説明

建具の取付構造

【課題】自立間仕切壁に形成した開口部に簡易に取付施工でき、且つ、天井や床に建具取り付けのための溝や孔等を形成せず、間仕切壁の解体後は天井や床を元の状態に復元することのできる、建具の取付構造を提案する。
【解決手段】壁の上縁に上レール10を備える間仕切壁Wに形成した開口部7への建具30の取付構造において、上レール10を開口部7の略全幅にわたって延設し、上レール10の内側に着脱可能にレールカバー20を嵌設して上レール10の体裁を整え、上レール10の側面に該上レール10と略平行に延在して建具の移動を案内する建具用レール32を固設し、該建具用レール32に建具30の上部に設けた戸車30aを走行させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切壁に設けた開口部への建具の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のパネルを床−天井間に立設して構成する間仕切壁(以下「自立間仕切壁」と記載する)が知られている。このような間仕切壁では、例えば、図1に示すように、天井9に上レール10を、床8に下レール11を、上下に略平行となるように固定し、上レール10と下レール11との間にパネル12を立設して、組立施工する。上レールと下レールはそのうちいずれか一方が備えられることもある。
【0003】
一方、上述のような自立間仕切壁に、開口部を設けるとともに、該開口部を戸や扉等の建具で開閉可能としたものが知られている。
例えば、特許文献1に記載の技術では、自立間仕切壁に開口部を設け、該開口部を開閉自在に閉塞する片引き戸を備え、該片引き戸の上部と下部とを、それぞれ天井に設けたレールとパネルの側面とで支持させている。
【特許文献1】実開平5−83256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自立間仕切壁は、組立・解体可能な構造とされ、その配置を変更することにより間取りを自在に変更させることが可能であるという利点がある。従って、自立間仕切壁に形成された開口部に設ける建具も含めて、自立間仕切壁を簡易に組立・解体できることが好ましい。また、自立間仕切壁を解体したときには、天井や床を元の状態に復元できることが好ましい。
そこで本発明では、自立間仕切壁に形成した開口部に簡易に取付施工でき、また、自立間仕切壁を解体したときには、天井や床を元の状態に復元することのできる、建具の取付構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、壁の上縁に上レールを備える間仕切壁に形成した開口部への建具の取付構造において、前記上レールが開口部の略全幅にわたって延設されて成る上レールと、前記上レールに着脱可能に固定されたレールカバーと、前記上レールに支持された建具用レールと、前記建具用レールに案内され移動する建具とを備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記上レールの内側に、前記レールカバーを嵌入可能に形成するとともに、建具用レールを上レールの側面に設けたものである。
【0008】
請求項3においては、前記レールカバーの内側に、前記上レールを嵌入可能に形成するとともに、建具用レールをレールカバーの下面に設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、間仕切壁の上レールを利用し、該上レールにレールカバーを取り付けることにて、該上レールそのものを開口上枠として機能させることができる。また、建具を案内する建具用レールやレールカバーは、上レールに支持又は固定されているので、開口部に建具を備えるために、天井や床に孔や溝を加工する必要が無く、開口部に建具を簡易に取り付けることができるとともに、間仕切壁を解体したあとに天井や床を元の状態に復元させることができる。
【0011】
請求項2においては、上レールとレールカバーを嵌合固定させることで、開口部に簡易施工で建具を備えることができる。また、レールカバーにて上レールの開口上枠としての体裁を整えることができる。
【0012】
請求項3においては、上レールとレールカバーを嵌合固定させることで、開口部に簡易施工で建具を備えることができる。また、レールカバーを上レールに被せるので、開口部の壁厚を増大させて、開口部に引き違い戸を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る開口部を備えた間仕切壁の施工手順を説明する図である。
図2は開口部に片引き戸を備えた間仕切壁の様子を示す図、図3は片引き戸の支持構造を示す断面図、図4は上レールにレールカバーを嵌設した様子を示す斜視図である。
図5は開口部に引き違い戸を備えた間仕切壁の様子を示す図、図6は引き違い戸の支持構造を示す断面図、図7は上レールにレールカバーを嵌設した様子を示す斜視図、図8は開口部に引き違い戸を備えた間仕切壁の別形態を示す図である。
【0014】
本発明の実施例に係る間仕切壁Wは、複数のパネルを立設して成る自立間仕切壁である。以下に、間仕切壁Wの構成を立設手順に沿って説明する。
まず、図1(a)に示すように、天井9に上レール10が、床8に下レール11が、それぞれ敷設される。上レール10や下レール11は、接着テープ等の跡が残らず、且つ、着脱可能に接着する接着手段によって、天井9又は床8に固定される。上レール10と、下レール11とは、上下に略平行に配置され、これらのレールにて間仕切壁Wが立設される位置が確定される。
そして、間仕切壁Wに開口部7を設ける部分には、上レール10が該開口部7の略全幅にわたって延設される。
【0015】
続いて、図1(b)に示すように、前記上レール10と下レール11との間に、パネル12が上下方向に突っ張った状態に立設される、パネル12の下部と下レール11とを覆う巾木13が取り付けられる。上レール10は下開放溝形の長尺部材であって、その内側にパネル12の上部が嵌め込まれる。そして、開口部7の周縁には、化粧部材である開口縦枠14・14が取り付けられる。
上記のようにして、間仕切壁Wの壁部分が形成される。
なお、上記間仕切壁Wの構造は本発明に係る建具の取付構造を採用する間仕切壁の一例であって、上レールにパネルを吊す吊設式間仕切壁、上レールと下レールとの間にパネルを嵌め込む嵌設式間仕切壁等、壁の上縁に設けた上レールを構成要素に含む間仕切壁に広く適用させることができる。
【0016】
次に、上述のように形成された間仕切壁Wの開口部7に、該開口部7を開閉可能とする建具の取付構造について説明する。以下に示す実施例では、建具として戸を開口部7に備えるが、建具を襖や障子等とすることもできる。
まず、図2に示すように、建具として片引き戸を備える場合について説明する。
【0017】
図3及び図4に示すように、開口部7の上レール10にレールカバー20が着脱可能に嵌入される。
上レール10の内側にレールカバー20が嵌め込まれることによって、上レール10が開口上枠として機能するために適した形状に整形される。なお、開口上枠として機能するために適した形状とは、開口上枠は開口部7を縁取る化粧部材であることから、室内空間に露出しても外観を損ねることのないように意匠性を備えた形状とする。本実施例では、上レール10の下面開口がレールカバー20にて閉塞され、上レール10全体が角柱状に整形されている。さらに意匠性を向上させるためにレールカバー20に模様や表面凹凸形状等を形成することもできる。
このように、間仕切壁Wの壁部分の構成要素である上レール10の延長部分をレールカバー20で装飾して開口上枠とし、開口上枠として上レール10が現れていても美感を損ねないようにしている。
【0018】
上レール10は、レール伸延方向に伸延する下開放溝形(断面視門型)のレール本体10aの内側の幅方向中央部に、同じく下開放溝形の係止部10bが固設されたものである。係止部10b下部の開放側には、開放の幅を狭めるように幅方向略中心に向かう傾斜が設けられる。
また、レールカバー20は、開口部7の開口幅にわたって設けられた上レール10と略同様の長さだけレール伸延方向に伸延する上開放溝形(断面視略U字状)の本体21と、該本体21の内側に固設された断面視略L字形の固定片22と、固定片22に設けられた板バネ23とで構成される。固定片22には、上レール10の係止部10bに形成した傾斜形状に沿う傾斜が設けられる。
【0019】
レールカバー20を上レール10の内側に嵌め込んだ状態で、レールカバー20の本体21は、前記上レール10のレール本体10aの内側に嵌合し、レールカバー20の固定片22及び板バネ23は、上レール10の係止部10bの内側に嵌合する。このとき、上レール10の係止部10bに嵌入されているレールカバー20の固定片22と板バネ23とが、板バネ23の弾性力により係止部10b内側で突っ張った状態となり、これに加え、固定片22と係止部10bの重なり合う傾斜形状にて固定片22の下方への移動が規制されることで、係止部10bに固定片22及び板バネ23が係合される。これにより、上レール10にレールカバー20が固定され、落脱不能に支持される。
上述のように、上レール10にレールカバー20を嵌合固定することで、工具やその他螺子等の固定用部材を必要とせず、上レール10にレールカバー20を簡易に着脱することができ、且つ、レールカバー20を脱落することなく安定して固定することができる。
【0020】
前記上レール10の側面に、図3に示すように、建具30の上部に備えた戸車30aを走らせる走行部32aを形成した建具用レール32が固設・支持される。建具用レール32は、上レール10に沿って設けられ、建具30にて開口部7を開閉するために十分な長さに延在する。
なお、建具30の下面には床8で転動する転動輪30b・30bが備えられて、建具30は自身で自重を支持するため、建具用レール32は、主に建具30の走行を規制・案内する機能を果たす。
【0021】
そして、前記建具用レール32の走行部32aを戸車30aが走行するように、建具用レール32に建具30が取り付けられる。建具30は、建具用レール32に走行を規制されて上レール10と略平行に移動して、開口部7を開閉させることができる。
【0022】
次に、間仕切壁Wの開口部7に、図5に示すように、建具として引き違い戸を備える場合について説明する。
【0023】
引き違い戸を備える場合は、複数のレールを平行に形成するため、片引き戸と比較して大きな壁の厚みが必要となる。通常、本実施例の間仕切壁Wのような自立する間仕切壁では、建て付けられたと比較して壁の厚みは小さく、引き違い戸を備えるために必要な厚みに満たないことがある。そこで、図6及び図7に示すように、間仕切壁Wを構成するパネル12や上レール10よりも幅広なレールカバー25が、上レール10に覆い被せるように嵌設されて、間仕切壁Wのうち開口部7にだけ引き違い戸を備えるために必要な壁の厚みが形成される。
【0024】
前記レールカバー25は、カバー部26と建具用レール部27とで構成される。
カバー部26は、レールカバー25のうち上レール10に覆い被せた状態に固定するとともに、開口上枠としての体裁を形成する部分である。カバー部26は、開口部7の開口幅にわたって設けられた上レール10と略同様の長さだけレール伸延方向に延在する上開放リップ溝形の本体26aと、該本体26aの内部に固設された断面視略L字形の固定片26bと、固定片26bに設けられた板バネ26cとで構成される。
なお、レールカバー25のカバー部26における固定片26bと板バネ26cと、上記レールカバー20における固定片22と板バネ23とは、形状及び機能が略同一であり、また、レールカバー25のカバー部26と上レール10との固定形態と、レールカバー20と上レール10との固定形態は、略同一であるため、説明を省略する。
【0025】
前記建具用レール部27は、上記カバー部26の下部に一体的に固設され、レールカバー25のうち鴨居としての機能を構成する部分である。
建具用レール部27には、開口部7に備える二枚の建具30・30の上部に備えられた戸車30a・30aを走行させる二本の走行部27a・27aが形成される。
なお、建具30の下面には床8で転動する転動輪30b・30bが備えられ、建具30は自身で自重を支持するので、建具用レール部27の走行部27a・27aにて戸車30a・30aの移動が規制されることによって、建具30・30の走行が規制・案内される。
【0026】
レールカバー25に上レール10を嵌入させたとき、カバー部26の本体26aは、前記上レール10のレール本体10aの外側に嵌合し、カバー部26の固定片22及び板バネ23は、上レール10の係止部10bの内側に嵌合して、上レール10にレールカバー25が嵌合固定される。
なお、レールカバー25は上レール10に落脱不能に支持され、従って、建具用レール部27はカバー部26を介して上レール10に支持される。
【0027】
そして、上記建具用レール部27の走行部27a・27aを戸車30a・30aが走行するように、レールカバー25に建具30・30が取り付けられる。建具30・30は、レールカバー25の建具用レール部27に走行を規制され、上レール10と略平行に移動して、開口部7を開閉させることができる。
【0028】
なお、図8に示すように、上レール10の下方の床面に、建具の走行溝を形成した敷居部材31を、該上レール10と略平行に設けることもできる。この場合、レールカバー25と敷居部材31にて建具30の上下縁の移動方向が規制されるため、建具30の振れを防止することができる。
【0029】
上述の如く、同一形状の上レール10が備えられた開口部7に、片引き戸と、引き違い戸の両形態の建具を取り付けることができる。同一形状の上レール10を利用することができるので、上レール10を規格化することができ、部材種を削減することができる。
また、上レール10とレールカバー20・25とは嵌合固定させるので、上レール10にレールカバー20・25を簡易に取り付けることができる。
そして、片引き戸の場合は、上レール10を露出し、一方、引き違い戸の場合は、上レール10をレールカバー25で隠蔽するというように、開口部7に設ける建具の形態に応じて開口部7の様子を変化させることができ、開口部7にバリエーションを付けることができる。
【0030】
また、開口部7に建具を備える場合に、レールカバー20・25や、建具用レール32が、いずれも上レール10に固定されるとともに、上レール10は着脱可能に天井に接着されるため、間仕切壁Wの解体時には、上レール10を天井9より取り外せば、もとの平面な天井9に復元できる。例えば、間仕切壁Wの位置を変更させたり、間仕切壁Wを取り除いたりする場合にも、天井9や床8に建具取付のための孔や溝等を残すことがないので、間仕切壁Wの配置変更による空間の拡大縮小が安易に行える。
そして、開口部7に建具を備えるために、天井9や床8に建具取付のために特別な変形を与える必要がないので、開口部7を備えた自立間仕切壁Wを簡易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係る開口部を備えた間仕切壁の施工手順を説明する図。
【図2】開口部に片引き戸を備えた間仕切壁の様子を示す図。
【図3】片引き戸の支持構造を示す断面図。
【図4】上レールにレールカバーを嵌設した様子を示す斜視図。
【図5】開口部に引き違い戸を備えた間仕切壁の様子を示す図。
【図6】引き違い戸の支持構造を示す断面図。
【図7】上レールにレールカバーを嵌設した様子を示す斜視図。
【図8】開口部に引き違い戸を備えた間仕切壁の別形態を示す図。
【符号の説明】
【0032】
8 床
9 天井
10 上レール
11 下レール
12 パネル
20 レールカバー
25 レールカバー
26 カバー部
27 建具用レール部
30 建具
30a 戸車
32 建具用レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の上縁に上レールを備える間仕切壁に形成した開口部への建具の取付構造において、
前記上レールが開口部の略全幅にわたって延設されて成る上レールと、
前記上レールに着脱可能に固定されたレールカバーと、
前記上レールに支持された建具用レールと、
前記建具用レールに案内され移動する建具とを備える
ことを特徴とする建具の取付構造。
【請求項2】
前記上レールの内側に、前記レールカバーを嵌入可能に形成するとともに、
建具用レールを上レールの側面に設けた、
請求項1に記載の建具の取付構造。
【請求項3】
前記レールカバーの内側に、前記上レールを嵌入可能に形成するとともに、
建具用レールをレールカバーの下面に設けた、
請求項1に記載の建具の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−241818(P2006−241818A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58452(P2005−58452)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(593121634)双葉実業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】