説明

建物の天井パネル構造

【課題】複数の石膏ボードの間の目地部に沿って天井クロスが膨れ上がるのを抑制できる建物の天井パネル構造を提供する。
【解決手段】天井パネル10は、建物内空間において天井部に設置されるものであり、乾燥木材からなる木材ボード11と、木材ボード11の下面に横並びに設けられた複数の石膏ボード12と、複数の石膏ボード12の下面に跨って設けられた天井クロス13とを備えている。各石膏ボード12は、木材ボード11の下面において互いの端面同士を当接させた状態で横並びとされ、その上面に形成された接着層15を介して木材ボード11に全面接着されている。天井クロス13は、各石膏ボード12の下面に形成された接着層16を介して各々の石膏ボード12に全面接着されている。木材ボード11において石膏ボード12側の面には排出溝が形成され、この排出溝を通じて接着層15,16から放出される水蒸気が天井パネル10の外部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井パネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の天井パネル構造としては、天井梁に野縁等の下地材を介して固定された複数の石膏ボードの下面側に、塩化ビニル樹脂よりなる天井クロス(壁紙)を接着剤により貼り付けたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、近年、その他の天井パネル構造として、天井梁の下面に固定されたパーティクルボードの下面に複数の石膏ボードを横並びの状態で接着剤により接着固定するとともに、それら各石膏ボードの下面に跨るようにして天井クロスを接着剤により貼り付けたものが実用化されている。かかる天井パネル構造では、石膏ボードをビス等を用いず接着により固定する構成としているため、固定強度(接着強度)を確保すべく全面接着される。なお、天井クロスは従来通り、全面接着により貼り付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−48439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したパーティクルボードを用いた天井パネル構造では、石膏ボードが優れた透湿性を有しているのに対し、天井クロス及びパーティクルボードは透湿抵抗が大きいものとなっている。そのため、石膏ボードの両面に形成された接着層の水分が気化し水蒸気が放出された場合、その水蒸気が天井クロス又はパーティクルボードを通じて天井パネル外へ排出されることは想定しにくく、石膏ボード内を移動して隣接する石膏ボードの間の目地に流れ込むと考えられる。
【0006】
ここで、隣接する石膏ボードを互いの端面同士を当接させて配置した場合でも、目地の長手方向におけるいずれかの部位には隙間が発生しうる。つまり、目地には、隣接する石膏ボードの間に隙間が生じている部位と、隙間が生じていない部位とが存在している。したがって、目地(すなわち上記隙間)に接着層からの水蒸気が流れ込んだ場合、水蒸気が目地に溜まって目地内の圧力が高くなることが想定され、そうなると、天井クロスが目地に沿って下方すなわち室内空間側に膨れ上がるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の石膏ボードの間の目地部に沿って天井クロスが膨れ上がるのを抑制できる建物の天井パネル構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の天井パネル構造は、建物の天井部分に取り付けられる天井パネルを有し、前記天井パネルは、乾燥木材からなる木材ボードと、前記木材ボードの下面側において横並びに複数設けられ、前記木材ボードに対して接着剤により全面接着された石膏ボードと、前記各石膏ボードの下面に跨って設けられ、前記各石膏ボードに対して接着剤により全面接着された天井クロスと、を備え、前記木材ボード及び前記石膏ボードの少なくともいずれかには、前記接着剤から放出される水蒸気を前記天井パネルの外部に排出するための排出通路が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、接着剤より放出された水蒸気が、木材ボード及び石膏ボードの少なくもいずれかに形成された排出通路を通じて天井パネル外に排出されるため、複数の石膏ボードの間の目地部に水蒸気が溜まるのを抑制できる。これにより、天井クロスが目地部に沿って膨れ上がるのを抑制できる。また、天井クロスの膨れ上がりを抑制することにより、天井面の見栄えが損なわれるのを抑制できる。
【0010】
第2の発明の建物の天井パネル構造は、第1の発明において、前記排出通路として、前記木材ボードにおける前記石膏ボード側の面及び前記石膏ボードの板面の少なくともいずれかに形成され、前記天井パネルの外部に通じる排出溝を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、接着剤より放出された水蒸気を排出溝を通じて天井パネルの側方に排出することができる。これにより、隣接する石膏ボードの間の目地部に水蒸気が溜まるのを抑制でき、天井クロスが目地部に沿って膨れ上がるのを抑制できる。また、排出溝は、木材ボード又は石膏ボードにおいて接着剤が塗布される接着面に沿って形成されているため、接着剤から放出される水蒸気を回収し易い。
【0012】
また、木材ボードは、該木材ボートよりも脆性が高い石膏ボードと比べると、加工性に優れているため、その点を鑑みると、排出溝は木材ボードに形成することが好ましい。
【0013】
第3の発明の建物の天井パネル構造は、第2の発明において、前記排出溝は、さらに前記複数の石膏ボードの間の目地部に通じていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、石膏ボードの目地部に水蒸気が流れ込んだとしても、その水蒸気を排出溝を通じて天井パネルの外部に排出できる。このため、目地部に水蒸気が溜まるのを好適に抑制できる。
【0015】
第4の発明の建物の天井パネル構造は、第3の発明において、前記排出溝は、前記木材ボードにおいて前記目地部の上方でかつ該目地部に沿って形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、木材ボードに形成された排出溝が目地部の上方において該目地部に沿って延びているため、排出溝が延びている範囲内であれば目地部におけるいずれの部位に水蒸気が溜まっても、その水蒸気を排出溝を通じて天井パネル外へ排出できる。これにより、目地部に水蒸気が溜まるのをより一層抑制できる。
【0017】
第5の発明の建物の天井パネル構造は、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記排出溝は、その底部に、直角又は鋭角をなす2つの溝内面の間に形成された隅部を有し、前記排出溝の内部には、少なくとも前記隅部を含む領域に空気通路が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明では、排出溝の底部に隅部が設けられ、その隅部が直角又は鋭角をなす2つの溝内面の間に形成されているため、仮に木材ボード又は石膏ボードを接着する際に接着剤が排出溝に入り込んでも、その接着剤は溝底の隅部まで進入することがなく、隅部を含む領域には空気通路が形成される。このため、木材ボード又は石膏ボードに排出溝を形成する場合において、排出溝が接着剤により塞がれて水蒸気を排出できなくなる事態を回避できる。
【0019】
第6の発明の建物の天井パネル構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記排出通路として、前記木材ボードにおいて厚み方向に貫通して形成された排出孔を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、接着剤から放出された水蒸気を排出孔を通じて天井裏に排出することができる。これにより、隣接する石膏ボードの間の目地部に水蒸気が溜まるのを抑制でき、天井クロスが目地部に沿って膨れ上がるのを抑制できる。
【0021】
第7の発明の建物の天井パネル構造は、第6の発明において、前記排出孔は、前記複数の石膏ボードの間の目地部に通じていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、石膏ボードの目地部に水蒸気が流れ込んだとしても、その水蒸気を排出孔を通じて天井パネルの外部に排出できる。このため、目地部に水蒸気が溜まるのを好適に抑制できる。
【0023】
第8の発明の建物の天井パネル構造は、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記複数の石膏ボードの間の目地部には、吸湿材が設けられていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、石膏ボードの目地部に流れ込んだ水蒸気を吸湿材により吸収できるため、目地部に沿った天井クロスの膨れ上がりをより一層抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】天井パネルの構成を示す分解斜視図。
【図2】天井パネルの構成を拡大して示す断面図。
【図3】(a)が木材ボードを排出溝を上にして示す平面図、(b)が(a)のA−A線断面図、(c)が木材ボードに接着剤を付着させた状態を示す断面図。
【図4】天井パネルの設置状態を示す断面図。
【図5】木材ボードに形成された排出孔を示す平面図。
【図6】木材ボードに形成された排出溝及び排出孔を示す平面図。
【図7】排出溝の別例を示す平面図。
【図8】石膏ボードに形成された排出溝を示す平面図。
【図9】排出溝の断面形状を示す断面図。
【図10】石膏ボードの目地部に吸湿材を設けた状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は天井パネルの構成を示す分解斜視図である。図2は天井パネルの構成を拡大して示す断面図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、天井パネル10は、建物内において天井部分に設置されるものであり、乾燥木材からなる木材ボード11と、木材ボード11の下面に横並びに設けられた複数(図1では3つ)の石膏ボード12と、複数の石膏ボード12の下面に跨って設けられた天井クロス13とを備えている。
【0028】
木材ボード11は、木質ボードの一種であるパーティクルボードにより形成されている。木材ボード11は、長方形状を有して形成されており、その厚みが約20mmとなっている。木材ボード11は、比較的高い透湿抵抗を有しており、例えばその透湿率が1〜4ng/m/s/Paとなっている。なお、木材ボード11は、必ずしもパーティクルボードにより構成する必要はなく、MDF(中密度繊維板)やOSB(配向性ストランドボード)等その他の木質ボードにより構成してもよい。また、集成材や合板等木質ボード以外のものにより構成してもよい。要するに、乾燥木材により板状(ボード状)に形成されたものであればよい。
【0029】
石膏ボード12は、優れた透湿性を有しており、その透湿率が例えば404ng/m/s/Paとなっている。各石膏ボード12は、木材ボード11の下面において互いの端面同士を当接させた状態で横並びとされており、その上面に形成された接着層15を介して木材ボード11に接着固定されている。接着層15は、例えば水溶性の接着剤により形成されている。接着層15は、各石膏ボード12の上面において全域に形成されており、このため各石膏ボード12は木材ボード11に対して全面接着されている。
【0030】
天井クロス13は、塩化ビニル樹脂により形成された天井仕上げ材である。天井クロス13は、木材ボード11とほぼ同じ大きさ(縦横寸法)を有しており、各石膏ボード12の下面全域に跨って設けられている。天井クロス13は、木材ボード11と同様、比較的高い透湿抵抗を有しており、例えばその透湿率が1〜4ng/m/s/Paとなっている。天井クロス13は、各石膏ボード12の下面に形成された接着層16を介して各々の石膏ボード12に接着固定されている。接着層16は、各石膏ボード12の下面において全域に形成されており、このため、天井クロス13は石膏ボード12に対して全面接着されている。なお、接着層16は、上述の接着層15と同様、水溶性の接着材により形成されている。
【0031】
ところで、上述した構成の天井パネル10では、石膏ボード12が透湿性を有している一方、石膏ボード12の上下に配置された木材ボード11及び天井クロス13は透湿抵抗が高くなっている。このため、接着層15,16に含まれる水分が気化して接着層15,16から水蒸気が放出された場合、その水蒸気は木材ボード11や天井クロス13を介して天井パネル10外に移動することができず、石膏ボード12内を移動して隣接する石膏ボード12の間の目地部19に流れ込むことが考えられる。その場合、目地部19の圧力が高まって目地部19に沿って天井クロス13が室内空間側に膨れるおそれがあり、そうなると天井面の見栄えが損なわれる可能性がある。そこで、本実施形態では、接着層15,16から放出される水蒸気を天井パネル10の外部に排出する排出溝を木材ボード11に設け、この排出溝を通じて水蒸気を天井パネル10外に排出することで目地部19に水蒸気が流れ込むのを抑制している。以下、かかる本実施形態の特徴的構成について図3に基づいて説明する。なお、図3は、(a)が木材ボード11を排出溝を上にして示す平面図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。また、図3(a)では、参考として、隣接する石膏ボード12の間の目地部19を一点鎖線で示している(後述の図5〜図7についても同様)。
【0032】
図3に示すように、木材ボード11において石膏ボード12側の面(すなわち下面)には、排出溝21が形成されている。排出溝21は、接着層15,16から放出された水蒸気を天井パネル10の外部に排出するための排出通路である。排出溝21は、木材ボード11の下面において複数形成されており、これら各排出溝21は格子状をなして配置されている。具体的には、排出溝21は、木材ボード11の長手方向に延びる複数(図3(a)では3つ)の縦溝21aと、木材ボード11の短手方向に延びる複数(図3(a)では3つ)の横溝21bとを有している。
【0033】
縦溝21aは、木材ボード11の長手方向全域に亘って連続して延びており、その両端において側方に開口されている。この場合、縦溝21aは、隣接する石膏ボード12の間の目地部19を跨いで延びており、そのため縦溝21aは目地部19と連続している。また、各縦溝21aは、木材ボード11の短手方向において所定のピッチで設けられており、より詳しくは、各縦溝21aはそれぞれ木材ボード11の短手方向の長さを等分する位置に配置されている。
【0034】
横溝21bは、木材ボード11の短手方向全域に亘って連続して延びており、その両端において側方に開口されている。また、各横溝21bは、木材ボード11の長手方向において所定のピッチで設けられており、詳しくは各横溝21bはそれぞれ木材ボード11において各石膏ボード12の設置領域(より詳しくは設置領域における略中央位置)に配置されている。
【0035】
各排出溝21は、図3(b)に示すように、矩形形状の断面を有して形成されている。したがって、排出溝21は、その底部において隅部23を有しており、より詳しくは、直角をなす側面27と底面28との間に形成された隅部23を有している。また、本実施形態では、各排出溝21の溝幅が5mmに、溝深さが5mmに設定されている。なお、排出溝21の側面27及び底面28が、溝内面に相当する。
【0036】
なお、排出溝21の断面形状は必ずしも矩形形状とする必要はなく、三角形状(谷形状)や、半円形状等その他の形状としてもよい。また、排出溝21の断面の大きさ(幅及び深さ)は任意でよく、溝幅を溝深さよりも大きくしたり又は小さくしたりしてもよい。また、各排出溝21の間で断面形状や断面の大きさを異ならせてもよい。
【0037】
図3(c)は、木材ボード11に接着剤25(詳しくは接着層15を形成する接着剤25)を付着させた状態を示している。同図に示すように、接着剤25は、木材ボード11において排出溝21が形成されている側の板面に付着される。この場合、接着剤25の一部が排出溝21内に入り込むこととなるため、接着剤25による排出溝21の閉塞が懸念される。この点、上述したように排出溝21は隅部23を有する断面矩形形状をなしており、換言するとその隅部23が直角をなす側面及び底面の間に形成されているため、接着剤25が排出溝21の奥底部まで入り込むことはなく、接着剤25の付着状態でも排出溝21内に空気通路が確保されている。言うなれば、排出溝21には、接着剤25の進入を許容する接着剤進入部37と、接着剤25が進入せず空気の流通が可能とされた空気通路部38とが形成されている。これにより、木材ボード11に接着剤25を付着させる場合にあって、排出溝21が接着剤25により塞がれて水蒸気を天井パネル10外に排出できなくなる事態を回避できるようになっている。
【0038】
次に、上述した天井パネル10を建物に設置した場合の設置構成について説明する。ここでは、天井パネル10が設置される建物として、ユニット式建物を想定している。ユニット式建物は、梁及び柱よりなる複数の建物ユニットが互いに連結されて構成される建物であり、このユニット式建物において建物ユニットの天井部に天井パネル10を設置した場合を以下では説明する。なお、図4は、天井パネルの設置状態を示す断面図である。
【0039】
図4に示すように、天井パネル10は、建物ユニット30において対向する一対の天井大梁31の間に掛け渡された状態で設置されている。天井パネル10において、木材ボード11には石膏ボード12よりも側方に延出した延出部11aが設けられている。この延出部11aは天井大梁31の下面にビス等により固定されており、これにより天井パネル10が建物ユニット30の天井部に固定されている。
【0040】
また、木材ボード11の延出部11aには、石膏ボード12に隣接して横並びに設けられた石膏ボード34がビス等で固定されている。石膏ボード34の下面には、天井クロス35が接着により固定されている。天井クロス35は、天井パネル10の天井クロス13と略面一の天井面を形成している。
【0041】
ところで、建物ユニットにおける天井パネルの設置構成としては、対向する天井大梁31の間に掛け渡された複数の天井小梁に野縁を介して固定された複数の石膏ボードに、天井クロスを貼り付けたものが知られている。これに対して、上述した本実施形態の天井パネル10の設置構成は、相対する天井大梁31の間に天井パネル10を掛け渡して、それら各大梁31に対し天井パネル10を固定する構成であるため、天井パネル10の設置に際し天井小梁(及び野縁)を必要としない。このため、本天井パネル10は、天井小梁を有しない建物ユニットにも設置が可能となっている。
【0042】
また、近年では、2つの建物ユニットを離し置きするとともに、該離し置きにより形成される中間領域を上記2つの建物ユニットの間に各種建材を掛け渡すことで構築する離し置きユニット工法が実用化されている。そこで、かかる工法により構築されるユニット式建物において、本天井パネル10を各建物ユニットの間に掛け渡すことで中間領域の天井部を構築することも可能である。
【0043】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
木材ボード11に、当該ボード11の端縁部まで連続して延びる排出溝21を形成した。この場合、接着層15,16より放出された水蒸気を排出溝21を通じて天井パネル10の側方に排出できるため、隣接する石膏ボード12の間の目地部19に水蒸気が溜まるのを抑制でき、その結果天井クロス13が目地部19に沿って膨れ上がるのを抑制できる。また、かかる天井クロス13の膨れ上がりを抑制することで、天井面の見栄えが損なわれるのを抑制できる。
【0045】
また、石膏ボード12にかかる排出溝を設けることも可能ではあるが、石膏ボード12は脆性を有するが故加工性の面で難がある。この点、木材ボード11は、加工性に優れているため、上記排出溝21を形成し易い。
【0046】
排出溝21a(詳しくは縦溝21a)を、目地部19に通じるように設けたため、目地部19に水蒸気が流れ込んでも、その水蒸気を排出溝21aを通じて天井パネル10の外部に排出できる。このため、目地部19に水蒸気が溜まるのを好適に抑制できる。
【0047】
排出溝21を、当該溝21の延びる方向における両端においてそれぞれ側方に開口させた。この場合、排出溝21の延びる方向における一端部のみが開口されている場合と比べ、排出溝21内の通気性を高めることができる。そのため、排出溝21に入り込んだ水蒸気が当該排出溝21内において滞留するのを抑制でき、その結果水蒸気の好適な排出が可能となる。
【0048】
〔第2の実施形態〕
本実施形態では、接着層15,16から放出される水蒸気を天井パネル10の外部に放出するための構成が第1実施形態と異なる。そこで、以下に、本実施形態における構成を第1の実施形態との相違点を中心に説明する。図5は、木材ボード11に形成された排出孔を示す平面図である。なお、図5では、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、木材ボード11には、厚み方向に貫通された複数の排出孔41が形成されている。排出孔41は、接着層15,16から放出された水蒸気を天井裏に排出するための排出通路である。各排出孔41はそれぞれ、円形状の断面を有しており、本実施形態ではその孔径が10mmに設定されている。
【0050】
なお、排出孔41の断面形状は必ずしも円形状である必要はなく、矩形形状等その他の形状であってもよい。また、排出孔41の大きさ(孔径)は任意としてよい。また、排出孔41の孔径を、木材ボード11の下面側から上面側に向けて拡径したり縮径したりすることで、排出孔41をテーパ孔としてもよい。さらに、排出孔41の断面形状や大きさを必ずしも各排出孔41の間で同じとする必要はなく、異ならせてもよい。
【0051】
複数の排出孔41は、木材ボード11全体に点在させて設けられている。この場合、排出孔41は、木材ボード11における各石膏ボード12の設置領域にそれぞれ複数ずつ配置されている。具体的には、排出孔41は、木材ボード11の長手方向において所定間隔(詳しくは等間隔)で複数列(図5では5列)設けられており、かつ、各列においてそれぞれ木材ボード11の短手方向に所定間隔(詳しくは等間隔)で複数(図5では3つ)ずつ設けられている。
【0052】
上記複数の排出孔41の列には、木材ボード11において、石膏ボード12間の目地部19に沿って(換言すると目地部19上に)配置された排出孔列42aと、目地部19を挟んで両側に配置された排出孔列42bとがある。排出孔列42aに設けられた各排出孔41aは目地部19に通じており、それ故目地部19に流れ込んだ水蒸気をこの排出孔41aを通じて天井裏に排出することが可能となっている。
【0053】
なお、排出孔41の個数やピッチは必ずしも上記のものに限定することはなく任意としてよい。また、排出孔41は必ずしも木材ボード11の長手方向又は短手方向に沿って並べる必要はなく、例えば木材ボード11の長手方向に対して斜めの方向に並べたり千鳥状に配置したりする等、その他の並びで配置してもよい。
【0054】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0055】
木材ボード11に、厚み方向に貫通する排出孔41を形成したため、接着層15,16から放出された水蒸気を排出孔41を通じて天井裏に排出できる。そのため、隣接する石膏ボード12の間の目地部19に水蒸気が溜まるのを抑制でき、天井クロス13が目地部19に沿って膨れ上がるのを抑制できる。
【0056】
排出孔41aを、隣接する石膏ボード12の間の目地部19に通じるように設けたため、目地部19に流れ込んだ水蒸気を排出孔41aを通じて天井裏に排出でき、その結果目地部19に水蒸気が溜まるのを好適に抑制できる。
【0057】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0058】
(1)図6に示すように、木材ボード11に、排出溝21と排出孔41との両方を形成してもよい。図6では、木材ボード11に、上記第1の実施形態と同じ構成で排出溝21が形成されているとともに、複数の排出孔45が形成されている。この場合、排出溝21と排出孔45との両方を通じて接着層15,16からの水蒸気を天井パネル10の外部に排出できる。
【0059】
具体的には、排出孔45には、木材ボード11において排出溝21が形成されている部位に設けられた排出孔45aと、排出溝21が形成されていない部位に設けられた排出孔45bとがある。排出孔45aは排出溝21に通じており、そのため、排出溝21に流れ込んだ水蒸気をこの排出孔45aを通じて天井裏に排出することが可能となっている。より詳しくは、排出孔45aは、縦溝21aと横溝21bとの交差部に設けられ、当該交差部に通じている。この交差部には、縦溝21aを流れる水蒸気と横溝21bを流れる水蒸気とが集中することが考えられるため、かかる構成とすることで排出溝21内の水蒸気を効率よく天井裏へ排出することが可能となる。
【0060】
(2)上記第1の実施形態では、排出溝21を、木材ボード11の長手方向又は短手方向全域に亘り連続して形成し、排出溝21の延びる方向における両端部においてそれぞれ排出溝21を側方に開口させたが、これを変更してもよい。例えば、排出溝を、木材ボード11の面方向における中途位置から木材ボード11の端縁まで連続して延びるように形成し、排出溝21の延びる方向における一方側においてのみ排出溝21を側方に開口させてもよい。その一例として、図7には、排出溝47を、木材ボード11の長手方向における中途位置から当該ボード11の長手方向の端縁まで延びるように形成した構成が示されている。
【0061】
また、図7に示すように、排出溝48を、木材ボード11における目地部19の上方において当該目地部19に沿って形成してもよい。この場合、排出溝48が目地部19に沿って延びている範囲内であれば目地部19におけるいずれの部位に水蒸気が溜まっても、その水蒸気を排出溝48を通じて天井パネル10外に排出できる。また、より詳しくは、図7では、排出溝48が、目地部19の長手方向全域において当該目地部19に沿って延びているため、目地部19の長手方向におけるいずれの部位に水蒸気が溜まってもその水蒸気を天井パネル10外に排出できる。これにより、目地部19に水蒸気が溜まるのをより一層抑制することができる。
【0062】
さらに、図7に示すように、木材ボード11において目地部19を挟んだ両側に、かつ、目地部19の近傍に、当該目地部19に沿って排出溝49を形成してもよい。この場合、石膏ボード12内を目地部19に向かって移動する水蒸気を排出溝49に導いて天井パネル10外に排出できるため、目地部19に水蒸気が流れ込むのをより一層抑制することができる。
【0063】
(3)上記第1の実施形態では、木材ボード11に、異なる二方向に延びる排出溝21、すなわち縦溝21a及び横溝21bを設けたが、一方向に延びる排出溝だけを、例えば縦溝21a又は横溝21bのいずれかだけを設けるようにしてもよい。また、上記第1の実施形態では、排出溝21を、木材ボード11における4辺の端縁に延びるように形成したが、いずれかの端縁(1辺乃至3辺の端縁のうちいずれでもよい)だけに延びるように形成してもよい。
【0064】
(4)上記第1の実施形態では、木材ボード11に排出溝21を形成したが、これに代えて又は加えて、石膏ボード12の板面に排出溝を形成してもよい。例えば、石膏ボード12における木材ボード11側の面に排出溝を形成することが考えられる。図8には、石膏ボード12に形成された排出溝の一例を示す。図8では、横並びに設けられた複数の石膏ボード12のうち、端部側に配置された石膏ボード12Aに、石膏ボード12の並び方向における全域に亘って延びる排出溝51が形成されている。この排出溝51は、その両端において側方に開口されており、このうち一端が目地部19に通じており、他端がパネル10外部に開放されている。したがって、目地部19に流れ込んだ水蒸気をこの排出溝51を通じて好適に排出することができる。
【0065】
また、中間部に配置された石膏ボード12Bには、石膏ボード12の並び方向と直交する方向において全域に亘って延びる排出溝52が形成されている。排出溝52は、その両端において側方に開口されており、具体的には両端においてパネル10外部に開放されている。これにより、中間部に配置された石膏ボード12B内の水蒸気を好適にパネル外部に導くことができる。
【0066】
なお、石膏ボード12において木材ボード11側の面に排出溝を形成することに代えて又は加えて、天井クロス13側の面に排出溝を形成してもよい。
【0067】
(5)上記第1の実施形態では、排出溝21を、矩形断面形状を有して形成することで、換言すると、その底部に、直角をなす2つの溝内面(側面27及び底面28)の間に形成された隅部23を設けることで、排出溝21に空気通路部38を形成したが、排出溝21に空気通路部を形成するための断面形状はこれに限らない。例えば、排出溝を、三角形状の断面を有して形成し、その底部に、鋭角をなす2つの溝内面の間に形成される隅部を設けてもよい。この場合においても、排出溝内において隅部を含む領域を空気通路部とすることができる.
また、図9に示すように、排出溝57を、その溝深さ方向において溝幅が大小異なる段差状としてもよい。この場合、排出溝57において、溝幅が大きい溝開口側の領域58と、溝幅が小さい溝底側の領域59とは共に矩形断面形状をなしており、溝底側の領域59では、その底部において、直角をなす2つの溝内面(詳しくは底面及び側面)の間に形成された隅部61が存在している。したがって、この場合隅部61を含む溝底側の領域59を空気通路部とすることができる。なお、溝開口側の領域58は接着剤の進入を許容する接着剤進入部となる。
【0068】
(6)図10(a)に示すように、隣接する石膏ボード12の間の目地部19に吸湿材43を設けてもよい。吸湿材43は、例えばシリカゲルにより線状(リボン状)に形成されており、目地部19に沿って充填されている。この場合、目地部19に流れ込んだ水蒸気を吸湿材43により吸収できるため、目地部19に沿った天井クロス13の膨れ上がりをより一層抑制できる。また、図10(b)に示すように、石膏ボード12における目地部19側の端面に、目地部19に沿って延びる凹状部55を設け、その凹状部55に吸湿材43を収容してもよい。
【0069】
また、石膏ボード12自体に吸湿機能を設けてもよい。例えば、石膏ボード12の内部に吸湿材(例えばシリカゲル)を含ませることが考えられる。これは、石膏ボード12の成形時に、石膏ボード12の原料(つまり石膏等)に吸湿材を含ませて成形することにより実現できる。この場合、石膏ボード12内を移動する水蒸気を吸湿材により吸収できるため、目地部19に流れ込む水蒸気の量を低減させることができる。
【0070】
(7)上記第2の実施形態において、石膏ボード12の目地部19に流れ込んだ水蒸気を排出孔41aを通じて積極的に天井裏に排出するためのファン装置を設けてもよい。具体的には、天井パネル10上において当該排出孔41aの上方位置にファン装置を設置する。これにより、排出孔41aを通じた天井裏への水蒸気の排出を促進させることができるため、目地部19に水蒸気が溜まるのをより一層抑制することができる。
【0071】
(8)上記各実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…天井パネル、11…木材ボード、12…石膏ボード、13…天井クロス、15…接着層、16…接着層、19…目地部、21…排出通路としての排出溝、41…排出通路としての排出孔、43…吸湿材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井部分に取り付けられる天井パネルを有し、
前記天井パネルは、
乾燥木材からなる木材ボードと、
前記木材ボードの下面側において横並びに複数設けられ、前記木材ボードに対して接着剤により全面接着された石膏ボードと、
前記各石膏ボードの下面に跨って設けられ、前記各石膏ボードに対して接着剤により全面接着された天井クロスと、
を備え、
前記木材ボード及び前記石膏ボードの少なくともいずれかには、前記接着剤から放出される水蒸気を前記天井パネルの外部に排出するための排出通路が形成されていることを特徴とする建物の天井パネル構造。
【請求項2】
前記排出通路として、前記木材ボードにおける前記石膏ボード側の面及び前記石膏ボードの板面の少なくともいずれかに形成され、前記天井パネルの外部に通じる排出溝を備えることを特徴とする請求項1に記載の建物の天井パネル構造。
【請求項3】
前記排出溝は、さらに前記複数の石膏ボードの間の目地部に通じていることを特徴とする請求項2に記載の建物の天井パネル構造。
【請求項4】
前記排出溝は、前記木材ボードにおいて前記目地部の上方でかつ該目地部に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の建物の天井パネル構造。
【請求項5】
前記排出溝は、その底部に、直角又は鋭角をなす2つの溝内面の間に形成された隅部を有し、
前記排出溝の内部には、少なくとも前記隅部を含む領域に空気通路が形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の建物の天井パネル構造。
【請求項6】
前記排出通路として、前記木材ボードにおいて厚み方向に貫通して形成された排出孔を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の天井パネル構造。
【請求項7】
前記排出孔は、前記複数の石膏ボードの間の目地部に通じていることを特徴とする請求項6に記載の建物の天井パネル構造。
【請求項8】
前記複数の石膏ボードの間の目地部には、吸湿材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の建物の天井パネル構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−127068(P2012−127068A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277617(P2010−277617)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)