説明

建物の階段

【課題】階段全体が一体となって大きく揺れることを防止することができるとともに、建物の変形に無理なく追随できる建物の階段を提供する。
【解決手段】複数の段板24が設けられた建物の階段において、隣接する段板24間の相対移動を許容する許容手段を設ける。許容手段は、段板24の両端位置に配置したリンク機構25により構成し、そのリンク機構25のリンク25aに段板24の両端を支持する。リンク機構25の両端におけるリンク25a,25bの先端を、建物の躯体21,22に対して水平軸を中心に回動可能に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物における階段に関するものであって、特に建物の変形に自然に無理なく追随して変形できるようにした階段の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、変形を可能にした階段としては、例えば特許文献1〜4に開示されるような構造が提案されている。
特許文献1に記載の従来構造は、歩行者が階段を上がり下がりする際の振動低減を目的とするものであって、踊り場を備え、その踊り場と、踊り場から上方に延びる上方階段部と、踊り場から下方に延びる下方階段部により、階段ユニットが形成されている。そして、上方階段部の上端部がゴムブッシュを介して建物の躯体に回動可能に枢支されるとともに、下方階段部の下端部が滑り部材を介して建物の躯体に水平移動可能に支持されている。下方階段部の下端部と建物の躯体との間には、コイルバネ等の振動吸収機構が設けられている。そして、歩行者の昇降にともなう振動が前記振動吸収機構によって吸収されるとともに、騒音がゴムブッシュによって遮断されるものである。
【0003】
また、特許文献2に記載の従来構造は、建物の揺れに対する制振装置の配置位置の確保における容易性を目的とするものであって、階段部と、その階段部の上端に設けられた第1踊り場と、階段部の下端に設けられた第2踊り場とにより、階段ユニットが形成されている。そして、上下の階段ユニットの第1及び第2踊り場が並べられた状態で、それらの第1踊り場及び第2踊り場の裏面の間には、オイルダンパよりなる制振装置が設けられている。このオイルダンパによって、強風や地震等において制振作用を得るようにしている。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の従来構造は、地震の際の建物の変形に階段が追随できるようにすることを目的するものであって、階段部と、その階段部の上端に設けられた第1踊り場と、階段部の下端に設けられた第2踊り場とにより、階段ユニットが形成されている。さらに、第1踊り場の端部が滑り支承を介して建物の躯体に相対移動可能に取り付けられるとともに、第2踊り場の端部が固定部及びその両側の半固定部を介して建物の躯体に回動可能に取り付けられている。そして、第1踊り場が躯体に対して水平移動されるとともに、第2踊り場の部分が回転されることにより、階段ユニットが建物の変形に対して追随されるとしている。
【0005】
特許文献4は、歩行者が階段を昇降する際の音の低減を目的とするものであって、鋼製階段の幅方向中間部の下方に反力ビームが階段昇降方向に傾斜して延びるように備えられている。各段板と反力ビームとの間にそれぞれ弾性材が設けられている。そして、前記弾性材によって、騒音と振動とが吸収されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−292587号公報
【特許文献2】特開2001−207675号公報
【特許文献3】特開2008−223422号公報
【特許文献4】特開2003−193646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これらの各特許文献の従来構造においては、1つの階段部、1つの踊り場と2つの階段部、あるいは1つの階段部と2つの踊り場とにより全体として剛体状の固定構造をなす変形しにくい階段ユニットが形成されている。このため、制振等のための構造が設けられていても、地震や強風等の発生時に、階段ユニット全体が一体となって大きく揺れることを回避できないだけではなく、階段ユニットの両端と躯体との間の部分において、それらの接近及び離間の運動が集中することになる。従って、階段上の歩行者の歩行が困難になるばかりでなく、立つ姿勢を維持することすら不可能になるおそれがあり、しかも階段ユニットの一部に大きな応力が作用したり、階段ユニットと躯体あるいは階段ユニット同士が衝突したりして、階段ユニット等が破損するおそれがあった。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、建物の変形による階段の変形を階段全体で分散させて、階段が建物の変形に無理なく追随できるようにした建物の階段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数の段板が設けられた建物の階段において、隣接する段板間の相対移動を許容する許容手段を設けたことを特徴としている。
従って、この発明においては、地震が発生した場合、許容手段により隣接する段板間の相対移動が許容される。よって、地震等により建物が変形した場合、その変形を各段板間等の相対移動よって階段全体に分散させることができる。従って、階段の各部が建物の変形に追随して無理なく変形するため、階段全体が一体となって大きく揺れることを防止することができて、歩行が困難になったり、階段等が破損したりする事態を回避できる。
【0010】
また、前記の構成において、前記許容手段を複数のリンクよりなる左右一対のリンク機構により構成し、その両リンク機構のリンク間に段板を架設するとよい。このように構成した場合には、許容手段の構成が簡単であるとともに、建物の変形時にリンク機構の伸縮変形により、隣接する踏み板間の相対移動を許容することができる。
【0011】
さらに、前記の構成において、前記リンク機構の両端におけるリンクの先端を水平軸を中心に回動可能に連結するとよい。このように構成した場合には、建物の変形時にリンク機構が水平軸を中心に回動されることにより、段板の長さ方向に沿った方向の建物の変形に円滑に追随できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、階段の各部が建物の変形を少しずつ分担して変形することにより、階段が建物の変形に追随して無理なく変形するため、階段全体が一体となって大きく揺れることを防止することができて、歩行者の歩行が困難になったり、階段等が破損したりすることを防止できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の建物の階段を示す模式図。
【図2】同じく第1実施形態の建物の階段を示す側面図。
【図3】図2の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図2の建物の階段におけるリンク機構の上端部の連結構成を示す要部拡大斜視図。
【図5】同建物の階段におけるリンク機構の下端部の連結構成を示す要部拡大斜視図。
【図6】同建物の階段における手摺りの取付構成を示す要部拡大側面図。
【図7】図2の建物の階段の動作状態を示す要部側面図。
【図8】第2実施形態の建物の階段を示す要部斜視図。
【図9】(a)(b)(c)は、それぞれ第3実施形態の建物の階段を示す簡略平面図、下部側の側面図、上部側の側面図。
【図10】図9の建物の階段の要部斜視図。
【図11】(a)(b)(c)は、それぞれ第4実施形態の建物の階段を示す簡略平面図、下部側の側面図、上部側の側面図。
【図12】図11の建物の階段の要部斜視図。
【図13】(a)は第4実施形態の踊り場パネルを示す一部平面図、(b)は踊り場パネルの支持部を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図7に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、建物の梁等よりなる上部躯体21と下部躯体22との間には、階段ユニット23が架設されている。この階段ユニット23は、左右一対のリンク機構25と、それらの両リンク機構25に両端が支持されて、両リンク機構25間に架設された複数枚の段板24とから構成されている。そして、このリンク機構25によって、隣接する段板24間の相対移動を許容するための許容手段が構成されている。前記リンク機構25は、複数のリンクによりレージートング状に形成されている。そこで、以下に、リンク機構25及びその関連構成を詳細に説明する。
【0015】
図2、図4及び図5に示すように、各リンク機構25は、ほぼ水平方向に延びる複数の横リンク25aと、ほぼ鉛直方向に延びる複数の縦リンク25bとを、それらの中間部及び両端において連結軸25cにより相互に回動可能に連結して構成されている。なお、最上端の横リンク25a及び縦リンク25bと、最下端の横リンク25aは短く形成され、各両端部に連結軸25cが位置している。前記各段板24は、ほぼ水平に延びる踏み板部24aと、その踏み板部24aの後端(階段上側)縁からほぼ鉛直上方に起立する蹴上げ板部24bと、踏み板部24aの前端(階段下側)縁からほぼ垂直下方に延びる折り返し部24cとを有するように形成されている。
【0016】
図3に示すように、前記各段板24の長さ方向の左右両端部の裏面には、各一対の固定ピン26が溶接固定され、それらの固定ピン26の先端にはネジ部26aが形成されている。最下端の横リンク25aを除いて、両リンク機構25の各横リンク25aの先端部には、固定ピン26を挿通可能な一対の透孔27が形成されている。そして、固定ピン26が透孔27に挿通された状態で、ネジ部26aにナット28が螺合されることにより、段板24の両端部が両リンク機構25の横リンク25aの先端部に載置状態で支持されるとともに、その状態で固定されている。
【0017】
図2及び図4に示すように、前記左右の両リンク機構25の上端における横リンク25aの端部には、連結部29が折り曲げ形成されている。リンク機構25の上部側における建物の躯体(以下、上部躯体という)21には、連結金具30が複数のボルト31により固定されている。そして、前記連結部29が水平軸としての連結軸32を介して連結金具30に取り付けられることにより、リンク機構25の上端部が上部躯体21に対して水平な連結軸32を中心に回動可能に連結されている。
【0018】
図2及び図5に示すように、前記各リンク機構25の下端部における縦リンク25bの下端部には、連結軸36aを介して連結レバー36が支持されている。リンク機構25の下部側における建物の躯体(以下、下部躯体という)22には、連結金具34が複数のボルト35により固定されている。連結金具34には前記連結レバー36が水平軸としての連結軸37を介して回動可能に支持されている。そして、縦リンク25bの先端が連結軸36a及び連結レバー36を介して連結金具34に取り付けられることにより、リンク機構25の下端部が下部躯体22に対して連結軸37を中心に回動可能に連結されている。
【0019】
図2及び図6に示すように、階段ユニットは手摺り39を備えている。すなわち、前記各段板24のうちの複数の段板24であって,少なくとも上端部,下端部及び上下中間部の段板24の両端上面には、支柱381、382が立設固定されている。上下両端位置の支柱382には上下各一対の2軸(1軸42aのみを図示)タイプのユニバーサルジョイント42がそれぞれ連結軸42bを介して回動可能に支持されている。中間部の支柱381には上下一対の伸縮ジョイント43が連結軸43aを介して回動可能に支持されている。この伸縮ジョイント43は、一対の挿入孔43bを有し、その挿入孔43bに連結軸39aがスライド可能に挿入されて構成されている。そして、隣接する支柱381,382間に位置する手摺り部材391が連結軸39aを介して前記ユニバーサルジョイント42及び伸縮ジョイント43に対して回動可能に連結されている。
【0020】
次に、前記のように構成された建物の階段について作用を説明する。
さて、図2に示すように、階段ユニット23が建物の上部躯体21と下部躯体22との間に架設された状態においては、両リンク機構25の各横リンク25aの先端部に段板24及びその段板24上の手摺り39,さらには、階段ユニット23上を歩行する歩行者の重量等の荷重が作用する。従って、各横リンク25aの先端部は、片持ち梁として機能する。このため、横リンク25aは縦リンク25bよりも強靱な形状のものが望ましい。ただし、縦リンク25bの横リンク25aとの連結点には下向きの力が作用する。一方、横リンク25aの基端側には中央の連結軸25cを中心とした上向きの曲げモーメントが作用し、その曲げモーメントは縦リンク25bに対する上向きの力となる。従って、横リンク25aの先端部及び中間部には上向きの力が作用する。以上のように、前記両リンク25a,25bに作用する下方への荷重は、それと相反する上向きの力となって、ある程度相殺される。従って、横リンク25aに対する負荷が軽減される。
【0021】
この状態で、地震や強風が発生し、建物の横揺れにより上部躯体21と下部躯体22とが水平方向において接近及び離間されるように相対移動(図1及び図2の左右方向への移動)された場合には、以下のように作用する。例えば、図7に実線及び2点鎖線で示すように、上部躯体21と下部躯体22との間が接近されると、リンク機構25が収縮変形されて、隣接する段板24が接近方向に相対移動される。また、上部躯体21と下部躯体22との間が接近されると、隣接する段板24が離間方向に相対移動される。このとき、手摺り39の連結軸39aが伸縮ジョイント43の挿入孔43b内において伸縮方向にスライド移動されるとともに、伸縮ジョイント43及びユニバーサルジョイント42が連結軸39a,42a,42b,43aを中心に回動して、手摺り部材391が支柱381,382に対して上下方向に相対回動される。このため、手摺り39の伸縮が許容される。
【0022】
また、建物の横揺れにより、上部躯体21と下部躯体22とが段板24の長さ方向に沿って水平方向へ移動された場合には,言い換えれば上部躯体21と下部躯体22とが左右に互い違い方向に相対移動された場合には、図4及び図5から明らかなように、リンク機構25が上端部及び下端部の連結軸32,37を中心に回動されて、階段ユニット23の変形が許容される。このとき、リンク機構25の上端部及び下端部の連結軸32,37を中心とした回動において、その回動角度に差が生じても、支柱382と手摺り部材391との間にユニバーサルジョイント42が設けられているため、その差を吸収できる。
【0023】
さらに、建物の縦揺れにより、上部躯体21と下部躯体22とが上下互い違い方向に相対移動された場合には、前述した水平方向の接近離間方向に相対移動された場合とほぼ同様に、リンク機構25が伸縮変形して、階段ユニット23はその相対移動を許容する。
【0024】
なお、上部躯体21と下部躯体22とが前述した接近離間方向,水平互い違い方向及び上下互い違い方向のいずれの方向に移動される場合においても、連結軸25c等とリンク25a,25bとの各組付け部のわずかな隙間分の各部品の移動や、リンク25a,25b等の構成部品の変形等によって、階段ユニット23全体の変形が許容される。
【0025】
以上のように、この第1実施形態においては、地震等の建物の変形にともなう上部躯体21と下部躯体22との間の相対移動に対して階段ユニット23は、その各段板24間の部分等が少しずつ相対移動する。このため、階段ユニット23は、その各部が建物の変形を少しずつ分担し、言い換えれば階段ユニット23の変形がユニット全体に分散され、このため、階段ユニット23は建物の変形に無理なく追随する。
【0026】
従って、この実施形態においては、以下の効果がある。
(1) 段板24の両側に許容手段としてのリンク機構25が設けられているため、リンク機構25の各リンク25a,25bが回動することにより、段板24が相互の接近または離間方向に相対移動される。従って、地震や強風の発生時に、階段ユニット23全体が一体となって大きく揺れることを防止することができる。そのため、建物が大きく揺れたとしても、歩行者の歩行はそれほど困難にはならず、しかも階段や建物が破損されることを防止できる。
【0027】
(2) 前記段板24の相対移動時に支柱381,382に対する手摺り部材391の相対回動が許容される。よって、手摺り39に無理な力が作用するおそれを抑制することができ、手摺り39の破損を防止できる。
【0028】
(3) 階段ユニット23が、一対のリンク機構25を主体に構成されている。このため、階段ユニット23のリンク機構25を工場において組み立てた状態で、設置現場まで搬送する際に、収縮させて嵩張ることなく搬送できる。そして、設置現場においては、リンク機構25を伸長させるとともに、その上に段板24をナット28を用いてネジ着し、手摺り39の支柱38間に連結軸39b等により手摺り部材391を組み付ければよい。このため、階段ユニット23の搬送作業や組付けを容易に行うことができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、図8に基づいて前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
さて、この第2実施形態においては、リンク機構25の下端部がボール継手46を介して下部躯体22の床面に支持されている。すなわち、リンク機構25の下端部における縦リンク25bの先端には取付部47が折り曲げ形成され、その取付部47にはボール継手46の受け体46aが取り付けられている。下部躯体22上には取付板48が複数のボルト49により固定され、その取付板48上にはボール継手46の受け体46aに係合するボール46bが取り付けられている。
【0031】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。また、この第2実施形態においては、以下の効果がある。
(4) リンク機構25の下端部がボール継手46を介して下部躯体22に連結されているため、リンク機構25の下端部を下部躯体22に対して全方向へ無理なく回動させることでき、建物の変形に対する階段ユニット23の追随性を向上できる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、図9(a)〜(c)及び図10に基づいて、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0033】
さて、この第3実施形態においては、建物の梁等よりなる上部躯体21と下部躯体22との間に、4本の支柱50が上下各一対のボール継手51,52を介して立設支持されている。支柱50の中間部間には、踊り場53がヒンジ54を介して回動可能に支持されている。そして、上部躯体21と踊り場53との間、及び踊り場53と下部躯体22との間に、前記第1実施形態とほぼ同様な構成である一対のリンク機構25と複数の段板24とよりなる階段ユニット23A,23Bがそれぞれ架設されている。この場合、前記ヒンジ54の軸と、リンク機構25の各連結軸25cとは、水平面内において90度異なる方向を向くようにされている。ただし、この第3実施形態においては、第1,第2実施形態と比較して、各階段ユニット23A,23Bのリンク25a,25bや段板24の個数は少ない。
【0034】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。また、この第3実施形態においては、以下の効果がある。
(5) 階段ユニット23間に踊り場53が配置され、その踊り場53が上部躯体21と下部躯体22との間に揺動自在に支持されている。このため、地震の発生時には、踊り場53の建物に対する相対移動が許容されるとともに、階段ユニット23の各段板24の相互の相対移動が許容される。従って、踊り場53及び階段ユニット23において建物の変形に追随できる。
【0035】
(6) しかも、踊り場53のヒンジ54の軸と、リンク機構25の各連結軸25cとは、水平面内において90度異なる方向を向くようにされているため、ボール継手51,52の作用と相まって、踊り場53と階段ユニット23との全体組は、各方向に自在に変形あるいは移動できる。従って、建物の変形に対して柔軟に追随できる。
【0036】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を、図11(a)〜(d),図12及び図13(a)(b)に基づいて、前記第3実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
さて、この第4実施形態においては、建物の梁61に踊り場53を構成する一対の踊り場パネル53Aが並設され、それらのパネル53Aは梁61上のピン62に対して長孔63を嵌合することにより、左右方向(梁61の長さ方向)に移動可能である。なお、図13(b)に示すように、ピン62と長孔63の両端との間にスプリング64を圧縮状態で介在させて、そのスプリング64のバネ力によりパネル53Aを左右方向の中立位置に保持するようにしてもよい。そして、上部躯体21と一方のパネル53Aとの間、及び他方のパネル53Aと下部躯体22との間に、前記第3実施形態と同様な複数の一対のリンク機構25と段板24とよりなる階段ユニット23A,23Bがそれぞれ架設されている。この場合、各階段ユニット23A,23Bのリンク機構25の連結軸25c軸線と、前記長孔63の延長方向とは平行となるようにされている。
【0038】
従って、踊り場パネル53Aの左右方向移動とリンク機構25の伸縮運動とは拘束し合うことなく、それらは建物の変形に対して円滑に追随移動する。
従って、この第4実施形態においても、前記第3実施形態に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0039】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 手摺り39の上端及び下端の支柱382をそれぞれ建物の上部躯体21及び下部躯体22に固定すること。あるいは、手摺り39の両端を建物の躯体に直接固定すること。このように構成した場合、手摺り39の変形においてユニバーサルジョイント42が有効に機能し、手摺り39に対して無理な力が作用することを防止できる。
【0040】
・ 手摺り39の支柱382と手摺り部材391との間のユニバーサルジョイント42に代えて、1軸のみの軸による連結構成とすること。この場合、軸は水平な軸線を有するように用いることが好ましい。
【0041】
・ 前記第3,第4実施形態において、踊り場53を建物の躯体に固定すること。このように構成した場合、踊り場の上下の階段ユニットが建物の変形に追随される。
・ 前記図8に示す第2実施形態においては、リンク機構25の下端を下部躯体22に対してボール継手46を介して支持したが、これとは逆に、リンク機構25の上端を上部躯体21に対してボール継手を介して支持したり、あるいはリンク機構25の上下両端を上部,下部躯体21,22に対してボール継手を介して支持したりすること。
【0042】
(別の技術的思想)
さらに、上記実施形態により把握される請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果とともに記載する。
【0043】
(A) 複数の段板に支柱を立設するとともに、支柱と隣接する他の支柱または躯体との間に手摺り部材を介在させ、その手摺り部材と支柱または躯体との間には支柱間または支柱と躯体との間の位置関係の変化を許容する手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の建物の階段。ここで、前記手段は、前記各実施形態における連結軸39b,42a,42b,43aによる連結構成,伸縮ジョイント41の挿入孔43bと連結軸39aとの嵌合構成,ユニバーサルジョイント42のうちの少なくとも一つを指す。
【0044】
この構成によれば、建物が変形した時に、隣接する踏み板間の相対移動が許容されると同時に、前記手段により踏み板上の支柱間または支柱と躯体との間の位置関係の変化が許容される。よって、踏み板上の支柱間または支柱と躯体との間の手摺りに無理な力が作用するおそれを抑制することができる。
【0045】
(B) 前記リンク機構の先端をボール継手を介して躯体に支持したことを特徴とする請求項3または前記技術的思想(A)に記載の建物の階段。
この構成によれば、リンク機構の先端を建物の躯体に対して全方向へ回動可能に連結することができて、建物の変形に対して円滑に追随することができる。
【0046】
(C) 踊り場と、上部躯体及び下部躯体との間に請求項1〜3,前記技術思想(A)項,(B)項のうちのいずれか一項に記載の構成を介在させたことを特徴とする建物の階段。従って、踊り場を設けた階段においても、前述した建物の変形に対する追随機能を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
21…上部躯体、22…下部躯体、23…階段ユニット、24…段板、25…許容手段を構成するリンク機構、25a…横リンク、25b…縦リンク、25c…連結軸、30…連結金具、32…連結軸、34…連結金具、36…連結レバー、37…連結軸、38…支柱、382…手摺り、46…ボール継手、50…支柱、53…踊り場。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段板が設けられた建物の階段において、隣接する段板間の相対移動を許容する許容手段を設けたことを特徴とする建物の階段。
【請求項2】
前記許容手段を複数のリンクよりなる左右一対のリンク機構により構成し、その両リンク機構のリンク間に段板を架設したことを特徴とする請求項1に記載の建物の階段。
【請求項3】
前記両リンク機構の両端におけるリンクの先端を水平軸を中心に回動可能に連結したことを特徴とする請求項2に記載の建物の階段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−209606(P2010−209606A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58036(P2009−58036)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】