説明

建物の部材管理方法及び建物の部材管理システム

【課題】
被災状況に応じて必要な部材データを迅速に出力することが可能な建物の部材管理方法及び建物の部材管理システムを提供する。
【解決手段】
建物を購入した顧客の建物の邸固有情報5及び建物を構成する部材データ6を含んだ建物データを記憶するデータベース2と、被災の際に被災した建物の邸固有情報5及び被災状況データ8を入力する端末機4と、端末機4から入力された邸固有情報5及び被災状況データ8に基づいてデータベース2に記憶された建物データの中から該当する部材データ6を読み出して出力する検索サーバ3とを備えた建物の部材管理システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、震災等によって被災した建物の修復等をおこなう際に必要とされる部材を検索して出力する建物の部材管理方法及び建物の部材管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顧客への邸引渡し後に住宅の保全・修繕に関するアフターサービスを行うために、リコールの対象となったような所定の部材が使用されている邸のリストを迅速に出力するシステムが知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
一方、震災や火災などによって被災した建物は、一刻も早く修復されることが望まれている。
【特許文献1】特開2003−271608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建物を構成する部材データがすべて出力されたとしても、修復に必要な部材データが選び出されていなければ、迅速に部材を手配して、修復に取り掛かることができない。
【0005】
そこで、本発明は、被災状況に応じて必要な部材データを迅速に出力することが可能な建物の部材管理方法及び建物の部材管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、建物を購入した顧客の当該建物の邸固有情報及び当該建物を構成する部材データを含んだ建物データを設定し、被災の際に被災した前記建物の前記邸固有情報及び被災状況データを入力し、該入力された前記邸固有情報及び前記被災状況データに基づいて交換が必要になると予想される前記部材データを出力することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の建物の部材管理システムは、建物を購入した顧客の当該建物の邸固有情報及び当該建物を構成する部材データを含んだ建物データを記憶する記憶手段と、被災の際に被災した前記建物の前記邸固有情報及び被災状況データを入力する入力手段と、該入力手段から入力された前記邸固有情報及び被災状況データに基づいて前記記憶手段に記憶された前記建物データの中から該当する部材データを読み出して出力する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記発明において、前記被災状況データは、前記建物の被災箇所を示すデータであって、前記制御手段ではその被災箇所に該当する部材データを抽出して出力することができる。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明は、予め設定された顧客の邸固有情報及び当該建物を構成する部材データを被災時に取り出し、被災した建物の被災状況データと照合させることによって、交換が必要になると予想される部材データを出力する。
【0010】
このため、震災等によって被災した建物の修復に必要な部材を迅速に手配することができるので、部材の入手にかかる時間が短く、迅速に修復を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態の建物の部材管理システム1の概略構成を示した図である。
【0013】
この部材管理システム1は、記憶手段としてのデータベース2と、そのデータベース2に接続される制御手段としての検索サーバ3と、その検索サーバ3へのアクセスプログラムを備えた入力手段としての端末機4,・・・とを備え、建物の製造メーカ又は販売会社などが運営する。
【0014】
また、このデータベース2は、光磁気ディスクライブラリ装置などの大容量記憶装置であって、建物のデータファイル21が記録されている。
【0015】
このデータファイル21は、権限のある管理者のみがデータの入力・更新・破棄等をすることができるように構成されている。
【0016】
本実施の形態では、建物として、工場で製作された建物ユニットを建築現場まで輸送して、建築現場で複数の建物ユニットを組み立てて建築するユニット建物について説明する。ここで、図2は、ユニット建物のデータファイル21の構成を例示する図である。
【0017】
このデータファイル21には、建物ユニットの生産工場、ユニット建物の販売会社、出荷時期の他に、建物データとして建物の邸固有情報5に対応させた部材データ6、地盤データ7などが保存されている。
【0018】
この邸固有情報5は、邸コードや邸名などの建物を特定するためのデータであって、この他にも建物の所在地、敷地面積、建物の面積、所有者(当初)、所有者(現在)等の情報が含まれている。
【0019】
また、この部材データ6は、設備、柱や壁等の材料、部品などの部材のデータであって、図2に例示したように、部材の品番6a、品名6b、数量6cなどの他に、その部材が使用されている箇所などの属性を示すユニット番号6d、部位6e等のデータが含まれている。
【0020】
ここで、ユニット番号6dとはユニット建物を構成する建物ユニットの番号を示し、部位6eとは階段、玄関、窓などの住宅の部位を示す。
【0021】
さらに、部材を工場内で取り付けたか取り付けずに出荷したかの発送形態を示す区分6f、部材が工場加工品であるか否かを示す工場取扱品6gの表示及び商品タイプ6hなどのデータも部材データ6として記憶されている。
【0022】
また、地盤データ7には、建物が建つ地盤のデータ(例えば、切り土、盛り土、湿地等の敷地の硬さに関するデータ、並びに、傾斜地、崖地等の敷地の周囲の地盤のデータ)が記憶されている。
【0023】
以上が建物を購入した際に顧客の建物のデータとして入力される建物データであって、以下に震災や火災などによってその建物が被災した際に入力される被災状況データについて説明する。
【0024】
この被災状況データは、被災後に視察者等の人が現場の建物の被災状況を視察し、端末機4に表示される建物の被災事項・被災程度をチェックすることによって入力されると共に、被災状況データ8としてデータベース2のデータファイル21に記憶される。
【0025】
この端末機4は、検索サーバ3に対してインターネット等の通信回線網によって接続されるコンピュータであり、端末機4と検索サーバ3とは認証システム及び暗号システムを介してアクセス可能とされる。
【0026】
この端末機4は、検索サーバ3によって正当であると認証された後に、暗号システムを用いてデータファイル21中の建物データなどを呼び出して端末機4のモニタに表示させるプログラムを備えている。
【0027】
また、検索サーバ3は、制御部としてのCPUと、データベース2又は端末機4との間でデータの送信及び受信をおこなう送信・受信部と、処理に必要なデータを一時的に格納するRAMと、処理プログラム等を固定的に格納するROMやハードディスクと、キーボードやマウス等の入力操作部と、表示部としてのモニタと、CD−ROMドライブ等から構成されている。
【0028】
次に、本実施の形態の部材管理システム1の動作及び作用について説明する。
【0029】
まず、顧客が建物を購入した際に、システムの運営者である建物の製造メーカ等の管理者又は担当者が、検索サーバ3又は端末機4からその建物の建物データを入力してデータベース2にデータファイル21として記憶させる。
【0030】
この時点で記憶されたデータファイル21は、図2に示すようなデータ構造となっており、複数の建物の建物データが邸固有情報5に関連付けられて格納されている。
【0031】
そして、震災や火災などが発生した後の部材管理システム1の動作について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
建物が被災すると(ステップS1)、視察者等が被災した建物の被災状況を視察するために現地に赴く。この際、端末機4が携帯可能なコンピュータであれば現地に持っていくことができる。
【0033】
そこで、端末機4から邸コード、邸名、建物の所在地などの邸固有情報5のいずれか又は複数を入力して(ステップS2)、無線通信等の通信回線網を通じて検索サーバ3にアクセスすると、そこからデータベース2のデータファイル21に記憶された邸固有情報5に該当する建物の建物データを読み出すことができる。
【0034】
一方、視察者は建物の被災状況を確認して、端末機4から被災状況データ8を入力し(ステップS3)、検索サーバ3を介してデータファイル21に記憶させる。
【0035】
この被災状況データ8としては、目視や検査によって修復が必要と診断された住宅の部位や建物ユニットのユニット番号を入力する。
【0036】
ここで、ユニット番号と修復が必要な建物の位置の関連付けを容易にするために、購入時の建物データを入力する際に、ユニット番号の位置情報として「1階南東部」、「2階北西部」などの情報を入力しておき、被災状況データ8を入力する際にこの位置情報をプルダウンメニュー等で表示させることによって間接的にユニット番号を指定できるようにしておけば、ユニット番号の特定に手間取ることなく迅速に入力作業をおこなうことができる。
【0037】
また、住宅の部位に関しても、階段、玄関、浴室などの名称がプルダウンメニューで表示されてその中から選択できるようにしておくことで、入力ミスを防ぐことができる。
【0038】
このようにして入力された邸固有情報5と被災状況データ8に基づいて、検索サーバ3が部材データ6の中から被災状況データ8に対応する箇所の部材データ6を抽出する(ステップS4)。
【0039】
そして、抽出された部材データ6のリストは、図4に例示するような形式で、端末機4のモニタ、検索サーバ3のモニタ又は端末機4や検索サーバ3に接続されたプリンタなどに出力される(ステップS5)。
【0040】
この図4に示したリストは、邸固有情報5を入力したことによって特定された建物データが邸コード”AAA001”の”ヤマダサマ001”であって、被災状況データ8としてユニット番号”0”及び部位”Y”を入力したことによって、図2に示した”ヤマダサマ001”の建物データの中から、ユニット番号”0”で部位”Y”に対応する建物データのみが抽出されことを示したものである。
【0041】
このように、修復工事のために交換が必要になる部材のみが出力された部材データリストが入手できれば、このリストを基に迅速に部材の手配をすることができる。
【0042】
また、検索サーバ3に部材発注システム(図示せず)を連動させることによって、検索サーバ3に部材データリストが出力されると共に部材の発注をおこなうように構成することで、視察者が検索サーバ3の設置されている管理部署に戻って発注作業をおこなうまでの時間も削減することができる。
【0043】
このように本実施の形態の部材管理システム1によれば、震災等によって被災した建物の修復に必要と予想される部材のみが抽出された部材データリストが出力されるので、部材を迅速に手配することができ、部材の入手にかかる時間が短くなって迅速に修復作業を開始することができる。
【0044】
また、建物の被災箇所を被災状況データ8として入力することで、その被災箇所に関連する部材を抽出することができるので、修復に必要となる部材を迅速に選び出すことができる。
【0045】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施の形態では、端末機4を操作して建物データや被災状況データ8を入力する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検索サーバ3をスタンドアロンの検索装置としてこの検索サーバ3の入力操作部のみからしかデータベース2に接続できないような構成とすることもできる。
【0047】
また、前記実施の形態では、インターネットなどを通じて遠隔地にある端末機4,・・・から検索サーバ3にアクセスさせる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、イントラネット等の社内通信回線網を介して端末機4と検索サーバ3が接続されるような構成であってもよい。
【0048】
さらに、前記実施の形態では端末機4として携帯可能なコンピュータを例示したが、これに限定されるものではなく、デスクトップ型のコンピュータ又は携帯が容易な携帯電話若しくはPHS等であってもよい。
【0049】
また、前記実施の形態では、部材の特徴を表わす属性情報として、「ユニット番号」、「部位」、「区分」、「工場取扱品」を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、同一形状部材の左/右を示す情報、部材の原材料品番、部材の配下にある子部材の有無、「品番」での発注の可否を示す情報、上記配下子部材の品番又は品名等、部材の検索に際してキーとなり得る情報であれば利用できる。
【0050】
さらに、前記実施の形態では、被災状況データ8として「ユニット番号」や「部位」などの属性情報を入力したが、これに限定されるものではなく、このような属性情報に加えて「損傷のレベル(度合い)」を示す情報を入力して、交換が必要と予想される部材の範囲を調整することができる。
【0051】
また、前記実施の形態では、建物としてユニット建物について説明したが、これに限定されるものではなく、如何なる工法で建築された建物にも本発明を適用することができる。
【0052】
そして、前記実施の形態では、データファイル21に記憶させるデータについて種々、例示したが、これらのデータはすべて入力されている必要はなく、またここに例示した以外のデータを追加することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の最良の実施の形態の建物の部材管理システムの概略構成を示した図である。
【図2】データベースに記憶されるデータファイルの構成を例示する図である。
【図3】被災発生時の建物の部材管理システムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】抽出された部材データリストの出力を例示する図である。
【符号の説明】
【0054】
1 部材管理システム
2 データベース(記憶手段)
3 検索サーバ(制御手段、入力手段)
4 端末機(入力手段)
5 邸固有情報(建物データ)
6 部材データ(建物データ)
8 被災状況データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を購入した顧客の当該建物の邸固有情報及び当該建物を構成する部材データを含んだ建物データを設定し、被災の際に被災した前記建物の前記邸固有情報及び被災状況データを入力し、該入力された前記邸固有情報及び前記被災状況データに基づいて交換が必要になると予想される前記部材データを出力することを特徴とする建物の部材管理方法。
【請求項2】
建物を購入した顧客の当該建物の邸固有情報及び当該建物を構成する部材データを含んだ建物データを記憶する記憶手段と、被災の際に被災した前記建物の前記邸固有情報及び被災状況データを入力する入力手段と、該入力手段から入力された前記邸固有情報及び被災状況データに基づいて前記記憶手段に記憶された前記建物データの中から該当する部材データを読み出して出力する制御手段とを備えていることを特徴とする建物の部材管理システム。
【請求項3】
前記被災状況データは、前記建物の被災箇所を示すデータであって、前記制御手段ではその被災箇所に該当する部材データを抽出して出力することを特徴とする請求項2に記載の建物の部材管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−348661(P2006−348661A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178227(P2005−178227)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】