説明

建物の経年変化を調査するためのシステム、方法、及びコンピュータ・プログラム

【課題】 建物の経年変化を調査するためのシステム、方法、及びコンピュータ・プログラムを提供する。
【解決手段】 全方位画像を撮影するための全方位画像撮影手段と、全方位画像をパノラマ画像に変換するための画像変換手段と、パノラマ画像の少なくとも一部を表示装置の画面上に表示させ、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された、建物の状況を表す1つ又は複数の識別情報を、画面上に表示させるための表示制御手段と、パノラマ画像と1つ又は複数のレイヤーに入力された1つ又は複数の識別情報と入力手段によって入力され、1つ又は複数の識別情報に関連付けられた詳細状況情報とを保存するための記憶手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の経年変化を調査するためのシステム、方法、及びコンピュータ・プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、建築後の経年変化によって外装及び内装が劣化し、剥離、ひび割れ、剥落、色あせ等の損傷や、柱又は床等の傾斜が発生することがある。このような損傷等は、例えば賃貸物件については、賃貸人又は賃借人のいずれがその発生の責任を負うのかということについて退去の際に問題となることが多い。
【0003】
現在、建物の損傷等の状況についての調査は、現場で調査員が野帳と呼ばれるスケッチブックに建物の平面図を記載し、又は調査対象の図面があればそれを持参し、その図面に建物の損傷等の状況を記入することによって行われている。野帳は、現場で損傷等の形状を目視し、寸法を計測して、それらの結果を図面に直接記入することによって完成する。損傷等の状況は、野帳の作成と平行して写真撮影される。このようにして野帳を作成し、写真を撮影した後、調査員は、事務所等に持ち帰った野帳及び写真を参照しながら、CAD等によって損傷等の状況が記録された図面を作図してデジタルデータ化するとともに、損傷等の状況を記録した調査票を作成する。また、撮影された写真は、写真台帳として整理され、保管される。
【0004】
しかしながら、こういった方法では、調査員の目視に依存するため損傷等の正確な描写が難しく、調査員によって野帳の記入の仕方に差が生じること、調査結果をその場で整理したり確認したりできないこと、情報が野帳から写真台帳まで段階的に伝達されることによって、例えば数値の入力ミス等のヒューマンエラーが発生しやすく、入力やチェックに膨大な時間がかかること、実際の建物とCADで作成された図面とでは必然的に形状の差が生じるため、損傷部分の特定が難しい場合があること、といった多くの問題がある。
【0005】
建物等に関する調査に伴う課題を解決することを目的とした先行技術として、以下のものが提案されている。
特許文献1には、調査対象となる構造物の外壁を撮像してモニター画面に表示し、その撮像現場において外壁の状態を調査するための外壁調査装置が開示される。この装置は、構造物の外壁の撮像を行う撮像手段と、撮像の結果として撮像画像を記憶する撮像画像記憶手段と、モニター画面を有し、撮像画像と同一位置かつ同一縮尺に関連付けられた画像データから成る描画シートを、撮像画像上に透視可能に重ねて前記モニター画面に表示し、描画シート上に、撮像画像に基づく調査結果又は診断結果を描画するための描画手段と、描画結果の描画シートを記憶する調査結果記憶手段とを備える。描画シートには、画素レートに基づく所定間隔毎にグリッドが表示されており、調査によって発見された損傷等の大きさ(長さや面積)を実測できる。画素レートを求めるための種々の手段は、明細書に開示されている。描画手段については、現場で撮像画像の損傷部等を透視しながら、その上に重ねた描画シートにその損傷部等の形態(長さや面積等の状態)をそのまま描画できるので、正確に描画できるとされる。また、撮像画像をバックグラウンドとして、透明の描画シートから成るレイヤーを1以上重ね、その描画シートの上に調査・診断のための描画ができる。
【0006】
特許文献2には、構造物に形成された欠陥の調査装置が開示される。この装置は、建物の外壁を分割撮影した画像とスキャナで取り込んだその建物の全体図面との相対位置関係を決定することによって、撮影した画像を、正確な寸法の全体図面に基づいて正投影画像に変換する。正投影画像を表示するレイヤーには、欠陥を表すオブジェクトデータを表示するレイヤーを重ね、オブジェクトレイヤーに、欠陥やひび割れ等の位置を指定して、線や面や測定値示す文字等を作成する。トレースした線の長さや面積は、自動的に算出される。各分割画像のオブジェクトデータを、全体図面の位置情報に基づいて同一座標上に配置し、それを全体図面に重ねたオブジェクトレイヤーに配置する。オブジェクト同士は、必要に応じてそれぞれ結合する。建物の全体図面に変えて、撮影画像又はCADデータを用いることもできる。
【0007】
特許文献3には、建築設備の改修診断報告書を作成するシステムが開示される。このシステムにおいては、建物の設備機器の画像をデジタルカメラで撮影し、撮影と同時に、各画像と対応させて属性情報(場所、室名、機器、機器の状況等)を携帯情報端末で入力する。写真と入力データとの同期は、例えばカメラのカウンタを携帯端末に書き出す等の種々の方法で行われる。次いで、これらのデータを用いてコメント付き写真集を作成し、それを参照しながら詳細な診断結果を作成する。このようして作成された診断報告書のファイルは、文字データと画像データとに分けられている。印刷の際には、それぞれを別個に処理し、展開された画像イメージと文字データをシステム上で合成して、印刷する。
【0008】
【特許文献1】特開2003−214829
【特許文献2】特開2004−318790
【特許文献3】特許第3460042号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの技術を含む先行技術においては、以前であればフィルムカメラを、又は近年ではデジタルカメラを用いて、調査対象の建物等を撮影する。これらの先行技術を建物の経年変化調査に用いる場合には、建物全体の現時点での損傷等を残さず撮影し、損傷等の有無を漏れなく記録するために、多くの枚数の画像が必要となる。特に、例えば家屋の部屋等の狭い場所について損傷等の有無を記録する場合、従来の一般的なデジタルカメラ等を用いてすべてを撮影しようとすると、撮影対象との十分な距離を確保することが難しいため、多くの枚数の画像が必要になる。広角レンズによってより広い範囲を撮影することも考えられるが、この場合でも複数枚の画像が必要になるとともに、広角画像では正対位置以外の損傷等部分の確認が困難になり、全体写真と拡大写真に分けて撮影せざるを得ず、損傷等の位置の特定も不明確になるおそれがある。
【0010】
また、多くの枚数の画像によって損傷等の有無を記録する場合には、建物の全体像と損傷等との位置関係、撮影位置と損傷等との位置関係、損傷等同士の関連性を把握することが難しい。特に、例えば内装材が張り替えられた場合などのように環境が変化した場合には、経年変化の状況を調査するために現在の状況を以前に調査され保存されていた調査結果と比較しようとしても、正確な比較ができないおそれがある。正確な比較を行う場合には、撮影された画像の撮影位置、基準位置、画角、損傷箇所の位置等の関係を特定するための処理を別途行うことが必要になるため、全体処理が煩雑になる。
【0011】
また、実際の調査では、労力及びコストの削減のため、目視によって損傷等のある部分を確認し、その部分の画像のみ撮影することも考えられる。しかしながら、このような場合には、損傷等が見逃され、記録漏れが生じるおそれがある。
【0012】
さらに、多くの画像を用いて全体の損傷等の有無を記録し、これらの画像を経年変化調査のための基礎情報として用いる場合には、一部の画像のみが改ざんされてもそれが判明しにくいおそれがある。
【0013】
さらに、従来技術による経年変化の調査結果は、記載内容及び図面が専門的であり、一般人には理解が難しい場合がある。
【0014】
本発明の目的は、建物の状況、特に家屋の部屋等といった狭い場所の内部全体の状況を一枚の画像に一括して記録し、損傷等の位置及び形状等を特定するデータを現場で当該画像上に直接入力し、さらにそれらのデータを元の画像と結合させて別の画像として保存できるようにするによって、少ないデータ量で建物の経年的な変化が容易に判別可能であり、調査の客観性が担保されるとともに、専門知識のない一般人でも調査結果の把握が容易な、建物の経年変化を調査するためのシステム、方法、及びコンピュータ・プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、建物(例えば、家屋の部屋の内部)を含む全方位画像を撮影するための全方位画像撮影手段と、全方位画像をパノラマ画像に変換するための画像変換手段と、パノラマ画像の少なくとも一部を表示装置の画面上に表示させ、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された建物の状況(例えば、建物の損傷及び傾斜の位置及び形状)を表す1つ又は複数の識別情報(例えば、図形データ又はテキストデータ)を画面上に表示させるための表示制御手段と、パノラマ画像と、1つ又は複数の識別情報が入力された1つ又は複数のレイヤーと、入力手段によって入力され1つ又は複数の識別情報に関連付けられた状況の詳細な情報(例えば、建物の損傷及び傾斜の状況に関する詳細な情報、以下「詳細状況情報」ともいう)とを保存するための記憶手段とを含む、建物の経年変化を調査するためのシステムを提供する。本システムは、異なる時点における建物の状況の変化を比較するために、当該異なる時点におけるそれぞれの建物の状況に関する情報を現場で記録し、保存できることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るシステムはさらに、パノラマ画像の少なくとも一部における任意の範囲が選択されたことに応答して、パノラマ画像と1つ又は複数の識別情報が入力された1つ又は複数のレイヤーとを選択された任意の範囲内で結合し、1つ又は複数の識別情報を含む任意の範囲の切出画像を生成するための切出画像生成手段を含む。切出画像生成手段によって生成された切出画像は、記憶手段に保存される。本発明に係るシステムはさらに、建物の状況の拡大画像を撮影する拡大画像撮影手段を含む。撮影された拡大画像は、表示制御手段によって表示装置の画面上に、例えばパノラマ画像の一部の上に、表示される。切出画像は拡大画像を含むものとすることもできる。1つ又は複数の識別情報に関連付けられた詳細状況情報と、パノラマ画像の属性情報とは、表示制御手段によって表示装置の画面上の所定の領域に表示される。
【0017】
本発明の別の態様は、建物を含む全方位画像が撮影される画像撮影ステップと、全方位画像がパノラマ画像に変換される画像変換ステップと、パノラマ画像の少なくとも一部が表示装置の画面上に表示され、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された、建物の状況を表す1つ又は複数の識別情報が、画面上に表示される表示ステップと、パノラマ画像と、1つ又は複数の識別情報が入力された1つ又は複数のレイヤーと、入力手段によって入力され1つ又は複数の識別情報に関連付けられた詳細状況情報とが記憶手段に保存される記憶ステップと、パノラマ画像の少なくとも一部について、1つ又は複数の識別情報が表示された1つ又は複数のレイヤーと、1つ又は複数の識別情報が入力された時点と異なる別の時点において入力された別の1つ又は複数の識別情報が表示された、1つ又は複数のレイヤーとは別の1つ又は複数のレイヤーとが、パノラマ画像の少なくとも一部の上に表示されるステップとを含む、建物の経年変化を調査するための方法を提供する。
【0018】
本発明に係る方法は、さらに、パノラマ画像の前記少なくとも一部における任意の範囲が選択される範囲選択ステップと、範囲が選択されたことに応答して、パノラマ画像と1つ又は複数の識別情報が入力された1つ又は複数のレイヤーとが選択された任意の範囲内で結合され、1つ又は複数の識別情報を含む任意の範囲内の切出画像が生成される切出画像生成ステップとを含む。本発明に係る方法は、さらに、建物の状況の拡大画像が撮影される拡大画像撮影ステップと、拡大画像が表示装置の画面上に表示されるステップとを含む。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、建物を含む全方位画像がパノラマ画像に変換される画像変換ステップと、前記パノラマ画像の少なくとも一部が表示装置の画面上に表示され、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された、建物の状況を表す1つ又は複数の識別情報が、画面上に表示される表示ステップと、パノラマ画像と、1つ又は複数の識別情報が入力された1つ又は複数のレイヤーと、入力手段によって入力され1つ又は複数の識別情報に関連付けられた詳細状況情報とが記憶手段に保存される記憶ステップと、パノラマ画像の少なくとも一部について、1つ又は複数の識別情報が表示された1つ又は複数のレイヤーと、1つ又は複数の識別情報が入力された時点と異なる別の時点において入力された別の1つ又は複数の識別情報が表示された、1つ又は複数のレイヤーとは別の1つ又は複数のレイヤーとが、パノラマ画像の少なくとも一部の上に表示されるステップとを含む処理をコンピュータに実行させるための命令を含む、建物の経年変化を調査するためのコンピュータ・プログラムを提供する。
【0020】
本発明に係るコンピュータ・プログラムは、パノラマ画像の少なくとも一部の任意の範囲が選択される範囲選択ステップと、範囲が選択されたことに応答して、パノラマ画像と1つ又は複数の識別情報が入力された1つ又は複数のレイヤーとが選択された任意の範囲内で結合され、1つ又は複数の識別情報を含む任意の範囲内の切出画像が生成される切出画像生成ステップとをさらに含む処理をコンピュータに実行させるための命令を含む。
【0021】
本発明によれば、一枚の全方位画像によって調査対象の全体を一括して記録し保存することができるため、建物の損傷等の状況の記録漏れを防止することができる。また、全方位画像を用いることによって、損傷等の状況と、時間の経過によって変化しない周囲の固定部位との両方を一枚の画像に記録することができるため、経年により環境が変化した場合でも損傷等の有無や位置の把握が容易である。
【0022】
また、調査対象に「損傷等がない」ことを記録しておくことも容易である。すなわち、従来の技術では、「損傷等がない」ことや、「損傷等がない位置」を正確に記録しておくためには、多くの枚数の画像が必要となるが、本発明によれば、一枚の画像に損傷等の位置及び形状等の情報を一括して記録し保存することができるため、損傷等が存在する位置、形状、及びその内容のみならず、損傷等が存在しないという情報も容易に管理することが可能になる。
【0023】
また、全方位画像を用いれば、一枚の画像で全体の損傷等の状況を記録し保存することができるため、データ容量を大きく削減することができる。
【0024】
本発明によれば、調査現場で損傷等の位置及び形状を表す図形及びテキストを直接入力して記憶装置に保存し、入力した結果を表示装置の画面上で見ることができるため、調査結果をその場で確認したり修正したりすることが容易であり、損傷等の見落とし、記入漏れ等の発生を防止することができる。
【0025】
本発明によれば、損傷等の位置及び形状の情報が対応する建物の画像上に表示されるとともに、表示される損傷等の位置及び形状が、損傷等の詳細な情報と関連付けて保存され、その詳細な情報も画面上に表示されるため、建物の調査や図面の見方について専門知識のない一般人でも、詳細な損傷等の内容を容易に把握することができる。また、損傷等が拡大して撮影された拡大画像をパノラマ画像の一部と共に画面上に表示させることができるため、損傷等の詳細な形状等の把握が容易である。
【0026】
本発明によれば、任意の範囲を選択して、全体画像におけるその範囲の画像と、その範囲に対応する建物の損傷等の状況が記録されたレイヤーとを結合し、損傷等の形状及び位置が表示された切出画像として保存することができる。このような切出画像は、損傷等とと共にその損傷等を撮影した時点の周囲の状況が記録されており、容易に改ざんすることができないため、例えば賃貸人及び賃借人の双方がこの切出画像を所有することによって、契約更新又は解約時の紛争を防止することができる。
【0027】
さらに、近年、契約関係書類、設計・施工関係書類、施工図又は写真などの情報を含む、いわゆる「家歴書」等によって、建物の新築時から増改築時までの情報を一元的に蓄積することの必要性が提唱されており、本発明によれば、本発明に係るシステムを用いて新築時や増改築時等の施工過程を複数の時点で記録し、保存することにより、こういった書類を容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る、建物の経年変化を調査するためのシステム、方法、及びプログラムについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書において「経年変化」というときは、経年による建物の劣化等の変化だけでなく、例えば新築時又は増改築時等における施工過程の変化など、時間の経過と共に建物が変化することを含むものとする。
(1)本発明の一実施形態に係るシステムの構成及び動作概要
図1は、本発明の一実施形態に係るシステムの構成を示す。本システムは、全方位画像撮影手段と、画像変換手段と、表示制御手段と、入力手段と、記憶手段とを含んで構成することができる。本システムは、さらに、切出画像生成手段と、拡大画像撮影手段とを含んで構成することができる。
【0029】
全方位画像撮影手段は、調査の現場に持ち込んで、調査対象の建物を含む周囲360°の円画像を現場で撮影するためのものである。例えば調査対象が家屋の部屋の内部の場合には、全方位画像撮影手段によって、室内の壁、天井、床等を含む内部のほぼすべての部位が撮影された一枚の画像を生成することができる。全方位画像撮影手段によって撮影された円形の全方位画像は、画像変換手段によって周囲360°が記録された矩形のパノラマ画像に変換される。
【0030】
表示制御手段は、画像変換手段によって変換されたパノラマ画像の少なくとも一部の画像をコンピュータの表示装置の画面上に表示させるとともに、調査員によって入力された後述の識別情報を画面上に表示させるためのものである。表示制御手段によって、拡大画像、詳細状況情報、及び画像の属性情報も表示される。なお、本明細書において「状況」は建物の「損傷等」の状況を含み、「損傷等」は建物の部位の損傷及び傾斜を含むものとする。
【0031】
入力手段は、調査員が、建物の損傷等の形状及び位置等を表す図形データ及び/又は損傷等の番号等を表すテキストデータを、表示装置上に表示されたパノラマ画像の少なくとも一部の上に重ねられた透明なレイヤーに入力するためのものである。さらに、入力手段は、調査員が、表示装置に表示されたパノラマ画像に対応する建物の損傷等の状況について詳細な情報を入力するためのものである。入力手段によってレイヤーに入力された図形データ及び/又はテキストデータと損傷等の詳細な情報とは、入力順に損傷等に付与されるID番号によって互いに関連付けられる。この関連付けにより、例えば画面上に表示された画像上の損傷等を表す図形データ若しくはテキストデータをタッチペン又はマウスによって選択する、又は、図形データ若しくはテキストデータの上にカーソルを置く等の操作によって、損傷等がどこに存在し、どの損傷等がどのような形状や大きさをしており、その損傷等の詳細な状況はどのようになっているかを、画面上で容易に確認することができるようになる。
【0032】
記憶手段は、本発明の実施に必要な種々のファイル又はデータを格納又は保存するためのものである。記憶手段は、室名マスタDB、部位マスタDB、損傷等種類マスタDB、仕上げマスタDB、及び、必要に応じてその他のマスタDB(例えば、調査員マスタDB、建物用途マスタDB、構造マスタDB、用地マスタDB、建物マスタDB等)と、建物情報フォルダ、全方位画像フォルダ、パノラマ画像フォルダ、拡大画像フォルダ、詳細損傷等情報フォルダ、切出画像フォルダ、調査票データフォルダ、履歴フォルダ、及びその他必要に応じてその他のフォルダとを含むものとすることができる。これらのデータベース及びフォルダに格納されるファイル又はデータについては、以下に適宜説明される。
【0033】
切出画像生成手段は、パノラマ画像と図形データ及びテキストデータが表示されたレイヤーとを、入力手段を用いて調査員によって選択された任意の範囲で結合し、その範囲の画像すなわち図形データ及びテキストデータが記録された切出画像を、例えばJPEG画像、GIF画像、又はBMP画像などの画像ファイルとして生成するための手段である。生成された切出画像は、記憶手段の切出画像フォルダに格納される。切出画像は、表示装置の画面上に表示させることもできるし、経年変化調査のための写真台帳を作成するために用いることもできる。切出画像は、建物の損傷等の位置及び形状を表す図形データ及びテキストデータを含む画像として保存されるため、損傷等の箇所を容易に改ざんすることが不可能な経年変化調査のための基礎データとすることができる。
【0034】
拡大画像撮影手段は、全方位画像又はパノラマ画像とは別に、建物の損傷等の画像を拡大して撮影するための手段である。拡大画像撮影手段によって撮影された拡大画像は、パノラマ画像又はその少なくとも一部の画像と共に画面上に表示させることができ、これにより損傷等をより詳細に画面上で確認することができる。また、パノラマ画像と同様に、拡大画像の上に重ねられたレイヤーに図形データ及び/又はテキストデータを入力し、それらのデータを状況の詳細な情報と関連付けることができる。さらに、パノラマ画像の一部と、その一部における損傷等の拡大画像と、損傷等の位置及び形状が入力された1つ又は複数のレイヤーとを結合し、任意の範囲を切り出して切出画像として記憶手段に格納しておくこともできるため、後の調査において、経年変化の様子をより確実に捉えることができる。
【0035】
(2)ハードウェア構成
本発明は、図2において示されるような、全方位画像を撮影するための全方位カメラ1と、拡大画像を撮影するための、例えばデジタルカメラ等のカメラ2と、例えば携帯型コンピュータ等の情報処理装置3とによって構成されるシステムによって実現することができる。情報処理装置3には、本発明の機能又は処理を実現することができるコンピュータ・プログラムがインストールされる。本発明の一実施形態に係る情報処理装置3は、汎用的なコンピュータと同様な構成であり、オペレーティング・システム、アプリケーション・プログラム、情報処理装置で処理される処理データ等が格納されるハードディスク31と、制御プログラム等が格納されるROM(Read Only Memory)32と、処理データ等がロードされるRAM(Random
Access Memory)33と、全体を制御するCPU(Central Processing Unit)34と、タッチペン、タブレット、キーボード、マウス等の入力手段35と、タッチパネル、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成される表示装置36と、光ディスク等を駆動するディスク・ドライブ37と、外部と通信するための通信I/F38と、スピーカ39と、内蔵バッテリ及び/又は外部バッテリ(図示せず)とを備えるものとすることができる。以上のような情報処理装置3に本発明の機能又は処理を実現させるコンピュータ・プログラムは、光ディスク等の記録媒体やネットワークを介して配布され、ディスク・ドライブ37や通信I/F38からハードディスク31にインストールされる。
【0036】
(3)処理の手順
ここで、複数の部屋からなる一戸の家屋(住宅)の室内の経年変化を調査する場合を例として、本発明に係るシステムを用いて調査員又はユーザが各室内の損傷等の状況を調査してその場で記録及び保存し、経年変化を調査するときの処理について、図3〜図12を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態に係るシステムにおいて行われる処理の概要を示す図である。本発明の一実施形態においては、まず、全方位カメラ等の全方位画像撮影手段によって円形の全方位画像301が撮影される。撮影された全方位画像は、画像変換手段によって矩形のパノラマ画像302に変換される。表示装置36の画面303上には、表示制御手段によってパノラマ画像302の少なくとも一部の画像304が表示される。この画像304は、調査員が画面303上のスクロールメニュー又は拡大・縮小メニュー305を操作することによって、任意の位置を画面303上に表示させることができる。画像304に重ねられた透明なレイヤー320には、建物の損傷等の位置及び形状等を表す図形データ306及びテキストデータ307が、タッチペン、タブレット、キーボード等の入力手段35によって入力される。損傷等の状況の詳細な情報、すなわち図形データ306及びテキストデータ307と関連付けられる情報が、メニュー308によって呼び出される詳細状況情報入力画面(図示せず)から入力手段35によって入力される。入力された詳細状況情報の一覧が、表示制御手段によって画面上の所定の領域309に表示される。また、メニュー308によって呼び出される属性情報入力画面(図示せず)から入力された、表示されている画像に対応する建物及び部屋の属性情報が、表示制御手段によって画面上の所定の領域310に表示される。別途デジタルカメラ等で撮影された拡大画像311が、必要に応じて画面304上に表示される。メニュー308から画像切出メニューが選択され、画面304上で入力手段によって範囲が選択されたことに応答して、切出画像312が生成される。メニュー308から調査票作成メニューが選択されたことに応答して、建物の概要及び損傷等の状況等が記載された、家屋調査票、建物調査票、損傷調査票等の調査票313が作成される。
【0038】
以下に処理の詳細を説明する。
(a)全方位画像の撮影及び携帯型コンピュータへの格納
最初に、全方位カメラ1(全方位画像撮影手段に相当する)が調査対象の家屋に持ち込まれ、それぞれの部屋毎に室内の全方位画像301が撮影される。調査対象となる家屋の部屋数を5部屋とすると、5枚の全方位画像301が順次撮影されることになる。全方位画像撮影手段は、例えば図4に示されるような、カメラ本体401と凸面鏡402とを有するミラー撮影タイプの全方位カメラ1とすることができ、全方位カメラ1として市販の全方位カメラを用いることができる。全方位画像撮影手段として、図4に示されるような全方位カメラ以外に、公知の種々のものを用いてもよい。全方位画像撮影手段は、例えば、単一カメラの回転による複数回撮影タイプのもの、複数カメラによる複眼撮影タイプのものなど、周囲360°の景色が一枚の画像に撮影できるものであればよい。
【0039】
全方位画像301は、図5に示されるように、全方位カメラ1の位置を中心として周囲360°の範囲が撮影された円形の画像である。全方位カメラ1を用いることによって、調査対象の各々の室内について壁、天井、床等に存在する損傷等の位置及び形状等の情報が、一枚の全方位画像301に一括して記録される。したがって、全方位画像301を用いることによって、多数の画像を撮影しなければならない場合に発生する可能性がある損傷等の記録漏れを防止することができるとともに、撮影時間の大幅な短縮及びデータ容量の大幅な削減が可能である。また、全方位画像301を用いることによって、経年により環境が変化した場合でも損傷等の有無や位置の特定が容易である。さらに、損傷等が存在する位置、形状やその詳細のみならず、損傷等が存在しないという情報も容易に管理することが可能になる。
【0040】
撮影された全方位画像301は、例えば全方位カメラ1に内蔵されたメモリ又は全方位カメラに接続された記憶媒体等の記憶媒体に格納され、その後、例えば不揮発性半導体メモリ等の外部記憶媒体を介して、又は無線若しくは有線LANによって、携帯型コンピュータ3に転送される。携帯型コンピュータ3に転送された全方位画像301は、ハードディスク等の記憶装置31内の全方位画像フォルダに全方位画像ファイルとして格納される。撮影された全方位画像301は、例えば無線LAN等によって撮影と同時に(リアルタイムで)携帯型コンピュータ3に転送され、全方位画像フォルダに格納されるようにしてもよい。
【0041】
全方位画像301の携帯型コンピュータ3への格納前に、携帯型コンピュータ3の記憶装置31内に、調査対象の建物について各種のファイル及びデータを格納する種々のフォルダが作成される。メニュー308から新規フォルダ作成メニューが選択されたことに応答して、記憶装置31内に新規フォルダが作成され、新規フォルダ内に、例えば、建物情報フォルダ、全方位画像フォルダ、パノラマ画像フォルダ、拡大画像フォルダ、詳細損傷等情報フォルダ、切出画像フォルダ、調査票データフォルダ等が作成されるが、作成されるフォルダはこれらに限定されるものではない。新規フォルダは、記録を保存し管理する建物毎に作成されることが好ましい。新規フォルダの名称は、調査員が任意に変更することができる。
【0042】
全方位画像301に加えて、本発明の別の実施形態によれば、全方位を一度に撮影するものではない一般的なフィルムカメラ又はデジタルカメラ2を用いて調査対象の部屋の損傷等の部分を拡大して撮影した画像を利用することもできる。撮影された拡大画像311は、フィルムカメラで撮影された画像であればスキャナ(図示せず)等の画像取り込み装置によって携帯型コンピュータ3の記憶装置31内の拡大画像フォルダに格納され、デジタルカメラで撮影された画像であればそのまま携帯型コンピュータ3に転送され、拡大画像フォルダに格納される。拡大画像311は、表示装置36の画面303上においてパノラマ画像302の一部の画像304と重ねて表示させたり、切出画像312と結合して切出画像312中に埋め込んだりすることができる。
【0043】
(b)パノラマ画像への変換及びパノラマ画像フォルダへの格納
全方位カメラ1によって撮影され、携帯型コンピュータ3の記憶装置31に格納された全方位画像301は、例えば図7に示されるような、表示装置に表示された画面303上のメニュー308において、画像取り込みのためのメニューが入力手段35によって選択されたことに応答して、全方位画像フォルダから読み出される。読み出された全方位画像301は、画像変換手段によって、図6に示されるようなパノラマ画像302に変換される。図5に示されるような全方位画像301を図6に示されるようなパノラマ画像302に変換するための画像変換手段として、市販の画像変換ソフトウェア(例えば、D−Link社の「全景工房」)を用いることができる。別の実施形態においては、全方位カメラ1のカメラ本体401又は全方位カメラ1に接続された画像変換ユニット(図示せず)に画像変換手段を内蔵させ、全方位カメラ1で撮影された全方位画像301をカメラ本体401内又は画像変換ユニット内でパノラマ画像302に変換した後、携帯型コンピュータ3に転送し、転送されたパノラマ画像302をパノラマ画像フォルダに格納することもできる。
【0044】
(d)パノラマ画像の一部の表示
次いで、メニュー308において建物を選択するためのメニューが入力手段35によって選択されたことに応答して、当該建物のパノラマ画像302が格納されたフォルダを指定する画面(図示せず)が表示される。フォルダが指定されると、パノラマ画像フォルダに格納されたパノラマ画像302が読み出され、図3及び図7に示されるように、パノラマ画像302の少なくとも一部の画像304が携帯型コンピュータ3の表示装置の画面303に表示される。本実施形態においては、5枚のパノラマ画像302がパノラマ画像フォルダに格納されているため、各々のパノラマ画像302に対応する5つの画像表示シートが自動的に作成される。画面303にはそのうちの1つの画像表示シートが表示されており、必要に応じて調査員によりタブが選択されることによって、他の画像表示シートに切り替えることができるようになっている。
【0045】
一部の画像304が表示されたパノラマ画像302は、例えば図7において示されるようなスクロールメニュー又は拡大・縮小メニューが調査員によって操作されることによってスクロール又は拡大・縮小され、パノラマ画像302のうちの画面303に表示させる部分を変更することができる。すなわち、パノラマ画像302は、画面303に表示される視点を自由に上下左右に移動させたり、表示される部分を拡大又は縮小させたりすることができる。
【0046】
パノラマ画像302の少なくとも一部の画像304と同時に又はそれとは別個に、画面303上には、拡大画像311を表示させることもできる。拡大画像311は、調査対象の部屋の損傷等を含む部分について拡大して撮影された画像であり、全体画像では把握しにくい損傷等の部分をより詳細に確認する目的で用いることができる。メニュー308において拡大画像を取り込むためのメニューが入力手段35によって選択されたことに応答して、当該建物の拡大画像311が格納されたフォルダを指定する画面(図示せず)が表示される。調査員によってフォルダ内の画像が指定されると、拡大画像311が読み出され、画面303に表示される。画面303に表示された拡大画像311は、パノラマ画像302と同様に、以下に詳細に説明される、属性情報との関連付け、重ねられた透明レイヤーへの損傷等の位置及び形状の入力、詳細な損傷等情報の入力、切出画像の生成、及び調査票作成に用いることができる。したがって、以下において、パノラマ画像302に対して行われる処理は、拡大画像311についても同様に行われることがある。
【0047】
(e)属性情報との関連付け
次いで、画面303に少なくとも一部の画像304が表示されたパノラマ画像302と、そのパノラマ画像302に記録された建物の属性情報(例えば、室ID、階層、室名等とすることができるが、これらに限定されるものではない)とが関連付けられる。例えば、現在表示されているパノラマ画像302が1階の居間の画像であるとすると、属性情報入力画面(図示せず)において、階層「1」、室名「居間」等といった属性情報が入力される。これらの属性情報は、自動的に採番されるID番号を介して、画面303に表示されているパノラマ画像302と関連付けられる。ここで入力され、パノラマ画像302と関連付けられた属性情報は、建物情報フォルダに格納され、表示装置36上にパノラマ画像302の少なくとも一部の画像304が表示されるときに、建物情報フォルダから読み出されて属性情報310として画面303の所定の場所に表示される。
【0048】
属性情報入力画面において調査員が属性情報310を入力する際の支援のために、例えばキッチン、居間、洋室1、和室2等といった種々の室名を予め室名マスタDBに格納しておき、調査員がプルダウンメニュー又はリストからそれらの室名を入力手段35で選択することによって、属性情報入力画面において室名が入力されるようにしてもよい。このことは、室名以外の属性情報310があるときにおいても同様である。
【0049】
(f)調査対象の建物情報の入力
調査対象となる建物の調査前、調査中、又は調査後のいずれかの時点で、調査員によって、建物情報入力画面において各種建物情報が入力され、その情報は、携帯型コンピュータ3の記憶装置31内の建物情報フォルダに格納される。入力される建物情報は、例えば、建物番号、調査員氏名、調査年月日、建物所有者番号、氏名、住所、電話番号、建物名称、建物所在地、建物概要(例えば、居住者氏名、用途、構造、用地、棟数、軒数、階数、延べ面積、建物程度、屋根仕上げ、基礎仕上げ、外壁仕上げ、内壁仕上げ、天井仕上げ、床仕上げ、軒高、建築年月日、増改築年月日、年数等)とすることできるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
これらの情報は、図8に示されるような建物情報入力画面から調査員によって入力される。この画面は、画面303上のメニュー308において当該画面を表示させるためのメニューが入力手段35によって選択されたことに応答して、画面303上に表示される。これらの情報のうち、入力項目が予め決まっているものについては、調査員が入力する際の支援のために、それぞれの情報が格納されたマスタDBを記憶装置31内に準備し、調査員がプルダウンメニュー又はリストからそれらの情報を入力手段35で選択することによって、画面の入力領域に入力されるようにしてもよい。本実施形態においては、建物情報入力画面から入力された建物情報のデータは、自動的に採番される建物番号と所有者名とによってパノラマ画像と関連付けられるが、関連付けのキーはこれに限定されるものではない。
【0051】
(g)損傷等の位置及び形状等の入力
次いで、画面303に表示されたパノラマ画像302の少なくとも一部の画像304を背景としてその上に重ねて表示された透明な1つ又は複数のレイヤー320上に、損傷等の箇所の形状及び位置等を表す図形データ及び/又はテキストデータ(1つ又は複数の識別情報に相当する)が入力される。図9は、本発明の一実施形態に係る、図形データ及びテキストデータと詳細状況情報とが入力される際のフロー図である。
【0052】
処理はステップ901において開始する。ステップ902において、調査員は、画面303に表示されているパノラマ画像302の少なくとも一部の画像304と、それに対応する実際の部屋の部分とを参照しながら、画面303上の当該一部の画像304の上に重ねて表示されたレイヤー320に、タッチペン、タブレット、又はマウス等の入力手段35を用いて損傷等の形状及び位置等に対応する図形データ306を入力する。入力される図形データ306は、例えば多角形、矩形、線、円、楕円、寸法線等とすることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、居間の壁に波状の亀裂が存在する場合には、調査員は、図7の番号4に示されるように、画面304上の当該亀裂に対応する部分に同じ形状の図形データ306を入力することができる。同様に、居間の壁に内装材の浮きが存在する場合には、調査員は、図7の番号5に示されるように、画面304上の当該浮きに対応する部分に浮きの形状や範囲を示す矩形の図形データ306を入力することができる。図形データ306は、タッチペン、タブレット、又はマウス等の入力手段35によって自由にレイヤー320上に描画されるようにしてもよく、又は、図形選択メニュー(図示せず)を別途用意し、メニューから損傷等の形状に該当する図形が入力手段35によって選択されたことに応答して、選択された図形がレイヤー320上に描画されるようにしてもよい。
【0053】
一方、調査員は、上述のように入力された損傷等を表す図形データ306の近くに、図形データ306を表す番号として、例えば図7に示される番号「4」や「5」のようなテキストデータ307を入力することができる。入力されたテキストデータ307は、ぞれぞれの損傷等を表す損傷番号としてそれぞれの損傷等に割り当てられる。テキストデータ307は、タッチペン、タブレット、マウス、又はキーボード等の入力手段35によって直接レイヤー320上に入力されるようしてもよく、又は、テキスト選択メニュー(図示せず)を別途用意し、メニューから数字が入力手段35によって選択されたことに応答して、選択された数字がレイヤー320上に描画されるようにしてもよい。図形データ306として寸法線が入力された場合には、その近くに損傷等の寸法がテキストデータ307として入力されるようにしてもよい。入力された図形データ306及びテキストデータ307は、図形データ及びテキストデータの各々の入力毎に自動的に採番されるID番号を介して、建物の損傷等の状況の詳細を記述する後述の詳細状況情報と関連付けられる。この関連付けは、入力済みの図形データの大きさ又は長さなどが変更された場合でも、維持されたままとすることが好ましい。1つの損傷等に対して複数の図形データ306が入力された場合には、各々の図形データ306はグループ化され、グループ化された図形データ306がID番号を介して詳細状況情報と関連付けられるようにすることができる。
【0054】
図形データ306及びテキストデータ307が入力される透明なレイヤー320は、必要に応じて1つ又は複数とすることができる。例えば、すべての図形データ306及びテキストデータ307が1枚のレイヤー320に入力されるようにすることもできるし、図形データ306とテキストデータ307とが別々のレイヤー320に入力されるようにすることもできる。あるいは、図形データ306が各々の形状毎に別個のレイヤー320に入力されるようにすることもできる。1つ又は複数のレイヤー320の位置並びに図形データ306及びテキストデータ307が表示される位置は、パノラマ画像上の位置座標を基準にして関連付けられるため、図形データ306及びテキストデータ307は、パノラマ画像302の一部の画像304が上下左右にスクロールされた場合でも画像の移動に伴って一緒に移動する。したがって、調査員又はユーザは、調査対象の室内全体のどの位置にどのような形状の損傷等が存在するかということについて、容易に把握することができる。図形データ306及びテキストデータ307が入力された1つ又は複数のレイヤー320は、パノラマ画像302上の位置座標と関連付けてパノラマ画像フォルダに格納される。複数のレイヤー320が用いられる場合には、各々のレイヤーに識別情報が付与され、付与された識別情報は、当該レイヤーが重ねられるパノラマ画像302と関連付けられる。
【0055】
(h)詳細な損傷等情報の入力
次いで、レイヤー320に入力された図形データ306及びテキストデータ307に対応する損傷等の詳細な情報が入力される。図10は、事前調査において損傷等の詳細な情報を入力するための入力画面の一例である。本明細書においては、経年変化を調査する場合において、損傷等の最初の調査を「事前調査」と呼び、時間が経過した後に行われる調査を「事後調査」と呼ぶ。なお、本明細書の実施形態においては、「事前調査」及び「事後調査」の2つの時点における図形/テキストデータ及び損傷等の詳細な情報が入力され、保存され、レイヤー及び画面上に表示されるようになっているが、図形/テキストデータ及び損傷等の詳細な情報を入力できる時点は2つに限られるものではない。すなわち、3以上の複数の時点の各々において調査を行い、これらの調査データが各々の時点毎に別々のレイヤーに入力され、入力されたデータが保存され、レイヤーに表示されるようにすることもできる。画面1000は、上述の図形データ306又はテキストデータ307が画像304上に入力されたことに応答して、画面303上に表示される(ステップ903)。あるいは、画面1000は、入力手段35によって図形データ306又はテキストデータ307が選択され、メニュー308において画面1000を表示させるメニュー(「事前調査入力」メニュー)が入力手段35によって選択されたことに応答して、画面303上に表示されるようにしてもよい。調査員が、画面303に表示されたパノラマ画像302の少なくとも一部の画像304に対応する実際の建物の部分を調査し、その調査の結果として得られた損傷等の詳細な情報は、タッチペン、タブレット、マウス、又はキーボード等の入力手段35によって画面1000から入力される(ステップ904)。
【0056】
例えば居間の内装材に傾斜が存在する場合には、図10の画面1000の領域1001において、調査員は、傾斜の存在する場所(すなわち、パノラマ画像302に記録されている場所)が内部(すなわち「屋内」)又は外部(すなわち「屋外」)のいずれであるかを選択し(この場合には「内部」が選択される)、さらに対象とする不具合が「傾斜」であるか「損傷」であるかを選択する(この場合には「傾斜」が選択される)。次いで、写真番号(これは、後述する写真台帳を出力する際に、写真台帳に記載する画像を指定するための整理番号として利用することができる)、壁の仕上げ(例えば「ビニールクロス」等)といった属性情報が、画面1000の領域1001に入力される。調査員によって実測された傾斜の角度等の情報は、画面1000の領域(事前調査入力領域)1002に入力される。
【0057】
居間の壁に損傷(例えば亀裂)が存在する場合には、調査員は、同様に画面1000の領域1001において損傷の存在する場所が内部(すなわち「屋内」)又は外部(すなわち「屋外」)のいずれであるかを選択し(この場合にも「内部」が選択される)、さらに対象とする不具合が「傾斜」であるか「損傷」であるかを選択する(この場合には「損傷」が選択される)。次いで、写真番号、壁の仕上げ(例えば「ビニールクロス」等)といった情報が、画面1000の領域1001に入力される。さらに、損傷の種類又は名称(この場合には「亀裂」)、調査員によって実測された損傷すなわち亀裂の長さ及び幅等が、画面1000の領域1002に入力される。画面1000の領域1002からは、さらに、レイヤーに入力される図形データ306及びテキストデータ307の色、幅、線種、及び塗潰し色等を指定することもできる。
【0058】
このようにして入力された損傷等の詳細な情報は、携帯用コンピュータ3の記憶装置31内の詳細損傷等情報フォルダに格納される。これらの損傷等の詳細な情報と、レイヤー320に入力された図形データ306及びテキストデータ307とは、各々の損傷毎に自動的に採番されるID番号を介して関連付けされる。このID番号は、レイヤー320に入力された図形/テキストデータ及び図面1000から入力された損傷等の詳細な情報が削除された場合でも、変更履歴として記憶装置31の履歴フォルダに残るようにすることが好ましい。
【0059】
画面1000において調査員が損傷等の詳細な情報を入力する際の支援のために、例えば、損傷等の部位(例えば、壁、天井、床、ドア、窓等)、損傷の種類(例えば、亀裂、浮き、汚れ等)、部位の仕上げ(例えば、ビニールクロス、フローリング、タイル、ガラス等)といった情報が格納されたマスタDB、例えば部位マスタDB、損傷種類マスタDB及び仕上げマスタDBを記憶装置31内に予め準備し、調査員がプルダウンメニュー又はリストからそれらの情報を入力手段35で選択することによって、画面1000の入力領域に入力されるようにしてもよい。
【0060】
画面303に表示されているパノラマ画像302の少なくとも一部の画像304について、損傷等に対応する図形データ306及びテキストデータ307が入力され、損傷等の詳細な情報が入力された後、他に入力すべき損傷等が存在している場合には(ステップ905)、調査員によるパノラマ画像302のスクロールに応答して、別の少なくとも一部の画像304が画面303に表示される(ステップ906)。別の一部の画像304が表示されると、上述された処理ステップ902〜904が繰り返され、損傷等の位置及び形状等を表す図形データ306及び/又はテキストデータ307が、当該別の一部の画像304に重ねられた透明な1つ又は複数のレイヤー320に入力され、それぞれの損傷等の詳細な情報が入力される。パノラマ画像302におけるすべての損傷等について、位置及び形状並びに詳細な情報の入力が行われると、処理は終了する(ステップ907)。
【0061】
入力された損傷等の詳細な情報は、画面303の所定の位置に一覧表309(図3及び図7を参照されたい)として表示される。入力手段35によって一覧表309の1つの行(すなわち、1つの損傷等に対応する詳細な情報)が選択されると、当該行の情報に関連付けられた図形データ306及びテキストデータ307が、例えば色の変更等によって判別可能になるようにすることができる。同様に、パノラマ画像302の一部の画像304上で損傷等を表す図形データ306又はテキストデータ307が入力手段35によって選択されると、当該損傷等の詳細な情報を表す一覧表309の該当する行が、例えば色の変更等によって判別可能になるようにすることができる。
【0062】
本発明に係るシステムを用いて、上述のように当該家屋についてある時点で損傷等の調査を行った後、その時点とは異なる別の時点において(例えば数年後に)、同じ家屋の損傷等について再度同様の調査を行うことによって、当該家屋の損傷等の経年変化を調査することができる。経年変化を調査する場合には、まず、図7に示される画面303のメニュー308において調査対象の家屋のパノラマ画像302を取り込むためのメニューが入力手段35によって選択されたことに応答して、以前に調査された際のパノラマ画像302が格納されたフォルダを指定する画面(図示せず)が表示される。調査員によってフォルダ内の画像ファイルが指定されると、パノラマ画像302が読み出され、その少なくとも一部の画像304が画面303に表示される。このとき、以前のいずれかの時点で既に損傷等の調査が行われているため、画面303に表示された画像304に重ねられたレイヤー302には、その時点における損傷等の位置及び形状等を表す図形データ306及びテキストデータ307が表示される。
【0063】
調査員が、表示された画像304に対応する実際の建物の部分を調査し、損傷等の位置及び形状等が変化している場合及び新たな損傷等が発見された場合には、図9及び図10を参照して説明された処理と同様に、新たな図形データ306及び/又はテキストデータ307が画像304の上に重ねられた透明レイヤー320に入力され、画面303に表示された損傷等の詳細な情報を入力するための入力画面1000に損傷等の詳細な情報が入力される。このとき、損傷等の詳細な情報、例えば、傾斜の角度、損傷の種類、損傷の大きさ、図形/テキストデータの色、線幅、線種等の情報は、入力画面1000の領域(事後調査入力領域1003)に入力される。現在表示されている画像304について損傷等の入力が終了した後、次の画像304について同様の入力が繰り返され、パノラマ画像全体について損傷等が入力されることになる。
【0064】
「事後調査」における図形データ306及びテキストデータ307は、それより以前のいずれかの時点において行われた「事前調査」における図形データ306及びテキストデータ307とは異なる別のレイヤー320に入力される(システムがさらに多い数の調査時点に対応できるように構築されている場合には、それぞれの調査時点毎に異なるレイヤー320に入力される)。また、「事前調査」において損傷等の詳細な情報の入力が行われる場合には「事後調査」情報の入力ができないように、すなわち図10の画面1000において事前調査入力領域1002には入力ができないようにされ、「事後調査」において損傷等の詳細な情報の入力が行われる場合には「事前調査」情報の変更ができないように、すなわち事後調査入力領域1003には入力ができないようされることが好ましい。事前調査において入力されたレイヤー320と、それとは別の時点で行われた事後調査において入力された別のレイヤー320とは、同時に又は別々にパノラマ画像302の一部の画像304上に表示されるようにすることができ、それぞれのレイヤーの図形データ306及びテキストデータ307は、例えばレイヤー毎に異なる色で表示させるようにすることなどによって識別可能とすることができるため、それぞれの時点における損傷等の位置及び形状等並びに損傷等の詳細な情報を比較することが容易である。したがって、本発明に係るシステムによれば、信頼性の高い経年変化調査が可能となる。
【0065】
(i)拡大画像の挿入及び拡大画像への損傷等データの入力
前述のとおり、本発明に係るシステムにおいては、損傷等の部分をより詳細に確認することができるように、建物の損傷等の部分が拡大撮影された拡大画像311を画面303の画像304の上に重ねて表示させることができる。拡大画像311についても、拡大画像フォルダから読み出された後、パノラマ画像302と同様に、属性情報との関連付け、損傷等の位置及び形状の入力、並びに、損傷等の詳細な情報の入力を行うことができる。
【0066】
(j)切出画像の生成
全方位画像301から変換されパノラマ画像フォルダに格納されたパノラマ画像302、又は、画面303上に表示されその上のレイヤー302に図形データ306又はテキストデータ307が入力された状態のパノラマ画像は、任意の範囲の選択に応答してその範囲を切出画像312として切り出され、切出画像312が切出画像フォルダに格納されるようにすることができる。まず、メニュー308においてパノラマ画像302を取り込むためのメニューが入力手段35によって選択されたことに応答して、パノラマ画像302が格納されたフォルダを指定する画面(図示せず)が表示される。パノラマ画像302は、パノラマ画像フォルダから読み出され、画面上に表示される。このときのパノラマ画像302は、図形/テキストデータが入力済みのものであっても入力前のものであってもよい。メニュー308において画像切出のためのメニューが選択され、入力手段35によって任意の位置及び大きさの切出範囲が選択され、切り出しのための指示が入力されたことに応答して、選択範囲に対応するパノラマ画像302の一部が切り出される。
【0067】
画像304の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤー302は、切り出しの際に選択範囲の画像と結合され、レイヤー302が結合された切出画像、すなわち損傷等の位置及び形状等を表す図形/テキストデータが表示された切出画像312が、切出画像フォルダに格納される。切出画像312は、例えばJPEG形式等の圧縮形式のファイルとして切り出されることが好ましい。画像304上に拡大画像311が重ねて表示されており、拡大画像311を含む範囲が切出範囲として選択された場合には、拡大画像311と、パノラマ画像302の選択範囲と、図形データ306及びテキストデータ307が入力されたレイヤー302とが結合され、一枚の切出画像312として切り出されるようにすることができる。以上のようにして切り出された切出画像312を用いれば、図11に示されるように、例えば損傷等を表す図形データ306及びテキストデータ307が入力される前の壁のある範囲の画像と、図形データ及びテキストデータが入力された後の同一範囲の画像と、損傷等の箇所をより拡大した画像とを一覧で表示させることが可能であるため、損傷等の位置、形状、及びその状態等を容易に把握することができる。また、こういった種々の画像の一覧を紙媒体に印刷することによって、経年変化調査のための写真台帳314として用いることもできる。
【0068】
切出画像312は、CR−ROM、MO、DVD−ROM等といった外部記憶媒体に格納されるようにしてもよい。紙媒体に印刷された建物調査報告書と共にこれらの外部記憶媒体を顧客に提出すれば、例えば従来の建物調査報告書に馴染みのない一般人でも容易に調査結果の把握が可能になり、より信頼性の高い調査報告ができるようになる。また、例えば切出画像312を外部記憶媒体に格納したり紙媒体に出力し、それらを賃貸人と賃借人の両方に渡しておくことによって、建物の賃貸契約に関するトラブルを防止することができる。
【0069】
(k)調査票の作成
建物調査においては、例えば、調査された建物の所有者や物件概要等が記載された建物調査票や、建物の損傷等の詳細が記載された損傷等調査票等の調査票を調査報告書として提出することが必要である。これらの調査票313の作成が必要な場合には、上述の処理によって作成され、保存された種々のファイルやデータを利用して、容易に調査票を作成することができる。画面303のメニュー308から調査票を作成するためのメニューが選択されたことに応答して、作成される調査票の種類を選択する画面(図示せず)が表示される。入力手段35によって、作成される調査票の種類が選択され調査票作成メニューが選択されると、選択された調査票を作成するのに必要なデータやファイルがそれぞれのフォルダ及びデータベースから自動的に抽出され、必要なフォーマットに整えられて、例えば図12に示されるような調査票が作成される。
【0070】
以上説明した本発明に係るシステム、方法、及びコンピュータ・プログラムによれば、周囲360°を一度に記録することができる画像を用いることによって、従来技術においては困難であった建物の損傷等に関する全体状況の把握及び確認が容易になる。また、現場でコンピュータを用いて直接損傷等の記録を行うことができるため、見落としや記入漏れを低減することができ、適切な損傷等の情報の管理が可能となる。さらに、全体画像の上に重ねられたレイヤーに損傷等の情報を入力し、表示させることができるため、損傷等の位置及び形状の把握が容易である。必要に応じて全体画像の中に、別途撮影した損傷等の拡大画像を表示することができるため、損傷等のより詳細な形状の把握が可能である。さらに、一枚の画像にすべての損傷等が記録されるため、時間が経過した後でも、時間の経過によって変化しない部位を基準として損傷等の位置を容易に特定することができる。一枚の画像には損傷等の状況だけでなく周囲の状況も記録されるため、画像の偽造が困難であり、信頼性の高い経年変化の調査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシステムのハードウェア構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態において行われる処理の概要を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態において用いることができる全方位画像撮影手段の具体例である。
【図5】全方位画像の一例を示す図である。
【図6】図5に示される全方位画像を画像変換することによって得られるパノラマ画像の一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る、表示装置に表示される画面を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る、建物の基本的な情報を入力するための画面を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る、図形データ及びテキストデータと詳細状況情報とが入力される処理を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る、事前調査において詳細損傷等情報を入力するための画面を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る、切出画像の一覧を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る、自動作成される調査票を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
301 全方位画像
302 パノラマ画像
303 表示装置の画面
304 パノラマ画像の一部
305 スクロールメニュー
306 図形データ
307 テキストデータ
308 メニュー
309 一覧表示領域
310 属性情報表示領域
311 拡大画像
312 切出画像
313 調査票
314 写真台帳
320 透明レイヤー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の経年変化を調査するためのシステムであって、
建物を含む全方位画像を撮影する全方位画像撮影手段と、
前記全方位画像をパノラマ画像に変換する画像変換手段と、
前記パノラマ画像の少なくとも一部を表示装置の画面上に表示させ、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された建物の状況を表す1つ又は複数の識別情報を前記画面上に表示させる、表示制御手段と、
前記パノラマ画像と、前記1つ又は複数の識別情報が入力された前記1つ又は複数のレイヤーと、前記入力手段によって入力され前記1つ又は複数の識別情報に関連付けられた前記状況の詳細な情報とを保存する記憶手段と、
を含む、異なる時点における建物の状況の変化を比較するために、前記異なる時点におけるそれぞれの建物の状況に関する情報を現場で記録及び保存できるようにしたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記パノラマ画像の前記少なくとも一部における任意の範囲が選択されたことに応答して、前記パノラマ画像と前記1つ又は複数の識別情報が入力された前記1つ又は複数のレイヤーとを選択された前記任意の範囲内で結合し、前記1つ又は複数の識別情報を含む前記任意の範囲の切出画像を生成する切出画像生成手段をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記建物は家屋の部屋の内部である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記建物の前記状況の拡大画像を撮影する拡大画像撮影手段をさらに含み、撮影された前記拡大画像は、前記表示制御手段によって前記表示装置の前記画面上に表示される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記切出画像は前記拡大画像を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記建物の前記状況は、前記建物の損傷及び傾斜の位置及び形状を含み、前記状況の詳細な情報は、前記建物の損傷及び傾斜の種類とその損傷及び傾斜の詳細な状況とを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記建物の前記状況を表す前記1つ又は複数の識別情報は、図形データ及び/又はテキストデータを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ又は複数の識別情報に関連付けられた前記状況の詳細な情報は、前記表示制御手段によって前記表示装置の前記画面上に表示される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項9】
前記パノラマ画像に関連付けられた前記建物の属性情報が、前記表示制御手段によって前記表示装置の前記画面上に表示される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項10】
建物の経年変化を調査するための方法であって、
建物を含む全方位画像が撮影される画像撮影ステップと、
前記全方位画像がパノラマ画像に変換される画像変換ステップと、
前記パノラマ画像の少なくとも一部が表示装置の画面上に表示され、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された建物の状況を表す1つ又は複数の識別情報が前記画面上に表示される、表示ステップと、
前記パノラマ画像と、前記1つ又は複数の識別情報が入力された前記1つ又は複数のレイヤーと、前記入力手段によって入力され前記1つ又は複数の識別情報に関連付けられた前記状況の詳細な情報とが記憶手段に保存される記憶ステップと、
前記パノラマ画像の少なくとも一部について、前記1つ又は複数の識別情報が表示された前記1つ又は複数のレイヤーと、前記1つ又は複数の識別情報が入力された時点と異なる時点において入力された別の1つ又は複数の識別情報が表示された、前記1つ又は複数のレイヤーとは別の1つ又は複数のレイヤーとが、前記パノラマ画像の前記少なくとも一部の上に表示されるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記パノラマ画像の前記少なくとも一部における任意の範囲が選択される範囲選択ステップと、
前記選択に応答して、前記パノラマ画像と前記1つ又は複数の識別情報が入力された前記1つ又は複数のレイヤーとが選択された前記任意の範囲内で結合され、前記1つ又は複数の識別情報を含む前記任意の範囲内の切出画像が生成される切出画像生成ステップと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記建物は家屋の部屋の内部である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記建物の前記状況の拡大画像が撮影される拡大画像撮影ステップと、前記拡大画像が前記表示装置の前記画面上に表示されるステップとをさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記建物の前記状況は、前記建物の損傷及び傾斜の位置及び形状を含み、前記状況の詳細な情報は、前記建物の損傷及び傾斜の種類とその損傷及び傾斜の詳細な状況とを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項15】
前記建物の前記状況を表す前記1つ又は複数の識別情報は、図形データ及び/又はテキストデータを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の識別情報に関連付けられた前記状況の詳細な情報は、前記表示装置の前記画面上に表示されるステップをさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項17】
前記パノラマ画像に関連付けられた属性情報が、前記表示装置の前記画面上に表示されるステップをさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項18】
建物の経年変化を調査するための処理をコンピュータに実行させるための命令を含むコンピュータ・プログラムであって、前記処理は、
建物を含む全方位画像がパノラマ画像に変換される画像変換ステップと、
前記パノラマ画像の少なくとも一部が表示装置の画面上に表示され、該少なくとも一部の上に重ねられた1つ又は複数のレイヤーに入力手段によって入力された建物の状況を表す1つ又は複数の識別情報が前記画面上に表示される、表示ステップと、
前記パノラマ画像と、前記1つ又は複数の識別情報が入力された前記1つ又は複数のレイヤーと、前記入力手段によって入力され前記1つ又は複数の識別情報に関連付けられた前記状況の詳細な情報とが記憶手段に保存される記憶ステップと、
前記パノラマ画像の少なくとも一部について、前記1つ又は複数の識別情報が表示された前記1つ又は複数のレイヤーと、前記1つ又は複数の識別情報が入力された時点と異なる時点において入力された別の1つ又は複数の識別情報が表示された、前記1つ又は複数のレイヤーとは別の1つ又は複数のレイヤーとが、前記パノラマ画像の前記少なくとも一部の上に表示されるステップと、
を含む、コンピュータ・プログラム。
【請求項19】
前記処理は、
前記パノラマ画像の前記少なくとも一部の任意の範囲が選択される範囲選択ステップと、
前記選択に応答して、前記パノラマ画像と前記1つ又は複数の識別情報が入力された前記1つ又は複数のレイヤーとが選択された前記任意の範囲内で結合され、前記1つ又は複数の識別情報を含む前記任意の範囲内の切出画像が生成される切出画像生成ステップと、
をさらに含む、請求項18に記載のコンピュータ・プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図12】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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