説明

建付け調整機構を有する丁番。

【課題】 扉面から露出する部分の外観が縦方向に細長いデザイン性を損なわない形状で、かつ前後左右方向の調整操作を扉が閉鎖した状態で正面位置から実施可能な建付け調整機構付き丁番を提案することを目的とする。
【解決手段】 枠側丁番は枠側ベース部材と枠側羽根を有し、枠側ベース部材に対して枠側羽根が前後方向にのみ移動可能で、かつ上部区画と下部区画の2ブロックに区切った状態で両者を構成し、上部区画に軸心を配置し、下部区画に前後調整機構とその操作面を扉の正面側に設けておく。また扉側丁番は扉側ベース部材と扉側羽根と連動部材を有し、扉側ベース部材に対して連動部材を介して扉側羽根が左右方向にのみ移動可能で、かつ上部区画と下部区画の2ブロックに区切った状態で両者を構成し、下部区画に軸心挿入部分を配置し、上部区画に左右調整機構とその操作面を扉の正面側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建付け調整機構を有する丁番に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建具等の枠体に扉を装着する保持金具としては、軸心を中心に回転して開閉する扉の場合では丁番やピボットヒンジが一般的である。そして同時にこれらには装着後の枠体に対する扉の位置を適正な位置に建付け調整する機構をも組み込まれている場合が多く、建付け調整の方向は通常枠体に対して前後左右上下の3方向である。また建付け調整機構に関しては既に様々なものがあり、最も普及している構成としては特開2001−271549号公報や特開2002−250170号公報に報告されているような、丁番の羽根を支点に対して左右にスイング動作させることで左右調整を実施可能とし、同時にその羽根を偏芯カムを回転させる動作にて前後移動させる前後調整機構を有しているものが多い。また上下調整は丁番の軸心を挿入する管巻き部分に上下調整ねじを螺合させておいて、軸心の先端が当たる位置を変えることで実施する構成がほとんどである。本発明者も同様の構成で部品を簡素化可能なタイプとして、特開2003−13656号公報にて報告している。
【0003】
また建付け調整の操作性における容易さに関しては様々であり、上記のような左右調整をスイング動作で実施する場合においては、支点を挟んだ両側の複数の固定ねじを押し引きして適正な位置にて最終固定する手順になり、前後調整のみを実施したい場合においても一旦固定ねじを緩める必要があるものが多い。その他にも多種の調整手段が報告されており、当然個々に操作性においても違いがあると想定される。しかし上記の構成で共通する未改良点としては、建付け調整機構を丁番の羽根面に配置しているため、左右と前後の調整操作においては必ず扉を90度近くまで開放した状態で実施しなければならない点が挙げられる。
【0004】
ここで建付け調整は枠体に対しての扉の位置を最も適正な状態にするためであり、作業としては扉を完全に閉じた状態で枠体と扉の縦横の隙間や上下の隙間を目視または測定治具等で確認することになる。ところが上記構成では扉を開けた状態で建付け調整作業を実施しなければならないことになり、まず扉を閉じた状態で調整必要な箇所を確認し、その後開放した状態で調整作業を行い、また扉を閉じて目的とした調整結果が得られたかの確認を行わなければならない。そしてまだ最適位置になっていない場合は最適位置に配置できるまで再度この作業を繰り返す必要がある。したがって扉を開けたり閉めたりしながら調整作業を実施することになり、手間が掛かることが想定される。
【0005】
そこで扉を閉じたままで前後左右上下の建付け調整が実施できる構成が良いと考えられる。この閉鎖状態で建付け調整できるものは形態としては丁番よりもピボットヒンジにおいて比較的多く用いられており、特開2007−231521号公報や特開2001−323714号公報や本発明者による特開2006−283461号公報等に報告されている。これらの特徴としては、扉面の上下端部の手前位置に枠側から持ち出された水平方向のプレート面を配置して、そのプレート面状に乗ったような状態で前後左右に移動する構成の調整部材を配置して軸心の位置を移動させる手段のものが多い。特に左右調整においては扉面から持ち出された位置で複数の部材を組み合わせ、かつ調整ねじ等をも用いて軸心を移動させなければならないため、プレート面の横方向の幅がどうしても一定以上必要となり、同時に厚み方向も当然必要であるため、その結果全体として直方体形状の箱型に近い外観になりがちである。
【0006】
なおピボットヒンジの場合は扉の上下端に配置されるため、このような箱型形状であってもデザイン面としては比較的許容されやすいことが挙げられる。しかし丁番の取り付け位置は一般的に扉の上下端部から一定距離ずつ離れた中央部分寄りに配置される。すると上記のようなピボットヒンジタイプの調整機構をそのまま丁番に適応させて扉の中央部分寄りの位置に装着すると、どうしてもデザイン面において問題があると想定される。また前述の既に普及しているタイプの調整丁番は、扉面から持ち出されている部分の外観が丁番の管巻き部分のみの太さで上下方向に長い形状であるため、それほどデザイン性を損ねることはない。
【0007】
そして丁番で上記のような扉の閉鎖状態で建付け調整が可能なものとしては、3管丁番の形態で、扉側丁番と枠側丁番が閉鎖状態で面対するタイプであり、どちらか片方の丁番に複数の連動部材や調整部材を配置して前後左右両方向の建付け調整を可能とし、その調整操作面が閉鎖状態での正面側に配置されている構成のものが、特開2010−275710号公報において報告されている。
【0008】
また建付け調整とは別に、吊り込み作業においても容易に実施可能とすることが必要とされており、最も一般的な2管丁番の形態で、あらかじめ扉側丁番と枠側丁番を分離した状態で扉と枠体に装着しておき、片方の羽根の軸心に他方の羽根の軸心挿入部を差し込んで施工する構成が望ましい。また当然上下調整も必要であり、上下調整を組み込む場合においても2管丁番の形態であれば、従来から最も普及している軸心挿入部に上下調整ねじを螺合しておいて上下調整を実施可能とする構成を用いられることにおいて有効と考えられる。
【特許文献1】特開2001−271549号公報
【特許文献2】特開2002−250170号公報
【特許文献3】特開2003−13656号公報
【特許文献4】特開2007−231521号公報
【特許文献5】特開2001−323714号公報
【特許文献6】特開2006−283461号公報
【特許文献7】特開2010−275710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、丁番の扉面から持ち出されている部分の外観が縦方向に細長いデザイン性を損なわない形状を維持し、かつ前後方向と左右方向の調整操作を扉が閉鎖した状態で正面位置から実施可能な建付け調整丁番を提案することを目的とする。そして吊り込み作業や上下調整機構を組み込む際にも効果的な2管丁番の形態を併せ持つことを次の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記問題点を解決するために次の技術手段を設けた。まず本発明の建付け調整付き丁番は2管丁番の形態で扉側丁番と枠側丁番とからなり、扉と枠体とからなるドアの上下2箇所に配置される。そして前後左右方向の建付け調整機構は上側の丁番と下側の丁番共に同様で、吊り込み機構に関してのみ差異を有している。また施工手順としては枠側丁番と扉側丁番をあらかじめ扉と枠体に分離して装着しておき、どちらかの軸心に他方の軸心挿入部を差し込んで扉を枠体に吊り込む構成である。軸心の配置は枠側丁番と扉側丁番のどちらであってよく、他方に軸心挿入孔を配置しておくとよい。
【0011】
丁番全体の構成としては、枠側丁番は枠側ベース部材と枠側羽根を主部材とし、枠側ベース部材に対して枠側羽根が前後方向にのみ移動可能な状態で両者を組み付ける。このとき枠側丁番は上下方向に上部区画と下部区画の2ブロックに区切って構成し、上部区画に軸心を配置しておき、下部区画に枠側ベース部材に対して枠側羽根を前後方向に移動調整させるための機構とその操作面を設けておく。また扉側丁番は扉側ベース部材と扉側羽根を主部材とし、扉側ベース部材に対して扉側羽根が左右方向にのみ移動可能な状態で両者を組み付ける。そして同様に扉側丁番も上下方向に上部区画と下部区画の2ブロックに区切って構成し、下部区画に軸心挿入部を配置しておき、上部区画に扉側ベース部材に対して扉側羽根を左右方向に移動調整させるための機構とその操作面を設けておく。
【0012】
枠側ベース部材には枠側羽根をガタツキ無く前後方向にのみ案内可能とする複数のガイド部を設けておき、下部区画の手前側に前後方向に対して垂直な面を設け、その面に雌ねじ部を形成しておく。そして枠側羽根の下部区画に前後調整ねじ挿入孔を有した2個の平行な面からなる外コの字部分を設け、上部区画の手前側は管巻き形状にして軸心を圧入しておく。そして枠側ベース部材の雌ねじ部を有する面に枠側羽根の外コの字部分を被せた状態で枠側羽根を枠側ベース部材に組み付け、前後調整ねじを雌ねじ部に螺合させた状態で外コの字部分に空転するように装着する。すると前後調整ねじの頭部は正面向きに配置され、前後調整ねじを回転させることで枠側ベース部材に対して枠側羽根及び軸心を前後方向に移動させることができる。
【0013】
また扉側ベース部材の下部区画には扉側羽根をガタツキ無く左右方向にのみ案内可能とする複数のガイド部を設けておき、上部区画に左右調整ねじ挿入孔を有した2個の平行な面からなる外コの字部分を形成する。そして傾斜係合部と雌ねじ部を有した連動部材を設けておく。次に手前側に管巻き形状の軸心挿入部を有し、奥側に扉側ベース部材のガイド部に嵌まり込むための上下左右の面状のガイド部を備えた扉側羽根を設けておく。そして扉側羽根の奥側上面に連動部材の傾斜係合部と係合する傾斜長孔を形成しておく。次に扉側羽根のガイド部を扉側ベース部材のガイド部に挿入し、互いが案内された状態で扉側羽根を扉側ベース部材の下部区画に配置し、同時に連動部材の傾斜係合部を扉側羽根の傾斜長孔に係合させた状態で扉側ベース部材の上部区画に挿入する。そして左右調整ねじを連動部材の雌ねじ部に螺合させた状態で、かつ頭部が正面向きで、扉側ベース部材の外コの字部分にガタツキ無しに空転するように組み付ける。すると左右調整ねじの回転操作により連動部材は前後移動し、さらには連動部材の傾斜係合部と扉側羽根の傾斜長孔により扉側ベース部材に対する扉側羽根及び軸心挿入部の左右移動に変換することができる。
【0014】
つまり左右方向の建付け調整に関しては、左右調整ねじの頭部を正面向きに配置する構成では、連動部材の前後運動を扉側羽根の左右移動に方向変換する必要がある。この方向変換の手段は特に限定されるものではないが、上記のように連動部材と扉側羽根に傾斜係合部を設けて互いの傾斜係合部を所定動作範囲においては分離すること無いように嵌め合わせ、左右調整ねじの回転操作による連動部材の傾斜係合部の前後移動により扉側羽根の傾斜係合部を斜め方向に押し引きすることで、扉側ベース部材のガイド部に沿って扉側羽根を左右方向に平行移動させる構成が簡単である。また別の手段としては、扉側ベース部材の下部区画に支点を設け、支点に対して扉側羽根が扉側ベース部材内で左右方向にスイング動作可能なように構成する。そして扉側羽根の支点から一定距離離れた位置に係合突起を形成し、左右調整ねじに螺合された連動部材の傾斜係合部を扉側羽根の係合突起に係合させ、左右調整ねじの回転操作による連動部材の傾斜係合部の前後移動により、扉側羽根の係合突起を押し引きし、その結果支点に対してのスイング動作を得ることで扉側羽根の軸心挿入部若しくは軸心を左右方向に移動させる構成等も適している。
【0015】
そして扉と枠体にあらかじめ分離して装着してある扉側丁番若しくは枠側丁番の、どちらかの軸心に他方の軸心挿入部を差し込むことにより扉の吊り込み動作が可能となる。さらに軸心挿入部の上部位置に雌ねじ部を設けておき、操作面である頭部を上向きにして上下調整ねじを螺合しておくことで施工後に上下調整も合わせて実施することができる。その結果扉を閉鎖したときの外観としては、上側から扉側丁番の上部区画に位置する左右調整ねじの頭部操作面、下部区画に位置する管巻き状の軸心挿入部、枠側丁番の上部区画に位置する軸心を圧入した管巻き部分、下部区画に位置する前後調整ねじの頭部操作面、の順に上下方向に細長く並んだ構成になる。
【発明の効果】
【0016】
枠側丁番と扉側丁番をそれぞれ上部区画と下部区画からなる2ブロックに分けて形成し、扉を吊り込んだ後の閉鎖状態において、丁番全体の中央部に位置する軸心と軸心挿入部の上下に左右調整ねじと前後調整ねじの頭部が正面向きに配置されるように構成したことにより、扉を閉じた状態での正面側からの建付け調整が可能になる。
【0017】
枠側丁番と扉側丁番からなる2管丁番の構成にしたため、扉側羽根と枠側羽根の扉面から持ち出されている部分が同じ水平面上で対面することが無く、かつ軸心と軸心挿入部の上下位置に調整ねじの頭部を配置したことでさらに丁番全体の幅を小さくすることが可能になり、縦方向に細長い形状が得られたことでデザイン性を向上させることができる。また化粧カバーも枠側羽根と扉側羽根に直接装着することが可能であり、軸心や軸心挿入部の前後移動や左右移動の振れ幅を化粧カバー内で動作させる必要が無く、全体としてもスリムな外観を得ることが可能である。
【0018】
連動部材の雌ねじ部を、一定間隔離れた2枚の面に2箇所同時にねじ切りし、外コの字部分に空転させた状態で調整ねじの雄ねじ部を2箇所の雌ねじ部に螺合する構成にすることにより、外コの字部分に対する連動部材のガタツキを小さくすることができる。その結果調整ねじの回転操作により外ケースと内ケースの位置を相対的に移動させたときの、枠側ベース部材に対する枠側羽根や扉側ベース部材に対する扉側羽根の建付け調整後のぐらつきも少なくすることが可能になる。
【0019】
連動部材の傾斜係合部を複数箇所設けて極力距離を離して形成し、扉側羽根の傾斜係合部も同様に距離を離して同数形成して両者を係合させ、左右調整ねじの回転操作による連動部材の傾斜係合部の前後移動により扉側羽根の複数箇所の傾斜係合部を同時に押し引きすることでより安定したぐらつきの無い平行移動動作を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面に基づいて本発明の建付け調整丁番に関する実施の形態を説明する。ここで通常の室内ドアでは上下に2枚の丁番を配置して枠体28に扉27を吊り込むのであるが、本発明の建付け調整機構に関しては上下の丁番においてはほぼ同じ構成であるため片方の丁番のみで説明する。図1は本発明の建付け調整丁番の扉27が閉鎖した状態の納まり上面図であり、ドアの吊り元側の丁番位置のみを表示している。ここで丁番の軸心7が持ち出されている側を手前側とし、扉27の手前面を正面とする。そして戸当たり側を奥側とする。また建付け調整の方向としては、手前から奥またはその逆への移動を前後調整とし、前後方向に対して直角の横方向の移動を左右調整とする。
【0021】
図2は扉27を180度開放した状態の納まり平面図であり、全体としては2管丁番の構成で、枠側丁番に軸心7を配置し、扉側丁番に管巻き形状の軸心挿入部6を設け、両者を扉27と枠体28にあらかじめ装着しておいて、軸心7に軸心挿入部6を差し込むことで吊り込みを実施する構成である。そして図2に示すように枠側丁番は上下方向に下部区画Aと上部区画Bの2ブロックに区切って構成し、上部区画Bから軸心7を突出させた状態で配置しておき、下部区画Aに枠側ベース部材1に対して枠側羽根2を前後方向に移動調整させるための機構とその操作面を設けておく。そして扉側丁番も同様に上下方向に下部区画Cと上部区画Dの2ブロックに区切って構成し、下部区画Cに軸心挿入部6を配置しておき、上部区画Dに扉側ベース部材3に対して扉側羽根4を左右方向に移動調整させるための機構とその操作面を設けておく。
【0022】
図3は枠側丁番の分解斜視図であり、枠側丁番は枠側ベース部材1と枠側羽根2と軸心7を主部材としている。枠側ベース部材1は略ハット型でその上下位置に枠体28に固定するための取り付け孔8を有し、中央部の凹んだ部分の上下面をガイド部12として形成し、その部分に爪挿入用切り欠き部11を設けておく。そして下部手前側に突出した状態で2個の平行な面を有する内コの字部分9を形成し、その面に雌ねじ部10を設けておく。次に枠側羽根2は略Z型に曲がった板形状であり、手前側の上部を管巻き状に形成して軸心7を挿入しておき、その下部に2個の平行な面からなる外コの字部分15を形成し、前後調整ねじ挿入孔13を設けておく。さらに枠側羽根2の奥部分の上下に爪部14とガイド部12を形成しておく。
【0023】
図4は組み付けた状態の枠側丁番の平面図であり、枠側ベース部材1の内コの字部分9に枠側羽根2の外コの字部分15を被せながら、枠側羽根2の爪部14を枠側ベース部材1の爪挿入用切り欠き部11に完全に挿入し、そのまま枠側羽根2を所定距離手前方向に移動させる。すると爪部14が爪挿入用切り欠き部11から爪部14の移動用のスペースにずれ、その状態では両者は分離することなく組み合わせることができる。このとき枠側ベース部材1の中央部分の凹み寸法若しくは移動用のスペースの幅に対する枠側羽根2の爪部14の板厚、そして枠側羽根2の上下ガイド部12の寸法に対する枠側ベース部材1の上下のガイド部12間の寸法を、前後方向にのみガタツキ無く移動できる程度に設定しておくことで、枠側ベース部材1に対して枠側羽根2を前後方向に移動可能となる。また上記の枠側羽根2を手前方向に移動させる所定距離より前後調整での移動距離を小さく設定しておくと、調整時に枠側ベース部材1から枠側羽根2が外れることはない。
【0024】
そして前後調整ねじ16を内コの字部分9の雌ねじ部10に螺合した状態で、頭部が正面向でかつガタツキ無しに空転するように外コの字部分15に装着する。すると図5に示すように前後調整ねじ16を回すことにより枠側羽根2及び軸心7を前後方向に移動調整することができる。図5は前後調整の軌跡を示す上面図であり、図5(b)の基準位置に対して図5(a)や図5(c)に示すように前後方向に枠側羽根2と共に軸心7を移動させることができる。ここで雌ねじ部10を内コの字部分9の2個所の面に設けているのは枠側ベース部材1と枠側羽根2を手前側の位置においてもよりガタツキ無く組み付けるためであり、両雌ねじ部10間の距離が大きいほどガタツキを小さくすることができる。またこの状態で図2に示すように枠側丁番の下部区画Aに前後調整機構が、上部区画Bに管巻き部と共に軸心7が配置されたことになる。
【0025】
図6は枠側丁番を枠体28に装着した状態の上面図であり、枠側ベース部材1と枠側羽根2の奥部分のみを枠体28に掘り込んだ状態で装着し、管巻き部を含む軸心7とその下部に位置する外コの字部分15と雌ねじ部10を有する内コの字部分9は枠体28から持ち出された位置になっている。しかし両者が上下に配置されているため全体としての幅は小さくてよく、枠側化粧カバー17も軸心7を挿入している管巻き部分を被覆する程度でよい。また枠側化粧カバー17は枠側羽根2に装着し、前後調整時には枠側化粧カバー17も一緒に移動するようにしておくとよい。
【0026】
図7は扉側丁番の分解斜視図であり、扉側ベース部材3と扉側羽根4と連動部材5を主部材とする。扉側ベース部材3は上下に取り付け孔8を有した箱形状であり、上部に左右調整ねじ挿入孔21を有した2個の平行な面からなる外コの字部分15を形成しておく。そして下部には扉側羽根4をガタツキ無く左右方向にのみ移動可能とする複数のガイド部12を形成しておく。また図8に示すように、傾斜係合突起19を備えた傾斜面18と2個の平行な面を有する内コの字部分9を備えた連動部材5を設け、内コの字部分9の面に雌ねじ部10を配置しておく。図9は扉側羽根4の上面図であり、手前側に管巻き形状の軸心挿入部6を設け、奥側に扉側ベース部材3のガイド部12間に嵌まり込むための面形状のガイド部12を上下左右に複数箇所設けておく。そして上面に連動部材5の傾斜係合突起19と係合するための傾斜長孔20を形成しておく。
【0027】
図10は組み付けた状態の扉側丁番の平面図であり、連動部材5の傾斜係合突起19を扉側羽根4の傾斜長孔20に係合させた状態で、連動部材5と扉側羽根4を扉側ベース部材3に挿入する。このとき扉側羽根4のガイド部12が扉側ベース部材3のガイド部12に案内されるように形成し、互いのガイド部12間の距離を左右方向にのみガタツキ無く移動できる程度に設定しておくことで、扉側ベース部材3に対して扉側羽根4は左右方向にのみ移動可能となる。そして左右調整ねじ22を連動部材5の雌ねじ部10に螺合させた状態で、かつ頭部が正面向きで、扉側ベース部材3の外コの字部分15にガタツキ無しに空転するように組み付ける。その結果扉側丁番も図2に示すように上下方向に2ブロックに分割された状態で、下部区画Cに軸心挿入部6が、上部区画Dに左右調整機構が配置されたことになる。
【0028】
図11は扉側丁番での左右調整を示す上面軌跡図であり、図11に示すように左右調整ねじ22を回すと連動部材5が前後方向に移動し、扉側羽根4の傾斜長孔20に嵌め込まれている傾斜係合突起19が斜め方向に扉側羽根4を押す動作になる。しかし扉側羽根4は扉側ベース部材3に対して左右方向にのみ移動可能に規制されているため、傾斜係合突起19が傾斜長孔20内をずれながら扉側羽根4を左右方向に移動させる動作が得られる。その結果左右調整ねじ22の回転操作により図11(b)の基準位置に対して図11(a)や図11(c)に示すように扉側羽根4及び軸心挿入部6を左右方向に平行移動させることができる。また前後調整と同様に雌ねじ部10を内コの字部分9の2箇所の面に設けているのはガタツキを小さくするためであり、両雌ねじ部10間の距離は大きいほどよい。
【0029】
ここで扉側羽根4は扉側ベース部材3に対して左右方向にのみ移動可能に適正に案内されているのであるが、やはり移動のための最低限の隙間(クリアランス)は必要である。また連動部材5と扉側羽根4との接点は傾斜係合突起19と傾斜長孔20のみであり、両者が1箇所ずつであれば点で押し込むような動作になり、ギクシャクとした移動動作になることが懸念される。そこで図8と図9に示すように、連動部材5に平行に2箇所の傾斜係合突起19を形成し、扉側羽根4にも2箇所の傾斜長孔20を設けて互いに嵌め合わせた構成にするとよい。これは連動部材5の前後移動動作を扉側羽根4の左右移動に変換する際に、扉側羽根4の幅方向の極力離れた2箇所の位置を同時に押し引きするためのものであり、両傾斜係合突起19間の距離は広いほど条件はよく、その結果より安定したぐらつきの無い扉側羽根4の平行移動動作を得ることができる。
【0030】
また図11は扉側丁番を扉27に装着した状態の上面図でもあり、扉側ベース部材3と扉側羽根4の奥部分を扉27の厚み部分に掘り込んだ状態で装着し、扉側羽根4の前側の管巻き部からなる軸心挿入部6のみが扉27の正面から持ち出された配置になっている。つまり比較的スペースが必要な左右調整機構部分を扉27内に掘り込んだ状態で配置した点が効果的であり、扉27から前側に露出している部分の幅は小さく、扉側化粧カバー23も枠側化粧カバー17と同様に軸心挿入部6の管巻き部を被覆する程度でよい。また扉側化粧カバー23は扉側羽根4に装着し、左右調整時には図11に示すように扉側化粧カバー23も一緒に移動するとよい。すると常に軸心7に対しての両化粧カバーの位置は一定に保持されることになり、前後調整及び左右調整後に上下の化粧カバーが調整分だけずれてしまうようなことは無い。
【0031】
また上記のような左右方向の建付け調整に関しては、左右調整ねじ22の頭部を正面向きに配置する限りは、必ず連動部材5の前後運動を扉側羽根4の左右運動に方向変換する必要が生じる。この方向変換の手段は特に限定されるものではなく、上記の構成の発展形としては図12に示すように、連動部材5と扉側羽根4にブロック形状でより広い傾斜面18を有した部材を設け、所定動作範囲においては分離すること無いように互いの傾斜面18に凹凸を設けて嵌め合わせておき、どちらか片方に雌ねじ部10を設けておき、左右調整ねじ22の回転操作による連動部材5の前後移動により連動部材5の傾斜面18が扉側羽根4の傾斜面18を斜め方向に押し引きし、ガイド部12に規制されることで扉側羽根4が左右方向に平行移動する構成であってもよい。
【0032】
また別の左右方向の建付け調整機構としては、図13(a)に示すように扉側ベース部材3の下部区画に支点24を設け、支点24に対して扉側羽根4が前後方向に動くことは無く、かつ扉側ベース部材3内で左右方向にのみスイング動作可能なように構成する。そして扉側羽根4の支点24から一定距離離れた奥位置に係合突起部25を形成し、左右調整ねじ22に螺合された連動部材5に傾斜長孔20を設けて扉側羽根4の係合突起部25と係合させておく。すると左右調整ねじ22の回転操作による連動部材5の傾斜長孔20の前後移動により係合突起部25が押し引きされて、その結果図13(b)に示すように支点24に対してのスイング動作を得ることになり、扉側羽根4の軸心挿入部6を左右方向に移動させることができる。また図示はしないが、ウォームギアのような歯車を直角に噛み合わせて回転方向を変更するような構成を用いてもよい。
【0033】
次に、吊り込み手段に関しては通常の2管丁番と同様であり、あらかじめ枠体28に装着された枠側丁番の軸心7に、扉27に装着された扉側丁番の軸心挿入部6を差し込むことで枠体28に扉27を吊り込むことができる。図14は吊り込み後に両化粧カバーを装着していない状態の扉27の閉鎖時の正面図であり、上下方向にほぼ一直線に下から前後調整ねじ16の操作面を備えた枠側丁番の下部区画A、軸心7を有する枠側丁番の上部区画B、軸心挿入部6を有する扉側丁番の下部区画C、左右調整ねじ22の操作面を備えた扉側丁番の上部区画D、の順に比較的細い範囲に並んだ状態になっている。したがって扉27を閉じた状態での正面からの前後左右の建付け調整が可能であり、かつデザイン性に優れた建付け調整丁番を提供することができる。
【0034】
つまり上記のような上下方向の各配置がデザイン面から最適とされることが重要であり、例えばどちらかの調整ねじが横方向にずれてしまうような配置では満足とはいえない。また図2では上下の区画の分かれ目を直線にて表現しているが、分割する位置自体はそれほど厳密なものでなくてもよく、図14に示すような正面からの軸心7と軸心挿入部6とその上下の調整ねじの頭部である操作部分の位置構成ができれば各区画の分割位置や手段はどのようなものであってもよい。
【0035】
また建付け調整としては上下方向の調整も当然必要であり、機構としては特に限定されずどのような構成を用いてもよいが、図7や図10に示すように通常の2管丁番で用いられる構成で、軸心挿入部6の管巻き部の内面に雌ねじ部10を設けて上下調整ねじ26を螺合しておき、上下調整ねじ26を回す操作により上下調整ねじ26が軸心7の先端を押し込んで扉27を持ち上げる動作により実施する構成が簡単である。この方法であれば上下調整のためのスペースは別途に必要とせず、図14に示すように全体のデザイン性に影響を与えることは無い。
【0036】
また実施形態では軸心7を挿入する部分と軸心挿入部6を両方管巻き形状にて表示したが、羽根の上下面を水平方向にコの字形状に折り曲げてその面に軸心を圧入、若しくはその面に軸心挿入部6を形成するような構成であってもよい。さらには実施形態では前後調整機構を枠側丁番に左右調整機構を扉側丁番に配置したが、扉と枠体への掘り込みが可能であれば逆に配置する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の調整丁番の納まり上面図である。
【図2】本発明の調整丁番の、扉を180度開放した状態の平面図である。
【図3】本発明の調整丁番の、枠側丁番の分解斜視図である。
【図4】本発明の調整丁番の、枠側丁番の平面図である。
【図5】本発明の調整丁番の、枠側丁番の上面軌跡図である。
【図6】本発明の調整丁番の、枠側丁番の上面納まり図である。
【図7】本発明の調整丁番の、扉側丁番の分解斜視図である。
【図8】本発明の調整丁番の、連動部材の平面図である。
【図9】本発明の調整丁番の、扉側羽根の上面図である。
【図10】本発明の調整丁番の、扉側丁番の平面図である。
【図11】本発明の調整丁番の、扉側丁番の納まり上面軌跡図である。
【図12】本発明の調整丁番の、左右調整機構に別の傾斜面を有した連動部材を用いた構成の上面図である。
【図13】本発明の調整丁番の、左右調整機構に扉側羽根のスイング動作を用いた構成の上面軌跡図である。
【図14】本発明の調整丁番を装着し、扉を閉鎖した状態の正面図である。
【符号の説明】
【0038】
A 枠側丁番下部区画
B 枠側丁番上部区画
C 扉側丁番下部区画
D 扉側丁番上部区画
1 枠側ベース部材
2 枠側羽根
3 扉側ベース部材
4 扉側羽根
5 連動部材
6 軸心挿入部
7 軸心
8 取り付け孔
9 内コの字部分
10 雌ねじ部
11 爪挿入用切り欠き部
12 ガイド部
13 前後調整ねじ挿入孔
14 爪部
15 外コの字部分
16 前後調整ねじ
17 枠側化粧カバー
18 傾斜面
19 傾斜係合突起
20 傾斜長孔
21 左右調整ねじ挿入孔
22 左右調整ねじ
23 扉側化粧カバー
24 支点
25 係合突起部
26 上下調整ねじ
27 扉
28 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に対する扉の位置を建付け後に移動調整可能な機構を有し、扉に装着される扉側丁番と枠体に装着される枠側丁番に軸心挿入部と軸心を振り分けて配置し、軸心位置は扉面より手前側に持ち出されており、両者を互いに嵌め合わせることで建具等の枠体に扉を装着する構成の丁番であって、扉側丁番と枠側丁番を上下方向に上部区画と下部区画の2ブロックに区切って形成し、嵌合状態で近接する扉側丁番の下部区画と枠側丁番の上部区画の手前側に軸心挿入部と軸心を配置して互いを着脱可能とし、その上下に位置する扉側丁番の上部区画と枠側丁番の下部区画に軸心挿入部と軸心を移動調整可能とするための前後調整機構と左右調整機構を別々に配備し、その両操作面を扉の閉鎖状態での正面向きに配置したことを特徴とする建付け調整機構付き丁番。
【請求項2】
枠側丁番は枠側ベース部材と枠側羽根とを有し、枠側羽根の上部区画に軸心挿入部若しくは軸心を配置し、下部区画に前後調整ねじ挿入孔を備えた2個の平行な面からなる外コの字部分を設け、枠側ベース部材の下部区画に雌ねじ部を有した面を設け、外コの字部分内に雌ねじ部を有した面を挿入した状態で、枠側ベース部材に対して枠側羽根が前後方向にのみ移動するように複数のガイド部を形成して両者を組み付け、前後調整ねじを雌ねじ部に螺合させた状態で頭部が正面向になる配置で外コの字部分に空転するように装着し、枠側ベース部材に対して枠側羽根が前後調整ねじの回転操作により前後方向に移動調整可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の建付け調整機構付き丁番。
【請求項3】
扉側丁番は扉側ベース部材と扉側羽根と連動部材を有し、扉側羽根に軸心挿入部若しくは軸心を配置し、扉側ベース部材の上部区画に左右調整ねじ挿入孔を備えた2個の平行な面からなる外コの字部分を設け、下部区画に扉側羽根が左右方向にのみに規制されて移動するための複数のガイド部を形成し、さらに連動部材には係合部分と雌ねじ部を設けておき、連動部材の係合部分を扉側羽根に係合させた状態で、連動部材を扉側ベース部材の上部区画の外コの字部分内に、かつ扉側羽根を扉側ベース部材の下部区画に装着し、左右調整ねじを連動部材の雌ねじ部に螺合させた状態で、かつ頭部が正面向きで、扉側ベース部材の外コの字部分に空転するように組み付け、連動部材の前後移動により扉側ベース部材に対して扉側羽根が左右に移動する方向変換機構を設け、左右調整ねじの回転操作により扉側羽根を左右方向に移動調整可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の建付け調整機構付き丁番。
【請求項4】
前記扉側丁番の方向変換機構が、連動部材と扉側羽根に傾斜係合部を設けて互いの傾斜係合部を所定動作範囲においては分離すること無いように嵌め合わせ、左右調整ねじの回転操作による連動部材の傾斜係合部の前後移動により扉側羽根の傾斜係合部を斜め方向に押し引きすることで扉側ベース部材のガイド部に沿って扉側羽根が左右方向に平行移動する構成であることを特徴とする請求項1または3に記載の建付け調整機構付き丁番。
【請求項5】
前記連動部材の傾斜係合部を複数箇所設けて極力距離を離して形成し、扉側羽根の傾斜係合部も同様に同数距離を離して形成して両者を係合させ、左右調整ねじの回転操作による連動部材の傾斜係合部の前後移動により扉側羽根の複数箇所の傾斜係合部を同時に押し引きすることによる平行移動動作を得ることを特徴とする請求項1または3または4に記載の建付け調整丁番。
【請求項6】
前記扉側丁番の方向変換機構が、扉側ベース部材の下部区画に支点を設け、支点に対して扉側羽根が扉側ベース部材内で左右方向にスイング動作可能なように構成し、扉側羽根の支点から一定距離離れた位置に係合部分を形成し、左右調整ねじに螺合された連動部材の傾斜係合部を扉側羽根の係合部分に係合させ、左右調整ねじの回転操作による連動部材の前後移動により扉側羽根の支点に対してのスイング動作を得、その結果扉側羽根の軸心挿入部若しくは軸心を左右方向に移動させる構成であることを特徴とする請求項1または3に記載の建付け調整丁番。
【請求項7】
前記前後調整機構を枠側丁番の下部区画の扉正面より持ち出された軸心の下部位置付近に配置し、前記左右調整機構を扉側丁番の上部区画の奥位置の、扉の厚み部分を掘り込んだ部分に配置したことを特徴とする請求項1及至6いずれか1項に記載の建付け調整丁番。
【請求項8】
扉と枠体にあらかじめ分離して装着してある扉側丁番若しくは枠側丁番の、どちらかの軸心に他方の軸心挿入部を差し込む動作による吊り込み機構を併せて可能とし、かつ軸心挿入部に雌ねじ部を設けて上下調整ねじを螺合しておき、上下調整ねじを回す操作で軸心の先端を押し込むことで扉を持ち上げる上下調整機構も併せて実施可能としたことを特徴とする請求項1及至7いずれか1項に記載の建付け調整丁番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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