説明

廃糖蜜の抗酸化能向上技術

【課題】本発明は、糖蜜を廃棄物としてではなく、機能性食品添加物等の付加価値を有する資源として利用することを目的とする。
【解決手段】本発明は、吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする抗酸化能が強化された糖蜜の製造方法を提供する。また、本発明は、吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする糖蜜の抗酸化能の強化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サトウキビから粗糖製造の際に分離される糖蜜の有効利用に関する。
【背景技術】
【0002】
サトウキビから粗糖を製造する際に糖蜜が分離されるが、これまで畜産飼料の添加物等に利用される程度で有効な利用方法はなく、主に海洋投棄が行われていた。しかしながら、環境問題から海洋投棄が制限され、製糖工場は廃棄物処理に苦慮している。
糖蜜には、抗酸化能(非特許文献1)、糖の小腸からの吸収阻害(非特許文献2)、血糖値上昇抑制(非特許文献3)、美白(特許文献1)等の機能性を有する多種類のポリフェノール及び配糖体が存在することが報告されている。また、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌又は乳酸菌と酵母と枯草菌を用いて糖蜜を発酵させることにより抗酸化能を強化できることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−22070号公報
【特許文献2】特開2006−94800号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本農芸化学会誌, 74, 885-890, 2000
【非特許文献2】和漢医薬学会誌, 7, 168-172, 1990
【非特許文献3】Planta Med., 50, 465-468, 1984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記強化方法では、抗酸化能の強化は15%程度に過ぎない。本発明は、糖蜜を廃棄物としてではなく、機能性食品添加物等の付加価値を有する資源として利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする抗酸化能が強化された糖蜜の製造方法を提供する。
また、本発明は、吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする糖蜜の抗酸化能の強化方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、植物由来の抗酸化能強化食品添加物として食品分野において広範な利用が期待される。本発明は、環境に優しく、安全性に優れているという特色を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の工程を示すフローチャートである。
【図2】糖蜜を100℃で焙煎した場合の焙煎時間の影響を示すグラフである。
【図3】糖蜜を120℃で焙煎した場合の焙煎時間の影響を示すグラフである。
【図4】糖蜜を140℃で焙煎した場合の焙煎時間の影響を示すグラフである。
【図5】糖蜜を160℃で焙煎した場合の焙煎時間の影響を示すグラフである。
【図6】糖蜜を180℃で焙煎した場合の焙煎時間の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の抗酸化能が強化された糖蜜の製造方法又は糖蜜の抗酸化能の強化方法は、吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする。
本発明の抗酸化能が強化された糖蜜の製造方法で使用する糖蜜としては、サトウキビ等から砂糖を製造する製糖工場の粗糖分離後の廃糖蜜やサトウキビ由来のシロップ、およびこれらをアルコール発酵させ蒸留した残渣を使用することができる。
また、吸着剤としては、糖蜜を吸着し、その後加熱できるものであればどのようなものでも使用できるが、好ましくは珪藻土又は珪藻土焼成物である。例えば、Celite社製のセライトやマイクロセルなどを使用できる。
吸着剤に糖蜜を吸着させる前に、糖蜜を予め水や砂糖水のような食品に添加できる水溶液などで希釈してもよい。糖蜜を希釈して使用する場合には、好ましくは2倍〜10倍に希釈する。
【0010】
糖蜜を吸着した吸着剤を加熱する方法としては、どのような方法及び装置を用いて行ってもよい。例えば、ガス、電気、重油等を利用した乾熱機、オーブン、焙煎機等が利用できる。加熱温度は、好ましくは90℃〜170℃であり、より好ましくは100℃〜160℃である。加熱時間に関して、最適な加熱時間は加熱温度に対応して変化するが、一般的には5〜100分であり、好ましくは10〜60分間である。
【0011】
吸着剤を加熱した後は、例えば吸着剤の冷却、水を加えて攪拌、ろ過又は遠心分離のような工程を経て抗酸化能が強化された糖蜜を得ることができる。ろ過又は遠心分離の前に沸騰水中で糖蜜を抽出してもよい。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
各試験管に100mgのセライト(炭酸ナトリウムとともに焼生した珪藻土、Celite社製)を入れ、蒸留水で3倍に希釈した糖蜜(製糖工場の粗糖分離後の廃糖蜜)100μlを吸着させ、100℃、120℃、140℃、160℃及び180℃の温度で、それぞれ10分、20分、30分、40分、50分及び60分間処理した。温度処理には乾熱器(アズワン社製)を用いた。
試料が室温になるまで放置した後、2mlの蒸留水を加えて攪拌し、沸騰水中で1分間静置後、すぐに水中で冷却し、遠心分離(1750×g、30分間)した。遠心後、上澄みを取り、分析に供した。
抗酸化能は1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)を用いたラジカル消去活性を沖らの方法(食品科学工学会誌, 48, 926-932, 2001)で測定し、トロロックス相当量で算出した。具体的手順は次の通りである:上澄み液に100%エタノールを等量混合し攪拌した。次いで、100μlを98穴のマイクロプレートに入れた。さらに、50μlのMESバッファーを加え、50μlの800μMのDPPH(100%エタノール溶解)溶液を加えた。20分後にマクロプレートリーダーで520nmの吸光度を測定した。なお、濃度を計算するためにサンプルと標準品のトロロックスについては、上澄み液に100%エタノールを等量混合し攪拌した後、その濃度に応じて数段階に希釈して行った。
【0013】
糖蜜を100℃で焙煎した場合には、10分間の焙煎時間でラジカル消去活性は約37%増加し、焙煎時間を長くすると共にラジカル消去活性はさらに若干増加した(60分間で約54%増加)(図2参照)。
糖蜜を120℃で焙煎した場合には、10分間の焙煎時間でラジカル消去活性は約53%増加し、焙煎時間を長くすると共にラジカル消去活性はさらに大きく増加した(60分間で約328%増加)(図3参照)。
糖蜜を140℃で焙煎した場合には、10分間の焙煎時間でラジカル消去活性は約310%増加し、焙煎時間を長くしてもラジカル消去活性の増加量にあまり変化はなかった(図4参照)。
糖蜜を160℃で焙煎した場合には、10分間の焙煎時間でラジカル消去活性は約343%増加し、焙煎時間を長くすると共にラジカル消去活性の増加量は小さくなった(60分間で約229%減少)(図5参照)。
糖蜜を180℃で焙煎した場合には、10分間の煎時間でラジカル消去活性は約48%減少し、焙煎時間を長くすると共にラジカル消去活性はさらに減少した(60分間で約86%減少)(図6参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする抗酸化能が強化された糖蜜の製造方法。
【請求項2】
吸着剤が珪藻土又は珪藻土焼成物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
吸着剤に糖蜜を吸着させ、糖蜜が吸着した吸着剤を加熱することを特徴とする糖蜜の抗酸化能の強化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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