説明

建設機械

【課題】旋回体前方の運転室と旋回体後方との間に装設される屈曲可能な配管保持具の前後方向の寸法を小さくした建設機械を提供する。
【解決手段】運転室14を載置した上ベッド13を、下ベッド12に対し旋回体の前後方向に移動可能に設けた建設機械において、配管21を収納保持する屈曲可能な配管保持体23の一方端を、下ベッド12における運転室14の後方部に配置固定し、配管保持体23の他方端を、旋回体の前方側に折り返し、配管保持体23に収納保持した配管21の一方端(固定側端)を、折り曲げて旋回体の後方に導出し、配管21の他方端(移動側端)を、配管保持体23の側方に導出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方斜め下方の作業状況を監視可能なスライド式運転室を備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
運転室が建設機械における旋回体の前後方向にスライドする形式の建設機械としては、例えば、特許文献1に記載されているように、基礎工事や上下水道等の布設工事の際に堅坑を掘削する作業を行うために用いられている。
【0003】
この種の建設機械においては、運転室が建設機械における旋回体の前後方向にスライドする形式であるため、建設機械の旋回体後方上の動力源と運転室内の操作弁とを連結する配管に余裕をもたせているが、この配管の余裕を吸収するために、配管が装設される屈曲可能な配管保持具(ケーブルベア)が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−159132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した運転室が建設機械における旋回体の前後方向にスライドする形式の建設機械においては、稼動時間が長く使用されることがあるため、オペレータが運転室内に長時間在室することが多々あり、オペレータの環境改善が望まれている。
【0006】
この観点から、運転室内の居住空間を大きくしたいとの要求があるが、この要求を満たすために、運転室内の居住空間を大きくすると、旋回体の後方の空間が小さくなり、旋回体の後方の空間に動力源を配置できないという憾みがあった。
【0007】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、旋回体前方の運転室と旋回体後方との間に装設される配管保持具(ケーブルベア)の前後方向の寸法を小さくした建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、走行フレーム上に旋回可能に搭載した旋回体に設けた下ベッドと、前記下ベッドに前記旋回体の前後方向に移動可能に設けた上ベッドと、前記下ベッドと前記上ベッドとの間に設けた油圧シリンダと、前記上ベッド上に載置した運転室とを備え、運転室を前後方向に移動可能にした建設機械において、配管を収納保持する屈曲可能な配管保持体の一方端を、前記下ベッドの下部に連結する底板における前記運転室の後方部に配置固定し、前記配管保持体の他方端を、前記旋回体の前方側に折り返し、前記配管保持体に収納保持した配管の一方端(固定側端)を、折り曲げて前記旋回体の後方に導出し、前記配管の他方端(移動側端)を、前記配管保持体の側方に導出したものである。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記配管保持体の一方端の下面を案内する下ガイドを、前記底板の右側に固定し、前記配管保持体の他方端の下面を案内する上ガイドを、前記上ベッドに固定したものである。
【0010】
更に、第3の発明は、第2の発明において、前記下ガイドの前方側端に、前記配管を斜め前方下方に案内するガイドを設けたものである。
【0011】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記配管の一方端は、前記底板に設けた配管継手を介してパワーユニットにおける油圧源及び制御弁等に連結され、前記配管の他方端は、上ベッドに設けた配管継手を介して運転室内の複数の油圧操作機器に連結したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、旋回体前方の運転室と旋回体後方との間に装設される可撓性の配管保持具(ケーブルベア)の前後方向の寸法を小さくすることができるので、運転室内の居住空間を大きくすることができる。その結果、オペレータの環境改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の建設機械の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1に示す本発明の建設機械の一実施の形態における本体を拡大して示す側面図である。
【図3】本発明の建設機械の一実施の形態を構成する旋回体フレームを示す平面図である。
【図4】本発明の建設機械の一実施の形態を構成するベッド及び配管保持具の部分を示す斜視図である。
【図5】図4に示す本発明の建設機械の一実施の形態を構成するベッド及び配管保持具の部分の平面図である。
【図6】図4に示す本発明の建設機械の一実施の形態を構成するベッド及び配管保持具の部分の側面図である。
【図7】図6に示す本発明の建設機械の一実施の形態を構成する配管保持具と配管保持具を案内するガイド部分を拡大して示す側面図である。
【図8】本発明の建設機械の一実施の形態を構成する配管保持具の端部を固定するとともに配管を案内するガイドを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の建設機械の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図8は、多段伸縮式アーム作業機を備えた本発明の建設機械の一実施の形態を示すもので、まず、本発明の建設機械の一実施の形態の概略構成を図1及び図2を用いて説明する。
図1は多段伸縮式アーム作業機を備えた本発明の建設機械の一実施の形態を示す側面図、図2は図1に示す本発明の建設機械の一実施の形態における本体を拡大して示す側面図である。
図1及び図2において、本発明の建設機械の一実施の形態は、走行フレーム1に設けた走行体2と、走行フレーム1上に旋回可能に搭載した旋回体3と、旋回体3に俯仰可能に設けたブーム4とを有する。ブーム4の先端部には伸縮可能な多段伸縮式アーム5(以下、伸縮アーム)がアームシリンダ5aを介し鉛直面内に回動可能に軸支されている。ブーム4はブームシリンダ4aの伸縮によって俯仰し、伸縮アーム5はアームシリンダ5aの伸縮によって回動する。伸縮アーム5の先端には、掘削作業を行う開閉バケット6が装着されている。
【0015】
旋回体3は、旋回装置7を介して走行フレーム1に旋回可能に設けた旋回体フレーム8を備えている。旋回体フレーム8上には、その後部から前方に向かって、カウンタウエイト9と、エンジン、油圧ポンプ、制御弁装置等を収納したパワーユニット10が設けられている。
【0016】
旋回体フレーム8の左側の前方部には、図2に示すように、運転室を前後方向に移動可能にするためのベッド11が設けられている。ベッド11は、旋回体フレーム8上の左右方向にそれぞれ固定した2つの下ベッド12と、下ベッド12に前後方向に移動可能に設けた上ベッド13とからなっている。ベッド11における上ベッド13の前方部には、運転室14が載置されている。運転室14とパワーユニット10との間の下ベッド12には、後述する配管を収納する空間15を覆うカバー16が設けられている。
【0017】
次に、上述した旋回体フレーム8及び運転室14を前後方向に移動可能にするためのベッド11の構成を、図3を用いて説明する。この図3において、図1、図2に示す符号と同符号のものは、同一部分である。
図3において、旋回体フレーム8の中央部には、旋回装置7の取付部7aが設けられている。また、旋回体フレーム8の前方中央部には、ブーム4の基端部が連結される連結部4bが設けられている。旋回体フレーム8の前方左側には、前述した旋回体フレーム8上に固定した下ベッド12と下ベッド12に前後方向に移動可能に設けた上ベッド13とからなるベッド11が設けられている。
【0018】
上ベッド13の前方上部には、運転室14の床板14aが弾性支持されている。下ベッド12と上ベッド13と空間内には、上ベッド13を下ベッド12に対して前後方向に移動させるための油圧シリンダ17が設けられている。油圧シリンダ17のシリンダ本体17aは、下ベッド12に固定され、ピストンロッド17bの先端部は、上ベッド13に連結されている。これにより、油圧シリンダ17のピストンロッド17bを伸縮させることにより、運転室14は前後方向に移動する。
【0019】
次に、前述した配管を収納する空間15内に設けた配管保持具及びベッド部分の構成を、図4乃至図8を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の一実施の形態を構成するベッド及び配管保持具の部分を示す斜視図、図5は図4に示す本発明の建設機械の一実施の形態を構成するベッド及び配管保持具の部分の平面図、図6は図4に示す本発明の建設機械の一実施の形態を構成するベッド及び配管保持具の部分の側面図、図7は図6に示す本発明の建設機械の一実施の形態を構成する配管保持具と配管保持具を案内するガイド部分を拡大して示す側面図、図8は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する配管保持具の一方端を固定するとともに配管を案内するガイドを拡大して示す斜視図である。図4乃至図8において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分である。
図4乃至図6において、運転室14の床板14a上には運転室空間が形成されるが、この空間内には、操作レバー(図示せず)により操作されるパイロット操作弁18、走行操作レバー19により操作される切換弁(図示せず)、ペダル20により操作される切換弁(図示せず)等の複数の油圧操作機器が配置されている。
【0020】
ベッド11を構成する下ベッド12の下には、底板18が設けられている。底板18の後部側の右側上部には、図4に示すように、本体側の油圧源及び制御弁と運転室14内の油圧操作機器とを連結し、長さに余裕をもった複数の配管21を保持する配管保持具22が配置されている。
【0021】
配管保持具22は、複数の連結部材23aを嵌合による連結によりで帯状にかつ屈曲可能に構成した配管保持体23と、底板18上に固定され、配管保持体23の下側を案内保持する下ガイド24と、一方の上ベッド13に設けられ、上方に屈曲した配管保持体23の下側を案内保持する上ガイド25とを備えている。上ガイド25は、下ガイド24の上方に位置しており、上ガイド25の前後方向長さは、下ガイド24の前後方向長さよりも小さく設定されている。
【0022】
配管保持体23はその連結部材23aによって形成した空間内に複数の配管21を収納し、保護している。配管保持体23の一方端は、図4及び図6に示すように、下ガイド24の前方端に固定され、他方端は下ガイド24によって後方に敷設されたのち、前方に折り曲げられて上ガイド25に案内されている。
【0023】
下ガイド24の前方部に設けたガイド26に配管保持体23の一方端が斜め前方下方に取り付けられているため(ガイド26部分の構成については後述する。)、配管保持具22における配管保持体23に収納保持された複数の配管21の一方端は、斜め下方に折り曲げられて、下ガイド24の下面と底板18との間の空間を通って、後方に導出されている。更に、配管21の一方端は、底板18に設けた配管継手29aの一方側に連結されている。配管継手29aの他方端には、底板18に設けた孔27を通り抜けた配管28が連結されている。配管28は、前述したパワーユニット10における油圧源及び制御弁等に連結されている。
【0024】
一方、配管21の他方端は、図4及び図5に示すように、上ガイド25の前方端から運転室14の底板14aの後部左側に対応する上ベッド13側に導出され、上ベッド13に固定した配管継手29bの一方側に連結されている。配管継手29bの他方端には、運転室内の複数の油圧操作機器に連結する配管30が連結されている。上述のような配管21の配設により、配管21は側面視において、S字状になっている。
【0025】
次に、前述した配管保持具22における配管保持体23を案内するガイド部分、及び配管保持体23の一方端が固定されるガイド26を、図7及び図8を用いて説明する。図7及び図8において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分である。
【0026】
下ガイド24の前方部に設けたガイド26は、図8に示すように、下ガイド24の下面に固定される平面部26aと、この平面部26aに一体的に設けた傾斜部26bと、傾斜部26bの両側部26cを残すように設けた切り欠き部26dと、平面部26aの両側に設けたボルト孔26eと、傾斜部26bの両側部26cに設けたボルト孔26fとで構成されている。
【0027】
ガイド26は、図7に示すように、傾斜部26bが下ガイド24の前方側に位置するように、ボルト孔26eに通したボルト26gにより平面部26aが下ガイド24の下面に固定される。
【0028】
ガイド26における傾斜部26bの両側部26cには、図7に示すように、ボルト孔26fを通したボルト26hにより、配管保持体23における一方端の連結部材23aが斜め前方下方に向くように固定される。
【0029】
ガイド26における切り欠き部26dには、配管21が入り込んでおり、その後、配管21は、斜め下方に折り曲げられて、下ガイド24の下面と底板18との間の空間を通って、後方に導出されている。
【0030】
次に、上述した本発明の建設機械の一実施の形態の動作を図面を用いて説明する。
本発明の建設機械の一実施の形態においては、例えば、基礎工事や上下水道等の布設工事の際に堅坑を掘削する作業を行うために用いられているが、作業の進行に伴い、運転室14の斜め下方の視界を確保したい場合、油圧シリンダ17のピストンロッド17bを伸長させることにより、ベッド11における上ベッド13を下ベッド12に対して前方に突出させることができるので、上ベッド13上の運転室14を、図2の2点鎖線で示すように、旋回体3の前方に移動させることができる。また、油圧シリンダ17のピストンロッド17bを縮小させることにより、運転室14を旋回体3側に引き込むことができる。
【0031】
上述した運転室14の前後方向の移動に際し、配管21は配管保持具22における配管保持体23、下ガイド24、及び上ガイド25に案内されて、追随して移動する。
【0032】
上述した配管保持具22においては、配管21を収納保持する屈曲可能な配管保持体23の一方端を、下ベッド12を連結する底板18における運転室14の後方部に配置固定し、配管保持体23の他方端を、旋回体3の前方側に折り返し、また、配管保持体23に収納保持した配管21の一方端(固定側端)を、折り曲げて旋回体3の後方に導出し、配管21の他方端(移動側端)を、配管保持具22の側方(旋回体3の左側)に導出したので、配管保持具22の前後方向の寸法を小さくすることができる。
【0033】
その結果、旋回体3の後部を後方に突出させることなく、運転室14の空間、特に、前後方向の空間を確保することができるので、オペレータの環境改善を図ることができる。例えば、前後方向の空間を大きくできることに関連して、例えば、運転席14の後方空間に休憩用の座席を設置したり、また、リクライニングシートのように、運転席の背当を後方に移動させることができる等の環境改善、居住性改善が可能になる。
【0034】
なお、上述の実施の形態においては、図5に示すように、配管保持具22を底板18の右側に偏って配置したので、底板18の左側には空間Aが形成される。このため、この空間A部分に、配管保持具22及びパワーユニット10を点検するためのプラットホームを設置することが可能である。これにより、機器のメンテナンス性を向上させることができる。
【0035】
また、上記の実施の形態では、旋回体3にブーム4、伸縮アーム5を介してバケット6を設けるようにしたが、バケット以外の他の作業装置を設けるようにしてもよい。また、掘削以外の他の作業を行うようにしてもよい。上記実施の形態は、油圧ショベルをベースとして用いたが、他の作業機(例えばホイールショベルやクレーン)をベースとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
2 走行体
3 旋回体
11 ベッド
12 下ベッド
13 上ベッド
14 運転室
17 油圧シリンダ
18 底板
21 配管
22 配管保持具
23 配管保持体
24 下ガイド
25 上ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行フレーム上に旋回可能に搭載した旋回体に設けた下ベッドと、前記下ベッドに前記旋回体の前後方向に移動可能に設けた上ベッドと、前記下ベッドと前記上ベッドとの間に設けた油圧シリンダと、前記上ベッド上に載置した運転室とを備え、運転室を前後方向に移動可能にした建設機械において、
配管を収納保持する屈曲可能な配管保持体の一方端を、前記下ベッドの下部に連結する底板における前記運転室の後方部に配置固定し、前記配管保持体の他方端を、前記旋回体の前方側に折り返し、
前記配管保持体に収納保持した配管の一方端(固定側端)を、折り曲げて前記旋回体の後方に導出し、前記配管の他方端(移動側端)を、前記配管保持体の側方に導出した
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記配管保持体の一方端の下面を案内する下ガイドを、前記底板の右側に固定し、前記配管保持体の他方端の下面を案内する上ガイドを、前記上ベッドに固定したことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記下ガイドの前方側端に、前記配管を斜め前方下方に案内するガイドを設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記配管の一方端は、前記底板に設けた配管継手を介してパワーユニットにおける油圧源及び制御弁等に連結され、前記配管の他方端は、上ベッドに設けた配管継手を介して運転室内の複数の油圧操作機器に連結したことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−46885(P2012−46885A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187166(P2010−187166)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】