説明

建設機械

【課題】 空調ユニットを収容するトレイを設け、このトレイにドレンホースを接続することにより、ホースの接続や引回しを簡略化する。
【解決手段】 運転席17の床板13にはトレイ20を設け、そのホース接続口33にはドレンホース34を接続する。また、トレイ20内には、ドレンの流出口36Fが複数箇所に設けられた空調ユニット36と、その送風口36Eに接続されるダクト37とを収容する。これにより、空調ユニット36の各流出口36Fにドレンホース34をそれぞれ接続する必要がなくなり、トレイ20には、流出口36Fの個数等に関係なく、一定本数のドレンホース34を接続すればよいので、ホースの接続や引回し作業を効率よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等として好適に用いられ、空調ユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としては、車体に空調装置(エアコンディショナー)を搭載し、この空調装置によって運転席の周囲に冷風、温風等の調和空気を供給するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−171328号公報
【特許文献2】特開2002−121769号公報
【0004】
この種の従来技術による建設機械は、作業装置が設けられた自走可能な車体を有し、車体のキャブ内にはオペレータが着座する運転席が配設されている。そして、運転席の下側にはオペレータが足を乗せる床板が設けられ、床板上には、空調装置の室内機を構成する空調ユニットが配設されている。この空調ユニットは、例えば送風ファン、エバポレータ、ヒータコア等を一体化したものであり、車両のエンジン側に取付けられたコンプレッサ、凝縮機等の室外機と共に空調装置を構成している。
【0005】
ここで、空調ユニットの作動時には、エバポレータ等の低温な部位で空気中の水分が凝結し、水滴等を生じ易い。このため、従来技術では、空調ユニットにドレンホースを接続し、このドレンホースをキャブの床板を貫通して外部に延ばすことにより、空調ユニット内で凝結した水分(ドレン)をドレンホースによって外部に排出する構成としている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献3】実開平7−37730号公報
【0007】
また、建設機械においては、例えば傾斜地等で作業を行うときに、車体が傾いた状態となることがある。このため、従来技術では、空調ユニットの複数箇所にドレンの流出口を設け、これらの流出口にドレンホースをそれぞれ接続することにより、車体が傾いた場合でも何れかの流出口からドレンを排出できる構成としたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術では、空調ユニットに複数箇所の流出口を設け、これらの流出口にドレンホースをそれぞれ接続する構成としている。しかし、建設機械の組立時には、空調ユニットの各流出口にドレンホースをそれぞれ接続し、これらのホースをキャブの床板等に挿通して固定しなければならず、このようなドレンホースの接続作業と固定作業とを流出口の個数分だけ行う必要がある。
【0009】
このため、従来技術では、空調ユニットに関連した組立作業に手間がかかり、生産性が低下するという問題がある。また、流出口の個数に応じてドレンホースの接続箇所が増えるため、例えばホースの組付忘れや組付後の脱落等が生じ易くなり、これによってキャブ内にドレンが漏れる虞れもある。
【0010】
さらに、ドレンホース等の部品点数が増加し、ホースを含めて空調ユニット全体の構造が複雑化し易いため、例えば小型の建設機械等においては、キャブ内の限られたスペースに空調ユニットを配置し難くなるという問題もある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ドレンホース等の部品点数を減らして空調ユニット全体の構造を簡略化でき、組立作業を効率よく行うことができると共に、生産性や信頼性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために本発明は、作業装置が設けられた自走可能な車体と、該車体に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席の前側に設けられ該運転席に着座したオペレータが足を乗せる床板とを備えてなる建設機械に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、床板には下向きに窪んだ凹窪部を有するトレイを設け、該トレイには調和空気を供給する空調ユニットを収容し、かつトレイには空調ユニットから流出するドレンを外部に排出するドレンホースを設ける構成としたことにある。
【0014】
また、請求項2の発明によると、床板にはオペレータが足を乗せる部位に開口部を設け、トレイは該開口部に取付ける構成としている。
【0015】
また、請求項3の発明によると、トレイの底部側には、空調ユニットを支持すると共に斜め下向きに傾斜した傾斜面部を設け、該傾斜面部の下部側にドレンホースを接続する構成としている。
【0016】
さらに、請求項4の発明によると、床板と運転席を支持する運転席台座とをフロアベースとして一体に構成としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、運転席の床板にトレイを配設でき、その凹窪部内に空調ユニットを収容することができる。そして、空調ユニットから凝結水等の水分(ドレン)が流出するときには、このドレンをトレイによって受けることができ、トレイ内のドレンをドレンホースによって外部の適切な位置に排出することができる。これにより、例えば建設機械の仕様等に応じて空調ユニットの複数箇所にドレンの流出口を設けたとしても、トレイには、流出口の個数に関係なく、一定本数のドレンホースを設ければよいから、ドレンホース等の部品点数を削減することができる。
【0018】
また、建設機械の組立時には、ドレインホースをトレイの外側等に取付けるだけでよくなり、複数のホースを床板等に挿通して空調ユニットに取付ける必要がないので、ドレンホースを含めて空調ユニット全体の構造や床板の構造を簡略化でき、ホースの接続、引回し等に関連した作業を効率よく行うことができる。そして、例えば小型の建設機械等であっても、空調ユニット等を狭いスペースにコンパクトに配置することができる。
【0019】
また、ドレンホースの本数を少なくしてホースの接続箇所を必要最低限に抑えることができるので、その接続状態を管理し易くなり、ホースの組付忘れや脱落等によるドレンの漏れを確実に防止することができる。また、例えばドレンホースの交換等を行う場合には、トレイを床板から取外して持上げることにより、ホースの着脱作業を容易に行うことができる。さらに、例えば空調ユニットの形状、流出口の個数等の仕様が変更となったり、異なる仕様の空調ユニットを車両に搭載する場合でも、トレイやドレンホースの部品形状、個数等を変更する必要がなく、これらを共通の部品として使用することができる。このように、トレイとドレインホースとを用いることにより、生産性や信頼性を向上させることができ、またホース交換時等のメンテナンス性を高めることができる。
【0020】
また、請求項2の発明によれば、床板の開口部にトレイを取付けることができ、このトレイによって空調ユニットを床板の下側に収容することができる。これにより、例えば小型の建設機械等であっても、キャブ内の限られたスペースに空調ユニットをコンパクトに配置でき、キャブ内のスペースを有効に活用することができる。
【0021】
また、請求項3の発明によれば、空調ユニットからトレイの傾斜面部に対して何れの位置でドレンが流出した場合でも、このドレンを傾斜面部に沿ってドレンホースの接続位置に集めることができる。これにより、トレイ内のドレンをドレンホースから効率よく排出でき、トレイ内にドレンが溜まるのを確実に防止することができる。
【0022】
さらに、請求項4の発明によれば、トレイを配置する床板と、運転席を支持する運転席台座とをフロアベースとして一体に構成できるので、建設機械の組立作業を行うときには、床板と運転席台座とをフロアベースとしてサブアッセンブリ状態で扱うことができ、組立時の部品点数を減らして作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図中、1は小型の油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行なう作業装置4とによって大略構成されている。
【0025】
また、上部旋回体3は、支持構造体として形成された旋回フレーム5と、該旋回フレーム5上に搭載されたエンジン、油圧ポンプ(いずれも図示せず)等の機器を覆う外装カバー6と、旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイト7と、旋回フレーム5の左側に設けられた後述のキャブ11、フロアベース12、運転席17、トレイ20、ドレンホース34、空調ユニット36、ダクト37、床板カバー39等とによって構成されている。
【0026】
11は旋回フレーム5の左側に設けられたキャブで、該キャブ11は、運転席17の周囲を覆うことにより、オペレータが各種操作を行なう運転室を画成するものである。そして、キャブ11は、図1、図2に示す如く、例えば前面部11A、後面部11B、左側面部11C、右側面部11D及び天井面部11Eによって箱形状に形成され、その下部側には、後述のフロアベース12が設けられている。
【0027】
また、キャブ11は、その前部側が旋回フレーム5に回動可能に連結され、後部側が旋回フレーム5に対して取付け,取外し可能に連結されている。そして、例えば車両のメンテナンス作業等を行うときには、図1中に仮想線で示す如く、キャブ11の前部側を支点として後部側を上向きに回動(チルト)させることにより、エンジン等の機器を露出できる構成となっている。
【0028】
12はキャブ11の下部側に設けられたフロアベースで、該フロアベース12は、例えば複数の鋼板、鋼材等を溶接することにより一体に形成され、図5、図6に示す如く、後述の床板13、運転席台座15、建屋取付板16等によって構成されている。
【0029】
13はフロアベース12の前部側を構成する床板で、該床板13は、運転席17に着座したオペレータが後述の床板カバー39等を介して足を乗せるものである。そして、床板13は、図3、図4に示す如く、例えば水平方向に延びる板材等により形成され、運転席17の前側に設けられている。また、床板13の前部側は、後述の走行用レバー・ペダル19等が取付けられるレバー・ペダル取付板13Aとなり、このレバー・ペダル取付板13Aは、旋回フレーム5の前部側に取付けられている。
【0030】
また、床板13には、図5ないし図7に示す如く、レバー・ペダル取付板13Aの後側に位置してオペレータが足を乗せる部位に略四角形状のトレイ用開口部14が設けられ、このトレイ用開口部14には後述のトレイ20が嵌合されている。
【0031】
15は床板13の後部側に固着して設けられた略箱形状の運転席台座で、該運転席台座15は、キャブ11の後部下側を閉塞する位置で旋回フレーム5に取付けられ、運転席17を支持している。また、運転席台座15の後部側には、例えばキャブ11の一部等が取付けられる建屋取付板16が一体に設けられている。
【0032】
17はキャブ11内に位置して運転席台座15上に設けられた運転席で、該運転席17は、オペレータが着座するものであり、その左,右両側には、図2、図3に示す如く、作業装置4を操作するための操作レバー18が設けられている。また、運転席17の前側には、下部走行体2を走行させる走行用レバー・ペダル19等が設けられている。
【0033】
20は床板13のトレイ用開口部14に設けられたトレイを示し、該トレイ20は、図8、図9に示す如く、後述の空調ユニット36とダクト37とを床板カバー39との間に収容し、空調ユニット36から流出する水分(ドレン)を受承するものである。
【0034】
ここで、トレイ20は、例えば下向きに窪んだ有底の箱状体として形成され、上向きに開口している。そして、トレイ20は、床板13のトレイ用開口部14に嵌合されることにより、このトレイ用開口部14を閉塞し、空調ユニット36とダクト37とを床板13のほぼ下側となる位置に収容すると共に、例えばねじ止め等の手段によって床板13に着脱可能に取付けられている。
【0035】
また、トレイ20は、図7に示す如く、後述のユニット側底面部21、ダクト側底面部22、前面部24、後面部25、左側面部26、右側面部27、フランジ29,30,31,32、ホース接続口33等によって構成されている。
【0036】
21はダクト側底面部22等と共にトレイ20の底部を構成するユニット側底面部で、該ユニット側底面部21は、例えば略四角形の平板状に形成され、床板13から下向きに窪んだ位置に配設されると共に、空調ユニット36を下側から支持している。
【0037】
また、ユニット側底面部21は、図9に示す如く、例えば後部側から前部側に向けて斜め下向きに傾斜し、水平方向に対して傾斜角θをもつ傾斜面部となっている。これにより、空調ユニット36から流出するドレンを、自重によってユニット側底面部21の前部側(下部側)に集めることができ、この部位に設けられた後述のホース接続口33からドレンを円滑に排出することができる。
【0038】
22はトレイ20の底部側に位置して後述のダクト37を支持するダクト側底面部で、該ダクト側底面部22は、図8に示す如く、例えばユニット側底面部21の右端に接続され、ユニット側底面部21よりも上側の位置でほぼ水平方向に延びると共に、床板13から下向きに窪んだ位置に配設されている。そして、ユニット側底面部21とダクト側底面部22との間には、上,下方向に延びる段差部23が形成されている。
【0039】
24はトレイ20の前部側を構成する前面部で、該前面部24は、図7に示す如く、ユニット側底面部21の前端に立設されている。また、ユニット側底面部21の後端には後面部25が立設され、左端には左側面部26が立設されている。さらに、ダクト側底面部22の右端には右側面部27が立設されている。
【0040】
そして、これらの前面部24、後面部25、左側面部26と、段差部23とは、ユニット側底面部21を四方から取囲んで配置され、ユニット側底面部21と共に皿状に窪んだ有底の凹窪部28を形成している。この凹窪部28は、空調ユニット36のドレンを周囲に漏らすことなく収容する受皿となっている。
【0041】
29は前面部24の上端に設けられた前フランジ29で、該前フランジ29は、前面部24からトレイ20の外側に向けてほぼ水平に突出している。また、トレイ20の後面部25、左側面部26、右側面部27には、前面部24とほぼ同様に、外向きに突出する後フランジ30、左フランジ31、右フランジ32が設けられている。これらのフランジ29,30,31,32は、トレイ20を床板13のトレイ用開口部14に嵌合したときに、トレイ用開口部14を取囲む位置で床板13の上面に当接し、この状態で左フランジ31と右フランジ32とは、図8に示す如く、床板13にねじ止めされている。
【0042】
33はユニット側底面部21の下部側(前部側)に設けられた例えば2箇所のホース接続口で、該各ホース接続口33は、図7、図9に示す如く、後述のドレンホース34を接続する部位であり、互いに左,右方向に間隔をもって凹窪部28に開口している。
【0043】
34は基端側がトレイ20の各ホース接続口33にそれぞれ接続された例えば2本のドレンホースで、該各ドレンホース34は、例えば可撓性を有するホース等からなり、その先端側は、キャブ11の外部でドレンを排出するのに適切な位置に固定されている。
【0044】
そして、ドレンホース34は、空調ユニット36の各流出口36Fからトレイ20内に流出するドレンをキャブ11の外部に導き、これを適切な位置に排出するものである。従って、例えば空調ユニット36に多数の流出口36Fを設けたとしても、例えば2本のドレンホース34のみでドレンの排出を行うことができる。また、35はトレイ20の左フランジ31と右フランジ32とを床板13に取付ける複数本の取付ねじである。
【0045】
36は床板カバー39の下側に位置してトレイ20内に収容された空調ユニットで、該空調ユニット36は、油圧ショベル1に搭載された空調装置の室内機を構成するものであり、エンジン側に取付けられたコンプレッサ、凝縮機(いずれも図示せず)等の室外機と共に空調装置を構成している。ここで、空調ユニット36は、図8に示す如く、単一のボックス形状に形成されている。
【0046】
また、空調ユニット36は、トレイ20のユニット側底面部21上に載置された略箱形状の本体ケース36Aと、該本体ケース36A内の左側に設けられた送風ファン36Bと、該送風ファン36Bの下流側に位置して本体ケース36A内に設けられたエバポレータ36Cと、該エバポレータ36Cの下流側に設けられたヒータコア36Dと、本体ケース36Aの右側に設けられ、調和空気を送風する送風口36Eと、本体ケース36A内に発生するドレンを流出させる例えば4箇所の流出口36F(図7参照)とによって大略構成されている。
【0047】
そして、空調ユニット36は、送風ファン36Bを回転させることによって本体ケース36A内に空気を吸込み、この空気をエバポレータ36Cで冷やし、またはヒータコア36Dで温めることによって調和空気とした後に、この調和空気を送風口36Eから後述のダクト37内に送風するものである。
【0048】
また、ドレン用の流出口36Fは、例えば本体ケース36Aの四隅、即ち前面部の左,右両側と後面部の左,右両側とにそれぞれ設けられている。このため、例えば傾斜地等で車体が何れかの方向に傾いていたとしても、空調ユニット36内のドレンを、各流出口36Fのうち傾いた状態で下側となる流出口36Fからトレイ20の凹窪部28内に流出させることができ、このドレンをドレンホース34によって外部に排出することができる。
【0049】
37は空調ユニット36に付設されたダクトで、該ダクト37は、図8に示す如く、一端側が空調ユニット36の送風口36Eに接続され、空調ユニット36と一緒にトレイ20に収容されると共に、そのダクト側底面部22上に載置されている。また、ダクト37の他端側は、図3に示す如く、運転席17の右前側で床板13上に設けられたダクトカバー38の内部に延び、このダクトカバー38に設けられた例えば3箇所の吹出口38Aに他のダクト(図示せず)等を用いて接続されている。
【0050】
そして、ダクト37は、空調ユニット36の送風口36Eからダクトカバー38の各吹出口38Aに向けて調和空気を送風する。これにより、空調ユニット36の作動時には、各吹出口38Aからキャブ11内に調和空気が吹出す構成となっている。
【0051】
また、図3において、39はトレイ20、空調ユニット36、ダクト37等を上側から覆う床板カバーで、該床板カバー39は、フロアマット(図示せず)等と共に床板13上に着脱可能に設けられている。ここで、床板カバー39は、空調ユニット36を可及的に薄型に構成することにより、床板13から僅かに突出する高さに形成されている。そして、床板カバー39は、運転席17に着座したオペレータが足を乗せやすいように、凹凸のない平坦な床面を形成しているものである。
【0052】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その組立及び作動について説明する。
【0053】
まず、油圧ショベル1の組立時には、トレイ20の各ホース接続口33にドレンホース34を接続し、これらを床板13のトレイ用開口部14に嵌合すると共に、トレイ20を床板13にねじ止めする。次に、空調ユニット36とダクト37とをトレイ20内に収容し、これらの上側に床板カバー39を配置することにより、空調ユニット36、ドレンホース34等の組付作業を行うことができる。
【0054】
そして、油圧ショベル1の運転時には、運転席17に着座したオペレータが操作レバー18、走行用レバー・ペダル19等を操作する。これにより、オペレータは、車体を走行させたり、上部旋回体3を旋回させることができると共に、作業装置4を作動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0055】
また、オペレータが空調装置のスイッチを入れたときには、空調ユニット36のエバポレータ36Cやヒータコア36Dによって冷風と温風とが調和された調和空気が発生し、この調和空気は、ダクト37等を経由してダクトカバー38の各吹出口38Aからキャブ11内に吹出すようになるので、キャブ11内を適度な温度に調整することができる。
【0056】
また、空調ユニット36の作動時には、エバポレータ36C等の低温な部位で空気中の水分が凝結し、本体ケース36A内でドレンとなる。このドレンは、例えば車体の傾き等に応じて4箇所のうち何れかの流出口36Fからトレイ36の凹窪部28内に流出し、傾斜したユニット側底面部21に沿ってホース接続口33の位置に集められるので、空調ユニット36のドレンをドレンホース34から円滑に排出することができる。
【0057】
かくして、本実施の形態では、床板13のトレイ用開口部14には、空調ユニット36を収容するトレイ20を設け、トレイ20には、例えば2本のドレンホース34を設ける構成としたので、トレイ20によって空調ユニット36とダクト37とを床板13のほぼ下側に収容することができる。これにより、例えば小型の油圧ショベル1等であっても、キャブ11内の限られたスペースに空調ユニット36とダクト37とをコンパクトに配置でき、キャブ11内のスペースを有効に活用することができる。
【0058】
そして、空調ユニット36からドレンが流出するときには、このドレンをトレイ20の凹窪部28によって受けることができ、トレイ内のドレンをドレンホース34によって外部の適切な位置に排出することができる。
【0059】
これにより、例えば4箇所の流出口36Fを備えた空調ユニット36を用いる場合でも、トレイ20には、流出口36Fの個数に関係なく、一定本数のドレンホース34を設ければよいから、ドレンホース34等の部品点数を削減することができる。
【0060】
また、油圧ショベル1の組立時には、例えば複数のホースを床板13等に挿通して空調ユニット36の各流出口36Fにそれぞれ接続するような面倒な作業が不要となり、ドレンホース34をトレイ20のホース接続口33に外側から取付けるだけでよいので、ドレンホース34を含めて空調ユニット36全体の構造や床板13の構造を簡略化でき、ホースの接続、引回し等に関連した作業を効率よく行うことができる。そして、小型の油圧ショベル1等であっても、限られたスペースにドレンホース34、空調ユニット36等をコンパクトに配置することができる。
【0061】
また、ドレンホース34の本数を少なくしてホースの接続箇所を必要最低限に抑えることができるので、その接続状態を管理し易くなり、ホースの組付忘れや組付後の脱落等によるドレンの漏れを確実に防止することができる。
【0062】
また、例えばドレンホース34の交換等を行う場合には、取付ねじ35を弛め、トレイ20を床板13から取外して持上げることにより、ホースの着脱作業を容易に行うことができる。さらに、例えば空調ユニット36の形状、流出口36Fの個数等の仕様が変更となったり、異なる仕様の空調ユニット36を車両に搭載する場合でも、トレイ20やドレンホース34の部品形状、個数等を変更する必要がなく、これらを共通の部品として使用することができる。
【0063】
このように、床板13に対して着脱可能なトレイ20と、このトレイ20に接続するドレンホース34とを用いることにより、生産性や信頼性を向上させることができ、また、ホース交換時等のメンテナンス性を高めることができる。
【0064】
また、トレイ20には、例えば後部側から前部側に向けて斜め下向きに傾斜したユニット側底面部21を設け、該ユニット側底面部21の前部側にホース接続口33を設けたので、例えば車体の傾き等に応じて空調ユニット36の何れの流出口36Fからユニット側底面部21にドレンが流出した場合でも、このドレンをユニット側底面部21に沿ってホース接続口33の位置に集めることができる。これにより、トレイ20内のドレンをドレンホース34から効率よく排出でき、トレイ内にドレンが溜まるのを確実に防止することができる。
【0065】
さらに、トレイ20には、ダクト側底面部22を設けたので、空調ユニット36と、その調和空気を送風するダクト37とをトレイ20に一緒に収容でき、これらを床板13の下側等にコンパクトに配置することができる。
【0066】
一方、トレイ20を配置する床板13と、運転席17を支持する運転席台座15と、キャブ11を取付ける建屋取付板16とをフロアベース12として一体に構成したので、油圧ショベル1の組立作業を行うときには、これらの床板13、運転席台座15及び建屋取付板16をフロアベース12としてサブアッセンブリ状態で扱うことができ、組立時の部品点数を減らして作業性を高めることができる。
【0067】
なお、前記実施の形態では、トレイ20に2本のドレンホース34を接続する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばトレイに1本のドレンホースを接続したり、3本以上のドレンホースを接続する構成としてもよい。
【0068】
また、実施の形態では、床板13、運転席台座15及び建屋取付板16をフロアベース12として一体に構成する場合を例に挙げて述べた。しかし、本発明はこれに限らず、これら3個の部品のうち1個または2個の部品と残りの部品とをそれぞれ別個に形成して組立てる構成としてもよく、さらには3個の部品をそれぞれ別個に構成してもよい。
【0069】
また、実施の形態では、建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げて述べた。しかし、本発明はこれに限らず、例えば中型、大型の油圧ショベルや、油圧クレーン、ホイルローダ等を含めて各種の建設機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】油圧ショベルのキャブ内を示す斜視図である。
【図3】キャブ内の運転席、床板等を示す斜視図である。
【図4】図3中の空調ユニット等を床板カバーを取外した状態で示す斜視図である。
【図5】フロアベースを単体で示す斜視図である。
【図6】トレイ、空調ユニット等をフロアベースから取外した状態で示す分解斜視図である。
【図7】図6中の要部を拡大して示す分解斜視図である。
【図8】トレイ等を図4中の矢示VIII−VIII方向からみた断面図である。
【図9】トレイ等を図8中の矢示IX−IX方向からみた断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
11 キャブ
12 フロアベース
13 床板
14 トレイ用開口部(開口部)
15 運転席台座
17 運転席
20 トレイ
21 ユニット側底面部(傾斜面部)
22 ダクト側底面部
23 段差部
24 前面部
25 後面部
26 左側面部
27 右側面部
28 凹窪部
29,30,31,32 フランジ
33 ホース接続口
34 ドレンホース
36 空調ユニット
37 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置が設けられた自走可能な車体と、該車体に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席の前側に設けられ該運転席に着座したオペレータが足を乗せる床板とを備えてなる建設機械において、
前記床板には下向きに窪んだ凹窪部を有するトレイを設け、該トレイには調和空気を供給する空調ユニットを収容し、かつ前記トレイには前記空調ユニットから流出するドレンを外部に排出するドレンホースを設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記床板にはオペレータが足を乗せる部位に開口部を設け、前記トレイは該開口部に取付ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記トレイの底部側には、前記空調ユニットを支持すると共に斜め下向きに傾斜した傾斜面部を設け、該傾斜面部の下部側に前記ドレンホースを接続する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記床板と前記運転席を支持する運転席台座とをフロアベースとして一体に構成してなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−2479(P2006−2479A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181427(P2004−181427)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】