い場合、粒状物が殆ど崩壊しないため、経時的に土壌化させることができず、後述するように園芸材として使用することができない。一方、固化剤の投入量を3〜8質量%程度にした場合、必要以上に崩壊させることなく粒状物を取り扱うことができると共に、園芸材として使用した場合、経時的に崩壊させて土壌化することができる。更に、かかる取り扱いの容易さ及び土壌化の観点から、固化剤の投入量を5質量%程度にした場合、粒状物の強度を至適にすることができる。
【0031】
この固化剤としてはセメント系のものが適しており、例えば、三井鉱山株式会社製のベストキーパーを使用することができる。なお、固化剤はセメント系に限られず、前述した如く、粒状物の強度を、当該粒状物を容易に取り扱うことができると共に、経時的に土壌化させることができるようにさせ得るものであればよい。
【0032】
ここで前述した廃濾過助剤の水分含量は80質量%程度であり、未使用の濾過助剤及び固化剤の水分含量は共に5質量%以下である。従って、それらの混合物の水分含量は、65質量%程度である。
【0033】
次に、ステップS1で得られた混合物を、それに含まれる固化剤が少し作用するまで、1日程度、養成した後(ステップS2)、パン型造粒機によって、直径が1.0mm以上15mm以下程度の粒状物を造製する(ステップS3)。なお、養成に要する時間は、固化剤の種類によって異なり、短時間で固化する種類を用いた場合は、それに対応して養成時間を短くする。一方、パン型造粒機としては、パンの直径が1.5m程度で、パンの傾斜角度が60°〜80°程度のものを使用することができ、このパンを20〜35rpm程度の回転速度で回転させることによって造粒する。
【0034】
そして、このようにして得られた粒状物を醗酵槽内に投入し、当該粒状物に含まれる酵母等の有機物を微生物にて1週間程度醗酵させる(ステップS4)ことによって、粒状製品たる廃濾過助剤処理物を得る。この場合、先に醗酵処理を終えた粒状物の一部を残存させた醗酵槽内に、未醗酵の新たな粒状物を投入することによって、未醗酵の粒状物に微生物を接種する手間を省くことができる。
【0035】
かかる醗酵に用いる微生物としては、Streptomyces属、Thermoactinomyces属、Thermomonospora属、Micromonospora属に属する菌株を用いるのが好適である。
【0036】
また、前述した醗酵槽としては、山積した粒状物の下側から空気を吹き込むようにしたものであってもよいし、攪拌機によって粒状物の一部を順に攪拌するようにしたものであってもよいが、前者の場合は、後者の場合に比べて醗酵槽の床面積を狭くすることができるため、好適である。
【0037】
この醗酵工程によって、前記粒状物に含まれる酵母等の有機物を醗酵させて、有機物の腐敗による悪臭の発生を防止することができる。一方、発生する醗酵熱によって粒状物の乾燥、及び固化剤による固化を促進させることができる。また、かかる有機物の醗酵、乾燥及び固化によって、廃濾過助剤処理物の内部に複数の細孔が形成されるため、廃濾過助剤処理物は多孔質性を有する。
【0038】
ところで、廃濾過助剤に含まれる珪藻土は、水分を素早く吸収保持した後、徐徐に放出する一方、余分な水分は通過させるという作用を有する。前述した如く得られた廃濾過助剤処理物にあってもかかる作用を有するのに加え、内部に形成された複数の細孔も同様の作用を有する。また、廃濾過助剤処理物は粒状であるため、排水性及び通気性に優れている。従って、廃濾過助剤処理物を、鉢又はプランタ内に投入する園芸材又はその一部として使用することができる。また、このような作用を有するので、廃濾過助剤処理物を土壌に混入させた場合、植物の生育に適した土壌に改良することができ、土壌改良材として使用することができる。
【0039】
一方、廃濾過助剤処理物に含まれる珪藻土は、塩基置換容量が大きいため、余剰の肥料成分を一時的に吸着して、徐徐に放出することができる。従って、廃濾過助剤処理物を圃場に混入させた場合、植物に肥料を緩効的に作用させることができ、施肥量を低減させることができる。
【0040】
また、土壌又は圃場に混入させた廃濾過助剤処理物は、徐徐に崩壊して土壌化するため、環境に及ぼす負荷を可及的に低減することができる。
【0041】
ところで、前述した醗酵工程によって、廃濾過助剤に含まれた酵母の菌体内成分が菌体外へ溶出する。菌体内成分には、窒素、燐酸、カリウム以外に銅及び亜鉛等の植物栄養素となる微量成分が含まれ、これらの成分が菌体外へ溶出することによって可溶化されて、次の表に示した如く、その状態で廃濾過助剤処理物内に残存するため、廃濾過助剤処理物が土壌又は圃場に混入された場合、それらの成分を肥料として供給することができる。
【0042】
【表1】

【0043】
一方、前述した如く廃濾過助剤処理物は粒状であるので、廃濾過助剤処理物を堆積させても通気性に優れており、加えて、廃濾過助剤処理物が多孔質であるため、有機質廃棄物を微生物によって醗酵処理するための菌床に適用することもできる。これによって、流動性が高い例えば焼酎滓及び廃糖蜜等の廃棄物を、堆積させた廃濾過助剤処理物上に散布し、適当な微生物によって効率的に醗酵処理することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、廃濾過助剤と未使用の濾過助剤と固化剤とを混合したが、本発明はこれに限らず、更に、pH調整剤を混合するようにしてもよい。これによって、廃濾過助剤処理物を中性化することができる。また、醗酵させた粒状物に液状の肥料成分を吸収させ後、乾燥させるようにしてもよい。これによって、緩効性肥料として適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る廃濾過助剤の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
S1 混合工程
S2 養成工程
S3 造粒工程
S4 醗酵工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に珪藻土を含む濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤を処理した廃濾過助剤処理物であって、
前記廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合し、
得られた混合物を適宜時間だけ養成し、
養成した混合物を用いて造粒し、
得られた粒状物を醗酵させてなる
ことを特徴とする廃濾過助剤処理物。
【請求項2】
前記混合物に含有される濾過助剤は、10質量%以上20質量%以下にしてある請求項1記載の廃濾過助剤処理物。
【請求項3】
前記混合物に含有される固化剤は、3質量%以上10質量%以下にしてある請求項1又は2記載の廃濾過助剤処理物。
【請求項4】
前記固化剤はセメント系剤である請求項1から3のいずれかに記載の廃濾過助剤処理物。
【請求項5】
珪藻土を主成分とする濾過助剤を用いて醗酵後の微生物菌体を濾過して得られる廃濾過助剤を処理する方法において、
前記廃濾過助剤と濾過助剤と固化剤とを混合する工程と、
得られた混合物を適宜時間だけ養成する工程と、
養成した混合物を用いて造粒する工程と、
得られた粒状物を醗酵させる工程と
を実施することを特徴とする廃濾過助剤処理方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−263541(P2006−263541A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83569(P2005−83569)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(505106184)株式会社国光産業 (1)
【Fターム(参考)】