説明

建物

【課題】建物内を移動しやすくなるとともに、声が届きやすくなり、これによって住人同士のコミュニケーションが取りやすくなる建物を提供する。
【解決手段】矩形スペースに、直階段11の一方の側部側にキッチン4および食堂5が設けられ、他方の側部側に居室3が設けられ、直階段11の居室3側の側部には仕切壁10が直階段11に接して設けられるとともに、仕切壁10の両横に開口部12,14がそれぞれ設けられ、これら開口部12,14を通して、キッチン4と居室3および食堂5と居室3がそれぞれ行き来可能とされている。これにより、矩形スペース内の移動がしやすくなる。また、複数の開口部12,14を通して、矩形スペース内で声が届きやすくなり、住人同士のコミュニケーションが取りやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体のほぼ中央部に吹抜け空間が設けられた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
吹抜け空間が設けられた建物の一例として特許文献1に記載のものが知られている。この建物では、建物の中央にリビングルームを配置し、このリビングルーム上方に上階の天井まで至る吹抜けを設け、前記リビングルームに、一方側の側面がリビングルーム側に面して開口した階段を配置し、この階段を、前記上階の吹抜け側を開口した部屋に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−194899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような建物では、階段の一方側の側面がリビングルーム側に面して開口し、他方側の側面は壁と接しているために、この壁の反対側にあるキッチンからリビングルームに移動するには壁を回り込む必要があり、行き来がしにくい場合がある。また、キッチンからリビングルーム側や階段側には声が届きにくい場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、建物内を移動しやすくなるとともに、声が届きやすくなり、これによって住人同士のコミュニケーションが取りやすくなる建物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、建物本体1のほぼ中央部に、1階床から2階天井まで吹き抜ける吹抜け空間2が設けられた建物において、
前記建物本体1は、1階に、平面視ほぼ矩形状に形成された矩形スペースを備えており、
前記矩形スペースの中央部に、平面視において当該矩形スペースを横切るようにして前記吹抜け空間2が設けられており、
前記吹抜け空間2に、平面視において前記矩形スペースを横切るようにして、かつ1階床から2階床にかけて直階段11が設けられており、
前記矩形スペースには、前記直階段11の一方の側部側にキッチン4および食堂5が設けられ、他方の側部側に居室3が設けられ、前記直階段11の居室3側の側部には仕切壁10が前記直階段11に接して設けられるとともに、
前記仕切壁10の両横には開口部12,14がそれぞれ設けられ、これら開口部12,14を通して、前記キッチン4と居室3および前記食堂5と居室3がそれぞれ行き来可能とされていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、仕切壁10の両横に設けられた複数の開口部12,14を通して、キッチン4と居室3および食堂5と居室3がそれぞれ行き来可能とされているので、矩形スペース内の移動がしやすくなる。また、複数の開口部12,14を通して、矩形スペース内で声が届きやすくなる。これによって、住人同士のコミュニケーションが取りやすくなる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物において、
前記キッチン4には調理台6が設けられており、この調理台6は、平面視において前記直階段11と直交する方向に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、調理台6の配置方向と、キッチン4と居室3とを行き来する方向とが揃うことになるので、調理台6に沿って作業であってもキッチン4と居室3との間で声が通りやすくなる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の建物において、
前記直階段11は、桁材を1階床と2階床とにかけ、蹴込板を備えない状態で複数の段板を桁材の長手方向に所定間隔で取り付けたものであり、
前記直階段11の前記仕切壁10が設けられる側部とは反対の側部に階段手摺11aが設けられ、当該階段手摺11aは、フレームで形成されたもので、前記段板の端部に立設された手摺子と、この手摺子の上端に取り付けられた棒状の手摺とで構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、直階段11は蹴込板を備えない状態で構成され、階段手摺11aは手摺子と棒状の手摺とでフレームで形成されているので、直階段11によって声が遮られることを抑制できる。これによって、例えば蹴込板を備え、かつ壁状の階段手摺によって周囲を囲まれる階段が矩形スペース内に設置される場合に比して、矩形スペース内で声が通りやすくなる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物において、
2階には、前記吹抜け空間2に面して、かつ前記直階段11の一方の側部側および他方の側部側のそれぞれに居室20,21が設けられており、これら居室20,21と前記吹抜け空間2とが2階仕切壁22,23によって仕切られており、
前記2階仕切壁22,23の横には開口部が設けられ、この開口部を通して、前記直階段11の一方の側部側の居室21と他方の側部側の居室20とが行き来可能とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、2階仕切壁22,23の横に設けられた開口部を通して、一方の居室21と他方の居室20とが行き来可能とされているので、2階での移動がしやすくなる。また、開口部を通して、居室20,21間での声が届きやすくなる。さらに、吹抜け空間2を通して1階と2階との間で声が通りやすくなる。これによって、建物全体で移動がしやすく、声が届きやすくなるので、より一層、住人同士のコミュニケーションが取りやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建物内を移動しやすくなるとともに、声が届きやすくなり、これによって住人同士のコミュニケーションが取りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る建物の一例を示すもので、建物の1階の平面図である。
【図2】同、建物の2階の平面図である。
【図3】同、建物の正面図である。
【図4】同、建物の西側の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の建物は2階建てのものである。この建物の1階には図1および図2に示すように、建物本体1のほぼ中央部には1階床から2階天井まで吹き抜ける吹抜け空間2が設けられている。吹抜け空間2は平面視において東西に長尺な長方形状のものであり、南北方向において建物本体1の中央部に設けられ、東西方向において略中央部で若干西側よりに設けられている。
【0017】
建物本体1には、吹抜け空間2を南北に挟んで居室3とキッチン4とが設けられており、キッチン4の東側に隣接して食堂5が設けられている。キッチン4内の食堂5側には調理台6が設けられており、その上方は1階の天井まで空間となっている。したがって、キッチン4からは食堂5が見渡せるようになっている。
食堂5の東側に隣接して居室7が設けられている。この居室7と食堂5との間には3連の引戸8が設けられており、この引戸8を開けることによって、キッチン4から居室7を見渡せるようになっている。なお、引戸8は1階天井までの高さを有する大きなものである。
また、キッチン4および食堂5と、吹抜け空間2とは仕切られておらず、横方向に連続した空間となっている。
【0018】
前記居室3はリビングとして使用される部屋であり、この居室3と吹抜け空間2との境界部には仕切壁10が設けられている。この仕切壁10の上端部は1階天井まで達している。また、前記吹抜け空間2には、1階床から2階床にかけて直階段11が設けられている。この直階段の一方の側部には階段手摺11aが設けられており、他方の側部は前記仕切壁10に接している。
直階段11は鋼製の桁材を1階床と2階床とにかけ、この桁材に複数の段板を桁材の長手方向に所定間隔で取り付けたものであり、蹴込板は備えていない。階段手摺11aは、フレームで形成されたもので、段板の端部に立設された手摺子と、手摺子の上端に取り付けられた棒状の手摺とで構成されている。
【0019】
また、前記仕切壁10の西側の横には、吹抜け空間2と居室3とを行き来するための開口部12が設けられている。また、仕切壁10の東側の横には、食堂5と居室3との間に設けられた通路13から居室3に出入りするための開口部14が設けられている。
また、居室3の南側にある外壁には、掃出し窓15が設けられており、この掃出し窓15は仕切壁10に対向している。掃出し窓15は図3に示すように、1階の天井まで達する縦長の大きな引違い式の窓であり、居室3の南側の壁ほぼ全体に亙って設けられている。この掃出し窓15の外側には、テラス16が設けられている。
【0020】
また、前記通路13の東側に隣接して玄関ホール17が設けられており、この玄関ホール17の北側に隣接して前記居室7が設けられている。玄関ホール17と通路13とを仕切る壁にはドアが設けられており、玄関ホール17と居室7とを仕切る壁にもドアが設けられている。したがって、この玄関ホール17から通路13と居室7との双方に行き来できるようになっている。
また、玄関ホール17の奥側には洗面コーナ18が設けられている。この洗面コーナ18は、ドア等がないオープンな空間であり、洗面台が設置されている。また、洗面コーナ18に対向してトイレ19が設けられており、このトイレ19には玄関ホール17から出入りできるようになっている。
【0021】
建物本体1の2階には、図2に示すように、前記吹抜け空間2に面して居室20,21が設けられている。居室20は夫婦の寝室として使用され、居室21は子供部屋として使用されるものであり、吹抜け空間2を挟んで南北に配置されている。
居室20と吹抜け空間2とは2階仕切壁22によって仕切られている。この2階仕切壁22の上端部は2階天井まで達している。
また、居室21と吹抜け空間2とは2階仕切壁23によって仕切られている。この2階仕切壁23の上端部は2階天井まで達している。
【0022】
前記吹抜け空間2は建物本体1の西側の外壁に面しており、この外壁には2階において大窓25が設けられている。この大窓25は図4に示すように、居室20,21の上下の高さとほぼ等しい縦長の窓であり、吹抜け空間2の南北方向の長さ全体に亙って設けられている。
したがって、平面視長方形状の吹抜け空間2は、その2階部分において、一つの短辺が透明なガラス板によって形成されている。
【0023】
また、前記居室20の東側に隣接して大型のウォークインクローゼット26が設けられており、このウォークインクローゼット26の東側に隣接してバルコニー27が設けられている。ウォークインクローゼット26には、衣類を収納する収納部26aと、衣類を畳んだり、衣類にアイロンかけを行うための家事カウンター26bとが設けられている。このようなウォークインクローゼット26には居室20およびバルコニー27の双方から出入りできるようになっている。
また、バルコニー27の北側に隣接して洗面室28が設けられており、この洗面室28の北側に浴室29がこの浴室29の西側にトイレ30が設けられている。また、洗面室28には洗濯機置場28aが設けられている。そして、バルコニー27には洗面室28から出入りできるようになっている。
【0024】
前記居室21の東側に隣接して大型のウォークインクローゼット31が設けられており、このウォークインクローゼット31の東側に隣接して居室32が設けられている。ウォークインクローゼット31には、居室21および居室32の双方から出入りできるようになっている。また、このウォークインクローゼット31には、ホール33からも出入りできるようになっている。
【0025】
本実施の形態の建物によれば、キッチン4で生じる音の一部は吹抜け空間2から上方に伝わる。
また、仕切壁10の横には開口部12が設けられており、この開口部12を通して吹抜け空間2と居室3とを行き来でき、また、吹抜け空間2とキッチン4とは仕切られていないので、吹抜け空間2とキッチン4とを行き来できる。したがって、キッチン4から吹抜け空間2を通って居室3に行き来できる。
【0026】
さらに、吹抜け空間2は外壁に面しており、この外壁には2階において居室20,21の高さとほぼ等しい縦長の大窓25が設けられているので、この大窓25から吹抜け空間2に採光することができる。したがって、日中は吹抜け空間全体を明るくすることができる。また、この吹抜け空間2に採光した光は、1階のキッチン4や居室3にも届くので、これらキッチン4、居室3を明るくすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 建物本体
2 吹抜け空間
3 居室
4 キッチン
10 仕切壁
11 直階段
15 掃出し窓(窓)
20,21 居室
22,23 2階仕切壁
25 大窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体のほぼ中央部に、1階床から2階天井まで吹き抜ける吹抜け空間が設けられた建物において、
前記建物本体は、1階に、平面視ほぼ矩形状に形成された矩形スペースを備えており、
前記矩形スペースの中央部に、平面視において当該矩形スペースを横切るようにして前記吹抜け空間が設けられており、
前記吹抜け空間に、平面視において前記矩形スペースを横切るようにして、かつ1階床から2階床にかけて直階段が設けられており、
前記矩形スペースには、前記直階段の一方の側部側にキッチンおよび食堂が設けられ、他方の側部側に居室が設けられ、前記直階段の居室側の側部には仕切壁が前記直階段に接して設けられるとともに、
前記仕切壁の両横には開口部がそれぞれ設けられ、これら開口部を通して、前記キッチンと居室および前記食堂と居室がそれぞれ行き来可能とされていることを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載の建物において、
前記キッチンには調理台が設けられており、この調理台は、平面視において前記直階段と直交する方向に配置されていることを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物において、
前記直階段は、桁材を1階床と2階床とにかけ、蹴込板を備えない状態で複数の段板を桁材の長手方向に所定間隔で取り付けたものであり、
前記直階段の前記仕切壁が設けられる側部とは反対の側部に階段手摺が設けられ、当該階段手摺は、フレームで形成されたもので、前記段板の端部に立設された手摺子と、この手摺子の上端に取り付けられた棒状の手摺とで構成されていることを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物において、
2階には、前記吹抜け空間に面して、かつ前記直階段の一方の側部側および他方の側部側のそれぞれに居室が設けられており、これら居室と前記吹抜け空間とが2階仕切壁によって仕切られており、
前記2階仕切壁の横には開口部が設けられ、この開口部を通して、前記直階段の一方の側部側の居室と他方の側部側の居室とが行き来可能とされていることを特徴とする建物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−76322(P2013−76322A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15315(P2013−15315)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2007−25300(P2007−25300)の分割
【原出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】