説明

建設廃材利用再生材

【課題】化学物質を吸着、分解して発散させない貝殻材料と建設廃材とを組み合わせて、再生材を、揮発性有機化合物を発生させず、また焼却したときの有害物質を発生させないものとし、建設廃材の再利用を高める。
【解決手段】建設廃材利用再生材を、建設廃材の粉砕物と貝殻を焼いて粉砕してなる多孔質の貝殻粉砕物とが混合されている形態のものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設廃材利用再生材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建設廃材を利用するものとして、ポルトランドセメントと建設廃材焼却溶融スラグなどのスラグ組成物とカルシウム化合物を配合してなる水硬性組成物と水とを混合して硬化体を得るようにしたり(特許文献1参照)。また、セメントと木毛質材料と建設廃材粉砕物からなるセメント板を得るようにする工夫があった(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−263659号公報
【特許文献2】特開2000−095555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに近年においては、建設リサイクル法が施行され、建設廃材中、コンクリート廃材、木質建設廃材、アスファルト廃材などを特定建設資材として分別すべき品目とし、この廃棄物の再資源化が強く求められるようになってきており、この内、アスファルト廃材については高い割合で再資源化が進んでいる。一方、上記コンクリート廃材を道路の路盤材として利用したり、木質建設廃材にあっては一部で燃料として熱利用することが試みされているだけであり、建設廃材全体としてはこれを再資源として利用する割合が低く留まっているというのが現状であった。
【0004】
この点、上述したコンクリート廃材や木質建設廃材などの建設廃材を建材などとして利用すれば、建設廃材の再資源化において非常に有用なものとなることが考えられる。
しかしながら、コンクリート廃材や木質建設廃材では廃材として搬出される以前の建物での構成が全く不明であり、健康被害を招くホルムアルデヒドなどの物質や有害な揮発性有機化合物(VOC)を使用した環境下であった可能性を否定できず、コンクリート廃材をリサイクルする上で障害となっている。また、室内壁面化粧シートなとであったビニールクロス材なども建設廃材として分別して回収されているが、これらも再生材としたときに前述の揮発性有機化合物などを出す可能性がある。ビニールクロス材などを焼却処分すると有毒ガスを発生させてしまうことから、これを利用した再生材が再び廃材とされたときにも同様に焼却処分できないという問題があった。
【0005】
上述したような建設廃材に揮発性有機化合物などが含まれている可能性がある点や、建設廃材として分別されて回収されているビニールクロス材などの化学合成内装材を焼却処分したときに有毒なガスが発生する点について、本発明者は天然材を合わせて用いることで解決できることに着目した。
即ち、上述した問題に対して本発明者は、ホタテの不要物として処分されてきた貝殻を焼成して粉砕すれば、その貝殻材料が、再生材の材料として使用する上で何ら問題の無い点、また、前記貝殻材料が、他の貝の貝殻よりなるものに比べて、上記健康障害や病気を生じさせる化学物質を吸着して発散させない効果が極めて高いことに着目したものである。
そこで、本発明は上記事情に鑑みて、化学物質を吸着して発散させない貝殻材料と建設廃材とを組み合わせて、再生材を、揮発性有機化合物を発生させず、また焼却したときの有害物質を発生させないものとすることを課題とし、建設廃材の再利用を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、建設廃材の粉砕物と貝殻を焼いて粉砕してなる多孔質の貝殻粉砕物とが混合されていることを特徴とする建設廃材利用再生材を手供して、上記課題を解消するものである。
本発明において、上記建設廃材の粉砕物はコンクリート廃材の粉砕物とすることができるものである。
また、本発明において、上記建設廃材の粉砕物は木質建設廃材の粉砕物とすることができるものである。
また、本発明において、上記建設廃材の粉砕物は化学合成内装材の粉砕物とすることができるものである。
【0007】
もう一つの発明は、建設廃材の粉砕物と、炭酸カルシウムの方解石構造による結晶構造体を粒子とする貝殻粉末とが混合されていて、前記貝殻粉末は、粒径約200μmの多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と、該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末とが混合されているものである建設廃材利用再生材であり、この建設廃材利用再生材により上記課題を解消するものである。
この発明において、上記建設廃材の粉砕物はコンクリート廃材の粉砕物とすることができるものである。
また、この発明において、上記建設廃材の粉砕物は木質建設廃材の粉砕物とすることができるものである。
また、この発明において、上記建設廃材の粉砕物は化学合成内装材の粉砕物とすることができるものである。
【0008】
もう一つの発明は、建設廃材の粉砕物からなる再生材本体の表面に、炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻粉末であって粒径約200μmの多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と、該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末とが混合されている塗材が塗工されていることを特徴とする建設廃材利用再生材であり、この建設廃材利用再生材により上記課題を解消するものである。
この発明において、上記建設廃材の粉砕物はコンクリート廃材の粉砕物とすることができるものである。
また、この発明において、上記建設廃材の粉砕物は木質建設廃材の粉砕物とすることができるものである。
また、この発明において、上記建設廃材の粉砕物は化学合成内装材の粉砕物とすることができるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設廃材利用再生材には天然素材である貝殻の粉砕物を微細な破片状として、また粉状として有し、さらに塗材として塗工されていて、貝殻粉砕物からなる前記天然素材がホルムアルデヒドや揮発性有機化合物などの有毒物質を吸着し、空気中の水分を取り込んだ状態の下でアルカリ触媒としてこれら有害物質を二酸化炭素、水素などの無害物に分解するので、仮に建設廃材側にホルムアルデヒドや揮発性有機化合物が含まれていても、これらの物質を外部に発散することがなく、再生材を安全な建材などとして利用することができる。さらに、空気中の二酸化炭素も取り混んで吸着し、反応生成物として炭酸水素カルシウムを生成する変化をもするようにもなり、この建設廃材利用再生材にて無用な二酸化炭素の空気中での増加を抑止することができる。
さらにこの建設廃材利用再生材は不燃、もしくは準不燃となり、そして、建設廃材粉砕物の隙間に貝殻粉砕物であるカルシウム結晶物質を配する構造となるため、再生材が硬質のものとなり、有用な建材として広く利用することができる。
また、建設廃材としてビニルクロス材廃材が用いられていても燃焼時に有毒ガスを破片状、粉状の貝殻粉砕物が吸収し、塗材形態の貝殻粉砕物でもその有毒ガスを吸収する働きを有するものであるため、安全な建材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(第一の形態)
本発明における建設廃材利用再生材は、建設廃材として分別回収されたコンクリート廃材を粉砕して粒状や粉状とした粉砕物と、天然素材であるホタテの貝殻を焼いて粉砕して微細な破片状とした多孔質の貝殻粉砕物とを混ぜ合わせ状態で有しているものであり、例えば、コンクリート廃材の粉砕物と貝殻粉砕物と水硬性物質と水とを混合して板状形態に硬化させたものである。この建設廃材利用再生材は、建材などとして利用することができるものである。
この建設廃材利用再生材は上述したように貝殻粉砕物を有していて、その貝殻粉砕物を構成している片それぞれが天然素材の多孔性物質であるため、化学物質の吸着、分解性能を有するものとなっており、仮にコンクリート廃材粉砕物側にホルムアルデヒドなどの物質や揮発性有機化合物が含まれていたような場合でもこれらの化学物質を吸着し、分解して再生材からホルムアルデヒドや揮発性化学物質を発散させないようになる。
【0011】
上記ホタテは貝殻の大部分をこの結晶構造体としていて、さらにその貝殻において以下に示す構造が顕著であり、他の貝殻より有用である。即ち、ホタテはその生態において、貝殻を開閉して海水を勢いよく外部に放出することで「海中を泳ぐ」と表現されるように機敏に移動を行い、捕捉者(ヒトデなど)から逃げる動作が特長的であり、この動作が行なえるように大きな貝柱を有するとともに、貝殻自体が、比較的薄く軽量で、かつ、強度を有するという条件を兼ね備えており、その貝殻では、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が葉状構造を呈して貝内面側が形成され、貝内層(貝殻厚さ方向での芯となる層)では、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が板状構造を呈していて、この貝内面側と貝内層との構造が貝殻の主要部(表層部や蝶番部を除いた部分)を形作っているため、薄く軽量でありながら強度のあるものとなっている。
そして、前述したようホタテの貝殻の主要部において、内面側は、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が葉状構造となる(針状結晶が剣山状に密に詰まって敷き並べられている状態)とともに、貝内層は、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が板状構造としている(ベニヤ板のように、針状結晶が同一方向に並んだ層が幾重にも重なり、針状結晶の向きが層ごとに異なっている状態)としているため、このホタテの貝殻から得られた破片状体、粒状物、粉状物は方解石型構造が残って多孔質性を備えたものとなる。
このように多孔質性を備えるとともに、強度を備えているものであるため、建設廃材の粉砕物と混合した状態で配された場合、その建設廃材粉砕物の粒の間に結晶化されたカルシウムが存在し、結晶化状態の貝殻粉砕物を密に配した状態であることから、再生材の強度は高いものとなっている。
【0012】
上記実施の形態ではコンクリート廃材の粉砕物を用いているが、このコンクリート廃材の粉砕物の代わりに木質建設廃材の粉砕物を用いたり、化学合成内装材の粉砕物を用いることもできる。
【0013】
(第二の形態)
上記建設廃材利用再生材にあってはホタテの貝殻粉砕物を微細な破片状としたが、さらに細くして粉状としてもよい。この粉状の貝殻粉砕物は、炭酸カルシウムの方解石構造による結晶構造体を粒子とする貝殻粉末となり、よって、建設廃材利用再生材は、炭酸カルシウムの方解石構造による結晶構造体を粒子とする貝殻粉末を有するものとすることができるものである。そして、この貝殻粉末は、例えば粒径約200μmの多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と、該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末とが混合されているものとすることができる。
【0014】
貝殻粉砕物としての粉末を得るに当たって、ホタテの貝柱を取り除いた後において不要物として処理されてきたものを利用でき、廃棄物の有用な利用が行なえる。勿論、廃棄物とされていた貝殻を使用することは上記第一の形態でも同じとすることができる。
まず、集められた貝殻を3年から5年ほどの天日乾燥を行なって乾かし硬化させる。つぎに天日乾燥によって硬化した貝殻を約120〜約200℃程度の温度で20〜30分程度の時間をかけて焼く。この加熱は貝殻に付着している不純物を焼却除去するためのものでもあり、不純物の取り除きを行なわないと得ようとする粉体に不純物が多く混じるようになる。そして、不純物の焼却を行なった貝殻を粒径約200μmとなるまでに粉砕する。粉砕方法自体は特に限定するものではなく、既存の粉砕装置を用いればよい。このようにして炭酸カルシウム粉末が得られるものものであり、粒体は多孔性粒体となっている。
つぎに上述の多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末の一部分を用いてこれを回転炉に入れて約700℃〜約1050℃程度の温度で3時間程度の時間で加熱して酸化カルシウム粉末を得るようにする。そして、このようにして得られた酸化カルシウム粉末と前記炭酸カルシウム粉末とを混合して粉末が得られる。
【0015】
以上のようにして得られた粉末をコンクリート廃材の粉砕物とが混合した状態で配されるようにして建設廃材利用再生材を形成すればよい。この場合の建設廃材利用再生材も上記第一の形態のものと同様の機能を発揮する。
なお、上述したホルムアルデヒドなどの吸着、分解能の高さは天然材料の貝殻を原料としていることでの特徴である。即ち、化学的手法などで得られた石灰石を用いた場合のホルムアルデヒドの吸着、分解能は、その石灰石を約700℃で焼成することで得られる。一方、ホタテの貝殻粉砕物の場合、第一の焼成となる約200℃での焼成を経てなるものが吸着、分解能が第一のピークとして高いものであり、この吸着、分解能の高い粉体を上述したように建設廃材利用再生材は有している。さらに第二の焼成となる約800℃での焼成を経てなるものが吸着、分解能が第二のピークとして高いものであり、この第二のピーク状態で吸着、分解能の高い粉体も上述したように建設廃材利用再生材は有している。よって、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物に対する吸着、分解を行なう能力の高い再生材である。
【0016】
この第二の形態でも、コンクリート廃材の粉砕物の代わりに木質建設廃材の粉砕物、化学合成内装材であるクロス材などの粉砕物を用いることも第一の形態と同じように可能である。
【0017】
(第三の形態)
上記第一の形態と第二の形態ではそれぞれ建設廃材の粉砕物と貝殻粉砕物とを混合した状態で配するものとしたが、再生材表面に貝殻粉砕物を用いるようにすることができる。即ち、上述した貝殻粉末を塗材として、建設廃材の粉砕物からなる再生材本体の表面に塗工することでも本建設廃材利用再生材が得られる。この形態にあっても第一、第二の形態と同じ機能を発揮するものである。この形態でもコンクリート廃材の粉砕物の代わりに木質建設廃材の粉砕物を用いたり、化学合成内装材の粉砕物を用いることもできる。
なお、各実施の形態は、再生材を板状の建材として説明したものであるが、本発明の建設廃材利用再生材は板状の建材に限定されるものではなく、各種の形態のものとすることとが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設廃材の粉砕物と貝殻を焼いて粉砕してなる多孔質の貝殻粉砕物とが混合されていることを特徴とする建設廃材利用再生材。
【請求項2】
上記建設廃材の粉砕物はコンクリート廃材の粉砕物である請求項1に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項3】
上記建設廃材の粉砕物は木質建設廃材の粉砕物である請求項1に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項4】
上記建設廃材の粉砕物は化学合成内装材の粉砕物である請求項1に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項5】
建設廃材の粉砕物と、炭酸カルシウムの方解石構造による結晶構造体を粒子とする貝殻粉末とが混合されていて、前記貝殻粉末は、粒径約200μmの多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と、該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末とが混合されているものである建設廃材利用再生材。
【請求項6】
上記建設廃材の粉砕物はコンクリート廃材の粉砕物である請求項5に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項7】
上記建設廃材の粉砕物は木質建設廃材の粉砕物である請求項5に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項8】
上記建設廃材の粉砕物は化学合成内装材の粉砕物である請求項5に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項9】
建設廃材の粉砕物からなる再生材本体の表面に、炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻粉末であって粒径約200μmの多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と、該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末とが混合されている塗材が塗工されていることを特徴とする建設廃材利用再生材。
【請求項10】
上記建設廃材の粉砕物はコンクリート廃材の粉砕物である請求項9に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項11】
上記建設廃材の粉砕物は木質建設廃材の粉砕物である請求項9に記載の建設廃材利用再生材。
【請求項12】
上記建設廃材の粉砕物は化学合成内装材の粉砕物である請求項9に記載の建設廃材利用再生材。