説明

建設的に干渉する電磁放射を用いた熱処理システム

方法及びシステムは、対象の他の部分を傷つけずにマイクロ波又は他の電磁放射を用いて対象の一部を熱処理することを可能にする。一実施形態では、複数の電磁放射トランスミッタが、熱処理システム内に配置されて、制御プロセッサに結合される。電磁放射は、擬似ランダム波形として伝送され得て、また、マイクロ波放射であり得る。制御プロセッサは、放出された電磁放射が処理ボリューム内で建設的に干渉する一方で対象の残りの部分を通過する放射がランダムに干渉する又はノイズとして現れるように、トランスミッタを調整する。結果として、電磁放射波形が同位相で到達するボリューム内において、全てのトランスミッタの出力が建設的に合わさって、顕著な温度上昇をもたらす一方で、対象の残りの部分は、はるかに低い出力レベル、つまりは低い温度上昇に晒される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に治療システムに係り、特に組織を熱処理する無線周波数放射を用いた治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理は、スポーツの怪我や感染症、癌といった多数の病状を処理するために使用される。典型的な熱処理では、熱エネルギーが、対象の組織に印加されて、組織の温度を通常の体温よりも数度上昇させる。多くの種類の病原体及び異常細胞は、高温に晒された際に、殺されるか、薬(例えば化学療法)又は体自体の免疫システムに対して弱体化される。熱処理の一つの形式では、加熱ブランケットや加熱ユニットを適用すること等によって、処理される領域近傍の体の外側に熱を印加することが含まれる。しかしながら、このような処理は、熱が印加される近傍全ての組織を加熱するので、周囲の健康な組織に悪影響を与え得る。熱処理の他の形式では体内で組織を加熱し、電子レンジが食べ物を加熱するように、組織内の水分子を励起することによって、組織の温度を上昇させるマイクロ波放射を組織に晒すことによって行われる。しかしながら、この熱処理法でも、マイクロ波放射の経路内の全ての組織を加熱するので、周囲の健康な組織に悪影響を与え得る。
【0003】
体内の組織を処理するのに一般的に用いられる他の方法では、X線やガンマ線等のイオン化放射に組織を晒すことが含まれる。周知のように、腫瘍は、その腫瘍組織を一連の細いX線又はガンマ線ビームに露光することによって、何度も処理されて、各露光は複数の異なる露光角で行われる。このプロセスは、複数のビームの収束点において腫瘍組織を高放射線量の放射に露光する一方で、体の残りの部分を低い総放射線量(つまり、略単一のビーム露光に対する放射線量)に露光する。更に、このような方法は、高精度の多数の可動部を備えたエミッタの注意深い位置決め及び較正を必要とする。こうした処理方法は高度に有効なものであり得るが、このような多重ビーム方法は、マイクロ波放射を用いた熱処理には適用不能である。何故ならば、熱処理の目的は、マイクロ波放射への連続露光を必要とする期間にわたって組織温度を上昇させることだからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4589423号明細書
【特許文献2】米国特許第5723001号明細書
【特許文献3】米国特許第5713946号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多様な実施形態が、マイクロ波又は他の電磁放射を用いて、対象の他の部分を傷つけずに、対象の一部分を熱処理するための方法及びシステムを提供する。多様な実施形態が、対称の組織又は物質の残りの部分を高温に晒さずに、熱処理を対象内部深くで達成することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、複数の電磁放射トランスミッタが、熱処理システム内の既知の位置に配置されて、制御プロセッサに結合される。制御プロセッサは、放出される電磁放射が所望の処理ボリューム(体積部分)内で建設的に干渉するように調整された方法で、各トランスミッタの伝送を制御するように構成される。各トランスミッタにより放出される電磁放射の波面及び時間遅延又は位相遅れを設定することによって、放射が、熱処理が望まれるボリューム内で建設的に干渉する一方で、対象の残りの部分を通過する電磁放射はノイズとして現れる。結果として、顕著な量の熱エネルギーを処理ボリューム内に付与することができる一方で、対象の残りの部分が低い平均出力レベルに晒されて、低い温度上昇を経る。一部実施形態では、電磁放射はマイクロ波放射であり、特に、生体組織等の含水物質を熱処理するために用いられるものである。一実施形態では、電磁放射は、短パルスの形状で放出され得て、その短パルスは、全てのパルスが処理ボリュームに同時に到達するように個別に決定された時間において各トランスミッタから放出される。他の実施形態では、マイクロ波放射は、時間遅延又は位相遅れを備えて全てのマイクロ波トランスミッタによって擬似ランダム波形で送られて、波形が、処理ボリューム内では互いに建設的に強め合う一方で、対象の残りの部分全体にわたってランダムノイズとして現れるようにする。一実施形態では、擬似ランダム波形は、符号分割多重アクセス(CDMA)通信システムにおいて用いられる波形と同様のものであり得る。
【0007】
本願に含まれ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の例示的な側面を例示する。上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明と共に、図面は本発明の特徴を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の熱処理システムの実施の一例の図である。
【図2】図1に示されるシステムの断面図を含む熱処理システムの一部のシステムブロック図である。
【図3】腫瘍内部の二つのマイクロ波放射の波面の交差を示す熱処理システムの断面図である。
【図4】腫瘍内部の複数のマイクロ波放射の波面の交差を示す熱処理システムの断面図である。
【図5A】本発明の一側面に係るマイクロ波パルスを示すマイクロ波放射の振幅対位置のグラフである。
【図5B】本発明の一側面に係るマイクロ波パルスを示すマイクロ波放射の振幅対位置のグラフである。
【図6】図5Bに示されるマイクロ波パルスの累積出力を示す出力対位置の例示的なグラフである。
【図7A】本発明の多様な側面における使用に適したマイクロ波擬似ランダム波形の振幅対時間の図である。
【図7B】図7Aに示されるマイクロ擬似ランダム波形の振幅対位置の図である。
【図7C】四つの擬似ランダム波形のマイクロ波放射信号の振幅対位置の図である。
【図8】図7Cに示されるマイクロ波擬似ランダム波形の組み合わせの結果の累積出力を示す出力対位置のグラフである。
【図9A】本発明の多様な側面における使用に適した別のマイクロ波擬似ランダム波形の振幅対位置の図である。
【図9B】図9Aに示されるものと同様の四つの擬似ランダム波形のマイクロ波放射信号の振幅対位置の図である。
【図10】図9Bに示されるマイクロ波擬似ランダム波形の組み合わせの結果の累積出力を示す出力対位置のグラフである。
【図11】本発明の一側面に係る患者を熱処理する方法の一例を示すプロセスフロー図である。
【図12】図11に示される方法に含まれる幾何学計算を示す熱処理システムの断面図である。
【図13】マイクロ波放射の伝播に対する組織の影響を考慮した図11に示される方法に含まれる計算を示す熱処理システムの断面図である。
【図14】本発明の一側面に係る熱処理システムの一部の構成要素のブロック図である。
【図15】本発明の一側面での使用に適した計算システムの構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、多様な側面について詳述する。可能な限り、同じ参照番号は図面全体にわたって同じ又は同様の部分を指称する。特定の例及び実施の参照は、例次目的であって、本発明又は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0010】
本願において、“熱処理”との用語は、体又は物質の少なくとも一部を熱エネルギーの付与又は印加によって加熱するプロセスを含むものである。本願において、“マイクロ波”及び“マイクロ波放射”との用語は、体内に熱エネルギーを付与する可能性(体温を上昇させる可能性等)を有する電磁放射を指称するものであるが、特定の周波数又は波長を示すものではない。特定の実施形態では、水分子を励起する周波数又は波長のマイクロ波放射を用いて、人体組織等の生体組織を熱処理する。しかしながら、他の波長又は周波数の電磁放射が、他の種類の物質を処理する際に使用され得て、物質内部の多様な熱振動を励起する周波数等が挙げられる。
【0011】
多様な側面は、患者を処理するのに適した治療システムに関して示されるものであるが、本発明は、広範な応用を有し、人間以外の対象や、非生体の熱処理が挙げられる。従って、“患者”、“対象”、“組織”についての言及は、人間及び人間以外の処理の応用の両方を含むものである。更に、“熱処理”との用語は、生体又は非生体への熱の付与又は温度上昇のための多様な実施形態の応用を含むものである。
【0012】
概要として、例示的な実施形態では、複数のマイクロ波トランスミッタが、熱処理システム内の既知の位置に配置されて、制御プロセッサに結合される。制御プロセッサは、放出される電磁放射が所望の処理ボリューム(体積部分)に収束して到達して放射の建設的な干渉がそのボリューム内で生じるように調整された方法で、各トランスミッタの伝送を制御するように構成される。各トランスミッタによって放出される電磁放射の放出波形及び時間遅延又は相対位相を設定することによって、放射が、熱処理が望まれるボリューム内において建設的に干渉する一方で、対象又は物質の残りの部分を通過する電磁放射はランダムに干渉する。結果として、多量の熱エネルギーが処理ボリューム内に付与される一方で、対象の残りの部分がはるかに低い平均出力レベルに晒されて、はるかに低い温度上昇を経る。このように(つまり、処理点において建設的な干渉が生じるように)マイクロ波放射等の電磁放射の印加を調整することによって、対象の組織又は物質の残りの部分を高温にせずに、対象内部深くでの熱処理を達成することができる。一実施形態では、電磁放射は、個別に決定された時間において各トランスミッタから放出される短パルスの形状で放出されて、全てのパルスが、処理ボリュームに同時に到達するようにされる。他の実施形態では、擬似ランダム波形が、全てのマイクロ波トランスミッタによって、時間遅延又は位相遅れを伴って放出されて、波形が、処理ボリューム内において互いに強め合って干渉する一方で、対象又は物質の残りの部分全体にわたってはランダムノイズとして現れるようにされる。この実施形態では、擬似ランダム波形は、符号分割多重アクセス(CDMA,code division multiple access)通信システムにおいて使用されるものと同様であり得る。
【0013】
一実施形態では、複数の比較的低出力のトランスミッタが、既知の位置において、熱処理の対象(患者、構造、物質ボリューム等)を受け入れるように構成されたボリュームの周辺に配置される。図1に示されるように、こうしたシステムは、処理される対象を収容する構造(開放されているか閉じられ得る)を含み得て、一実施形態では、可動テーブル3等の上に患者又は対象を配置可能な内部ボリューム2を形成する内面を備えたシリンダー1の形状であり得る。この例では、熱処理システムの外観は、磁気共鳴画像法(MRI,magnetic resonance imaging)、コンピュータ支援トモグラフィ(CAT,computer aided tomography)画像法、ポジトロン放出トモグラフィ(PET,positron emission tomography)画像法システムの外観に似たものであり得る。
【0014】
図2は、熱処理システムのシステム構成要素の一部を示すシリンダー1の断面図を示す。この断面図は、如何にして一実施形態において複数のトランスミッタ6a〜6gを内部ボリューム2の周囲に配置し得るかを示す。処理対象9は、内部処理ボリューム10(腫瘍等)の熱処理用にテーブル3上に配置され得る。複数のトランスミッタ6a〜6gは、複数の接続部(ケーブル5等)を介してコンピュータプロセッサ4に結合されて制御可能である。複数のトランスミッタ6a〜6gは、あらゆる周波数の電磁放射を伝送し得る。好ましい実施形態では、トランスミッタは、組織等の含水物質を熱処理するのに適したマイクロ波放射を伝送する。説明を簡単にするため、この説明では、トランスミッタ6a〜6gがマイクロ波トランスミッタであるとして参照する。しかしながら、このような参照は、実施形態がマイクロ波放射に必ず限定されることを意図したものではない。また、図2ではトランスミッタが平面内に配置されているが、トランスミッタを三次元空間内に分布させることができる。
【0015】
多様な実施形態において実施される処理ボリューム内部の電磁放射(例えばマイクロ波放射)の電磁放射の建設的な干渉のコンセプトが図3に示されている。この図は、対象9の周辺に配置された複数のマイクロ波トランスミッタ6a〜6gを含む熱処理システム1の断面を示す。マイクロ波パルスが一つのトランスミッタ(トランスミッタ6a等)から放出されると、そのパルスは、波面7aとして光速で外側に伝わる。従って、所定の時間内に、マイクロ波放射が、所定の距離8aを伝わる。図3では、放出された波面7aは、トランスミッタ6aから距離8aにある処理ボリューム10と交差している。同様に、他のトランスミッタ6fから放出された放射は、異なる距離8fを伝わって、処理ボリューム10に到達する。マイクロ波の伝送が適切に時間調整されると、トランスミッタ6a、6fの各々からの波面7a、7fは、処理ボリューム10に同時に到達する。
【0016】
このコンセプトは、図4に示されるような複数のマイクロ波トランスミッタ6a〜6gを用いることによって処理ボリューム10内部に顕著な量のマイクロ波放射を集束させるために採用可能である。図4に示されるように、複数(例えば7つ)のマイクロ波トランスミッタ6a〜6gからの波面は、波面又はパルスが処理ボリューム10において重畳するように同時に到達するように調整可能である。この図は、対象9の残りの部分において、少数の波面が交差している様子も示す。例次目的で、図4は、7つのマイクロ波トランスミッタ6a〜6gを示すが、多様な実施形態では、より少ない又はより多いトランスミッタが使用され得る。図4に示されるように、処理領域は典型的にシステム1の中心線からずれていて、内部ボリューム2内部のいずれかの位置にあり得る。それにも関わらず、波面7a〜7gの同時到達が、トランスミッタ6a〜6gの各々から放出されるパルスのタイミング又は位相遅れを制御することによって、達成可能である。
【0017】
処理ボリューム10内における所望の濃度のマイクロ波エネルギーを得るために、多様な実施形態において、多様な波形を実施し得る。図5Aは、マイクロ波エネルギーが離散パルス12の形状で放出される一方法を示す。このようなパルスは、部分20に示されるようなほとんど又は全く伝送エネルギーの無い長い期間によって分離された部分22に示されるような短期間のものであり得る。マイクロ波パルスは光の速度で伝わるので、その形状は、振幅対時間(図示せず)や、図示される振幅対トランスミッタからの距離としてグラフで表すことができる。図5Aの振幅対距離の表示では、例次目的で、パルス12は、そのパルスがトランスミッタ6と処理ボリューム10との間の距離8まで伝わった瞬間に対して示されている。この図は、その特定の瞬間におけるトランスミッタと処理ボリューム10との間の直線に沿って現れるものとして波形を示している。これは、パルスがトランスミッタから処理ボリュームに向けて距離8まで伝わった瞬間において、如何にしてパルス幅部分22が処理ボリューム10に広がり、ボリューム内にエネルギーを付与する一方で、ボリュームの残りの部分20が少ないエネルギーを受けるのかを示す。勿論、対象を介するパルス12の伝送は、時間に対して平均すると、エネルギー伝播の経路に沿って同じエネルギー付与をもたらす。
【0018】
図5Bも、図5Aに示されるのと同じ瞬間における振幅対距離の表示で波形を示し、他のトランスミッタから放出されたパルスが含まれる。各トランスミッタから処理ボリューム10までの距離は異なる(図3及び図4を参照)。しかしながら、適切なタイミング又は位相遅れで各トランスミッタからパルスを放出することによって、全てのパルスを、部分22において示されているように同時に処理ボリューム10に到達するように構成することができる。各トランスミッタからのパルス伝送のタイミングは、トランスミッタと処理ボリューム10との間の距離、及びこれら二点間を伝わる光の速度(つまり、図13を参照して後述されるように、空気中の光の速度と、対象中の光の速度)に依存する。パルスが全て適切なタイミングで放出されると、各パルス内のエネルギーが互いに合わさって、対象の残りの部分20よりも処理ボリューム10内に実質的により多くのエネルギーを付与する。各トランスミッタからのパルスは対象の残りの部分20を通過するが、異なる経路を伝わり、伝わった距離が異なるので、パルスが一致(つまり、同じ瞬間に同じ点を通過)しない。これは図5Bに示されていて、他のパルス12b’、12c’、12d’、12”は、一つのトランスミッタと処理ボリューム10との間の直接経路(距離8)に沿ってボリュームの残りの部分20内で一致しない。
【0019】
所定の瞬間に対象内に付与されるエネルギーは、図6に示されるようにパルスの和に比例する。図示されるように、パルスが一致する処理ボリューム10(部分22)において、パルスが重畳して建設的に強め合う瞬間にそのボリュームに付与されるエネルギーは、対象の残りの部分20にその瞬間に付与されるエネルギーを大幅に超える。所定の瞬間において、ボリュームの残りの部分20は、全くエネルギーを受けないか、単一パルスのエネルギーを受けるか、又は時々二つの重畳するパルスのエネルギーを受ける。図6の部分20内の重畳するパルスのスパイクは、図4において二つのパルスの波面が交差する点を示す。図6は短時間に付与されるエネルギーを示すが、パルスが上述の方法で頻繁に放出されれば、対象内の時間平均エネルギー付与は図6に示されるグラフに似たものになる。例えば、一つのトランスミッタから対象ボリュームまでの距離8がDであると、パルスは、略f=c/Dの周波数で放出可能であり、ここでcは光速である。この高周波数パルス率は、図6のグラフと同様の時間平均エネルギー付与をもたらす。
【0020】
図7Aは、実施可能な他の波形を示し、パルスは擬似ランダムパターンで放出されて、処理ボリューム10(部分22)内では建設的に強め合うが、対象の残りの部分(部分20)ではランダムに干渉するか、ノイズとして現れる。この波形は、符号分割多重アクセス(CDMA)セルラー方式通信システムで実施される擬似ランダム波形のタイプで実施可能である。周知のように、CDMA通信技術は、擬似ランダム波形で情報を変調し、各通信リンクには擬似乱数のオフセット(ずれ)が割り当てられる。この方法で多重通信リンクの擬似ランダム波形をオフセットすることによって、複数の通信リンクを、同じ周波数帯内で同じ領域内に確立することができる。何故ならば、多様な信号が各レシーバに対してノイズのようにみえるからである。CDMA通信とは、特定の通信デバイスの擬似乱数のオフセットを用いて受信信号を復調してその信号を他のものから分解することに依るものである。本発明では、擬似ランダム波形コンセプトを各トランスミッタのオフセットと共に用いて、多様な波形が処理ボリューム10内で建設的に強め合うようにする。トランスミッタから処理ボリューム10外における対象内部の全ての点までの経路の長さが異なることによって、放出エネルギーが、異なる量でオフセットされた信号でそのボリュームの外の各点に到達することが保証される。経路の長さの差によるこの波形のオフセットは、処理ボリューム10の外のマイクロ波エネルギーがノイズとしてみえることを保証する。従って、パルスは、建設的に干渉するのと同じ様に破壊的に干渉する。結果として、低い平均出力(二乗平均平方根,rms)が、処理ボリューム10の外の対象に印加される一方で、高い平均出力レベルが、処理ボリューム10内に印加される。
【0021】
この効果が、図7A〜図7C及び図8に示されている。図7Aは、単一のトランスミッタから放出された擬似ランダム波形を振幅対時間で示す。マイクロ波放射は光速で伝わるので、図7Bに示されるように、波形を、振幅対伝播経路Xに沿った距離として表すこともできる。この図は、如何にトランスミッタから距離8にある処理ボリューム10(部分26)内の波形が、対象の残りの部分(部分24)内の波形と非常に似たものに見え得るかを示す。図7Cに示されるのは、波形が処理ボリューム10内で建設的に干渉するように調整された複数のトランスミッタから放出された複数の波形の組み合わせの効果を示す。この図は、システム内で間隔の空けられた4つのトランスミッタから放出されたマイクロ波伝送を示す。伝送タイミング又は位相遅れの調整によって、四つの波形が処理ボリューム10(部分26)に同位相で到達して、それらの波形、つまりは付与されるエネルギーが互いに建設的に強め合う。これは、図8に示される部分26のように、このボリュームに付与される出力を増大させる。対象の残りの部分(部分24)では、波形は、各トランスミッタから各点まで異なる距離を伝わってきたので、位相がずれている。これは、図7Cに、経路Xに沿った各点までの異なる位相の長さの伝送に起因する波形のシフトとして示されている。擬似ランダム波形及び多様なマイクロ波伝送の位相がずれていることの結果として、全てのマイクロ波波形の組み合わせはノイズ特性を有する。従って、処理ボリューム10の外における対象内の全てのマイクロ波伝送の和は、部分24に示されるように、いくつかの局所的で瞬間的なスパイク及び出力低下を有する低レベルの平均出力付与を示す。トランスミッタの数を増やして且つ各トランスミッタにより伝送される出力を低下させることによって、処理ボリューム10(部分26)内に印加される平均出力密度対対象の残りの部分(部分24)内に印加される平均出力密度の比を増大させることができる。このようにして、処理ボリューム10に印加される全出力、つまりはそのボリューム内の温度を、対象の残りの部分(部分24)に悪影響を与えずに、有効レベルまで上昇させることができる。
【0022】
トランスミッタから放出されるマイクロ波波形は図6A〜図6B及び図7A〜図7Cに示される矩形波形に限定されるものではなく、擬似ランダム特性を有するあらゆるマイクロ波波形が使用可能である。これは図9A〜図9B及び図10に示されていて、よりランダムで多周波の波形が示されている。図7Bに関して上述したように、処理ボリューム10(部分26)内の擬似ランダム波形は、図9Aに示されるように、対象の残りの部分(部分24)内の波形に非常に似たものに見える。図9Bに示されるのは、波形が処理ボリューム10内で建設的に干渉するに調整された複数のトランスミッタから放出された複数の波形の組み合わせの効果である。伝送位相を調整することによって、四つの示される波形が、処理ボリューム10(部分26)に同位相で到達して、波、つまりは付与エネルギーが互いに建設的に強め合う。これは、図10に示される部分26のようにこのボリューム内に付与される出力を増大させる。対象の残りの部分では、異なる複数の波形は位相がずれていて、部分24内にはるかに低い量のエネルギーを付与する。
【0023】
擬似ランダム波形の性質及び多様なトランスミッタの各々からの伝送の相対位相を制御することによって、処理ボリューム10のサイズ及びそのボリューム内に付与されるエネルギーを正確に制御することができる。更に、処理ボリューム10のサイズ及び最大対最小のエネルギー付与率を調節するために、マイクロ波エネルギーを伝送するトランスミッタの数を変更し得る。
【0024】
上述のように、エネルギー(特に熱エネルギー)を対象(例えば、患者、構造、物質)の限られたボリューム内に付与する必要がある多様な応用に対して多様な実施形態を適用し得る。用いられる放射の特定の周波数又は波長は、処理される物質に依存するものであり、基本的な動作コンセプトは実質的に同じである。従って、多様な実施形態の説明を単純化するために、以下の例示的な方法の説明は、患者内部の腫瘍の熱処理を含む治療応用に重点を置いたものである。この例の腫瘍は処理ボリューム10を構成し、対象は患者9である。
【0025】
図11は、一実施形態に係る熱処理システム内で実施可能な例示的な方法を示す。患者の腫瘍を熱処理するために、患者内の処理ボリュームの正確な位置を決定しなければならない(ステップ102)。患者内の腫瘍及び他の処理ボリュームを位置決めする方法は医療分野では周知であり、CAT、PET及びMRI走査技術及びシステムが挙げられる。このような3次元画像法システムは、患者の体に関係する座標系内における腫瘍の3次元座標を発生させることができる。この座標情報を用いて、熱処理システム1内の患者の位置を決定することによって、熱処理システム1内の腫瘍の位置を決定することができる(ステップ104)。熱処理システム1用の第二の座標系内で腫瘍用の第一の座標系を位置決めするこのプロセスのことを、“レジストレーション(登録)”と指称する。一部実施形態では、腫瘍の位置は、腫瘍の3次元画像法が実施される際に患者が横たわるテーブルや支持プラットフォーム等の外部基準(外部座標系と指称される)に対して決定され得る。この場合、外部座標系は、熱処理システム1の座標系でレジストレーションされる。このレジストレーションプロセスによって、システムコンピュータが、単純な幾何学変換を用いて熱処理システム1内の腫瘍又は処理ボリュームの位置を正確に決定することができる(ステップ106)。システムの座標系内における処置位置を決定するのに用いられる数学的な変換は、コンピュータ支援手術及び3次元画像法に関する医療分野において周知である。
【0026】
熱処理システム1内の腫瘍の位置が決定されると、システムは、各マイクロ波トランスミッタから処理サイトまでの距離を決定することができる(ステップ108)。図12を参照して後述されるように、この演算は単純な幾何学計算を含む。トランスミッタから腫瘍までの距離が決定されると共に、システムは、各トランスミッタと腫瘍サイトとの間を伝わるマイクロ波パルスに対する伝送時間も決定し得る。図13を参照して後述されるように、この計算は、空気及び組織内での光の速度の違いを考慮することを含み得る。各トランスミッタに対して決定された伝送時間を用いて、システムは、全ての伝送エネルギーが同位相で腫瘍内に到達するように各トランスミッタに適用される特定の伝送遅延又は位相遅れを計算することができる(ステップ112)。この演算は、単純な線形計算を含む。望まれる熱処理の種類及び処理ボリュームに応じて、システムは、処理ボリューム内の所望の程度の建設的な干渉を達成するために適用される波形エンコーディングも決定し得る(ステップ114)。これは、特定のタイプの擬似ランダム波形を決定すること、又はCDMA通信システムのエンコード通信情報と同様の擬似ランダム波形内にパルスをエンコードすることを含み得る。最後に、熱処理が、計算された時間遅延又は位相遅れを用いて多様なトランスミッタからマイクロ波エネルギーを伝送することによって開始される(ステップ116)。処理は、所要の期間に対して腫瘍を所望の高温(全てのトランスミッタによって許容される出力レベルによって制御される)に維持するために続けられ得る。
【0027】
上述のように、各トランスミッタから処理ボリューム10までの距離を決定するプロセスには、単純な幾何学計算が含まれる。図12は、熱処理システム1内における一つのトランスミッタ6aから腫瘍10までの距離を決定するためのこうした計算の一例を示す。この例では、腫瘍の位置は、対象9が横たわるテーブル3に基づいた座標系において分かっている。特に、腫瘍の中心点は、テーブル3の表面に平行なX座標に沿った距離32、及びY座標(つまりテーブル3の上方)に沿った距離34に存在する。この計算は、三次元系の座標及びエミッタに対して容易に一般化される。熱処理システム1のコンピュータプロセッサは、設計、センサ(図示せず)又はオペレータの入力によってテーブル3の位置の情報を与えられて、プロセッサがテーブル3のX座標及びY座標で座標計算(システムの座標系内で実施され得る)を相関させることができる。例えば、コンピュータプロセッサは、トランスミッタ6aがテーブル3の座標軸からX軸に沿って距離42及びY軸にそって距離44に配置されているという情報を与えられ得る。このようにして、システムは、トランスミッタ6aから座標軸までの距離を決定することができる。また、コンピュータプロセッサは、座標軸から腫瘍10までの距離30(腫瘍のX座標及びY座標(つまり距離32及び34)の二乗の和の平方根)を決定することもできる。コンピュータプロセッサは、トランスミッタ6aから座標軸までの距離40が分かっているので、システムは、二つの距離30及び40の二乗の和の平方根として、トランスミッタから腫瘍10までの距離50を簡単に計算することができる。
【0028】
トランスミッタ6aと腫瘍10との間の距離50が空気で満たされているならば、伝送時間は単純に、距離50を空気中の光の速度で割ったものである。しかしながら、図13に示されるように、大抵の応用において、距離50は、部分的に空気で満たされていて(部分82)、部分的に対象の物質(組織等)で満たされている(部分84)。従って、各トランスミッタ6a〜6gから放出されたマイクロ波エネルギーの伝送時間又は腫瘍10への到達時間を正確に決定するために、コンピュータプロセッサは、トランスミッタと対象9の外面との間の距離と、各トランスミッタと対象9内の腫瘍10との間の線に沿った距離とを計算することができる。こうした計算は、図12を参照して上述したものと同様の単純な幾何学計算を用いて、対象9及び腫瘍10の3次元座標の情報が与えられたシステムのコンピュータプロセッサによって容易に実行可能である(例えば3次元画像走査によって)。従って、伝送時間の計算には、空気中を通った放出電磁(例えばマイクロ波)放射が伝わった距離を決定してその距離を空気中の光の速度で割って第一の伝送時間部分(つまり部分82を伝わる時間)を求めることと、腫瘍10までの途中で対象中を通った放出電磁放射が伝わった距離を決定してその距離を組織(又は対象が備える何らかの物質)中の光の速度で割って第二の伝送時間部分(つまり部分84を伝わる時間)を求めることと、第一及び第二の伝送時間部分を足すこととが含まれる。
【0029】
図14は、一実施形態に係る熱処理システム1の構成要素の一部を示す。熱処理システム1は制御プロセッサ260を含み、その制御プロセッサ260は、多様なトランスミッタの総出力レベル及び位相を制御するために上述のような演算を実施するソフトウェア命令を備えて構成される。制御信号は、ケーブル202によって制御プロセッサ260から個々の波形発生器204に伝えられ得る。こうした波形発生器204は、CDMAセルラー方式電話に対して実施されるトランスミッタ回路と同様の回路を用い得る。こうした波形発生器204は、図7A〜図10を参照して上述したような擬似ランダム波形を発生させるように構成されたデジタル信号プロセッサを含み得る。所望の熱処理出力付与レベルを得るのに必要な電力を出力するために、波形発生器204は、パワーアンプ206に結合され得て、そのパワーアンプ206は、電源208からの追加エネルギーを用いて、伝送出力レベルを引き上げることができる。パワーアンプ206によって出力されるマイクロ波エネルギーは、マイクロ波アンテナ210等のアンテナに結合されて、そのアンテナは、適切な方法で出力放射するように構成されて熱処理システム1内に配置される。一実施形態では、波形発生器204、パワーアンプ206及びアンテナ210はトランスミッタユニット6として製造可能である。セルラー方式電話の構成要素(適所に固定されていて照準又は合焦機構を必要としない)を製造するのに使用される集積回路及び製造方法を用いることによって、トランスミッタユニット6をコスト効率的に製造することができて、熱処理システム1が、手頃な価格のままで多数のトランスミッタを含むことができる。
【0030】
熱処理システムは、図15に示されるワークステーションコンピュータ260等の多様な計算デバイスのいずれかであり得る制御プロセッサを含み得る。こうしたワークステーションコンピュータ260は典型的に、揮発性メモリ262と大容量不揮発性メモリ(ディスクドライブ263等)に結合されたプロセッサ261を含む。また、コンピュータ260は、プロセッサ261に結合されたフロッピ(登録商標)ディスクドライブ264及びコンパクトディスク(CD)ドライブ265も含み得る。また、コンピュータ260は、コンピュータマウス267等のポインティングデバイス、キーボード268等のユーザ入力デバイス、及びディスプレイ269も含み得る。また、コンピュータ260は、複数のトランスミッタ6a〜6gに接続するためのケーブル5を接続するためにプロセッサ261に結合された複数の接続ポート266も含み得る。接続ポート266は、プロセッサ261をネットワークにも接続し得る。
【0031】
説明された方法を実施するように構成されたソフトウェア命令を実行するコンピュータプロセッサ261によって、多様な実施形態が実施可能である。こうしたソフトウェア命令は、別々のアプリケーションとして、又は、実施形態の方法を実施するコンパイル済みソフトウェアとして、メモリ262、263内に記憶され得る。更に、ソフトウェア命令は、以下に挙げられるいずれかの形式の有体のプロセッサ可読メモリに記憶され得る: ランダムアクセスメモリ262、ハードディスクメモリ263、フロッピ(登録商標)ディスク(フロッピ(登録商標)ディスクドライブ264で読み込み可能)、コンパクトディスク(CDドライブ265で読み込み可能)、エレクトリーイレーサブルプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、リードオンリーメモリ(フラッシュメモリ等)、及び/又は、計算デバイス260に差し込まれたメモリモジュール(図示せず)(外部メモリチップや、USBネットワークポート266に差し込まれたUSB接続可能外部メモリ(例えば“フラッシュドライブ”)等)。
【0032】
当業者は、本願で開示される側面に関して説明される多様な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、アルゴリズムステップが、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又は両方の組み合わせとして実施可能であることを認識されたい。このハードウェア及びソフトウェアの相互可換性を明確に示すために、多様な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路及びステップはそれらの機能性に関して一般的に説明されている。こうした機能性がハードウェアとして実施されるかソフトウェアとして実施されるかは、特定の応用、及びシステム全体に対して課される設計制約に依存する。当業者は、各特定の応用に対して説明される機能性を多様な方法で実施し得るが、そうした実施の決定は、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0033】
上述されて図示された方法のブロックの順序は、例次目的のためだけのものであり、一部ブロックの順序は、本発明及び特許請求の精神及び範囲から逸脱せずに、本願で説明されるものから変更され得る。
【0034】
本願で開示される側面に関して説明される方法又はアルゴリズムのブロックは、直接ハードウェアで、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで、又は両方の組み合わせで実施可能である。ソフトウェアモジュールは、プロセッサ可読メモリに依るものであり得て、そのメモリは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD‐ROM、又は当該分野で既知の他の形式の記憶媒体のいずれかであり得る。例示的な記憶媒体は、プロセッサがその記憶媒体から情報を読み出しその記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合される。代替例では、記憶媒体はプロセッサと一体であり得る。プロセッサ及び記憶媒体はASICに依るものであり得る。ASICは、ユーザ端末又はモバイルデバイスに依るものであり得る。代替例では、プロセッサ及び記憶媒体は、ユーザ端末又はモバイルデバイス内の別個の構成要素として存在し得る。更に、一部側面では、方法又はアルゴリズムのブロック及び/又はアクションが、コード、及び/又は、機械可読媒体に対する命令、及び/又は、コンピュータ可読媒体(コンピュータプログラムプロダクトに組み込まれ得る)のうちいずれか又は組み合わせとして存在し得る。
【0035】
上述の多様な側面の説明は、当業者が本発明を実施又は使用することができるようにするために提供されている。これらの側面に対する多様な修正は、当業者には自明であり、本願で定義される一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱せずに、他の側面に応用可能である。従って、本発明は、本願で示される側面に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本願で開示される原理及び新規特徴と矛盾しない最も広範な範囲で認められるものである。
【符号の説明】
【0036】
1 熱処理システム
2 内部ボリューム
3 テーブル
4 コンピュータプロセッサ
5 ケーブル
6 トランスミッタ
7 波面
8 距離
9 対象、患者
10 処理ボリューム、腫瘍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象内の処理ボリュームにエネルギーを印加する方法であって、
複数のトランスミッタから電磁放射を放出するステップを備え、前記複数のトランスミッタの各々から放出される電磁放射が、前記処理ボリューム内で建設的に干渉するように構成及び制御される、方法。
【請求項2】
前記複数のトランスミッタが前記対象の周囲に間隔を空けて配置され、
前記複数のトランスミッタの各々から放出される電磁放射が、各トランスミッタと前記処理ボリュームとの間の距離に基づいて制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のトランスミッタの各々から放出される電磁放射が、擬似ランダム波形で構成されて、電磁放射が前記処理ボリューム内で建設的に干渉し且つ前記処理ボリュームの外でランダムに干渉するように制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理ボリュームの位置を決定するステップと、
各トランスミッタと前記処理ボリュームとの間の距離を計算するステップと、
各トランスミッタから前記処理ボリュームまでの放出された電磁放射の伝送時間を計算するステップと、
電磁放射の放出を制御するのに用いられる前記複数のトランスミッタの各々に対する位相遅れを計算するステップとを更に備えた請求項1に記載の方法。
【請求項5】
放出される電磁放射がマイクロ波放射である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各トランスミッタから前記処理ボリュームまでの放出された電磁放射の伝送時間を計算するステップが、
放出された電磁放射が空気中を伝わった距離を決定し該距離を空気中の光の速度で割って第一の伝送時間部分を求めるステップと、
放出された電磁放射が前記対象中を伝わった距離を決定し該距離を前記対象の物質中の光の速度で割って第二の伝送時間部分を求めるステップと、
前記第一の伝送時間部分と前記第二の伝送時間部分とを足すステップとを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサと、
前記プロセッサに結合された複数の電磁放射トランスミッタとを備えたシステムであって、
前記プロセッサが、放出される電磁放射が対象内部の処理ボリューム内で建設的に干渉するように前記複数の電磁放射トランスミッタの各々を設定及び制御することを備えた演算を実行するソフトウェア実行可能命令を備えて構成されている、システム。
【請求項8】
前記対象を収容するための構造を更に備え、
前記複数の電磁放射トランスミッタが、該複数の電磁放射トランスミッタが前記対象の周囲に間隔を空けて配置されるように前記構造上に配置されていて、
前記プロセッサが、前記複数の電磁放射トランスミッタの各々が各電磁放射トランスミッタと前記対象内部の処理ボリュームとの間の距離に基づいて制御されるような演算を実行するソフトウェア実行可能命令を備えて構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の電磁放射トランスミッタの各々が、擬似ランダム波形を備えて構成された電磁放射を放出するように構成されていて、
前記プロセッサが、電磁放射が前記処理ボリューム内で建設的に干渉し且つ前記処理ボリュームの外でランダムに干渉するように前記複数の電磁放射トランスミッタの各々を制御する演算を実行するソフトウェア実行可能命令を備えて構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、
前記処理ボリュームの位置を決定することと、
各電磁放射トランスミッタと前記処理ボリュームとの間の距離を計算することと、
各電磁放射トランスミッタから前記処理ボリュームまでの放出された電磁放射の伝送時間を計算することと、
電磁放射の放出を制御するのに用いられる前記複数の電磁放射トランスミッタの各々に対する位相遅れを計算することとを更に備えた演算を実行するソフトウェア実行可能命令を備えて構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の電磁放射トランスミッタの各々がマイクロ波トランスミッタである、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、
放出された電磁放射が空気中を伝わった距離を決定して該距離を空気中の光の速度で割って第一の伝送時間部分を求めることと、
放出された電磁放射が前記対象中を伝わった距離を決定して該距離を前記対象の物質中の光の速度で割って第二の伝送時間部分を求めることと、
前記第一の伝送時間部分と前記第二の伝送時間部分とを足すこととを更に備えた演算を実行するソフトウェア実行可能命令を備えて構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記構造が、前記対象を収容するように構成された内部ボリュームを形成する内面を有するシリンダーを備え、
前記複数の電磁放射トランスミッタが、前記内面の周囲上に配置されて分布している、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
複数の電磁放射を放出する手段と、
放出される電磁放射が対象内部の処理ボリューム内で建設的に干渉するように前記複数の電磁放射を放出する手段を設定及び制御する手段とを備えたシステム。
【請求項15】
前記対象の周囲で前記複数の電磁放射を放出する手段を位置決めする手段と、
前記対象内部の処理ボリュームまでの距離に基づいて前記複数の電磁放射を放出する手段を制御する手段とを更に備えた請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の電磁放射を放出する手段が、擬似ランダム波形を備えて構成された電磁放射を放出する手段を備え、
前記複数の電磁放射を放出する手段を制御する手段が、電磁放射が前記処理ボリューム内で建設的に干渉し且つ前記処理ボリュームの外でランダムに干渉するように放出を制御する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記処理ボリュームの位置を決定する手段と、
前記処理ボリュームまでの距離を計算する手段と、
前記処理ボリュームまでの複数の放出された電磁放射の各々の伝送時間を計算する手段と、
前記複数の電磁放射を放出する手段を制御する手段によって用いられる複数の放出される電磁放射の各々の位相遅れを計算する手段とを更に備えた請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の電磁放射を放出する手段が、マイクロ波放射を放出する手段を備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記処理ボリュームまでの複数の放出された電磁放射の各々の伝送時間を計算する手段が、
放出された電磁放射が空気中を伝わった距離を決定して該距離を空気中の光の速度で割って第一の伝送時間部分を求める手段と、
放出された電磁放射が前記対象中を伝わった距離を決定して該距離を前記対象の物質中の光の速度で割って第二の伝送時間部分を求める手段と、
前記第一の伝送時間部分と前記第二の伝送時間部分とを足す手段とを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
コンピュータ可読媒体を備えたコンピュータプログラムプロダクトであって、
前記コンピュータ可読媒体が、
放出される電磁放射が対象内部の処理ボリューム内で建設的に干渉するように複数の電磁放射トランスミッタの各々を設定及び制御する少なくとも一つの命令を備える、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項21】
前記コンピュータ可読媒体が、
各電磁放射トランスミッタと前記対象内部の処理ボリュームとの間の距離に基づいて前記複数の電磁放射トランスミッタの各々を制御する少なくとも一つの命令を更に備える、請求項20に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項22】
前記コンピュータ可読媒体が、擬似ランダム波形を有する電磁放射が前記処理ボリューム内で建設的に干渉し且つ前記処理ボリュームの外でランダムに干渉するように前記複数の電磁放射トランスミッタの各々を制御する少なくとも一つの命令を更に備える、請求項21に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項23】
前記コンピュータ可読媒体が、
前記処理ボリュームの位置を決定する少なくとも一つの命令と、
各電磁放射トランスミッタと前記処理ボリュームとの間の距離を計算する少なくとも一つの命令と、
各電磁放射トランスミッタから前記処理ボリュームまでの放出された電磁放射の伝送時間を計算する少なくとも一つの命令と、
電磁放射の放出を制御するのに用いられる前記複数の電磁放射トランスミッタの各々に対する位相遅れを計算する少なくとも一つの命令とを更に備える、請求項21に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項24】
前記コンピュータ可読媒体が、
放出された電磁放射が空気中を伝わった距離を決定して該距離を空気中の光の速度で割って第一の伝送時間部分を求める少なくとも一つの命令と、
放出された電磁放射が前記対象中を伝わった距離を決定して該距離を前記対象の物質中の光の速度で割って第二の伝送時間部分を求める少なくとも一つの命令と、
前記第一の伝送時間部分と前記第二の伝送時間部分とを足す少なくとも一つの命令とを更に備える、請求項23に記載のコンピュータプログラムプロダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−529357(P2012−529357A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515149(P2012−515149)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038204
【国際公開番号】WO2010/144724
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(507364838)クアルコム,インコーポレイテッド (446)
【Fターム(参考)】