説明

建物用ファサード

【課題】建物用ファサードの外観意匠の改善を図ると共に、制振部材たる座屈拘束ブレースにルーバーの機能を兼ね備えること。
【解決手段】建物2の表面に、柱又は梁に直接又は間接的に座屈拘束ブレース3を接続する。そしてこの座屈拘束ブレース3は複数直列的に配して、直線的な座屈拘束ブレース群3’を同方向に多数列設ける。それからこの座屈拘束ブレース群3’との間に1又は2以上の複数個のルーバー4を配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外観意匠を整え且つ耐震性能の向上が図れる建物用ファサードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファサードは外観意匠の構築ばかりでなく、耐震補強用としても用いられてきている。例えば、当出願人の特許文献1に示すように、建物の外面に制振部材を加えた制御部材付加骨組3を配し、そして、建物の構造躯体1に接続すると共に、前記制御部材付加骨組3を支持架体としてルーバー8やガラス面10により構成される外壁を構築している。前記制振部材付加骨組3には座屈拘束ブレースや各種のダンパーが用いられている。
【特許文献1】特開2006−21494
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の特許文献1では、座屈拘束ブレースが制振部材付加骨組として用いられ、その配置がX型として形成されるが、デザイン的に嫌がられる例が多い。X型は堅牢であるが、見栄えがしない。また、この特許文献1の例では、制振部材付加骨組3の外側にルーバー8やガラス面9が配されている少なくとも2層の構造となり、建物の外側へ突出する不都合をも有している。
【0004】
そこで、この発明は、外観意匠の改善を図ると共に、制振部材たる座屈拘束ブレースをルーバーの機能を兼ね備えることで、新たなるデザイン性を持った耐震補強能力を持つ建物用ファサードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、この発明に係る建物用ファサードは、建物の表面に、柱又は梁に直接又は間接的に接続する座屈拘束ブレース群を直列的に配し、且つ該座屈拘束ブレース群を同方向に多数列設けると共に、前記座屈拘束ブレース群と同方向にしかも該座屈拘束ブレース群との間に1又は2以上の複数個のルーバーを配したことにある(請求項1)。
【0006】
これにより、座屈拘束ブレース群が直列的に配され且つ同方向に多数列設けられることから、耐震性能を向上させることができる。
【0007】
即ち、座屈拘束ブレースが圧縮荷重のみならず引張荷重にも耐力を持ち、大きな層間変形が生じたとき、ブレース芯材が塑性変形することでエネルギーを吸収し、構造物である建物の揺れを減少させることができる。しかも、座屈拘束ブレース群とルーバーとは同一方向で、外観意匠は並行な線が一方から他方へ流れるように表れ、すこぶる良好なデザイン性を表している。さらに、厚みも座屈拘束ブレース及びルーバーの厚みだけで良く、薄いものとなる。
【0008】
前記座屈拘束ブレース群及び前記ルーバーは、建物に対して傾斜して設置されていることにある(請求項2)。これにより、日射の制御が容易となる。夏期には、傾斜設置が水平設置よりも全方位(東西南)において高い遮熱効果が得られる。冬期には、保温効果が得られる。特に南東面135度(午前中のみ)や、南西面の45度に見られる。中間期には、全方位とも水平設置より遮熱効果が高い。前記傾斜の角度は20度から160度の範囲が好ましい(請求項3)。
【0009】
前記座屈拘束ブレースとルーバーは、その外形の形状を同一形状とすることが好ましい(請求項3)。これにより、デザインの統一性が得られる。即ち、断面角状でも、丸状でも良い。
【0010】
建物の柱又は梁に間接的に接続するには、鋼管を該柱又は梁に接続した上で該座屈拘束ブレース群及びルーバーを該鋼管に取付けるようにしている(請求項5)。これにより、座屈拘束ブレース群及びルーバーの取付を容易にしている。特に建物の補強に使用する場合は、好都合である。
【0011】
前記座屈拘束ブレースやルーバーは、柱又は梁に設けたブラケット又は鋼管に設けたブラケットに接続している(請求項6,7)。前記座屈拘束ブレースの両端の接続部と前記ブラケットと共に包まれる外殻を取付けることで(請求項8)、座屈拘束ブレースの接続部とブラケットの接続部位を見せなくできて、見栄えを向上させることのみならず、粉塵、埃の付着を防ぎ、外装の汚れを防止、接合部の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、座屈拘束ブレース群が直列に且つ多数列並設して設けられることであっても、座屈拘束ブレースによって建物の耐震性能を向上させることができる。しかも、座屈拘束ブレース群間にルーバーが配され、外観意匠は、平行な線が一方から他方へ流れるように表され、すぐれたデザイン性を表している。さらにファサードの厚みも薄くさせることができる(請求項1)。なお、座屈拘束ブレース群は、必要とする本数設ければ良く、それ以外はルーバーを配すれば良く、軽量化のみならず要求耐震特性に合わせて適宜数用いることができる(請求項1)。
【0013】
座屈拘束ブレースとルーバーは、建物に対して傾斜して設置されるから、日射に対する制御が可能となる。即ち、夏期には遮熱効果が、冬期には保温効果が得られる(請求項2)。また座屈拘束ブレースとルーバーは、その外形の形状を同一にすることで、デザインの統一が得られる(請求項3)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1乃至図4において、この発明の第1の実施例が示され、建物2の表面が建物用ファサード1により覆われている。この建物2は例えば10階建で、柱4と梁15とより成る構造体が鉄骨構造より造られている。
【0016】
前記建物用ファサード1は、座屈拘束ブレース3が直列に配された座屈拘束ブレース群3’と、その間に並行に配されるルーバー4とより成り、該座屈拘束ブレース群3’は、拡大した図2に示すように、座屈拘束ブレース3が複数個直列に接続されて配され、あたかも一本の部材のように目視される。
【0017】
ここに用いられる座屈拘束ブレース3は、公知構造で、ブレース芯材の周囲にコンクリートを配して圧縮荷重に耐えるようにしたものであり、その製造は、例えば特許第3663491号のような構造を採用している。この一例を図5に示して説明すれば、両端に接続部10a,10bを持つブレース芯材10の両側に、コンクリートを11が収納の溝型鋼12を配し、しかる後に両溝型鋼12同士を溶着して製造される。
【0018】
この座屈拘束ブレース3の全長は、傾斜が45度設置の場合には、建物の階層間の高さ寸法の1.4倍程となる。今まで説明した座屈拘束ブレース3は、建物の階層間ごとの梁に取付けていたが、一階層を飛ばし2階層ごとに接続しても良いことは勿論である。
【0019】
前述の座屈拘束ブレース3は、建物の構造体である梁15の凹部16内に収納され、接続されている鋼管17に突設のブラケット18に、その両端の接続部10a,10bがボルト締にて結合されている。なお、接続部10a,10bとブラケット18とが目視されるのを防ぐために外殻19を設けている。この外殻19は伸ばして座屈拘束ブレース群3’の全体を覆うようにしても良い。このようにすることで下記するルーバー4との形状、色彩等の統一に便利となるし、粉塵、埃の付着を防ぎ、外装の汚れを防止、接合部の耐久性の向上に寄与する。
【0020】
ルーバー4は、前記座屈拘束ブレース群3’に添って並設され、樹脂等で作られ、断面は座屈拘束ブレース3と同じ形状としてしかも同色とするなど統一性を持たせている。それから、ルーバー4の適所において、前記鋼管17に突設のブラケット18にボルト締されている。このルーバー4は前記座屈拘束ブレース群3’の間で一列設けられているが、複数列でも良く、その場合は、構造体の強度との関係から適宜に選択される。
【0021】
前記座屈拘束ブレース群3’とルーバー4とは、建物に対して傾斜取付とされ、45度、135度程が好ましい。2つの傾斜角にての検証の結果は、夏期に傾斜取付の方が、水平ルーバーよりも全方位において高い遮熱効果が得られた。また冬期に、特に南東面の135度(午前中)や南西面の45に保温効果が得られた。さらに、中間期では、全方位ともに水平ルーバーの遮熱効果が高い。しかし、傾斜45度は南西面及び西面においては遮熱効果をあまり期待できない。その他の方位では、遮熱効果が得られた。
【実施例2】
【0022】
実施例1においては、梁15に取付られた鋼管17を固着しそのウェブ面に突設のブラケット18に座屈拘束ブレース群3’やルーバー4を取付けているが、新築の建物であっては、梁に予めブラケットを突設しておき、それに取付けるようにしても良いし、または、柱に予めブラケットを突設しておき、それに取付けるようにしても良い。
【0023】
建物をファサード1を用いて耐震補強を図る場合、図2,図3にあっては、鋼管17を水平方向に通して補強の梁通し型としている。しかし、図6,図7は共に鋼管20を垂直方向に通して補強の柱通し型としている。この場合は図6は、梁15にブラケット18を設け、このブラケット18に座屈拘束ブレース3の接続部10a,10bがボルト締めされている。これに対し図7は鋼管20にブラケット18を設け、このブラケット18に座屈拘束ブレース3の接続部10a,10bがボルト締めされている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例を示し、建物の表面に建物ファサードを配した正面図である。
【図2】同上部分拡大図である。
【図3】図2の状態の縦断面図である。
【図4】座屈拘束ブレース群とルーバーとが鋼管に接続した状態の拡大斜視図である。
【図5】座屈拘束ブレースの分解斜視図である。
【図6】他の実施例の鋼管を垂直方向に通して柱を補強した柱通し型であって、梁に座屈拘束ブレース群とルーバーを接続した状態の部分拡大図である。
【図7】他の実施例の鋼管を垂直方向に通して柱を補強した柱通し型であって、鋼管に座屈拘束ブレース群とルーバーを接続した状態の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
1 建物用ファサード
2 建物
3 座屈拘束ブレース
3’ 座屈拘束ブレース群
4 ルーバー
10a,10B 接続部
11 コンクリート
12 溝型鋼
14 柱
15 梁
16 凹部
17 鋼管
18 ブラケット
19 外殻
20 鋼管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の表面に、柱又は梁に直接又は間接的に接続する座屈拘束ブレース群を直列的に配し、且つ該座屈拘束ブレース群を同方向に多数列設けると共に、
前記座屈拘束ブレース群と同方向にしかも該座屈拘束ブレース群との間に1又は2以上の複数個のルーバーを配したことを特徴とする建物用ファサード。
【請求項2】
前記座屈拘束ブレース群及び前記ルーバーは、建物に対して傾斜して設置されていることを特徴とする請求項1記載の建物用ファサード。
【請求項3】
前記傾斜の角度を20度から160度の範囲としたことを特徴とする請求項2記載の建物用ファサード。
【請求項4】
前記座屈拘束ブレースとルーバーは、その外形の形状を略同一形状としたことを特徴とする請求項1記載の建物用ファサード。
【請求項5】
前記柱又は梁に間接的に接続するには、鋼管を建物の柱又は梁に接続した上に座屈拘束ブレース群及びルーバーを該鋼管に取付けるようにしたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の建物用ファサード。
【請求項6】
前記座屈拘束ブレース及びルーバーは、前記柱又は梁に設けたブラケットに接続したことを特徴とする請求項1記載の建築用ファサード。
【請求項7】
前記座屈拘束ブレース及びルーバーは、前記建物の柱又は梁に設けた鋼管に設けたブラケットに接続したことを特徴とする請求項1又は5記載の建物用ファサード。
【請求項8】
前記座屈拘束ブレースの両端の接続部と前記ブラケットが包まれるように外殻を取付けたことを特徴とする請求項1,2,4,5,6又は7記載の建物用ファサード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−115571(P2008−115571A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298476(P2006−298476)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【出願人】(506369748)有限会社安田アトリエ (2)
【出願人】(599100590)オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド (3)