説明

建設機械

【課題】エンジン室の清掃負担を軽減しつつも、エアコンの冷却効果の低下を抑制することができる建設機械を提供する。
【解決手段】エアコン用の冷媒を冷却するコンデンサ24と、正転駆動時に誘起する順方向の冷却風でコンデンサ24を冷却するファン21と、コンデンサ24に対して順方向の冷却風の風下に配置したラジエータ25等の他の冷却対象物と、コンデンサ24を流れる冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出器27と、ファン21の逆転駆動時に冷媒圧力検出器27によるエアコン冷媒の検出圧力Pが予め設定された正転復帰圧力P1に達したら、ファン21を正転駆動に復帰させる逆転中止処理を実行するコントローラ136とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダや油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダや油圧ショベル等の建設機械の多くは、エンジンで駆動する油圧ポンプからの作動油で作業用の油圧アクチュエータを駆動する。この種の建設機械には、エンジン室内のラジエータや作動油クーラ等といった冷却対象物に冷却風を送るファンを逆転駆動することで、ファンの正転中に冷却対象物や除塵用のフィルタに付着した塵埃を逆流風で除去し、エンジン室の清掃負担を軽減する機能を持ったものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−182710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のファンを持つ建設機械では、運転室のエアコン用の冷媒を冷却するコンデンサをラジエータや作動油クーラ等の風上に置き、ファンによる冷却風を利用してエアコンの冷媒を冷却する場合がある。このような構成で上記のようにファンを逆転駆動する場合、コンデンサがラジエータ等の他の冷却対象物の風下になることからコンデンサに当たる風が昇温しエアコンの効きが悪くなってしまう。
【0005】
本発明はこうした事情に鑑みなされたもので、エンジン室の清掃負担を軽減しつつも、エアコンの冷却効果の低下を抑制することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、エアコン用の冷媒を冷却するコンデンサと、正転駆動時に誘起する順方向の冷却風で前記コンデンサを冷却するファンと、前記コンデンサに対して前記順方向の冷却風の風下に配置した他の冷却対象物と、前記コンデンサを流れる冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出器と、前記ファンの逆転駆動時に前記冷媒圧力検出器による前記冷媒の検出圧力が予め設定された正転復帰圧力に達したら、前記ファンを正転駆動に復帰させる逆転中止処理を実行するコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記コントローラは、前記逆転中止処理を実行する前に、前記ファンの逆転開始後、予め定めた強制逆転時間が経過するまでは、前記冷媒の検出圧力に関わらず前記ファンの逆転駆動を継続する強制逆転処理を実行することを特徴とする。
【0008】
(3)上記(2)において、好ましくは、一定時間置きに予め設定された逆転駆動時間だけ前記ファンを逆転駆動させる自動逆転処理を実行する機能を有していて、この自動逆転処理を実行中、前記強制逆転処理、前記逆転中止処理を順次実行し、前記ファンが逆転駆動したまま前記逆転駆動時間が経過したら前記ファンを正転駆動に復帰させることを特徴とする。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)において、好ましくは、前記強制逆転時間を設定する強制時間設定器又は当該強制時間設定器を接続する接続部を備えていることを特徴とする。
【0010】
(5)上記(2)−(4)のいずれかにおいて、好ましくは、前記逆転中止処理の有効無効を切り換える切換手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
(6)上記(2)−(5)のいずれかにおいて、好ましくは、エンジンと、このエンジンで駆動する油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される作動油で駆動する油圧アクチュエータと、前記作動油の温度を検出する作動油温度検出器と、車速を変速するトランスミッションと、このトランスミッションに前記エンジンの駆動力を伝えるトルクコンバータと、このトルクコンバータの動力伝達媒体であるトルコンオイルの温度を検出するトルコンオイル温度検出器と、前記エンジンの冷却水を冷却する前記他の冷却対象物としてのラジエータと、前記エンジンを制御及び監視するエンジン制御装置とを備え、前記コントローラは、前記ファンの逆転駆動時、前記作動油温度検出器若しくは前記トルコンオイル温度検出器の検出値のいずれかがそれぞれの設定値に達した場合、又は前記エンジンのオーバーヒートを警告する信号が前記エンジン制御装置から入力された場合には、前記ファンの逆転開始後の経過時間及び前記冷媒の検出圧力に関わらず前記ファンを正転駆動に復帰させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジン室の清掃負担を軽減しつつも、エアコンの冷却効果の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の一例であるホイールローダの側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る建設機械の一例であるホイールローダに備えられた駆動システムの概略構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る建設機械の一例であるホイールローダに備えられたエンジン室内の収容物の配置を模式的に示した平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る建設機械の一例であるホイールローダの典型的な動作の一例として土砂或いは砂利等の被掘削物をダンプ等に積み込む際の被掘削物のすくい込み作業の様子を表した模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る建設機械の一例であるホイールローダに備えられたコントローラによるファンの駆動制御の手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る建設機械の一例であるホイールローダの側面図である。
【0016】
図1に示したホイールローダ100は、車体110と、この車体101の前部に取り付けた作業機120とを備えている。
【0017】
車体110は、前部車体111と後部車体112とを備えている。これら前部車体111及び後部車体112は、それぞれ前輪(タイヤ)113及び後輪(タイヤ)114を備えており、鉛直方向に延びるセンタピン115を介して互いに屈曲可能に連結されている。図示していないが、前部車体111と後部車体112とにはステアリングシリンダが連結されており、このステアリングシリンダの伸縮駆動に伴って後部車体112に対して前部車体111が左右に屈曲する。また、後部車体112上には、前部に運転室116、後部にエンジン室117が搭載されている。エンジン室117には、後述する原動機としてのエンジン131、このエンジン131により駆動される油圧ポンプ134、この油圧ポンプ134から吐出された作動油の方向及び流量を制御するコントロールバルブ135等が収容されている。
【0018】
作業機120は、アーム121及びバケット122、並びにこれらアーム121及びバケット122を駆動するアームシリンダ123及びバケットシリンダ124を有する。アーム121はアームシリンダ123の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(俯仰動)し、バケット122はバケットシリンダ124の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(ダンプ動作又はクラウド動作)する。
【0019】
図2はホイールローダ100の駆動システムの概略構成を示したブロック図である。
【0020】
図2に示したように、ホイールローダ100の駆動システム130は、エンジン131、トルクコンバータ132、トランスミッション133、油圧ポンプ134、コントロールバルブ135、コントローラ136、エンジン制御装置137、トランスミッション制御装置138等を備えている。
【0021】
エンジン131の出力軸にはトルクコンバータ132の入力軸が連結され、トルクコンバータ132の出力軸はトランスミッション133に連結されている。トルクコンバータ132は周知のインペラ、タービン、ステータからなる流体クラッチであり、エンジン131の回転はトルクコンバータ132を介してトランスミッション133に伝達される。トランスミッション133は、その速度段を変速する液圧クラッチを有し、トルクコンバータ132の出力軸の回転はトランスミッション133で変速される。変速後の回転は、プロペラシャフト141及びアクスル142を介して前輪113及び後輪114に伝達され、これによってホイールローダ100が走行する。
【0022】
油圧ポンプ134は可変容量型のものであって、エンジン131により駆動されて作動油タンク23に貯留された作動油を吸い込んで吐出する。油圧ポンプ134のポンプ容量はレギュレータ(不図示)により変更される。レギュレータはポンプ吐出圧に応じてポンプ容量を変更し、例えば作業トルクが一定となるような定トルク制御を行う。なお、油圧ポンプ134にギヤポンプ等の固定容量型ポンプを用いることもできる。
【0023】
コントロールバルブ135は、模式的に図示してあるが実際には複数のコントロールバルブを含んでおり、それぞれ対応するコントロールバルブによって、アームシリンダ123、バケットシリンダ124、ファン駆動モータ22等の各油圧アクチュエータに対して油圧ポンプ134から供給される作動油の方向及び流量を制御するものである。このコントロールバルブ135は、運転室116内のアーム操作レバー11やバケット操作レバー12からの操作信号やコントローラ136からの指令信号により駆動し、例えばアーム操作レバー11及びバケット操作レバー12からの操作信号に応じてアームシリンダ123及びバケットシリンダ124への作動油の流れを制御したり、コントローラ136からの指令信号に応じてファン駆動モータ22への作動油の流れを制御したりする。
【0024】
上記のファン駆動モータ22は、ファン21を駆動するものである。ファン21は、運転室116の空調装置であるエアコン用の冷媒を冷却するコンデンサ24、エンジン131の冷却水を冷却するラジエータ25、作動油を冷却する作動油クーラ34(図3参照)、エンジン131の過給機で圧縮されて昇温した空気を冷却するインタークーラ35(図3参照)等の冷却対象物を冷却する冷却風を誘起するものである。これらコンデンサ24、ラジエータ25、作動油クーラ34、インタークーラ35は、図3の平面図に模式的に示したように、エンジン室117内においてエンジン131とファン21の間に配置されており、コンデンサ24及びインタークーラ35がエンジン131側に、作動油クーラ34及びラジエータ25がファン21側にある。ファン21の正転駆動時の順方向の冷却風は同図中に矢印で示したように誘起され、エンジン室117の側部から取り入れられて、コンデンサ24及びインタークーラ35側から作動油クーラ34及びラジエータ25に吹く。つまり、順方向の冷却風下では、作動油クーラ34及びラジエータ25は、コンデンサ24及びインタークーラ35等の他の冷却対象物に対して風下に位置する。
【0025】
図2に戻り、コントローラ136は、CPU、ROM、RAM、その他の周辺回路等を有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ136には、アクセルペダル13の操作量を検出するアクセル操作量検出器143、トランスミッション133の出力軸(又はプロペラシャフト141)の回転速度を車速として検出する車速検出器144、トルクコンバータ132の入力軸の回転速度Niを検出する回転速度検出器145、トルクコンバータ132の出力軸の回転速度Ntを検出する回転速度検出器146、ホイールローダ100の前進(F)・後進(R)・ニュートラル(N)を切り換える前後進切換スイッチ14、1速−4速の間で速度段の上限を指令する速度段スイッチ15、変速段の低速側への切換を指令するキックダウンスイッチ16、作業性を重視したパワーモード(以下「Pモード」という)又は燃費を重視したエコノミーモード(以下「Eモード」という)のいずれかの走行モードを選択するメインのモード切換スイッチ18(以下「メインスイッチ18」という)、同じくPモード又はEモードのいずれかの走行モードを選択するサブのモード切換スイッチ19(以下「サブスイッチ19」という)、作動油タンク23の作動油の温度を検出する作動油温度検出器26、コンデンサ24を流れる冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出器27、トルクコンバータ132の動力伝達媒体であるトルコンオイルの温度を検出するトルコンオイル温度検出器29、パーキングブレーキ装置(不図示)を作動させるパーキングブレーキ操作器30、ファン駆動モード(後述)を切り換えるファン駆動モード切換スイッチ31、ファン21の強制逆転時間(後述)の長さを設定する強制時間設定器32、ファン21の逆転中止処理(後述)の有効無効を切り換える切換スイッチ36、及び上記エンジン制御装置137等からの信号がそれぞれ入力される。
【0026】
ファン駆動モード切換スイッチ31は、「自動」「手動」「OFF」の3つのポジションを有しており、このファン駆動モード切換スイッチ31のポジションを「自動」、「手動」又は「OFF」にすることで、ファン駆動モードがそれぞれ自動モード、手動モード又はOFFに切り換わる。ここで、「自動モード」とは、ファン21の逆転駆動を一定時間置きに自動的に実行するファン駆動モードをいい、「手動モード」とは、ファン駆動モード切換スイッチ31を「手動」に入れているときにファン21を逆転駆動させるファン駆動モードである。また、ポジションを「OFF」に入れているときには、ファン21が逆転駆動することはない。また、3つのポジションのうちファン駆動モード切換スイッチ31のポジションを「自動」又は「OFF」にしている場合、ファン駆動モード切換スイッチ31から操作者が手を離しても当該ファンモード切換スイッチ31はそのポジションで保持されるが、ポジションを「手動」側に操作する場合、ファン駆動モード切換スイッチ31は「OFF」側に付勢され、ファン駆動モード切換スイッチ31から操作者が手を離したら当該ファンモード切換スイッチ31のポジションは「OFF」に復帰する。また、強制時間設定器32については、それ自体をホイールローダ100に備える構成と、この強制時間設定器32を接続する接続部をコントローラ136に備え、例えばパーソナルコンピュータ等の別途の装置を強制時間設定器32としてコントローラ136に接続する構成があり得る。
【0027】
トルクコンバータ132は入力トルクに対し出力トルクを増大させる機能、つまりトルク比を1以上とする機能を有する。トルク比は、トルクコンバータ132の入力軸と出力軸の回転速度の比であるトルクコンバータ速度比e(出力回転速度Nt/入力回転速度Ni)の増加に伴い小さくなる。例えばエンジン回転速度が一定状態で走行中に走行負荷が大きくなると、トルクコンバータ132の出力回転速度Ntつまり車速が減少し、トルクコンバータ速度比eが小さくなる。このとき、トルク比は増加するため、より大きな走行駆動力(牽引力)で車両走行が可能となる。すなわち車速が遅いと走行駆動力は大きく(低速高トルク)、車速が速いと走行駆動力は小さくなる(高速低トルク)。
【0028】
トランスミッション133は、1速−4速の各速度段に対応したクラッチ及びソレノイド弁(不図示)を有する自動変速機である。これらソレノイド弁は、コントローラ136からトランスミッション制御装置138へ出力される制御信号によって駆動され、対応するクラッチに圧油を作用させてクラッチを切り換える。コントローラ136には、予めシフトアップの基準となるトルクコンバータ速度比e1と、シフトダウンの基準となるトルクコンバータ速度比e2とが記憶されている。自動変速モードにおいて、コントローラ136は、回転速度検出器145,146からの信号によりトルクコンバータ速度比eを算出し、算出した速度比eが基準速度比e1より大きくなるとシフトアップ信号を、基準速度比e2より小さくなるとシフトダウン信号を、それぞれトランスミッション制御装置138に出力する。これによりトランスミッション133の速度段がトルクコンバータ速度比eに応じて1速−4速の間で自動的に変更される。
【0029】
この際、速度段は、速度段スイッチ15により選択された速度段を上限として自動変速される。例えば、速度段スイッチ15により2速が選択されている場合、速度段は速度比eに応じて1速又は2速となり、1速が選択されている場合、速度段は1速に固定される。なお、特に図示していないが、こうした自動変速モードから手動変速モードに切り換えられる機能を設け、手動変速モードにおいては速度段スイッチ15又は別途設けたスイッチの手動操作によって任意の速度段に変速できるようにすることも考えられる。
【0030】
また、キックダウンスイッチ16は速度段を強制的にシフトダウンさせるためのスイッチであり、コントローラ136は、キックダウンスイッチ16が1回操作される度にトランスミッション制御装置138にシフトダウン信号を出力し、その際の速度比eによらず速度段を強制的に1段ずつシフトダウンさせる。自動変速モードにおいては、例えば車速が低速度のときにキックダウンスイッチ16を操作することにより、速度段を強制的にシフトダウンすることができる。
【0031】
以上では、トルクコンバータ速度比eが所定値e1又はe2を跨ぐと変速するようにしたが、車速が所定値に達した場合に変速する構成とすることもできる。その場合、例えば、車速検出器144からの信号に応じてトランスミッション制御装置138にシフトアップ信号又はシフトダウン信号を出力する構成とすることで実現できる。
【0032】
また、コントローラ136は、アクセルペダル13の操作量に応じた目標エンジン速度にエンジン回転速度を制御する。すなわちアクセルペダル13の踏み込み量が大きくなると目標エンジン速度が大きくなり、コントローラ136はこの目標エンジン速度に対応した制御信号をエンジン制御装置137に出力し、エンジン回転速度を制御する。一方、エンジン制御装置137は、エンジン131を制御するのみならず、エンジン131の状態を監視する機能も果たす。具体的には、ラジエータ25を流れるエンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度検出器28やエンジン排気温度を検出する排気温度検出器(不図示)からの検出信号を入力し、それら検出値の一方又は双方が予め設定されたそれぞれの設定値に達しエンジン131がオーバーヒートした状態又はその危険性がある状態にあると判断したらオーバーヒート警告信号をコントローラ136に出力する。
【0033】
このとき、コントローラ136は、ファン21の逆転駆動時に冷媒圧力検出器27によるエアコン冷媒の検出圧力Pが予め設定された正転復帰圧力P1に達したら、ファン21を正転駆動に復帰させる逆転中止処理を実行する機能を有している。この逆転中止処理は、ファン21の逆転駆動に関するファン駆動モード(言い換えれば、前掲のファン駆動モード切換スイッチ31の切り換えポジション)が「自動」か「手動」かに関わらず機能し得るが、手動モード時には機能しないようにしても良い。但し、本実施形態において、この逆転中止処理は、ファン駆動モード(ファン駆動モード切換スイッチ31のポジション)が「OFF」になっていてファン21が逆転駆動しない場合、又は切換スイッチ36で当該逆転中止処理が無効にされているときには、実行されない。
【0034】
また、本実施形態において、ファン21の逆転駆動中は、逆転中止処理を実行する前に、コントローラ136によって強制逆転処理が実行されるようにしてある。この強制逆転処理とは、ファン21の逆転開始後、予め定めた強制逆転時間t1が経過するまでは、冷媒の検出圧力Pの値に関わらずファン21の逆転駆動を継続させる処理をいう。つまり、ファン駆動モード切換スイッチ31のポジションが「OFF」になっていない限り、一旦ファン21が逆転駆動し出したら、冷媒の検出圧力Pが正転復帰圧力P1に達しても、強制逆転時間t1の経過前であればファン21が逆転駆動を継続する。
【0035】
なお、ファン駆動モードとして自動モードを選択した場合には自動逆転処理が実行される。この自動逆転処理とは、一定時間(例えば60分又は90分程度)置きに予め設定された逆転駆動時間t2(>強制逆転時間t1)だけファン21を逆転駆動させる処理を言い、本実施形態において、コントローラ136は、この自動逆転処理の実行中、強制逆転処理、逆転中止処理を順次実行しつつ、逆転開始後、両処理を実行してもなおファン21が逆転駆動したまま逆転駆動時間t2が経過したら、ファン21を正転駆動に復帰させる。
【0036】
さらには、本実施形態において、ファン駆動モードが自動モードのときには、強制逆転処理、逆転中止処理と並行して、作動油温度検出器26、トルコンオイル温度検出器29、エンジン制御装置137からの入力信号を基にファン21を正転駆動に復帰させる処理を実行する。具体的には、ファン21の逆転駆動時、コントローラ136は、作動油温度検出器26若しくはトルコン油温度検出器29の検出値Ta,Tbのいずれかがそれぞれの設定値Ta1,Tb2に達した場合、又はエンジン131のオーバーヒート警告信号がエンジン制御装置137から入力された場合には、ファン21の逆転開始後の経過時間t及びエアコン冷媒の検出圧力Pの値に関わらず(強制逆転時間t1の経過前であろうがエアコン冷媒の検出圧力Pが正転復帰圧力P1以下であろうが)ファン21を正転駆動に強制的に復帰させるようにしてある。
【0037】
次に上記構成のホイールローダの動作について説明する。
【0038】
1.基本動作
図4はホイールローダ100の典型的な動作の一例として土砂或いは砂利等の被掘削物をダンプ等に積み込む際の被掘削物のすくい込み作業の様子を表した模式図である。
【0039】
図4に示したように、被掘削物をすくい込む際、典型的には、まず被掘削物の山P(以下単に「山P」という)に向かって例えば2速度段程度で前進し、山Pに近付く。その際、メインスイッチ18で走行モードをEモードにしておく。続いて、アーム操作レバー11及びバケット操作レバー12を操作してアーム121を下げてバケット122の開口を前方に向けるとともに、山Pに突入する直前でキックダウンスイッチ16を押下して2速から1速にキックダウンする。1速にキックダウンするのは被掘削物をバケット122に積み込むに当たって大きな走行駆動力を必要とするためである。
【0040】
山Pに突入したら、次にアーム操作レバー11のデテント機構(不図示)を使用してアーム上げ動作を保持する。これでアーム121は操作者がアーム操作レバー11から手を離してもアーム上げ動作が継続される。また、アーム上げ動作中、バケット操作レバー12を動作してバケット122をクラウド動作させることで被掘削物をバケット122内にすくい込む。この被掘削物をすくい込む際はアクセルペダル13の踏み込み加減で走行駆動力(牽引力)を調整する。このとき、被掘削物のすくい込み作業で被掘削物の性状や路面の状態によって必要以上に走行駆動力が上がらない方が良い場合とより大きな走行駆動力が要求される場合があるので、操作者は状況判断でEモードとPモードを適時に切り換え、スリップによって路面が抉れるのを回避しつつバケット122に被掘削物をすくい込む。こうしてバケット122に被掘削物を積み込んだら、前後進切換スイッチ14を操作して走行方向を後方に切り換え後進して山Pから離れ、再び走行方向を前方に切り換えてダンプトラック(不図示)の近くへ移動し、アーム操作レバー11及びバケット操作レバー12を操作してダンプトラックの荷台等に被掘削物を投入する。
【0041】
2.ファン制御動作
図5はコントローラ136によるファン21の前述した駆動制御の手順を表したフローチャートである。
【0042】
(1)ファン駆動モード判定
コントローラ136は、エンジン131の駆動中、ファン駆動モードとして「OFF」「自動」「手動」のどのポジションが選択されているかを判定する(S101)。ファン駆動モード切換スイッチ31が「OFF」のポジションにあってファン21の逆転中止処理が無効にされている場合には、コントローラ136は次の手順に移行することなく、S101の処理を繰り返し実行する(待機状態)。一方、コントローラ136は、ファン駆動モード切換スイッチ31が「自動」のポジションにあって自動モードが選択されている場合には手順をS201に移し、ファン駆動モード切換スイッチ31が「手動」のポジションにあって手動モードが選択されている場合には手順をS301に移す。
【0043】
(2)自動モード
(S201,S202)
自動モードに移行したら、コントローラ136は、まず自動モードに移行してから(又は自動モードに以降後、前回の自動逆転駆動から)予め設定された設定時間(60分、90分等)が経過して逆転開始時刻t0が到来したか否かを判定する(S201)。逆転開始時刻t0が到来していない間はS201の処理を繰り返し、逆転開始時刻t0が到来したら手順をS202に移す。S202では、コントロールバルブ135にファン21の逆転を指示する指令信号を出力することにより、ファン駆動モータ22を正転駆動から逆転駆動に切り換える。これによって、ファン21が正転駆動から逆転駆動に切り換わる。ファン21が逆転駆動すると、図3に示した冷却風の風向きが変わり(逆流し)、コンデンサ24及びインタークーラ35がラジエータ25及び作動油クーラ34の風下に変わる。
【0044】
(S203−S206)
S203−S206の処理は強制逆転処理である。まずS203では、作動油温度検出器26により検出された作動油温度Taが、この作動油温度Taに対して予め設定した設定値Ta1(正常温度範囲の上限値又はそれよりも所定の余裕値だけ低い値)以下であるかどうかを判定し、設定値Ta1以下であればS204に移る。同じように、S204では、トルコンオイル温度検出器29により検出されたトルコン油温度Tbが、このトルコンオイル温度Tbに対して予め設定した設定値Tb1(正常温度範囲の上限値又はそれよりも所定の余裕値だけ低い値)以下であるかどうかを判定し、設定値Tb1以下であればS205に移る。S205では、エンジン制御装置137から前述のオーバーヒート警告信号が入力されたか否かを判定し、オーバーヒート警告信号の入力がなければS206に移る。S206では、ファン21の逆転開始後(つまり逆転開始時刻t0から)強制逆転時間t1が経過したか否かを判定する。強制逆転時間t1の経過前であれば手順をS203に戻し、強制逆転時間t1が経過したら手順をS207に移す。S203−S206の間、エアコンの冷媒圧力Pを判定しないので、S203−S205の判定が満たされてさえいれば、強制駆動時間t1中は冷媒圧力Pの値に関わらずファン21が逆転駆動し続ける。
【0045】
一方、強制逆転時間t1の経過前に、S203−S205の判定のいずれかが満たされなくなった場合、コントローラ136は、いずれかの判定が満たされなかった時点で手順をS102に移し、S102の処理を経て図5の手順を終了する。S102では、コントロールバルブ135にファン21の正転を指示する指令信号を出力することにより、ファン駆動モータ22を逆転駆動から正転駆動に切り換える。これによって、ファン21が正転駆動に復帰する。
【0046】
なお、S203−S205の処理は順不同で良い。
【0047】
(S207−S211)
S207−S211の処理は逆転中止処理である。このうちのS207−S209の処理は、S203−S205と同じであり、S207−S209のいずれかの判定が満たされなければ、コントローラ136は手順をS102に移して図5の手順を終了し、S207−S209の判定が全て満たされれば、コントローラ136は、手順をS210に移す。S210では、冷媒圧力検出器27により検出された冷媒圧力Pが、この冷媒圧力Pに対して予め設定した設定値である正転復帰圧力P1(正常圧力範囲の上限値又はそれよりも所定の余裕値だけ低い値)以下であるかどうかを判定し、正転復帰圧力P1より大きければ、コントローラ136は手順をS102に移して図5の手順を終了し、正転復帰圧力P1以下であればS211に移る。S211では、ファン21の逆転開始後(つまり逆転開始時刻t0から)逆転駆動時間t2(>強制逆転時間t1)が経過したか否かを判定する。逆転駆動時間t2の経過前であれば手順をS207に戻し、逆転駆動時間t2が経過したら手順をS102に移してファン21を正転駆動に復帰させて図5の手順を終了する。
【0048】
先の強制逆転時間t1の経過前のS203−S206の処理(強制逆転処理)と異なり、S207−S211の処理(逆転中止処理)では、エアコンの冷媒圧力Pを判定するので、S207−S209の判定が満たされていても、冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1に達した時点でファン21が正転駆動に復帰する。
【0049】
なお、S207−S210の処理も順不同で良い。
【0050】
(3)手動モード
(S301−S302)
S101でファン駆動モードを手動モードと判定した場合(ファン駆動モード切換スイッチ31が「手動」のポジションにされている場合)、コントローラ136は、手順をS301に移してS202と同じようにファン21を正転駆動から逆転駆動に切り換える。続くS302では、パーキングブレーキ操作器30の信号を基にパーキングブレーキ装置が作動しているか否かを判定し、パーキング作動中であれば手順をS303に移し、パーキングブレーキ装置の非作動中であれば手順をS351に移す。
【0051】
(S303,S304)
パーキングブレーキ装置が作動している場合、コントローラ136は、ファン駆動モード切換スイッチ31のポジションが「手動」から切り換わっていないか否か(手動逆転の指示が解除されていないか否か)を判定する(S303)。ポジションが「手動」のままで手動逆転指示が継続されているようであれば手順をS304に移し、ポジションが「OFF」又は「自動」に切り換わって手動逆転指示が解除されていれば、手順をS102に移してファン21を正転駆動に復帰させて図5の手順を終了する。S304では、冷媒圧力検出器27により検出された冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1よりも大きいかどうかを判定し、正転復帰圧力P1以下であればファン21の逆転駆動を継続したまま手順をS302に戻す。一方、冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1よりも大きい場合、コントローラ136は、S102に移りファン21を正転駆動に復帰させて図5の処理を終了する。
【0052】
(S351,S352)
パーキングブレーキ装置が作動していない場合、コントローラ136は、手順をS302からS351に移し、強制逆転処理を実行後、一定時間(本例では逆転駆動時間t2を設定しているが強制逆転時間t1よりも長い時間であれば異なる時間でも良い)が経過したらファン21を正転駆動に復帰させる。S351,S352はそのうちの強制逆転処理に当たる。
【0053】
まずS351では、コントローラ136は、ファン駆動モード切換スイッチ31のポジションが「手動」から切り換わっていないか否か(手動逆転の指示が解除されていないか否か)を判定する。ポジションが「OFF」又は「自動」に切り換わって手動逆転指示が解除されていれば、手順をS102に移してファン21を正転駆動に復帰させて図5の手順を終了する。一方、ポジションが「手動」のままで手動逆転指示が継続されているようであれば手順をS352に移し、ファン21の逆転開始後(つまりファン駆動モード切換スイッチ31のポジションが「手動」に入った時刻から)強制逆転時間t1が経過したか否かを判定する。強制逆転時間t1の経過前であれば手順をS302に戻し、強制逆転時間t1が経過したら手順をS353に移す。したがって、パーキングブレーキ装置の非作動中は、手動逆転を開始してから強制逆転時間t1が経過するまでは、ファン駆動モード切換スイッチ31のポジションが「手動」のままである限りファン21が逆転駆動を継続する。
【0054】
(S353−S356)
S353では、引き続きパーキングブレーキ装置が非作動状態にあるか否かを判定し、パーキング作動に切り換わっていれば手順を先のS303に移し、引き続きパーキングブレーキ装置の非作動中であれば手順をS354に移す。S354では、コントローラ136は、ファン駆動モード切換スイッチ31のポジションが「手動」から切り換わっていないか否か(手動逆転の指示が解除されていないか否か)を判定する。ポジションが「OFF」又は「自動」に切り換わって手動逆転指示が解除されていれば手順をS102に移しファン21を正転駆動に復帰させて図5の手順を終了し、継続して逆転が指示されていれば手順をS355に移す。S355では、コントローラ136は、冷媒圧力検出器27により検出された冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1以下であるかどうかを判定する。冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1よりも大きければ手順をS102に移しファン21を正転駆動に復帰させて図5の処理を終了し、正転復帰圧力P1以下であればS356に手順を移す。S356では、コントローラ136は、ファン21の逆転を開始してから逆転駆動時間t2(>強制逆転時間t1)が経過したか否かを判定する。逆転駆動時間t2の経過前であれば手順をS353に戻し、逆転駆動時間t2が経過したら手順をS102に移しファン21を正転駆動に復帰させて図5の手順を終了する。
【0055】
コントローラ136は、エンジン131の駆動中、以上の図5の手順を繰り返し実行し、ファン駆動モードに応じてファン21の動作を制御する。
【0056】
なお、前述したように、ファン21の逆転中止処理は、切換スイッチ36によって無効にする(OFFにする)ことができる。図の煩雑防止のため図5では図示しなかったが、切換スイッチ36によって逆転中止処理が無効にされている場合は、例えば次のように処理を実行するようにすれば良い。(a)自動モードの場合、例えばS202の手順でファン21の逆転駆動を開始した後、逆転中止処理の有効無効を判定し、逆転中止処理が無効である場合には、S207−S209、S211に相当する手順をコントローラ136に順次実行させ、作動油温度Ta、トルコンオイル温度Tb、オーバーヒート警告信号をモニタしながら逆転駆動時間t2だけファン21が逆転駆動するようにすれば良い(S203−S206,S210に相当する処理は省略)。また、(b)手動モードの場合、S302,S303に相当する手順、又はS302,S351,S356に相当する手順(但し、逆転駆動時間t2の経過前においてS356→S302)を順次実行するようにすれば良い。
【0057】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
【0058】
(1)清掃性とエアコンの冷却効果の両立
ファン21を逆転駆動させた場合、正転駆動時に順方向の冷却風によってラジエータ25や作動油クーラ34、コンデンサ24、或いは図示しない除塵用のフィルタ等の冷却対象物に付着した塵埃を逆方向の冷却風によって吹き飛ばすことでエンジン室117内の清掃の負担を軽減することができる。その反面、前述したようにエアコン用の冷媒を冷却するコンデンサ24がラジエータ25や作動油クーラ34等の他の冷却対象物の風下になることから、コンデンサ24に当たる風が昇温し、その結果エアコンの効きが悪化し得る。
【0059】
そこで本実施形態では、ファン21の逆転駆動は実行しつつも、逆転駆動によって仮に急激にエアコンの冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1まで上がった場合、逆転駆動時間t2の経過前、或いは手動で逆転駆動を終了させる前であっても、ファン21を強制的に正転駆動に復帰させる。したがって、エンジン室117の清掃負担を軽減しつつも、エアコンの冷却効果の低下を抑制することができる。
【0060】
特に、図5のように強制逆転時間t2が経過するまでは冷媒圧力Pに関わらずファン21を逆転させるようにした場合には、清掃負担を軽減する効果を得る上で最低限のファン21の逆転動作を確保し易いので、エアコン性能を過度に重視した運用に偏らないようにすることができる。
【0061】
(2)エアコンの断続運転の抑制
エアコンには、冷媒圧力がある一定の値(ここでは第1の値という)以上になると停止する保護回路が備わっている場合がある。この場合、エアコン側の設定で、エンジンを一旦止めて再始動しないとエアコンが動かない場合があり、エアコンを再起動するためには作業を中断しなければならないことがある。これを回避するには、上記の保護回路が働く値よりも低い値(ここでは第2の値という)を建設機械側で設定し、冷媒圧力が第2の値に達したら建設機械側でエアコンを一時停止させ、冷媒圧力が下がるのを待ってエアコンを動作させる(又は動作を許可する)機能を組み込むことが考えられる。このような場合、仮にファン21の逆転駆動時に冷媒圧力を判断しない構成であると、冷媒圧力が上昇し易いファン21の逆転駆動中に上記のエアコンを停止させる機能が作動し易く、稼動現場の気温等の環境によってはエアコンの動作が間欠的になってしまう恐れがある。
【0062】
それに対し、本実施形態の場合、冷媒圧力Pが正転復帰圧力P1を超えたらファン21を正転駆動に復帰させてコンデンサ24を冷却するので、正転復帰圧力P1の設定を適正にすれば、エアコンの間欠運転を抑制することができる。
【0063】
また、作業運転中は作動油クーラ34やラジエータ25が昇温するので、非作業運転時に比べて、ファン21の逆転駆動によってコンデンサ24の温度はより上昇し易い。そのため、稼動現場で想定される温度環境等によっては作業運転中にファン21を逆転させること自体が難しい場合がある。それに対し、本実施形態では、冷媒圧力Pの過度な上昇を抑制することができるので、作業運転中においてもファン21を逆転駆動させ易い。
【0064】
(3)設定の柔軟性の確保
上記の強制逆転時間t1は、強制時間設定器32によって調整することができる。したがって、稼動現場の温度環境等に応じて強制逆転時間t1の設定を柔軟に調整することができ、清掃性とエアコンの冷却効果のバランスを考慮して柔軟に対応することができる。
【0065】
(4)操作者による選択自由度の確保
ファン21の逆転中止処理の有効無効は、切換スイッチ36により切り換えることができる。したがって、例えば多少エアコンの効きが悪くなっても清掃性が良いことを望む操作者は切換スイッチ36で逆転中止処理を無効にすることで、冷媒圧力Pが上昇してもファン21の逆転動作の時間を十分に確保し易く、メンテナンス性重視の運用を選択することができる。一方、清掃性よりも運転室116内の快適性を重視する場合には、切換スイッチ36で逆転中止処理を有効にすることで、冷媒圧力Pが上昇したらファン21を正転復帰させてエアコンの冷却効果の低下を抑制する快適性重視の運用を選択することができる。更に、手動モードに切り換えればファン21の逆転動作の時間をより長く確保し易い。
【0066】
なお、以上に例示した実施形態では、逆転中止処理の前に強制逆転処理を実行する場合を例に挙げて説明したが、場合によっては強制逆転処理のプログラムは省略しても良い。また、強制逆転時間t1を0(ゼロ)に設定することでも、強制逆転処理のプログラムを省略する場合と同様の動作を実行し得る。
【0067】
また、図5の手順において、手動モード時に作動油温度Taやトルコンオイル温度Tbを判定しない場合を例示したが、例えばS303及びS304の処理の間、S351及びS352の処理の間、S354及びS355の処理の間に、S203−S205に相当する処理を実行するようにしても良い。また、パーキング作動の入り切りで、S303−S304の手順かS351−S356の手順に分かれるようにしたが、パーキング作動の入り切りを考慮しない場合、S302−S304の手順を省略し、S301からS351に手順を移行するようにしても良い。又は、S302,S351−S356の手順を省略し、S301からS303に手順を移行するようにしても良い。パーキング作動の入り切りで制御を区別したのは、パーキング非作動時は作業運転が行われ得る(ファン21が逆転すればコンデンサ24が昇温し易い)状況であることから、強制逆転時間t1や逆転駆動時間t2の制御思想を取り入れることが好ましく、反対にパーキング作動時は作業運転が行われない(ファン21が逆転してもコンデンサ24が昇温し難い)状況であることから、強制逆転時間t1や逆転駆動時間t2でファン21の逆転時間を制限せず、操作者の裁量に任せることができるようにすることが好ましい、との考えに基づいている。
【0068】
また、上記実施形態では、ファン駆動モード切換スイッチ31を「手動」に入れることでファン21の逆転駆動を支持することとし、モード選択で逆転指示を兼ねる構成としたが、両者を分ける構成とすることもできる。例えば、ファン駆動モード切換スイッチ31は「手動」でもポジションが維持されるように構成し、ファン駆動モード切換スイッチ31を「手動」に切り換えること自体は手動モードの選択操作に止め、手動モード選択時に別途設けた手動逆転指示用のスイッチを操作することでファン21の逆転駆動を指示できるようにする。すなわち、ファン駆動モードを手動モードにすることで、手動逆転指示用のスイッチの操作を有効化する構成である。このような構成であっても良い。
【0069】
また、上記実施形態において、作動油温度検出器26を作動油タンク23に設けた場合を例示したが、作動油温度検出器26は作動油の流路中の別の箇所に設置しても良い。冷媒圧力検出器27についても、コンデンサ24に設置する場合に限らず、エアコン冷媒の流路中の別の場所に設置しても良い。また、ファン21を油圧駆動としたが、ファン21を電動とした場合にも本発明は適用可能である。更には、本発明をホイールローダに適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は油圧ショベル等の他の建設機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
21 ファン
24 コンデンサ
25 ラジエータ(他の冷却対象物)
26 作動油温度検出器
27 冷媒圧力検出器
29 トルコンオイル温度検出器
32 強制時間設定器
34 作動油クーラ(他の冷却対象物)
36 切換スイッチ(切換手段)
100 ホイールローダ(建設機械)
123 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
124 バケットシリンダ
131 エンジン
132 トルクコンバータ
134 油圧ポンプ
136 コントローラ
137 エンジン制御装置
141 トランスミッション
P 検出圧力
P1 正転復帰圧力
t1 強制逆転時間
t2 逆転駆動時間
Ta 作動油温度
Ta1 設定値
Tb トルコンオイル温度
Tb1 設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン用の冷媒を冷却するコンデンサと、
正転駆動時に誘起する順方向の冷却風で前記コンデンサを冷却するファンと、
前記コンデンサに対して前記順方向の冷却風の風下に配置した他の冷却対象物と、
前記コンデンサを流れる冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出器と、
前記ファンの逆転駆動時に前記冷媒圧力検出器による前記冷媒の検出圧力が予め設定された正転復帰圧力に達したら、前記ファンを正転駆動に復帰させる逆転中止処理を実行するコントローラと
を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1の建設機械において、前記コントローラは、前記逆転中止処理を実行する前に、前記ファンの逆転開始後、予め定めた強制逆転時間が経過するまでは、前記冷媒の検出圧力に関わらず前記ファンの逆転駆動を継続する強制逆転処理を実行することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2の建設機械において、一定時間置きに予め設定された逆転駆動時間だけ前記ファンを逆転駆動させる自動逆転処理を実行する機能を有していて、この自動逆転処理を実行中、前記強制逆転処理、前記逆転中止処理を順次実行し、前記ファンが逆転駆動したまま前記逆転駆動時間が経過したら前記ファンを正転駆動に復帰させることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2又は3の建設機械において、前記強制逆転時間を設定する強制時間設定器又は当該強制時間設定器を接続する接続部を備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項2−4のいずれかの建設機械において、前記逆転中止処理の有効無効を切り換える切換手段を備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項2−5のいずれかの建設機械において、
エンジンと、
このエンジンで駆動する油圧ポンプと、
この油圧ポンプから吐出される作動油で駆動する油圧アクチュエータと、
前記作動油の温度を検出する作動油温度検出器と、
車速を変速するトランスミッションと、
このトランスミッションに前記エンジンの駆動力を伝えるトルクコンバータと、
このトルクコンバータの動力伝達媒体であるトルコンオイルの温度を検出するトルコンオイル温度検出器と、
前記エンジンの冷却水を冷却する前記他の冷却対象物としてのラジエータと、
前記エンジンを制御及び監視するエンジン制御装置とを備え、
前記コントローラは、前記ファンの逆転駆動時、前記作動油温度検出器若しくは前記トルコンオイル温度検出器の検出値のいずれかがそれぞれの設定値に達した場合、又は前記エンジンのオーバーヒートを警告する信号が前記エンジン制御装置から入力された場合には、前記ファンの逆転開始後の経過時間及び前記冷媒の検出圧力に関わらず前記ファンを正転駆動に復帰させることを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193521(P2012−193521A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57090(P2011−57090)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(509241041)株式会社KCM (35)
【Fターム(参考)】