説明

建築物の基礎及び基礎設置方法

【課題】労力を軽減できるとともに、容易に設置できる建築物の基礎を提供すること。
【解決手段】建築物基礎1に、地盤面5に面して設置される平板11と、平板11において、地盤面5に対向する面である下面11bに設けられる少なくとも3つの支持体12とを備え、支持体12に、弾性の袋状体121と、袋状体121に設けられ、袋状体121の内部に液体の出し入れが可能な注入口128とを有したので、鉄筋等を組むことなく、地盤面5に建築物基礎1を設置し、4つの支持体12の袋状体121の内部に注入する水の量を調整することで、平板11を適正な高さに配置し、かつ、平板11を水平に配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎及び基礎設置方法に関し、特に、地盤面に設置する基礎及び基礎設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物には、基礎が設置され、この基礎の上に上屋が建てられる。この基礎は、以下の手順により、設けられる。
まず、基礎を埋め込むための穴を形成するために、地盤を掘削する掘削工程を行う。この掘削工程の後、穴の底部地盤面を整地する床付け工程を行う。この床付け工程の後、整地した地盤面に砕石を敷設し転圧する砕石敷設工程を行う。この砕石敷設工程の後、転圧した砕石の上に捨てコンクリートを打設する。捨てコンクリートを打設後、基礎を以下の手順で設置していく。
【0003】
まず、捨てコンクリート硬化後に、この捨てコンクリートの上に、鉄筋を組み立てる。その後、この組んだ鉄筋を囲うように型枠を設置する。そして、この設置した型枠の内部にコンクリートを流し込むコンクリート打設工程を行う。このコンクリート打設工程では、所定の高さまで、コンクリートを打設するとともに、コンクリートの上面を略水平にする均し工程を行う。その後、基礎のコンクリートが硬化後に、型枠を解体して基礎が完成する。
【0004】
ところが、基礎の設置は、穴の中で鉄筋及び型枠を組み立て、コンクリート打設工程を行い、さらに、型枠を解体する必要があるため、多大な労力を要していた。そこで、基礎の設置の労力を軽減する技術として、工場においてコンクリートを予め基礎の形状に形成したプレキャストコンクリート製基礎がある(特許文献1参照)。
この特許文献1のプレキャストコンクリート製基礎によれば、コンクリートを予め基礎の形状に形成しているので、捨てコンクリートの上に、このプレキャストコンクリート製基礎を設置することができるので、基礎の設置の労力を軽減できる。また、基礎を二次製品としたので、鉄筋やコンクリート等複数の部材をそれぞれ運ぶ必要がないので、作業現場への基礎の搬入が容易になり、山間部や未開地の作業現場にも基礎を搬入できる。さらに、従来は、現場で破壊検査することができず、設置した基礎が所定の品質を維持していない場合もあったが、工場でプレキャストコンクリート製基礎を形成することで、所定の品質を維持できる。
【特許文献1】特開2005−315035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建築物の基礎は、この基礎の上に上屋が建てられるものなので、所定の高さで略水平に設置する必要がある。よって、プレキャストコンクリート製基礎を設置する前に、プレキャストコンクリート製基礎を所定の高さで略水平に設置するための工程が必要になる。このような工程としては、このプレキャストコンクリート製基礎を設置する部分の複数箇所に同じ高さでモルタルを盛ったり、プレキャストコンクリート製基礎を水平に支持するための鉄骨を設置したりする工程がある。このような工程は、鉄筋等を組むことに比べれば労力はかからないものの、プレキャストコンクリート製基礎を設置する部分の複数箇所の高さを調整するための調整部材を設け、この調整部材によりプレキャストコンクリート製基礎を所定の高さに配置し、かつ、プレキャストコンクリート製基礎を水平に設置することは容易でなかった。また、従来のプレキャストコンクリート製基礎を設置する工法では、基礎砕石の上では調整部材が不等沈下するため均しコンクリート等を打設する工程が必要であった。そして、この工程を省略できれば基礎を設置する工期を短縮できることを書き加えておく。このように、山間部や未開地の作業現場にも生コンクリートを持ち込まなくとも基礎を形成できることや、プレキャストコンクリート製基礎自体において所定の品質を維持できる、といった利点を生かしきれていなかった。
【0006】
本発明は、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持できる建築物の基礎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 建築物の基礎であって、地盤面に面して設置される平板と、前記平板において、前記地盤面に対向する面である下面に設けられる少なくとも3つの支持体とを備え、前記支持体は、弾性の袋状体と、前記袋状体に設けられ、前記袋状体の内部に液体の出し入れが可能な注入口とを有することを特徴とする建築物の基礎。
【0008】
(1)の発明によれば、建築物の基礎を、平板とこの地盤面に対向する面である下面に設けたられる少なくとも3つの支持体とで構成し、この支持体を弾性の袋状体とこの袋状体の内部に液体の出し入れが可能な注入口とで形成した。
この建築物の基礎は、以下の手順により、地盤面に設置する。
まず、予め形成した(例えば、プレキャストコンクリート)この建築物の基礎を地盤面に配置する。その後、少なくとも3つの支持体(例えば、4つ)の注入口から、袋状体の内部にそれぞれ液体(例えば、水)を入れる。すると地盤面と平板との間の袋状体が膨張し、平板のこの袋状体が設けられた部分は上昇する。一方、注入口から、袋状体の内部より液体を出す。すると地盤面と平板との間の袋状体が収縮し、平板のこの袋状体が設けられた部分は降下する。
これにより、鉄筋等を組むことなく、地盤面に建築物の基礎を設置し、少なくとも3つの支持体の袋状体の内部に注入する液体の量を調整することで、平板を適正な高さに配置し、かつ、平板を水平に配置できる。
よって、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持できる建築物の基礎を提供できる。
【0009】
(2)(1)に記載の建築物の基礎において、前記平板の前記下面の反対側の面である上面に設置され、略鉛直方向に立ち上がり面を形成する立ち上がり壁を備え、前記立ち上がり壁は、前記立ち上がり面と略直交する方向に形成され、前記平板の前記上面と接する底面を有し、前記底面には、断面形状が略八の字状の凸部が形成され、前記平板の前記上面には、前記凸部が係合可能な凹部が複数形成されていることを特徴とする建築物の基礎。
【0010】
(2)の発明によれば、(1)の発明に加え、平板の上面に設置する立ち上がり壁の底面に、断面形状が略八の字状の凸部を形成し、平板の上面に、この凸部が係合可能な凹部を複数形成した。
これにより、平板に立ち上がり壁を設置するとき、この立ち上がり壁の底面に形成した凸部を、平板の上面に形成した凹部に挿入して係合させるだけで、建築物の基礎の立ち上がり壁を設置できる。
また、凸部の断面形状を略八の字状としたので、この凸部と平板の凹部とを正確に合わせなくても、凸部と凹部とを係合できるので、建築物の基礎の立ち上がり壁を容易に設置できる。
さらに、平板には複数の凹部を形成した。例えば、平板上において、所定間隔(例えば、300mm間隔)で複数の凹部を形成することで、この複数の凹部の中から選択した建築物の形状に合わせた位置の凹部に、立ち上がり壁の凸部を挿入し係合させるだけで、建築物の形状に合った基礎の立ち上がり壁を容易に設置できる。
よって、労力を軽減できるとともに、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持できる建築物の基礎を提供できる。
【0011】
(3)(2)に記載の建築物の基礎において、前記平板には、前記上面と前記下面とを貫通する貫通口が設けられていることを特徴とする建築物の基礎。
【0012】
(3)の発明によれば、平板に上面と下面とを貫通する貫通口を設けたので、平板の上面側から、地盤と平板の下面との間にセメント系流動材を流し込める。
これにより、このセメント系流動材を硬化させる養生期間を経ることで、平板を適正な高さに配置し、かつ、平板を水平に配置した建築物の基礎を地盤面に固定できる。
よって、労力を軽減できるとともに、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持しつつ、地盤面に固定できる建築物の基礎を提供できる。
【0013】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の建築物の基礎を設置する基礎設置方法であって、前記平板を地盤面に設置する平板設置工程と、前記平板設置工程の後に、少なくとも3つの前記支持体の前記袋状体に前記注入口から液体を注入し、前記平板を略水平にする液体注入工程とを備える基礎設置方法。
【0014】
(4)の発明によれば、(1)の発明と同様の作用効果が得られる。
【0015】
(5)(3)に記載の建築物の基礎を設置する基礎設置方法であって、前記平板を地盤面に設置する平板設置工程と、前記平板設置工程の後に、少なくとも3つの前記支持体の前記袋状体に前記注入口から液体を注入し、前記平板の前記上面を略水平にする液体注入工程と、前記液体注入工程の後に、前記貫通口からセメント系流動材を前記地盤面と前記平板の前記下面の間に注入するセメント系流動材注入工程と、前記セメント系流動材注入工程の後に、前記セメント系流動材を硬化させる養生工程とを備える基礎設置方法。
【0016】
(5)の発明によれば、(3)の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鉄筋等を組むことなく、地盤面に建築物の基礎を設置し、少なくとも3つの支持体の袋状体の内部に注入する液体の量を調整することで、平板を適正な高さに配置し、かつ、平板を水平に配置できるので、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持しつつ、地盤面に固定できる建築物の基礎を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
〈建築物基礎1の構成〉
図1は、本発明の第1実施形態に係る建築物基礎1の斜視図である。第1実施形態では、理解を容易にするため立ち上がり壁13(図4参照)についての説明を省略している。なお、立ち上がり壁13についての詳細は、第2実施形態として説明する。
建築物基礎1は、平板11と、この平板11に設けられた支持体12と、後述する立ち上がり壁13(図4参照)とを備える。建築物基礎1は、地盤面5をビニールシート6で覆い、このビニールシート6の上に設置される。また、建築物基礎1とビニールシート6との間には、セメント系流動材7が充填される。
【0019】
〈平板11の構成〉
平板11は、所定の厚さ(例えば、100mm〜150mm)を有する略長方形の平板状に形成されている。平板11には、4箇所の支持体取付孔112と、複数の貫通口113と、複数の平板突起部114及び複数の平板欠き込み部115又は複数の平板突起部114及び複数の平板欠き込み部115と、1列当たり複数の箇所で3列に並べた平板凹部118と、複数の壁立設用ボルト孔119(図4参照)とが形成されている。
【0020】
支持体取付孔112は、平板11の地盤面に対向する面である下面11bからこの下面11bの反対側の面である上面11aに貫通する略円形状の孔である。支持体取付孔112は、2箇所毎に対角線上で互いに対向する位置に設けられている。また、支持体取付孔112の下面11b側には、後述する支持体12が設けられている。
貫通口113は、平板11の上面11aと下面11bとを貫通する略円形状の孔である。この貫通口113は、平板11の上面11a側から、建築物基礎1とビニールシート6との間にセメント系流動材7を流し込むためのものである。
ここで、セメント系流動材7は、プレミックスの一液型粉体を水で練ることで得られ、流動性が高く、ブリージングや体積収縮のないものが好ましい。
【0021】
平板突起部114は、平板11の側縁に、平面視略台形状に突出して形成されている。
平板欠き込み部115は、平板11の側縁に、平面視略台形状に欠き込んで形成されている。
平板突起部114と平板欠き込み部115との外形形状は略同一である。すなわち、ある平板11の平板突起部114は、この平板11と隣接する他の平板11の平板欠き込み部115と略隙間無く係合する。また、平板突起部114及び平板欠き込み部115の略中央には、平板固定用欠き込み116が形成されている。さらに、この平板固定用欠き込み116には、平板固定用ボルト117を挿通するボルト孔が形成されている。
【0022】
平板凹部118及び壁立設用ボルト孔119(図4参照)については、第2実施形態で説明する。
なお、平板11の厚さは、建築物の自重や、コンクリートの強度に応じて任意の厚さとすることができる。また、平板11の形状は、略長方形に限らず、略正方形等のその他の形状とすることができる。
【0023】
〈支持体12の構成〉
次に、図2を用いて、支持体12について説明する。図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る支持体12の断面図である。図2(b)は、本発明の第1実施形態に係る支持体12の上面図である。
支持体12は、袋状体121と、この袋状体121の口部分に取り付けられた下プレート122及び上プレート123と、これら袋状体121と下プレート122と上プレート123とを固定するプレート押さえボルト124と、上プレート123に設けられた注入口128とを備える。
【0024】
袋状体121は、風船状に、弾性かつ水密性を有するゴム素材で形成されている。
下プレート122は、略矩形状に、鋼製素材で形成されている。下プレート122は、その中心に孔が形成され、この孔に袋状体121の口部分が挿通されている。
上プレート123は、略矩形状に、鋼製素材で形成されている。その中心に孔が形成され、この孔に注入口128が設けられている。
注入口128には、水ジャッキ200(図3(a)参照)のホース先端が接続可能であり、ホース先端が接続されると液体の出し入れが可能となり、ホース先端が抜かれると袋状体121内部の液体が封入可能となる。
【0025】
下プレート122と上プレート123とは、袋状体121の口部分を挟み込んだ状態でプレート押さえボルト124により固定される。また、この固定された下プレート122及び上プレート123の一部は、注入口128が平板11の支持体取付孔112の略中心に位置するように、平板11の内部に埋め込まれている。
【0026】
〈建築物基礎1の設置方法〉
次に、図3(a)、(b)を用いて、建築物基礎1の設置方法について説明する。図3(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る建築物基礎1の部分断面図である。
建築物の建設予定地を所定の深さまで根伐った後に、根伐った底を整地し、地盤面5を床付けする。その後、床付けした地盤面5をビニールシート6で覆う。
その後、平板11を、支持体12が取り付けられた下面11bを地盤面に向けて設置する平板設置工程を行う。この平板設置工程では、まず、後述する立ち上がり壁13の通り芯上に、平板凹部118の列を合わせて第1の平板11を設置する。次に、第2の平板11の平板突起部114及び平板欠き込み部115を、第1の平板11の平板突起部114及び平板欠き込み部115に係合させて、第1の平板11の側縁と第2の平板11の側縁とを密着させ、これらの平板11の平板固定用欠き込み116から平板固定用ボルト117を挿通し締めつけ、これらの平板11を互いに固定する。
【0027】
この平板設置工程の後に、液体注入工程として、以下の工程を行う。
まず、4つの支持体12の袋状体121に注入口128からそれぞれ水ジャッキ200のホース先端を接続し、袋状体121の内部に水を注入する。すると、袋状体121が膨張し、地盤に面として支持され、平板11の当該袋状体121が取り付けられた部分が上昇するので、平板11の上面11aを適正な高さまで上昇させる。また、例えば、平板11の上面11aが適正な高さより上昇した場合は、逆に当該袋状体121の内部より水を抜き出す。すると、袋状体121が収縮し、平板11の当該袋状体121が取り付けられた部分が降下するので、平板11の上面11aを適正な高さまで降下させる。これらの工程を4つの支持体12に対してそれぞれ行うことで、平板11の上面11aを適正な高さに配置し、かつ、平板11を水平に配置できる。搾る
【0028】
この液体注入工程の後に、平板11の貫通口113に、例えば、上戸400を取り付け、上戸400の上部から、攪拌済みのセメント系流動材7を、例えば、バケツ等300で地盤面5及びビニールシート6と平板11の下面11bとの間に注入するセメント系流動材注入工程を行う。
【0029】
このセメント系流動材注入工程の後に、セメント系流動材7を硬化させる養生期間を設ける養生工程を行う。なお、この養生期間は、夏場で12時間〜20時間、冬場で15時間から30時間が好ましい。そして、この養生工程の後に、後述する立ち上がり壁13を設置する工程や、その他の建築物建設のための次工程を行う。
【0030】
第1実施形態によれば以下の効果を有する。
鉄筋等を組むことなく、地盤面5に建築物基礎1を設置し、4つの支持体12の袋状体121の内部に注入する水の量を調整することで、平板11を適正な高さに配置し、かつ、平板11を水平に配置できる。
よって、労力を軽減できるとともに、容易に設置できる建築物の基礎を提供できる。
【0031】
また、平板11を適正な高さに配置し、かつ、平板11を水平に配置した建築物の基礎を地盤面5に固定できるので、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持できる建築物の基礎を提供できる。
【0032】
本発明の第1実施形態では、平板の基礎を用いて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、L型擁壁やBOXカルバート等のプレキャストコンクリート構造物全ての水平配置に用いることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の建築物基礎1は、第1実施形態の建築物基礎1の平板11に、立ち上がり壁13を設けたものである。なお、第1実施形態の建築物基礎1と同じ構成には同符号を付し、その説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る建築物基礎1の斜視図である。
【0034】
〈立ち上がり壁13の構成〉
立ち上がり壁13は、平板11の上面11aに形成された平板凹部118の列上に設置され、所定の厚さ(例えば、100mm〜150mm)を有する正面視略長方形又は上面視略L字型の平板状に形成されている。この立ち上がり壁13の長辺方向の長さは、1800mm、3600mm等、この建築物基礎1の上屋の建築部材の規格寸法に準ずることが好ましいが、任意の寸法とすることができる。
【0035】
立ち上がり壁13には、平板11の上面11aに設置されたときに略鉛直方向に立ち上がり面13aが形成されている。また、立ち上がり壁13には、立ち上がり面13aと略直交する方向に、平板11の上面11aと接する底面13bが形成されている。また、立ち上がり壁13には、立ち上がり面13a及び底面13bと略直交する方向に、他の立ち上がり壁13と接する側面13cが形成されている。
【0036】
底面13bには、後述する底面凸部133(図5(a)、(b)参照)が形成されている。また、立ち上がり壁13の底面13b側には、後述する壁立設用固定部141、141a(図5(a)、(b)参照)が形成されている。
また、立ち上がり壁13の側面13c側には、後述する壁連結部131(図7(a)、(b)参照)が形成されている。
【0037】
図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)を用いて、平板凹部118及び底面凸部133について説明する。
図5(a)は、本発明の第2実施形態の平板11及び立ち上がり壁13の部分断面図である。図5(b)は、第2実施形態の変形例の平板11及び立ち上がり壁13の部分断面図である。
図6(a)は、本発明の第2実施形態の平板11及び立ち上がり壁13の部分正面図である。図6(b)は、第2実施形態の変形例の平板11及び立ち上がり壁13の部分正面図である。この変形例は、第2実施形態の壁立設用固定部141と形状が異なる壁立設用固定部141aを備える点が、第2実施形態と相違する。
【0038】
平板凹部118は、平板11の上面11aにおいて、外形の断面形状が略逆八の字状に形成されている。また、底面凸部133は、立ち上がり壁13の底面13bにおいて、外形の断面形状が略逆八の字状に形成されている。
平板凹部118と底面凸部133との外形形状は略同一である。すなわち、底面凸部133を平板凹部118に挿入すると、底面凸部133と平板凹部118とは略隙間無く係合する。また、平板凹部118と底面凸部133とは、略同一間隔で形成されている。
【0039】
〈壁立設用固定部141の構成〉
図5(a)、図6(a)を用いて、第2実施形態の壁立設用固定部141について説明する。
壁立設用固定部141は、立ち上がり壁13の底面13b側に形成されている。この壁立設用固定部141は、内側の立ち上がり面13aから突出し、立ち上がり壁13の長辺方向に沿って形成された壁立設用固定片144と、この壁立設用固定片144及び外側の立ち上がり面13aに形成された壁立設用欠き込み145とを有する。
【0040】
平板11には、立ち上がり壁13が設置されたときに、この立ち上がり壁13の壁立設用固定部141と接する部分に、複数の壁立設用ボルト孔119が形成されている。
立ち上がり壁13と平板11とは、この壁立設用固定部141及び壁立設用ボルト孔119において、壁立設用ボルト150により螺合され互いに固定される。
【0041】
壁立設用固定片144は、底面13bに沿って形成され、この底面13bと同一平面上に一面が配置される略直方体と、この略直方体の上部に形成された略三角柱体とからなる。
壁立設用欠き込み145は、壁立設用ボルト150の差し込み及び操作するための、略三角錐状に形成された欠き込みである。
この壁立設用欠き込み145は、壁立設用固定片144の略三角柱体及び外側の立ち上がり面13aにおいて、互いに対向する位置に1対で形成され、所定間隔(例えば、300mm)毎に配置されている。この壁立設用欠き込み145の下方には、壁立設用ボルト150を挿通するためのボルト孔が形成されている。
【0042】
〈壁立設用固定部141a(変形例)の構成〉
図5(b)、図6(b)を用いて、第2実施形態の変形例の壁立設用固定部141aについて説明する。
壁立設用固定部141aは、立ち上がり壁13の底面13b側に形成されている。この壁立設用固定部141aは、内側及び外側の立ち上がり面13aから突出し、立ち上がり壁13の長辺方向に沿って形成された壁立設用固定片144aと、この壁立設用固定片144aに形成された壁立設用欠き込み145aとを有する。
【0043】
平板11には、立ち上がり壁13が設置されたときに、この立ち上がり壁13の壁立設用固定部141aと接する部分に、複数の壁立設用ボルト孔119が形成されている。
立ち上がり壁13と平板11とは、この壁立設用固定部141a及び壁立設用ボルト孔119において、壁立設用ボルト150により螺合され互いに固定される。
【0044】
壁立設用固定片144aは、底面13bに沿って、この底面13bと同一平面上に一面が配置される略直方体に形成されている。
壁立設用欠き込み145aは、壁立設用ボルト150の差し込み及び操作するための、断面形状が略台形に形成された欠き込みである。
この壁立設用欠き込み145aは、立ち上がり面13aの内側及び外側にそれぞれ形成された壁立設用固定片144aの上部において、内側と外側で互いに対向する位置に1対で形成され、所定間隔(例えば、300mm)毎に配置されている。この壁立設用欠き込み145の下方には、壁立設用ボルト150を挿通するためのボルト孔が形成されている。
【0045】
〈壁連結部131の構成〉
図7(a)、(b)を用いて、壁連結部131について説明する。
図7(a)は、本発明の第2実施形態の壁連結部131の部分断面図である。図7(b)は、本発明の第2実施形態の壁連結部131の正面図である。
壁連結部131は、立ち上がり壁13の側面13c側に設けられ、側面13cより突起する壁突起部134及び側面13c側に欠き込まれた壁欠き込み部135と、この壁突起部134に設けられた壁連結用ボルト孔139と、この壁連結用ボルト孔139に挿通され異なる立ち上がり壁13同士を互いに連結する壁連結用ボルト140と、立ち上がり壁13の側面13cの近傍であって、立ち上がり壁13の上部及び下部にそれぞれ設けられた壁固定用欠き込み136と、この壁固定用欠き込み136に挿通され異なる立ち上がり壁13同士を互いに固定する壁固定用ボルト137と、を備える。
【0046】
壁突起部134は、立ち上がり壁13の略半分の厚さで、正面視で略台形状に形成されている。壁欠き込み部135は、正面視でその外形形状が略台形状で、立ち上がり壁13の略半分の厚さ分の欠き込みが形成されている。壁突起部134と壁欠き込み部135の外形形状は略同一である。すなわち、ある立ち上がり壁13の壁突起部134を、この立ち上がり壁13と隣接する立ち上がり壁13の壁欠き込み部135に挿入すると、この壁突起部134とこの壁欠き込み部135とは略隙間無く係合する。
【0047】
また、壁突起部134及び壁欠き込み部135には、略方形状の頂点にそれぞれ配置された4つの壁連結用ボルト孔139が形成されている。ある立ち上がり壁13の壁突起部134に形成された4つの壁連結用ボルト孔139と、この立ち上がり壁13と隣接する立ち上がり壁13の壁欠き込み部135に形成された4つの壁連結用ボルト孔139とは、この壁突起部134とこの壁欠き込み部135とを略隙間無く係合させることで、略同一位置に重なって配置され、壁連結用ボルト140が挿通可能となる。
【0048】
壁固定用欠き込み136は、壁固定用ボルト137の差し込み及び操作するための、略三角錐状に形成された欠き込みである。ある立ち上がり壁13の壁固定用欠き込み136と、この立ち上がり壁13と隣接する立ち上がり壁13の壁固定用欠き込み136とは、これらの立ち上がり壁13の壁突起部134とこの壁欠き込み部135とを略隙間無く係合させることで、互いに対向する位置に配置され、壁固定用ボルト137が挿通可能となる。
【0049】
〈立ち上がり壁13の設置方法〉
次に、立ち上がり壁13の設置方法について説明する。
まず、1つめの立ち上がり壁13の底面凸部133を、平板11の平板凹部118に近接させる。すると、平板凹部118に底面凸部133が導かれ、これらが互いに係合することで、立ち上がり壁13が平板11の上面11aで適正な位置に配置できるとともに、この立ち上がり壁13の壁立設用欠き込み145のボルト孔と平板11の壁立設用ボルト孔119とが略同一位置に重なって配置できる。
【0050】
次に、この配置した立ち上がり壁13に隣接する位置に2つめの立ち上がり壁13を近接させる。このとき、1つめの立ち上がり壁13の壁欠き込み部135に、2つめの立ち上がり壁13の壁突起部134を挿入しつつ、2つめの立ち上がり壁13の底面凸部133を、平板11の平板凹部118に近接させる。すると、平板凹部118に底面凸部133が導かれ、これらが互いに係合することで、立ち上がり壁13が平板11の上面11aで適正な位置に配置できるとともに、この立ち上がり壁13の壁立設用欠き込み145のボルト孔と平板11の壁立設用ボルト孔119とが略同一位置に重なって配置できる。
【0051】
さらにこのとき、1つめの立ち上がり壁13の壁欠き込み部135と2つめの立ち上がり壁13の壁突起部134とが係合し、1つめの立ち上がり壁13の壁連結用ボルト孔139と2つめの立ち上がり壁13の壁連結用ボルト孔139とが略同一位置に重ねて配置できるとともに、1つめの立ち上がり壁13の壁固定用欠き込み136と2つめの立ち上がり壁13の壁固定用欠き込み136とを互いに対向する位置に配置できる。同様な手順で、設計上必要な位置に立ち上がり壁13を配置する。
【0052】
次に、略同一位置に重ねて配置した壁連結用ボルト孔139に、壁連結用ボルト140を挿通し、螺合する。また、互いに対向する位置に配置した壁固定用欠き込み136に、壁固定用ボルト137を挿通し、螺合する。
次に、略同一位置に重なって配置した立ち上がり壁13の壁立設用欠き込み145のボルト孔と平板11の壁立設用ボルト孔119とに、壁立設用ボルト150を挿通し、螺合する。
【0053】
第2実施形態及びこの変形例によれば以下の効果を有する。
平板11に立ち上がり壁13を設置するとき、この立ち上がり壁13の底面13bに形成した底面凸部133を、平板11の上面11aに形成した平板凹部118に挿入して係合させるだけで、建築物基礎1の立ち上がり壁13を設置できる。
また、底面凸部133の断面形状を略八の字状としたので、この底面凸部133と平板凹部118とを正確に合わせなくても、底面凸部133と平板凹部118とを係合できるので、建築物基礎1の立ち上がり壁13を容易に設置できる。
さらに、平板11には複数の平板凹部118を形成した。例えば、平板11上において、所定間隔(例えば、300mm間隔)で複数の平板凹部118を形成することで、この複数の平板凹部118の中から選択した建築物の形状に合わせた位置の平板凹部118に、立ち上がり壁13の底面凸部133を挿入し係合させるだけで、建築物の形状に合った基礎の立ち上がり壁を容易に設置できる。
よって、労力を軽減し、従来の工程を省略できるとともに、容易に搬入し設置でき、所定の品質を維持できる建築物の基礎を提供できる。
【0054】
本発明は前記実施形態又は変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建築物基礎の斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の第1実施形態に係る支持体の断面図である。(b)は、本発明の第1実施形態に係る支持体の上面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る建築物基礎1の部分断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る建築物基礎の斜視図である。
【図5】(a)は、本発明の第2実施形態の平板及び立ち上がり壁の部分断面図である。(b)は、第2実施形態の変形例の平板及び立ち上がり壁の部分断面図である。
【図6】(a)は、本発明の第2実施形態の平板及び立ち上がり壁の部分正面図である。(b)は、第2実施形態の変形例の平板及び立ち上がり壁の部分正面図である。
【図7】(a)は、本発明の第2実施形態の壁連結部の部分断面図である。(b)は、本発明の第2実施形態の壁連結部の正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 建築物基礎
5 地盤面
6 ビニールシート
7 セメント系流動材
11 平板
11a 上面
11b 下面
12 支持体
13 立ち上がり壁
13a 立ち上がり面
13b 底面
13c 側面
112 支持体取付孔
113 貫通口
114 平板突起部
115 平板欠き込み部
116 平板固定用欠き込み
117 平板固定用ボルト
118 平板凹部
119 壁立設用ボルト孔
121 袋状体
122 下プレート
123 上プレート
124 プレート押さえボルト
128 注入口
131 壁連結部
133 底面凸部
134 壁突起部
135 壁欠き込み部
136 壁固定用欠き込み
137 壁固定用ボルト
139 壁連結用ボルト孔
140 壁連結用ボルト
141、141a 壁立設用固定部
144、144a 壁立設用固定片
145、145a 壁立設用欠き込み
150 壁立設用ボルト
200 水ジャッキ
300 バケツ
400 上戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎であって、
地盤面に面して設置される平板と、
前記平板において、前記地盤面に対向する面である下面に設けられる少なくとも3つの支持体とを備え、
前記支持体は、
弾性の袋状体と、
前記袋状体に設けられ、前記袋状体の内部に液体の出し入れが可能な注入口とを有することを特徴とする建築物の基礎。
【請求項2】
前記平板の前記下面の反対側の面である上面に設置され、略鉛直方向に立ち上がり面を形成する立ち上がり壁を備え、
前記立ち上がり壁は、前記立ち上がり面と略直交する方向に形成され、前記平板の前記上面と接する底面を有し、
前記底面には、断面形状が略八の字状の凸部が形成され、
前記平板の前記上面には、前記凸部が係合可能な凹部が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築物の基礎。
【請求項3】
前記平板には、前記上面と前記下面とを貫通する貫通口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建築物の基礎。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の建築物の基礎を設置する基礎設置方法であって、
前記平板を地盤面に設置する平板設置工程と、
前記平板設置工程の後に、少なくとも3つの前記支持体の前記袋状体に前記注入口から液体を注入し、前記平板を略水平にする液体注入工程とを備える基礎設置方法。
【請求項5】
請求項3に記載の建築物の基礎を設置する基礎設置方法であって、
前記平板を地盤面に設置する平板設置工程と、
前記平板設置工程の後に、少なくとも3つの前記支持体の前記袋状体に前記注入口から液体を注入し、前記平板の前記上面を略水平にする液体注入工程と、
前記液体注入工程の後に、前記貫通口からセメント系流動材を前記地盤面と前記平板の前記下面の間に注入するセメント系流動材注入工程と、
前記セメント系流動材注入工程の後に、前記セメント系流動材を硬化させる養生工程とを備える基礎設置方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−46807(P2009−46807A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210925(P2007−210925)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(507273323)松建工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】