説明

建設機械

【課題】 床板を傾転させたときに床板の揺れを止めることにより、床板の傾転状態で行う各種作業の作業性を向上する。
【解決手段】 床板9を傾転可能に支持するために旋回フレーム5の前側位置と床板9の前側位置との間に設けた中央床板支持機構26には、床板9が水平位置にあるときに床板9の前側位置が旋回フレーム5に対して上,下方向に変位するのを許し、床板9が傾転位置にあるときに床板9の上,下方向の変位を規制する変位規制部33を設けている。従って、走行時や作業時のように、床板9が水平位置にあるときには、床板9の変位を許可して旋回フレーム5から床板9に伝わる振動を緩和できるようにする。一方、床板9を傾転させた状態では、変位規制部33が、床板9を揺れないように固定するから、点検作業、修理作業等を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設建設に関し、特に、フレームに対して床板が傾転可能となった建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルには、ミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがある。この小型の油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、前側に作業装置が設けられた旋回フレームと、該旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられた床板と、該床板に設けられたオペレータが着座する運転席と、該運転席を覆うキャノピ、キャブ等の建屋とにより大略構成されている。
【0004】
ここで、小型の油圧ショベルは、機器類の設置スペースが限られているから床板の下側にコントロールバルブ等を配設している。このため、旋回フレームの前側位置と床板の前側位置との間には、床下の機器類の点検作業、修理作業等を行えるように、床板の前側位置を支点として床板を傾転可能に支持する床板支持機構が設けられている。また、床板支持機構は、旋回フレームから床板に伝わる振動を緩和できるように、該床板の前側部分を弾性的に支持している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4205719号公報
【特許文献2】特開2005−119362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1による油圧ショベルでは、床板支持機構によって旋回フレーム上に床板を弾性的に支持しているから、走行時や作業時に旋回フレームから床板に伝わる振動を緩和することができる。
【0007】
しかし、床板は、床板支持機構によって常に弾性的に支持されているから、床板を傾転させたときにも該床板が揺れてしまう。このため、床板を傾転させた状態で、該床板側に取付けられたボルト、ナット、配管の口金等を緩めたり、締付けたりするときには、床板が揺れてスパナ等の工具をボルト頭等に係合し難くなる。また、床板の揺れによってボルト等を緩めたり、締付けたりするときの力が逃げてしまう。さらに、床板が揺れると電気配線のはんだ付け作業、カプラの接続作業等の細かな作業が困難になってしまう。このように、床板が傾転状態で揺れると、点検作業、修理作業等の作業性が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、床板を傾転させたときに床板の揺れを止めることにより、床板の傾転状態で行う各種作業の作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による建設機械は、前側に作業装置が設けられたフレームと、該フレーム上に前側を支点として傾転可能に設けられ運転席を有する床板と、該床板を傾転可能に支持するために前記フレームの前側位置と床板の前側位置との間に設けられた床板支持機構とを備え、前記床板支持機構は、前記フレームと床板とのうち一方の部材に設けられ左,右方向に貫通してピン孔が形成された一側軸受と、該一側軸受と対向する位置で前記フレームと床板とのうち他方の部材に設けられ左,右方向に貫通してピン孔が形成された他側軸受と、前記一側軸受のピン孔と他側軸受のピン孔とに挿嵌された連結ピンとにより構成してなる。
【0010】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記床板支持機構には、前記床板が水平位置にあるときには上,下方向に変位するのを許し、前記床板が傾転位置にあるときには上,下方向の変位を規制する変位規制部を設ける構成としたことにある。
【0011】
請求項2の発明は、前記フレームの前側位置と前記床板の前側位置との間には、前記床板支持機構とは別個に他の床板支持機構を設け、この他の床板支持機構は、前記フレームと床板とのうち一方の部材に設けられ左,右方向にピン孔が貫通した弾性部材を備えた一側軸受と、該一側軸受と対向する位置で前記フレームと床板とのうち他方の部材に設けられ左,右方向に貫通してピン孔が形成された他側軸受と、前記一側軸受の弾性部材のピン孔と他側軸受のピン孔とに挿嵌された連結ピンとにより構成したことにある。
【0012】
請求項3の発明は、前記変位規制部は、前記一側軸受に前記ピン孔の直径寸法よりも小さな幅寸法をもって該ピン孔を上,下方向に切欠くように設けられた切欠き溝と、前記連結ピンのうち該切欠き溝と対向する位置に該切欠き溝の幅寸法よりも小さな幅寸法をもって平行に切欠かれた狭幅軸部とにより構成し、前記床板の水平位置では前記連結ピンの狭幅軸部を前記一側軸受の切欠き溝内で上,下方向に変位可能とし、前記床板の傾転位置では前記切欠き溝から外れた狭幅軸部を前記ピン孔によって上,下方向に固定する構成としたことにある。
【0013】
請求項4の発明は、前記床板支持機構には、前記床板を傾転させたときに、該床板の傾転動作を所定の角度位置で規制する傾転ストッパを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、床板を傾転可能に支持する床板支持機構には変位規制部を設けているから、この変位規制部は、床板が水平位置にあるときに該床板が変位するのを許すことができる。これにより、床板はフレームに対し上,下方向に相対的に変位することができるから、走行時や作業時にフレームから床板に伝わる振動を緩和することができ、運転席に着座したオペレータの作業環境を良好にすることができる。
【0015】
一方で、床板支持機構の変位規制部は、床板が傾転位置(チルトアップ状態)にあるときに上,下方向の変位を規制することができる。従って、床板を傾転させた状態で各種点検作業、修理作業等を行う場合に、変位規制部は、床板を揺れないように固定することができる。この結果、床板をチルトアップした状態で行う作業、例えば床板側に設けられたボルト、ナット、配管等の取付け、取外し作業、電気配線の接続作業等を容易に行うことができ、各種点検作業、修理作業等の作業性を向上することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、フレームの前側位置と床板の前側位置との間に設けた他の床板支持機構は、その一側軸受に左,右方向にピン孔が貫通した弾性部材を備えている。これにより、床板が水平位置にあって変位規制部が上,下方向の変位を許している状態では、弾性部材を弾性変形させることにより、フレームから床板に伝わる振動を緩和することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、床板が水平位置にあるときに、床板支持機構の変位規制部は、連結ピンの狭幅軸部を一側軸受の切欠き溝内で上,下方向に変位可能な位置に配置することができる。これにより、フレーム上で床板を上,下方向に変位させることができ、走行時や作業時に旋回フレームから床板に伝わる振動を緩和して、オペレータの作業環境を良好にすることができる。
【0018】
一方、床板を傾転させたときに、床板支持機構の変位規制部では、連結ピンが一側軸受と相対的に回転することにより狭幅軸部が切欠き溝部から外れて上,下方向に変位できなくなる。従って、連結ピンの狭幅軸部は一側軸受のピン挿通孔に上,下方向に固定された状態となるから、床板を傾転させたときの揺れを止めることができる。これにより、床板を傾転させた状態で行う各種点検作業、修理作業等の作業性を向上することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、前側位置を支点として床板を運転席と一緒に大きく傾転させたときには、床板支持機構に設けた傾転ストッパが所定の角度位置で床板の傾転動作を規制する。これにより、床板等が前側に倒れて損傷するような事態を未然に防ぐことができ、信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるキャブ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1に示す床板、運転席、キャブ等を前側位置を支点として所定の角度位置までチルトアップした状態を示す正面図である。
【図3】油圧ショベルを拡大して示す平面図である。
【図4】下部走行体と上部旋回体をカウンタウエイト、外装カバー等を省略した状態で拡大して示す正面図である。
【図5】旋回フレームと床板と3個の床板支持機構とを分解した状態で示す要部拡大の分解斜視図である。
【図6】中央床板支持機構を拡大して示す外観斜視図である。
【図7】図6に示す中央床板支持機構の分解斜視図である。
【図8】中央床板支持機構のフレーム側軸受を旋回フレームの前梁にボルト止めした状態で示す要部拡大の斜視図である。
【図9】中央床板支持機構の床板側軸受を床板の前側ブラケットにボルト止めした状態で示す要部拡大の斜視図である。
【図10】中央床板支持機構と変位規制部を床板を水平位置に配置した状態で示す要部拡大断面図である。
【図11】中央床板支持機構と変位規制部を床板を傾転位置に配置した状態で示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態によるフレーム側軸受を旋回フレームの前梁に溶接した状態で示す要部拡大の斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態による床板側軸受を床板の前側ブラケットに溶接した状態で示す要部拡大の斜視図である。
【図14】本発明の変形例による旋回フレームと床板と4個の床板支持機構とを分解した状態で示す要部拡大の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図11は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより構成されている。また、上部旋回体3の前側には、土砂の掘削作業等を行なうスイング式の作業装置4が揺動および俯仰動可能に設けられている。
【0023】
一方、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、床板9、運転席14、キャブ17、床板支持機構18,22,26、傾転機構39等により大略構成されている。また、上部旋回体3は、床板9が運転席14、キャブ17と一緒に前側位置を支点としてチルトアップ(図2の状態)、チルトダウン(図1の状態)することができる。
【0024】
5は上部旋回体3の支持構造体を構成する旋回フレームである。この旋回フレーム5は、図4、図5に示す如く、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板5Aと、該底板5Aの上面側に左,右方向に離間して略ハ字状に立設された左,右の縦板5B,5Cと、該各縦板5B,5Cの前端部に設けられ、作業装置4を支持する支持ブラケット5Dと、該支持ブラケット5Dの基端部から左側に延びつつ屈曲して後側に延びた左サイドフレーム5Eと、前記支持ブラケット5Dの基端部から右側に延びつつ屈曲して後側に延びた右サイドフレーム5Fと、前部左寄りに位置して左サイドフレーム5Eの上方を左,右方向に延びて設けられ、旋回フレーム5の前側位置となる前梁5Gとにより大略構成されている。また、前梁5Gには、後述する床板支持機構18,22,26のフレーム側軸受19,23,27が左,右方向に間隔をもって取付けられている。
【0025】
また、旋回フレーム5上には、後側に位置してエンジンが搭載され、左前側に位置してコントロールバルブが搭載され、右側に位置して作動油タンク、燃料タンク(いずれも図示せず)が搭載されている。
【0026】
6はエンジンを跨ぐように旋回フレーム5の後側に設けられた支持部材で、該支持部材6は旋回フレーム5の一部を構成している。また、支持部材6は、エンジンの上方に位置して左,右方向に延び、後述する床板9の建屋取付板12が取付けられる支持ベース6Aと、該支持ベース6Aをエンジンの上方に支持する複数本、例えば4本の支柱6B,6C,6D(図4中に3本のみ図示)とにより大略構成されている。そして、各支柱6B,6C,6Dの下端部は、それぞれ旋回フレーム5に取付けられている。また、右前支柱6Cには後述する傾転機構39が取付けられている。
【0027】
7はエンジンの後側に位置して旋回フレーム5の後端部に取付けられカウンタウエイトで、該カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるもので、後向きに突出した凸湾曲形状をなしている。
【0028】
8は後述するキャブ17の周囲に設けられた外装カバーで、該外装カバー8は、図1ないし図3に示すように、カウンタウエイト7の左端側から前方に延びた左側面カバー8Aと、カウンタウエイト7の右端側から前方に延びた右側面カバー8Bと、後側に位置して前記各側面カバー8A,8B間に開閉可能に設けられたエンジンカバー8Cと、キャブ17の右側に位置して作動油タンク、燃料タンク等を覆った開閉可能なタンクカバー8Dとにより大略構成されている。
【0029】
9は旋回フレーム5上の左側寄りに設けられた床板である。この床板9は、その前側位置が後述の床板支持機構18,22,26を介して旋回フレーム5の前側位置となる前梁5Gに支持され、後側位置が支持部材6に支持されている。また、床板9は、図5に示す如く、後述の運転席14に着座したオペレータの足乗せ場となる足乗せ板10と、該足乗せ板10の後側に位置してエンジンの前側を覆うようにステップ状に設けられた運転席台座11と、該運転席台座11の上端部に後側に延びて設けられた建屋取付板12と、前記足乗せ板10の右側位置から立上った側面板13とにより大略構成されている。
【0030】
ここで、足乗せ板10の前側部分は、後述の走行操作レバー・ペダル16等を取付けるためのレバー・ペダル取付部10Aとなっている。また、レバー・ペダル取付部10Aの前側には、床板9の前側位置を構成する前側ブラケット10Bが設けられ、該前側ブラケット10Bは、例えば左,右方向に延びるL字状の鋼板等からなり、後述の床板支持機構18,22,26が取付けられる。
【0031】
また、床板9の後側を構成する建屋取付板12は、弾性ゴム等からなる防振マウント(図示せず)を介して支持部材6の支持ベース6A上に取付けられている。そして、床板9は、建屋取付板12を支持部材6から取外すことにより、図2に示すようにチルトアップすることができる。また、側面板13には、床板9等を傾転させる後述の傾転機構39が取付けられている。
【0032】
14は床板9を構成する運転席台座11上に設けられた運転席(図1等参照)で、該運転席14は、オペレータが着座するものである。また、運転席14の左,右両側には、作業装置4等を操作するための作業操作レバー15(右側のみ図示)が配設されている。さらに、運転席14の前方となる足乗せ板10のレバー・ペダル取付部10Aには、下部走行体2を走行させるときに手動操作または足踏み操作によって操作する走行操作レバー・ペダル16が設けられている。
【0033】
17は運転席14の周囲を覆うように床板9に設けられた建屋としてのキャブである。このキャブ17は、運転席14の上方と周囲を覆うことにより、オペレータの居住空間を形成するものである。また、キャブ17は、前面部17A、後面部17B、左側面部17C、右側面部17D、天面部17Eからなり、左側面部17Cには出入り用のドア(図示せず)が開閉可能に取付けられている。そして、キャブ17は、床板9の周囲にボルト止めされている。
【0034】
ここで、床板9、運転席14、作業操作レバー15、走行操作レバー・ペダル16、キャブ17等は、旋回フレーム5上に搭載された一つのユニットとして構成され、図2等に示す如く、後述の床板支持機構18,22,26を支点として傾転機構39により前側ないし上側となる矢示A方向、後側ないし下側となる矢示B方向に傾転可能となっている。
【0035】
次に、床板9を傾転可能に支持するために旋回フレーム5の前側位置と床板9の前側位置との間に設けられた3個の床板支持機構18,22,26について説明する。まず、床板9の前側部分の振動を緩和するために該床板9を傾転可能かつ弾性的に支持する左,右の床板支持機構18,22について述べる。
【0036】
18は旋回フレーム5の前側位置と床板9の前側位置との間に設けられた他の床板支持機構としての左側の床板支持機構である。この左側床板支持機構18は、後述の右側床板支持機構22、中央床板支持機構26と一緒に、旋回フレーム5の左,右方向に延びる軸線を回動軸線とし、床板9の前側位置を旋回フレーム5の前側位置に傾転可能に取付けるものである。
【0037】
また、左側床板支持機構18は、図5に示すように、旋回フレーム5の前梁5Gの左部に取付けられた一側軸受としてのフレーム側軸受19と、該フレーム側軸受19と対向する位置で足乗せ板10の前側ブラケット10Bに取付けられた他側軸受としての2枚で一対の床板側軸受20と、前記フレーム側軸受19と床板側軸受20とを回動可能(傾転可能)に連結する連結ピン21とにより大略構成されている。
【0038】
ここで、フレーム側軸受19は、前梁5Gにボルト止められる取付台19Aの上側に左,右方向を軸線とする筒部19Bを有している。また、前記筒部19Bの内部には、例えば弾性を有するゴム材料等からなる厚肉な円筒状の弾性部材19Cが挿嵌され、該弾性部材19Cの中心位置には、連結ピン21が相対回転可能に挿嵌されるピン孔19Dが左,右方向に貫通して形成されている。
【0039】
また、左,右の床板側軸受20は、ほぼ正方形の板体により形成され、その中央位置には、連結ピン21が挿嵌されるピン孔20Aが左,右方向に貫通して形成されている。そして、各床板側軸受20は、フレーム側軸受19の筒部19Bを挟む位置に平行に配設され、足乗せ板10の前側ブラケット10Bに溶接等の固着手段を用いて一体的に固着されている。
【0040】
さらに、連結ピン21は、円柱状の棒状体からなり、フレーム側軸受19の弾性部材19Cのピン孔19Dと各床板側軸受20のピン孔20Aとに挿嵌されている。この場合、連結ピン21は、フレーム側軸受19に対して回転可能に挿嵌され、両端部が床板側軸受20に固定されている。
【0041】
一方、22は旋回フレーム5の前梁5Gと床板9の足乗せ板10の前側ブラケット10Bとの間に設けられた他の床板支持機構としての右側の床板支持機構である。この右側床板支持機構22は、前述した左側床板支持機構18、後述の中央床板支持機構26と一緒に、床板9の前側位置を旋回フレーム5の前側位置に傾転可能に取付けるものである。
【0042】
そして、右側床板支持機構22は、左側床板支持機構18とほぼ同様に形成されている。即ち、右側床板支持機構22は、旋回フレーム5の前梁5Gの右端部に取付けられ、取付台23A、筒部23B、弾性部材23Cおよびピン孔23Dからなる一側軸受としてのフレーム側軸受23と、該フレーム側軸受23の筒部23Bを挟むように足乗せ板10の前側ブラケット10Bに取付けられた他側軸受としての2枚で一対の床板側軸受24と、前記フレーム側軸受23のピン孔23Dと床板側軸受24のピン孔24Aとに挿嵌された連結ピン25とにより大略構成されている。
【0043】
このように、左,右の床板支持機構18,22は、連結ピン21,25を支点として床板9を前側ないし上側となる矢示A方向に向けて傾転(チルトアップ)させることができ、該床板9の後側を持上げて傾転位置(図2に示す位置)に配置することができる。また、左,右の床板支持機構18,22は、床板9の後側を後側ないし下側となる矢示B方向に向けて傾転(チルトダウン)させ、ほぼ水平となる運転位置(図1に示す位置)に配置することもできる。さらに、左,右の床板支持機構18,22は、弾性部材19C,23Cを弾性変形させることにより、旋回フレーム5から床板9に伝わる振動を緩和することができる。
【0044】
次に、床板9を傾転可能に支持すると共にチルトアップしたときに該床板9の揺れ止めをする中央の床板支持機構26について、図5ないし図11を参照しつつ述べる。
【0045】
即ち、26は旋回フレーム5の前側位置と床板9の前側位置との間に設けられた中央の床板支持機構を示している。この中央床板支持機構26は、左,右の床板支持機構18,22の間に配置され、該各床板支持機構18,22と一緒に床板9の前側位置を旋回フレーム5の前側位置に傾転可能に取付けるものである。一方で、中央床板支持機構26は、床板9が水平位置(運転状態位置)にあるときに、床板9が上,下方向に変位するのを許し、また、床板9を傾転させた傾転位置では、床板9の揺れを止めるものである。そして、中央床板支持機構26は、後述のフレーム側軸受27、床板側軸受29、連結ピン31により大略構成されている。
【0046】
27は旋回フレーム5の前梁5Gのほぼ中央部に取付けられた一側軸受としてのフレーム側軸受である。このフレーム側軸受27は、図6、図7に示す如く、左,右方向に延びた取付台27Aと、該取付台27Aの左,右方向の中央位置に上側に突出して設けられ左,右方向を軸線とする厚肉な筒部27Bと、該筒部27Bの中心位置に左,右方向に貫通して形成されたピン孔27Cとにより大略構成されている。
【0047】
また、取付台27Aには、筒部27Bを挟む位置に2個のボルト孔27Dが形成されている。これにより、フレーム側軸受27は、各ボルト孔27Dに挿通したボルト28を用いて旋回フレーム5の前梁5Gに取付けられている(図8参照)。さらに、ピン孔27Cは、連結ピン31が摺動状態で円滑に回転し、かつがたつきが生じないように該連結ピン31の直径寸法よりも僅かに大きな直径寸法Dをもって形成されている。
【0048】
なお、筒部27Bには、ピン孔27Cを上,下方向に切欠くことにより、後述する変位規制部33の切欠き溝34が形成されている。また、取付台27Aと筒部27Bとの角隅部分には、後述する傾転ストッパ36の荷重受承部37が形成されている。
【0049】
29はフレーム側軸受27と対向する位置で足乗せ板10の前側ブラケット10Bに取付けられた他側軸受としての床板側軸受である。この床板側軸受29は、図7に示す如く、フレーム側軸受27の筒部27Bを左,右方向で挟むように平行に配設された左,右の取付板29A,29Bと、該各取付板29A,29Bの上部を接続した接続部29Cと、前記各取付板29A,29Bの中央部を左,右方向に同軸に貫通してそれぞれ形成されたピン孔29Dとにより大略構成されている。ここで、ピン孔29Dには、連結ピン31ががたつきを生じないように挿嵌されている。
【0050】
また、各取付板29A,29Bの上部位置には、ねじ穴形成部29Eが左,右方向に突設され、該各ねじ穴形成部29Eの上面にはねじ穴29Fが形成されている。これにより、床板側軸受29は、床板9を構成する足乗せ板10の前側ブラケット10Bに挿通したボルト30をねじ穴29Fに螺着することにより、床板9の前側位置に取付けられている(図9参照)。さらに、左側の取付板29Aには、ピン孔29Dに周囲に位置して、連結ピン31の抜止めと回り止めをする後述のボルト32が螺着される小さなねじ穴29Gが形成されている。なお、左取付板29Aの下部には、後述する傾転ストッパ36の当接部38が下向きに突設されている。
【0051】
31はフレーム側軸受27のピン孔27Cと床板側軸受29のピン孔29Dとに挿嵌された連結ピンである。この連結ピン31は、各ピン孔27C,29Dに対してがたつきが生じないように僅かに小さな直径寸法をもった円柱状の棒状体として形成されている。また、連結ピン31の長さ方向の一端部には、抜止めと回り止めをするためのブラケット31Aが設けられている。これにより、連結ピン31は、フレーム側軸受27のピン孔27Cと床板側軸受29のピン孔29Dとに挿嵌し、この状態でブラケット31Aに挿通したボルト32を床板側軸受29のねじ穴29Gに螺着することにより、該床板側軸受29に対し固定的に取付けることができる。
【0052】
33は中央床板支持機構26に設けられた変位規制部を示している。この変位規制部33は、図7、図10、図11に示すように、床板9が水平位置にあるときには該床板9の前側部分が上,下方向に変位するのを許し、前記床板9が傾転位置にあるときには上,下方向の変位を規制するものである。そして、変位規制部33は、フレーム側軸受27に設けられた後述の切欠き溝34と、該切欠き溝34と対向するように床板側軸受29側の連結ピン31に設けられた狭幅軸部35とにより構成されている。
【0053】
34は変位規制部33を構成する上,下の切欠き溝で、該各切欠き溝34は、フレーム側軸受27の筒部27Bに設けられている。また、各切欠き溝34は、左,右の側面部34Aと底面部34Bとにより略コ字状の凹溝として形成されている。また、各切欠き溝34は、図10に示す如く、ピン孔27Cの直径寸法Dよりも小さな幅寸法(各側面部34A間の寸法)W1をもって該ピン孔27Cを上,下方向に切欠くように設けられている。
【0054】
ここで、各切欠き溝34の溝深さ寸法(ピン孔27Cから切欠き溝34の底面部34Bまでの寸法)は、前述した左,右の床板支持機構18,22によって弾性的に支持された床板9の前側位置が上,下方向に変位したときに、この変位を妨げないような寸法、即ち、底面部34Bに連結ピン31が当接しないように、該連結ピン31の変位量よりも大きな寸法に設定されている。
【0055】
35は各切欠き溝34と共に変位規制部33を構成する狭幅軸部である。この狭幅軸部35は、床板側軸受29に固定的に取付けられる連結ピン31に対し、互いに平行な凹面部35Aを形成することにより小判状の断面形状をなしている。ここで、狭幅軸部35は、フレーム側軸受27に対して床板側軸受29、連結ピン31が上,下方向に変位したときに、各切欠き溝34に進入することができるように形成されている。即ち、狭幅軸部35は、各切欠き溝34と対向する位置に該各切欠き溝34の幅寸法W1よりも小さな幅寸法W2をもって平行に形成され、かつ、フレーム側軸受27の筒部27B(ピン孔27C)の軸方向寸法よりも大きな長さ寸法を有している。
【0056】
また、狭幅軸部35は、図10に示すように、床板9が水平位置にあるときに、各凹面部35Aが垂直面となるように配置されている。これにより、狭幅軸部35は、床板9が水平位置にあるときには、図10中に一点鎖線で示すように、各切欠き溝34に進入させることができ、上,下方向に変位可能とすることができる。一方、図11に示すように、床板9が傾転位置となったときには、狭幅軸部35が回転して各切欠き溝34から外れた位置に配置される。このときに、狭幅軸部35はピン孔27Cによって上,下方向に固定することができ、上,下方向の変位を規制することができる。
【0057】
次に、36は中央床板支持機構26に設けられた傾転ストッパである。この傾転ストッパ36は、各床板支持機構18,22,26を支点として床板9を前側ないし上側に傾転させたときに、該床板9の傾転動作を所定の角度位置で規制するものである。ここで、傾転ストッパ36が床板9の傾転動作を規制する所定の角度位置は、例えば後述の傾転機構39が床板9を最大までチルトアップせたときの旋回フレーム5に対する床板9の角度とほぼ同じ角度位置または小さい角度位置となっている。
【0058】
これにより、傾転ストッパ36は、キャブ17が前側に倒れて作業装置4等に衝突するのを防止する機能と、床板9を前側に大きく傾転させたときには、このときの荷重を受承することによって後述の傾転機構39に荷重が作用するのを防止する機能とを有している。そして、傾転ストッパ36は、後述する荷重受承部37と当接部38とにより構成されている。
【0059】
37はフレーム側軸受27に設けられた荷重受承部で、該荷重受承部37は、例えばフレーム側軸受27と一緒に鋳造されている。ここで、荷重受承部37は、床板9を前側に大きく傾転したときに、後述の当接部38を当接させることにより床板9、運転席14、キャブ17等の荷重を受承するものである。また、荷重受承部37は、フレーム側軸受27の取付台27Aの左側位置に固定的に設けられている。
【0060】
38は床板側軸受29のうち、荷重受承部37に対応する左側の取付板29Aに設けられた当接部を示している。この当接部38は、床板9が前側に所定の角度まで傾転したときに、該床板9に取付けられた床板側軸受29と一緒に荷重受承部37に向け移動(回動)し、該荷重受承部37に当接する移動突起部として形成されている。即ち、当接部38は、左側の取付板29Aの先端となる前部下側の角隅部を下向きに延ばすように突設された略三角形状の突起として形成されている。
【0061】
そして、傾転ストッパ36は、図2に示す如く、床板支持機構18,22,26を支点として床板9をキャブ17等と一緒に前側ないし上側に大きくチルトアップしたときに、図11に示すように、床板側軸受29に設けられた当接部38をフレーム側軸受27に設けられた荷重受承部37に当接させることにより、床板9の傾転動作を所定の角度位置で規制することができる。
【0062】
39は床板支持機構18,22,26よりも後側に位置して旋回フレーム5と床板9との間に設けられた傾転機構で(図2、図3、図4参照)、該傾転機構39は、床板9の右側位置に前,後方向に伸長して設けられている。
【0063】
また、傾転機構39は、旋回フレーム5側に位置する支持部材6の右前支柱6Cに取付けられた取付ブラケット39Aと、基端側が該取付ブラケット39Aに上,下方向に回動可能に取付けられ、先端側が自由端となって前側に延びたガイドレール39Bと、該ガイドレール39Bに沿って延び該ガイドレール39Bに対し軸方向に位置決めされた状態で回転可能に取付けられたねじ軸39Cと、該ねじ軸39Cの先端部に設けられインパクトレンチ等の工具が連結される工具連結部39Dと、前記ねじ軸39Cに螺合して設けられ該工具連結部39Dを介してねじ軸39Cを回転操作することにより前記ガイドレール39Bに沿って前,後方向に移動する移動部材39Eとにより大略構成されている。また、床板9を傾転させるための移動支点となる移動部材39Eは、床板9の側面板13に回動可能に取付けられている。
【0064】
そして、傾転機構39は、インパクトレンチ等の工具を工具連結部39Dに連結し、ねじ軸39Cを外部から任意の方向に回転駆動する。これにより、ねじ軸39Cに螺合している移動部材39Eをガイドレール39Bに沿って先端側(矢示C方向)に変位させるこができ、床板9を移動部材39Eの変位量に応じて前側ないし上側(矢示A方向)に傾転させることができる。一方、ねじ軸39Cを逆方向に回転駆動することにより、移動部材39Eをガイドレール39Bに沿って基端側(矢示D方向)に変位させることができ、床板9を後側ないし下側(矢示B方向)に傾転させることができる。
【0065】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0066】
まず、オペレータは運転席14に着座し、この状態で走行操作レバー・ペダル16を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業操作レバー15を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行なうことができる。
【0067】
ここで、油圧ショベル1の走行時、作業時には振動が発生し、この振動が旋回フレーム5から床板9に伝わると作業性、作業環境等の低下を招いてしまう。しかし、旋回フレーム5と床板9との間には、前側位置に弾性部材19C,23Cを備えた左,右の床板支持機構18,22を設け、後側位置に防振マウントを設けているから、旋回フレーム5から床板9に伝わる振動を緩和することができる。
【0068】
このときには、床板9が水平位置にあるから、床板9を傾転したときの揺れ止め機能をもった中央床板支持機構26は、図10に示すように、連結ピン31に設けた狭幅軸部35をフレーム側軸受27に設けた各切欠き溝34に進入させることができ、床板9の上,下方向の変位を許可することができる。
【0069】
次に、油圧ショベル1のメンテナンス作業を行なう場合について説明する。このメンテナンス作業の対象となるエンジン、油圧ポンプ、コントロールバルブ等は床板9の下側に配設されている。このため、床板9は、図2に示すようにキャブ17等と一緒に矢示A方向にチルトアップする必要がある。
【0070】
そこで、床板9を運転席14、キャブ17等と一緒にチルトアップするときの作業について説明する。まず、床板9の建屋取付板12を旋回フレーム5の支持部材6に取付けているボルト等を取外す。次に、インパクトレンチ等を工具連結部39Dに連結し、ねじ軸39Cを回転駆動することにより、移動部材39Eをガイドレール39Bに沿って先端側(矢示C方向)に変位させるこができる。これにより、床板9等を、図2に示すように床板支持機構18,22,26を支点として矢示A方向にチルトアップすることができる。
【0071】
このように、床板9等をチルトアップして傾転位置となったときに、変位規制部33は、図11に示すように、狭幅軸部35を回転して各切欠き溝34から外れた位置に配置する。これにより、狭幅軸部35をピン孔27Cによって上,下方向に固定することができ、床板9の上,下方向の変位を規制することができる。
【0072】
そして、傾転状態の床板9を揺れないように固定した場合には、床板9側に取付けられたボルト、ナット、配管の口金(いずれも図示せず)等を緩めたり、締付けたりするときに、ボルト頭、ナット等にスパナ等の工具を容易に係合することができる。また、ボルト、ナット等を緩めたり、締付けたりするときの力が揺れとなって逃げなくなるから、ボルト等を簡単に脱着することができる。さらに、電気配線のはんだ付け作業、配線用カプラ(いずれも図示せず)の接続作業等のように細かな作業は、床板9を固定することで、手元が狂うことなく容易に行うことができる。
【0073】
また、床板9を大きくチルトアップしたときには、傾転ストッパ36の荷重受承部37に当接部38が当接するから、床板9の傾転動作を所定の角度で規制することができる。これにより、傾転ストッパ36は、例えばキャブ17が作業装置4等に衝突して損傷するような事態を未然に防ぐことができる。しかも、傾転ストッパ36は、床板9を前側に大きく傾転させたときに作用する荷重を受承することにより、この荷重が傾転機構39に作用しないようにし、該傾転機構39の負荷を軽減することができる。
【0074】
一方、メンテナンス作業等が終了したら、ねじ軸39Cを逆方向に回転駆動することにより、移動部材39Eをガイドレール39Bに沿って基端側(矢示D方向)に変位させることができ、床板9、キャブ17等を矢示B方向にチルトダウンさせることができる。そして、床板9の建屋取付板12を支持部材6にボルト止めすることにより、メンテナンス作業を終了することができる。
【0075】
かくして、第1の実施の形態によれば、床板9を傾転可能に支持するために旋回フレーム5の前側位置と床板9の前側位置との間に設けた各床板支持機構18,22,26のうち、中央床板支持機構26には、床板9が水平位置にあるときには該床板9の前側位置が旋回フレーム5に対して上,下方向に変位するのを許し、前記床板9が傾転位置にあるときには床板9の上,下方向の変位を規制する変位規制部33を設けている。
【0076】
従って、走行時や作業時のように、床板9が水平位置にあるときには、床板9の変位を許可することができ、旋回フレーム5から床板9に伝わる振動を緩和することができ、作業環境を良好にすることができる。
【0077】
しかも、床板9を傾転させた状態で各種点検作業、修理作業等を行う場合には、変位規制部33が、床板9を揺れないように固定することができる。この結果、例えば床板9側に取付けられたボルト、ナット、配管の口金等を緩めたり、締付けたりするときに、スパナ等の工具を容易に係合することができる。また、ボルト、ナット等に効果的に力を加えて簡単に脱着することができる。さらに、細かな電気配線のはんだ付け作業、配線用カプラの接続作業等も容易に行うことができる。これにより、床板9をチルトアップした状態で行う各種点検作業、修理作業等の作業性を向上することができる。
【0078】
また、旋回フレーム5の前側位置と床板9の前側位置との間には、他の床板支持機構として左,右の床板支持機構18,22を設け、この左,右の床板支持機構18,22のフレーム側軸受19,23には、床板側軸受29に取付けた連結ピン31との間で弾性変形する弾性部材19C,23Cを設けている。これにより、床板9が水平位置にあって変位規制部33が上,下方向の変位を許している状態では、弾性部材19C,23Cを弾性変形させることにより、旋回フレーム5から床板9に伝わる振動を緩和することができる。
【0079】
一方、変位規制部33は、フレーム側軸受27にピン孔27Cの直径寸法よりも小さな幅寸法W1をもって該ピン孔27Cを上,下方向に切欠くように設けられた上,下の切欠き溝34と、連結ピン31のうち該切欠き溝34と対向する位置に該切欠き溝34の幅寸法W1よりも小さな幅寸法W2をもって平行に切欠かれた狭幅軸部35とにより構成している。これにより、床板9を水平位置に配置した状態では、連結ピン31に設けた狭幅軸部35をフレーム側軸受27に設けた各切欠き溝34内で上,下方向に変位可能とすることができる。また、床板9を傾転位置に配置した状態では、狭幅軸部35が各切欠き溝34から外れることによりピン孔27Cによって上,下方向に固定することができる。
【0080】
さらに、中央床板支持機構26には、床板9を傾転させたときに、該床板9の傾転動作を所定の角度位置で規制する傾転ストッパ36を設けているから、床板9、キャブ17等が前側に倒れて損傷するような事態を未然に防ぐことができ、信頼性を向上することができる。
【0081】
次に、図12および図13は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、一側軸受をフレームに溶接によって固着し、他側軸受を床板に溶接によって固着する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0082】
図12において、41は第2の実施の形態による一側軸受としてのフレーム側軸受で、該フレーム側軸受41は、前述した第1の実施の形態によるフレーム側軸受27とほぼ同様に、取付台41A、筒部41B、ピン孔41Cを備えている。しかし、第2の実施の形態によるフレーム側軸受41は、ボルト孔が形成されていない点で、第1の実施の形態によるフレーム側軸受27と相違している。これにより、フレーム側軸受41は、取付台41Aの周囲が溶接ビード部42によって旋回フレーム5の前梁5Gに固着されている。
【0083】
図13において、43は第2の実施の形態による他側軸受としての床板側軸受で、該床板側軸受43は、前述した第1の実施の形態による床板側軸受29とほぼ同様に、左,右の取付板43A,43B、接続部43C、ピン孔43D、ねじ穴43Eを備えている。しかし、第2の実施の形態による床板側軸受43は、ねじ穴形成部とねじ穴が形成されていない点で、第1の実施の形態による床板側軸受29と相違している。これにより、床板側軸受43は、各取付板43A,43Bの周囲が溶接ビード部42によって床板9の足乗せ板10の前側ブラケット10Bに固着されている。
【0084】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、フレーム側軸受41と床板側軸受43の構成を簡略化することができ、生産性の向上、コストの低減等を図ることができる。
【0085】
なお、第1の実施の形態では、左,右の床板支持機構18,22の間に位置して1個の中央床板支持機構26を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14に示す変形例のように、左,右の床板支持機構18,22の間に位置して複数個、例えば2個の中央床板支持機構26を設ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0086】
また、第1の実施の形態では、中央床板支持機構26に傾転ストッパ36を設けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば左,右の床板支持機構18,22のいずれか一方、または両方に傾転ストッパを設ける構成としてもよい。また、3個の床板支持機構18,22,26の全てに傾転ストッパを設ける構成としてもよく、逆に、傾転ストッパを廃止する構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0087】
一方、各実施の形態では、建設機械として運転席14の周囲と上側を覆うキャブ17を備えたキャブ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば複数本のピラーとルーフによって運転席の上側を覆うキャノピを備えたキャノピ式の油圧ショベルに適用してもよい。
【0088】
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
5G 前梁(前側位置)
9 床板
10 足乗せ板
10B 前側ブラケット
10 床板カバー(前側位置)
14 運転席
18 左側床板支持機構(他の床板支持機構)
19,23,27,41 フレーム側軸受(一側軸受)
19A,23A,27A,41A 取付台
19B,23B,27B,41B 筒部
19C,23C 弾性部材
19D,20A,23D,24A,27C,29D,41C ピン孔
20,24,29,43 床板側軸受(他側軸受)
21,25,31 連結ピン
22 右側床板支持機構(他の床板支持機構)
26 中央床板支持機構
29A,29B,43A,43B 取付板
29C,43C 接続部
33 変位規制部
34 切欠き溝
35 狭幅軸部
36 傾転ストッパ
D フレーム側軸受のピン孔の直径寸法
W1 切欠き溝の幅寸法
W2 狭幅軸部の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に作業装置が設けられたフレームと、該フレーム上に前側を支点として傾転可能に設けられ運転席を有する床板と、該床板を傾転可能に支持するために前記フレームの前側位置と床板の前側位置との間に設けられた床板支持機構とを備え、
前記床板支持機構は、前記フレームと床板とのうち一方の部材に設けられ左,右方向に貫通してピン孔が形成された一側軸受と、該一側軸受と対向する位置で前記フレームと床板とのうち他方の部材に設けられ左,右方向に貫通してピン孔が形成された他側軸受と、前記一側軸受のピン孔と他側軸受のピン孔とに挿嵌された連結ピンとにより構成してなる建設機械において、
前記床板支持機構には、前記床板が水平位置にあるときには上,下方向に変位するのを許し、前記床板が傾転位置にあるときには上,下方向の変位を規制する変位規制部を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記フレームの前側位置と前記床板の前側位置との間には、前記床板支持機構とは別個に他の床板支持機構を設け、この他の床板支持機構は、前記フレームと床板とのうち一方の部材に設けられ左,右方向にピン孔が貫通した弾性部材を備えた一側軸受と、該一側軸受と対向する位置で前記フレームと床板とのうち他方の部材に設けられ左,右方向に貫通してピン孔が形成された他側軸受と、前記一側軸受の弾性部材のピン孔と他側軸受のピン孔とに挿嵌された連結ピンとにより構成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記変位規制部は、前記一側軸受に前記ピン孔の直径寸法よりも小さな幅寸法をもって該ピン孔を上,下方向に切欠くように設けられた切欠き溝と、前記連結ピンのうち該切欠き溝と対向する位置に該切欠き溝の幅寸法よりも小さな幅寸法をもって平行に切欠かれた狭幅軸部とにより構成し、
前記床板の水平位置では前記連結ピンの狭幅軸部を前記一側軸受の切欠き溝内で上,下方向に変位可能とし、前記床板の傾転位置では前記切欠き溝から外れた狭幅軸部を前記ピン孔によって上,下方向に固定する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記床板支持機構には、前記床板を傾転させたときに、該床板の傾転動作を所定の角度位置で規制する傾転ストッパを設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−234832(P2010−234832A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82123(P2009−82123)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】