説明

建設機械

【課題】リーダに2個の従動側スプロケットを独立して回転可能に設けるとともに、一方の従動側スプロケットの回転数を検出するロータリーエンコーダもまとめて配置する。
【解決手段】作業装置昇降手段6は、リーダ4の一端に配置した一対の油圧モータ9と、各油圧モータの各出力軸に結合した一対の駆動側スプロケット10と、リーダの他端に回転可能に設けたスプロケット軸16と、スプロケット軸に設けた一対の従動側スプロケット11a,11bと、各駆動側スプロケットと各従動側スプロケットとにそれぞれ掛け渡されてスクリュー駆動装置に連結する一対のチェーン12と、スプロケット又はスプロケット軸の回転数を検出するロータリーエンコーダ21とを備えている。一方の従動側スプロケット11aはスプロケット軸と一体に回転可能とし、他方の従動側スプロケット11bはスプロケット軸に対して回転可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機や杭打機などの建設機械に関し、詳しくは、一対の油圧モータにより駆動される2本のチェーンを用いてスクリュー駆動装置やオーガ駆動装置などの作業装置をリーダに沿って昇降させる作業装置昇降手段を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良機や杭打機などの建設機械において、リーダの上部に従動側スプロケットを、下部に油圧モータにより駆動される駆動側スプロケットをそれぞれ設け、前記従動側スプロケットと駆動側スプロケットとに掛け渡したチェーンの両端をスクリュー駆動装置やオーガ駆動装置などの作業装置に連結し、油圧モータによって前記チェーンを駆動することにより、リーダに沿って作業装置を昇降させるチェーン式昇降手段が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、作業装置の昇降位置を計測するための機器としては、前記スプロケットの回転数を検出するロータリーエンコーダが一般的に用いられており(例えば、特許文献2参照。)、通常は、前記油圧モータの出力軸とロータリーエンコーダの検出軸とを接続するようにしている。さらに、油圧モータやチェーンなどの作業装置昇降手段を2組設けて作業装置の昇降力(移動力)を増大させた杭打機も提案されている。(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平8−269964号公報
【特許文献2】特開平8−74251号公報
【特許文献3】特開2000−282464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
作業装置の昇降力(移動力)を増大させるために油圧モータやチェーンなどの作業装置昇降手段を2組設ける場合、前記特許文献3に記載された杭打機では、ガイドフレームを門形に形成し、左右の縦フレームの下部に油圧モータをそれぞれ配置するとともに、上部の横フレームに回転自在に設けたスプロケット軸の両端にスプロケットをそれぞれ固設しているため、油圧モータの部分にロータリーエンコーダを容易に組み込むことはできるが、門形のガイドフレームは、通常のリーダに比べて大幅なコストアップとなる。
【0004】
一方、1本のリーダに2個の油圧モータを設ける際には、作業時の安定性や保守性などを考慮すると、リーダの下部に2個の油圧モータを出力軸同士を対向させた状態で配置することが好ましい。しかし、このように出力軸同士を対向させて2個の油圧モータを配置すると、油圧モータの出力軸とロータリーエンコーダの検出軸とを接続することがスペース的にも困難になるため、リーダ上部の従動側スプロケットの回転数をロータリーエンコーダで検出することになる。
【0005】
従動側スプロケットの回転数をロータリーエンコーダで検出する場合、従動側スプロケットと一体に回転するスプロケット軸にロータリーエンコーダの検出軸を接続することが考えられるが、前記特許文献3に記載されるように、スプロケット軸に2個の従動側スプロケットを固設して同時に回転するように形成すると、2本のチェーンの長さが不揃いになったときに、短い方のチェーンに過大な負荷が掛かってチェーンが切断してしまうことがある。このため、従動側スプロケットをそれぞれ別のスプロケット軸に設けて両スプロケットが独立して回転できるように形成しなければならない。さらに、スプロケット軸にロータリーエンコーダの検出軸を接続しなければならないが、リーダ上部の限られたスペース内に2本のスプロケット軸やこれらを支持する複数の軸受を設けることは困難であり、リーダの形状や構造を変更する必要が生じたり、リーダと作業装置との組み合わせがアンバランスになったりしてコストアップの要因となる。
【0006】
そこで本発明は、リーダの限られたスペース内に2個の従動側スプロケットを独立して回転可能に設けるとともに、一方の従動側スプロケットの回転数を検出するロータリーエンコーダもまとめて配置することができる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、作業機のリーダに沿って昇降可能に設けられた作業装置と、該作業装置をチェーンを介して昇降させる作業装置昇降手段とを備えた建設機械において、前記作業装置昇降手段は、前記リーダの一端に出力軸を対向配置した一対の油圧モータと、各油圧モータの各出力軸にそれぞれ結合した一対の駆動側スプロケットと、前記リーダの他端に回転可能に設けられたスプロケット軸と、該スプロケット軸に設けられた一対の従動側スプロケットと、前記各駆動側スプロケットと前記各従動側スプロケットとにそれぞれ掛け渡されるとともに前記作業装置に連結された一対のチェーンと、前記各スプロケットの一つ又は前記スプロケット軸の回転数を検出するロータリーエンコーダとを備え、前記一対の従動側スプロケットは、一方の従動側スプロケットが前記スプロケット軸に固設され、他方の従動側スプロケットが前記スプロケット軸に対して回転可能に設けられていることを特徴とし、前記一方の従動側スプロケットは、キー又はスプラインによって前記スプロケット軸に固定され、前記他方の従動側スプロケットは、ベアリング又はブッシュを介して前記スプロケット軸に取り付けられると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械によれば、2個一対の従動側スプロケットが独立して回転可能に設けられているため、一対のチェーンの長さが不揃いになった場合でも、各チェーンに掛かる負荷を均等にすることができる。さらに、一方の従動側スプロケットはスプロケット軸と一体に回転するため、スプロケット軸とロータリーエンコーダの検出軸とを接続することで従動側スプロケットの回転数、すなわち、作業装置の昇降位置を確実に計測することができる。また、スプロケット軸は2個の軸受で回転可能に支持することができるので、リーダ上部の限られたスペース内に容易に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図5は建設機械として地盤改良機に本発明を適用した一形態例を示すもので、図1は地盤改良機の要部正面図、図2はリーダ上部側の要部断面図、図3は図2のIII-III断面図、図4は地盤改良機の要部側面図、図5は地盤改良機の側面図である。
【0010】
地盤改良機1は、作業機2の前部に設けられたフロントブラケット3にリーダ4が起伏可能に装着され、該リーダ4には、該リーダ4に沿って昇降する作業装置であるスクリュー駆動装置5と、該スクリュー駆動装置5を昇降させるための作業装置昇降手段6とが設けられている。さらに、リーダ4の下部にはスクリュー駆動装置5に装着されるスクリューシャフト5aの下部を保持するスクリューガイド7が、リーダ4の上部にはトップシーブ8がそれぞれ設けられている。
【0011】
前記作業装置昇降手段6は、前記リーダ4の下部両側面に減速装置からの出力軸同士を一直線上に位置させて対向配置された一対の減速機内蔵式の油圧モータ9,9と、前記各出力軸にそれぞれ結合した一対の駆動側スプロケット10,10と、前記リーダ4の上部に配置された一対の従動側スプロケット11a,11bと、各駆動側スプロケット10,10と各従動側スプロケット11a,11bとにそれぞれ掛け渡されるとともに、両端がスクリュー駆動装置5に連結された一対のチェーン12,12とを備えている。
【0012】
駆動側スプロケット10,10は、各出力軸とそれぞれ一体に回転するように設けられるとともに、両駆動側スプロケット10,10同士の間には、駆動側スプロケット10,10の抜け止めとなる環状部材13が回転可能な状態で挟着されている。この駆動側スプロケット10,10は、独立して回転可能な状態になっているため、チェーン12,12の長さが不揃いになった場合でも、両方のチェーン12,12に確実に駆動力を伝達することができる。
【0013】
従動側スプロケット11a,11bは、リーダ4の上部に設けられた一対の軸受14,14にベアリング15,15を介して回転可能に支持された1本のスプロケット軸16に、前記駆動側スプロケット10,10と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0014】
図2において右側に示される一方の従動側スプロケット11aは、スプロケット軸16の大径部16aに取り付けられ、該大径部16aの外周面と従動側スプロケット11aの内周面とにそれぞれ設けられたキー溝16b,11cにキー17を挿入することにより、あるいは、両者をセレーション結合させることにより、スプロケット軸16と一体に回転するように形成されている。図2において左側に示される他方の従動側スプロケット11bは、該従動側スプロケット11bの内周面とスプロケット軸16の外周面との間にベアリング18を介装し、スプロケット軸16に対して回転可能に取り付けられている。また、スプロケット軸16の外周には、従動側スプロケット11a,11bの軸線方向位置を規制するカラー19a,19b,19cが設けられ、内部には各ベアリング15,15,18にグリスなどの潤滑剤を注入する注入路16cが設けられている。
【0015】
さらに、従動側スプロケット11a側の軸受14の外面には、筒状のブラケット20を介してスプロケット軸16の回転数、すなわち、従動側スプロケット11aの回転数を検出するためのロータリーエンコーダ21が設けられており、該ロータリーエンコーダ21の検出軸21aは、スプロケット軸16の一端から軸線方向に突設した連結軸16dにカップリング22を介して接続されている。
【0016】
このように、一方の従動側スプロケット11aをスプロケット軸16に固設して従動側スプロケット11aとスプロケット軸16とが一体に回転するように形成し、他方の従動側スプロケット11bをベアリング18を介してスプロケット軸16に対して回転可能に形成するとともに、スプロケット軸16の一端にロータリーエンコーダ21を接続したことにより、スプロケット軸16を2箇所の軸受14,14で支持することができ、リーダ4上部の限られたスペース内に従動側スプロケット11a,11bとロータリーエンコーダ21とをコンパクトに配置することができる。さらに、2本のチェーン12,12の長さが不揃いになったときでも、各従動側スプロケット11a,11bが独立して回転することができるので、各油圧モータ9,9から各従動側スプロケット11a,11bを介してスクリュー駆動装置5との連結部に至る両チェーン12,12の引張力、負荷を均等にすることができる。
【0017】
例えば、スクリュー駆動装置5を上昇させる際に、一方の従動側スプロケット11aに掛け渡されたチェーン12の長さに比べて他方の従動側スプロケット11bに掛け渡されたチェーン12の長さが長くなっていた場合、油圧装置から作動油が供給されて油圧モータ9,9が同時に始動したとき、両油圧モータ9,9が独立して回転可能な状態になっていることから、油圧モータ9,9の各駆動側スプロケット10,10から各従動側スプロケット11a,11bまでの間の各チェーン12,12は、始動直後に張った状態になる。
【0018】
また、各従動側スプロケット11a,11bからスクリュー駆動装置5までの間の各チェーン12,12においては、前述のように、従動側スプロケット11bに掛け渡されたチェーン12の長さが長くなっていても、該従動側スプロケット11bが従動側スプロケット11aとは別個に回転するので、従動側スプロケット11bからスクリュー駆動装置5までの間のチェーン12も始動直後に張った状態になる。したがって、両油圧モータ9,9の各駆動側スプロケット10,10から各駆動側スプロケット10,10を介してスクリュー駆動装置5までの間の両チェーン12,12が共に張った状態になり、両チェーン12,12の引張力、負荷が均等になる。
【0019】
一方、従動側スプロケット11a,11bがスプロケット軸16に固定されて一体に回転するように形成されている場合は、油圧モータ9,9が独立して回転することから、駆動側スプロケット10,10から従動側スプロケット11a,11bまでの間のチェーン12,12は、前記同様に始動直後に張った状態になるが、従動側スプロケット11a,11bからスクリュー駆動装置5までの間では、従動側スプロケット11a,11bが同時に回転するため、長さが長いチェーン12のたるみを解消することができない。
【0020】
したがって、従動側スプロケット11a,11bからスクリュー駆動装置5までの間では、長さが短い一方のチェーン12が張った状態になった後は、張った状態の一方のチェーン12のみでスクリュー駆動装置5を上昇させることになる。このため、長さが長い他方のチェーン12には負荷が掛からず、長さが短い一方のチェーン12のみに負荷が掛かることになり、この一方のチェーン12に過大な負荷が作用して切断するおそれがある。
【0021】
そして、本形態例に示すように、一方の従動側スプロケット11aとスプロケット軸16とを一体に回転するように形成し、このスプロケット軸16にロータリーエンコーダ21を接続したことにより、該ロータリーエンコーダ21によって従動側スプロケット11aの回転数を検出することができ、チェーン12の移動量からスクリュー駆動装置5の昇降位置を計測して施工管理装置に入力することができる。また、スプロケット軸16へのロータリーエンコーダ21の接続は、従来の油圧モータの出力軸への接続と同じようにして行うことができるので、接続用の部品を共用することができるとともに、組み付けも容易であり、計測状態の信頼性が低下するおそれはない。
【0022】
さらに、作業装置昇降手段6の従動側を前述のように形成することにより、リーダ4の下部に2台の油圧モータ9をコンパクトに配置することができるので、スクリュー駆動装置5を昇降させる駆動力を高めるために大型で高価な油圧モータを使用することなく、汎用の安価な油圧モータを使用することができる。また、リーダ4の下部に2台の油圧モータ9を配置していることから、リーダ4の上部に油圧モータを配置した場合に比べて重心を低くでき、安定性を向上できるとともに、油圧配管を長くする必要もない。
【0023】
なお、本形態例では、スプロケット軸16とロータリーエンコーダ21の検出軸21aとをカップリング22により直結しているが、スプロケット軸16と検出軸21aとに互いに歯合する歯車をそれぞれ設け、この歯車を介してスプロケット軸16と検出軸21aとを接続したり、スプロケット軸16と検出軸21aとにチェーンを介して連結されるスプロケットをそれぞれ設け、これらのスプロケット及びチェーンを介してスプロケット軸16と検出軸21aとを接続したりすることもできる。また、スプロケット軸側の歯車やスプロケットは、従動側スプロケットに一体的に設けることもできる。
【0024】
さらに、本発明は、杭打機に比べて作業装置から受ける回転反力が小さく、リーダ幅が狭い地盤改良機に好適であるが、地盤改良機に限らず、杭打機や掘削機を始めとする各種建設機械に適用することができる。また、スプロケット軸に対して回転可能に取り付けられる他方の従動スプロケットは、チェーン長さの調整分だけ回転すればよいことから、ベアリングではなくブッシュを介装させるようにしてもよい。さらに、リーダの長さなどの条件によっては油圧モータ及び駆動側スプロケットをリーダの上部に、従動側スプロケットをリーダの下部に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一形態例を示す地盤改良機の要部正面図である。
【図2】同じく地盤改良機のリーダ上部側の要部断面図である。
【図3】図2のIII-III断面図である。
【図4】同じく地盤改良機の要部側面図である。
【図5】同じく地盤改良機の側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…地盤改良機、2…作業機、3…フロントブラケット、4…リーダ、5…スクリュー駆動装置、5a…スクリューシャフト、6…作業装置昇降手段、7…スクリューガイド、8…トップシーブ、9…油圧モータ、11a,11b…従動側スプロケット、11c…キー溝、12…チェーン、13…環状部材、14…軸受、15,18…ベアリング、16…スプロケット軸,16a…大径部、16b…キー溝、16c…注入路、16d…連結軸、17…キー、19a,19b,19c…カラー、20…ブラケット、21…ロータリーエンコーダ、21a…検出軸、22…カップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機のリーダに沿って昇降可能に設けられた作業装置と、該作業装置をチェーンを介して昇降させる作業装置昇降手段とを備えた建設機械において、前記作業装置昇降手段は、前記リーダの一端に出力軸を対向配置した一対の油圧モータと、各油圧モータの各出力軸にそれぞれ結合した一対の駆動側スプロケットと、前記リーダの他端に回転可能に設けられたスプロケット軸と、該スプロケット軸に設けられた一対の従動側スプロケットと、前記各駆動側スプロケットと前記各従動側スプロケットとにそれぞれ掛け渡されるとともに前記作業装置に連結された一対のチェーンと、前記各スプロケットの一つ又は前記スプロケット軸の回転数を検出するロータリーエンコーダとを備え、前記一対の従動側スプロケットは、一方の従動側スプロケットが前記スプロケット軸に固設され、他方の従動側スプロケットが前記スプロケット軸に対して回転可能に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記一方の従動側スプロケットは、キー又はスプラインによって前記スプロケット軸に固定され、前記他方の従動側スプロケットは、ベアリング又はブッシュを介して前記スプロケット軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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