説明

建物外壁構造、及び、建物外壁工法

【課題】壁面全体の内のある特定の箇所だけについて、新たな面材を配置することはできないものであった。
【解決手段】柱材(柱6、間柱7)の室外側に配置される耐震性面材21と、前記耐震性面材21の室外側に配置される胴縁材(胴縁材8)と、前記胴縁材(胴縁材8)の室外側に配置される外壁材20Aと、を有する第一の特定箇所30と、柱材(柱6、間柱7)の室外側に配置される胴縁材(胴縁材81)と、前記胴縁材(胴縁材81)の室外側に配置される外壁材20Bと、を有する第二の特定箇所40と、を有する建物外壁構造であって、前記第一の特定箇所30の耐震性面材21と胴縁材(胴縁材8)の合計厚み寸法W3と、前記第二の特定箇所40の胴縁材(胴縁材81)の厚み寸法W4は、略同一の寸法に設定される、建物外壁構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁を構成するための建物外壁構造、及び、建物外壁工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁材により建物の耐震性能と防火性能を向上させる技術が知られている。また、耐震壁構造を改装により導入することで、既存の建物についても耐震性能を向上することを可能にする技術についても知られており、これについて開示する文献も存在する(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、耐震性能を有する外壁材を並列させて建物外周面を形成させるものであり、各外壁材は同一の厚みのものが使用されることとしている。また、この外壁材を固定するために柱間に渡される胴縁材についても、外壁材が固定される全箇所において、外壁材の厚み方向の寸法(胴縁材の厚み寸法)が同一のものが使用されることとしている。そして、このように、外壁材が配置される全箇所において胴縁材の厚み寸法を均一にすることで、隣り合う外壁材の壁面が略同一面上に配置され、一連の外壁面が構成されることとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−231765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、建物の躯体構造においては、少しだけ壁耐力が不足し、構造計算上の基準あるいは要求水準を満たせない場合がある。この場合では、一部の耐力壁部分に他の耐力壁を追加し、この追加した他の耐力壁の壁耐力を加算することで、全体としての壁耐力を補強して、基準を満たそうとする場合がある。この場合、構造用合板9mmに代表されるような、ある一定以上の厚みの面材を釘等で追加的に耐力壁部分に固定することにより、補強をする場合がある。
【0006】
しかし、仮に、特許文献1に開示される技術に利用して耐力壁としていた場合では、一部に構造用合板等の厚さ9mm程度の新たな面材を貼ってしまうと、その部分だけが、総厚(壁を構成する部材の厚みを総合したもの)で厚くなってしまい、新たな面材が配置された箇所における外壁材と、この面材が配置されない箇所における外壁材との間で、その室内外方向の位置にずれが生じることになる。これは、各胴縁材の厚み寸法は均一であるためであり、別の新たな面材を介設すると、この新たな面材の厚みの分だけ外壁材が室外側にずれるためである。そして、結果として、外装がきれいに仕上がらないことになってしまう。
【0007】
また、構造用合板等の厚さ9mm程度の新たな面材を介設すると、建物開口部の周囲において、壁の総厚(壁を構成する部材の厚みを総合したもの)が厚くなってしまい、サッシなどの建具に対する納まりの問題も生じてしまうことになる。このため、新たな面材を設ける場合には、この面材を建物の全周あるいは1面全部に配置する必要がある。換言すれば、壁面全体の内のある特定の箇所だけについて、新たな面材を配置することはできないものであった。
【0008】
また、耐力壁として認められるものは国土交通省告示第1100号にも示されているように、一般的な合板のような面材は7.5mm以上のものが用いられることとなっており、それより薄いものは耐力が出るものと認められず、従来は、他の耐力壁と組み合わせて補強するような考え方はなされていなかったのである。
【0009】
そこで、本発明は以上の問題に鑑み、新規な建物外壁構造、及び、建物外壁工法について提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1に記載のごとく、
柱材の室外側に配置される耐震性面材と、
前記耐震性面材の室外側に配置される胴縁材と、
前記胴縁材の室外側に配置される外壁材と、
を有する建物外壁構造とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載のごとく、
柱材の室外側に配置される耐震性面材と、
前記耐震性面材の室外側に配置される胴縁材と、
前記胴縁材の室外側に配置される外壁材と、
を有する第一の特定箇所と、
柱材の室外側に配置される胴縁材と、
前記胴縁材の室外側に配置される外壁材と、
を有する第二の特定箇所と、
を有する建物外壁構造であって、
前記第一の特定箇所の耐震性面材と胴縁材の合計厚み寸法と、
前記第二の特定箇所の胴縁材の厚み寸法は、
略同一の寸法に設定される、建物外壁構造とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載のごとく、
前記耐震性面材は、7.5mm未満の厚みを有するものとする。
【0014】
また、請求項4に記載のごとく、
前記耐震性面材は、3mmの整数倍(1以上の整数)の厚みを有するものとする。
【0015】
また、請求項5に記載のごとく、
柱材の室外側に耐震性面材を配置し、
前記耐震性面材の室外側に胴縁材を配置し、
前記胴縁材の室外側に外壁材を配置する、工程を有する建物外壁工法とするものである。
【0016】
また、請求項6に記載のごとく、
第一の特定箇所において、
柱材の室外側に耐震性面材を配置し、
前記耐震性面材の室外側に胴縁材を配置し、
前記胴縁材の室外側に外壁材を配置する工程と、
第二の特定箇所において、
柱材の室外側に胴縁材を配置し、
前記胴縁材の室外側に外壁材を配置する工程と、
を有し、
前記第一の特定箇所の耐震性面材と胴縁材の合計厚み寸法と、
前記第二の特定箇所の胴縁材の厚み寸法は、
略同一の寸法に設定される、建物外壁工法とするものである。
【0017】
また、請求項7に記載のごとく、
前記耐震性面材は、7.5mm未満の厚みを有するものとする。
【0018】
また、請求項8に記載のごとく、
前記耐震性面材は、3mmの整数倍(1以上の整数)の厚みを有するものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
即ち、請求項1に記載の発明においては、耐震性面材が発揮する「壁強さ倍率」によって、建物外壁構造全体としての壁強さ倍率を向上させることが可能となる。「壁強さ倍率」とは、財)日本建築防災協会発行の「木造住宅の耐震診断と補強設計」に示された壁耐力を示す指標である。
【0021】
また、請求項2に記載の発明においては、第一の特定箇所においては、耐震性面材が発揮する「壁強さ倍率」によって、建物外壁構造全体としての壁強さ倍率を向上させることが可能となるとともに、第一の特定箇所と第二の特定箇所における総壁厚寸法を略同一とすることができ、隣り合う外壁材の壁面において、室内外方向においてずれを生じさせることなく、一連の外壁面を構成することが可能となる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明においては、従来当業者において使用が想定されていなかった、7.5mm未満の合板などによって、壁耐力を補強ことが可能となる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明においては、広く流通される胴縁材の利用が可能となる。これは、一般に広く流通される胴縁材の厚みは、15mmや18mmといったような3mmの整数倍であるためである。たとえば、日本農林規格(JAS)構造用合板の例では、農林水産省告示第233号の第9条の構造用合板の標準寸法では、9mm以上は9.0、12.0、15.0、18.0、・・・と3mm刻みとなっている。また、農林水産省告示第1598号では、針葉樹の下地用製材の規格は、別表第4に示される木口の短辺は、9.0、12.0、15.0、18.0、・・・と3mm刻みとなっている。これにより、たとえば、第一の特定箇所では、3mmの合板等の面材に胴縁15mmを使用し、第二の特定箇所の胴縁には18mmの胴縁使用することで、広く流通している材料で容易に本発明の構成を成立させることができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明においては、耐震性面材の追加によって耐震性能の向上を図ることが可能となり、施工性に優れた工法を実現することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明においては、第一の特定箇所において、耐震性面材の追加によって耐震性能の向上を図ることが可能となり、施工性に優れた工法を実現することができる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明においては、従来当業者において使用が想定されていなかった、7.5mm未満の合板などによって、壁耐力を補強ことが可能となる。
【0027】
また、請求項8に記載の発明においては、一般に広く流通される胴縁材の厚みは、15mmや18mmといったように3mmの整数倍であるため、このように広く流通される胴縁材の利用が可能となり、手間がかからず部分的な壁耐力の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例に係る建物外壁構造を採用する建物について示す図。
【図2】本発明の一実施例に係る建物外壁構造の全体構成について示す図。
【図3】(a)は、本発明の一実施例に係る建物外壁構造の水平断面図。(b)は、本実施例の一実施例に係る建物外壁構造の詳細構成について説明する図。
【図4】壁強さ倍率の評価方法について説明する図。
【図5】荷重―変形曲線について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施例に係る建物外壁構造10を採用する建物について示す図である。この図1の例では、建物1の開口部に、窓2・2・・・、玄関ドア3が設けられ、他の部位が外壁材20A・20Bにて覆われるようにして一連の外装が構成されている。
【0030】
また、図2は、建物外壁構造10の全体構成について示す図である。この図2の例では、上下においてそれぞれ横設される梁5A・5Bの間に、柱6や間柱7・7が上下方向に配設されている。また、これら柱6、間柱7・7に対して胴縁材8・8や、胴縁材81・81が横架されている。
【0031】
また、図2に示すごとく、建物外壁構造10においては、図において左側の第一の特定箇所30と、図において右側の第二の特定箇所40において、異なる構成が用いられることとしている。
即ち、図2の左側の第一の特定箇所30においては、胴縁材8・8が用いられており、この胴縁材8・8の室内側には、耐震性面材21が配設される。この耐震性面材21の室外側に、透湿防水シート9が配設される。また、胴縁材8・8の室外側には、外壁材20Aが配設される。このように、第一の特定箇所30においては、耐震性面材21が配設される点が特徴となっている。
一方で、図2の右側の第二の特定箇所40においては、胴縁材81・81が用いられており、この胴縁材81・81の室内側には、透湿防水シート9が配設される。また、胴縁材81・81の室外側には、外壁材20Bが配設される。このように、第二の特定箇所40においては、耐震性面材21が配設されない点が特徴となっている。ただし、非常に高い耐力を発揮させるために、全面あるいは1面に耐震性面材21を配設することも、可能である。
【0032】
また、図3(a)(b)の左側に示されるように、第一の特定箇所30においては、室外側から順に、外壁材20A、胴縁材8、透湿防水シート9、耐震性面材21が配設される。また、外壁材20Aは、固定部材41によって、柱6や胴縁材8に対して固定される。また、胴縁材8は固定部材42によって柱6や間柱7に対して固定される。また、耐震性面材21は固定部材43によって柱6に対して固定される他、固定部材41・42によっても柱6や間柱7に対して固定される。そして、耐震性面材21と胴縁材8の間に透湿防水シート9が挟装されるようになっている。
【0033】
また、図3(a)(b)の右側に示されるように、第二の特定箇所40においては、室外側から順に、外壁材20B、胴縁材81、透湿防水シート9が配設される。また、外壁材20Bは、固定部材46によって、柱6に対して固定される。また、胴縁材81は固定部材47によって柱6に対して固定される他、固定部材46によっても柱6に対して固定される。そして、胴縁材81と柱6の間に透湿防水シート9が挟装されるようになっている。なお、本実施の形態では、第一の特定箇所30と第二の特定箇所40の両方をカバーするように、透湿防水シート9が張られるようになっている。
【0034】
以上の説明から解るように、図2、図3(a)に示すごとく、第一の特定箇所30においては耐震性面材21が配設され、第二の特定箇所40には耐震性面材21が配設されない構成となっている。そして、図3(b)に示すごとく、耐震性面材21が配設される第一の特定箇所30においては、この耐震性面材21の厚み寸法W1と、胴縁材8の厚み寸法W2の合計厚み寸法W3が、耐震性面材21が配設されない第二の特定箇所40に配設される胴縁材81の厚み寸法W4と略同一となるように構成されることとしている。なお、ここでいう「厚み寸法」とは、外壁材20Aの厚み方向における寸法をいうものである。
【0035】
これにより、図3(b)に示すごとく、第一の特定箇所30において耐震性面材21、胴縁材8、及び、外壁材20Aにて構成される総壁厚寸法WA(総合の厚み寸法)は、第二の特定箇所40において胴縁材81及び外壁材20Bにて構成される総壁厚寸法WBと、略同一に設定される構成とする。なお、外壁材20A・20Bについては、同一の厚み寸法のものが利用されるものとしている。
【0036】
以上のように、図3(b)に示すごとく、同一の厚み寸法を有する外壁材20A・20Bを用いる構成において、第一の特定箇所30に耐震性面材21が配設される場合においても、隣り合う外壁材20A・20Bにおいて、その壁面20a・20bを略同一面上に配置することが可能となる。これにより、隣り合う外壁材20A・20Bの壁面20a・20bにおいて、室内外方向においてずれを生じさせることなく、一連の外壁面を構成することが可能となる。
【0037】
以上の構成において、図2及び図3(a)(b)に示される耐震性面材21の厚みについては、特に限定されるものではないが、例えば、3mm、6mm、9mm、12mm、15mm、18mm、21mmなどの、3mmの整数倍(1以上の整数)のものが胴縁との組み合わせおいては相性がよく、開口部等との納まりを考えると3mm、6mmといった薄い面材が実際には使用されることが好適である。
【0038】
これは、一般に広く流通される胴縁材(本実施の形態でいう胴縁材8、胴縁材81)の厚みは、15mmや18mmといったように3mmの整数倍であるためで、このように広く流通される胴縁材の利用を可能とするためである。即ち、例えば、第一の特定箇所30においては厚み15mmの胴縁材8と厚み3mmの耐震性面材21を用いる一方、第二の特定箇所40においては厚み18mmの耐震性面材21を用いることにより、図3(b)に示される寸法W3・W4を略同一に設定することができ、ひいては、両特定箇所30・40の総壁厚寸法WA・WBを略一致させることができることとなり、広く流通される厚みを有する胴縁材を使用することができることとなる。
【0039】
また、図2及び図3(a)(b)に示される耐震性面材21の最大の厚み寸法については、特に限定されるものではないが、従来当業者において使用が想定されていなかった、7.5mm未満の合板であっても、後述の評価試験から解るように、壁耐力を補強ことが確認できている。
【0040】
また、図2及び図3(a)(b)に示される耐震性面材21の最小の厚み寸法については、特に限定されるものではないが、後述するように、耐力壁として機能させるため、3mm以上の厚み寸法とすることが好ましい。
【0041】
また、図2及び図3(a)(b)に示される耐震性面材21について、0.5mm刻みの寸法設定とすることによれば、胴縁などの厚み調整や、他の面材を追加するなどにより、壁の総厚の調整が容易なものとなる。
【0042】
また、図2及び図3(a)(b)に示される耐震性面材21の縦幅・横幅寸法については、特に限定されるものではないが、例えば、その室外側に配置される外壁材20Aと同一の寸法とするものや、外壁材20Aを横方向に二枚並べた分の寸法に相当するものなどが考えられる。
【0043】
また、図2及び図3(a)(b)に示される耐震性面材21の組成については、特に限定されるものではないが、ラワン普通合板などの普通合板やMDFなどであって、3mm程度厚みの製品規格有するものが好ましく、幅×長さでは910mm以上の製品規格を有するものが望ましい。また、性能面では外周部分について使用する場合は、耐水に対する配慮が必要なため、普通合板では接着1類といった仕様が好ましいと考えられる。そして、詳しくは後述するが、耐震性面材21が発揮する「壁強さ倍率」によって、建物外壁構造全体としての壁強さ倍率を向上させることが可能となるものである。
【0044】
また、図2及び図3(a)(b)に示される胴縁については、通常、針葉樹の製材が使用されるが、壁強さ倍率を向上させるためには、構造用合板やLVLや集成材といった曲げ剛性の高いものが好ましく、状況によっては木製でなく金属でも可能である。また、その間隔は一般的には各胴縁の間隔は、500mmピッチ以下に配置することになっているが、壁強さ倍率を向上させるには303mmピッチ以内にするのが好ましい。
【0045】
また、図2及び図3(a)(b)に示される外壁材20A・20Bの組成については、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディングなどの面材であって、曲げ剛性のある程度確保できる面材で耐水性能を有するものを挙げることができる。今回後述する実験で使用した窯業系サイディングはJISA5422による曲げ破壊荷重で900N以上のものを使用したが、同等以上の性能を有するものが好ましい。
【0046】
以上のように、図2及び図3(a)(b)に示される実施の形態では、
柱材(柱6、間柱7)の室外側に配置される耐震性面材21と、
前記耐震性面材21の室外側に配置される胴縁材(胴縁材8)と、
前記胴縁材(胴縁材8)の室外側に配置される外壁材20Aと、
を有する建物外壁構造とするものである。
【0047】
この構造によれば、耐震性面材21が発揮する「壁強さ倍率」によって、建物外壁構造全体としての壁強さ倍率を向上させることが可能となる。
【0048】
また、同様に、工法としては、
柱材(柱6、間柱7)の室外側に耐震性面材21を配置し、
前記耐震性面材21の室外側に胴縁材(胴縁材8)を配置し、
前記胴縁材(胴縁材8)の室外側に外壁材20Aを配置する、工程を有する建物外壁工法となる。
【0049】
また、図2及び図3(a)(b)に示される実施の形態では、
柱材(柱6、間柱7)の室外側に配置される耐震性面材21と、
前記耐震性面材21の室外側に配置される胴縁材(胴縁材8)と、
前記胴縁材(胴縁材8)の室外側に配置される外壁材20Aと、
を有する第一の特定箇所30と、
柱材(柱6、間柱7)の室外側に配置される胴縁材(胴縁材81)と、
前記胴縁材(胴縁材81)の室外側に配置される外壁材20Bと、
を有する第二の特定箇所40と、
を有する建物外壁構造であって、
前記第一の特定箇所30の耐震性面材21と胴縁材(胴縁材8)の合計厚み寸法W3と、
前記第二の特定箇所40の胴縁材(胴縁材81)の厚み寸法W4は、
略同一の寸法に設定される、建物外壁構造とするものである。
【0050】
この構造によれば、第一の特定箇所30においては、耐震性面材21が発揮する「壁強さ倍率」によって、建物外壁構造全体としての壁強さ倍率を向上させることが可能となるとともに、第一の特定箇所30と第二の特定箇所40における、総壁厚寸法WA・WBを略同一とすることができ、隣り合う外壁材20A・20Bの壁面20a・20bにおいて、室内外方向においてずれを生じさせることなく、一連の外壁面を構成することが可能となる。
【0051】
また、同様に、工法としては、
第一の特定箇所30において、
柱材(柱6、間柱7)の室外側に耐震性面材21を配置し、
前記耐震性面材21の室外側に胴縁材(胴縁材8)を配置し、
前記胴縁材(胴縁材8)の室外側に外壁材20Aを配置する工程と、
第二の特定箇所40において、
柱材(柱6、間柱7)の室外側に胴縁材(胴縁材81)を配置し、
前記胴縁材(胴縁材81)の室外側に外壁材20Bを配置する工程と、
を有し、
前記第一の特定箇所30の耐震性面材21と胴縁材(胴縁材8)の合計厚み寸法W3と、
前記第二の特定箇所40の胴縁材(胴縁材81)の厚み寸法W4は、
略同一の寸法に設定される、建物外壁工法となる。
【0052】
また、図2及び図3(a)(b)の構成において、地震などにより建物に揺れが生じた場合には、耐震性面材21が面外にはらむことが懸念されるが、仮に、耐震性面材21が面外にはらもうとした場合には、胴縁材(胴縁材8)や外壁材20Aによって、このはらみが抑えられることができる。そして、後述の評価でも説明するように、耐震性面材21のはらみ(ふくらみ)が胴縁によって抑えられるため、耐震性面材21の変形が抑えられることになり、耐震性面材21の壁強さ倍率向上に対する寄与が期待できることとなる。
【0053】
<実施例と比較例>
次に、本発明の構成を適用した実施例と、比較例などを用いて、本発明の構成による効果を説明する。主要な条件は次の通りである。
【0054】
(1)仕様
試験は実施例、比較例の仕様について行った。以下に主要な仕様について説明する。図4に仕様の概要を示した。
・上梁205A:断面105mm×180mm、長さ2730mm樹種米松(共通仕様)
・下梁205B:断面105mm×105mm、長さ2730mm樹種すぎ(共通仕様)
・上梁と下梁の間隔:2594mm(共通仕様)
・柱206A:断面105mm×105mm、長さ2594mm樹種すぎ(共通仕様)
・間柱207:断面27mm×105mm、長さ2594mm樹種すぎ(共通仕様)
・柱、及び間柱の間隔455mm(共通仕様)
・胴縁材8:15mm×50mm針葉樹構造用合板(共通仕様)
・胴縁材の間隔:303mmピッチ(共通仕様)
・胴縁材の止めつけ:CN65くぎ:303mm胴縁ピッチ
・サイディング200:窯業サイディング厚18mm×幅455mm×長さ2730mm(JISA5422品)
・サイディング止めつけビス:ステンレス専用ビス:トラス頭付きφ5.0mm L=50mm
・耐震性面材210:ラワン普通合板3mm×幅910mm×長さ1820mm JAS 接着1類材面品質1等
・普通合板の止めつけ:N50くぎ、合板横張りに対し、柱、間柱に縦方向のみ150mmピッチ
【0055】
表1に実施例、比較例の仕様を示す。
また、図5に実施例と比較例2の概要について示す。なお、比較例1は、実施例において耐震性面材210を省いた構成となる。
【表1】

【0056】
表1の「張り方」において「縦張り」とあるのは、サイディングの長手方向が鉛直方向に向けて配置されたことを意味する。また、「枚数」において「4」とあるのは、横方向に4枚の外壁材を並設したことを意味する。
また、「張り方」において「横張り」とあるのは、耐震性面材の長手方向が横方向に向けて配置されたことを意味する。また、「枚数」において「3」とあるのは、鉛直方向に3枚の外壁材を並設したことを意味する。
【0057】
また、表1において、実施例は、図2における特定箇所30を想定した例(耐震性面材21+15mm胴縁材+サイディング)である。
比較例1は、実施例に対し耐震性面材を省いた構成である。
比較例2は、耐震性面材のみを配設した構成であり、胴縁材も設けない構成である。
【0058】
(2)試験条件
評価試験は、財団法人建材試験センターが発行する「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載される試験方法に準じて行った。
【0059】
(3)試験結果
表2に試験結果を示す。また、図5に荷重−変形曲線(縦軸:荷重(単位KN)、横軸:変形(単位rad.(ラジアン)×10−3))を示す。
ここで、参考値は、比較例1と比較例2における数値を合計したものである。
【表2】

【0060】
(4)評価
評価は「壁強さ倍率」を得ることで行った。
「壁強さ倍率」は同じく「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載されている壁倍率評価に使用する4つの耐力(降伏耐力Py、終局耐力Pu、最大耐力Pmax、特定変形時の耐力)のうち終局耐力Puを用いることにより得た。詳しくは、実験で得られたPuを用いて、0.2×(2μ−1)1/2×Puを算出し、これを試験体の幅で除した値を「壁強さ倍率」とした。ここで、「μ」は塑性率を表し、上記実験においてせん断変形角と荷重との関係から得られる値である。
【0061】
表2における実施例と比較例1の比較から解るように、耐震性面材を存在させることで、高い壁強さ倍率を得ることができた。
また、比較例2から解るように、耐震性面材のみによっても、高い壁強さ倍率を得ることは確認された。
【0062】
また、実施例と参考値の比較から解るように、実施例の壁強さ倍率は、サイディング(比較例1)と耐震性面材(比較例2)を個別に設けた場合の壁強さ倍率よりも、高い値を示すことが確認された。これは、実施例の構成によれば、耐震性面材の面外方向のはらみ(ふくらみ)が胴縁やサイディングによって抑えられるため、耐震性面材の変形が抑えられることになり、実施例の全体としての壁強さ倍率を高くするために大きく寄与しているものと考えられる。
【0063】
以上のように、本発明の構成である実施例によれば、十分な壁強さ倍率を得ることができる。そして、この実施例の概念を利用する構成(図2における特定箇所30の構成)は、建物の壁面全体の内のある特定の箇所だけについて設置することも可能となり、耐震設計において、広い自由度を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディングなどの外壁材を用いて耐力壁を構成する技術について利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 建物
6 柱
7 間柱
8 胴縁材
9 透湿防水シート
10 建物外壁構造
20A 外壁材
20B 外壁材
21 耐震性面材
30 特定箇所
40 両特定箇所
81 胴縁材
91 透湿防水シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱材の室外側に配置される耐震性面材と、
前記耐震性面材の室外側に配置される胴縁材と、
前記胴縁材の室外側に配置される外壁材と、
を有する建物外壁構造。
【請求項2】
柱材の室外側に配置される耐震性面材と、
前記耐震性面材の室外側に配置される胴縁材と、
前記胴縁材の室外側に配置される外壁材と、
を有する第一の特定箇所と、
柱材の室外側に配置される胴縁材と、
前記胴縁材の室外側に配置される外壁材と、
を有する第二の特定箇所と、
を有する建物外壁構造であって、
前記第一の特定箇所の耐震性面材と胴縁材の合計厚み寸法と、
前記第二の特定箇所の胴縁材の厚み寸法は、
略同一の寸法に設定される、建物外壁構造。
【請求項3】
前記耐震性面材は、7.5mm未満の厚みを有することとする、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の建物外壁構造。
【請求項4】
前記耐震性面材は、3mmの整数倍(1以上の整数)の厚みを有することとする、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の建物外壁構造。
【請求項5】
柱材の室外側に耐震性面材を配置し、
前記耐震性面材の室外側に胴縁材を配置し、
前記胴縁材の室外側に外壁材を配置する、工程を有する建物外壁工法。
【請求項6】
第一の特定箇所において、
柱材の室外側に耐震性面材を配置し、
前記耐震性面材の室外側に胴縁材を配置し、
前記胴縁材の室外側に外壁材を配置する工程と、
第二の特定箇所において、
柱材の室外側に胴縁材を配置し、
前記胴縁材の室外側に外壁材を配置する工程と、
を有し、
前記第一の特定箇所の耐震性面材と胴縁材の合計厚み寸法と、
前記第二の特定箇所の胴縁材の厚み寸法は、
略同一の寸法に設定される、建物外壁工法。
【請求項7】
前記耐震性面材は、7.5mm未満の厚みを有することとする、
ことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の建物外壁工法。
【請求項8】
前記耐震性面材は、3mmの整数倍(1以上の整数)の厚みを有することとする、
ことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の建物外壁工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229767(P2010−229767A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80720(P2009−80720)
【出願日】平成21年3月28日(2009.3.28)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】