説明

建設機械の旋回装置

【課題】 油圧モータを構成する第1のモータ軸と電動モータを構成する第2のモータ軸との連結部を常時適正に潤滑する。
【解決手段】 電動モータケーシング23の蓋部23Bに第1のモータ軸27の上端側が挿通される軸挿通孔23Eを設け、この軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間に軸受28を設けると共に、軸受28よりも上側に位置して耐圧シール43を設ける。これにより、油圧モータ34から漏れたドレン油を利用して、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部を常時適正に潤滑することができる。しかも、電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間を耐圧シール43によってシールすることにより、電動モータケーシング23内へのドレン油の侵入を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に用いられ、下部走行体上で上部旋回体を旋回させる建設機械の旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、下部走行体と上部旋回体との間には旋回装置が設けられ、この旋回装置を作動させることにより下部走行体上で上部旋回体が旋回する構成となっている。
【0003】
この場合、旋回装置は、通常、上部旋回体に取付けられ入力回転を減速して出力する減速機と、該減速機の上側に設けられ減速機にモータ軸の回転を入力する旋回モータと、減速機によって減速されたモータ軸の回転を旋回輪に出力する出力軸とを備えて構成されている。
【0004】
ここで、旋回モータとして油圧モータと電動モータとを共用する構成となった、いわゆるハイブリッド型の旋回装置が提案されており、このハイブリッド型の旋回装置によれば、油圧モータと電動モータとによって出力軸を回転駆動することにより、油圧モータの駆動源となるエンジンからの排気ガスを低減することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−297754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術によるハイブリッド型の旋回装置は、上部旋回体に取付けられた減速機の上端側に油圧モータを配置し、油圧モータの上端側に電動モータを配置するレイアウトを採用している。また、油圧モータと電動モータとは1本のモータ軸を共用する構成となっている。そして、油圧モータと電動モータとによって1本のモータ軸を駆動すると、このモータ軸の回転が減速機によって減速されて出力軸に伝達される構成となっている。
【0007】
しかし、異なるメーカによって別個に製造された油圧モータと電動モータとを組合わせてハイブリッド型の旋回装置を構成する場合には、上述した従来技術のように油圧モータのモータ軸と電動モータのモータ軸とを一体化することは困難である。
【0008】
一方、別個に製造された油圧モータと電動モータとを用い、減速機の上端側に油圧モータを配置すると共に油圧モータの上端側に電動モータを配置するレイアウトを採用した場合には、油圧モータを構成するモータ軸は、その下端側を減速機に連結すると共に上端側を電動モータのモータ軸に連結する必要がある。
【0009】
この場合、モータ軸の下端側と減速機との連結部分は、通常、減速機のケーシング内に充填された潤滑油によって潤滑することができる。これに対し、油圧モータ側のモータ軸の上端側と電動モータ側のモータ軸との連結部分は、通常、グリース等の潤滑材を用いて潤滑することになり、この潤滑材が消耗した場合には、油圧モータ側のモータ軸と電動モータ側のモータ軸との連結部分が早期に摩耗してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、油圧モータを構成する第1のモータ軸と電動モータを構成する第2のモータ軸との連結部を常時適正に潤滑することができるようにした建設機械の旋回装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、請求項1の発明による建設機械の旋回装置は、下部走行体上に旋回輪を介して搭載された上部旋回体に上,下方向に延びるように取付けられた減速機と、該減速機の上側に取付けられ電力が供給されることにより回転する第1のモータ軸を有する電動モータと、該電動モータの上側に取付けられ作動油が供給されることにより回転する第2のモータ軸の下端側が前記第1のモータ軸の上端側に連結された油圧モータと、前記減速機によって減速された前記第1,第2のモータ軸の回転を前記旋回輪に出力する出力軸とを備え、前記電動モータは、下端側が前記減速機に取付けられると共に上端側が前記油圧モータからのドレン油を遮断する蓋部となった電動モータケーシングを有し、該電動モータケーシングの蓋部には前記第1のモータ軸の上端側が挿通される軸挿通孔を設け、該軸挿通孔と前記第1のモータ軸との間には前記第1のモータ軸の上端側を回転可能に支持する軸受を設け、前記第1のモータ軸の上端と前記軸挿通孔を介して下方に延びた前記第2のモータ軸とを互いに連結する構成とし、前記軸挿通孔と前記第1のモータ軸との間であって前記軸受よりも上側には、前記第1のモータ軸と第2のモータ軸との連結部に前記油圧モータからのドレン油を供給すると共に当該ドレン油が前記電動モータケーシング内に侵入するのを防止するシール部材を設ける構成としている。
【0012】
請求項2の発明は、前記第1のモータ軸の上端部には有底穴からなる雌スプライン部を設け、前記第2のモータ軸の下端部には前記雌スプライン部に連結される雄スプライン部を設け、前記油圧モータからのドレン油は、前記第1のモータ軸の雌スプライン部と前記第2のモータ軸の雌スプライン部との連結部を潤滑する構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記減速機には、その下端側にボルトを用いて前記上部旋回体に締結される減速機下フランジ部を設けると共に上端側に減速機上フランジ部を設け、前記電動モータには、その下端側に前記減速機上フランジ部に取付けられる電動モータ下フランジ部を設けると共に上端側に電動モータ上フランジ部を設け、前記油圧モータの下端側には、前記電動モータ上フランジ部に取付けられる油圧モータ下フランジ部を設け、前記減速機上フランジ部、前記電動モータ下フランジ部、前記電動モータ上フランジ部および前記油圧モータ下フランジ部の外径寸法は、前記減速機下フランジ部をボルトを介して前記上部旋回体に締結するときに用いられる締結工具との間に隙間を確保できる寸法に設定したことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記電動モータには、前記電動モータに電力を供給するための給電ボックスと、前記電動モータの温度を検出する温度検出器を含む各種の検出器類とを取付ける構成とし、これら給電ボックスと検出器類とは、前記減速機下フランジ部をボルトを介して前記上部旋回体に締結するときに用いられる締結工具から離間した位置に配置したことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電動モータケーシングの蓋部に設けた軸挿通孔に電動モータの第1のモータ軸を挿通した状態で、電動モータの上側に油圧モータを取付け、この油圧モータの第2のモータ軸の下端側を第1のモータ軸の上端側に連結することにより、第1,第2のモータ軸を同軸上に連結した状態で、減速機の上側に電動モータを配置し、電動モータの上側に油圧モータを配置するレイアウトとなった旋回装置を構成することができる。
【0016】
この場合、軸挿通孔と第1のモータ軸の上端側との間に設けた軸受によって、第1のモータ軸と第2のモータ軸との連結部を強固に支持することができる。また、軸受よりも上側の位置で軸挿通孔と第1のモータ軸との間にシール部材を設けることにより、油圧モータからのドレン油が電動モータケーシング内に侵入するのを抑えつつ、このドレン油を利用して第1のモータ軸と第2のモータ軸との連結部を常時潤滑することができる。この結果、第1のモータ軸と第2のモータ軸との連結部の耐久性を高め、これら第1,第2のモータ軸の回転を減速機を介して的確に出力軸に伝達することができるので、旋回装置の信頼性を高めることができる。
【0017】
しかも、電動モータケーシングの軸挿通孔と第1のモータ軸との間をシール部材によってシールすることにより、電動モータケーシング内へのドレン油の侵入を確実に防止することができ、電動モータの寿命を延ばすことができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、第1のモータ軸の上端部に設けた雌スプライン部と第2のモータ軸の下端部に設けた雄スプライン部との連結部を、油圧モータからのドレン油を利用して常時適正に潤滑することができる。しかも、有底穴からなる雌スプライン部に雄スプライン部を連結することにより、これら雌スプライン部と雄スプライン部との連結部から生じた摩耗粉等の異物を雌スプライン部の底部に捕捉することができる。この結果、摩耗粉等の異物がシール部材と第1のモータ軸との間に侵入するのを抑え、シール部材の寿命を延ばすことができるので、電動モータケーシングの軸挿通孔と第1のモータ軸との間のシール性を長期に亘って良好に保つことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、減速機下フランジ部を上部旋回体にボルトを用いて締結するときに、このボルトを締込む締結工具が、減速機上フランジ部、電動モータ下フランジ部、電動モータ上フランジ部および油圧モータ下フランジ部に干渉するのを確実に防止することができる。この結果、減速機の上側に電動モータを配置し、この電動モータの上側に油圧モータを配置した旋回装置に対し、油圧モータの上方から締結工具を用いて上部旋回体に対する減速機下フランジ部の取付け、取外し作業を行うときの作業性を高めることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、油圧モータの上方から締結工具を用いて上部旋回体に対する減速機下フランジ部の取付け、取外し作業を行うときに、電動モータに取付けた給電ボックス、各種検出器類が締結工具に干渉することがないので、この取付け、取外し作業の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による旋回装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態による旋回装置を示す断面図である。
【図3】旋回装置を上方からみた平面図である。
【図4】図2中の第1のモータ軸、第2のモータ軸、軸挿通孔、軸受、シール部材等を拡大して示す要部拡大の断面図である。
【図5】締結工具を用いて減速機を取付け、取外しする状態を示す図2と同様な旋回装置の断面図である。
【図6】締結工具と給電ボックス、検出器等との位置関係を示す図3と同様な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る建設機械の旋回装置の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図中、1は建設機械の代表例である油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成され、上部旋回体3の前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられている。また、下部走行体2と上部旋回体3との間には後述の旋回輪5が設けられ、上部旋回体3は旋回輪5を介して下部走行体2上に旋回可能に支持されている。
【0024】
5は下部走行体2と上部旋回体3との間に設けられた旋回輪を示し、該旋回輪5は、図1に示す下部走行体2の丸胴2A上に固定された内輪5Aと、上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム3Aの下面側に固定された外輪5Bと、内輪5Aと外輪5Bとの間に設けられた多数の鋼球5C(1個のみ図示)とにより構成され、内輪5Aの内周側には、全周に亘って内歯5Dが形成されている。そして、後述の旋回装置11が作動して旋回フレーム3Aに固定された外輪5Bが内輪5Aの周囲を回転することにより、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行う構成となっている。
【0025】
次に、本実施の形態による旋回装置11について説明する。この旋回装置11は、旋回輪5を介して下部走行体2上に支持された上部旋回体3を旋回させるもので、後述の減速機12、電動モータ22、油圧モータ34、出力軸44等により構成され、電動モータ22と油圧モータ34とが協働して出力軸44を駆動する、いわゆるハイブリッド型の旋回装置として構成されている。
【0026】
12は上部旋回体3の旋回フレーム3A上に上,下方向に延びる状態で取付けられた減速機で、該減速機12は、後述する電動モータ22および油圧モータ34から入力される入力回転を減速して出力軸44に出力するものである。ここで、減速機12は、後述の減速機ケーシング13と、1段目の遊星歯車減速機構18と、2段目の遊星歯車減速機構19とにより大略構成されている。
【0027】
13は減速機12の外殻をなす減速機ケーシングで、該減速機ケーシング13は、旋回フレーム3Aの上面側に取付けられた円筒状の下側ケーシング14と、該下側ケーシング14の上端側に取付けられた円筒状の上側ケーシング15とからなり、旋回フレーム3Aの上面から上方(上,下方向)に延びている。
【0028】
ここで、下側ケーシング14の下端側には、大径な環状の減速機下フランジ部14Aが設けられ、該減速機下フランジ部14Aは、ボルト16を用いて旋回フレーム3Aに締結されている。また、下側ケーシング14の上端側には、減速機下フランジ部14Aよりも小径な環状の中間フランジ部14Bが設けられている。
【0029】
一方、上側ケーシング15の下端側には、環状の中間フランジ部15Aが設けられ、該中間フランジ部15Aは、ボルト17を用いて下側ケーシング14の中間フランジ部14Bに締結されている。また、上側ケーシング15の上端側には、中間フランジ部15Aとほぼ等しい外径寸法Aを有する減速機上フランジ部15Bが設けられ、該減速機上フランジ部15Bには、後述の電動モータ22が締結される構成となっている。また、上側ケーシング15の内周側には、上,下方向に離間して2つの内歯車15C,15Dが、それぞれ全周に亘って形成されている。
【0030】
18は減速機ケーシング13の上側ケーシング15内に配設された1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構18は、後述する第1のモータ軸27にスプライン結合された太陽歯車18Aと、該太陽歯車18Aと上側ケーシング15の内歯車15Cとに噛合し、太陽歯車18Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車18B(1個のみ図示)と、該各遊星歯車18Bを回転可能に支持するキャリア18Cとにより構成されている。
【0031】
19は遊星歯車減速機構18の下側に配設された2段目(最終段)の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構19は、1段目の遊星歯車減速機構18のキャリア18Cにスプライン結合された太陽歯車19Aと、該太陽歯車19Aと上側ケーシング15の内歯車15Dとに噛合し、太陽歯車19Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車19Bと、該各遊星歯車19Bを回転可能に支持するキャリア19Cとにより構成されている。そして、遊星歯車減速機構19のキャリア19Cは、後述する出力軸44の上端側にスプライン結合される構成となっている。
【0032】
20は下側ケーシング14の下端部内周に設けられた環状のオイルシールで、該オイルシール20の外周面は下側ケーシング14の内周面に当接し、オイルシール20の内周面は後述するスリーブ47の外周面に摺接している。そして、オイルシール20は、減速機ケーシング13内に、各遊星歯車減速機構18,19等を潤滑するための潤滑油を保持するものである。
【0033】
21は下側ケーシング14の下端側に取付けられた排油パイプを示し、該排油パイプ21は、減速機ケーシング13内に貯溜された潤滑油を、例えば定期的に外部に排出するものである。そして、排油パイプ21を通じて潤滑油を排出した後には、減速機ケーシング13内には、後述する給油パイプ32を通じて新たな潤滑油が供給される構成となっている。
【0034】
次に、22は本実施の形態に用いる電動モータを示し、該電動モータ22は、後述の油圧モータ34と協働して出力軸44を駆動するものである。
【0035】
ここで、電動モータ22は、減速機12の上側ケーシング15に取付けられる電動モータケーシング23と、該電動モータケーシング23内に固定して設けられた固定子24と、該固定子24の内周側に回転可能に設けられた回転子25と、後述する第1のモータ軸27とにより大略構成されている。
【0036】
この場合、電動モータケーシング23は、上,下方向の両端側が開口した円筒部23Aと、該円筒部23Aの上端側を施蓋する円板状の蓋部23Bと、円筒部23Aの下端側に環状に設けられた電動モータ下フランジ部23Cとにより大略構成されている。そして、電動モータ下フランジ部23Cは、減速機12(上側ケーシング15)の減速機上フランジ部15Bとほぼ等しい外径寸法Aを有し、該減速機上フランジ部15Bにボルト26を用いて締結されている。また、蓋部23Bの外周側は、電動モータ下フランジ部23Cよりも小径な外径寸法Bを有する電動モータ上フランジ部23Dとなり、該電動モータ上フランジ部23Dには、後述の油圧モータ下フランジ部35Bが取付けられる構成となっている。
【0037】
23Eは蓋部23Bの中心部に設けられた軸挿通孔で、該軸挿通孔23Eは、第1のモータ軸27の上端側が挿通されるものである。ここで、軸挿通孔23Eの内周側には、後述の軸受28が取付けられる軸受取付段部23Fと、後述の耐圧シール43が取付けられるシール取付段部23Gとが、上,下に離間して設けられている。
【0038】
27は回転子25と一体に回転する第1のモータ軸を示し、該第1のモータ軸27は、軸方向の中間部が回転子25に固定された状態で電動モータケーシング23に回転可能に支持され、電動モータケーシング23の中心部を上,下方向に延びている。ここで、第1のモータ軸27の下端側には、全周に亘って雄スプライン部(軸スプライン部)27Aが形成され、この雄スプライン部27Aは、電動モータケーシング23の下端側から減速機ケーシング13内に突出し、1段目の太陽歯車18Aにスプライン結合される構成となっている。
【0039】
また、第1のモータ軸27の上端側は、電動モータケーシング23の蓋部23Bに設けた軸挿通孔23E内に挿通され、軸受取付段部23Fに取付けられた後述の軸受28によって回転可能に支持されている。
【0040】
そして、第1のモータ軸27の上端部には、有底穴からなる雌スプライン部(穴スプライン部)27Bが形成され、該雌スプライン部27Bは、後述する第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aにスプライン結合される構成となっている。この場合、雌スプライン部27Bの底部側には凹陥穴27Cが形成され、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部から発生した摩耗粉等の異物を、凹陥穴27C内に捕捉することができる構成となっている。
【0041】
28は電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27の上端側との間に設けられた軸受で、該軸受28は、第1のモータ軸27の外周に嵌合した内輪28Aと、軸挿通孔23Eの軸受取付段部23Fに取付けられた外輪28Bと、内輪28Aと外輪28Bとの間に設けられた複数の鋼球28Cとにより構成されている。そして、軸受28は、雌スプライン部27Bが設けられた第1のモータ軸27の上端側に配置されることにより、第1のモータ軸27と後述する第2のモータ軸41との連結部を強固に支持するものである。
【0042】
29は電動モータ22に設けられた給電ボックスを示し、該給電ボックス29は、図2および図3に示すように断面四角形状の角筒体からなり、電動モータケーシング23の円筒部23Aの外周面から径方向外向きに突出している。そして、給電ボックス29は、電動モータ22の固定子24に接続される端子等を収容し、この端子に外部電源からの給電ケーブル(いずれも図示せず)を接続することにより、電動モータ22に外部電源からの電力が供給される構成となっている。
【0043】
30は電動モータ22に設けられた温度検出器、31は同じく電動モータ22に設けられた回転数検出器を示し、図3に示すように、これら温度検出器30と回転数検出器31とは、互いに接近した状態で電動モータケーシング23の外周面に取付けられている。そして、温度検出器30は電動モータ22の温度を検出し、この検出信号を電動モータ22の作動を制御するコントローラ(図示せず)に出力するものである。また、回転数検出器31は電動モータ22の回転数を検出し、この検出信号をコントローラに出力するものである。
【0044】
32は電動モータケーシング23に設けられた給油パイプで、該給油パイプ32は、電動モータ下フランジ23Cに固定され、上,下方向に延びている。そして、給油パイプ32の下端側は減速機ケーシング13内に連通し、給油パイプ32を通じて減速機ケーシング13内に潤滑油を供給することができる構成となっている。また、33は電動モータケーシング23に設けられたオイルレベルゲージで、該オイルレベルゲージ33は、減速機ケーシング13内に充填された潤滑油の液面レベルによって潤滑油量を確認するものである。
【0045】
次に、34は電動モータ22上に配置された斜板式の油圧モータを示し、該油圧モータ34は、電動モータ22と協働して後述の出力軸44を駆動するものである。
【0046】
ここで、油圧モータ34は、電動モータケーシング23の上端側に取付けられる油圧モータケーシング35と、該油圧モータケーシング35のシリンダブロック収容室35A内に回転可能に設けられたシリンダブロック(図示せず)と、該シリンダブロックのシリンダ内に往復動可能に設けられた複数のピストン36と、これら各ピストン36の先端側にそれぞれ設けられたシュー37と、該各シュー37が摺接する斜板38と、後述する第2のモータ軸41とにより大略構成されている。
【0047】
この場合、油圧モータケーシング35の下端側には、電動モータ22に向けてラッパ状に膨出した油圧モータ下フランジ部35Bが設けられている。この油圧モータ下フランジ部35Bは、電動モータケーシング23の電動モータ上フランジ部23Dとほぼ等しい外径寸法Bに設定され、該電動モータ上フランジ部23Dにボルト39を用いて締結されている。
【0048】
ここで、油圧モータ下フランジ部35Bと電動モータ上フランジ部23Dとの間には、電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと同心状に環状シール40が設けられ、電動モータケーシング23の蓋部23Bと油圧モータ下フランジ部35Bとの間には、ドレン油室35Cが形成されている。そして、油圧モータケーシング35のシリンダブロック収容室35Aとドレン油室35Cとの間は、油通路35Dを介して連通している。また、図3に示すように、油圧モータケーシング35には、ドレン油室35Cに開口するドレン油排出口35Eが設けられ、該ドレン油排出口35Eは、ドレン管路を介して作動油タンク(いずれも図示せず)に接続されている。
【0049】
従って、油圧モータ34の作動時にシリンダブロック収容室35A内に漏れたドレン油は、油通路35Dを通じてドレン油室35C内に流入した後、ドレン油排出口35Eからドレン管路を通じて作動油タンクに戻る構成となっている。
【0050】
41は油圧モータ34を構成する第2のモータ軸を示し、該第2のモータ軸41は、軸方向の中間部がシリンダブロック(図示せず)に結合された状態で、軸受42等を介して油圧モータケーシング35に回転可能に支持され、油圧モータケーシング35の中心部を上,下に延びている。
【0051】
ここで、第2のモータ軸41の下端側には、全周に亘って雄スプライン部(軸スプライン部)41Aが形成され、この雄スプライン部41Aは、油圧モータケーシング35の下端側から電動モータ22へと延びている。そして、第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aは、電動モータケーシング23(蓋部23B)の軸挿通孔23E内に挿通された第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bに連結されている。このように、電動モータ22の第1のモータ軸27と、油圧モータ34の第2のモータ軸41とは、雌スプライン部27Bと雄スプライン部41Aとのスプライン結合によって同軸上に連結され、常に一体に回転する構成となっている。
【0052】
次に、43は電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間に設けられたシール部材としての耐圧シールを示している。この耐圧シール43は、軸受28よりも上側に配置され、軸挿通孔23Eのシール取付段部23Gと第1のモータ軸27の外周面との間に全周に亘って設けられている。ここで、耐圧シール43は、図4に示すように、ほぼL字型の断面形状をもって環状に形成された金属環43Aと、該金属環43Aに焼付け等の手段によって固着されたゴム材料等からなるリップ部43Bと、該リップ部43Bを第1のモータ軸27に押付ける環状のバックアップリング43Cとにより大略構成されている。また、耐圧シール43は、油圧モータ34から漏れるドレン油がもつ低い圧力、例えば0.1MPa以上の圧力に耐えられるものである。
【0053】
そして、耐圧シール43は、油圧モータ34から漏れるドレン油の圧力に抗して電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間を液密に封止する。これにより、油圧モータ34からのドレン油が、電動モータケーシング23の蓋部23Bと油圧モータ下フランジ部35Bとの間に形成されたドレン油室35C内に保持し、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部(スプライン結合部)に潤滑油として供給される構成となっている。また、耐圧シール43は、ドレン油の圧力に抗して電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間を封止することにより、ドレン油室35C内のドレン油が軸挿通孔23Eを通じて電動モータケーシング23内に侵入するのを防止する構成となっている。
【0054】
44は減速機ケーシング13内に回転可能に設けられた出力軸で、該出力軸44は、下側ケーシング14内に上側軸受45,下側軸受46を介して回転可能に支持され、減速機ケーシング13内を上,下方向に延びている。ここで、出力軸44の上端側には雄スプライン部44Aが形成され、該雄スプライン部44Aは、2段目の遊星歯車減速機構19のキャリア19Cにスプライン結合されている。
【0055】
一方、出力軸44の下端側にはピニオン44Bが一体に設けられ、該ピニオン44Bは、下側ケーシング14の下端部から下方に突出し、旋回輪5の内輪5Aに設けられた内歯5Dに噛合している。また、出力軸44の下端側には、ピニオン44Bと下側軸受46との間に位置して円板状のスリーブ47が挿嵌され、該スリーブ47は出力軸44と一体に回転する。そして、スリーブ47の外周面には、下側ケーシング14の下端部に設けられたオイルシール20の内周面が液密に摺接し、該オイルシール20によって減速機ケーシング13内に潤滑油が保持されている。
【0056】
従って、電動モータ22の第1のモータ軸27の回転は、遊星歯車減速機構18,19によって2段減速された状態で出力軸44に伝達され、出力軸44は大きな回転力(トルク)をもって低速で回転する。これにより、出力軸44のピニオン44Bは、旋回輪5の内歯5Dに噛合しつつ内輪5Aに沿って公転し、このピニオン44Bの公転力が減速機ケーシング13を介して旋回フレーム3Aに伝わることにより、図1に示す上部旋回体3が、下部走行体2上で旋回動作を行う構成となっている。
【0057】
そして、上述の如く減速機12上に電動モータ22が配置されると共に電動モータ22上に油圧モータ34が配置された旋回装置11は、減速機12の減速機下フランジ部14Aを、ボルト16を用いて旋回フレーム3Aに締結することにより、旋回フレーム3A上に取付けられるもので、旋回装置11の取付け作業を行う場合には、例えば図5に示すように、ソケット部48Aと延長軸部48Bとを有するソケットレンチ等の締結工具48を用いてボルト16の締込み作業を行う。
【0058】
この場合、減速機上フランジ部15Bと電動モータ22の電動モータ下フランジ部23Cの外径寸法Aは、減速機上フランジ部15Bおよび電動モータ下フランジ部23Cの外周面と締結工具48の延長軸部48Bとの間に適度な隙間S1を確保することができる寸法に設定されている。また、電動モータ22の電動モータ上フランジ部23Dと油圧モータ34の油圧モータ下フランジ部35Bの外径寸法Bは、電動モータ上フランジ部23Dおよび油圧モータ下フランジ部35Bの外周面と締結工具48の延長軸部48Bとの間に適度な隙間S2を確保することができる寸法に設定されている。
【0059】
このように、旋回フレーム3Aに対する減速機12の取付け、取外し作業時に、締結工具48を用いてボルト16を着脱する場合に、締結工具48が、減速機上フランジ部15B、電動モータ下フランジ部23C、電動モータ上フランジ部23Dおよび油圧モータ下フランジ部35B等と干渉するのを確実に防止することができる構成となっている。
【0060】
また、図6に示すように、電動モータ22に取付けられた給電ボックス29は、締結工具48の延長軸部48Bから距離Cだけ離間した部位に配置され、温度検出器30は締結工具48の延長軸部48Bから距離Dだけ離間した部位に配置され、回転数検出器31は締結工具48の延長軸部48Bから距離Eだけ離間した部位に配置されている。これにより、電動モータ22に取付けられた給電ボックス29、温度検出器30、回転数検出器31等に締結工具48が干渉するのを防止し、これら給電ボックス29、温度検出器30、回転数検出器31等を保護する構成となっている。
【0061】
また、これと同様に、電動モータ22に取付けられた給油パイプ32、オイルレベルゲージ33についても、締結工具48の延長軸部48Bから離間した部位に配置され、これら給油パイプ32とオイルレベルゲージ33が、締結工具48と干渉するのを防止できる構成となっている。
【0062】
本実施の形態による旋回装置11は上述の如き構成を有するもので、電動モータ22に電力が供給されると共に油圧モータ34に作動油が供給されることにより、電動モータ22の第1のモータ軸27と油圧モータ34の第2のモータ軸41とは、コントローラ(図示せず)によって設定された動力配分に基づいて同時に回転する。この場合、第1のモータ軸27と第2のモータ軸41とは互いに同軸上に連結されているので、電動モータ22による第1のモータ軸27の回転力と、油圧モータ34による第2のモータ軸41の回転力とが合算された状態で、第1のモータ軸27から減速機12に伝達される。
【0063】
そして、第2のモータ軸41の回転力が合算された第1のモータ軸27の回転は、減速機12の各遊星歯車減速機構18,19によって2段減速されて出力軸44に伝わり、ピニオン44Bは大きな回転力(トルク)をもって回転する。そして、ピニオン44Bが、旋回輪5の内輪5Aに設けた内歯5Dに噛合しつつ内輪5Aに沿って公転し、このピニオン44Bの公転力が減速機ケーシング13を介して旋回フレーム3Aに伝わることにより、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行う。
【0064】
ここで、旋回装置11の作動時に油圧モータ34から漏れたドレン油は、油圧モータケーシング35のシリンダブロック収容室35Aから油通路35Dを通じてドレン油室35C内に導入された後、図3に示すドレン油排出口35Eからドレン管路を通じて作動油タンク(いずれも図示せず)に環流する。
【0065】
この場合、本実施の形態では、油圧モータ下フランジ部35Bとの間でドレン油室35Cを画成する電動モータケーシング23の蓋部23Bに、第1のモータ軸27の上端側が挿通される軸挿通孔23Eを設け、この軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間を耐圧シール43によってシールする構成としている。このため、ドレン油室35C内にドレン油を貯溜することができ、第1のモータ軸27の上端部に形成した雌スプライン部27Bと、第2のモータ軸41の下端部に形成した雄スプライン部41Aとの連結部に対し、ドレン油室35C内のドレン油を供給することができる。
【0066】
このように、油圧モータ34からのドレン油を利用して第1のモータ軸27と第2のモータ軸41との連結部を常時潤滑することにより、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aの耐久性を高めることができ、これら第1,第2のモータ軸27,41の回転を減速機12を介して的確に出力軸44に伝達することができるので、旋回装置11の信頼性を高めることができる。
【0067】
また、電動モータケーシング23の蓋部23Bに設けた軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間を耐圧シール43によってシールすることにより、電動モータケーシング23内にドレン油が侵入するのを確実に防止することができ、電動モータ22の寿命を延ばすことができる。
【0068】
さらに、第1のモータ軸27の上端部に有底穴からなる雌スプライン部27Bを設けることにより、雌スプライン部27Bの底部側に凹陥穴27Cを形成することができる。これにより、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部から摩耗粉等の異物が生じたとしても、この摩耗粉等の異物を凹陥穴27C内に捕捉することができる。このため、摩耗粉等の異物が耐圧シール43のリップ部43Bと第1のモータ軸27の外周面との間に侵入するのを抑え、耐圧シール43の寿命を延ばすことができる。この結果、電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間のシール性を長期に亘って良好に保つことができ、電動モータ22を含む旋回装置11の寿命を延ばすことができる。
【0069】
かくして、本実施の形態によれば、減速機12の上側に電動モータ22を取付け、電動モータ22の第1のモータ軸27の上端側と第2のモータ軸41の下端側とを同軸上に連結した状態で、電動モータ22の上側に油圧モータ34を取付けることにより、減速機12の上側に電動モータ22を配置し、電動モータ22の上側に油圧モータ34を配置するレイアウトとなった旋回装置11を形成することができる。
【0070】
これにより、例えば1本のモータ軸を共用する電動モータと油圧モータとを用いて旋回装置を形成する必要がなく、第1のモータ軸27を有する電動モータ22と、第1のモータ軸27とは別体の第2のモータ軸41を有する油圧モータ34とを適宜に組合わせて旋回装置11を形成することができるので、旋回装置11を設計するときの自由度を高めることができる。
【0071】
また、電動モータ22の上側に油圧モータ34を配置することにより、この油圧モータ34においては、例えば第2のモータ軸41の長さ寸法を変更するだけで、該第2のモータ軸41に設けられた雄スプライン部41Aを、第1のモータ軸27に設けられた雌スプライン部27Bに連結することができる。この結果、既存の油圧モータに対する簡単な設計変更だけで、電動モータ22の上側に油圧モータ34を取付けた旋回装置11を形成することができ、旋回装置11の構成の簡素化、製造コストの削減を図ることができる。
【0072】
しかも、電動モータ22の上側に油圧モータ34を配置することにより、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部から摩耗粉等の異物が発生したとしても、この異物が油圧モータケーシング35内に侵入することがない。この結果、油圧モータ34を長期に亘って適正に作動させることができ、旋回装置11全体の信頼性を高めることができる。
【0073】
さらに、電動モータ22の上側に油圧モータ34を配置することにより、上述の如く、油圧モータ34の作動時に発生するドレン油を、油圧モータケーシング35の油圧モータ下フランジ部35Bと電動モータケーシング23の蓋部23Bとの間に画成されたドレン油室35C内に流下させ、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部に自動的に供給することができる。
【0074】
従って、例えば油圧モータの上側に電動モータを配置する構成に比較して、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部に対し、強制的に潤滑油を供給する対策を講じる必要がなく、旋回装置11全体の構成を簡素化することができる。
【0075】
また、本実施の形態による旋回装置11は、電動モータケーシング23の蓋部23Bに第1のモータ軸27の上端側が挿通される軸挿通孔23Eを設け、この軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間に軸受28を設けると共に、該軸受28よりも上側に位置して耐圧シール43を設ける構成としている。
【0076】
このため、第1のモータ軸27の上端側に設けた雌スプライン部27Bと、第2のモータ軸41の下端側に設けた雄スプライン部41Aとの連結部を、その外周側に配置された軸受28によって強固に支持することができ、同軸上に連結された第1のモータ軸27と第2のモータ軸41とを円滑に回転させることができる。
【0077】
また、軸受28よりも上側に耐圧シール43を設けることにより、油圧モータ34から漏れたドレン油を利用して、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部を常時適正に潤滑することができる。しかも、電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間を耐圧シール43によってシールすることにより、電動モータケーシング23内へのドレン油の侵入を確実に防止することができる。
【0078】
この結果、第1のモータ軸27と第2のモータ軸41との連結部の耐久性を高めることができ、かつ、電動モータ22の寿命を延ばすことができるので、旋回装置11全体の信頼性を高めることができる。
【0079】
さらに、第1のモータ軸27の上端部に有底穴からなる雌スプライン部27Bを設けることにより、雌スプライン部27Bの底部側に凹陥穴27Cを形成することができる。これにより、第1のモータ軸27の雌スプライン部27Bと第2のモータ軸41の雄スプライン部41Aとの連結部から摩耗粉等の異物が生じたとしても、この摩耗粉等の異物を凹陥穴27C内に捕捉することができる。このため、摩耗粉等の異物が耐圧シール43のリップ部43Bと第1のモータ軸27の外周面との間に侵入するのを抑え、耐圧シール43の寿命を延ばすことができる。この結果、電動モータケーシング23の軸挿通孔23Eと第1のモータ軸27との間のシール性を長期に亘って良好に保つことができ、旋回装置11の寿命を延ばすことができる。
【0080】
一方、本実施の形態による旋回装置11は、減速機上フランジ部15Bと電動モータ22の電動モータ下フランジ部23Cの外径寸法Aを、減速機上フランジ部15Bおよび電動モータ下フランジ部23Cの外周面と締結工具48の延長軸部48Bとの間に適度な隙間S1が確保できる寸法に設定している。また、電動モータ22の電動モータ上フランジ部23Dと油圧モータ34の油圧モータ下フランジ部35Bの外径寸法Bを、電動モータ上フランジ部23Dおよび油圧モータ下フランジ部35Bの外周面と締結工具48の延長軸部48Bとの間に適度な隙間S2を確保できる寸法に設定している。
【0081】
これにより、旋回フレーム3Aに対する減速機12の取付け、取外し作業時に、油圧モータ34の上方から締結工具48を用いてボルト16を着脱する場合に、締結工具48が、減速機上フランジ部15B、電動モータ下フランジ部23C、電動モータ上フランジ部23Dおよび油圧モータ下フランジ部35B等と干渉するのを確実に防止することができ、減速機12を取付け、取外しするときの作業性を高めることができる。
【0082】
しかも、電動モータ22に取付けられた給電ボックス29を、締結工具48の延長軸部48Bから距離Cだけ離間した部位に配置し、温度検出器30を締結工具48の延長軸部48Bから距離Dだけ離間した部位に配置し、回転数検出器31を締結工具48の延長軸部48Bから距離Eだけ離間した部位に配置している。この結果、電動モータ22に取付けられた給電ボックス29、温度検出器30、回転数検出器31等に締結工具48が干渉するのを確実に防止できるので、これら給電ボックス29、温度検出器30、回転数検出器31等を保護することができ、かつ締結工具48を用いて減速機12を取付け、取外しするときの作業性を高めることができる。
【0083】
なお、上述した実施の形態では、減速機12の減速機ケーシング13を下側ケーシング14と上側ケーシング15とにより構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば単一のケーシングからなる減速機ケーシングを用いる構成としてもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態では、油圧ショベル1に適用される旋回装置11を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン等の他の建設機械に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 旋回輪
11 旋回装置
12 減速機
13 減速機ケーシング
14A 減速機下フランジ部
15B 減速機上フランジ部
22 電動モータ
23 電動モータケーシング
23B 蓋部
23C 電動モータ下フランジ部
23D 電動モータ上フランジ部
23E 軸挿通孔
27 第1のモータ軸
27B 雌スプライン部
28 軸受
29 給電ボックス
30 温度検出器(検出器類)
31 回転数検出器(検出器類)
34 油圧モータ
35 油圧モータケーシング
35B 油圧モータ下フランジ部
41 第2のモータ軸
41A 雄スプライン部
43 耐圧シール(シール部材)
44 出力軸
48 締結工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に旋回輪を介して搭載された上部旋回体に上,下方向に延びるように取付けられた減速機と、該減速機の上側に取付けられ電力が供給されることにより回転する第1のモータ軸を有する電動モータと、該電動モータの上側に取付けられ作動油が供給されることにより回転する第2のモータ軸の下端側が前記第1のモータ軸の上端側に連結された油圧モータと、前記減速機によって減速された前記第1,第2のモータ軸の回転を前記旋回輪に出力する出力軸とを備え、
前記電動モータは、下端側が前記減速機に取付けられると共に上端側が前記油圧モータからのドレン油を遮断する蓋部となった電動モータケーシングを有し、
該電動モータケーシングの蓋部には前記第1のモータ軸の上端側が挿通される軸挿通孔を設け、
該軸挿通孔と前記第1のモータ軸との間には前記第1のモータ軸の上端側を回転可能に支持する軸受を設け、
前記第1のモータ軸の上端と前記軸挿通孔を介して下方に延びた前記第2のモータ軸とを互いに連結する構成とし、
前記軸挿通孔と前記第1のモータ軸との間であって前記軸受よりも上側には、前記第1のモータ軸と第2のモータ軸との連結部に前記油圧モータからのドレン油を供給すると共に当該ドレン油が前記電動モータケーシング内に侵入するのを防止するシール部材を設ける構成としてなる建設機械の旋回装置。
【請求項2】
前記第1のモータ軸の上端部には有底穴からなる雌スプライン部を設け、前記第2のモータ軸の下端部には前記雌スプライン部に連結される雄スプライン部を設け、
前記油圧モータからのドレン油は、前記第1のモータ軸の雌スプライン部と前記第2のモータ軸の雌スプライン部との連結部を潤滑する構成としてなる請求項1に記載の建設機械の旋回装置。
【請求項3】
前記減速機には、その下端側にボルトを用いて前記上部旋回体に締結される減速機下フランジ部を設けると共に上端側に減速機上フランジ部を設け、
前記電動モータには、その下端側に前記減速機上フランジ部に取付けられる電動モータ下フランジ部を設けると共に上端側に電動モータ上フランジ部を設け、
前記油圧モータの下端側には1、前記電動モータ上フランジ部に取付けられる油圧モータ下フランジ部を設け、
前記減速機上フランジ部、前記電動モータ下フランジ部、前記電動モータ上フランジ部および前記油圧モータ下フランジ部の外径寸法は、前記減速機下フランジ部をボルトを介して前記上部旋回体に締結するときに用いられる締結工具との間に隙間を確保できる寸法に設定してなる請求項1または2に記載の建設機械の旋回装置。
【請求項4】
前記電動モータには、前記電動モータに電力を供給するための給電ボックスと、前記電動モータの温度を検出する温度検出器を含む各種の検出器類とを取付ける構成とし、
これら給電ボックスと検出器類とは、前記減速機下フランジ部をボルトを介して前記上部旋回体に締結するときに用いられる締結工具から離間した位置に配置してなる請求項3に記載の建設機械の旋回装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12818(P2012−12818A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149470(P2010−149470)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】