説明

建築用パネルのための難燃性組成物

難燃性剤は、組成物の全重量に基づいてEVA、エチレンアクリル酸アルキル、EVACO、およびエチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素などの1つ以上のエチレン15〜50重量%と、難燃剤5〜50重量%と、充填剤15〜70重量%とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性組成物に関し、該組成物から製造されたシートに関し、および建築物の適用において使用することができる該シートを含む多層構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物および構造体の適用において使用されるパネルについては、難燃性材料は、火の回りを防ぐことが望ましい。難燃性パネルは、建築物の外面を覆い、通常、「サンドイッチ」構造を有し、2つの外層は金属から製造され、中間層は、以下の段落に記載されているような難燃性組成物から製造される。
【0003】
建築用パネルのための難燃性組成物の重要な特性は、高い難燃性、良好な熱性能および良好な機械的性質である。このような組成物は、必要とされた難燃性の特徴を有するために、ASTM D2863によって測定されたとき、少なくとも29の限定酸素指数(LOI)を有さなくてはならない。現在、建築用パネルの製造に適した典型的な難燃性組成物は、ポリエチレン(PE)および/またはエチレン酢酸ビニル(EVA)と、アルミニウム三水和物(ATH)などの難燃剤、約70重量%までとのブレンドに基づいている。場合により、このような組成物は、無水マレイン酸とグラフトされたPEおよび/またはEVAなどの改質ポリマーを約7重量%まで含有する。また、他方、建築物の適用においては費用効率が高いことが一般に望ましい。ATHなどの難燃剤は高価であり、その結果、多量のこれらの化合物を含有する典型的な難燃性組成物は高価になる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の根本の問題は、建築用パネルの製造用の低コスト難燃性組成物であって、ASTM D2863によって測定されたとき、少なくとも29以上のLOIを有する難燃性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(a)EVA、エチレンアクリル酸アルキル、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素(EVACO)およびエチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素から選択された1つ以上のエチレンコポリマー15〜50重量%と、
(b)難燃剤5〜50重量%と、
(c)不活性充填剤15〜70重量%と、
を含む建築用パネルの製造用の難燃性組成物(重量パーセンテージは組成物の全重量に基づいている)によって上述の問題を克服することができることが驚くべきことに見出された。
【0006】
不活性充填剤を含有する難燃性組成物は、組成物の全コスト、従って、最終建築用パネルの全製造コストを削減することができる。さらに、不活性充填剤によって難燃剤を部分的に代用することは影響を与えないが、組成物自体の難燃性性質を改良することができる。
【0007】
また、本発明は、上記の難燃性組成物で製造された建築用パネルのためのシートを提供する。
【0008】
本発明はさらに、上に記載されたような少なくとも1つのシートを含む建築用パネルのための多層構造物を提供し、そのシートは、アルミニウムから製造された2つの外層の間に位置決めされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
組成物において用いられたEVAコポリマーは好ましくは、エチレン25〜90重量%および酢酸ビニル10〜75重量%、またはエチレン55〜75重量%および酢酸ビニル20〜45重量%を含有し、重量%は、EVAコポリマーの全重量に基づいている。一般に、組成物のEVAコポリマーは、ASTM D−1238(2.16kgおよび190℃)によって測定されたとき、0.05〜100g/10分の範囲、好ましくは50g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0010】
本発明の組成物において用いられたエチレンアクリル酸アルキルコポリマーは好ましくは、エチレン25〜90重量%およびアクリル酸アルキル10〜75重量%、またはエチレン55〜75重量%およびアクリル酸アルキル15〜45重量%を含有し、重量%はエチレンアクリル酸アルキルコポリマーの全重量に基づいている。エチレンアクリル酸アルキルコポリマーは、ASTM D−1238(2.16kgおよび190℃)によって測定されたとき、0.05〜100g/10分、または15〜60g/10分の範囲のMFIを有してもよい。エチレンアクリル酸アルキルコポリマーは有利には、エチレンアクリル酸メチル、エチレンアクリル酸エチルおよびエチレンアクリル酸ブチルの1つ以上である。
【0011】
本発明の組成物において用いられたEVACOコポリマーは、エチレン30〜90重量%および酢酸ビニル10〜70重量%および一酸化炭素1〜20重量%、またはエチレン55〜65重量%、酢酸ビニル20〜30重量%、および一酸化炭素5〜15重量%を含有してもよく、重量%はEVACOコポリマーの全重量に基づいている。一般に組成物のEVACOコポリマーは、ASTM D−1238(2.16kgおよび190℃)によって測定されたとき、1〜50g/10分、または10〜40g/10分の範囲のMFIを有する。
【0012】
本発明の組成物において用いられたエチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素コポリマーは、エチレン30〜90重量%、アクリル酸アルキル10〜70重量%および一酸化炭素1〜20重量%、またはエチレン55〜65重量%、アクリル酸アルキル20〜30重量%および一酸化炭素5〜15重量%を含有してもよく、重量%はエチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素コポリマーの全重量に基づいている。一般に前記組成物のエチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素コポリマーは、ASTM D−1238(2.16kgおよび190℃)によって測定されたとき、1〜50g/10分、または10〜40g/10分の範囲のMFIを有する。エチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素コポリマーは、エチレンアクリル酸メチル一酸化炭素(EMACO)、エチレンアクリル酸エチル一酸化炭素(EEACO)およびエチレンアクリル酸ブチル一酸化炭素(EBACO)の1つ以上であってもよい。
【0013】
本発明の実施態様によって、エチレンコポリマーは、組成物の全重量の20〜30重量%、または約25重量%において組成物中に存在してもよい。
【0014】
本発明の別の実施態様によって、1つ以上のエチレンコポリマーをカルボン酸またはカルボン酸無水物官能基0.2〜3重量%とグラフトおよび/または共重合することができ、重量%はエチレンコポリマーの全重量に基づいている。このようなカルボン酸またはカルボン酸無水物官能基は、難燃性組成物自体の破断点伸びを改良し、また、アルミニウムなどの金属表面への組成物の接着力を改良する。
【0015】
本発明の組成物において用いられた難燃剤は、本技術分野に公知のいずれの難燃剤であってもよい。典型的に、難燃剤は、ATHおよびマグネシウム三水和物の1つ以上である。それは、組成物の全重量の10〜30重量%、または約20重量%の量において存在してもよい。
【0016】
組成物において用いられた不活性充填剤は、本技術分野に公知のいずれの不活性充填剤であってもよい。典型的に、不活性充填剤は、炭酸カルシウム、タルカム、カ焼粘土、マイカおよびホウ酸亜鉛の1つ以上である。不活性充填剤は好ましくは、難燃性組成物の全重量の40〜65重量%、または約55重量%の量において存在する。
【0017】
上に記載された成分に加えて、難燃性組成物は、ポリマー配合技術において公知の酸化防止剤、紫外線安定剤、潤滑剤(例えばオレアミド)、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、ワックス、顔料、二酸化チタンおよび他の加工助剤(例えばステアリン酸亜鉛)などの一般的な添加剤をブレンドされてもよい。これらの添加剤は、本技術分野に公知の量および形態において組成物中に存在してもよい。
【0018】
難燃性組成物は、通常の混練装置(masticating equipments)、例えば、ゴム用ロール機、ブラベンダーミキサ、バンバリーミキサ、ブス−コーニーダー(Buss−ko kneader)、ファレル(Farrel)連続ミキサまたは二軸スクリュー連続ミキサを使用することによって上に記載された成分を混合することにより、調製することができる。グラフト化ポリマーが組成物中に含有される場合、混合時間および加工温度を調節してほとんど均質なブレンドならびに適切な反応を得ることができる。典型的に、約一(1)〜五(5)分の混合時間および160℃の混合温度が良好である。
【0019】
上に記載された難燃性組成物で製造されたシートもまた、本発明の目的である。このようなシートは、0.01〜15mmまたは1〜10mmの間の様々な厚さを有してもよく、上に記載されたような溶融ブレンド押出によって直接に製造されるか、あるいは代わりに、組成物を調製し、引き続いて押出、カレンダリングおよび高温積層などのいずれかの通常の技術の手段によって加工することによって製造されてもよい。
【0020】
多層構造物は、上記の難燃性組成物の少なくとも1つのシートを含んでもよく、そのシートは少なくとも1つのアルミニウム層に隣接しており、好ましくは2つの外側のアルミニウム層の間に位置決めされる。少なくとも1つのアルミニウム層、または好ましくは2つの外側のアルミニウム層の機能は、シート構造物自体に強度、剛性、様々な天候条件に対する耐性、付加的な難燃性および美的外観を与えることである。本発明による多層構造物は、建築物の壁の外層として使用され、それによって少なくとも1つのアルミニウム層は可視的である。
【0021】
1つ以上のアルミニウム層が200μm〜2mm、300μm〜1mm、または約500μmの様々な厚さを有してもよい。
【0022】
上に記載された多層構造物を従来の方法によって製造することができる。これらの方法には、難燃性組成物をアルミニウムシート上に押出コーティングすることおよび難燃性組成物をアルミニウムシートの間に押出積層することなどがある。必要ならば、押出または積層プロセスの前に通常の接着剤の層をアルミニウムシート上に適用する。
【0023】
本発明は、以下の実施例.においてさらに説明される。
【実施例】
【0024】
一般的手順
以下の実施例に示された量の成分を溶融配合することによってブレンドを調製した。溶融配合は、約5分間、150〜170℃において100グラムからのバッチを用いて二本ロール機で行われた。粉砕された生成物を約5分間、150〜170℃において水圧プレス内で試験プラックに形成した。その後、限定酸素指数(LOI、ASTM D2863)、引張強さ(ASTM D638)および破断点伸び(ASTM D638)を試験した。結果を表1に示す。
【0025】
実施例1
E.I.du Pont de Nemours and Company(デュポン)からElvaloy(登録商標)AC1609としてエチレンアクリル酸メチル 20g
Alcan Chemicals Europeから商品名Baco SF7としてATH 20g
Alpha Calcit Fuellstoff GmbH & Co.KGから商品名Calcicoll W15として炭酸カルシウム60グラム
【0026】
実施例2
実施例1の場合と同様のエチレンアクリル酸メチル 25g
実施例1の場合と同様のATH 20g
実施例1の場合と同様の炭酸カルシウム 55g
【0027】
実施例3
デュポンからElvaloy(登録商標)AC12024としてエチレンアクリル酸メチル 20g
実施例1の場合と同様のATH 20g
実施例1の場合と同様の炭酸カルシウム 60グラム
【0028】
実施例4
デュポンからFusabond(登録商標)556Dとして、無水マレイン酸(MAH)とグラフトされたエチレンアクリル酸メチル 2g
実施例3の場合と同様のエチレンアクリル酸メチル 18g
実施例1の場合と同様のATH 20g
実施例1の場合と同様の炭酸カルシウム 60g
【0029】
実施例5
デュポンから商品名Elvaloy(登録商標)AC1820としてエチレンアクリル酸メチル 20g
実施例1の場合と同様のATH 20g
実施例1の場合と同様の炭酸カルシウム 60g
【0030】
実施例6(比較用)
ASTM7920によって測定された約0.920g/cm3の密度を有するポリエチレン 31.5g
実施例1の場合と同様のATH 68.5g
【0031】
実施例7(比較用)
デュポンからElvaloy(登録商標)AC1820としてエチレンアクリル酸メチル 30g
実施例1の場合と同様のものを70g
【0032】
実施例8(比較用)
実施例7の場合と同様のエチレンアクリル酸メチル 20g
実施例1の場合と同様のものを80g
【0033】
表1

(1)引張強さ
(2)破断点伸び
(3)測定されない
【0034】
表1は、本発明の組成物(実施例1〜5)が比較例6〜8の組成物よりも高いLOI値を有したことを示す。従って、本発明の組成物はより安価であるだけでなく、ポリエチレンとATHとのブレンド(実施例6)など、通常の組成物よりも良好に機能する。実施例1〜5の機械的性質は、通常の組成物の機械的性質よりも大体良好であり、それによって、グラフト化エチレンコポリマーの存在は組成物の破断点伸びを増加させたことを指摘できる(実施例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸アルキルコポリマー、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素コポリマー、エチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素コポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せを含む1つ以上のエチレンコポリマー15〜50重量%と、
(b)難燃剤5〜50重量%と、
(c)不活性充填剤15〜70重量%と、
を含み、重量%が組成物の全重量に基づいている、建築用パネルの製造用の難燃性組成物。
【請求項2】
前記エチレンアクリル酸アルキルコポリマーが、1つ以上のエチレンアクリル酸メチルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せである、請求項1に記載の難燃性組成物。
【請求項3】
前記エチレンアクリル酸アルキル一酸化炭素コポリマーが、1つ以上のエチレンアクリル酸メチル一酸化炭素コポリマー、エチレンアクリル酸エチル一酸化炭素コポリマー、エチレンアクリル酸ブチル一酸化炭素コポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せである、請求項1または2に記載の難燃性組成物。
【請求項4】
前記難燃剤が、1つ以上のアルミニウム三水和物、マグネシウム三水和物、またはそれらの組合せである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、1つ以上の炭酸カルシウム、タルカム、カ焼粘土、マイカおよびホウ酸亜鉛、またはそれらの2つ以上の組合せである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項6】
前記エチレンコポリマーが、前記組成物の全重量の20〜30重量%の量において前記組成物中に存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項7】
前記難燃剤が、前記組成物の全重量の10〜30重量%の量において前記組成物中に存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項8】
前記充填剤が、前記組成物の全重量の40〜65重量%の量において前記組成物中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項9】
前記エチレンコポリマーが、前記エチレンコポリマーの全重量に基づいて、カルボン酸またはカルボン酸無水物0.2〜3重量%とグラフトおよび/または共重合される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項10】
場合により1〜10mmの厚さを有し、場合により2つのアルミニウム層の間に位置決めされる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の難燃性組成物を含むかまたはそれで製造された建築用パネルのためのシート。

【公表番号】特表2008−540805(P2008−540805A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512375(P2008−512375)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018523
【国際公開番号】WO2006/124658
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】