説明

建物の建て替え方法及び建物構造

【課題】建物の建て替えを容易に行うことができる建物の建て替え方法および建物構造を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造の既設建物1の基礎20を流用して新設建物2を建築する。また、既設建物1の柱10内の鉄筋11Aを用いて、新設建物2の柱50と基礎20とを連結する。即ち、既設建物1の柱10内の鉄筋を、新設建物2の柱50と基礎20とを連結するためのアンカーボルトとして使用する。また、既設建物1の柱10の鉄筋11Aをアンカーボルトとして用いることで、このアンカーボルトは、埋め込みアンカーボルトと同等の効果(柱50と基礎20との連結力、強度等)を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の鉄筋コンクリート構造の建物の地上部分を解体して土台部を残し、当該土台部上に鉄骨構造の新設建物を建築する建物の建て替え方法および建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の住居用マンション等の鉄筋コンクリート構造の建物を建て替える場合、基礎や杭を含む建物全体を解体した後、新たな建物を建築することが行われている。これは新たな建物が用途変更(事務所・店舗等)をともなう場合に、建物重量・地震力の関係で基礎や杭まで影響するためである。
また、既設の建物の基礎や杭を残した状態で建物を解体し、残した基礎の上に新たな建物を建築することが考えられている。即ち、既設の建物の基礎や杭を、新たな建物の基礎や杭として流用しようとするものである。このような、基礎を流用する建築方法として、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3353166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
住居用マンション等の鉄筋コンクリート構造の建物を建て替える際、用途変更等により既設建物の重量以上の新たな建物(店舗用等)を建築する必要がある場合、基礎や杭を含む既設の建物全体を解体した後、新たに基礎工事をやり直す必要があり、建物の建て替えを容易に行うことができないといった問題がある。また、既設の建物の基礎や杭を流用しようとする場合、既設の建物の基礎に対して新たに建築しようとする建物の柱を連結する方法が問題となる。例えば、特許文献1には、基礎の上にトラス架構を組み立てる構成が記載されている。ただし、基礎とトラス架構との連結構造については言及されていない。
【0005】
さらに、例えば、既設の建物の基礎に対して、あと施工アンカー工法によってアンカーボルトを設置し、設置したアンカーボルトを用いて新たな建物の柱と基礎とを連結することが考えられる。しかしながら、建物の新築や増築等において、あと施工アンカー工法で設置されたアンカーボルトを用いて基礎と柱とを連結する方法は、現在の建築基準法において認められておらず、この方法を用いることはできない。
【0006】
そこで本発明はこのような問題点に鑑み、建物の建て替えを容易に行うことができる建物の建て替え方法および建物構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉄筋コンクリート構造の既設建物の一部を土台部とし、土台部上に新設建物を建築する建物の建て替え方法であって、土台部から上方向に延びる既設建物の既設柱を、土台部から所定高さ突出するように柱残留部位を残して除去する柱除去工程と、柱残留部位におけるコンクリートを除去し、柱残留部位内の鉄筋を露出させる鉄筋露出工程と、露出させた鉄筋に対して、新設建物の新設柱を連結するための連結部を形成する連結部形成工程と、そして土台部上に新設柱を立設させて、連結部によって新設柱と土台部とを連結する新設柱連結工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、鉄筋コンクリート構造の既設建物の一部を土台部とし、土台部上に新設建物が建築された建築構造であって、土台部から上方に延びる既設建物の既設柱のコンクリートを除去することによって露出された鉄筋の上端に形成された連結部を備え、連結部によって、土台部上に立設された新設建物の新設柱と、土台部とを連結することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造の既設建物から鉄骨構造の新設建物に建て替えることにより、建物の用途変更等を行った場合であっても、建物の重量が軽くなるので既設建物の基礎の強度で新設建物を支えることができ、既設建物の基礎を流用して新設建物を建築することができる。このとき、既設建物の既設柱内の鉄筋を用いて、新設建物の新設柱と土台部とを連結することができる。即ち、既設柱内の鉄筋を、新設柱と土台部とを連結するためのアンカーボルトとして使用することができる。また、既設柱の鉄筋をアンカーボルトとして用いることで、このアンカーボルトは、埋め込みアンカーボルトと同等の効果(柱と土台部との連結力、強度等)を得ることが可能となる。このように、既設柱の鉄筋を、新設柱と土台部とを連結するためのアンカーボルトとして用いることにより、建物の建て替えを容易に行うことができる。
【0010】
また、連結部形成工程において、鉄筋に連結部としての雄ネジを形成することが好ましい。これにより、既設柱の鉄筋に容易に連結部(雄ネジ)を形成することができる。
あるいは連結部は雄ネジが形成されたネジ切り鉄筋であり、連結部形成工程において、ネジ切り鉄筋を鉄筋の上端に連結することが好ましい。このように、既設柱の鉄筋にネジ切り鉄筋を連結することにより、既設柱の鉄筋に容易に連結部(ネジ切り鉄筋)を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による建物の建て替えは、基礎土台部の工事が不要となるので、工事に伴う騒音・振動の発生を防ぐことができ、当然にその分の工期の短縮およびコストの削減を図れ、また、廃棄物を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】既設建物から新設建物に建て替える工程を示す図である。
【図2】既設建物から新設建物に建て替える工程を示す図である。
【図3】図2(b)における新設建物の柱のA−A部断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る建物の建て替え方法及び建築構造の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、同一構成要素には同一番号を付して説明を省略する。
【0014】
図1、図2は、既設建物から新設建物に建て替える工程を示す図である。特に、図1(a)は、既設建物の基礎周りを示す図であり、図1(b)および図2(a)は、建物の建て替え途中における建物の基礎周りを示す図である。図2(b)は、新設建物の柱を基礎に連結した様子を示す図である。なお、図1、図2において、基礎20や柱10は断面を図示しているが、基礎20や柱10内の鉄筋11を図示するために断面を示すハッチング表示を省略している。また、図1、図2において、G.Lは、地中と地上との境界を示し、図中、G.Lより下側が地中となっている。
【0015】
図1(a)に示すように、既設建物1は、地中内に埋設された基礎20と、基礎20から上方に延びる柱10とを含んで構成されている。基礎20は、地中に打ち込まれた杭22の上に設置されている。基礎20は、水平方向に延びる地中梁21を備えている。柱10および基礎20は、鉄筋コンクリート構造であり、内部にメッシュ状に配設された鉄筋11を備えている。
【0016】
図1(a)に示される既設建物1を建て替える場合、まず、柱除去工程として、図1(b)に示すように、基礎20から上方向に延びる既設建物1の柱10を、基礎20から所定高さ突出する柱残留部位10Aだけを残して除去する。この柱残留部位10Aは、例えば、基礎20から300mm程度突出する高さとする。
【0017】
次に、鉄筋露出工程として、図2(a)に示すように、柱残留部位10Aにおけるコンクリートを除去し、柱残留部位10A内の鉄筋を露出させる。なお、以降において、露出させた鉄筋を、鉄筋11Aとする。
【0018】
次に、連結部形成工程として、図2(a)に示すように、露出させた鉄筋11Aに対して、詳しくは後述する新設建物2の柱50(図2(b)参照)を連結するための連結部11Bを形成する。具体的には、連結部11Bとして、鉄筋11Aの上端にネジ切りによって雄ネジを形成する。
【0019】
次に、新設柱連結工程として、図2(b)に示すように、基礎20上に新設建物2の柱50を立設させて、連結部11Bを用いて柱50と基礎20とを連結する。
【0020】
ここで、新設建物2の柱50について説明する。図3は、図2(b)における柱50のA−A部断面を示す図である。図3に示すように柱50は、鉄骨柱52と、鉄骨柱52の下端に取り付けられたベースプレート51とより構成されている。ベースプレート51には、鉄筋11Aと対応する位置に取り付け孔53が設けられている。
【0021】
従って、新設柱連結工程では、基礎20上に新設建物2の柱50を立設させるときに、ベースプレート51の取り付け孔53に鉄筋11Aが通される。なお、図2(b)に示すように、ベースプレート51と基礎20との間には、無収縮モルタル層70が形成されている。なお、無収縮モルタル層70に代えて、コンクリート等を増し打ちしてもよい。
【0022】
柱50を基礎20上に立設させた後、取り付け孔53に通された鉄筋11Aの連結部11Bにナット60を嵌め込み、ナット60を締め込むことにより柱50と基礎20とを連結する。そして、この柱50を用いて、基礎20の上に新設建物2を建築する。
【0023】
本実施形態は以上のように構成され、鉄筋コンクリート構造の既設建物1から鉄骨構造の新設建物2に建て替えることにより、建物の用途変更等を行った場合であっても、新設建物2の重量が軽くなるので既設建物1の基礎20の強度で新設建物2を支えることができ、既設建物1の基礎20を流用して新設建物2を建築することができる。このとき、既設建物1の柱10内の鉄筋11Aを用いて、新設建物2の柱50と基礎20とを連結することができる。即ち、既設建物1の柱10内の鉄筋11Aを、新設建物2の柱50と基礎20とを連結するためのアンカーボルトとして使用することができる。また、既設建物1の柱10の鉄筋11Aをアンカーボルトとして用いることで、このアンカーボルトは、埋め込みアンカーボルトと同等の効果(柱50と基礎20との連結力、強度等)を得ることが可能となる。
【0024】
このように、既設建物2の基礎20を流用し、既設建物1の柱10内の鉄筋11Aを、新設建物2の柱50と基礎20とを連結するためのアンカーボルトとして用いることにより、鉄筋コンクリート構造の既設建物1から鉄骨構造の新設建物2への建て替えを容易に行うことができる。これにより、建て替えの工期の短縮、コスト低減を図ることができる。また、基礎20の部分を利用して新設建物2を建築するため、基礎20を含めて既設建物1の全てを取り壊して建て替える場合と比較して、廃棄物の量を大幅に減らすことができる。
【0025】
また、鉄筋11Aの上端にネジ切りによって雄ネジを形成するものとしたので、新設建物2の柱50と基礎20とを連結するための連結部11Bを鉄筋11Aに容易に形成することができる。
【0026】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、連結部形成工程において、鉄筋11Aの上端に連結部11Bとしての雄ネジを形成するものとしたが、これ以外にも、例えば、雄ネジが形成されたネジ切り鉄筋を鉄筋11Aの上端に連結することによって連結部11Bを形成することもできる。この鉄筋11Aとネジ切り鉄筋との連結には、例えば、ガス圧接継手、突合せ溶接、エンクローズ溶接、鋼管圧着継手、モルタル充填式継手、ねじ節鉄筋継手とモルタル充填式継手との併用、鋼管圧着継手と接続ボルトによるトルク固定方式との併用等、適宜の方法を用いることができる。
【0027】
また、上記実施形態では、土台部としての基礎20上に柱50を立設させて新設建物2を建築するものとしたが、例えば、既設建物1の2階以上の部分を除去することによって既設建物1の1階部分を土台部とし、2階部分の柱の鉄筋をアンカーボルトとすることにより、既設建物1の1階部分の上に新設建物2を建築することもできる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・既設建物
2・・・新設建物
10・・・柱(既設柱)
11,11A・・・鉄筋
11B・・・連結部
20・・・基礎(土台部)
21・・・地中梁(土台部)
50・・・柱(新設柱)
51・・・ベースプレート(新設柱)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造の既設建物の一部を土台部とし、前記土台部上に鉄骨構造の新設建物を建築する建物の建て替え方法であって、
前記土台部から上方向に延びる前記既設建物の既設柱を、前記土台部から所定高さ突出する柱残留部位を残して除去する柱除去工程と、
前記柱残留部位におけるコンクリートを除去し、前記柱残留部位内の鉄筋を露出させる鉄筋露出工程と、
露出させた前記鉄筋に対して、前記新設建物の新設柱を連結するための連結部を形成する連結部形成工程と、
前記土台部上に前記新設柱を立設させて、前記連結部によって前記新設柱と前記土台部とを連結する新設柱連結工程と、
を有することを特徴とする建物の建て替え方法。
【請求項2】
前記連結部形成工程において、前記鉄筋に前記連結部としての雄ネジを形成することを特徴とする請求項1に記載の建物の建て替え方法。
【請求項3】
前記連結部は雄ネジが形成されたネジ切り鉄筋であり、
前記連結部形成工程において、前記ネジ切り鉄筋を前記鉄筋の上端に連結することを特徴とする請求項1に記載の建物の建て替え方法。
【請求項4】
鉄筋コンクリート構造の既設建物の一部を土台部とし、前記土台部上に鉄骨構造の新設建物が建築された建築構造であって、
前記土台部から上方に延びる前記既設建物の既設柱のコンクリートを除去することによって露出された鉄筋の上端に形成された連結部を備え、
前記連結部によって、前記土台部上に立設された前記新設建物の新設柱と、前記土台部とを連結することを特徴とする建築構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−17597(P2012−17597A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155266(P2010−155266)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(505441269)ケーアンドイー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】