説明

建物の排水システムおよび建物の排水システムの施工方法

【課題】大がかりな工事を行うことなく、新たな水回り設備の増設を可能とする排水システムを提供する。
【解決手段】排水システムは、基礎貫通管2と予備基礎貫通管3とを備えている。予備基礎貫通管3は、基礎貫通管2と同様に、基礎20を貫通する様に配設されている。予備基礎貫通管3は、基礎20用のコンクリートが打設される前に配筋内に挿通され、コンクリートを打設することにより基礎20に固定される。トイレ35を増設する際に、予備基礎貫通管3の内部に、可撓管32が挿通される。可撓管32の外側端部39には、連結管4の一端が接続される。連結管4の他端は、トイレ35を増設する押入61付近に新たに設置された排水ます5に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の水回り設備からの排水を屋外に排出する排水システム、およびその排水システムの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅等の建物内において、ライフスタイルの変化に応じて水回り設備の増設を行うことが多く見受けられる。例えば、2世帯で居住するためにキッチンを増設したり、介護用にトイレを増設したりするようなケースが見られる。
【0003】
ところで、住宅等の建物の多くでは、地面の上にコンクリート等からなる基礎が形成され、基礎の上に柱等が設けられる。すなわち、多くの建物には、建物の内部と外部とを仕切る基礎が設けられている。
【0004】
また、一般的に、基礎の内側には給水ヘッダーが設けられ、建物内の各水回り設備は、給水用配管を介して給水ヘッダーに接続されている。これにより、各水回り設備には、給水ヘッダーから給水用配管を介して水が供給される。そのため、既存の建物内に水回り設備を増設する際、給水に関しては、基礎の内側にある既存の給水用配管を分岐させたり、給水ヘッダーの空き箇所を使用したりすることにより、簡単に施工することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−210031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、排水に関しては、排水管が基礎の外側に埋設されており、排水用配管を介して各水回り設備を排水管に接続する場合がある。このような場合、基礎を貫通するように排水用配管を施工する必要がある。そのため、既存の建物内に水回り設備を増設する際には、水回り設備の増設に伴って排水用配管も増設しなければならず、基礎の一部を取り壊さなければならなかった。その結果、増設工事が大がかりなものとなり、コストがかさむという問題や、工期が長くなるという問題が生じていた。また、基礎の一部を取り壊すことにより、建物自体の強度が低下するおそれもあった。
【0006】
特に、トイレを増設する場合、トイレ用の配管はその他の雑排水用の配管に比べて大径であるので、基礎の一部を取り壊して排水用配管を敷設することは、非常に面倒である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大がかりな工事を行うことなく、水回り設備の増設を可能とする排水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建物の排水システムは、基礎を有する建物の内部の水回り設備からの排水を建物の外部に排出する排水システムであって、前記基礎が形成される際に前記基礎を貫通するように配設され、前記水回り設備に接続され、または、前記水回り設備に接続された排水用配管が挿通された基礎貫通管と、前記基礎が形成される際に前記基礎を貫通するように配設され、水回り設備に接続されておらず、かつ、水回り設備に接続された排水用配管が挿通されていない予備基礎貫通管と、を備えたものである。
【0009】
上記排水システムでは、水回り設備に接続される基礎貫通管の他に、基礎を形成する際に予め基礎を貫通するように配設された予備基礎貫通管を備えている。そのため、水回り設備を増設する際には、予備基礎貫通管を利用することにより、基礎を取り壊すことなく排水用配管を配設することが可能となる。したがって、水回り設備の増設に際し、大がかりな工事を行う必要がなく、工事の手間およびコストを削減することができる。また、工期を短縮することもできる。
【0010】
前記基礎貫通管には、トイレ用の第1基礎貫通管と、前記第1基礎貫通管よりも内径の小さな雑排水用の第2基礎貫通管とが含まれ、前記予備基礎貫通管の内径は、前記第1基礎貫通管の内径以上であってもよい。
【0011】
汚水は雑排水に比べて流れにくい。そのため、一般的に、トイレに接続されるトイレ用の排水用配管は、汚水を円滑に流すため、内径が大きいことが好ましい。しかし、内径が大きいと外径も大きくなる。そのため、従来の排水システムにおいてトイレを増設するためには、基礎を大幅に取り壊さなければならず、工事がより大がかりになるおそれがあった。しかし、上記排水システムでは、トイレ用の第1基礎貫通管の内径以上の内径である予備基礎貫通管が、基礎を形成する際に基礎を貫通するように配設されている。そのため、上記排水システムによれば、基礎を大幅に取り壊すことなく大径の予備基礎貫通管を用いてトイレを増設することが可能となる。したがって、上記排水システムによれば、基礎の一部を取り壊すことなく排水用配管を配設することができるという上述の効果がより顕著に発揮されることとなる。
【0012】
前記排水システムは、前記予備基礎貫通管の外側の開口部を閉塞する外蓋と、前記外蓋から上方に向かって延び、上方端が地面よりも上方に位置する目印部材と、をさらに備えていることが好ましい。
【0013】
このことにより、水回り設備を増設する際、地中に埋没する予備基礎貫通管の外側端部の位置を迅速に把握することができる。したがって、上記排水システムによれば、増設作業に際し、掘削作業を容易に行うことができる。これにより、増設工事の手間および所要時間を軽減することができる。また、掘削の際に誤って予備基礎貫通管を破損してしまうことも防止することができる。
【0014】
前記排水システムは、前記予備基礎貫通管の内側の開口部を閉塞する内蓋と、前記内蓋の外側面に設けられた目印体と、をさらに備えていることが好ましい。
【0015】
上記排水システムによれば、例えば、予備基礎貫通管の内側端部が床下等に位置する場合であっても、当該内側端部の位置を見出しやすくなる。そのため、増設工事の際、予備基礎貫通管を容易に利用することができる。
【0016】
本発明に係る建物の排水システムの施工方法は、基礎を形成すると同時に、基礎を貫通するように基礎貫通管および予備基礎貫通管を配設する第1ステップと、前記第1ステップの前または後において、前記基礎の外側に排水管を設置する第2ステップと、前記基礎貫通管を用いて前記排水管に水回り設備を接続する第3ステップと、前記第3ステップの後であって水回り設備を増設する際に、前記予備基礎貫通管を利用して、増設される水回り設備を前記排水管に接続する第4ステップと、を備えた方法である。
【0017】
上記施工方法によれば、増設される水回り設備の排水用配管を、基礎を取り壊すことなく簡単な工事により配設することができる。また、増設工事が容易なものとなるため、工期を短縮することができる。さらに、基礎を取り壊さないため、増設工事による建物の強度低下を防止することができる。
【0018】
前記基礎貫通管には、トイレ用の第1基礎貫通管と、前記第1基礎貫通管よりも内径の小さな雑排水用の第2基礎貫通管とが含まれ、前記予備基礎貫通管の内径は、前記第1基礎貫通管の内径以上であり、前記第4ステップにおいて増設される水回り設備はトイレであってもよい。
【0019】
このことにより、前述の効果がより顕著に発揮される。
【0020】
前記第4ステップは、増設される水回り設備に接続される排水用配管を、前記予備基礎貫通管の内側に挿入し、前記予備基礎貫通管を介して前記基礎を貫通させ、前記排水管に接続する工程を含んでいることが好ましい。
【0021】
上記方法によれば、水回り設備の増設工事の際、排水用配管を予備基礎貫通管に挿通させるだけで、基礎の一部を取り壊すことなく、基礎を貫通する排水用配管を容易に実現することができる。
【0022】
また、上記施工方法によって施工された排水システムによれば、排水用配管は予備基礎貫通管の内側に挿入されただけなので、排水用配管を容易に取り替えることができる。そのため、上記排水システムによれば、増設工事だけでなく、排水用配管のメンテナンスも容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水回り設備を増設する際に、基礎の一部を取り壊すことなく排水用配管を敷設することが可能となり、大がかりな工事を行うことなく、水回り設備の増設を可能とする排水システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
《本実施形態における排水システム1の構成》
図1は、本実施形態に係る排水システム1の構成を示す平面図である。まずは、図1を参照して、本実施形態に係る排水システム1の構成について詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る排水システムの例として、家屋10内の水回り設備からの排水を屋外に排出する排水システムについて説明する。
【0026】
本実施形態に係る排水システム1は、基礎貫通管2と、予備基礎貫通管3と、連結管4と、排水ます5と、排水管6とを備えている。
【0027】
基礎貫通管2には、第1の内径を有するトイレ用の第1基礎貫通管2aと、第1の内径よりも小さい第2の内径を有する雑排水用の第2基礎貫通管2bとが含まれる。以下の説明では、これら第1基礎貫通管2aおよび第2基礎貫通管2bを総称して、基礎貫通管2と言う。なお、第1の内径および第2の内径の具体的数値は特に限定されないが、本実施形態では、第1の内径は75mm、第2の内径は50mmである。また、予備基礎貫通管3にも、異なる内径を有する複数の貫通管が含まれていてもよい。
【0028】
家屋10は、壁や仕切戸等(床材を除く)によって区画された複数の室を備えている。また、図1に一部切り欠いて示すように、平面視において、壁や仕切戸等と重なる位置に基礎20が配置されている。なお、ここで、室とは、側方を壁や仕切戸等(床材を除く)により取り囲まれた空間をいい、基礎20によって取り囲まれた空間も含まれることとする。
【0029】
図1に示すように、家屋10内には、キッチン11、風呂12、洗濯機13、洗面台14、トイレ15等の、複数の水回り設備が設けられている。前述した室は、キッチン11、風呂12、洗濯機13、洗面台14、トイレ15等の水回り設備が設置された室と、水回り設備が設置されていない室とに大別される。
【0030】
上述の各水回り設備が設置された各室には、基礎貫通管2が配設されている。詳細は後述するが、基礎貫通管2は、基礎20を貫通しており、家屋10の内外に架け渡されている。基礎貫通管2の内側端部26(図2参照)は、家屋10内において各水回り設備(キッチン11、風呂12、洗濯機13、洗面台14、トイレ15)に接続されている。
【0031】
基礎貫通管2の外側端部27(図2参照)には、連結管4の一端部が接続されている。各連結管4の他端部は、家屋10内の排水を集める排水ます5に接続されている。
【0032】
各排水ます5は、排水管6によって相互に連結されている。排水管6の終端は、宅地50と公道51との境界付近に設けられた公共ます7に接続されている。公共ます7は、公道51に埋設された下水道本管8と合流管9を介して接続されている。
【0033】
一方、水回り設備が設置されていない室の内、少なくとも一つ以上の室に、予備基礎貫通管3が設置されている。本実施形態では、予備基礎貫通管3は、水回り設備が設置されていない室の内、居室Aの側方に設けられた押入61,62と、居室Bとに配設されている。後述するが、予備基礎貫通管3も、家屋10の内外に架け渡され、基礎20(図2参照)を貫通している。なお、予備基礎貫通管3の外側端部37(図3参照)には、連結管4は接続されていない。
【0034】
以上が排水システム1の構成である。次に、図2を用いて基礎貫通管2について詳述する。
【0035】
《基礎貫通管2の詳細》
前述したように、基礎貫通管2には、内径の異なる第1基礎貫通管2aと第2基礎貫通管2bとが含まれる。しかし、第1基礎貫通管2aと第2基礎貫通管2bとは、内径が異なる点以外は共通している。そこで、以下では、第1基礎貫通管2aについて説明し、第2基礎貫通管2bの説明は省略する。また、第1基礎貫通管2aを単に基礎貫通管2と言う。
【0036】
図2は、家屋10内に設けられた水回り設備の一例であるトイレ15と、基礎貫通管2とを示す断面図である。図2に示すように、基礎貫通管2は、基礎20を貫通する様に配設されている。本実施形態では、基礎貫通管2は、いわゆるさや管となっており、その内側には可撓管22が挿入されている。ただし、基礎貫通管2は、それ自体が排水管となっていてもよい。
【0037】
基礎貫通管2は、基礎20が形成される際に、基礎20と共に配設される。具体的には、基礎貫通管2は、基礎20用のコンクリートが打設される前に配筋内に挿通され、コンクリートを打設することにより基礎20に固定される。基礎貫通管2の内側端部26は、家屋10の内部において上方に向かって延びている。基礎貫通管2の外側端部27は、地中に埋設されている。基礎貫通管2の材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂等を好適に用いることができる。ただし、基礎貫通管2の材料は塩化ビニル樹脂に限定されるわけではない。
【0038】
可撓管22は、蛇腹状に形成されており、可撓性を有している。可撓管22の内側端部28は、基礎貫通管2の内側端部26よりも上方に延びている。可撓管22の内側端部28は、トイレ15の排水口15aに連結されている。一方、可撓管22の外側端部29は、基礎貫通管2の外側端部27付近で連結管4に接続されている。連結管4は、上述のとおり、排水ます5に接続されている。
【0039】
なお、トイレ15以外の水回り設備(キッチン11、風呂12、洗濯機13、洗面台14、)と基礎貫通管2との構成も同様であるため、説明を省略する。次に、図3を用いて予備基礎貫通管3について詳述する。
【0040】
《予備基礎貫通管3の詳細》
図3に示すように、予備基礎貫通管3も基礎貫通管2と同様の構成を有している。図3に示す予備基礎貫通管3も、いわゆるさや管を構成しており、水回り設備の増設時に、その内側には可撓管32が挿通される。ただし、予備基礎貫通管3がそれ自体で排水管を構成してもよいことは勿論である。本実施形態では、予備基礎貫通管3は複数設けられている。それら複数の予備基礎貫通管3には、内径の異なる予備基礎貫通管3が含まれていてもよい。図3に示す予備基礎貫通管3はトイレ用の基礎貫通管であり、その内径は、第1基礎貫通管2aの内径(=第1の内径)以上である。
【0041】
本実施形態では、予備基礎貫通管3は塩化ビニル樹脂製である。ただし、予備基礎貫通管3の材料は特に限定されず、例えば金属等であってもよい。
【0042】
予備基礎貫通管3は、基礎貫通管2と同様、基礎20が形成される際に配設される。すなわち、予備基礎貫通管3は、基礎20用のコンクリートが打設される前に配筋内に挿通され、コンクリートを打設することにより基礎20に固定される。一方、可撓管32は、基礎貫通管2の可撓管22と異なり、予め配設されておらず、水回り設備(ここではトイレ)の増設時に予備基礎貫通管3内に配設される。そのため、水回り設備が増設されるまでは、予備基礎貫通管3のみが設けられた状態となり、予備基礎貫通管3の内部には可撓管22は配設されていない。
【0043】
予備基礎貫通管3の外側端部37は、地中に埋設されている。予備基礎貫通管3の外側端部37には、開口部33aを閉塞する外蓋33が設けられている。また、予備基礎貫通管3の内側端部36には、開口部34aを閉塞する内蓋34が設けられている。外蓋33および内蓋34は、予備基礎貫通管3が基礎20内に固定され、型枠を撤去した後に取り付けられる。外蓋33および内蓋34の材料としては、例えば、ゴム、プラスチック等を好適に用いることができる。ただし、外蓋33および内蓋34の材料は、それらに限定されるわけではない。
【0044】
《排水システムの施工方法》
次に、水回り設備の増設を含めた排水システム1の施工方法について説明する。
−家屋10の建設時−
まず、家屋10を建設する際の施工について説明する。家屋10の建設時には、基礎20を形成すると同時に、基礎20を貫通するように基礎貫通管2および予備基礎貫通管3を配設する。具体的には、基礎20用のコンクリートが打設される前に、配筋内に基礎貫通管2および予備基礎貫通管3を挿通させる。そして、コンクリートを打設することにより、基礎20を形成すると同時に基礎貫通管2および予備基礎貫通管3を基礎20に固定する。
【0045】
また、基礎20の形成の前または後において、基礎20の外側に排水管6を設置する。
【0046】
基礎20が形成された後、基礎20の型枠を撤去する。そして、予備基礎貫通管3の外側端部37の開口部33aに外蓋33を取り付ける。また、予備基礎貫通管3の内側端部36の開口部34aに内蓋34を取り付ける。外蓋33および内蓋34は、トイレ35を増設するまで、予備基礎貫通管3の両端部の開口部33a,34aにそれぞれ取り付けられている。
【0047】
一方、基礎貫通管2を利用して、キッチン11、風呂12、洗濯機13、洗面台14、およびトイレ15の各水回り設備を排水管6に接続する。なお、本明細書において、「排水管に接続する」とは、連結管4等を介して排水管6に間接的に接続する場合を含む意味である。
【0048】
以上が家屋10の建設時における施工である。次に、水回り設備の増設時における施工を説明する。
【0049】
−トイレ35の増設時−
本実施形態では、水回り設備の一例であるトイレ35を、図1に示す居室Aに隣接する押入61内に増設する場合について説明する。すなわち、介護用に家屋10をリフォームし、押入61として使用していたスペースに新たにトイレ35を増設する場合について説明する。
【0050】
トイレ35を増設する際、まず、屋外において、予備基礎貫通管3の外側端部37付近を掘削し、予備基礎貫通管3の外側端部37を露呈させる。そして、予備基礎貫通管3の外側端部37の開口部33aに取り付けられた外蓋33を取り外す。
【0051】
一方、屋内では、まず、押入61内の床部材64上に、トイレ35を設置する(図4参照)。そして、トイレ35の排水口35a付近の床部材64の一部を切り欠き、挿通孔64aを形成する。そして、予備基礎貫通管3の内側端部36の開口部34aに設けられた内蓋34を取り外す(図3参照)。その後、挿通孔64aから、可撓管32を予備基礎貫通管3に向かって挿入する。可撓管32が予備基礎貫通管3に所定量挿入された後、可撓管32の内側端部38をトイレ35の排水口35aに連結する。
【0052】
次に、屋外において、屋内側から予備基礎貫通管3内に挿入され、予備基礎貫通管3の外側端部37付近まで到達した可撓管32の外側端部39を、固定ナット30により締め付け、位置決め固定する。そして、可撓管32の外側端部39に連結管4の一端を接続する。
【0053】
次に、図1に示すように、地中に埋設された排水管6の押入61付近に、排水ます5を設置する。そして、前述の連結管4の他端を排水ます5に接続する。これにより、可撓管32の外側端部39は、連結管4および排水ます5を介して排水管6に接続される。
【0054】
以上のような工程により、押入61内にトイレ35が増設され、予備基礎貫通管3を利用してトイレ35が排水管6に接続される。すなわち、増設されたトイレ35は、排水用配管31(=可撓管32、連結管4および排水ます5)を介して排水管6に接続される。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る排水システム1は、水回り設備(キッチン11、風呂12、洗濯機13、洗面台14、トイレ15)に接続される基礎貫通管2の他に、予め基礎20を貫通するように配設された予備基礎貫通管3を備えている。そのため、本排水システム1によれば、水回り設備(例えば、トイレ35)を増設する際に、予備基礎貫通管3を利用することによって、基礎20を取り壊すことなく排水用配管31を配設することができる。このことにより、大がかりな工事を行うことなく、水回り設備を増設することが可能となる。したがって、水回り設備の増設に際し、工事の手間およびコストを削減することができる。また、増設工事が容易なものとなるため、工事期間を短縮することができる。さらに、基礎20を取り壊さないため、増設工事による建物の強度低下を防止することができる。
【0056】
汚水は雑排水に比べて流れにくい。そのため、一般的に、トイレに接続されるトイレ用の排水用配管は、汚水を円滑に流すため、内径が大きいことが好ましい。しかし、内径が大きいと外径も大きくなる。そのため、従来の排水システムにおいてトイレを増設するためには、基礎を大幅に取り壊さなければならず、工事がより大がかりになるおそれがあった。しかし、本排水システム1では、トイレ用の第1基礎貫通管2aの内径以上の内径である予備基礎貫通管3が、基礎20を形成する際に基礎20を貫通するように配設されている。そのため、本排水システム1によれば、基礎20を大幅に取り壊すことなく大径の予備基礎貫通管3を用いてトイレ35を増設することが可能となる。したがって、本排水システム1によれば、基礎20の一部を取り壊すことなく排水用配管31(=可撓管32、連結管4および排水ます5)を配設することができるという上述の効果がより顕著に発揮されることとなる。
【0057】
本排水システム1では、予備基礎貫通管3がいわゆるさや管となり、この予備基礎貫通管3の内側に、将来増設される水回り設備の排水用配管の一部(すなわち可撓管32)を配設するためのスペースが確保される。そのため、増設工事の際、可撓管32を予備基礎貫通管3に挿通させるだけで、排水用配管(可撓管32)を基礎20に貫通させることが可能となる。したがって、本排水システム1によれば、容易に水回り設備を増設することが可能となる。
【0058】
また、可撓管32の選択を、基礎20の形成時ではなく、水回り設備の増設の際に行うことができる。ここで、可撓管32には、予備基礎貫通管3の内径以下の外径を有する管である限り、任意の管を選択することができる。そのため、水回り設備の増設の際における可撓管32の選択の自由度が大きくなる。なお、可撓管32の代わりに、可撓性を有しない管を用いることも可能である。
【0059】
さらに、本実施形態によれば、予備基礎貫通管3の内側に配される可撓管32を容易に取り替えることができる。そのため、本排水システム1によれば、増設工事だけでなく、排水用配管31(特に可撓管32)のメンテナンスも容易に行うことができる。
【0060】
本排水システム1の予備基礎貫通管3の開口部は、増設工事を行うまで蓋(外蓋33,内蓋34)によって閉塞されている。そのため、本排水システム1によれば、予備基礎貫通管3内に土や埃等が混入することを防止することができる。
【0061】
また、本排水システム1では、居室Aに隣接する押入61,62に予備基礎貫通管3が配設されている。そのため、基礎20を取り壊すことなく、居室Aに隣接する押入61,62に、トイレ35を増設することが可能となる。このことにより、家屋10を拡大する等の大がかりな工事を行うことなく、例えば、高齢者や被介護者の寝室のすぐ側にトイレ35を増設することが可能となる。したがって、このような場合であれば、高齢者や被介護者が寝室からトイレ15まで移動する場合にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0062】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る排水システム1は、増設工事の際の手間を軽減すべく、予備基礎貫通管3の蓋(外蓋33,内蓋34)に視認性を向上させる処理を施したものである。以下、詳述するが、外蓋33,内蓋34以外の部分については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
図5(a),(b)に示すように、本実施形態の外蓋33には、目印部材41が取り付けられている。目印部材41は、外蓋33から上方に向かって延びており、目印部材41の上方端は地面よりも上方に位置している。なお、図5では、目印部材41は、外蓋33と一体形成されているが、別体形成されていてもよい。また、目印部材41の形状は図5のものに限られない。
【0064】
図6(a),(b)に示すように、本実施形態の内蓋34の外側面(予備基礎貫通管3と反対側の面)には、目印体として反射テープ40が貼り付けられている。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る排水システム1では、外蓋33には、上端部が地面よりも上方に位置する目印部材41が取り付けられている。そのため、水回り設備を増設する際、地中に埋まっている予備基礎貫通管3の外側端部37の位置を迅速に把握することができる。したがって、本排水システム1によれば、増設作業に際し、掘削作業を容易に行うことができる。これにより、増設工事の手間および所要時間を軽減することができる。また、掘削の際に誤って予備基礎貫通管3を破損してしまうことを防止することができる。
【0066】
また、本排水システム1では、内蓋34の外側面に反射テープ40が貼り付けられている。そのため、予備基礎貫通管3の内側端部36が床下等に位置する場合であっても、例えば、懐中電灯等により床下に光を投射することで、予備基礎貫通管3の内側端部36の位置を見つけ出し易くなる。そのため、増設工事の際、予備基礎貫通管3を容易に利用することができる。
【0067】
なお、反射テープ40の形状は本実施形態のものに限られず、いかなる形状であってもよい。また、内蓋34の外側面には、反射テープ40を貼り付ける代わりに、例えば反射板等の他の反射部材が取り付けられていても良い。さらに、反射テープ40を貼り付ける代わりに、内蓋34の外側面に目立つ色(例えば白色、蛍光色等)が着色されていてもよい。また、内蓋34自体が目立つ色の材料で形成されていてもよい。本明細書の「目印体」には、目立つ形状のもの、目立つ色のもの、光を反射するもの等が含まれる。
【0068】
<第3実施形態>
第1および第2実施形態では、外蓋33は、基礎20のコンクリートの打設後、型枠を取り外してから後付けで取り付けることとしていた。これに対し、第3実施形態では、外蓋33は、予め予備基礎貫通管3内に取り付け可能に形成されている。
【0069】
図7に示すように、本実施形態に係る外蓋33は、予備基礎貫通管3の内周面に沿う外周面を備え、断面コ字状に形成されている。また、外蓋33の凹面の中央部には、装着用の取っ手42が取り付けられている。外蓋33は、取っ手42を押し引きすることにより、予備基礎貫通管3内に着脱される。
【0070】
以上のような構成により、外蓋33を予備基礎貫通管3内に予め取りつけておき、予備基礎貫通管3を設置することが可能となる。これにより、コンクリート打設後に外蓋33を取り付ける手間を削減することができると共に、外蓋33の付け忘れを防止することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る外蓋33においても、第2実施形態のような目印部材41を取り付けることが可能である。以下、本実施形態の変形例として、目印部材41を取り付けた場合について説明する。
【0072】
図8(a),(b)に示すように、目印部材41は、取っ手42の外側端部に取り付けられている。目印部材41は、取っ手42とは略直交する方向に取り付けられ、上方に向かって延びている。目印部材41の上方端は、地面よりも上方に位置している。
【0073】
なお、図8(a),(b)では、取っ手42と目印部材41とは別体に形成されている。しかし、これらは一体に形成されていてもよい。また、外蓋33と取っ手42と目印部材41とが一体形成されていてもよい。
【0074】
取っ手42および目印部材41の材料としては、例えば、ゴム、プラスチック等を好適に用いることができる。
【0075】
当該変形例に係る排水システム1によっても、水回り設備を増設する際、地中に埋まっている予備基礎貫通管3の外側端部37の位置を迅速に把握することができる。したがって、増設作業に際し、掘削作業を容易に行うことができ、増設工事の手間および所要時間を軽減することができる。また、掘削の際に誤って予備基礎貫通管3を破損してしまうことを防止することができる。
【0076】
なお、上記各実施形態では、予備基礎貫通管3の内部に可撓管32が設けられ、予備基礎貫通管3と可撓管32とが二重管構造を形成していた。しかし、予備基礎貫通管3自体が排水用配管31の一部を構成していてもよい。すなわち、予備基礎貫通管3の内部に排水等が流通するようになっていてもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、予備基礎貫通管3内の可撓管32は、連結管4および排水ます5を介して排水管6に接続されていた。しかし、可撓管32は、排水管6に直接接続されてもよく、また、排水ます5のみを介して排水管6に接続されてもよい。
【0078】
さらに、上記各実施形態では、予備基礎貫通管3は、押入61,62と、居室Bに配設されていた。しかし、予備基礎貫通管3は、これ以外の水回り設備が設置されていない室に配設されていても勿論よい。また、排水システム1が備える予備基礎貫通管3の数は、上記各実施形態のものに限定されず、1つまたは2つでもよく、また、4以上設けてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、基礎貫通管2および予備基礎貫通管3として、略90度湾曲した曲管を用いていた。しかし、基礎貫通管2および予備基礎貫通管3の形状はこれらに限られない。例えば、略45度湾曲したものであってもよく、その他の角度で湾曲するものであってもよい。また、可撓管22,32も蛇腹状のものに限られない。
【0080】
さらに、上記各実施形態では、可撓管22,32をそれぞれトイレ15,35の排水口15a,35aに直接接続することとしていた。しかし、可撓管22,32とトイレ15,35の排水口15a,35aとを直接接続せず、他の配管を介して接続することとしてもよい。
【0081】
《用語の定義》
なお、本明細書において、「水回り設備の増設」とは、例えば、建物に人が居住するようになった後、水回り設備を新たに設置する場合をいう。また、1または2以上の水回り設備が使用されるようになってから、新たに水回り設備を設置する場合も、ここでいう「増設」に含まれる。もちろん、建物のリフォームに伴って水回り設備を新たに設置する場合も、ここでいう「増設」に含まれる。
【0082】
「水回り設備」とは、排水管等を通じた排水が必要となる設備をいう。
【0083】
「接続」とは、管と管とを直接接続する場合だけでなく、他の管を介して間接的に接続する場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明は、建物内の水回り設備からの排水を屋外に排出する排水システムについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態に係る排水システムを備えた家屋の一階平面図である。
【図2】トイレと基礎貫通管との関係を示す断面図である。
【図3】増設用貫通配管の構成を示す図である。
【図4】増設するトイレと予備基礎貫通管との関係を示す断面図である。
【図5】(a),(b)は第2実施形態に係る外蓋を示す図である。
【図6】(a),(b)は第2実施形態に係る内蓋を示す図である。
【図7】第3実施形態に係る外蓋を示す図である。
【図8】(a),(b)は変形例に係る外蓋を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 排水システム
2 基礎貫通管
3 予備基礎貫通管
4 連結管
5 排水ます
6 排水管
10 家屋(建物)
15 トイレ(水回り設備)
15a 排水口
20 基礎
31 排水用配管
32 可撓管(排水用配管)
33 外蓋
33a 開口部
34 内蓋
34a 開口部
35 トイレ(増設される水回り設備)
35a 排水口
40 反射テープ(目印体)
41 目印部材
42 取っ手
61 押入

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎を有する建物の内部の水回り設備からの排水を建物の外部に排出する排水システムであって、
前記基礎が形成される際に前記基礎を貫通するように配設され、前記水回り設備に接続され、または、前記水回り設備に接続された排水用配管が挿通された基礎貫通管と、
前記基礎が形成される際に前記基礎を貫通するように配設され、水回り設備に接続されておらず、かつ、水回り設備に接続された排水用配管が挿通されていない予備基礎貫通管と、
を備えた建物の排水システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の排水システムにおいて、
前記基礎貫通管には、トイレ用の第1基礎貫通管と、前記第1基礎貫通管よりも内径の小さな雑排水用の第2基礎貫通管とが含まれ、
前記予備基礎貫通管の内径は、前記第1基礎貫通管の内径以上である建物の排水システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物の排水システムにおいて、
前記予備基礎貫通管の外側の開口部を閉塞する外蓋と、
前記外蓋から上方に向かって延び、上方端が地面よりも上方に位置する目印部材と、
をさらに備えた建物の排水システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の建物の排水システムにおいて、
前記予備基礎貫通管の内側の開口部を閉塞する内蓋と、
前記内蓋の外側面に設けられた目印体と、
をさらに備えた建物の排水システム。
【請求項5】
建物の排水システムの施工方法であって、
基礎を形成すると同時に、基礎を貫通するように基礎貫通管および予備基礎貫通管を配設する第1ステップと、
前記第1ステップの前または後において、前記基礎の外側に排水管を設置する第2ステップと、
前記基礎貫通管を用いて前記排水管に水回り設備を接続する第3ステップと、
前記第3ステップの後であって水回り設備を増設する際に、前記予備基礎貫通管を利用して、増設される水回り設備を前記排水管に接続する第4ステップと、
を備えた建物の排水システムの施工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の建物の排水システムの施工方法において、
前記基礎貫通管には、トイレ用の第1基礎貫通管と、前記第1基礎貫通管よりも内径の小さな雑排水用の第2基礎貫通管とが含まれ、
前記予備基礎貫通管の内径は、前記第1基礎貫通管の内径以上であり、
前記第4ステップにおいて増設される水回り設備はトイレである、建物の排水システムの施工方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の建物の排水システムの施工方法において、
前記第4ステップは、増設される水回り設備に接続される排水用配管を、前記予備基礎貫通管の内側に挿入し、前記予備基礎貫通管を介して前記基礎を貫通させ、前記排水管に接続する工程を含んでいる建物の排水システムの施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−190284(P2008−190284A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28074(P2007−28074)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】