説明

建設機械の燃料判別装置

【課題】建設機械の使用燃料を簡単に判別し、不許可燃料の使用を防止する。
【解決手段】建設機械に搭載され、該建設機械のエンジンに使用される燃料の使用可否を判別する建設機械の燃料判別装置において、燃料タンク21の下部に着脱可能に取り付けられている清掃用の蓋体23に、前記建設機械20の燃料タンク21または燃料系に導入された燃料の密度を検出する密度センサ12、燃料の温度を検出する温度センサ13を具備する検出手段6及び燃料の種類を判別若しくは燃料の使用可否を判定する制御手段14を装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の燃料判別装置に関するものであり、特に、ディーゼルエンジンを搭載した建設機械において軽油以外の燃料使用を防止するための燃料判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルやブルドーザ、道路舗設車両などの建設機械にはディーゼルエンジンが搭載されており、使用燃料は軽油のみが認められている。しかし、灯油や重油でも稼動することができるため、実状としては、燃料価格の安い灯油や重油などが使用される可能性がある。これら不許可燃料の使用が原因で、エンジンの故障や不良排気ガスの発生などの問題が起こっている。
【0003】
近時、排出ガス3次規制に対応したエンジンが開発され、排出ガスをクリーンにすることが要求されており、不良排気ガスをなくすために、不許可燃料の使用を防止する必要性が高まっている。
【0004】
燃料の種類を識別する装置としては、燃料に所定の光量の光信号を投光する投光手段と、この光信号が燃料中の所定の光通路を伝播した後にその光信号の少なくとも一部を受け取るための受光手段と、この受光手段によって受光した光信号に応答してその光量が所定の基準レベルより高いか否かを判別する電気的回路手段と、この電気的回路手段からの出力に応答し電気的回路手段における判別結果を表示する表示手段とを備えた燃料判別装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記燃料判別装置は、燃料に投光された光信号が、所定の光通路を伝播する間に光量が減衰する度合い、すなわち光透過度の違いによって燃料の種類を判別するものである。例えばガソリンのような赤色着色された燃料と、軽油のように被着色燃料では光透過度に大きな差があるので、ガソリンと他の燃料を確実に識別できる。
【0006】
また、燃料タンク内に化学量または物理量を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて燃料の種類を判別する判別手段を備えた燃料判別装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
上記燃料判別装置は、燃料タンクへの収容が考えられる液体燃料の化学量や物理量、たとえば光スペクトルや電気抵抗などの計測結果を予め記憶しておき、検出手段の実測値を前記計測結果と照合することにより、液体燃料の種類を判別するものである。
【特許文献1】実開平2−71254号公報
【特許文献2】特開2005−201068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の発明は、燃料に投光された光信号の光透過度の違いによって燃料の種類を判別するものであり、ガソリンと軽油のように明らかに光透過度に大きな差がある燃料については確実に識別できるが、軽油と灯油のように光透過度に大きな差がないものや、軽油に灯油を混合した場合などでは正確な識別が困難である。かかる特許文献1においては、燃料識別装置1の投光装置5を構成する光ファイバ4及び投光装置5から投光された光信号を受光する光ファイバ7は夫々給油パイプ20内に突出して取り付けられており、該光ファイバ4及び7の着脱については、特に記載されていない。また、燃料の種類を判別する判別回路11の取付位置についても特許文献1に特に記載されていない。
【0009】
特許文献2記載の発明は、予め記憶してある燃料固有の化学量や物理量と、検出手段の実測値を比較照合するものであるが、光スペクトルの計測装置などが高価であるためコストアップの要因となり、かかる特許文献2においては、電極22a、22bやセンサ32、42及び52の取付位置は燃料タンクの内面側部または上部であるが、これらセンサの着脱については、特に記載されていない。また、エンジン制御用ECU8についても取付位置や着脱については、特に記載されていない。
【0010】
そこで、建設機械の使用燃料を判別し、不許可燃料の使用を防止する燃料判別装置において、センサ等の検出手段及び使用燃料を判別若しくは使用可否を判定する制御手段の取付及び着脱を容易にするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、建設機械に搭載され、該建設機械のエンジンに使用される燃料の使用可否を判別する建設機械の燃料判別装置において、燃料タンク下部に着脱可能に取り付けられている清掃用の蓋体に、前記建設機械の燃料タンクまたは燃料系に導入された燃料の密度を検出する密度センサを具備する検出手段を装着した建設機械の燃料判別装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、燃料の密度を検出する密度センサを具備する検出手段を燃料タンクの下部に取り付けられている清掃用の蓋体に装着したことにより、燃料判別装置を構成する検出手段の取り付け及び取り外しが容易になり、また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンクには蓋体のみを取り付ければよい。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1において、清掃用の蓋体に、燃料の温度を検出する温度センサを具備する検出手段を装着した建設機械の燃料判別装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、燃料の温度を検出する温度センサを具備する検出手段を燃料タンクの下部に取り付けられている清掃用の蓋体に装着したことにより、燃料判別装置を構成する検出手段の取り付け及び取り外しが容易になり、また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンクには蓋体のみを取り付ければよい。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2において、清掃用の蓋体に、検出手段の検出信号に基づいて燃料の種類を識別若しくは燃料の使用可否を判定する制御手段を装着した建設機械の燃料判別装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、燃料の種類を識別若しくは燃料の使用可否を判定する制御手段を燃料タンクの下部に取り付けられている清掃用の蓋体に装着したことにより、燃料判別装置を構成する制御手段の取り付け及び取り外しが容易になり、また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンクには蓋体のみを取り付ければよい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、密度センサを具備する検出手段を燃料タンクの蓋体に装着したので、燃料タンク下のスペースを利用して密度センサを具備した検出手段の取り付けが可能になるとともに検出手段の取り付け、取り外しが容易になる。また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンクには蓋体のみを取り付ければよく、部品の共有化によるコストダウンを図ることが可能である。
【0018】
請求項2記載の発明は、温度センサを具備する検出手段を燃料タンクの蓋体に装着したので、燃料タンク下のスペースを利用して温度センサを具備した検出手段の取り付けが可能になるとともに検出手段の取り付け、取り外しが容易になる。また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンクには蓋体のみを取り付ければよく、部品の共有化によるコストダウンを図ることが可能である。
【0019】
請求項3記載の発明は、制御手段を燃料タンクの蓋体に装着したので、燃料タンク下のスペースを利用して制御手段の取り付けが可能になるとともに制御手段の取り付け、取り外しが容易になる。また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンクには蓋体のみを取り付ければよく、部品の共有化によるコストダウンを図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
建設機械の使用燃料を判別し、不許可燃料の使用を防止する燃料判別装置において、センサ等の検出手段及び使用燃料を判別若しくは使用可否を判定する制御手段の取付及び着脱を容易にするという目的を達成するために、本発明は建設機械に搭載され、該建設機械のエンジンに使用される燃料の使用可否を判別する建設機械の燃料判別装置において、燃料タンク下部に着脱可能に取り付けられている清掃用の蓋体に、前記建設機械の燃料タンクまたは燃料系に導入された燃料の密度を検出する密度センサ、温度センサを具備する検出手段及び燃料の種類を判別若しくは燃料の使用可否を判定する制御手段を装着したことにより実現した。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の建設機械の燃料判別装置について、好適な実施例をあげて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る燃料判別装置を実行する燃料判別システムの概略構成を示す図である。図1において、この燃料判別システムは、燃料判別装置1と、通信衛星2、基地局3及び管理センター4とを備え、前記燃料判別装置1からの情報は、送信装置19から前記通信衛星2及び基地局3を介して管理センター4へ送信される。
【0023】
燃料判別装置1は、機械本体コントローラ(第2制御手段)5、検出手段6、燃料コントローラ(第1制御手段)14、燃料レベルセンサ15等で構成され、機械本体コントローラ(第2制御手段)5には、前記燃料コントローラ(第1制御手段)14及び燃料レベルセンサ15、建設機械20のエンジン8を始動する始動キー9が装着されるキースイッチユニット10、エンジン8の駆動を制御するエンジンコントローラ11、報知装置16及び送信装置19が接続され、また、前記エンジンコントローラ11にはエンジン8の回転数を検出するエンジン回転数センサ18が接続されている。
【0024】
前記キースイッチユニット10は、始動キー9が差し込まれるキー穴(図示せず)を有し、始動キー9の挿脱自在の位置である「LOCK」位置から「ON」位置及び「START」位置に切り換え可能なキースイッチ(図示せず)を備えている。
【0025】
前記機械本体コントローラ(第2制御手段)5は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、燃料コントローラ(第1制御手段)14により識別された燃料を使用して良いか否を判定して建設機械20の運転を管理するための制御信号を出力する制御手段としての燃料判定部5a及び該燃料判定部5aで使用不可の判定がなされたときにエンジン停止等により機械の操作が行えないように牽制制御を行う機械操作牽制手段17を備えている。
【0026】
また、機械本体コントローラ(第2制御手段)5は、始動キー9がキー穴に差し込まれ、キースイッチが「ON」位置に回動されたとき、すなわちオン操作されたときに、燃料判定部5aによる燃料判定動作を実行させ、燃料判定部5aで燃料の使用が許可されたときにだけ、さらにキースイッチが「ON」位置から「START」位置に回動した際にエンジン始動制御を行う。他方、燃料判定部5aで不正燃料と判定されたときには、キースイッチを「ON」位置から「START」位置に回動してもエンジンが始動しない様に制御し、かつ、報知装置16により建設機械20のオペレータにその旨を文字表示あるいは音声で報知する機能と、送信装置19及び通信衛星2、基地局3を介して管理センター4にその旨を通報する機能も有している。
【0027】
検出手段6は、燃料の密度センサ12と温度センサ13とで構成されている。密度センサ12は被識別燃料の密度を検出して燃料コントローラ(第1制御手段)14に信号を出力し、温度センサ13は密度センサ12が密度を検出している被識別燃料の温度を検出して燃料コントローラ(第1制御手段)14に出力する。燃料コントローラ(第1制御手段)14は、密度センサ12からの信号に基づき、使用燃料が軽油であるか、それ以外の燃料であるか等の、燃料の種類を識別して機械本体コントローラ(第2制御手段)5の燃料判定部5aに出力するようになっている。
【0028】
なお、温度センサ13で測定された温度は、燃料コントローラ(第1制御手段)14に設けられている燃料−密度換算手段14aにより、密度センサ12で測定された結果を15℃時の温度−密度に換算し、15℃換算時の燃料密度として燃料の種類を識別するもので、これにより燃料温度(温度環境)に影響されないで燃料の識別が正確にできるようになっている。
【0029】
図2は、燃料の使用可否を判定する燃料判定部14bを燃料コントローラ(第1制御手段)14に設けたもので、この場合の燃料判別装置1は、検出手段6と燃料コントローラ(第1制御手段)14及び燃料レベルセンサ15により構成される。該燃料判定部14bは前記機械本体コントローラ(第2制御手段)5に備えられている燃料判定部5aと同じ機能を有し、前記検出手段6の密度センサ12及び温度センサ13で検出された被識別燃料の密度及び温度に基づいて燃料の種類に関する情報が前記燃料コントローラ(第1制御手段)14に入力されたときは、該燃料コントローラ(第1制御手段)14の燃料判定部14bで使用可否の判定を行い、該判定信号を機械本体コントローラ(第2制御手段)5に出力する。
【0030】
図3は、燃料タンク21の説明図であり、該燃料タンク21には、導入されている燃料の密度を検出する密度センサ12と、導入されている燃料の温度を検出する温度センサ13と、燃料の充填量を検出する燃料レベルセンサ15が設けられ、前記密度センサ12の検出信号及び温度センサ13の検出信号に基づいて燃料コントローラ(第1制御手段)14の燃料−密度換算手段14aにおいて燃料の種類が識別され、該識別情報が前記機械本体コントローラ(第2制御手段)5の燃料判定部5aに出力される。なお、符号24は燃料タンク21内の燃料を噴射ポンプ(図示せず)へ供給するためのサクションパイプである。
【0031】
ここで、前記密度センサ12と温度センサ13の計測部22は、同図にて符号Hで示すように、サクションパイプ24の吸入口24aよりも上方位置に配置されている。したがって、たとえ燃料タンク21の下部にゴミなどの不純物が堆積したとしても、前記計測部22にゴミが堆積することはなく、ゴミの堆積に起因するセンサの検出不良を防止できる。
【0032】
本実施例では、密度センサ12と温度センサ13が一体に形成されているが、密度センサ12と温度センサ13を別体にして、それぞれのセンサを別々の位置に配置する場合では、少なくとも密度センサ12の計測部は、サクションパイプ24の吸入口24aよりも上方位置に配置する。これは、密度センサ12は光の光量や屈折率などを計測して燃料密度を検出する構成があり、ゴミの堆積によって燃料密度を検出不能または誤検出するおそれがあるためである。
【0033】
また、前記密度センサ12と温度センサ13はサクションパイプ24の近傍位置に配置してある。これは、サクションパイプ24に吸い込まれる燃料の流れによって、密度センサ12の周囲にゴミの付着による検出不良が生じるおそれがない。
【0034】
燃料タンク21の下部には、清掃用の蓋体23がボルト締め等で着脱可能に取り付けられている。前記密度センサ12と温度センサ13、およびサクションパイプ24は、蓋体23を貫通して装着されており、さらに、前記燃料コントローラ(第1制御手段)14も蓋体23の下面に装着されている。
【0035】
このように、密度センサ12、温度センサ13を具備する検出手段6及び燃料コントローラ(第1制御手段)14など燃料判別装置1を構成する各部材を、燃料タンク21の蓋体23にまとめて装着してあるので、検出手段6、燃料コントローラ(第1制御手段)14等の取り付け、取り外しが容易になり、また、燃料判別装置の装着が不要である場合は、前記燃料タンク21には蓋体23のみを取り付ければよく、部品の共用化によるコストダウンを図ることができる。
【0036】
そして、密度センサ12にて燃料密度を検出し、必要に応じて、温度センサ13が検出する燃料温度を考慮しつつ、検出した燃料密度が予め測定されている正規燃料密度に対して規定範囲外にあったときは、機械本体コントローラ(第2制御手段)5または燃料コントローラ(第1制御手段)14が使用不可の判定信号を発する。
【0037】
上記使用不可の判定信号を機械本体コントローラ(第2制御手段)5の機械操作牽制手段17が受けたときは、例えばエンジン停止やエンジン回転数強制低下など、機械の操作が行えないように牽制制御する。したがって、不許可燃料でのエンジン駆動が継続できなくなり、エンジンの故障や不良排気ガスの発生など問題を解消することができる。
【0038】
なお、機械本体コントローラ(第2制御手段)5または燃料コントローラ(第1制御手段)14から出力する使用不可の判定信号に基づいて、通信衛星2を介して基地局3へデータを送信したり、あるいは、エンジン停止やエンジン回転数低下、機械操作不能などの遠隔操作を行うように構成することもできる。
【0039】
そして、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る燃料判別装置の概略構成を示す説明図。
【図2】本発明に係る他の燃料判別装置の概略構成を示す説明図。
【図3】燃料タンクの説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 燃料判別装置
2 通信衛星
3 基地局
4 管理センター
5 機械本体コントローラ(第2制御手段)
5a 燃料判定部
6 検出手段
8 エンジン
9 キースイッチ
10 キースイッチユニット
11 エンジンコントローラ
12 密度センサ
13 温度センサ
14 燃料コントローラ(第1制御手段)
14a 燃料−密度換算手段
14b 燃料判定部
15 燃料レベルセンサ
16 報知装置
17 機械操作牽制手段
18 エンジン回転数センサ
19 送信装置
20 建設機械
21 燃料タンク
22 計測部
23 蓋体
24 サクションパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に搭載され、該建設機械のエンジンに使用される燃料の使用可否を判別する建設機械の燃料判別装置において、
燃料タンク下部に着脱可能に取り付けられている清掃用の蓋体に、前記建設機械の燃料タンクまたは燃料系に導入された燃料の密度を検出する密度センサを具備する検出手段を装着したことを特徴とする建設機械の燃料判別装置。
【請求項2】
上記清掃用の蓋体に、燃料の温度を検出する温度センサを具備する上記検出手段を装着したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の燃料判別装置。
【請求項3】
上記清掃用の蓋体に、上記検出手段の検出信号に基づいて燃料の種類を識別若しくは燃料の使用可否を判定する制御手段を装着したことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の燃料判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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