説明

建物

【課題】駐車場スペースを設けると共に居住者のプライバシーの確保が可能な建物を得る。
【解決手段】この住宅10には車寄せ36が設けられており、玄関部分72が風雨にさらされないようになっている。つまり、車両26を乗降する際に乗員が雨に濡れない。また、車寄せ36を構成する貫通部28は雨天時に屋外の子供の遊び場としての利用も可能である。一方、玄関ドア32と対向する位置には収納庫24が設けられており、この収納庫24は道路14と平行に設けられている。このため、玄関ドア32は当該収納庫24によって道路14から直接見えないようになっている。したがって、居住者のプライバシーが確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車寄せスペースが設けられた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場スペースが設けられた建物において、例えば特許文献1では、駐車場スペースを挟んで居住スペース及び収納庫が設けられた構成が開示されている。ここでは、当該駐車場スペースには屋根部が設けられているため、駐車場スペース内に停車された車両はこの屋根部によって風雨から保護されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−323006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この先行技術では建物の玄関が道路に面して設けられているため、建物の玄関が道路側から丸見えの状態となり、居住者のプライバシーの確保ができない。このため、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、駐車場スペースを設けると共に居住者のプライバシーの確保が可能な建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の建物は、一階部分の一部を貫通し、少なくとも車両が駐車可能な広さを有する貫通部と、前記貫通部の側部の一方を構成する側壁に設けられた玄関扉と、前記玄関扉と対向して設けられ、前記貫通部の側部の他方を構成する収納庫と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の建物には、一階部分の一部を貫通する貫通部が設けられている。この貫通部は少なくとも車両が駐車可能な広さを有しており、貫通部の側部の一方を構成する側壁に玄関扉が設けられている。
【0008】
貫通部は少なくとも車両が駐車可能な広さを有しているため、貫通部を例えば車庫として利用することができる。また、玄関の上方に貫通部の天井部を構成する上壁が設けられることとなるため、玄関が風雨にさらされない。このため、貫通部は単なる駐車場スペースとしてではなく車寄せスペースとしての利用が可能である。また、貫通部は雨天時における屋外の子供の遊び場としての利用も可能である。
【0009】
さらに、玄関扉と対向する位置には貫通部の側部の他方を構成する収納庫が設けられている。例えば、貫通部が道路に沿って(貫通部内を移動する車両の移動方向に対して道路が平行に)設けられた場合、当該収納庫によって玄関扉は道路から遮蔽されることとなる。また、仮に貫通部が道路に面して(貫通部内を移動する車両の移動方向に対して道路が直交して)設けられたとしても、玄関扉と道路とは略直交した状態で配置されることとなるため、当該玄関扉の正面が道路から直接見えることはない。
【0010】
請求項2に記載の建物は、請求項1に記載の建物において、前記収納庫の一部に耐力壁が設けられている。
【0011】
請求項2に記載の建物では、収納庫の一部に耐力壁が設けられるため、貫通部の上に居住スペース等を設けることができる。
【0012】
請求項3に記載の建物は、請求項1又は2に記載の建物において、前記収納庫内に収納された蓄電池と、前記蓄電池と接続され、建物本体の上部に設置された太陽光発電装置と、を有する。
【0013】
請求項3に記載の建物では、建物本体の上部に太陽光発電装置が設置されているため、太陽光発電装置によって発電された電力を電力会社に売電、又は建物内で使用することができる。また、収納庫内に蓄電池が収納されており、当該蓄電池と太陽光発電装置とが接続されている。これにより、太陽光発電装置によって発電された余剰電力を蓄電池に蓄電することができる。また、停電の際でも蓄電池に蓄電された電力を使用することができる。
【0014】
さらに、蓄電池を複数ストックすることで、複数の蓄電池に電力を充電させ蓄電することができる。そして、昼間は太陽光発電装置によって得られた電力を蓄電池に蓄えると共に夜間は料金が安い深夜電力を蓄電池に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電池に蓄電された電力を放電して利用するといった使い方ができる。
【0015】
請求項4に記載の建物は、請求項3に記載の建物において、前記収納庫における前記耐力壁以外の側壁の内部に前記蓄電池が設けられている。
【0016】
請求項4に記載の建物では、収納庫における耐力壁以外の側壁の内部に蓄電池が設けられており、当該側壁自体が蓄電池の収納部となっている。このため、収納庫内には、蓄電池以外の物を収納することができる。
【0017】
ここで、収納庫は貫通部を間において居住スペースが設けられている。蓄電池を居住スペース内に収納する場合、居室内の温度に影響を及ぼすため蓄電池を断熱する必要が生じる。居室内を区画する壁部の厚みによっては蓄電池を収納できない場合も生じ、蓄電池を収納する場所が制限されてしまう。しかし、収納庫は居住スペースと隣接していないため、蓄電池を断熱する必要がない。したがって、蓄電池の周囲に断熱材等を設ける必要がなく、その分のスペースを確保する必要がない。
【0018】
請求項5に記載の建物は、請求項3又は4に記載の建物において、前記蓄電池と接続され当該蓄電池に蓄電された電力が供給可能な自動車用の充電装置が前記収納庫に配置されている。
【0019】
請求項5に記載の建物では、例えば、ハイブリッドカー等の自動車用の充電装置が収納庫に配置されている。この充電装置は蓄電池と接続されており、当該蓄電池に蓄電された電力が供給可能とされている。そして、充電装置が収納庫内に配置されることで、当該充電装置を外部に露出させないようにすることができる。
【0020】
請求項6に記載の建物は、請求項3又は4に記載の建物において、前記蓄電池と接続され当該蓄電池に蓄電された電力が供給可能なコンセントが前記収納庫に設けられている。
【0021】
請求項6に記載の建物では、蓄電池と接続されたコンセントが収納庫に設けられており、当該コンセントによって蓄電池に蓄電された電力が供給可能とされる。これにより、例えば、プラグインタイプのハイブリッドカー(プラグインハイブリッドカー)のプラグをコンセントに接続させると、当該コンセントを介してプラグインハイブリッドカーに搭載された自動車用充電池を充電することができる。
【0022】
請求項7に記載の建物は、請求項1〜6の何れか1項に記載の建物において、前記貫通部の入口部及び出口部の少なくとも一方に設けられ、前記貫通部を塞ぐ仕切り手段を有する。
【0023】
請求項7に記載の建物では、貫通部の入口部及び出口部の少なくとも一方に、当該貫通部を塞ぐシャッターなどの仕切り手段が設けられることで、充電装置を充電しているときや自動車用蓄電池を充電しているとき等に、仕切り手段によって貫通部が塞がれるようにする。
【0024】
請求項8に記載の建物は、請求項1〜7の何れか1項に記載の建物において、前記貫通部の入口側が道路に面している。
【0025】
請求項8に記載の建物では、貫通部の入口側が道路に面しているため、貫通部内を移動する車両の移動方向と道路とは略直交した状態で配置されることとなる。このため、貫通部内を移動する車両の移動方向と道路とが略平行に設けられた場合よりも当該貫通部に対して車両を出入させやすい。また、玄関扉と道路とは略直交した状態で配置されることとなるため、当該玄関扉の正面が道路から直接見えることはない。
【0026】
請求項9に記載の建物は、請求項1〜8の何れか1項に記載の建物において、前記貫通部の奥方に設けられ車両が進入可能な進入スペースと、前記進入スペースに面して設けられた居室と、を有する。
【0027】
請求項9に記載の建物では、貫通部の奥方に車両が進入可能な進入スペースが設けられると共に、当該進入スペースに面して居室が設けられることで、居住者が玄関まで移動しなくても、当該居室から直接車両への乗降が可能となる。
【0028】
請求項10に記載の建物は、請求項5〜9の何れか1項に記載の建物において、前記収納庫に前記自動車が充電中の状態であることが前記居室から視認できる表示部が設けられている。
【0029】
請求項10に記載の建物では、収納庫に表示部が設けられており、自動車に搭載された自動車用蓄電池が充電中であることが居室から視認できるようになっている。このため、当該表示部を見ると当該自動車が充電中であるか否かが判別できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、請求項1に記載の建物によれば、駐車場スペースを設けると共に居住者のプライバシーの確保が可能である、という優れた効果を有する。
【0031】
請求項2に記載の建物によれば、貫通部の上方の空間を利用して自由な設計を行うことができる、という優れた効果を有する。
【0032】
請求項3に記載の建物によれば、時間帯に応じて電力を蓄電又は放電して互いに使い分けることができるため、経済的でありエコ住宅の実現を図ることができる、という優れた効果を有する。
【0033】
請求項4に記載の建物によれば、収納庫を蓄電システムとして利用することができる、という優れた効果を有する。
【0034】
請求項5に記載の建物によれば、盗電を防止することができる、という優れた効果を有する。
【0035】
請求項6に記載の建物によれば、収納庫に設けられた蓄電池の電力を容易に享受することができる、という優れた効果を有する。
【0036】
請求項7に記載の建物によれば、盗電を防止することができる、という優れた効果を有する。
【0037】
請求項8に記載の建物によれば、貫通部に対して車両を出入しやすく、また玄関扉が直接道路から見えないようにすることができ防犯対策を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0038】
請求項9に記載の建物によれば、介護を必要とする被介護者において、居室から直接車両への乗降を可能とすることで、被介護者及び当該被介護者を介護する介護者にとって負担が軽減される、という優れた効果を有する。
【0039】
請求項10に記載の建物によれば、室内に居ながらにして自動車用蓄電池の充電状態を確認することができるため大変便利である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施の形態に係る建物としての住宅を示す斜視図である。
【図2】(A)は、図1に示される住宅の一階部分の間取り図であり、(B)は、図1に示される住宅の二階部分の間取り図である。
【図3】本実施の形態に係る建物の収納庫を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る建物の蓄電システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本実施の形態に係る建物としての住宅の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る建物について説明する。
【0042】
図1には、本実施形態に係る建物としての住宅10の斜視図が示されている。なお、本発明の適用対象となる建物としてまず鉄骨軸組み工法が挙げられるが、これ以外の工法(例えば、ユニット工法等)であっても勿論良い。
【0043】
(建物の構成)
図1に示されるように、この住宅10は角地に設けられており、2面の道路12、14に面している。また、住宅10は二階建てとなっており、住宅10の屋根には、太陽光発電に用いられる太陽光パネル74が敷設されている。また、住宅10の一階部分16及び二階部分18には、居住スペース20、22(図2(A)、(B)参照)がそれぞれ設けられている。ここで、図2(A)には、住宅10の一階部分16の間取り図が示されており、図2(B)には、住宅10の二階部分18の間取り図が示されている。
【0044】
図2(A)、(B)に示されるように、一階部分16の居住スペース20及び二階部分18の居住スペース22はそれぞれ平面視で長方形状に形成されており、一階部分16の居住スペース20は、道路12に対して略直交し、かつ道路14に対して略平行に設けられている。そして、二階部分18の居住スペース22は、一階部分16の居住スペース20に対して略直交した状態で配置され、居住スペース22の一端側が居住スペース20から張り出した状態で形成されている。
【0045】
ここで、居住スペース22の一端側の一階部分には断面形状が矩形状を成す、他方の側壁としての収納庫24が設けられている。この収納庫24は居住スペース20及び道路14と平行に設けられており、当該居住スペース20との間に車両26が駐車可能な貫通部28が設けられている。
【0046】
そして、収納庫24には図示はしないが自転車などが収納可能とされている。図3には収納庫24の斜視図が示されている。この収納庫24の少なくとも住宅前面側に位置する側壁24Aには耐力壁(以下、「耐力壁24A」という場合もある)が使用されており、この耐力壁24Aによって居住スペース22が支持可能とされる。また、収納庫24の貫通部28側には開口24Bが形成されており、当該開口24Bには、両開き可能な開閉扉24Cが設けられている。この開閉扉24Cはドアタイプでも引き戸タイプでも良い。
【0047】
収納庫24の開閉扉24Cと対向する一階部分16の一方の側壁としての側壁30には、玄関扉としての玄関ドア32が設けられている。なお、ドアタイプ以外に引き戸タイプでも良い。ここで、側壁30にはアルコーブ34が形成されており、当該アルコーブ34内に玄関ドア32が設けられている。
【0048】
このため、当該アルコーブ34を利用してサイドドア26Aを開放させることができる。つまり、貫通部28と車両26との間の隙間が小さく、当該貫通部28内に車両26を収容させた状態で車両26のサイドドア26Aを開放させることができない場合でも、当該サイドドア26Aがアルコーブ34と対向するように車両26を停車させることで、サイドドア26Aを開放させることができる。
【0049】
これにより、貫通部28内へ車両26が収容可能な大きさであれば、人が乗降するスペースはアルコーブ34によって確保されるため、貫通部28のスペースを必要最小限の広さとすることができる。このため、この住宅10では、狭小住宅や敷地面積を確保し難い都市型住宅としての利用価値を得ることができる。
【0050】
また、玄関ドア32と収納庫24との間には、前述のように車両26が駐車可能な貫通部28が設けられており、貫通部28の上方には二階部分18が設けられている。このため、当該二階部分18によって貫通部28には屋根が設けられることとなる。
【0051】
つまり、この住宅10ではいわゆる車寄せ36が設けられている。そして、本実施形態では、この貫通部28の奥方には、後述する寝室38及び居間40に面して、木や花が植えられる庭42が設けられている。この庭42の一部が車両26の進入スペースとなって貫通部28と繋がっている。
【0052】
なお、図5に示されるように、貫通部28の入口部28A(道路12側)に、仕切り手段としてのシャッター44が設けられるようにしても良い。これにより、貫通部28の入口部28Aが塞がれることとなる。
【0053】
さらに、図示はしないが、貫通部28の出口部28B(庭42側)にシャッター44を設けても良い。これにより、当該貫通部28を外部から遮断された空間とすることができる。なお、貫通部28の入口部28A及び出口部28Bの少なくとも一方を塞ぐことができれば良いため、これに限定されるものではない。例えば、シャッターに代えてパネルゲートなどを設けても良い。
【0054】
ところで、本実施形態では、収納庫24の耐力壁24A以外の側壁、例えば耐力壁24Aと対向する側壁24Dの内部には、蓄電池76が収容可能とされている。そして、ここでは例えば、図3に示されるように、複数の蓄電池76が鉛直方向に沿って配列されている。これらの蓄電池76が直列接続されることにより、単体の蓄電池76よりも高い電圧を取り出すことができる。また、蓄電池76は基礎78よりも高い位置に収納されており、浸水から蓄電池76を保護している。
【0055】
(蓄電システムの構成)
本実施形態では、収納庫24が蓄電システム96として利用されている。図4には、収納庫24における蓄電システム96の構成がブロック図で示されている。例えば、この蓄電システム96は、太陽光発電装置としての太陽光パネル74と、パワーコンディショナー82と、蓄電池76と、分電盤80とを含んで構成されている。そして、分電盤80に対して、住宅10内の電気機器86又は車両26に搭載された自動車用充電池84が接続され、それぞれに対して電力が供給されるようになっている。
【0056】
なお、これらの配線については、一階部分16の居住スペース20の天井裏を利用して収納庫24と電気機器86等とが電気的に接続されるように当該配線を配設する。また、これ以外にも、地中にこれらの配線を配設しても良い。但し、この場合、当該配線を保護するためのカバー等が必要となる。
【0057】
ここで、蓄電池としては、例えば、リチウムイオン蓄電池、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池といった蓄電池が適用可能であるが、ニッケルカドミウム蓄電池等の他の蓄電池であってもよく、また、これらの蓄電池に代えて燃料電池(固体高分子型燃料電池)を用いても良い。ちなみに、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池は、40℃程度までの発生熱で制御されており、又リチウムイオン蓄電池は60℃程度までの発生熱で制御されている。そして、燃料電池は60〜70℃程度までの発生熱で制御されている。
【0058】
蓄電池の蓄電容量は、蓄電池が設置される箇所ごとに負荷の大きさに応じて異なる設定とされている。すなわち、蓄電容量が大きい蓄電池もあれば、蓄電容量が中程度の蓄電池もあり、更に蓄電容量が小さい蓄電池もある。蓄電池の蓄電容量の変更の仕方には二種類あり、上述したように、一つは同一容量の蓄電池を必要個数繋いで蓄電容量を整数倍で増加させていく手法であり、他の一つは要求される蓄電容量を単体で賄うことができる蓄電池を予め用意して設置する手法である。
【0059】
前者の場合には、蓄電容量が異なる複数種類の蓄電池を予め用意する必要がないため、結線作業を廃止でき、その分コスト削減を図ることができる。一方、後者の場合には、単体の蓄電池で必要な蓄電容量を賄うので、蓄電池を複数個繋いで大容量化する場合に比べて設置スペースの削減を図ることができる。いずれを選択するかは、確保できる蓄電池の大きさや費用等を勘案して決定される。
【0060】
そして、図4に示されるように、この蓄電池76は分電盤80に接続されている。分電盤80は図2(A)、(B)で示される住宅10内の一階部分16及び二階部分18の電気機器86とそれぞれ接続されている。分電盤80には、直流用の分電盤と交流用の分電盤が備えられており、交流用の分電盤(AC接続)からは、電気機器(自然冷媒ヒートポンプ給湯器やエアコン等)などへ電力が供給され、直流用の分電盤(DC接続)からは、LED(発光ダイオード)照明や火災報知器、防犯機器など、比較的、消費電力が小さい機器へ電力が供給される。
【0061】
また、分電盤80には、電力会社でから電力が供給される系統電力75及び、太陽光パネル74に接続されたパワーコンディショナー82が接続されており、制御装置94によって当該分電盤80が制御されている。
【0062】
ここで、パワーコンディショナー82は、直流電圧を交流電圧に変換するインバーターと、直流電圧の電圧レベルを変換するDC−DCコンバーターと、を有している。このため、太陽光パネル74によって発電された電力に対してパワーコンディショナー82のDC−DCコンバーターを介して直流電圧の電圧レベルが変換され、当該分電盤80を介して蓄電池76に直流電圧が供給される。そして、蓄電池76に蓄電された電力は、直流電圧の電圧レベルが変換されて、プラグインタイプのハイブリッドカーや電気自動車等の車両26に搭載された自動車用充電池84へ供給可能とされる。
【0063】
一方、収納庫24の貫通部28側に位置する側壁24Eにはコンセント88が設けられている。コンセント88には開閉蓋90が設けられており、施錠可能とされている。このため、コンセント88を使用するときは、当該開閉蓋90の施錠を解除することで開閉蓋90が開放可能とされる。
【0064】
このコンセント88は蓄電池76と接続されている。このコンセント88に自動車用充電池84に接続されたプラグ(図示省略)を差し込むことによって、当該蓄電池76によって蓄電された電力が享受可能とされており、これにより自動車用充電池84が充電可能とされる。但し、この場合、DC−DCコンバーターにより直流電圧の電圧レベルを変換する場合もある。
【0065】
また、収納庫24の側壁24Dには表示部としてのランプ92が設けられており、当該ランプ92は後述する居間40(図2(A)参照)から視認可能な位置に配設されている。このランプ92は制御装置94と接続されており、車両26の自動車用充電池84が充電中の状態ではランプ92が点灯又は点滅し、充電が終わるとランプ92が消えるなどして、自動車用充電池84が充電中であるか否かが判別できるようになっている(なお、ここではランプ92を2つ図示している)。
【0066】
次に、各階の間取りの一例について説明する。
<一階部分16>
上述のように、図2(A)で示される一階部分16の側壁30にはアルコーブ34が形成されており、当該アルコーブ34内に玄関ドア32が設けられている。このため、一階部分16の居住スペース20では、この玄関ドア32に対向して玄関ホール46が設けられている。つまり、玄関ホール46は建物側面側に設けられている。
【0067】
この玄関ホール46の建物正面側には浴室48が設けられており、浴室48の隣には、洗面室50、納戸52が順番に設けられている。そして、浴室48、洗面室50、納戸52が建物正面側に配置されており、少なくとも浴室48には小窓54が設けられ、外気を取り込むことができるようになっている。なお、洗面室50及び納戸52にも小窓を設けても良い。また、ここでは、浴室48及び洗面室50の建物正面側がファサードウォール55の一部を構成しており、住宅10の美観を向上させている。
【0068】
また、玄関ホール46の奥方には、廊下56及び階段58が設けられている。そして、二階へ続く階段58の階段下のデッドスペースを利用してトイレ60が設けられている。廊下56は居住スペース20の奥方へ繋がっており、廊下56を間において、その両側には子供部屋62や寝室38等の居室がそれぞれ設けられている。廊下56と子供部屋62及び寝室38との間には開閉ドア64がそれぞれ設けられており、開閉ドア64によって各空間が区画可能とされる。また、廊下56の突き当たりには、居間40が設けられており、居間40にはクローゼット66が設けられている。
【0069】
<二階部分18>
二階部分18の居住スペース22では、階段58の隣にトイレ68が設けられており、トイレ68及び階段58の奥方には、リビングダイニング70が設けられている。このリビングダイニング70は、リビングルーム、ダイニングルーム及びキッチンが1つの空間で繋がって形成されており、開放的な空間とされている。なお、これらはセパレート形式であっても良い。
【0070】
(建物の作用・効果)
図1及び図2(A)、(B)に示されるように、玄関ドア32と収納庫24との間には、車両26が駐車可能な貫通部28が設けられており、貫通部28の上方には二階部分18が設けられている。つまり、この住宅10には車寄せ36が設けられており、玄関部分72が風雨にさらされないようになっている。このため、車両26を乗降する際に乗員が雨に濡れない。また、玄関部分72が風雨にさらされないため、玄関ドア32の劣化を抑制することができる。
【0071】
そして、車寄せ36を構成する貫通部28は雨天時に屋外の子供の遊び場としての利用も可能である。一方、玄関ドア32と対向する位置には収納庫24が設けられている。このため、収納庫24内に収納された自転車などの収納物を出入れする際にも当該収納物が雨に濡れない。
【0072】
そして、この収納庫24は道路14と平行に設けられている。このため、収納庫24と対向する位置に設けられた玄関ドア32は、当該収納庫24によって道路14から遮蔽されることとなる。つまり、玄関ドア32は、道路14からは直接見えないようになっている。したがって、居住者のプライバシーが確保され、また、防犯対策上も好ましい。
【0073】
また、貫通部28の入口部28A側は道路12に面している。つまり、貫通部28内を移動する車両26の移動方向と道路12とは略直交した状態で配置されることとなる。このため、貫通部28内を移動する車両26の移動方向と道路12とが略平行に設けられた場合よりも当該貫通部28に対して車両26を出入させやすい。
【0074】
また、玄関ドア32と道路12とは略直交した状態で配置されることとなるため、玄関ドア32の正面が道路12から直接見えることはない。特にここでは、玄関ドア32がアルコーブ34内に設けられているため、さらに玄関ドア32は道路12から見え難くなる。したがって、防犯対策がさらに向上する。
【0075】
そして、本実施形態では、貫通部28の奥方には、寝室38及び居間40に面して庭42が設けられており、この庭42の一部が車両26の進入スペースとなって貫通部28と繋がっている。このため、車両26は当該貫通部28を通じて庭42までの進入が可能となる。
【0076】
したがって、居住者が玄関部分72まで移動しなくても、寝室38や居間40から直接車両26への乗降が可能となる。このため、介護を必要とする被介護者において、寝室38から直接車両26への乗降を可能とすることで、被介護者及び当該被介護者を介護する介護者にとって負担が軽減される。
【0077】
また、貫通部28の奥方には、庭42が設けられているため、貫通部28内に車両26が収容されていない状態では、図4に示されるように、当該貫通部28を通じて道路12側から庭42を見ることができる。これにより、開放感を得ることができると共に、住宅10の奥行き感を得ることができる。また、貫通部28の奥方に居室を設けないことで居住者のプライバシーが確保される。
【0078】
そして、図1及び図2(A)に示されるように、貫通部28の奥方に、庭42を設け、当該庭42に面して寝室38及び居間40等の居室を設けることで、例えば、この住宅10が北面道路の敷地であったとしても、北側に玄関部分72を作り南側に広めの庭42や居室を作ることで日照を確保することが可能となる。
【0079】
一方、収納庫24の少なくとも住宅前面側に位置する側壁24Aには耐力壁が使用されており、この耐力壁24Aによって居住スペース22が支持可能とされている。つまり、耐力壁24Aを設けることで、貫通部28の上方に居住スペース22を設けることができ、貫通部28の上方の空間を利用して自由な設計を行うことができる。
【0080】
ところで、本実施形態では、収納庫24が蓄電システム96として利用することができる。図4に示されるように、この蓄電システム96では、太陽光パネル74を備えており、分電盤80には系統電力75及び蓄電池72が接続されている。このため、太陽光パネル74から供給された電力を、電力会社へ供給(売電)するか、蓄電池72へ供給するかが選択される。また、太陽光パネル74や系統電力75によって蓄電池72を蓄電することも可能である。これにより、各時間帯において必要な電力を算出し、時間帯に応じて、蓄電池76の電力を充電又は放電する。
【0081】
蓄電池76の電力の使用状況は情報として制御装置94に自動的に入力されるようになっており、初期入力による情報が自動的に更新されるようにすることで、蓄電池76の蓄電量が自動的に調整される。例えば、昼間は太陽光パネル74で得られた電力等を蓄電池76に蓄えると共に夜間は料金が安い深夜電力を蓄電池76に蓄え、料金が高い昼間の時間帯に蓄電池76で蓄電した電力を放電して利用するといった使い方ができる。
【0082】
つまり、本実施形態によれば、パワーコンディショナー82によって、太陽光パネル74によって発電された電力を電力会社に売電、又は住宅10内で使用することができる。また、収納庫24内に収納された蓄電池76によって、太陽光パネル74によって発電された余剰電力を蓄電池76に蓄電することができ、停電の際でも当該蓄電池76に蓄電された電力を使用することができる。
【0083】
さらに、蓄電池76を複数ストックすることで、複数の蓄電池76に電力を充電させ蓄電することができる。そして、昼間は太陽光パネル74によって得られた電力を蓄電池76に蓄えると共に夜間は料金が安い深夜電力を蓄電池76に蓄え、料金が高い昼間の時間帯に蓄電池76に蓄電された電力を放電して利用するといった使い方ができる。したがって、経済的であり、エコ住宅の実現を図ることができる。
【0084】
また、収納庫24には蓄電池76と接続されたコンセント88が設けられており、当該コンセント88によって蓄電池76に蓄電された電力が供給可能とされる。これにより、車両26のプラグをコンセント88に接続させると、当該コンセントを介して車両26に搭載された自動車用充電池84を充電することができる。つまり、プラグをコンセント88に接続させるだけで、収納庫24に設けられた蓄電池76に蓄電された電力を容易に享受することができる。
【0085】
ここで、図3に示されるように、コンセント88には開閉蓋90が設けられ、施錠可能とされている。そして、コンセント88を使用するとき、当該開閉蓋90の施錠を解除して開閉蓋90を開放させるようにする。これにより、盗電を防止することができる。
【0086】
なお、ここでは、コンセント88を設け、収納庫24内に収納された蓄電池76から直接電力が享受できるようにしたが、当該蓄電池76から直接電力が享受できない場合もある。この場合は、コンセント88に代えてプラグインタイプではないハイブリッドカー等用の充電装置としての充電スタンド100を配置しても良い。
【0087】
充電スタンド100を配置した場合、この充電スタンド100は蓄電池76と接続され、当該蓄電池76に蓄電された電力が充電スタンド100へ供給可能とされる。このように、充電スタンド100が収納庫24内に配置されることで、当該充電スタンド100を外部に露出させないようにすることができ、盗電を防止することができる。なお、この充電スタンド100は、非常時などの場合、分電盤80(図4参照)に電力を供給可能とされる。
【0088】
一方、図5に示されるように、貫通部28の入口部28Aにはシャッター44が設けられている。これにより、貫通部28と道路12との間が仕切られ、防犯対策が施されることとなる。そしてさらに、図示はしないが貫通部28の出口部28Bにもシャッター44を設けても良い。これによると、貫通部28の入口部28A及び出口部28Bがシャッター44で塞がれることとなるため、玄関部分72は外部と完全に切り離された状態となり、防犯対策がさらに向上する。
【0089】
そして、図3に示す充電スタンド100を充電しているときや車両26に搭載された自動車用充電池84を充電しているとき等に、シャッター44によって入口部28Aが塞がれるようにすることで、盗電を防止することができる。なお、シャッター44の密閉性を上げることで防水対策にもなる。
【0090】
また、収納庫24の側壁24Dにはランプ92が設けられており、居間40(図2(A)参照)から視認可能な位置に配設されている。このランプ92は例えば車両26の自動車用充電池84が充電中の状態ではランプ92が点灯又は点滅し、充電が終わるとランプ92が消えるようになっている。つまり、当該ランプ92を見ると自動車用充電池84が充電中であるか否かが判別できるようになっている。このため、大変便利である。なお、自動車用充電池84以外にも充電スタンド100が充電中か否かが判別できるようにしても良い。
【0091】
また、ここでは、図1に示されるように、収納庫24は居住スペース20との間に貫通部28が設けられている。蓄電池76を居住スペース20内に収納する場合、居室内の温度に影響を及ぼすため蓄電池76を断熱する必要が生じる。このため、図示はしないが居室内を区画する壁部の厚みによっては蓄電池76を収納できない場合も生じ、蓄電池76を収納する場所が制限されてしまう。しかし、本実施形態では、収納庫24は居住スペース20と隣接していないため、蓄電池76を断熱する必要がない。したがって、蓄電池76の周囲に断熱材等を設ける必要がなく、その分のスペースを確保する必要がない。
【0092】
また、ここでは、蓄電池76が耐力壁24A以外の側壁24Dの内部に設けられており、当該側壁24D自体が蓄電池76の収納部となっている。このため、収納庫24内では、自転車など蓄電池76以外の物を収納することができる。但し、この蓄電池76は必ずしも側壁24Dの内部に設けなければならないというものではないため、収納庫24内に収納しても良いのは勿論のことである。
【0093】
なお、上記構成および制御は一例であり、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0094】
10 住宅
24 収納庫
24A 耐力壁
26 車両
28 貫通部
28B 出口部
28A 入口部
32 玄関ドア(玄関扉)
36 車寄せ
38 寝室(居室)
40 居間(居室)
42 庭(進入スペース)
44 シャッター(仕切り手段)
74 太陽光パネル(太陽光発電装置)
76 蓄電池
84 自動車用充電池
88 コンセント
92 ランプ(表示部)
96 蓄電システム
100 充電スタンド(充電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一階部分の一部を貫通し、少なくとも車両が駐車可能な広さを有する貫通部と、
前記貫通部の側部の一方を構成する側壁に設けられた玄関扉と、
前記玄関扉と対向して設けられ、前記貫通部の側部の他方を構成する収納庫と、
を有する建物。
【請求項2】
前記収納庫の一部に耐力壁が設けられた請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記収納庫内に収納された蓄電池と、
前記蓄電池と接続され、建物本体の上部に設置された太陽光発電装置と、
を有する請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記収納庫における前記耐力壁以外の側壁の内部に前記蓄電池が設けられている請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記蓄電池と接続され当該蓄電池に蓄電された電力が供給可能な自動車用の充電装置が前記収納庫に配置されている請求項3又は4に記載の建物。
【請求項6】
前記蓄電池と接続され当該蓄電池に蓄電された電力が供給可能なコンセントが前記収納庫に設けられた請求項3又は4に記載の建物。
【請求項7】
前記貫通部の入口部及び出口部の少なくとも一方に設けられ、前記貫通部を塞ぐ仕切り手段を有する請求項1〜6の何れか1項に記載の建物。
【請求項8】
前記貫通部の入口側が道路に面している請求項1〜7の何れか1項に記載の建物。
【請求項9】
前記貫通部の奥方に設けられ車両が進入可能な進入スペースと、
前記進入スペースに面して設けられた居室と、
を有する請求項1〜8の何れか1項に記載の建物。
【請求項10】
前記収納庫に前記自動車が充電中の状態であることが前記居室から視認できる表示部が設けられた請求項5〜9の何れか1項に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−251294(P2012−251294A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122187(P2011−122187)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】