説明

建設機械の運転室ガラスのガード構造

【課題】高所での作業に起因する作業者の心理的な負担を軽減して、運転室の前面ガラスを安心してメインテナンスできる建設機械の運転室ガラスのガード構造を提供する。
【解決手段】運転室5の下段ガラス7を覆う下段ガード10の下端を運転室5側に対してピン12により傾動可能に連結すると共に、下段ガード10の上部に運転室5の上段ガラス6を覆う上段ガード9を相対回動可能に連結し、上段ガード9の上部を連動アーム16を介して運転室5側と連結する。下段ガード10の傾動に伴って連動アーム16を回動させながら上段ガード9を移動させ、下段ガード10をストッパ部材13により水平姿勢に保持して作業者の足場として利用する一方、上段ガード9を運転室5から前方に離間させた位置で略直立姿勢に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械の運転室に飛来してくる岩や破片などから運転室ガラス及びオペレータを保護するためのガードの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械は、作業中に前方から飛来する岩石などから運転室のガラスひいては運転室内のオペレータを保護するために、例えば前面ガラスの前側に金網などによって構成される前面ガードを取り付ける対策が講じられている。特にブレーカ作業(破砕作業)を行う建設機械では、破砕対象であるコンクリートや岩盤などの破片が多数飛散することから前面ガードが必需品となっている。
前面ガードは運転室の保護のために非常に有効である反面、前面ガラスの拭き掃除やワイパーブレードの交換作業などのメインテナンスを実施する際には邪魔になるため取り外す必要が生じる。このようなメインテナンス作業を効率的に実施するために、種々の提案がなされている。例えば特許文献1に記載された技術では、前面ガードを上下に2分割して相互に蝶番で連結し、蝶番を中心として何れか一方の前面ガードを他方の前面ガードに重ねることにより、前面ガラスを露出させてメインテナンスを可能としている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術は、ボルトなどにより前面ガラスを固定した場合に比較して前面ガラスを露出させるための操作は容易になるが、メインテナンス作業全体を効率化するものではなかった。即ち、この種の建設機械の運転室は車両の構造上或いはオペレータの視認性確保などの理由でかなり高所に設置される場合が多く、車体規模による相違はあるものの、例えば油圧ショベルでは、運転室が上部旋回体に設置されることで人の背丈ほどの高所に位置する場合が多い。このため、運転室の前面ガラスをメインテナンスする際には、事前に足場などを用意するという本来のメインテナンス作業とは別の作業が発生した。
このような問題の対策として、例えば特許文献2の技術では前面ガラスをメインテナンスするときの足場として前面ガードを利用している。当該技術では、特にブレーカ作業で破片の飛散が集中する前面ガラスの下部に前面ガードが配設されているが、下端を中心として前面ガードを水平姿勢まで傾動させてストッパで保持することにより、メインテナンス時の作業者の足場として機能させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−228422号公報
【特許文献2】特開平10−147956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2の技術では、事前の足場などの用意を必要とすることなく、オペレータなどの作業者が運転室のドアから水平保持された前面ガード上に回り込むだけで、前面ガラスのメインテナンスを容易に実施可能なことから、作業効率の点では非常に有効な対策である。しかしながら、高所に位置する前面ガード上で作業を行うことから、特に高所を嫌う作業者にとっては非常に緊張感を強いられる作業になってしまう。このため、作業者の心理的な負担を軽減して、前面ガラスのメインテナンスを安心して実施できるような対策が従来から望まれていた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高所での作業に起因する作業者の心理的な負担を軽減して、運転室の前面ガラスを安心してメインテナンスすることができる建設機械の運転室ガラスのガード構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、運転室の前面ガラスの前方に、前面ガラスを覆って保護すると共に前方視認が可能なガードを配設した建設機械の運転室ガラスのガード構造において、下端が運転室の下部に対して傾動可能に連結され、前面ガラスの下部を覆う防護位置と、保持手段により略水平姿勢に保持されて前面ガラスの下部を前方に露出させる開放位置との間で、下端を中心とした傾動により切り換えられる下段ガードと、下段ガードの上端に対して相対回動可能に連結されると共に、上部が連動アームを介して運転室側と連結され、前面ガラスの上部を覆う防護位置と、略直立姿勢で運転室から前方に離間して前面ガラスの上部を前方に露出させる開放位置との間で、下部ガードの傾動に伴って運転室側を中心として連動アームを回動させながら切り換えられる上段ガードと、上段ガード及び下段ガードを防護位置に固定するロック手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、運転室側に一端が連結され、他端が連動アームに連結されて、連動アームを介して上段ガードを常に防護位置側に付勢するアシスト手段を備えたものである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、ロック手段が、運転室の前面上部の左右両側に設けられ、それぞれロック孔を有する一対のロックブラケットと、上段ガードの上部に左右方向に架設されて一端に設けられた操作部によりスライドし、上段ガードが防護位置にあるときにスライドに伴って一対のロックピンをロックブラケットの両ロック孔に対して挿入及び離脱させるスライドロックバーと、ロックピンをロック孔に挿入させる方向にスライドロックバーを付勢する付勢手段とから構成されたものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3において、上段ガード及び下段ガードが、前面ガラスの上部または下部と対応する枠状のフレームと、フレーム内に縦横に配設された格子材とから構成されたものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至4において、上段ガードの一側に把手が設けられたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明による建設機械の運転室ガラスのガード構造によれば、上部ガード及び下部ガードを相互に連動させて防護位置と開放位置との間で切り換えるようにし、開放位置では、保持手段により下段ガードを略水平姿勢に保持して作業者の足場として利用する一方、上部ガードを略直立姿勢で運転室から前方に離間させるようにした。よって、作業者は上段ガードにより転落を防止されていることを認識して高所での作業による緊張感を和らげられ、心理的な負担の軽減により下段ガード上で安心してメインテナンスを実施することができる。
請求項2の発明による建設機械の運転室ガラスのガード構造によれば、請求項1に加えて、アシスト手段により上段ガードを常に防護位置側に付勢するようにしたため、緩やかに開放位置に切り換えることができると共に、大きな操作力を要することなく防護位置に切り換えることができる。
【0009】
請求項3の発明による建設機械の運転室ガラスのガード構造によれば、請求項1または2に加えて、上段ガードに設けたスライドロックバーを付勢手段により付勢して、そのロックピンを運転室に設けたロックブラケットのロック孔内に挿入させる一方、付勢手段の付勢力に抗して操作部によりスライドロックバーをスライドさせることによりロック孔内からロックピンを離脱させるようにした。よって、操作部を操作するだけで、上段ガード及び下段ガードの防護位置での保持、及び開放位置への切換を行うことができる。
請求項4の発明による建設機械の運転室ガラスのガード構造によれば、請求項1乃至3に加えて、枠状のフレーム内に格子材を縦横に配設したため、上段ガードや下段ガードを容易に製作することができる。
請求項5の発明による建設機械の運転室ガラスのガード構造によれば、請求項1乃至4に加えて、上段ガードの一側に把手を設けたため、把手を把持して上段及び下段ガードを防護位置と開放位置との間で切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のガード構造が適用された油圧ショベルを示す全体構成図である。
【図2】上段及び下段ガードを開放位置としたときの運転室を示す左側面図である。
【図3】上段及び下段ガードを防護位置としたときの運転室を示す右側面図である。
【図4】図3と対応する運転室の正面図である。
【図5】上段及び下段ガードを開放位置としたときの運転室を示す右側面図である。
【図6】図5と対応する運転室の正面図である。
【図7】図5と対応する下段ガードの詳細図である。
【図8】スライドロックバーの詳細を示す図4のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図2の矢視X方向から見たスライドロックバーの詳細を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を油圧ショベルの運転室に設けられた前面ガラスのガード構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のガード構造が適用された油圧ショベルを示す全体構成図、図2は上段及び下段ガードを開放位置としたときの運転室を示す左側面図である。
クローラ1を備えた下部走行体2上には上部旋回体3が旋回可能に設けられ、この上部旋回体3には作業機4及び運転室5が設けられている。作業機4はブーム、アーム及びバケットなどから構成されて、油圧シリンダにより作動する。運転室5は左側に乗降用のドア5aを備え、運転室5内に搭乗したオペレータにより下部走行体1の走行や上部旋回体2の旋回、作業機4の動作などが操作される。
【0012】
運転室5の前面には前面ガラスとして四角状の上段ガラス6及び下段ガラス7が配設され、これらを介して運転室5内からオペレータが前方及びその周辺の様子を視認可能となっている。上段ガラス6の一側には雨天作業時に用いるワイパ8が装備されている。上段ガラス6の前方には上段ガード9が配設され、下段ガラス7の前方には下段ガード10が配設され、これらにより上段及び下段ガラス6,7がそれぞれ前方より覆われている。
上段及び下段ガード9,10は、それぞれ四角枠状のフレーム9a,10a内に多数の格子材9b,10bを縦横に配設した上で適宜溶接して製作されており、上段及び下段ガラス6,7を介した前方視認を可能とした上で、前方より飛来する岩や破片などから上段及び下段ガラス6,7を保護する機能を果たす。以下、このように上段及び下段ガラス6,7を覆っているときの上段及び下段ガード9,10の姿勢を防護位置と称する。また、詳細は後述するが、メインテナンス上の配慮から上段及び下段ガード9,10は上段及び下段ガラス6,7を前方に露出させる位置に切換可能となっており、以下、このときの上段及び下段ガード9,10の姿勢を開放位置と称する。
【0013】
なお、上段及び下段ガード9,10の構成は上記に限ることはなく、例えばフレーム9a,10a内に金網を張ったり、透明な合成樹脂板を張ったりしてもよい。
図3は上段及び下段ガード9,10を防護位置としたときの運転室5を示す右側面図、図4は図3と対応する運転室5の正面図、図5は上段及び下段ガード9,10を開放位置としたときの運転室5を示す右側面図、図6は図5と対応する運転室5の正面図、図7は図5と対応する下段ガード10の詳細図である。
【0014】
図3,4に示すように、下段ガード10の下部の左右両側はピン12を介して運転室5の下部の左右両側とそれぞれ連結され、ピン12を中心とした下段ガード10の防護位置から前方斜め下方への傾動が許容されている(図3に矢印Aで示す)。図7に示すように下段ガード10の下端面にはゴム製のストッパ部材13(保持手段)が貼着され、傾動した下段ガード10が水平姿勢になるとストッパ部材13が運転室5のフレーム5bに当接して下段ガード10の傾動を規制する。これにより下段ガード10は図5〜7に示す開放位置に切り換えられ、下段ガラス7が前方に露出される。
下段ガード10の上部の左右両側はピン14を介して上段ガード9の下部の左右両側とそれぞれ連結され、ピン14を中心とした両ガード9,10の相対的な回動が許容されている。上段ガード9の上部右側にはピン15により連動アーム16の一端が連結され、連動アーム16の他端はピン17により運転室5の前面右側と連結されている。
【0015】
このため、上記のように下段ガード10が防護位置から開放位置へと前方斜め下方に傾動したとき、これに追従して上段ガード9の下部が移動する一方、上段ガード9の上部は、他端側(運転室5側)のピン17を中心として連動アーム16を回動させながら円弧状の軌跡に沿って移動する(図3に矢印Bで示す)。このような下段ガード10との連動により、上段ガード9は運転室5から前方に離間して図5,6に示す開放位置に切り換えられ、上段ガラス6が前方に露出する。開放位置の下段ガード10は水平姿勢に保持され、開放位置の上段ガード9は運転室5から離間しながら略直立姿勢に保持される。
また、下段ガード10が開放位置から防護位置への傾動したときにも、これに追従して上段ガード9の下部が移動する一方、上段ガード9の上部が連動アーム16を回動させながら円弧状の軌跡に沿って移動し、上段ガード9は防護位置に切り換えられて上段ガラス6を覆う。
【0016】
上段ガード9の上部には、上段及び下段ガード9,10を防護位置に保持するためのスライドロックバー19(ロック手段)が配設されている。図8はスライドロックバー19の詳細を示す図4のVIII−VIII線断面図、図9は同じく図2の矢視X方向から見た斜視図である。
スライドロックバー19は上段ガード9の上部後面(運転室5側)で左右方向に延びるように架設され、上段ガード9の左右両側に溶接されたガイドブラケット20の四角孔20a内に挿入されている。スライドロックバー19はガイドブラケット20に案内されて左右方向へのスライドを許容されると共に、ガイドブラケット20の四角孔20aと対応する断面四角状をなすことにより回転規制されている。
【0017】
スライドロックバー19の左右両側にはそれぞれロックピン19aが溶接され、これらのロックピン19aは後方(図8では上方)に突出して右方(図8では左方)に向けて直角に屈曲している。上段ガード9が防護位置にあるときに左右のロックピン19aと対応するように、運転室5の前面上部の左右両側にはロックブラケット21(ロック手段)が溶接されており、スライドロックバー19の右方へのスライドに伴ってロックピン19aがロックブラケット21のロック孔21a内に挿入されるようになっている。
スライドロックバー19の右端は右側のガイドブラケット21より右方に突出して円盤状のバネ座19bが溶接され、バネ座19bとガイドブラケット20との間に介装されたバネ22(付勢手段)によりスライドロックバー19は常に右方に付勢されている。このバネ22の付勢力によりスライドロックバー19のロックピン19aはロックブラケット21のロック孔21a内に挿入された状態に保持され、バネ22の付勢力に抗してスライドロックバー19を左方にスライドさせることによりロックピン19aをロック孔21a内から離脱可能となっている。
【0018】
スライドロックバー19の左端は左側のガイドブラケット20より左方に突出し、T字状をなすように操作部19cが溶接されている。この操作部19cの位置は運転室5の左側のドア5aと近接しているため、作業者が運転室5内からドア5aを介して操作部19cを任意に操作可能となっている。スライドロックバー19の操作部19cに近接するように上段ガード9の左側面には把手23が溶接され、把手23を把持して上段ガード9を操作可能となっている。
運転室5の前面右側にはシリンダ24(アシスト手段)の基端が連結され、シリンダ24のロッド24aは連動アーム16の中間部に連結されている。シリンダ24内に封入された高圧窒素ガスがロッド24aを突出させる方向に作用し、これにより連動アーム16を介して上段ガード9が常に防護位置側に付勢されている。シリンダ24の付勢力は上段及び下段ガード9,10の重量を相殺する程度に設定されている。
【0019】
次に、以上のように構成された油圧ショベルの運転室ガラスのガード構造による作用を述べる。
通常の油圧ショベルの作業時には、図3,4に示すように上段及び下段ガード9,10が防護位置に切り換えられており、スライドロックバー19のロックピン19aがロックブラケット21のロック孔21a内に挿入されることにより、両ガード9,10を防護位置に保持している。このため、作業中に前方から飛来する岩石などは上段及び下段ガード9,10により遮られ、上段及び下段ガラス6,7ひいてはオペレータが保護される。そして、作業に際して上段及び下段ガラス6,7が汚れたときには拭き掃除が実施され、またワイパ8のワイパブレードが消耗したときには交換作業が実施されるが、これらのメインテナンスの際には上段及び下段ガラス6,7を前方に露出させる必要がある。
【0020】
このとき、オペレータなどの作業者は運転室5内からドア5aを開放してスライドロックバー19の操作部19cを把持し、バネ22の付勢力に抗して左方にスライド操作する。これによりロックピン19aがロックブラケット21のロック孔21a内から離脱し、この状態で把手23を把持して上段ガード9を前方斜め下方に向けて操作すると、連動アーム16の回動によりシリンダ24のロッド24aを縮ませながら、上段及び下段ガード9,10は防護位置から開放位置へと切り換えられる。このとき、上段及び下段ガード9,10の重量に対してシリンダ24の付勢力が対抗することから、開放位置への切換は緩やかに行われる。
図5,6に示すように、下段ガード10が水平姿勢になるとストッパ部材13が運転室5のフレーム5bに当接し、下段ガード10の傾動が規制されると共に上段ガード9の移動も規制されて開放位置への切換が完了し、上段及び下段ガラス6,7は前方に露出する。開放位置の下段ガード10は水平姿勢に保持されるため、下段ガード10上には作業者が足場として利用可能なスペースが形成されており、一方、開放位置の上段ガード9は、運転室5から前方に所定距離だけ離間した位置で略直立姿勢に保持されている。よって、作業者は運転室5のドア5aから回り込んで下段ガード10上に乗り、ガラス拭き掃除やワイパブレード交換などの必要なメインテナンスを実施可能となる。
【0021】
ここで、例えば本実施形態の油圧ショベルでは、開放位置にあるときの下段ガード10が地上より1.5mほどの高さに位置することから、特に高所を嫌う作業者にとって下段ガード10上での作業は非常に緊張感を強いられるものとなる。このとき、作業者の背面で直立する上段ガード9は作業者の転落防止という実効的な役割を果たすだけでなく、転落が防止されていることを作業者に認識させることにより高所での作業による作業者の緊張感を和らげる作用を奏する。よって、作業者は心理的な負担を軽減されて、下段ガード10上で安心して効率よくメインテナンスを実施することができる。
また、開放位置の上段ガード9は作業者の手摺りとしても利用できる。例えば下段ガラス7を拭くためには作業者が下段ガード10上でかがむ必要が生じるが、このようなとき、作業者は上段ガード9の一側を把持しながら容易に姿勢変更することができる。
【0022】
なお、メインテナンス作業の完了後に上段及び下段ガード9,10を防護位置に復帰させるには、まず、把手23を把持して上段ガード9を後方斜め上方に向けて操作しながら、スライドロックバー19の操作部19cを把持して左方にスライド操作する。このときにも上段及び下段ガード9,10の重量に対してシリンダ24の付勢力が対抗することから、作業者の操作力をほとんど要することなく防護位置への切換が可能となる。そして、防護位置への切換が完了した後に操作部19cを離すと、バネ22の付勢力によりスライドロックバー19のロックピン19aがロックブラケット21のロック孔21a内に挿入され、上段及び下段ガード9,10は防護位置に保持される。
【0023】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、建設機械として油圧ショベルを対象としたが、運転室5の前面ガラスをガードにより保護する必要がある機械であれば、これに限るものではなく、例えばクレーンや道路機械に適用してもよい。
また、上記実施形態では、下段ガード10の下端面に設けたストッパ部材13を運転室5のフレーム5bに当接させることにより保持手段として機能させたが、これに限るものではない。例えばフレーム5b側に凸部を形成し、この凸部により下段ガード10の傾動を規制して水平姿勢に保持するようにしてもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、スライドロックバー19に一対のロックピン19aを設け、スライドロックバー19のスライド操作により左右のロック孔21aへの挿入及び離脱を同時に行うようにしたが、これに限るものではない。例えばスライドロックバー19に代えて、左右両側にロックピン19aをスライド可能にそれぞれ設け、これらのロックピン19aを個別に操作するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、運転室5の前面ガラスを上段ガラス6と下段ガラス7とに分割し、それぞれに対応して上段及び下段ガード9,10を配設したが、これに限るものではない。例えば1枚の前面ガラスの上部及び下部と対応するように上段及び下段ガード9,10を配設してもよい。
【符号の説明】
【0025】
5 運転室
6 上段ガラス
7 下段ガラス
9 上段ガード
10 下段ガード
13 ストッパ部材(保持手段)
16 連動アーム
19 スライドロックバー
19a ロックピン
19c 操作部
21 ロックブラケット
21a ロック孔
22 バネ(付勢手段)
23 把手
24 シリンダ(アシスト手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室の前面ガラスの前方に、該前面ガラスを覆って保護すると共に前方視認が可能なガードを配設した建設機械の運転室ガラスのガード構造において、
下端が前記運転室の下部に対して傾動可能に連結され、前記前面ガラスの下部を覆う防護位置と、保持手段により略水平姿勢に保持されて前記前面ガラスの下部を前方に露出させる開放位置との間で、前記下端を中心とした傾動により切り換えられる下段ガードと、
前記下段ガードの上端に対して相対回動可能に連結されると共に、上部が連動アームを介して前記運転室側と連結され、前記前面ガラスの上部を覆う防護位置と、略直立姿勢で前記運転室から前方に離間して前記前面ガラスの上部を前方に露出させる開放位置との間で、前記下部ガードの傾動に伴って前記運転室側を中心として前記連動アームを回動させながら切り換えられる上段ガードと、
前記上段ガード及び下段ガードを防護位置に固定するロック手段と
を備えたことを特徴とする建設機械の運転室ガラスのガード構造。
【請求項2】
前記運転室側に一端が連結され、他端が前記連動アームに連結されて、該連動アームを介して前記上段ガードを常に前記防護位置側に付勢するアシスト手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の運転室ガラスのガード構造。
【請求項3】
前記ロック手段は、
前記運転室の前面上部の左右両側に設けられ、それぞれロック孔を有する一対のロックブラケットと、
前記上段ガードの上部に左右方向に架設されて一端に設けられた操作部によりスライドし、該上段ガードが前記防護位置にあるときにスライドに伴って一対のロックピンを前記ロックブラケットの両ロック孔に対して挿入及び離脱させるスライドロックバーと、
前記ロックピンを前記ロック孔に挿入させる方向に前記スライドロックバーを付勢する付勢手段と
から構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の運転室ガラスのガード構造。
【請求項4】
前記上段ガード及び下段ガードは、
前記前面ガラスの上部または下部と対応する枠状のフレームと、
前記フレーム内に縦横に配設された格子材と
から構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の建設機械の運転室ガラスのガード構造。
【請求項5】
前記上段ガードの一側に把手が設けられたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の建設機械の運転室ガラスのガード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−162932(P2012−162932A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24791(P2011−24791)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】