説明

廃食用油処理方法及び装置

【課題】
廃てんぷら油などの廃食用油から、高配合比で灯油、軽油及び重油などに混合し、ディーゼル燃料油として利用し得る再生油が得られ、廃棄物の発生が少量で済み、低コストで運営できるため、経済的自立経営に利用し得る、実用的な廃食用油再生方法及び装置を提供する。
【解決手段】
廃食用油を遠心分離機により処理して不純物を除き、再生油を得る廃食用油処理方法において、処理される廃食用油が遠心分離機内部に滞留する延べ処理時間Tを、当該遠心分離機をその標準処理流量で使用する場合の標準滞留時間Tの2倍以上、20倍以下とすることを特徴とする上記の廃食用油処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てんぷら廃油などの廃食用油を物理的方法、特に遠心分離法により処理しBDF(Bio diesel fuel)や石鹸原料などとして使用できる再生油を得る方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃食用油は、例えば、てんぷら、カツ、フライ、から揚げ、さつま揚、油揚げ、ドーナツ、揚げパン、揚げ煎餅やカリントウなどの菓子、各種レトルト食品、弁当などの各種製造設備や飲食店、給食設備、一般家庭などから大量に排出されており、一部は石鹸F原料などに利用されているが、その多くは焼却処分されているのが現状である。
【0003】
これらの廃食用油を、例えばBDFなどとして再生し、単独で、又は炭化水素油と混合して車両用、船舶用、コジェネレーション用などの燃料として安価に提供できれば、化石燃料の使用を抑制でき、CO削減に貢献できる上、多大の経済的利益を得ることができる。
このような廃食用油を再生する化学的又は物理的な方法については、種々な提案がなされているが、何れも、再生品の品質が低い上、コストが高いとか多大の産業廃棄物を発生するとかの問題があり、産業上利用し得るものではなかった。
【0004】
化学的方法は、酸やアルカリ等の薬品を必要とする上、相当量の処理困難な産業廃棄物が発生すると言う問題があり、更に、再生油の性状が劣るため、ディーゼル油に対する混合率も5%程度に限定され、そのため再生油を混合した軽油も消防法規上、危険物と看做されており、取扱いに制約が多いと言う問題もあった。
【0005】
物理的方法としては、ろ過、遠心分離、沈殿、蒸留による脱水、吸着剤による不純物吸着、水などの溶媒による不純物抽出その他の物理的方法、及び、これらを組み合わせた処理方法が種々提案なされている。
【0006】
然しながら、食用油は高粘度であり、異物も多いため、精密ろ過は困難である上、ろ布等の交換、保守に人手を要すると言う問題がある。
このような事情のため、金網等によるろ過法のみが、他の方法、特に化学的処理方法の前処理方法として採用されているだけである。
【0007】
遠心分離法は、ろ過や沈殿法より優れていると認められるが、現在最高性能の分離機によっても、例えばBDFとして利用できる品質の再生油は得られないのが現状である。
【0008】
沈殿法も、食用油は高粘度であるため処理に長時間を要し、大型の沈殿槽を設ける必要があるので、実用に供することはできない。
【0009】
蒸留による脱水は、熱源を必要とする上、水以外の不純物を取り除くことができない。
又、ディーゼル油には本来多少の水分が含まれており、このようなディーゼル油に数%混入されるBDFに多少水分が含まれていても問題はないものである。
つまり、蒸留による脱水処理は、実際には無益の処理に過ぎない。
【0010】
更に、吸着剤による不純物吸着法及び水などによる不純物抽出法は、実際の効果が少ない上、大量の産業廃棄物を発生させるので、実用に供し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−177181号公報
【0012】
【特許文献2】特開2006−104233号公報
【0013】
【特許文献3】特開2003‐306682号公報
【0014】
【特許文献4】特開2002‐172303号公報
【0015】
【特許文献5】特開2001‐104707号公報
【0016】
【特許文献6】特開2000‐253838号公報
【0017】
【特許文献7】特開平11‐092771号公報
【0018】
【特許文献8】特開平07‐316564号公報
【0019】
【特許文献9】特開平07−316564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、他から経済的援助を受けることなく工業的に実施し得る実用的な廃食用油の物理的再生方法及びその方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は処理すべき廃食用油の再生処理に好適な、改良された遠心分離法及び装置を提供するものである。
本発明の一実施例においては、処理すべき廃食用油を、従来公知の遠心分離法による処理を2回以上、20回以下、望ましくは5回以上、15回以下、更に望ましくは10回前後、即ち、8回ないし12回繰り返して遠心分離処理を行うものである。
この繰り返し回数は、原料となる廃食用油の組成、比重、温度及び粘度、不純物の性質、特にその比重や粒度若しくは分子量などに応じ、実験的に定めるものである。
【0022】
この多段処理は、各1基のサービスタンクと遠心分離機とから成る装置により行うことができ、又、原料タンクと製品タンクの間に、複数の遠心分離機を直列に接続して成る装置によって行うこともできる。
前者の方法では、サービスタンクから抽出された廃食用油は、遠心分離機で処理された後、再びサービスタンクに戻され、複数回循環処理され、必要な品質レベルに達した後、製品となる。
【0023】
後者の方法では、原料タンクから抽出された原料油は、直列に連結された遠心分離機を順次通過して製品タンクに送り込まれる。
又、上記の2法の折衷方式も可能である。即ち、1基のサービスタンクと複数基の直列接続された遠心分離機から成る装置を用い、サービスタンクから抽出した廃食用油を複数基の遠心分離機で順次処理した後サービスタンクに戻し、所定の品質が得られるまで循環処理を行うものである。
【0024】
従来は経験上、一般工業用の遠心分離機による異物の分離には一定の限界があり、ある限界まで処理された液は、それ以上繰り返し処理を行っても効果はないと信じられていた。
同じ油でも、機械工作用のマシン油は、廃油中の異物が金属や研磨剤のような固形物が主であるため、1回の遠心分離処理で簡単に除去できるため、多段の処理など元来問題外であった。
ウランの濃縮などには多段の遠心分離が行われているが、処理すべき流体が気体である上、分離の対象とするウラン235と238の比重差が少ないため、遠心分離が極めて困難であり、一段の遠心分離処理では極僅かの濃縮しかできないので、数十段に及ぶ多段分離が必要である。
然しながら、廃食用油からに不純物処理では、そのような多段処理を行っても効果はないと信じられていた。
【0025】
即ち、廃食用油の場合、処理対象流体が高粘度のゲル状の液体であり、かつ分離すべき物質間の比重差がウラン濃縮に比して大きく、遠心分離が比較的に容易であるため、従来は多段の遠心分離は効果がないと信じられていたものである。
この分離すべき物質間の比重差が大きいときは、多段処理は効果がないという考えは、媒体が気体又は低粘性液体であるときは正しい。
事実、今日の工業用遠心分離機の性能は高く1回の処理で気体若しくは低粘性媒体から異物を略完全に除去することができるので、多段の処理は殆ど意味のないものと考えられていた。
【0026】
然しながら、廃食用油のような、見掛けの粘度の高い高分子化合物である媒体に、動物又は植物由来の油脂やたんぱく質、それらの分解生成物、変性物など各種の高分子、低分子の不純物が混合若しくは結合して、ゲル状若しくは半ゲル状の分散系を構成している物質においては、多段の遠心分離が有効であることが発見された。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0027】
即ち、このような見掛けの粘性の高い物質においては、遠心分離中の強制的流動によって内部構造が破壊され構造粘度が低下するが、尚その高粘性と内部構造とによって異物の分離が妨げられ、このため1回の処理では異物の完全な分離が行われ得ないこと、及び、多段に遠心分離を行うときは、各段毎に廃植物油のチキソトロピーによって廃食用油そのものの見かけの粘度が低下すると共に、油温が上昇し媒体そのものの粘度も低下するので、同一の分離機が繰り返し用いられる場合でも、一段毎に遠心分離効率が高まるため、多段処理の効果が見られるものである。
【0028】
本発明の第三実施例としては、1基の遠心分離機による処理時間を延長することにより、効果的な処理を単段処理によって行うこと方法を挙げることができる。
この処理時間は、使用する遠心分離機の定格滞留時間Tの2倍以上、20倍以下、望ましくは5倍以上、15倍以下、更に望ましくは10倍前後、即ち8倍ないし12倍程度とすることが推奨される。
【0029】
この装置は、1基の原料タンクと、1基の遠心分離機と、1基の製品タンクとから成る。
原料油は原料タンクから抽出され、ゆっくりと遠心分離機を通り、精製油は製品タンクに送り込まれる。遠心分離機を通過する原料油の流量は、定格流量(標準処理量)の2分の1以下、望ましくは5分の1以下、20分の1以上、更に望ましくは10分の1前後、即ち、8分の1以下、12分の1以上とするものである。
【0030】
このように低速で処理すると高い精製度が達成される理由は、前述の多段処理法について述べた理由と同一であり、この処理により前述の多段処理法で精製したものと略同等品質の製品が得られる。
この処理プラントは、比較的小容量の処理施設に適している。
【0031】
又、この処理方法は、前述の多段処理法と組み合わせて実施することが可能である。
即ち、前述の多段処理法においても、各段の遠心分離処理において単位時間当たりの処理量を前述の如く引き下げることにより、処理段数を引き下げても、同一レベルの品質の製品が得られる。
【0032】
本発明の更に別異の実施例においては、上記改良された遠心分離法による処理に、遠赤外線照射による改質処理が併用される。
この遠赤外線の光源としては、常温で強い遠赤外線を放射する物質、例えば、黒石シリカ、トルマリン等が推奨されるが、特別な遠赤外線輻射管などをタンク内部に設けることもある。
【0033】
上記の遠赤外線放射物質は、タンク内部や油送管内部に充填したり、タンク底部に敷き詰めたり、タンク内部に多段に設けた網棚の上に載置したり、タンク内側面に固定したりして使用することが推奨される。
廃食用油は遠赤外線に対しても余り透明度が良くないので、貯蔵タンクの底部などに光源物質を設ける場合には、タンク内の廃食用油の温度や組成を均一化すると共に、遠赤外線を均一に照射するため、処理すべき廃食用油を攪拌する必要がある。
又、この遠赤外線処理装置は、原料油の収集車などに設置することも推奨される。
【0034】
有効な波長領域は、処理する廃食用油の組成などにもよるが概ね4μm以上、25μm以下である。
必要な照度は、前記の遠赤外線源を用いれば充分な照度が得られる。
処理に必要な時間は、処理すべき廃食用油の純度や、透明度、温度などにもよるが、概ね24時間で足りる。
【0035】
遠赤外線光源が、原料タンク内部に設けられるときは、遠心分離処理に先立って遠赤外線照射処理が行われ、製品タンク内部に設けられるときは、遠赤外線照射処理は遠心分離処理後に行われる。
又、遠赤外線光源が、サービスタンク内部に設けられるときは、遠心分離処理と遠赤外線処理とは平行して行われる。
【0036】
更に本発明を実施する際には、公知のろ過処理、沈澱処理を併用することが推奨される。
即ち、原料を原料タンクに受け入れる際は、ストレーナー或いは適宜のろ過材を用いてプレフィルタリングを行ったり、沈殿槽に一定時間収容して上澄みを取り出したりしてから、原料タンクに送り込むようにすることが推奨される。
【0037】
本発明に係る処理装置は、廃食料油が多量に発生する施設が集積した地域、例えば大規模な空港、港湾、大型ビルなどに設けることが推奨される。このような施設では、原料の調達が容易である上、地域内にディーゼル燃料の需要があり、所謂、地産地消が可能となるからである。
然しながら、一方においては、この装置を軽トラック搭載型又はトレーラー積載型などとして構成することも推奨されるものである。
【0038】
と言うのも、廃食用油は広い領域に分散する飲食店、給食施設、家庭などから少量宛、頻繁に集めなくてはならず、しかも1地区からは多くても1日当たり2,000〜3,000リットル程度しか収集し得ないからである。
従って、それらを効率的に収集するためには機動力のある小規模装置を使用することが求められるものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明方法により再生された廃食用油は、エンジンにもよるが、単独で又は重油、軽油又は灯油と混合して、トラック用、乗用車用、舶用、発電機用等のディーゼルエンジン燃料、コジェネレーション施設の燃料等として使用し得るものである。
従って、本発明を実施すれば、化石燃料の消費を大幅に減少させることができるので、地球温暖化を抑制することができるばかりでなく、燃料の国産化に資することができる。
【0040】
望ましい使用例としては、本発明方法で得られた再生食用油を軽油又は灯油と容積比で1:1で混合し、本発明装置が設置された地域用のトラック用燃料とすることである。
このような混合燃料は、比較的に引火点が高く、引火の危険性が低いので、容易かつ安全にその保管、取扱いができる。
本発明方法で再生された廃食用油は、もとより植物由来のものであるから、これを燃焼しても、カーボンニュートラル理論によりCO2を発生しないものと看做されるものである。
【0041】
又、本発明方法は、少量の電力以外には、酸又はアルカリ性の薬品、凝縮剤、ろ過材等の補助材料は一切使用しないので、原料に含まれていた少量のスラッジ以外には廃棄物を発生せず、その廃棄物も植物由来のものであるため、容易に焼却でき、又、焼却してもCOを発生しないものと看做されるものである。
【0042】
即ち本発明方法を実施しその製品を燃料として使用しても、カーボンニュートラルの原理により、環境に悪影響を及ぼすことがない。
本発明装置は、固定式のほか車載式として、極めてコンパクトかつ安価に構成し得るので、広い地域から少量の原料を収集し、これを処理するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明方法の第一実施例を示すフローチャートである。(方法第一実施例)
【図2】図2は、本発明方法の第二実施例を示すフローチャートである。(方法第二実施例)
【図3】図3は、本発明装置の第一実施例の構成を示す説明図である。(装置第1実施例)
【図4】図4は、本発明装置の第二実施例の構成を示す説明図である。(装置第2実施例)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0044】
図1は、本発明方法の第一実施例における遠心分離工程を示すフローチャートである。
ここでは、遠赤外線処理は示されていないが、この処理は原料及び/又は製品タンク内に適宜遠赤外線発生源を設けることにより行われるものであるので、ここでは図示を省略してある。
この処理はバッチ方式である。
原料となる廃食用油は適宜の方法により集荷され、金網等によりろ過され原料タンクに一旦貯蔵され、所定の温度に保持されている。
原料貯蔵タンクから一定量の廃食用油がサービスタンクに移され、遠心分離機に送られて処理され、一定の品質レベルに到達すると、サービスタンクに戻される。以下、複数回にわたり上記のように循環処理された後、廃食用油が一定の品質レベルに到達すると、製品タンクに移送される。
この実施例は、固定設備を想定したものであるが、この装置の全部又はその要部を車載設備とすることができる。
【0045】
ステップS0で処理開始が指令されると、ステップS1に進み、総てのタンク、即ち、原料貯蔵タンク、サービスタンク及び製品タンクの液位がチェックされる。
原料貯蔵タンク内に原料が充分にあり、サービスタンクが空であり、製品タンクに収容余地がある場合、ステップS2に進み、タイマーがスタートする。上記条件が成立しない場合は、ステップS8に進み処理は実行されない。
タイマーにセットされている時間は、サービスタンクに送られた廃食用油の処理に要する時間である。
タイマーがスタートすると、ステップS3に進み、サービスタンクに一定量の廃食用油がチャージされる。
【0046】
次いで、ステップS4に進み、サービスタンクの原料油は遠心分離機に送られる。
ステップS5では、周期的にタイマーにセットされた時間の経過がチェックされ、タイマーセット時間が経過していない間は、遠心分離機から出た油は再びサービスタンクに戻される。
タイマーのセット時間が経過すると、ステップ6に進み、一定の周期でサービスタンクの液位がチェックされ、サービスタンクが空になるまで、遠心分離機を出た油は製品タンクに送られ、サービスタンクが空になると、ステップ8に進み、処理完了となる。
【実施例2】
【0047】
図2の実施例は、連続処理装置に於けるフローチャートである。
この処理装置にはN(Nは正の整数)基の遠心分離機が直列に接続されており、処理される廃食料油は、これらに遠心分離機を順次通過して処理される。
ステップS10で処理開始の指令が出されると、ステップS11で原料タンクと製品タンクの液位がチェックされる。
ステップS11におけるタンクレベルのチェックは周期的に繰り返して行われる。
【0048】
原料タンクの液位が一定の限界レベルLより高く、製品タンクの液位が一定の限界レベルLより低い場合にはステップS12に進み、送液ポンプ及び総ての遠心分離機が起動される。
原料油は、直列に接続されたN基の遠心分離機を順次通過し、ステップS131〜S13Nで遠心分離処理1〜Nを受け、製品タンクに送られる
原料タンクの液位が上記一定の限界レベルL以下となったり、製品タンクの液位が上記一定の限界レベルLLP以上となったりすると、ステップS15に進み、処理が終了する。
【0049】
図3は、図1に示した処理を実行する装置の一実施例の構成を示す説明図である。この装置はバッチ方式で処理を行う。
図中、10は原料タンク、12は原料受入管、20はメータリングポンプ、30はサービスタンク、40はポンプ、50は遠心分離機、60はスラッジタンク、70は三方切換弁、80は製品タンク、82は出荷ライン、90は制御装置である。
【0050】
原料タンク10には近隣から集荷した廃食用油が貯蔵されており、制御装置90から、処理装置の始動が指令されると、メータリングポンプ20が作動し、一定量の廃食用油がサービスタンク30に送り込まれる。
【0051】
然るときはポンプ40が作動し、サービスタンク30内の廃食用油を遠心分離機50に供給する。遠心分離機50で処理された廃食用油は、三方切換弁70を介してサービスタンク30に還流し、再びポンプ40に吸引され、遠心分離機50に送られ、以下同様にして循環し、複数回遠心分離機50を通過、処理される。
遠心分離機50により分離されたスラッジは、スラッジタンク60に溜められ、図示されていない別異の遠心分離機により食用油が回収され、回収された油は、原料タンク10に戻される。
【0052】
予め設定された処理時間が経過すると、制御装置90からの指令により三方切換弁70が切り替えられ、遠心分離機50から出た油は、製品タンク80に送られるようになり、サービスタンク30が空になると、ポンプ40の作動が停止、処理が完了する。
サービスタンクと遠心分離機の間で廃食用油を循環させる時間は、サービスタンク内の廃食用油が少なくとも2回以上、20回以下、望ましくは5回以上、15回以下、更に望ましくは10回前後、即ち8回以上、12回以下、繰り返して遠心分離機を通過するよう構成する。
又、このとき、遠心分離機は標準処理流量で運転することが望ましい。
【0053】
標準的なてんぷら廃食用油を、公知の処理方法及び本発明方法の第一実施例に従って処理して得られた製品の物性を比較した。
その結果は、下表の通りであった。
この比較試験では、遠心分離機として三菱化工機株式会社製のDISC SEPARATOR分離板型遠心分離機SJ・OPシリーズ:SJ10Fが用いられた。


【0054】
サンプルAは、一般家庭などから回収したてんぷら廃食用油である。
このサンプルAには多量のカーボン微粒子が含まれており、このため、黒色不透明となっている。
サンプルBは、サンプルAを公知の一回の遠心分離処理で処理したものである。
一回の分離処理でも相当の効果が見られる。
黒色のサンプルAからは、相当量のカーボン微粒子は除去されていると認められるが、製品はまだ黒色を帯びており、透明度も低く半濁状体である。
このことは未だ微細なカーボン粒子その他の不純物が残存していることを示すものである。
然しながら従来の技術常識では、これ以上遠心分離を行ってもこれら残存する不純物を分離除去し、品質を向上させることは不可能と信じられていたものである。
【0055】
サンプルCは、サンプルAに、遠心分離処理を10回繰り返し施し、遠赤外線処理を24時間施して得たものである。
このサンプルCは、黒味を帯びておらず、明るい赤橙色の濁りのない透明な液体である。
このように、サンプルBと、Cは、性状が異なる。このことは本発明方法によって、再生油の品質が向上したことを示すものである。
【0056】
特筆すべきことは、従来方法で処理して得たサンプルBは、軽油に添加する場合、添加可能な限界は5%前後であったが、本発明で処理して得たサンプルCは、軽油に対し通常50%前後まで添加可能なことである。
本発明により得た再生油を軽油と1:1で混合してなるサンプルDは、ディーゼル燃料油として公的に使用でき、引火点が85.5℃と高いので取扱いが容易かつ安全である上、揮発油とは認められないため安価に提供できるものである。
又、本発明方法を実施する場合、少量のスラッジは発生するが、グリセリンなどの廃棄物の生成がないので、精製油の歩留まりが良く、廃棄物処理費が小額で済み、経済的である。
【0057】
このように品質が改良された再生油は、例えば、上記の如く同量のディーゼル軽油と混合してトラック、乗用車等の燃料として使用することができ、エンジン性能、排気ガス、燃費の何れの就いても問題がないことが確認された。
このような高配合比で、再生油を配合すると混合燃料の引火点が上昇し、消防法規上の危険物に該当しないようになり、取扱いに対する規制が緩やかになる。
軽油に対する配合比は、容積比で、60以下、20%以上、望ましくは50%前後である。
【0058】
配合比が20%以下となると、ディーゼルエンジン油としての使用には差し支えないものの、引火点の上昇が不充分となる等の理由により消防法規上の危険物と看做されることがあり、又、60%以上配合すると、エンジンによっては、燃料としての品質が不充分となることがある。
【0059】
図4は、図2に示した処理を実行する装置の一実施例の構成を示す説明図であり、連続フロー方式で処理を行うものである。
図中、110は原料タンク、112は原料受入管、140はポンプ、150、152、154、156及び158は直列に接続された遠心分離機、160はスラッジタンク、180は製品タンク、182は出荷ライン、190は制御装置である。
【0060】
この装置では、原料タンク110に一定量以上の原料となる廃食用油があり、製品タンク180に余裕があるときは、ポンプ140が作動し、原料を遠心分離機150、152、154、156及び158に供給する。原料油はこれらの遠心分離機により順次遠心分離処理を施され、製品タンク180に送り込まれる。
原料タンク110が空になるか、製品タンク180が満杯になれば、ポンプ140及び遠心分離機150、152、154、156及び158が停止する。
上記には遠心分離機を5基設置する例を示したが、この設置数は5基に限定されるものでなく、原料の性状等に応じて適宜に変更されるものである。而して、本発明においては、2基以上、望ましくは5基以上、20基以下、望ましくは5基以上、15基以下、更に望ましくは10基前後、即ち8基以上、12基以下とする。
遠心分離機の設置数が2〜4基であると、原料油の品質によっては良質の製品が得られない場合があり、20基以上設置しても、再生食用油の品質の向上は殆ど見られない。
遠心分離機の設置台数は、原料となる廃食用油の品質と、製品に対して要求される品質に応じて、経験的に又は実験により定められる。
又、このとき、各遠心分離機は標準処理流量で運転することが望ましい。
【0061】
叙上の説明から判明するように、本発明では、公知の遠心分離機による処理時間の2倍以上、望ましくは5倍以上、20倍以下、更に望ましくは10倍前後、即ち、8倍以上、12回以下の長時間に亘って遠心分離処理を行うものである。
このような処理は、上記実施例以外の方法及び装置によっても達成することができる。
例えば、図2に示した装置において、遠心分離機を2基、直列に結合して用いれば処理所要時間を半減しつつ、目的を達成することができる。
【0062】
又、上記では,遠心分離機をその標準処理流量で運転するよう説明したが、これらをよりも低い流量で使用すれば、1基当たりの滞留時間が長くなるから、図3に示した装置ではサービスタンクへ還流回数を減少でき、図4に示した装置では遠心分離機の設置台数を減らすことができる。
【0063】
上記の装置において、各種のタンク、即ち、原料タンク、サービスタンク及び/又は製品タンク、特に製品タンク内に、遠赤外線放射物質を設け、これにより製品の品位を高め得るよう構成することが望ましい。
このように、原料となる廃食用油及び/又は精製された製品に遠赤外線処理を施すと、製品の品質が向上する。
【0064】
又、これらの処理装置には様々な補助設備を設けることが推奨される。
例えば、油の温度及び組成を均一とするため原料タンクや製品タンクには攪拌器を設けることが推奨され、又、気温や廃食用油の温度、粘度などによっては、原料となる廃食用油を加熱、保温したりすることがあり、逆に遠心処理中に油温が高くなり過ぎるような場合には、油温を下げるため、冷却器、放熱器などを設けることが推奨され、又原料油や中間工程油、製品などの物性を測定し、所望の品位の製品が得られるよう処理時間を調整する装置などを設けることも望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明方法は、装置の設置コスト及び運転コストが低廉であるので、本発明によるときは、従来は無益に焼却処分されていた廃食用油を有効に利用して高品位の燃料油を得ることができ、BDFなどとして経済的に引き合う価格で提供できるようになるから、本発明方法を実施する企業は、経済的に自立して経営し得るものである。
又、本発明により得られた製品は引火点が高いので、安全に取り扱うことができる。
又、本発明方法によるときは、グリセリンなどの副産品が発生せず、そのため産業廃棄物が極めて少なくて済むので、環境保全対策に対するコストが掛からない。
【符号の説明】
【0066】
10、110 原料タンク
20 メータリングポンプ
30 サービスタンク
40、140 ポンプ
50 遠心分離機
150、152、154、156、158 遠心分離機
60、160 スラッジタンク
70 三方切換弁
80 製品タンク
90、190 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食用油を遠心分離機により処理して不純物を除き、再生油を得る廃食用油処理方法において、処理される廃食用油が遠心分離機内部に滞留する延べ処理時間Tを、当該遠心分離機をその標準処理流量で使用する場合の標準滞留時間Tの2倍以上、20倍以下とすることを特徴とする上記の廃食用油処理方法。
【請求項2】
遠心分離機による延べ処理時間Tが、標準滞留時間Tの5倍以上、15倍以下である請求項1に記載の廃食用油処理方法。
【請求項3】
遠心分離機による延べ処理時間Tが、標準滞留時間Tの8倍以上、12倍以下である請求項1に記載の廃食用油処理方法。
【請求項4】
処理すべき廃食料油を、1基の遠心分離機に繰り返して循環供給し、当該遠心分離機により複数回遠心分離処理を施すことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載の廃食用油処理方法。
【請求項5】
処理すべき廃食料油を、直列に接続された複数基の遠心分離機に供給し、処理すべき廃食用油を順次これらの遠心分離機により遠心分離処理することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載の廃食用油処理方法。
【請求項6】
処理すべき廃食料油を、使用する遠心分離機の標準処理流量以下の流量で、遠心分離機に供給することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載の廃食用油処理方法。
【請求項7】
遠赤外線照射工程を加えたことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1に記載の廃食用油処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の廃食用油処理方法を実施するための装置であって、原料となる廃食用油が導入されるサービスタンクと、少なくとも1基の遠心分離機と、処理された製品を受け入れる製品タンクと、サービスタンク内の廃食用油を上記の遠心分離機に供給するポンプと、上記遠心分離機のデリバリ側に設けられ、処理された廃食料油の輸送管路を、サービスタンク向け又は製品タンク向けに、選択的に切り替える三方切換弁とを具備した、廃食用油処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の廃食用油処理方法を実施するための装置であって、原料となる廃食用油が導入される原料タンクと、処理された製品を受け入れる製品タンクと、原料タンクと製品タンクの間に設けられる、直列に接続された複数基の遠心分離機と、原料タンク内の廃食用油を上記の遠心分離機に供給するポンプと、を具備した、廃食用油処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の廃食用油処理方法を実施するための装置であって、原料となる廃食用油が導入される原料タンクと、処理された製品を受け入れる製品タンクと、原料タンクと製品タンクの間に設けられる、少なくとも1基の遠心分離機と、原料タンク内の廃食用油を上記の遠心分離機に供給するポンプと、を具備した、廃食用油処理装置。
【請求項11】
原料タンク、サービスタンク及び製品タンクの内の少なくともいずれか一つのタンク内に遠赤外線放射源を設けた、請求項8ないし10のいずれか一に記載の廃食用油処理装置。
【請求項12】
トラック又はトレーラーに搭載された、請求項8ないし11の何れか一に記載の廃食用油処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−1416(P2011−1416A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144022(P2009−144022)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(304018107)ビュファ・コンクリートプロテクシーヨン・ジャパン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】