説明

建物の軒下見切り構造

【課題】気温による見切り材の伸縮に対応でき、隣り合う見切り材の端部間の隙間を隠すことができるようにした建物の軒下見切り構造を提供する。
【解決手段】バルコニーなどの張り出し部2の軒下部周囲に施工される建物の軒下見切り構造であって、張り出し部2の軒下における躯体3の下部周囲に見切り材1を取り付け、隣り合う見切り材1,1の端部にはそれぞれ合成樹脂製の隙間隠し部材4,5を圧入し、隣り合う見切り材1,1の内、一方の見切り材1の端部に設けられる隙間隠し部材4は一方の見切り材1の端部から外方に突出する凸部8を備えるとともに、他方の見切り材1の端部に設けられる隙間隠し部材5は前記凸部8を嵌入させる凹部13を備え、隣り合う見切り材1,1の端部間の間隔の変化に追随して前記凸部8と凹部13が互いに嵌合した状態で互いに遠近移動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の例えばバルコニーなどの張り出し部の軒下部周囲に施工される建物の軒下見切り構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種張り出し部の軒下部周囲に施工される見切り構造は、例えば特許文献1に開示されているように張り出し部の軒下部周囲下端面を見切り材で隠蔽したものである。 上記の見切り材は一般にアルミを材料とする型材が使用され、軒下部周囲の長さ方向に分断されているのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−93205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のように、見切り材が軒下部周囲の長さ方向に分断されていると、気温により見切り材が伸縮するという現象が生じ、それにより隣り合う見切り材の端部間に隙間が生じるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、気温による見切り材の伸縮に対応でき、隣り合う見切り材の端部間の隙間を隠すことができるようにした建物の軒下見切り構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の建物の軒下見切り構造は、バルコニーなどの張り出し部の軒下部周囲に施工される建物の軒下見切り構造であって、張り出し部の軒下における躯体の下部周囲に見切り材を取り付け、隣り合う見切り材の端部にはそれぞれ合成樹脂製の隙間隠し部材を圧入し、隣り合う見切り材の内、一方の見切り材の端部に設けられる隙間隠し部材は一方の見切り材の端部から外方に突出する凸部を備えるとともに、他方の見切り材の端部に設けられる隙間隠し部材は前記凸部を嵌入させる凹部を備え、隣り合う見切り材の端部間の間隔の変化に追随して前記凸部と凹部が互いに嵌合した状態で互いに遠近移動するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の建物の軒下見切り構造は、一方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材には一方の見切り材の端面に当接するように外側に張り出して形成された鍔部を備え、この隙間隠し部材の鍔部に対する凸部の付け根部における上下両面および左右両側面が円弧状面に形成されており、他方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材には他方の見切り材の端面に当接するように外側に張り出して形成された鍔部を備え、前記一方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材の凸部の上下両面および左右両側面に当接するように軟質合成樹脂からなる舌片が前記鍔部の外面に円弧状に反った状態で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の建物の軒下見切り構造は、隣り合う見切り材の端部に圧入してそれぞれ設けた隙間隠し部材により隣り合う見切り材間の隙間を隠すことができるとともに、隣り合う見切り材の端部間の間隔の変化に追随して前記凸部と凹部が互いに嵌合した状態で互いに遠近移動するようにしたことにより、気温による見切り材の伸縮に対応できるようにした建物の軒下見切り構造を提供することができる。また、他方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材に形成した軟質合成樹脂からなる舌片が一方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材の凸部の上下両面および左右両側面に先端が当接するように構成されていることにより、その箇所での防水性が得られ、両隙間隠し部材間などへの水の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態における建物の軒下見切り構造を下方から見た斜視図である。
【図2】(A)および(B)は一方の隙間隠し部材の斜視図である。
【図3】(A)および(B)は他方の隙間隠し部材の斜視図である。
【図4】同隣り合う一方の見切り材の端部に一方の隙間隠し部材を圧入した状態を示す斜視図である。
【図5】同隣り合う他方の見切り材の端部に他方の隙間隠し部材を圧入した状態を示す斜視図である。
【図6】図1のX−X断面図である。
【図7】同気温の変化により隣り合う見切り材間が開いた状態を示す断面図である。
【図8】同気温の変化により隣り合う見切り材間が縮まった状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図8を用いて具体的に説明する。
図において、1は建物の例えばバルコニーなどの張り出し部2の軒下における躯体3の下部周囲に設けられる見切り材で、アルミを材料に用いて押し出し成型により形成されている。見切り材1は躯体3の下部周囲の長さ方向に分断されており、その分断部における隣り合う両見切り材1の端部内側には合成樹脂製の隙間隠し部材4,5がそれぞれ圧入して設けられる。前記見切り材1は断面形状において側面形状がほぼ凵型で、下端板部1aの幅方向中央に長さ方向に上向きの凹部1bが形成されており、この下端板部1aの両側から立ち上がる板部1c,1cを備え、この板部1c,1cの上端に内側に向いて直角に折れ曲がる折曲片1d,1dを備えている。この見切り材1は前記上端の折曲片1d,1d間が開口しており、上端の折曲片1d,1dが前記躯体3の下面に当接するように躯体3側に取り付けられるものであるが、本実施の形態では躯体3側に見切り材取り付け用の木材からなる桟材6が取り付けられ、この桟材6を覆うように躯体3の下面に見切り材1の上端の折曲片1d,1dを当接させ、前記凹部1bの下側から桟材6に対してビス7止めしている。
【0011】
ところで、前記隣り合う両見切り材1,1の内、一方の見切り材1の端部内側に設けられる一方の隙間隠し部材4は一方の見切り材1の端部から外方に突出する凸部8を備えるとともに一方の見切り材1の端部内側に嵌入する嵌入部9を前記凸部8と一体に備え、凸部8の先端が閉じた状態で内部が空洞となっている。10は凸部8と嵌入部9との境の位置で見切り材1の端面に当接するように外側に張り出して形成された鍔部である。11は嵌入部9の外周に全周に亘って複数本の溝11a,11aを形成するための軟質合成樹脂からなる複数枚のフィンである。さらに、この隙間隠し部材4の鍔部10に対する凸部8の付け根部における上下両面および左右両側面が円弧状面12に形成されている。次に、隣り合う両見切り材1,1の内、他方の見切り材1の端部内側に設けられる他方の隙間隠し部材5は他方の見切り材1の端部内側に嵌入し前記凸部8を嵌入させる凹部13を備えるとともに、この凹部13と一体で他方の見切り材1の端部内側に嵌入する嵌入部14を備えている。15は凹部13の入口位置で見切り材1の端面に当接するように外側に張り出して形成された鍔部である。16は嵌入部14の外周に全周に亘って複数本の溝16a,16aを形成するための軟質合成樹脂からなる複数枚のフィンである。さらに、この隙間隠し部材5には、前記隙間隠し部材4の凸部8の上下両面および左右両側面に当接するように軟質合成樹脂からなる舌片17が前記鍔部15の外面に円弧状に反った状態で形成されている。18は舌片17の円弧状面である。
【0012】
なお、前記隙間隠し部材4および5の底部は前記見切り材1の凹部1bに沿う形に凹入している。
上記構成において、見切り材1は張り出し部2の軒下における躯体3の下部周囲に桟材6を介してビス7止めにより支持され、この支持された隣り合う見切り材1,1間の隙間を隠すべく隣り合う見切り材1,1の端部に圧入された隙間隠し部材4および5により見切り材1,1間の隙間を隠すとともに外気温の変化により隣り合う両見切り材1,1間の間隔が変化しても凸部8と凹部13が互いに嵌入した状態で両見切り材1,1間の間隔の変化に追随でき、隣り合う両見切り材1,1間に隙間ができることがない。図7は両見切り材1,1間の間隔が拡がった状態を示し、図8は両見切り材1,1間の間隔が縮まった状態を示しており、隣り合う両見切り材1,1間に円弧状に湾曲する継手部が形成されることになる。また、他方の見切り材1の端部に取り付けられる隙間隠し部材5に形成した軟質合成樹脂からなる舌片17が一方の見切り材1の端部に取り付けられる隙間隠し部材4の凸部8の上下両面および左右両側面に当接するように構成されていることにより、その箇所での防水性が得られ、両隙間隠し部材4,5間などへの水の浸入を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の建物の軒下見切り構造は、バルコニーなどの張り出し部の軒下における見切り材の取り付け部において、隣り合う両見切り材間の間隔が変化しても隣り合う両見切り材間に隙間ができることがない建物の軒下見切り構造である。
【符号の説明】
【0014】
1 見切り材
1a 下端板部
1b 凹部
1c 板部
1d 折曲片
2 張り出し部
3 躯体
4,5 隙間隠し部材
6 桟材
7 ビス
8 凸部
9 嵌入部
10 鍔部
11 フィン
11a 溝
12 円弧状面
13 凹部
14 嵌入部
15 鍔部
16 フィン
16a 溝
17 舌片
18 円弧状面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルコニーなどの張り出し部の軒下部周囲に施工される建物の軒下見切り構造であって、張り出し部の軒下における躯体の下部周囲に見切り材を取り付け、隣り合う見切り材の端部にはそれぞれ合成樹脂製の隙間隠し部材を圧入し、隣り合う見切り材の内、一方の見切り材の端部に設けられる隙間隠し部材は一方の見切り材の端部から外方に突出する凸部を備えるとともに、他方の見切り材の端部に設けられる隙間隠し部材は前記凸部を嵌入させる凹部を備え、隣り合う見切り材の端部間の間隔の変化に追随して前記凸部と凹部が互いに嵌合した状態で互いに遠近移動するようにしたことを特徴とする建物の軒下見切り構造。
【請求項2】
一方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材には一方の見切り材の端面に当接するように外側に張り出して形成された鍔部を備え、この隙間隠し部材の鍔部に対する凸部の付け根部における上下両面および左右両側面が円弧状面に形成されており、他方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材には他方の見切り材の端面に当接するように外側に張り出して形成された鍔部を備え、前記一方の見切り材の端部に取り付けられる隙間隠し部材の凸部の上下両面および左右両側面に当接するように軟質合成樹脂からなる舌片が前記鍔部の外面に円弧状に反った状態で形成されていることを特徴とする請求項1記載の建物の軒下見切り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−189941(P2010−189941A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35977(P2009−35977)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000107985)セイコー産業株式会社 (14)