説明

建設機械の情報収集装置

【課題】揮発性の記憶手段に記憶させる無駄なデータを少なくすることができる建設機械の情報収集装置の提供。
【解決手段】揮発性の第1記憶手段41と、不揮発性の第2記憶手段42と、油圧ショベル1の制御に関係する各種データを取得するデータ取得処理手段、このデータ取得処理手段で取得されたデータを第1記憶手段41に記憶させる第1保存処理手段、この第1保存処理手段が第1記憶手段にデータを記憶させる度にそのデータが異常を示すものかどうかを判別する異常判別手段、この異常判別手段で異常を示すデータであると判別されたデータの取得時点以前の第1時間帯と取得時点よりも後の第2時間帯という限定された時間帯に第1記憶手段41に記憶されたデータのみを、第2記憶手段42に記憶させる第2保存処理手段として機能する演算処理装置39とが、油圧ショベル1に備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベルやホイルローダ等の建設機械に設けられ、その建設機械の制御に関係するデータを収集する建設機械の情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械の情報収集装置は、電力が供給されている間だけデータを記憶しておくことが可能な性質、すなわち揮発性の記憶手段(RAM)と、建設機械の制御に関係する各種データを断続的に取得するデータ取得処理手段と、このデータ取得処理手段により取得されたデータを記憶手段に記憶させる保存処理手段と、記憶手段に記憶された情報をユーザーやメーカなどの管理者側の要求に応じて抽出し、衛星を介して管理者側に送信する手段とを備えている(特許分文献1参照)。
【0003】
このように構成された従来の建設機械の情報収集装置によれば、管理者側は、建設機械を休止させる原因となる異常に関するデータを、記憶手段に記憶されたデータのうちから優先的に収集することができる。
【特許文献1】特開2005−149310公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来の建設機械の情報収集装置は、揮発性の記憶手段を備えている。この記憶手段は単位容量あたり価格が高いため、記憶手段に記憶させる無駄なデータを少なくして記憶手段の記憶容量を少なく済ませたい、という要望がある。
【0005】
本発明は、上述の実状を考慮してなされたものであり、その目的は、揮発性の記憶手段に記憶させる無駄なデータを少なくすることができる建設機械の情報収集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために次のように構成されている。
【0007】
〔1〕 本発明は、揮発性の第1記憶手段と、不揮発性の第2記憶手段と、建設機械の制御に関係する各種データを取得するデータ取得処理手段と、このデータ取得処理手段により取得されたデータを、前記第1記憶手段に記憶させる第1保存処理手段と、この第1保存処理手段が前記第1記憶手段に新たなデータを記憶させる度に、そのデータが異常を示すものかどうかを判別する異常判別手段と、この異常判別手段により異常を示すデータであると判別されたデータの取得時点から、予め設定された時間を遡った時点までの第1時間帯に前記第1記憶手段に記憶されたデータ、および、前記取得時点から予め設定された時間を経た時点までの第2時間帯に前記第1記憶手段に記憶されるデータを、前記第2記憶手段に記憶させる第2保存処理手段とを備えていて、これら第1記憶手段、第2記憶手段、データ取得処理手段、第1保存処理手段、異常判別手段および第2保存処理手段が前記建設機械に設けられていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、建設機械の制御に関係する各種データを断続的にデータ取得処理手段が取得し、データ取得処理手段によりデータが取得される度に、その取得さえたデータを第1保存処理手段が第1記憶手段に記憶させ、第1記憶手段に新たなデータが記憶される度に、その新たなデータが異常を示すものかどうかを異常判別手段が判別する。この異常判別手段によってデータが異常を示すと判定されたとき、第1,第2時間帯に第1記憶手段に記憶されたデータを、第2保存処理手段が第2記憶手段に記憶させる。
【0009】
ところで、建設機械によって行われる作業は反復動作で構成されていることが多い。その反復動作中に発生する異常の原因を調べるのに必要なデータのほとんどは、反復動作の1サイクル分で取得できるものである。したがって、特定の反復動作中に発生した異常のみについて考えれば、第1時間帯と第2時間帯を合わせた時間帯は、その特定の反復動作の1サイクルを含んでいればよく、その時間帯にはそれ以上の時間の長さが必要ない。また、建設機械が行う各種反復動作の全体を考慮した場合、第1時間帯と第2時間帯を合わせた時間帯は、各種反復動作のうちの1サイクルに最も時間を要する反復動作の1サイクル分の時間と同じ時間でよいことになる。
【0010】
本発明では、第2記憶手段に記憶させるデータが、前述のような考え方で時間の長さを設定できる第1,第2時間帯に第1記憶手段に記憶されたデータのみであるから、第1記憶手段に対して第2記憶手段に記憶させる可能性がなくなったデータと第2記憶手段に記憶させる可能性のある新たなデータとを順次入れ換える、ということが行える。これにより、揮発性の第1記憶手段に記憶させる無駄なデータを少なくすることができる、という前述の目的を達成できる。
【0011】
また、同様の理由から、不揮発性の第2記憶手段に記憶させるデータの無駄も省くことができる。
【0012】
〔2〕 本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間、および、前記第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間がいずれも、前記建設機械によって行われる所定の種類の反復動作の1/2サイクル分の時間とほぼ同じに設定されていることを特徴とする。
【0013】
〔3〕 本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記データ取得処理手段に断続的にデータを取得させるための時間間隔を定めるサンプリング周期を変更するサンプリング周期設定手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
〔4〕 本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記第2記憶手段に記憶されるデータ同士の時間間隔を、前記第1記憶手段に記憶されるデータ同士の時間間隔よりも長くする間引き処理手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
〔5〕 本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間、および、前記第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間が、前記データ取得処理手段に断続的にデータを取得させるための時間間隔を定めるサンプリング周期の倍数からなることを特徴とする。
【0016】
〔6〕 本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間、および、前記第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間を変更する収集時間変更手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
〔7〕 本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記第1時間帯および前記第2時間帯に前記第1記憶手段に記憶されたデータのうちから、異常の種類に予め対応付けられたデータの種類に該当するデータを選択して前記第2記憶手段に記憶させるように、前記第2保存処理手段が設定されていることを特徴とする。
【0018】
〔8〕 本発明は、「〔7〕」記載の発明において、異常の種類に予め対応付けられたデータの種類(対応データの種類)を、予め登録されている種類のうちから選択して設定することを可能にするデータ種類設定手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前述したように、揮発性の記憶手段(第1記憶手段)に記憶させる無駄なデータを少なくすることができる。この結果、記憶手段の記憶容量を、従来の建設機械の情報収集装置よりも少なく済ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の建設機械の情報収集装置の実施形態について説明する前に、本発明が適用される建設機械について図1,2を用いて説明する。図1は本発明の建設機械の情報収集装置の一実施形態が適用される建設機械の一例である油圧ショベルを示す図、図2は図1に示された油圧ショベルに備えられる各種油圧アクチュエータを制御する油圧駆動装置の一部を示す概略図である。
【0021】
図1に示すように、油圧ショベル1は、左右一対の走行モータ3(左側のみ図示してある)により駆動される走行体2と、この走行体2の上部に旋回可能に結合していて旋回モータ6により駆動されるようになっている旋回体4とを備えている。この旋回体4の前部中央には、フロント作業装置7が装備されている。フロント作業装置7は、旋回体4の前部中央に回動可能に結合されたブーム8、このブーム8に回動可能に結合されたアーム9、および、このアーム9に回動可能に結合されたバケット10を有している。ブーム8、アーム9、バケット10はそれぞれ、一対のブームシリンダ11(左側のみ図示してある)アームシリンダ12、バケットシリンダ13により駆動されるようになっている。
【0022】
図2に示すように、油圧ショベル1の油圧駆動装置14は、作動油タンク15、この作動油タンク15から作動油を吸上げて、前述した各種油圧アクチュエータ、すなわち一対の走行モータ3、旋回モータ6、一対のブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13のそれぞれに供給する圧油を吐出するメインポンプ16と、このメインポンプ16の吐出流量を操作するレギュレータ17(1点鎖線で囲んだ部分)と、このレギュレータ17を操作する圧力を制御する電磁弁18とを備えている。
【0023】
油圧駆動装置14は、一対の走行モータ3の一方に供給される圧油の流れを制御する第1走行用制御弁(図示していない)、他方に供給される圧油の流れを制御する第2走行用制御弁、旋回モータ6に供給される圧油の流れを制御する旋回用制御弁、一対のブームシリンダ11に供給される圧油の流れを制御するブーム用制御弁、アームシリンダ12に供給される圧油の流れを制御するアーム用制御弁、および、バケットシリンダ13に供給される圧油の流れを制御するバケット用制御弁を備えている(図示していない)。また、第1走行用制御弁に与えるパイロット圧力を生成する一対の第1走行用パイロット弁、第2走行用制御弁に与えるパイロット圧力を生成する一対の第2走行用パイロット弁、旋回用制御弁に与えるパイロット圧力を生成する一対の旋回用パイロット弁、ブーム用制御弁に与えるパイロット圧力を生成する一対のブーム用パイロット弁、アーム用制御弁に与えるパイロット圧力を生成する一対のアーム用パイロット弁、および、バケット用制御弁に与えるパイロット圧力を生成する一対のバケット用パイロット弁を備えている(図示していない)。
【0024】
また、油圧駆動装置14は、一対の第1走行用パイロット弁、一対の第2走行用パイロット弁、一対の旋回用パイロット弁、一対のブーム用パイロット弁、一対のアーム用パイロット弁、および、一対のバケット用パイロット弁のそれぞれを操作するための第1走行用操作装置、第2走行用操作装置、旋回用操作装置、ブーム用操作装置、アーム用操作装置、バケット用操作装置を備えている。第1走行用操作装置は、一対の第1走行用パイロット弁を内蔵していて、この一対の第1走行用パイロット弁を操作ペダルで操作できるようになっている。第2走行用操作装置も第1走行用操作装置と同様に構成されている。また、旋回用操作装置は、一対の旋回用パイロット弁を内蔵していて、この一対の旋回用パイロット弁を操作レバーで操作できるようになっている。ブーム用操作装置、アーム用操作装置、バケット用操作装置も、旋回用操作装置と同様に構成されている。図2には、図の簡略化のため、すべての操作装置をまとめて19で示してある。また、20は各種パイロット弁に対してパイロット圧力の一次圧を供給するパイロットポンプである。
【0025】
油圧駆動装置14は、メインポンプ16およびパイロットポンプ20を駆動するディーゼルエンジン21を備えている。このエンジン21は、コモンレール式燃料噴射ポンプと、コンピュータ主体の装置からなっていてコモンレール式燃料噴射ポンプ22を制御するエンジンコントローラ23とを備えている。燃料噴射ポンプ22には、大気圧センサ、トルクセンサ、コモンレール圧センサ、エンジン回転数センサ等の、エンジン制御に関係する物理量を検出する各種センサ(以下、これらの各種センサをまとめて「エンジン制御関係センサ」という)が設けられている(図示していない)。エンジンコントローラ23は、外部から与えられる指令と、エンジン制御関係センサによる検出結果とに応じて、エンジン制御を行うようになっている。
【0026】
油圧駆動装置14は、エンジン21以外の油圧ショベル1の制御、すなわち走行体2、旋回体4およびフロント作業装置7のそれぞれの動作の制御に関係する物理量を検出する各種センサ(以下、これらの各種センサをまとめて「車体制御関係センサ」という)を備えている。また、走行体2、旋回体4およびフロント作業装置7のそれぞれの動作の制御に関係する電気機器(エンジン21に備えられたものを除く)を、車体制御関係センサによる検出結果に応じて制御する、コンピュータ主体の装置からなっている車体コントローラ24を備えている。なお、車体制御関係センサとしては、例えば、前出のパイロット弁の出力圧を検出する圧力センサ25等の、油圧回路における所定部分の圧力を検出する圧力センサと、ブーム8、アーム9およびバケット10のそれぞれの角度を検出する角度センサ26,27等の、制御結果に関係する物理量を検出するセンサと、手動で回動操作されるエンジン回転数指示ダイヤル28の回動角度を検出する角度センサ等、運転室5内の各種入力装置に内蔵された、油圧ショベル1の制御に関係する指令信号を生成するためのセンサがある。
【0027】
車体コントローラ24とエンジンコントローラ23とは電気信号線29を介して接続されている。車体コントローラ24は、運転室5内の各種入力装置のセンサからの指令信号が入力されると、その指令信号がエンジン制御に関係する指令データを含むかどうかを判定し、その判定結果が真のときに、その指令データにエンジンコントローラ23宛のデータであることを示す宛先データを付加して、電気信号線29に出力するようになっている。エンジンコントローラ23は、予め設定されたサンプリング周期で車体コントローラ24からの指令データを取得して、その指令データに従ったエンジン制御を行うようになっている。
【0028】
本発明の建設機械の情報収集装置の実施形態について説明する。
【0029】
図2における30が、本実施形態の情報収集装置であり、エンジンコントローラ23と車体コントローラ24に電気信号線29を介して接続されている。エンジンコントローラ23は、前出のエンジン制御関係センサによる検出結果を示すデータに、情報収集装置30宛のデータであることを示す宛先データを付加して電気信号線29に出力するようになっている。車体コントローラ24は前出の車体制御関係センサによる検出結果を示すデータに、情報収集装置30宛のデータである事を示す宛先データを付加して電気信号線29に出力するようになっている。
【0030】
図3は本発明の建設機械の情報収集装置の一実施形態を示すブロック図である。図4は図3に示す入力装置に備えられる各種操作キーと、表示装置に表示された収集時間設定画面の一例とを示す図、図5は表示装置に表示されたサンプリング周期設定画面の一例を示す図、図6は表示装置に表示されたデータ種類設定画面の一例を示す図である。図2に示す情報収集装置30である。
【0031】
図3に示すように、情報収集装置30は、十字キー32、テンキー33、Enterキー34およびDelキー35を有する入力装置31と、表示装置36と、入力装置31および表示装置36に接続されたコンピュータ37とを備えている。コンピュータ37は、車体コントローラ24、エンジンコントローラ23とも接続されている。
【0032】
コンピュータ37は、入力装置31、表示装置36、車体コントローラ24およびエンジンコントローラ23との間でデータの授受を行う入出力インターフェース38と、演算処理装置39(CPU)と、この演算処理装置39が行う処理を指定するプログラムおよびデータが予め記憶された読出し専用記憶手段40(ROM)と、電力が供給されている間のみデータを記憶可能な性質すなわち揮発性の記憶装置から構成されていて演算処理装置39の作業領域である第1記憶手段41(RAM)と、電力が供給されているかどうかに関係なくデータを記憶可能な性質すなわち不揮発性の記憶装置(FLASH MEMORY)から構成された第2記憶手段42とを備えている。
【0033】
読出し専用記憶手段40には、演算処理装置39に行わせる処理を指定する、次の(1)データ取得処理プログラム、(2)第1保存処理プログラム、(3)異常判別プログラム、(4)第2保存処理プログラム、(5)収集時間設定プログラム、(6)サンプリング周期設定プログラム、(7)データ種類設定プログラムが予め記憶されている。
【0034】
(1)データ取得処理プログラムは、油圧ショベル1の制御に関係する各種データ、すなわち、エンジンコントローラ23から情報収集装置30宛で電気信号線29に出力された、前出のエンジン制御関係センサによる検出結果を示すデータ、および、車体コントローラ24から情報収集装置30宛で電気信号線29に出力された、前出の車体制御関係センサによる検出結果を示すデータを、予め設定されるサンプリング周期で断続的に取得するデータ取得処理手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。サンプリング周期は、第2記憶手段42に設けられたサンプリング周期記憶領域42cに記憶されている。
【0035】
(2)第1保存処理プログラムは、前記データ取得処理手段により取得されたデータを、第1記憶手段41に記憶させる第1保存処理手段として演算処置装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0036】
(3)異常判別プログラムは、前記第1保存処理手段が第1記憶手段41に新たなデータを記憶させる度に、そのデータが異常を示すものかどうかを判別する異常判別手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0037】
(4)第2保存処理プログラムは、前記異常判別手段により異常を示すデータであると判別されたデータの取得時点から、予め設定された時間を遡った時点までの第1時間帯に第1記憶手段41に記憶されたデータ、および、取得時点から予め設定された時間を経た時点までの第2時間帯に第1記憶手段41に記憶されるデータを、第2記憶手段42に設けられた抽出データ記憶領域42aに記憶させる第2保存処理手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0038】
第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間(以下「第1収集時間」という)、および、第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間(以下「第2収集時間」という)は、例えば互いに同じ時間に設定されるようになっていて、第2記憶手段42に設けられた収集時間記憶領域42bに記憶されている。これら第1,第2収集時間の初期設定は、例えば、油圧ショベルによって行われる所定の種類の反復動作の1/2サイクル分の時間とほぼ同じに設定されている。油圧ショベル1が行う反復動作の種類としては、例えば、バケット10を同一平面上で往復させることを繰り返して土面を均す動作であって1サイクルにT1〔sec〕を要する土面均し動作、「掘削→旋回→放土→旋回→掘削」を反復する動作であって1サイクルにT2(<T1)〔sec〕秒を要する掘削動作、および、バケット10を上下方向に往復させることを繰り返して岩石等を破砕する動作であって1サイクルにT3(<T2)〔sec〕を要する破砕作業、の3種類がある。本実施形態では、第1,第2収集時間の初期設定が、前記3種類の反復動作うちで最も長い時間を要する土面均し動作の1/2サイクル分の時間とほぼ同じ時間t1になっている。
【0039】
第2保存処理プログラムは、さらに、第1時間帯および第2時間帯に第1記憶手段41に記憶されたデータのうちから、異常の種類に予め対応付けられたデータの種類(以下「対応データの種類」)に該当するデータを選択して第2記憶手段42に記憶させるように、演算処理装置39の動作手順を指定している。異常の種類と対応データ種類は、第2記憶手段42に設けられたデータ種類記憶領域42dに記憶されている。
【0040】
対応データの種類の設定は、異常の種類とその異常の種類に制御上関係するデータの種類とを対応付けることにより行われる。例えば、コモンレール圧力の制御にはエンジントルク、エンジン回転数および大気圧などが関係しているので、コモンレール圧力異常という異常の種類と、エンジントルク、エンジン回転数、大気圧というデータの種類とを対応付ける、ということが行われる。
【0041】
(5)収集時間設定プログラムは、第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bに記憶されている第1,第2収集時間の少なくとも一方、例えば両方を、入力装置31による指令に応じて変更する収集時間変更手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0042】
収集時間設定プログラムは、さらに、第1,第2収集時間の設定変更を行いやすくするための収集時間設定画面43(図4に示す)を、入力装置31の操作に応じて表示装置36に表示させる表示制御手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0043】
図4に示すように、収集時間設定画面43には、土面均し動作の1/2サイクル分とほぼ同じ時間t1を第1,第2収集時間の設定値として選択することをコンピュータ37に指令するための第1ラジオボタン43aと、掘削動作の1/2サイクル分とほぼ同じ時間t2を第1,第2収集時間の設定値として選択することをコンピュータ37に指令するための第2ラジオボタン43bと、破砕動作の約1/2サイクル分とほぼ同じ時間t3を第1,第2収集時間の設定値として選択することをコンピュータ37に指令するための第3ラジオボタン43cと、第1,第2収集時間の数値入力による設定を選択することをコンピュータ37に指令するための自由設定ボタン43dとが表示されるようになっている。また、自由設定ボタン43dを選択した場合に有効になり、入力装置31のテンキー33により入力された数値を第1,第2収集時間の入力値として表示する入力欄43eと、その入力値を設定値に確定することを、すなわち第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bにその入力値を記憶させることを、演算処理装置39に指令するための確定ボタン43fとが表示されるようになっている。
【0044】
(6)サンプリング周期設定プログラムは、第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cに記憶されているサンプリング周期の設定値を、入力装置31による指令に応じて変更するサンプリング周期設定手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0045】
サンプリング周期設定プログラムは、さらに、サンプリング周期の設定変更を行いやすくするためのサンプリング周期設定画面44(図5に示す)を、入力装置31の操作に応じて表示装置36に表示させる表示制御手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0046】
図5に示すように、サンプリング周期設定画面44には、前出の3種類の反復動作のうちで動作の最も遅い土面均し動作に対応付けられたサンプリング周期Ts1〔msec〕を、サンプリング周期の設定値として選択することをコンピュータ37に指令するための第1ラジオボタン44aと、2番目に動作の遅い掘削動作に対応付けられたサンプリング周期Ts2(<Ts1)〔msec〕を、サンプリング周期の設定値として選択することをコンピュータ37に指令するための第2ラジオボタン44bと、最も動作の早い破砕動作に対応付けられたサンプリング周期Ts3(<Ts2)〔msec〕をサンプリング周期として選択することをコンピュータ37に指令するための第3ラジオボタン44cと、サンプリング周期の数値入力による設定を選択することをコンピュータ37に指令するための自由設定ボタン44dとが表示されるようになっている。また、自由設定ボタン44dを選択した場合に有効になり、入力装置31のテンキー33により入力された数値をサンプリング周期の入力値として表示する入力欄44eと、その入力値を設定値に確定することを、すなわち第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cにその入力値を記憶させることを、コンピュータ37に指令するための確定ボタン44fとが表示されるようになっている。
【0047】
なお、サンプリング周期設定プログラムは、第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bに記憶された第1,第2収集時間が前出の3種類の反復動作のいずれかに対応するものである場合に、その反復動作の種類と同じ種類の反復動作に対応するサンプリング周期を、第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cに記憶させるように設定されている。
【0048】
また、サンプリング周期設定プログラムは、収集時間設定画面43においてオンした第1〜第3ラジオボタン43a〜43cのいずれか1に対応する反復動作の種類に、サンプリング周期設定画面44においてオンする第1〜第3ラジオボタン44a〜44cのいずれか1に対応する反復動作の種類を一致させる表示制御を演算処理装置39に行わせるように設定されている。例えば、図4,5に示すように、収集時間設定画面43において第1ラジオボタン43aがオンした場合、サンプリング周期設定画面44においても第1ラジオボタン44aがオンするようになっている。
【0049】
また、サンプリング周期設定プログラムは、第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bに記憶された第1,第2収集時間が前出の3種類の反復動作のいずれにも対応しないものである場合に、入力装置31のテンキー33による入力値をサンプリング周期として、第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cに記憶するように設定されている。
【0050】
(7)データ種類設定プログラムは、対応データの種類を、予め登録されている種類のうちから選択して設定することを可能にするデータ種類設定手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0051】
データ種類設定プログラムは、さらに、異常の種類毎の対応データの種理の設定変更を行いやすくするためのデータ種類設定画面45(図6に示す)を、入力装置31の操作に応じて表示装置36に表示させる表示制御手段として演算処理装置39が機能するように、演算処理装置39の動作手順を指定している。
【0052】
図6に示すように、データ種類設定画面45には、前出の異常判別手段により判別される異常の種類と、その異常の種類に対応付けられた故障コードとが列挙された異常一覧表45aと、この異常一覧表45aのうちから選択された対応データの種類が列挙された対応データ一覧表45bとが表示されるようになっている。対応データ一覧表45bでは、列挙された対応データの種類のそれぞれの後端側に、チェックボックスが設けられている。
【0053】
現在選択されている異常の種類または対応データの種類は、図6に示す「コモンレール圧力異常」のように囲い線からなるカーソル45cにより示されるようになっている。対応データ一覧表45bでは、コモンレール圧力異常に対応付けることが可能なデータの種類として「エンジントルク」、「エンジン回転数」、「目標エンジン回転数」、「冷却水温度」、・・・、「大気圧」、・・・が列挙されていて、これらのうちの現在選択されている対応データの種類の後端側のチェックボックス内に、例えば「エンジントルク」、「エンジン回転数」、「大気圧」のそれぞれの後端側のチェックボックス45d,45e,45hのように、チェックマークが表示されるようになっている。
【0054】
対応データの種類の初期設定は、異常の種類に対応付け可能なものとして予め登録されているデータの種類すべてになっている。例えば、「コモンレール圧力異常」の場合、対応データの種類の初期設定は、「エンジントルク」、「エンジン回転数」、「目標エンジン回転数」、「冷却水温度」、・・・、「大気圧」、・・・のすべてである。初期設定を表示した対応データ一覧表45bでは、すべてのチェックボックス45d,45e,45f,45g,・・・,45h,・・・にチェックマークが表示されている。
【0055】
なお、図4〜図6において、収集時間設定画面43、サンプリング周期設定画面44およびデータ種類設定画面45のそれぞれの上部には、収集時間設定ボタン46、サンプリング周期設定ボタン47およびデータ種類設定ボタン48のそれぞれが表示されている。収集時間設定ボタン46が操作されると収集時間設定プログラムが起動し図4に示す収集時間設定画面43、サンプリング周期設定ボタン47が操作されるとサンプリング周期設定プログラムが起動し図5に示すサンプリング周期設定画面44、データ種類設定ボタン48が操作されるとデータ種類設定プログラムが起動して図6に示すデータ種類設定画面45が表示されるようになっている。図4では収集時間設定ボタン46の色が反転した状態になっていて、その他の設定ボタン47,48はそのような状態になっていないが、この状態は現在表示されている設定画面が、収集時間設定画面43であることを示している。図5,図6に示す設定ボタン46〜48の状態についても同様である。
【0056】
このように構成された本実施形態(情報収集装置30)は次のように動作する。
【0057】
≪収集時間およびサンプリング周期のラジオボタンによる設定≫
オペレータは油圧ショベル1で作業行う前に、収集時間およびサンプリング周期を設定する。例えば、油圧ショベル1で掘削作業を行う場合、収集時間およびサンプリング周期が掘削動作に対応したものにするために、次の設定操作を行う。
【0058】
はじめに、オペレータは情報収集装置30に電源を投入する。電源を投入された情報収集装置30のコンピュータ37では、演算処理装置39が読出し専用記憶手段40から収集時間設定プログラムおよび表示制御プログラムを読出し、収集時間設定手段および表示制御手段として機能する。これにより、表示装置36には、初期画面として収集時間設定画面43が表示される。第1,第2収集時間の初期設定は土面均し動作に対応した時間t1になっているので、電源投入当初の収集時間設定画面43では、図4に示すように、第1ラジオボタン43aがオンしている。
【0059】
次に、オペレータは入力装置31の十字キー32を操作し、第2ラジオボタン43bを選択し、この状態でEnterキー34を操作して、第2ラジオボタン43bをオンさせる。次に、十字キー32を操作して確定ボタン43fを選択し、この状態でEnterキー34を操作する。これにより、第1,第2収集時間を掘削動作に対応するものに設定することがコンピュータ37に指令され、演算処理装置39が第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bに、掘削動作に対応した時間t2を記憶させる。これで収集時間の設定変更が完了する。
【0060】
このようにして収集時間の設定変更が完了すると、演算処理装置39は読出し専用記憶手段40からサンプリング周期設定プログラムを読出して、サンプリング間隔設定手段として機能する。これにより、第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cに記憶されるサンプリング周期も、土面均し動作に対応するサンプリング周期Ts1から、掘削動作に対応するサンプリング周期Ts2に変更される。これでサンプリング周期の設定変更が完了する。
【0061】
収集時間およびサンプリング周期の設定を破砕動作に対応するように変更する場合や、土面均しに対応するものに戻す場合の動作も同様なので、それらの説明を省略する。
【0062】
≪収集時間およびサンプリング周期の数値入力による設定≫
前出の3種類の動作以外の反復動作を油圧ショベル1に行わせる場合、次の設定操作を行って、収集時間およびサンプリング周期を設定する。
【0063】
表示装置36に収集時間設定画面43が表示された状態において、十字キー32を操作し、自由設定ボタン43dを選択して、Enterキー34を操作する。これにより、収集時間の数値入力による設定を選択することがコンピュータ37に指令される。コンピュータ37では、収集時間設定手段および表示制御手段として機能している演算処理装置39が、入出力インターフェース38を介して表示装置36の制御を行い、入力欄43eを数値入力の可能な状態にする。オペレータは入力装置31のテンキー33を操作して入力欄43eに数値を入力し、入力完了後、十字キー32を操作して確定ボタン43fを選択しEnterキー34を操作する。これにより、入力欄43eに入力された数値を第1,第2収集時間の設定値とすることが、コンピュータ37に指令される。コンピュータ37では、演算処理装置39が入力欄43eに入力された数値を、第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bに第1,第2収集時間として記憶させる。これで収集時間の設定変更が完了する。
【0064】
このようにして収集時間の設定変更を完了させたオペレータは、十字キー32を操作し、サンプリング周期設定ボタン47を選択して、Enterキー34を操作する。これにより、設定画面を収集時間設定画面43からサンプリング周期設定画面44に切換えることが、コンピュータ37に指令される。その指令を受けたコンピュータ37では、表示制御手段として機能している演算処理装置39が入出力インターフェース38を介して表示装置36の制御を行い、表示装置36にサンプリング周期設定画面44を表示させる。この間、演算処理装置39は読出し専用記憶手段40からサンプリング周期設定プログラムを読出し、サンプリング周期設定手段としての機能を発動する。
【0065】
次に、オペレータは十字キー32を操作し、自由設定ボタン44dを選択して、Enterキー34を操作する。これにより、サンプリング周期の数値入力による設定を選択することがコンピュータ37に指令される。コンピュータ37では、サンプリング周期設定手段および表示制御手段として機能している演算処理装置39が、入出力インターフェース38を介して表示装置36の制御を行い、入力欄44eを数値入力の可能な状態にする。オペレータは入力装置31のテンキー33を操作して入力欄44eに数値を入力し、入力完了後、十字キー32を操作して確定ボタン44fを選択しEnterキー34を操作する。これにより、入力欄44eに入力された数値をサンプリング周期の設定値とすることが、コンピュータ37に指令される。コンピュータ37では、演算処理装置39が入力欄44eに入力された数値を、第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cにサンプリング周期として記憶させる。これでサンプリング周期の設定変更が完了する。
【0066】
≪対応データの種類の設定≫
表示装置36に収集時間設定画面43またはサンプリング周期設定画面44が表示された状態において、十字キー32を操作し、データ種類設定ボタン48を選択して、Enterキー34を操作する。これにより、設定画面を収集時間設定画面43またはサンプリング周期設定画面44からデータ種類設定画面45に切換えることが、コンピュータ37に指令される。その指令を受けたコンピュータ37では、表示制御手段として機能している演算処理装置39が入出力インターフェース38を介して表示装置36の制御を行い、表示装置36にデータ種類設定画面45を表示させる。この間、演算処理装置39は読出し専用記憶手段40からデータ種類設定プログラムを読出し、データ種類設定手段としての機能を発動する。
【0067】
データ種類設定画面45が表示された後、オペレータは、十字キー32を操作し、異常一覧表45aのうちから、対応データの種類を変更する異常の種類、例えば「コモンレール圧力異常」を選択し、Enterキー34を操作する。これにより、「コモンレール圧力異常」の対応データの種類を変更することが、コンピュータ37に指令される。その指令を受けたコンピュータ37では、表示制御手段およびデータ種類設定手段として機能している演算処理装置39が入出力インターフェース38を介して表示装置36の制御を行い、対応データ一覧表45bに「コモンレール圧力異常」の対応データの種類、すなわち「エンジントルク」、「エンジン回転数」、「目標エンジン回転数」、「冷却水温度」、・・・、「大気圧」、・・・を列挙して表示する。初期設定の状態では、チェックボックス45d,45e,45f,45g・・・45h・・・のすべてにチェックマークが表示されている。
【0068】
対応データ一覧表45bが表示された後、オペレータは、十字キー32を操作して、そのとき不要と考えた対応データの種類、例えば「目標エンジン回転数」や「冷却水温」などを選択し、Enterキー34を操作する。これにより、「目標エンジン回転数」や「冷却水温」を対応データとして選択しないことがコンピュータ37に指令される。その指令を受けたコンピュータ37では、データ種類設定手段として機能している演算処理装置39が、「目標エンジン回転数」や「冷却水温」を対応データとして選択されていないものとして、第2記憶手段42のデータ種類記憶領域42dに記憶させる。また、表示制御手段として機能している演算処理装置39が、入出力インターフェース38を介して表示装置36の制御を行い、図6に示すように、チェックボックス45fや45gからチェックマークを消す。これで「コモンレール圧力異常」についての対応データの種類の設定の変更が完了する。
【0069】
「コモンレール圧力異常」以外の異常の種類ついについても対応データの種類を変更する必要がある場合には、前述した「コモンレール圧力異常」の場合と同様の操作により、その設定変更を行う。
【0070】
≪データの収集≫
前述したようにして収集時間、サンプリング周期および対応データの種類の設定を行った後に、オペレータは油圧ショベル1を操作して掘削作業を行わせる。
【0071】
掘削作業中、エンジンコントローラ23は、エンジン制御関係センサによる検出結果を示すデータに、情報収集装置30宛のデータであることを示す宛先データを付加して電気信号線29に出力する。車体コントローラ24は車体制御関係センサによる検出結果を示すデータに、情報収集装置30宛のデータである事を示す宛先データを付加して電気信号線29に出力する。
【0072】
情報収集装置30のコンピュータ37では、油圧ショベル1の稼働中、演算処理装置39はデータ取得処理手段、第1保存処理手段、異常判定手段として機能している。
【0073】
今は、前述したサンプリング周期の設定変更によって、第2記憶手段42のサンプリング周期記憶領域42cにサンプリング周期Ts2が記憶されている。したがって、データ取得処理手段として機能している演算処理装置39が、電気信号線29に出力されたエンジンコントローラ23から情報収集装置30に宛てられた各種データ、および、車体コントローラ24から情報収集装置30に宛てられた各種データを、サンプリング周期Ts2で断続的に取得する。取得されたデータは、第1保存処理手段として機能している演算処理装置39によって、第1記憶手段41に記憶される。異常判定手段として機能している演算処理装置39は、第1記憶手段41にデータが記憶される度に、そのデータが異常を示すものかどうかを判別する。
【0074】
異常判別手段が異常を示すデータを検知すると、演算処理装置39が第2保存処理手段としての機能を発動する。第2保存処理手段として機能している演算処理装置39は、第2記憶手段42の収集時間記憶領域42bに記憶されている第1,第2収集時間を読み出す。今は、前述した収集時間の設定変更により第1,第2収集時間として時間t2が収集時間記憶領域42bが記憶されているので、演算処理装置39は時間t2を読み出す。
【0075】
さらに、異常判別手段による異常の種類の判別結果が、例えばコモンレール圧力異常であるという判別した場合、第2保存処理手段として機能している演算処理装置39は、第2記憶手段42のデータ種類記憶領域42dからコモンレール圧力異常の対応データの種類として選択されているもの、すなわち前述のようにして設定されたエンジントルク、エンジン回転数および大気圧を読出す。
【0076】
第1,第2収集時間としての時間t2と、コモンレール圧力異常の対応データの種類とを読み出した演算処理装置39(第2保存処理手段)は、コモンレール圧力異常を示すデータが取得された取得時点から時間t2を遡った時点までの第1時間帯と、同取得時点から時間t2経た時点までの第2時間帯とを計算する。そして、第1記憶手段41に記憶されたデータのうちから、これら第1,第2時間帯に第1記憶手段41に記憶されたデータであって、コモンレール圧力異常の対応データの種類のいずれか1に該当するデータを抽出し、第2記憶手段42の抽出データ記憶領域42aに記憶させる。これでコモンレール圧力異常の原因を調べるためのデータの収集が完了する。
【0077】
本実施形態(情報収集装置30)によれば次の効果が得られる。
【0078】
本実施形態では、第2記憶手段42に記憶させるデータが、第1時間帯および第2時間帯に第1記憶手段41に記憶されたデータのみであるから、第1記憶手段41に対して第2記憶手段42に記憶させる可能性がなくなったデータと第2記憶手段42に記憶させる可能性のある新たなデータとを順次入れ替える、ということが行える。つまり、揮発性の第1記憶手段41に記憶させる無駄なデータを少なくすることができる。これにより、第1記憶手段41の記憶容量を少なく済ませることができる。
【0079】
また、同様の理由から、不揮発性の第2記憶手段42に記憶させるデータの無駄も省くことができる。
【0080】
油圧ショベル1によって行われる作業は反復動作で構成されていることが多い。その反復動作中に発生する異常の原因を調べるのに必要なデータのほとんどは、反復動作の1サイクル分で取得できるものである。本実施形態では、第1,第2時間帯の長さを定める予め設定された時間を、油圧ショベル1によって行われる所定の種類の反復動作、例えば土面均し動作、掘削動作および破砕動作のいずれか1の1/2サイクル分の時間とほぼ同じに、収集時間変更手段によって選択的に設定することができるので、反復動作中に発生する異常の原因を調べるのに必要なデータを効率よく収集することができる。
【0081】
本実施形態は、データ取得処理手段に断続的にデータを取得させるための時間間隔を定めるサンプリング周期を変更するサンプリング周期設定手段を備えている。このサンプリング周期手段によるサンプリング周期の変更は、土面均し動作、掘削動作、破砕動作のそれぞれに予め対応付けられたサンプリング周期Ts1,Ts2,Ts3のうちから選択して行うことができる。これらのサンプリング周期は、土面均し動作、掘削動作、破砕動作という負荷や動作速度の変動が小さい反復動作ほどサンプリング周期が長くなるようにTs1>Ts2>Ts3に設定されている。つまり、負荷や動作速度の変動が小さい反復動作時に、それらが大きい反復動作時と同じ頻度でデータを取得して第2記憶手段42に記憶させるという無駄を省くことができる。
【0082】
本実施形態は、第1時間帯および第2時間帯に第1記憶手段41に記憶されたデータのうちから、異常の種類に予め対応付けられたデータの種類に該当するデータを選択して第2記憶手段42に記憶させるように、第2保存処理手段が設定されている。これにより、データに示された異常の種類に関係ないデータを第2記憶手段42に記憶させるという無駄を省くことができる。
【0083】
本実施形態は、異常の種類に予め対応付けられたデータの種類(対応データの種類)を、予め登録されている種類のうちから選択して設定することを可能にするデータ種類設定手段を備えている。これにより、第2記憶手段42に記憶させる対応データの種類を限定することができる。
【0084】
なお、前述の実施形態(情報収集装置30)は、第1,第2時間帯を定める予め設定された時間、すなわち第1,第2収集時間を、所定の種類の反復動作の1/2サイクル分の時間とほぼ同じに設定することができるように構成された例であるが、本発明における第1,第2収集時間はこれに限るものではなく、サンプリング周期の倍数から定められるものであってもよい。
【0085】
前述の実施形態は、入力装置31の操作によって、すなわち手入力によって収集時間およびサンプリング周期に設定変更するものであるが、本発明はこれに限るものではなく、エンジン制御関係センサや車体制御関係センサから得られるデータに基づいて、そのときの油圧ショベル1の反復動作を演算処理装置39が自動的に判定し、その判定結果に基づいて、収集時間およびサンプリング周期を設定変更するものであってもよい。
【0086】
前述の実施形態は、データ取得処理手段がサンプリング周期設定手段により設定されたサンプリング周期に従ってデータを取得することによって、第2記憶手段42に記憶されるデータ同士の時間間隔が決まり、これにより、第2記憶手段42に記憶される無駄なデータが少なくすることができる。第2記憶手段42に記憶される無駄なデータを少なくする手段はこれに限るものではない。サンプリング周期設定手段の替わりに、第2記憶手段42に記憶されるデータ同士の時間間隔を、第1記憶手段41に記憶されるデータ同士の時間間隔よりも長く設定することが可能な手段があればよい。
【0087】
つまり、データ取得処理手段がデータを取得する際のサンプリング周期を、例えば前出の3種類の反復動作のうちで負荷や動作速度の変動が最も大きい破砕動作に対応するサンプリング周期Ts3に固定する。第2記憶手段42の抽出データ記憶領域42aにおけるデータ同士の時間間隔を記憶させる間引き間隔記憶領域を、第2記憶手段42にサンプリング周期記憶領域42cの替わりに設けて、第2保存処理手段が間引き間隔記憶領域に記憶された時間間隔に従って抽出データ記憶領域42aにデータを記憶させるように第2保存処理プログラムを設定する。また、入力装置31による指令に応じて、間引き間隔記憶領域に記憶される時間間隔をサンプリング周期Ts3よりも長い時間に変更する間引き間隔設定手段として演算処理装置39を機能させるための、間引き間隔設定プログラムを、サンプリング周期設定プログラムの替わりに読出し専用記憶手段40に記憶させる。
【0088】
第2記憶手段42に記憶させるデータ同士の時間間隔の設定変更に際しては、サンプリング周期の設定変更の場合と同様に、最も遅い土面均し動作に対応付けられた時間間隔Tm1(=Ts1)〔msec〕、2番目に動作の遅い掘削動作に対応付けられた時間間隔Tm2(=Ts2)〔msec〕、最も動作の早い破砕動作に対応付けられた時間間隔Tm3(=Ts3)〔msec〕から選択できるようする。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の建設機械の情報収集装置の一実施形態が適用される建設機械の一例である油圧ショベルを示す図である。
【図2】図1に示された油圧ショベルの各種油圧アクチュエータを制御する油圧駆動装置の一部を示す概略図である。
【図3】本発明の建設機械の情報収集装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】図3に示す入力装置に備えられる各種操作キーと、表示装置に表示された収集時間設定画面の一例とを示す図である。
【図5】表示装置に表示されたサンプリング周期設定画面の一例を示す図である。
【図6】表示装置に表示されたデータ種類設定画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 油圧ショベル
14 油圧駆動装置
23 エンジンコントローラ
24 車体コントローラ
30 情報収集装置
31 入力装置
36 表示装置
37 コンピュータ
38 入出力インターフェース
39 演算処理装置
40 読出し専用記憶手段
41 第1記憶手段
42 第2記憶手段
42a 抽出データ記憶領域
42b 収集時間記憶領域
42c サンプリング周期記憶領域
42d データ種類記憶領域
43 収集時間設定画面
43a 第1ラジオボタン
43b 第2ラジオボタン
43c 第3ラジオボタン
43d 自由設定ボタン
43e 入力欄
43f 確定ボタン
44 サンプリング周期設定画面
44a 第1ラジオボタン
44b 第2ラジオボタン
44c 第3ラジオボタン
44d 自由設定ボタン
44e 入力欄
44f 確定ボタン
45 データ種類設定画面
45a 異常一覧表
45b 対応データ一覧表
45c カーソル
45d〜45h チェックボックス
46 収集時間設定ボタン
47 サンプリング周期設定ボタン
48 データ種類設定ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性の第1記憶手段と、
不揮発性の第2記憶手段と、
建設機械の制御に関係する各種データを取得するデータ取得処理手段と、
このデータ取得処理手段により取得されたデータを、前記第1記憶手段に記憶させる第1保存処理手段と、
この第1保存処理手段が前記第1記憶手段に新たなデータを記憶させる度に、そのデータが異常を示すものかどうかを判別する異常判別手段と、
この異常判別手段により異常を示すデータであると判別されたデータの取得時点から、予め設定された時間を遡った時点までの第1時間帯に前記第1記憶手段に記憶されたデータ、および、前記取得時点から予め設定された時間を経た時点までの第2時間帯に前記第1記憶手段に記憶されるデータを、前記第2記憶手段に記憶させる第2保存処理手段とを備えていて、
これら第1記憶手段、第2記憶手段、データ取得処理手段、第1保存処理手段、異常判別手段および第2保存処理手段が前記建設機械に設けられていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、
前記第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間、および、前記第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間がいずれも、前記建設機械によって行われる所定の種類の反復動作の1/2サイクル分の時間とほぼ同じに設定されていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項3】
請求項1記載の発明において、
前記データ取得処理手段に断続的にデータを取得させるための時間間隔を定めるサンプリング周期を変更するサンプリング周期設定手段を備えていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項4】
請求項1記載の発明において、
前記第2記憶手段に記憶されるデータ同士の時間間隔を、前記第1記憶手段に記憶されるデータ同士の時間間隔よりも長くする間引き処理手段を備えていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項5】
請求項1記載の発明において、
前記第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間、および、前記第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間が、前記データ取得処理手段に断続的にデータを取得させるための時間間隔を定めるサンプリング周期の倍数からなることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項6】
請求項1記載の発明において、
前記第1時間帯の長さを定める前記予め設定された時間、および、前記第2時間帯の長さを定める前記予め設定された時間を変更する収集時間変更手段を備えていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項7】
請求項1記載の発明において、
前記第1時間帯および前記第2時間帯に前記第1記憶手段に記憶されたデータのうちから、異常の種類に予め対応付けられたデータの種類に該当するデータを選択して前記第2記憶手段に記憶させるように、前記第2保存処理手段が設定されていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。
【請求項8】
請求項7記載の発明において、
異常の種類に予め対応付けられたデータの種類を、予め登録されている種類のうちから選択して設定することを可能にするデータ種類設定手段を備えていることを特徴とする建設機械の情報収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−169634(P2008−169634A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4210(P2007−4210)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】