説明

建築仕上げ材用着色材及び着色方法

【課題】作業現場における着色顔料の計量を不要にすると共にベース塗材への必要量の投入が確実且つ簡単にでき、既存の用具によって短時間で均一に混練できる他、顔料容器の洗浄作業を不要にする。
【手段】天然又は人工のゲル基材と液状又は粉状の顔料を水に加熱溶解させて均一に分散して粘度100mPa-s以下の着色溶液とし、これを透明又は半透明の蓋付容器1に充填密封して、ゲル強度20〜150g/cm2の密封ゲル化着色材Gとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無着色の建築用仕上塗材(ベース塗材)を施工現場において短時間で着色すると共に関連作業を省力化できる着色材及び着色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用着色仕上塗材としては、工場生産品と現場で顔料を調合して使用するものがあるが、現場調合用品の多くは液状又はエマルジョンタイプ(文献1)であって、保存中や運搬中に顔料が沈降分離し易いため、調合前に充分な攪拌作業が必要である他、ベース塗材に対する顔料質量を正確に計量することが困難である。 また、計量した顔料が容器壁などへ付着するので、計量した全量を正確に投入することが困難である。 更に、容器の残着顔料を洗浄しなければならないなどの付帯作業がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−310462
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、作業現場における計量を不要にすると共にベース塗材への必要量の投入が確実且つ簡単にでき、既存の用具によって短時間で均一に混練できる容器密封型ゲル化着色材と着色方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明着色材は、天然又は人工のゲル基材に顔料を、80°C以下の加熱下で均一分散して着色粘液とし、これを蓋付容器に充填密封して、ゲル強度20〜150g/cm2としたゼリー状のゲル化着色材としたものである。
ゲル基材には寒天、ゼラチン、グルコマンナン、大豆タンパク或いはカルボキシビニルモノマー、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩など公知のゲル化物質が使用できる。 ゲル基材に天然材を使用する場合は、長期保管中の変質・腐敗を防止するために少量の防腐剤を添加するのが安全である。
顔料としては、液体又は粉末状の市販品を使用する。
ゲル強度は、20g/cm2以下であると顔料が保存、運搬中に沈降・分離し易くなり、残着を生じるので好ましくない。 また、150g/cm2を超えるとベース塗材への分散が悪くなり、攪拌時間が長くなる他、仕上塗材の色むらを生じやすくなる。 好ましい強度は、40〜100g/cm2である。
容器は、特に限定されないが、透明又は半透明のプラスチック製の剥離蓋付広口容器が好ましく、大きさは現場作業において投入量の計算に便利なように大小さまざまの組み合わせ容器としてもよい。
【0006】
本発明の塗材着色法は、上記ゲル化着色材を無着色の仕上塗材に所要量投入して水を加えてミキサーなどの常用器具によって攪拌してゲル化着色材を溶解させ顔料を均一に分散させるだけであって、熟練を必要とせず、容器の洗浄なども不要になる他、施工現場における顔料の計量が不要であって数分の攪拌作業で所望の着色塗材を簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明ゲル化着色材において顔料物質は、ゲル基材中に均一に分散されて実質的に固定されているから保管・運搬中も沈降分離することがなく、ゲル強度が150g/cm2以下であれば、ベース塗材への均一分散も僅か数分で行われる。 更に、顔料容器を規定量の剥離蓋付広口容器とすれば施工現場において計量作業をしなくても所要量を正確に添加できる。また、広口容器からゼリー状で簡単に取り出すことができ、しかも容器への残着がないので、後の容器洗浄なども不要になり、全体の作業効率が著しく改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図中、1は容器本体、2はテーパ側壁、3はシール部、4は底部、5はシール蓋であって、指掛部6から開封して底部4を押すことによって内部のゲル化着色材Gを容易に取り出すことができ、容器内壁の残着がないのでそのまま仕上塗材中に投入できる。
仕上塗材(ベース塗材)への分散溶解時間は短時間ほど望ましく、ゲル基材にもよるが、ゲル強度(ゼリー強度)は40〜100g/cm2(JIS K 8263−1994)とするのがよい。
【実施例】
【0009】
(着色材の調整)
ゲル基材(ゲル化剤)として「寒天」と「ゼラチン」(関東化学製、試薬)を使用し、液体顔料として「カラーマックス パーマネントイエロー 顔料濃度25%」(日本ペイント製)を使用した。
水100重量部に表1のゲル化剤と顔料を添加して80°Cの温度で1時間加熱して着色液を得た。 液の粘度を65°Cで測定したところ、いずれも100mPa-s以下であった。
この着色液を図1のポリプロピレン製の透明な方形容器(容量1.0L)に充填して蓋体を熱シールした後、常温でゲル化させ、24時間放置して顔料の沈降・分離を観察した。
【0010】
(分散性)
NSケイソードパレ(日本化成)100重量部と水50重量部を混合した仕上塗材に、ゲル化着色材Gを1重量部を投入して分散させて比較した結果は、表1のようであった。
【0011】
【表1】

「色むら」は、色差計(日本電色工業製nR−1)と目視によって判定した。
○ 色差ΔE ±2以内 均一で色むらはない
△ ±2〜5 僅かに色むらがある
× ±5以上 明瞭に色むらがある
【0012】
(試験結果)
実施例品は、いずれも分散性が良好で短時間攪拌でも色むらを生じない。
また、実施例2と3の比較から、ゲル強度が同じでも寒天の方が容器への残着が少ないことが判る。
比較例1は、分散性はよいが、ゲル強度が不足して顔料が分離する上、容器に残着する。 ゲル強度が大きいと比較例2に見るように、分散に時間が掛かる上、色むらが出やすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】剥離蓋付広口容器の縦断面図
【符号の説明】
【0014】
1 容器本体
2 側壁
3 シール部
4 底部
5 シール蓋板
6 指掛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然又は人工のゲル基材を水に加熱溶解させると共に顔料を均一に分散して着色溶液とし、これを蓋付容器に充填密封して、ゲル強度20〜150g/cm2としたことを特徴とする密封ゲル化着色材。
【請求項2】
ゲル強度が40〜100g/cm2とされた請求項1記載のゲル化着色材。
【請求項3】
容器が透明又は半透明の剥離蓋付のプラスチック製広口容器である請求項1又は2記載のゲル化着色材。
【請求項4】
施工現場において無着色の仕上塗材に、請求項1乃至3記載のいずれかのゲル化着色材を投入して所要量の水を加えて前記ゲル化着色材を溶解させることによって仕上塗材を着色する方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−37942(P2008−37942A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211619(P2006−211619)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(592067395)日本化成株式会社 (11)
【Fターム(参考)】