説明

建材用パーライト及びそれを混入したモルタル組成物

【課題】セメントに混入することにより耐凍害性に優れたモルタル組成物になる建材用パーライトを提供する。
【解決手段】本発明の建材用パーライトは、粒径比(D95/D10)が7.5〜25.0であることを特徴とする。単位容積重量(LD)が0.12kg/L〜0.22kg/Lであることが好ましく、浮水率が50vol%〜90vol%であることが好ましい。この建材用パーライトを混入したセメントを含むモルタル組成物は、耐凍害性に優れたものになるため、ボードに成型することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、ボード等の建材の骨材として用いる建材用パーライト及びそれを混入したモルタル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁、ボード等の建材の軽量化を図るためには、例えば、セメント中にパーライトなどの軽量骨材を混入することが行われていた。
しかし、セメント中にパーライトなどの軽量骨材を混入すると、モルタル中に空隙が多数でき、水分が浸入しやすくなり、耐凍害性が著しく低下する問題が生じていた。
【0003】
そこで、セメントに、大粒径の中空粒状パーライト及び繊維物質に水を加えて成形し、しかる後養生硬化させることを特徴とする耐凍害性に優れた軽量セメント製品の製造方法が開発されている(下記特許文献1参照)。
また、ガラス粉に所定の添加率で発泡剤を添加して得られた原料混合物を成型し、得られた成型体を750℃超乃至850℃未満の温度雰囲気下での焼成により発泡させた耐凍害性軽量建材であって、嵩比重が1.0以上2.0以下であることを特徴とする耐凍害性軽量建材が開発されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−86477号公報
【特許文献2】特開2005−82464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにパーライトなどの軽量骨材を混入したモルタル組成物は、耐凍害性を向上させるべく開発が進められており、本発明者は、鋭意研究した結果、従来と比較して耐凍害性に優れたモルタル組成物を開発した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、セメントに混入することにより耐凍害性に優れたモルタル組成物にすることができる建材用パーライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建材用パーライトは、粒径比(D95/D10)が7.5〜25.0であることを特徴とする。
【0008】
本発明の建材用パーライトをセメントに混入したモルタル組成物は、耐凍害性の優れたものになる。
これは、大きい粒子間の空隙に小さな粒子が入り込み、空隙を小さくし、水分がモルタル組成物中に浸入しにくくなるためであると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態の建材用パーライトを説明する。ただし、本発明の範囲は、この実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の一実施形態の建材用パーライト(以下、本建材用パーライトという。)は、粒径比(D95/D10)が7.5〜25.0であることを特徴とするものである。
【0011】
本建材用パーライトは、真珠岩などの天然ガラスを発泡させたものであり、パーライト原料を粉砕、乾燥、予熱、焼成などして製造することができる。
【0012】
本建材用パーライトは、粒径比(D95/D10)が7.5〜25.0、好ましくは8.0〜21.0である。
粒径比を上記範囲にするには、焼成条件を調整することにより行うことができる。
【0013】
本建材用パーライトは、単位容積重量(LD)が0.12kg/L〜0.22kg/L、特に0.15kg/L〜0.20kg/Lであるのが好ましい。
単位容積重量を上記範囲にするには、温度をかければ発泡して軽くなることなどを考慮して焼成条件を調整することにより行うことができる。
なお、単位容積重量は、JIS A5007に準拠して測定することができる。
【0014】
本建材用パーライトは、浮水率が50vol%〜90vol%、特に65vol%〜75vol%であるのが好ましい。
浮水率を上記範囲にするには、ムラなく焼成することにより浮水率が上がることなどを考慮して焼成条件を調整することにより行うことができる。
なお、浮水率は、例えば、下記実施例に示すように測定することができる。
【0015】
本建材用パーライトは、平均粒径D50(W)が、50μm〜500μm、特に250μm〜350μmであるのが好ましい。
平均粒径D50(W)を上記範囲にするには、焼成条件を調整することにより行うことができる。
【0016】
本建材用パーライトをセメントに混入してモルタル組成物を作製できる。
【0017】
上記モルタル組成物は、他にパルプなどを含ませることができる。
【0018】
上記モルタル組成物は、建材として、内壁、外壁などに用いることができ、塗布して用いることやボードに成型して用いることもできる。
ボードにする場合は、プレス圧46kg/cm〜95kg/cmにてプレス成型することができる。
より具体的には、例えば、上記モルタル組成物0.145kgを、直径10cmの金型に流し込み、適宜のプレス圧でプレス成型し、この成型体を105℃で12時間オートクレーブ養生することによりボードを作製できる。
このようなプレス圧でボードを作製することにより、耐凍害性に優れたボードになる。
【0019】
本発明の建材用パーライトをセメントに混入したモルタル組成物は、耐凍害性の優れたものになる。
凍害性は、モルタル組成物の水分吸収量及び空隙の大きさの影響が大きいものと考えられ、大きい空隙の方が水分を吸収しやすく、凍結しやすいものと考えられる。
本発明の建材用パーライトは、粒径比D95/D10を7.5〜25.0にしたため、これを混入したモルタル組成物は、大きい空隙に小さな粒子が入り込み、空隙を小さくし、水分がモルタル組成物中に浸入しにくくなるため耐凍害性が向上するものと考えられる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の一実施例を説明する。但し、本発明の範囲は、この実施例に限定されるものではない。
【0021】
試料1〜17の建材用パーライトとして、下記表1に示すパーライトを用いた。
試料1〜17は、原料として真珠岩を用い、これをスーパーサンダーで粉砕し、乾燥機で100〜200℃で乾燥させ、300℃〜800℃で1〜3分予熱し、800℃〜1200℃で焼成して作製した。
【0022】
【表1】

【0023】
各物性値は、以下のように測定した。
粒径比(D95/D10)及び平均粒径D50(W)は、目開き2.38μm、1.19μm、0.59、0μm.297、0μm.149、0μm.074μmの篩を使用したロータップ篩分機(ヤマト科学社製)で5分間篩過した後のそれぞれの留分から算出した。
【0024】
単位容積重量(LD)は、JIS A5007に準拠して測定した。
【0025】
浮水率(vol%)は、以下の手順1〜5で測定し、以下の式1より算出した。
1.クローシリンダーに水90mlを入れる。
2.試料1.5gを上記クローシリンダーに入れる。
3.撹拌棒で浮水物を右回転20回、左回転20回攪拌する。
4.浮水物の上端が100mlになるように水を追加する。
5.水平な場所で2時間放置し、浮水物と沈殿物の量を目盛り単位で読み取る。
【式1】
【0026】


【0027】
上記試料1〜17をセメントに混入してモルタル組成物1〜17を作製した。
各モルタル組成物1〜17は、セメント59gに対して、試料1〜17の各パーライトを47g、水を38g、パルプを0.5g配合して混錬して作製した。
【0028】
各モルタル組成物1〜17、0.145kgを、φ10cmの金型に流し込み、下記表2に示すプレス圧でプレス成型し、この成型体を、オートクレーブ養生して厚さ16mmのボード1〜17を作製した。オートクレーブ養生は、常温から3時間かけて165℃に昇温させ、12時間その温度で保持し、その後自然放冷した。
【0029】
上記ボード1〜17を用いて耐凍害性テストを行った。
耐凍害性テストは、各ボード1〜17を、−20℃で2時間気中に放置し、その後、20℃で1時間水中に放置することを1サイクルとし、1サイクルごとに欠けの発生がないか目視で確認し、最大400サイクル行った。このテストを各ボードについて2回行った。
【0030】
このテストの結果から、劣化率を以下の式2で算出した。欠け発生サイクルは、2回の平均値を用いた。
【式2】
【0031】


【0032】
上記テストの結果を、下記表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
(結果)
欠け発生サイクルが2回の試験とも300回以上、かつ、劣化率が0.040未満のものを耐凍害性が良好と判定した。
試料1〜8は耐凍害性が良好であり、粒径比(D95/D10)が7.5〜25.0である建材用パーライトを混入したモルタル組成物から作製したボードは、耐凍害性が優れていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径比(D95/D10)が7.5〜25.0である建材用パーライト。
【請求項2】
単位容積重量(LD)が0.12kg/L〜0.22kg/Lである請求項1に記載の建材用パーライト。
【請求項3】
浮水率が50vol%〜90vol%である請求項1又は2に記載の建材用パーライト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の建材用パーライトをセメントに混合したモルタル組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のモルタル組成物をプレス圧46kg/cm〜95kg/cmでプレス成型して作製したボード。

【公開番号】特開2011−236097(P2011−236097A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110555(P2010−110555)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】