説明

延伸フィルム

【課題】透明性、剛性、縦方向(MD)と横方向(TD)の引裂強度のバランス、耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性等の優れた延伸フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】密度が880〜925Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体
(I)5〜95重量部および密度が926〜960Kg/m3であるエチレン・α−オレ
フィン共重合体(II)5〜95重量部からなり((I)と(II)の合計で100重量部)、密度が890〜940Kg/m3の範囲にある成分(i)50〜95重量部と、密
度が951〜970Kg/m3の範囲にあるエチレン重合体またはエチレン・α−オレフ
ィンの共重合体からなる高密度ポリエチレン(III)である成分(ii)5〜50重量部(成分(i)と成分(ii)の合計で100重量部)からなる樹脂組成物からなる延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系のポリマーの樹脂組成物から得られる延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンまたはポリエチレンを主剤とする樹脂組成物による延伸フィルムは、透明性、強度特性、耐薬品性、製袋加工性に優れるため、種々の用途に用いられている。
しかしながら、従来のポリエチレンを用いた延伸フィルムは、延伸方向に対し強度が弱く、内容物を入れた際に破袋が生じやすく、内容物を損なったり、ヒートシールが困難なため製袋品としての加工が難しい、また、外観が悪い等の不十分な点があった。
特開平8−134284号公報では、メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレンを少なくとも1軸方向にしてなるポリエチレン系樹脂延伸フィルムに関して報告がなされて
いるが、引裂き強度(MD)が不満足なレベルにあり改良が求められている。
そこで、透明性、剛性、縦方向(MD)と横方向(TD)の引裂強度のバランス、耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性に優れる延伸フィルム、およびそのフィルムからなるシュリンク包装用フィルムの出現が望まれている。
【特許文献1】特開平8−134284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決しようとするものであって、透明性、剛性、縦方向(MD)と横方向(TD)の引裂強度のバランス、耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性等の優れた延伸フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等はかかる実情に鑑み、鋭意検討の結果、本発明が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は メタロセン触媒を用い、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体(I)5〜95重量部
およびメタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用い、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体(I
I)5〜95重量部からなり((I)と(II)の合計で100重量部)、密度が890〜940Kg/m3の範囲にある成分(i)50〜95重量部と、
メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が951〜970Kg/m3の範囲にあるエチレン重合体またはエチレン・α−オレフィンの共重合体からなる高密
度ポリエチレン(III)である成分(ii)5〜50重量部(成分(i)と成分(ii)の合計で100重量部)からなる樹脂組成物からなり、インフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法、カレンダー成形法若しくはプレス成形法により得られた原反を1軸延伸、逐次2軸延伸、または同時2軸延伸されてなることを特徴とする厚さが5から150ミクロン(μm)の延伸フィルムである。
【0005】
延伸フィルムとしては、その厚さが5から150ミクロン(μm)であるものが通常であり、その引張初期弾性率(単位MPa)が500から5000メガパスカル(MPa)の範囲であり、MD(縦方向)とTD(横方向)におけるエルメンドルフ引裂強度(ASTMD1922)の比(MD/TDの比)が0.1以上1.5以下のバランスの優れた延伸フィルムが得られる。
また、本発明の延伸フィルムからなる層が少なくとも1層含まれる多層フィルムを調製することも行われる。
多層フィルムは、延伸フィルムの原反となる多層フィルムを樹脂組成物と他の層となる樹脂組成物をインフレーション成形その他の方法で共押出し、押出しラミネート、あるいはドライラミネートなどの方法で積層して調整し、さらに延伸して得られる。また、予め延伸したフィルムに他の層をドライラミネートなどの方法で積層する方法が例示される。延伸の方法には、例えば加熱ロールと該ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMD(縦方向)に延伸する方法がある。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明によればエチレン系樹脂組成物からなる優れた性能の延伸フィルムが得られる。またこの延伸フィルムは、シュリンクフィルムその他の包装材をはじめ種々の用途に適しており、特に透明性、剛性、縦方向(MD)と横方向(TD)の引裂強度のバランス、耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性に優れており、包装材として用いたとき内容物の鮮度保持性、見栄え、また耐寒性にも優れ、さらにはシュリンクさせたときの内容物の保持性に優れる等の特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の延伸フィルムについて説明する。本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(I)は、メタロセン触媒を用いて、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)は、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン共重合体である。そして、エチレン・α−オレフィン共重合体(I)とエチレン・α−オレフィン共重合体(II)は、同じα−オレフィンを共重合して得られるものでもよく、それぞれ異なるα−オレフィンを共重合して得られるものでもよい。
炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、好ましくはヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1である。また、上記の炭素原子数4〜12のα−オレフィンは単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0008】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)およびエチレン・α−オレフィン共重合体(II)としては、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1、エチレン・オクテン−1共重合体であり、より好ましくはエチレン・ヘキセン−1共重合体である。
【0009】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)のメルトフローレート(MFR)は0.01〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜5g/10分であり、より好ましくは0.3〜1g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体(I)のメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分未満の場合、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化することがあり、10g/10分を超えた場合、機械的強度が低下することがある。
【0010】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)の密度は、880〜925Kg/m3であり
、好ましくは900〜920Kg/m3であり、より好ましくは903〜920Kg/m3である。エチレン・α−オレフィン共重合体(I)の密度が、880Kg/m3未満の場
合、925Kg/m3を超えた場合、衝撃強度や引き裂きバランス大幅に低下することが
ある。
【0011】
エチレン・α−オレフィン共重合体(II)のメルトフローレート(MFR)は1〜100g/10分であり、好ましくは2〜80g/10分であり、より好ましくは4〜60g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体(II)のメルトフローレート(MFR)が1g/10分未満の場合、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化することがあり、100g/10分を超えた場合、機械的強度が極端に低下することがある。
【0012】
エチレン・α−オレフィン共重合体(II)の密度は、926〜960Kg/m3であ
り、好ましくは935〜945Kg/m3である。エチレン・α−オレフィン共重合体(
II)の密度が、926Kg/m3未満の場合、加熱ロールにて熱量を与える際、フィル
ムがべたつき均一延伸性が低下することがあり、960Kg/m3を超えた場合、衝撃強
度や透明性が低下することがある。
本発明で用いられる高密度ポリエチレン(III)のメルトフローレート(MFR)は0.01〜20、なかでも0.1〜10、好ましくは0.5から5g/10分であり、さらに好ましくは0.1〜3g/10分である。高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分未満の場合、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化することがあり、20g/10分を超えた場合、機械的強度が極端に低下することがある。
【0013】
本発明で用いられることがある高圧法低密度ポリエチレン(IV)のメルトフローレート(MFR)は、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化すること、機械的強度が極端に低下することや、レトルト処理後の透明性が大幅に低下することを防止するという観点から、好ましくは0.1〜10g/10分であり、より好ましくは0.1〜8g/10分であり、さらに好ましくは0.2〜8g/10分である。
高圧法低密度ポリエチレン(IV)の密度は、延伸フィルムの剛性を保つと観点から、好ましくは915〜935Kg/m3であり、より好ましくは915〜930Kg/m3であり、さらに好ましくは918〜930Kg/m3である。
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(I)の製造方法としては、メタロセン触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合方法として、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、溶液重合法、高圧イオン重合法であり、より好ましくは気相重合法である。
メタロセン系触媒として、好ましくは、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む触媒系である。シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を有する遷移金属化合物とは、いわゆるメタロセン系化合物であり、例えば、一般式MLan-a(式中、Mは元素の周期律表の第4族又はランタナイド系列の遷移金属原子である。Lはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基又はヘテロ原子を含有する基であり、少なくとも一つはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。複数のLは互いに架橋していてもよい。Xはハロゲン原子、水素又は炭素原子数1〜20の炭化水素基である。nは遷移金属原子の原子価を表し、aは0<a≦nなる整数である。)で表され、単独で用いてもよく、少なくとも2種類を併用してもよい。
さらに、上記のメタロセン系触媒には、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、メチルアルモキサン等のアルモキサン化合物、および/またはトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等のイオン性化合物を組み合わせて用いられる。
【0014】
また、上記のメタロセン系触媒は、上記のメタロセン系化合物と、有機アルミニウム化合物、アルモキサン化合物および/またはイオン性化合物とを、SiO2、Al23等の
微粒子状無機担体、ポリエチレン、ポリスチレン等の微粒子状有機ポリマー担体に担持ま
たは含浸させた触媒であってもよい。
上記のメタロセン系触媒を用いる重合によって得られるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、例えば、特開平9−183816号公報に記載されているエチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(II)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくはメタロセン系触媒である。公知の重合方法としては、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(I)の製造方法で用いられる重合方法と同様の重合方法が挙げられる。
本発明で用いられる高密度ポリエチレン(III)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒等が挙げられ、公知の重合方法としては、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(I)の製造方法で用いられる重合方法と同様の重合方法が挙げられる。高密度ポリエチレン(III)の製造方法としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒を用いるスラリー重合方法が挙げられる。
本発明で用いられる高圧法低密度ポリエチレン(IV)の製造方法としては、一般に、槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140〜300MPa、重合温度200〜300℃の条件下でエチレンを重合する方法が挙げられ、メルトフローレートを調節するために、分子量調節剤として水素、メタンやエタン等の炭化水素が用いられる。
【0016】
本発明で用いられる樹脂組成物において、エチレン・α−オレフィン共重合体(I)の配合量が5〜95重量部に対して、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)の配合量が95〜5重量部((I)と(II)の合計で100重量部とする)であり、好ましくは(I)が30〜80重量部に対して(II)が70〜20重量部であり、さらに好ましくは(I)が40〜80重量部に対して(II)が20〜60重量部である(いずれも(I)と(II)の合計で100重量部である)。
(I)が5重量部未満の場合、優れた機械的強度を得ることができないことがあり、延伸フィルムの透明性を悪化させることがある。(I)が95重量部を超えた場合、延伸フィルムの剛性が低下することがある。
【0017】
本発明で用いられる樹脂組成物において、成分(i)の配合量が50〜95重量部に対して、成分(ii)の配合量が5〜50重量部であり、好ましくは成分(i)50〜90重量部に対して、成分(ii)が10〜50重量部であり、さらに好ましくは成分(i)が60〜90重量部に対して、成分(ii)が10〜40重量部である(いずれも、成分(i)と成分(ii)の合計100重量部とする)。
成分(i)が5重量部未満の場合、優れた機械的強度を得ることができないことがあり、また透明性を悪化させることがある。成分(ii)が95重量部を超えた場合、延伸フィルムの剛性が低下することがある。
本発明で用いられる樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は0.1〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜4g/10分であり、より好ましくは0.3〜3g/10分である。樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分未満の場合、押出加工性が悪化することがあり、10g/10分を超えた場合、機械的強度が低下することがある。メルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分であれば、特に、インフレーション法によるフィルム成形において、樹脂の押出し性が良好でバブルが安定することから、延伸工程前のフィルム原反を製造する際インフレーション法によるフィルム成形にとって、より好ましい樹脂組成物が得られる。
【0018】
なお、本発明の延伸フィルムのメルトフローレート(MFR)は、原料に用いられる上
記のエチレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)の範囲内にあればよく、延伸フィルムのメルトフローレートの値は、その原料であるポリエチレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)の値とほぼ同じである。
また、本発明で用いられるポリエチレン系樹脂組成物の密度は898〜960Kg/m3
であり、好ましくは900〜950Kg/m3であり、より好ましくは900〜940K
g/m3である。前記組成物の密度が898〜960Kg/m3であれば、強度および剛性が高く、引き裂きバランスに優れたフィルムが得られる。前記組成物の密度が898Kg/m3未満の場合、延伸フィルムのブロッキングが悪化することがあり、960Kg/m3超えた場合、延伸フィルムの透明性や機械的強度が低下することがある。
なお、本発明の延伸フィルムの密度は、原料に用いられる上記のエチレン系樹脂組成物の密度の範囲内にあればよく、延伸フィルムの密度の値は、その原料であるポリエチレン系樹脂組成物の密度の値とほぼ同じである。
【0019】
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂組成物の他の製造方法としては、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高
密度ポリエチレン(III)あるいは更に高圧法低密度ポリエチレン(V)をドライブレンドまたはメルトブレンドする方法が挙げられる。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーなどの各種ブレンダーを用いることができ、またメルトブレンドには、単軸押出機、二軸押出機、バンバリ−ミキサー、熱ロールなどの各種ミキサーを用いることができる。
また、本発明に用いられるポリエチレン系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、以下のような望ましい製造方法が挙げられる。
1.1個の重合器を用い、2条件以上の反応条件に分けて、エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、(II)および高密度ポリエチレン(III)を連続的に重合した後に、高圧法低密度ポリエチレン(IV)を混合する方法。
2.多段重合プロセスによって、複数の重合器で各々の成分を重合し、最終的に本発明のポリエチレン系樹脂組成物を得る方法。
3.各成分のうちのいずれか2成分を多段重合によって製造した後に、残りの2成分を混合する方法。
【0020】
以上のように本発明において、高密度ポリエチレン(III)としては、DSCのピークを複数有する高密度ポリエチレンが好適である。なお、DSCのピークを複数有するとは、DSCのチャートにピークが明らかに2本以上見られる場合の他、ピークが1本とそれにショルダーが付随する場合も含むものである。
本発明の延伸の前工程において製造する肉厚フィルム(原反)の製造方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、インフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等が挙げられる。延伸工程にて良好な延伸性を得るという観点からは、本発明のポリエチレン系組成物をインフレーション成形法に適用した場合、延伸工程にて良好な延伸性が得られることからインフレーション成形法が好ましく用いられる。
【0021】
本発明の延伸フィルムは、単層フィルムとして利用することができる。
また、本発明の延伸フィルムは、原反を一軸延伸あるいは2軸に逐次あるいは同時に延伸して調製される。また、原反の調製の過程で1軸あるいは2軸に予備延伸された原反を、さらに延伸しることも行われる。本発明の好ましい態様の1つとして、インフレーション成形で得られた単層フィルムをさらに延伸倍率2から15倍程度に一軸に延伸した一軸延伸フィルムがある。
このような延伸処理が施されているにもかかわらず、後述するように両軸方向の強度のバランスの優れたフィルムが得られる。
本発明の延伸フィルム及びそのフィルム用いた包装用フィルムの厚みは、通常5〜150
ミクロン(μm)であり、好ましくは10〜100ミクロン(μm)であり、より好ましくは10〜80ミクロン(μm)である。
本発明の延伸フィルムの引張初期弾性率MD(縦方向)は、500〜5000メガパスカル(MPa)の範囲であり、好ましくは550〜4500メガパスカル(MPa)であり、より好ましくは600〜4000メガパスカル(MPa)である。引張初期弾性率MD(
縦方向)が500メガパスカル(MPa)未満の場合、例えば、延伸フィルムを包装材と
して用いる際のハンドリングが悪化する場合があり、5000メガパスカル(MPa)を
超える場合 エルメンドルフ引裂きバランスが悪くなり、衝撃強度の低下につながる可能
性がある。
【0022】
本発明の延伸フィルムのMD(縦方向)とTD(横方向)におけるエルメンドルフ引裂強度(ASTMD1922)の比(MD/TDの比)は0.1以上2.5以下であり、好ましくは0.2以上1.5以下であり、より好ましくは、0.3以上1.3以下である。エルメンドルフ引裂強度の比(MD/TDの比)が0.1未満の場合、衝撃強度の低下を引き起こす可能性がある。
また、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する積層フィルムから得られる延伸フィルムを利用することができる。本発明の延伸フィルムを積層フィルムの少なくとも一つの層として利用する場合、積層フィルムの製造方法としては、共押出法、押出コーティング法(押出ラミネート法ともいう。)等が挙げられる。
【0023】
これらは、予め本発明の延伸フィルムの原反となる樹脂組成物と他の層となる樹脂組成物を共押出し、押出しラミネート、あるいはドライラミネーなどの方法で積層し、さらに延伸して得られる。また、予め延伸したフィルムに他の層をドライラミネートなどの方法で積層する方法が例示される。延伸の方法には、例えば加熱ロールと該ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMD(縦方向)に延伸する方法がある。
また、本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる延伸フィルムを、基材にラミネートして複合フィルムとして利用することもできる。基材としては、公知のものが挙げられ、例えば、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
【0024】
本発明の延伸フィルムを基材にラミネートする方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネート法等が挙げられる。
本発明の延伸フィルムには、必要に応じて、その他のポリマー、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。その他の樹脂や添加剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
その他のポリマーとしては、本発明で用いられるポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、剛性や耐熱性を改良するために添加されるポリプロピレン樹脂、衝撃強度を改良するために添加されるポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの他のポリマーは、成分(i)及び成分(ii)の合計100重量部に対して通常1ないし30重量部の割合で添加されることがある。
【0025】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3,5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフ
ァイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロ
キシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキ
サホスフェピン(商品名:スミライザーGP、住友化学工業社製)等のホファイト系酸化防止剤等が挙げられる。
【0026】
滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等が挙げられ、ブロッキング防止剤としては、無機系ブロッキング防止剤、有機系ブロッキング防止剤が挙げられ、無機系ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−スチレン)共重合体、架橋シリコーン、架橋ポリスチレンの粉末等が挙げられる。
これらの酸化防止剤をはじめとする添加剤の配合割合は、その種類により成分(i)と成分(ii)の合計100重量部に対して通常0.01ないし30重量部の範囲で適宜添加される。
【0027】
上記の必要に応じて添加されるその他の樹脂や添加剤の混合方法としては、例えば、本発明のポリエチレン系樹脂組成物とともにその他の樹脂や添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いて溶融混練した後フィルム加工に供する方法、本発明のポリエチレン系樹脂組成物とその他の樹脂や添加剤をヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いてドライブレンドした後フィルム加工に供する方法、または、その他の樹脂や添加剤を少なくとも一種のマスターバッチにしてヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いて本発明のポリエチレン系樹脂組成物とドライブレンドした後フィルム加工に供する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例および比較例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例に用いた樹脂組成物の基本物性およびフィルム物性は次の方法に従って測定した。
〔樹脂組成物の基本物性〕
(1)密度(単位:Kg/m3
密度は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)測定時に得られたストランドを120℃で2時間処理し、1時間かけて室温まで徐冷した後、密度勾配管を用いて測定した。
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
ASTM D1238−65Tに従い、190℃、2.16kg荷重の条件下にて測定し
た。
(3)ヘイズ(透明性、単位:%)
ASTM D1003に従って測定した。
(4)グロス(単位:%)
ASTM D1922に規定された方法に従って測定した。
(5)エルメンドルフ引裂強度
エルメンドルフ引引裂強度は、ASTM D1922に準じ、(株)東洋精機製作所のエ
ルメンドルフ引裂試験機を用いて測定する。切れ目をフィルムの引き取り方向に入れる場合をMD(縦方向)、引取方向と直角に入れる場合をTD(横方向)とする。また、引裂きバランスはここで測定されるMDの引裂き強度/TDの引裂き強度とした。
(6)引張初期弾性率
フィルムからJIS K6718に準ずる大きさのダンベルを打ち抜き試験片とし、フィ
ルムの引取方向と平行に打ち抜く場合をMD(縦方向)、フィルムの引取方向と直角に打ち抜く場合をTD(横方向)とする。インストロン型万能材料試験機のエアチャックを試験片をセットし、チャック間距離86mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い、
初期応力の変位に対する傾きを引張初期弾性率とする。
実施例および比較例に用いたエチレン・α-オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オ
レフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(III)、高圧法低密度ポリエチレン(IV)を以下に示した。
【0029】
(A)エチレン・α−オレフィン共重合体(I)
(1)共重合体(I−a)
エチレン−ヘキセン−1共重合体:MFR=0.5g/10分、密度=902Kg/m3
(2)共重合体(I−b)
エチレン−ヘキセン−1共重合体:MFR=3.9g/10分、密度=913Kg/m3
(B)エチレン・α−オレフィン共重合体(II)
(1)共重合体(II−a)
エチレン−ヘキセン−1共重合体:MFR=5g/10分、密度=940Kg/m3
上記のエチレン・α−オレフィン共重合体(I−a)、(I−b)およひ(I−c)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II‐a)は公知のメタロセン触媒を用いて、気相重合法によって製造されたものであった。
(C)高密度ポリエチレン(III)
(1)HDPE(III−a):MFR=0.11g/10分、密度=958Kg/m3
(2)HDPE(III−b):MFR=5.3g/10分、 密度=962Kg/m3
(3)HDPE(III−c):MFR=0.3g/10分、 密度=951Kg/m3
上記の(1)HDPE(III-a)は、DSCの融点のピークが、131.5℃および129℃付近にショルダーを有する。(2)HDPE(III-b)はDSCの融点のピークが、132.7℃のシングルピークを有する。(3)HDPE(III-c)は、シングルピークを有
する。
【0030】
(D)高圧法低密度ポリエチレン(IV)
(1)LDPE(IV-a):MFR=0.6g/10分、密度=923Kg/m3
上記の高圧法低密度ポリエチレンは、管型反応器を用いて、ラジカル重合法によって製造されたものであった。
[実施例1]
〔樹脂組成物の製造〕
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(III)および高圧法低密度ポリエチレン(IV)を表1に示した組成でドライブレンドを行い、続いて池貝鉄工社製46mmφ 2軸押出機を用いて、
加工温度190℃、押出量50Kg/hrで樹脂組成物ペレットを製造した。
〔延伸フィルム原反の製造〕
上記のようにして製造されたポリエチレン組成物を、下記成形条件で空冷インフレーション成形を行い、肉厚250μm、幅400mmのフィルムを製造した。
<延伸原反成形条件>
成形機:モダンマシナリー製65mmφインフレーション成形機
スクリュー:バリアタイプスクリュー
ダイス:125mmφ(径)、3.5mm(リップ幅)
エアーリング:2ギャップタイプ
成形温度:190℃
押出し量:77Kg/h
引取速度:7m/min
【0031】
〔延伸フィルムの製造条件〕
上記方法にて得られた延伸原反を表面温度(延伸温度)が110℃の加熱ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMD(縦)方向に延伸して表1に示す延伸倍率を実施し延伸フィルムを得た。
得られた樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)、密度、光学特性、引張初期弾性率、エルメンドルフ引裂き強度、エルメンドルフ引裂きバランス、フィルムインパクトを前記の方法に従って評価、測定し、得られた結果を表1に示した。
[実施例2]
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(III)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。高圧法低密度ポリエチレン(IV)は用いなかった。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(III)および高圧法低密度ポリエチレン(IV)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[実施例4]
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(III)および高圧法低密度ポリエチレン(IV)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。高密度ポリエチレン(III)および高圧法低密度ポリエチレン(IV)は用いなかった。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、高密度ポリエチレン(III)および高圧法低密度ポリエチレン(IV)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。エチレン・α−オレフィン共重合体(II)は用いなかった。得られた結果を表1に示す。
本発明の要件を満足する実施例1〜3は、引張初期弾性率(MD)が500メガパスカル(MPa)以上かつエルメンドルフ引裂き強度バランスが0.1以上でありまた、透明性
に優れ、最大延伸倍率も高いことから延伸性に優れることが分かる。その中でも高圧法ポリエチレン(IV)を含有する実施例2は良好な結果となっている。
これに対して、成分(ii)を含有しない比較例1は、引張初期弾性率(MD)が500メガパスカル(MPa)以上であるもののエルメンドルフ引裂き強度バランスが0.1以
下であり、実施例と比較して透明性に劣り、また最大延伸倍率も低い事から実用性に欠ける。
これに対して、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)を含有しない比較例2は、引張初期弾性率(MD)が500メガパスカル(MPa)以上かつエルメンドルフ引裂き強
度バランスが0.1以上であるものの、実施例と比較して透明性に劣り、また最大延伸倍率も低い事から、実用性に欠ける。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒を用い、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体(I)5〜95重量部およびメタロセン触
媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用い、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体(II)5〜95重量部
からなり((I)と(II)の合計で100重量部)、密度が890〜940Kg/m3
の範囲にある成分(i)50〜95重量部と、
メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が951〜970Kg/m3の範囲にあるエチレン重合体またはエチレン・α−オレフィンの共重合体からなる高密
度ポリエチレン(III)である成分(ii)5〜50重量部(成分(i)と成分(ii)の合計で100重量部)からなる樹脂組成物からなり、インフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法、カレンダー成形法若しくはプレス成形法により得られた原反を1軸延伸、逐次2軸延伸、または同時2軸延伸されてなることを特徴とする厚さが5から150ミクロン(μm)の延伸フィルム。
【請求項2】
前記原反はインフレーション成形で得られた原反であり、該原反を2から15倍の延伸倍率で1軸延伸されてなる請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、成分(i)と成分(ii)の合計100重量部に対し、密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン(IV)が5から50重量部配合さ
れてなることを特徴とする請求項1または2に記載の延伸フィルム。
【請求項4】
引張初期弾性率が500から5000メガパスカル(MPa)の範囲であり、MD(縦方向)とTD(横方向)におけるエルメンドルフ引裂強度(ASTM D1922)の比(MD/TDの比)が0.1以上2.5以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の延伸フィルム。

【公開番号】特開2009−7589(P2009−7589A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267755(P2008−267755)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【分割の表示】特願2003−328117(P2003−328117)の分割
【原出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】